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特開2023-181678希土類元素の硫酸複塩の改善された生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181678
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】希土類元素の硫酸複塩の改善された生成方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 59/00 20060101AFI20231218BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20231218BHJP
   C22B 3/10 20060101ALI20231218BHJP
   C01F 17/17 20200101ALI20231218BHJP
【FI】
C22B59/00
C22B3/44 101Z
C22B3/10
C01F17/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094938
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】591089855
【氏名又は名称】三和油化工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】松宮 正彦
(72)【発明者】
【氏名】浅井 博成
(72)【発明者】
【氏名】内野 雄貴
【テーマコード(参考)】
4G076
4K001
【Fターム(参考)】
4G076AA14
4G076AB04
4G076AB08
4G076AB28
4G076BA13
4G076BC02
4G076BC07
4G076BD02
4G076BE11
4G076DA30
4K001AA39
4K001AA40
4K001BA19
4K001BA22
4K001DB04
4K001DB22
(57)【要約】
【課題】希土類元素の硫酸複塩を効果的に生成せしめ得る、改善された方法を提供し、また、希土類磁石材料等から得られる希土類元素含有溶液より、希土類元素の硫酸複塩を、高い析出率において、迅速に析出せしめ得る方法をも提供する。
【解決手段】希土類元素含有溶液に対して、酢酸を配合して、均一に混合せしめた後、その得られた混合液に、硫酸のアルカリ金属塩を固体形態において添加して、溶解させることにより、希土類元素の硫酸複塩を析出せしめるようにした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素含有溶液に対して、酢酸を配合して、均一に混合せしめた後、その得られた混合液に、硫酸のアルカリ金属塩を固体形態において添加して、溶解させることにより、該希土類元素の硫酸複塩を析出せしめることを特徴とする希土類元素の硫酸複塩の改善された生成方法。
【請求項2】
前記希土類元素含有溶液が、希土類元素として、軽希土類元素と共に、重希土類元素を含有していることを特徴とする請求項1に記載の希土類元素の硫酸複塩の改善された生成方法。
【請求項3】
前記硫酸のアルカリ金属塩が、固形の硫酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の希土類元素の硫酸複塩の改善された生成方法。
【請求項4】
前記希土類元素含有溶液が、希土類系磁石合金材料を塩酸にて浸出乃至は溶解せしめることによって得られる水性溶液であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の希土類元素の硫酸複塩の改善された生成方法。
【請求項5】
前記酢酸が、前記混合液中において1重量%以上の濃度となるように、配合せしめられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の希土類元素の硫酸複塩の改善された生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類元素の硫酸複塩の改善された生成方法に係り、特に、希土類元素含有溶液から希土類元素の硫酸複塩を効率的に生成せしめ得る実用的に有用な手法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、永久磁石やモーター、電極、ガラス研磨剤等の様々な分野において、各種の希土類元素が広く利用されており、そこでは、それらのスクラップ又は製造工程からの合金クズ等として、希土類元素を含有した排出物乃至は廃棄物が発生している。しかして、希土類元素は、希少資源であるところから、その有効利用を図るべく、そのような排出物乃至は廃棄物から、希土類元素を回収する手法や再利用するための手法に関して、各種の技術開発や検討が、精力的に行われてきている。特に、近年においては、希土類元素の需要拡大に加えて、産出国の政策や政情不安等によって、希土類元素の市場価格が大きな影響を受け、その変動が著しくなってきていることを受けて、従来からの希土類元素の回収技術に加え、更に実用上において有用な種々の回収方法の検討や、その開発が進められているのである。
【0003】
その中で、Nd-B-Fe合金磁石等の希土類元素含有材料から、簡便に且つ確実に、低温で鉄を除去して、希土類元素を回収し得る技術の一つとして、特開昭63-206313号公報や特開2015-89970号公報等においては、希土類元素のイオンを含む溶液に対して、硫酸ナトリウム等の硫酸塩及び硫酸を含む水溶液を接触せしめることにより、希土類元素の難溶性の硫酸複塩:LnM(SO4)2(但し、Ln:希土類元素、M:アルカリ金属)、換言すれば希土類硫酸塩とアルカリ硫酸塩とからなる難溶性の複塩を析出させる一方、鉄は溶解度の高い一般的な硫酸塩として、溶液中に残留するところから、濾過等の固液分離によって、希土類元素の硫酸複塩として、回収するようにした手法が知られているが、そこでは、希土類元素の硫酸複塩は、その析出が概ね完了するまでの時間が長く、条件によっては、充分な完了が実現され得ないことや、希土類元素の中で、軽希土類のものの硫酸複塩が難溶性であるのに対して、重希土類のものの硫酸複塩は溶解度が高いために、その充分な量の析出、回収が困難である等の問題を内在している。
【0004】
そこで、特開2013-104098号公報においては、希土類元素を含有する水溶液に、硫酸イオン以外の陰イオンを生じる水溶性塩類、例えば、塩化ニッケルの如き二価金属のハロゲン化物や、ハロゲンの酸素酸塩、硝酸塩等を共存させ、次いで、アルカリ金属硫酸塩を添加した後、溶液温度を50℃以上として、反応させることにより、希土類元素の硫酸複塩を析出させて、沈殿せしめる回収方法が明らかにされており、これによって、効率的に且つ高い回収率において、希土類元素を回収することが出来るとされている。更に、特開2015-110811号公報には、反応槽に収容した希土類元素を含有する溶液に、種晶を共存させた状態で、アルカリ金属硫酸塩を添加して、60℃まで昇温し、そして3時間以上保持することにより、希土類元素の硫酸複塩生成反応を生じさせ、希土類元素の硫酸複塩沈殿物を形成させて、回収する回収方法において、反応槽内に残留させた種晶に、先ず、アルカリ金属硫酸塩を含む溶液を添加してスラリーとし、その後、希土類元素を含む硫酸水溶液を収容するようにすることによって、希土類硫酸複塩の形態が変化せず、共沈効果が低下するのを抑制し、高い回収率で安定して希土類を回収することが出来るとの指摘が為されている。
【0005】
しかしながら、それら硫酸複塩沈殿法によって希土類元素を回収する改良された方法にあっても、複塩形成の効果が今一つ充分でないことに加えて、不純物となる二価金属の塩類が、硫酸複塩を析出せしめるための溶液中に必然的に存在することとなる問題や、硫酸複塩生成反応の進行のために、希土類元素を含む溶液(複塩析出のための溶液)を、50℃或いはそれ以上の温度に昇温させる必要があったり、更には、硫酸複塩の種晶を準備して、それを希土類元素を含有する溶液中に添加して、共存させる必要がある等の問題を内在するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63-206313号公報
【特許文献2】特開2015-89970号公報
【特許文献3】特開2013-104098号公報
【特許文献4】特開2015-110811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景にして完成されたものであって、その解決課題とするところは、希土類元素の硫酸複塩を効果的に生成せしめ得る、改善された方法を提供することにあり、また他の課題とするところは、希土類磁石材料等から得られる希土類元素含有溶液より、希土類元素の硫酸複塩を、高い析出率において、迅速に析出せしめ得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明にあっては、かくの如き課題の解決のために、希土類元素含有溶液に対して、酢酸を配合して、均一に混合せしめた後、その得られた混合液に、硫酸のアルカリ金属塩を固体形態において添加して、溶解させることにより、該希土類元素の硫酸複塩を析出せしめることを特徴とする希土類元素の硫酸複塩の改善された生成方法を、その要旨とするものである。
【0009】
なお、このような本発明に従う希土類元素の硫酸複塩の改善された生成方法においては、有利には、前記希土類元素として、軽希土類元素と共に、重希土類元素を含有している溶液が、その対象とされることとなる。
【0010】
また、かかる本発明に従う希土類元素の硫酸複塩の改善された生成方法の望ましい態様の一つによれば、前記硫酸のアルカリ金属塩は、固形の硫酸ナトリウムであることを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明に従う硫酸複塩の生成方法の別の望ましい態様の一つによれば、前記希土類元素含有溶液が、希土類磁石材料を塩酸水溶液にて滲出乃至は溶解せしめることによって得られる水性溶液であることを特徴とする。
【0012】
加えて、本発明に従う硫酸複塩の生成方法の他の望ましい態様の一つによれば、前記酢酸が、前記混合液中において1重量%以上の濃度となるように、配合せしめられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に従う希土類元素の硫酸複塩の改善された生成方法によれば、希土類元素含有溶液から、希土類元素の硫酸複塩:LnM(SO4)2(但し、Ln:希土類元素、M:アルカリ金属)が、迅速に析出せしめられ得ると共に、高い析出率において、かかる硫酸複塩を得ることが出来ることとなる。特に、希土類元素の中でも重希土類の硫酸複塩の析出率を、より一層有利に高め得るのである。しかも、そのような硫酸複塩の迅速な形成と高い析出率向上効果の発揮には、溶液を昇温する必要もなく、また種晶を共存させる必要もないという特徴を有しているのである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例3において得られた、希土類元素含有溶液に酢酸を添加した後、固形のNa2SO4にて硫酸複塩を析出させた場合における、希土類元素複塩の析出量(比率)と析出時間の関係を示すグラフである。
図2】実施例3において得られた、希土類元素含有溶液に塩酸を添加した後、固形のNa2SO4にて硫酸複塩を析出させた場合における、希土類元素複塩の析出量(比率)と析出時間の関係を示すグラフである。
図3】比較例1において得られた、各希土類元素複塩の析出率と析出時間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先ず、本発明に従う希土類元素の硫酸複塩の生成方法において、その対象とされる希土類元素含有溶液は、希土類元素をイオンとして含有する溶液であって、一般に、水性の酸性溶液として調整されるものである。そして、そこにおいて、希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)等の軽希土類元素や、イットリウム(Y)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等の重希土類元素が対象とされ、そのような希土類元素のうちの1種若しくは2種以上を含有する溶液として、調製されることとなる。また、本発明にあっては、かかる重希土類元素を少なくとも含む、特に、軽希土類元素と共に、重希土類元素を含む希土類元素含有溶液が、有利に対象とされることとなる。
【0016】
なお、そのような希土類元素含有溶液には、永久磁石やモーター、電極、ガラス研磨剤等の様々な使用分野において回収される各種の希土類元素含有材料を、硫酸以外の鉱酸、例えば塩酸等で滲出乃至は溶解して得られた滲出液乃至は溶解液が、好適に用いられ得、そこにおいて、希土類元素含有材料としては、希土類系磁石合金材料が、好適に、その対象とされることとなる。また、そのような希土類系磁石合金材料の中でも、希土類元素-鉄系、特に、ネオジム-鉄-ボロン系の磁石合金材料が、その製造工程から排出された材料や製品から回収された材料として、そのままの状態で、或いは必要に応じて粗砕や粉砕等によって適当な大きさに細分化して、有利に用いられることとなる。更に、希土類元素は、それを溶存する溶液中において、飽和濃度以下の適宜の濃度となるように、存在せしめられるものである。
【0017】
そして、本発明にあっては、上記のようにして得られる希土類元素含有溶液に対して、複塩化の促進のために、酢酸が配合されて、攪拌機等による撹拌により、均一に混合せしめられることとなる。なお、ここで配合される酢酸は、後述する硫酸複塩の形成反応の促進に寄与する成分であって、その配合によって、硫酸複塩の析出が、迅速に行われ得るのである。また、そのような酢酸の配合量としては、目的に応じて適宜に選定されることとなるが、一般に、希土類元素含有溶液と酢酸との混合液中において、1重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上の含有量となる割合において、適宜に選定されることとなる。
【0018】
次いで、そのような希土類元素含有溶液に、所定量の酢酸を配合して、得られる混合液には、硫酸のアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩やカリウム塩等が、固体形態において添加されて、溶解せしめられることによって、硫酸複塩化の反応を効果的に進行させ、目的とする希土類元素の硫酸複塩:LnM(SO4)2(但し、Ln:希土類元素、M:アルカリ金属)、特に重希土類元素の硫酸複塩の析出量を高めたものが、有利に析出せしめられることとなるのである。
【0019】
このように、硫酸のアルカリ金属塩を固体で用いて、酢酸の配合された混合液に添加することにより、混合液中に存在する希土類元素の硫酸複塩化反応が、効果的に促進せしめられ得ることとなるのであり、これによって、目的とする希土類元素の硫酸複塩が、極めて迅速に、且つ高い析出率において、析出せしめられ得ることとなったのである。特に、そのような作用効果は、重希土類元素に対して顕著に発揮され得るのである。
【0020】
なお、ここで、固体形態の硫酸のアルカリ金属塩としては、一般に、粉末状乃至は粒状のものが対象とされ、そしてそのような固体形態の硫酸アルカリ金属塩が、硫酸複塩形成のための反応当量に相当する割合において添加され、そして攪拌機による混合撹拌の如き強撹拌操作ではなく、手振り混合程度の弱い撹拌操作にて、固体状の硫酸のアルカリ金属塩の溶解を行うことにより、目的とする硫酸複塩が、短時間にて析出するようになるのである。また、そのような本発明に従う硫酸複塩の析出工程において、希土類元素を含む混合液は、従来の如く、加熱乃至は加温する必要はなく、常温下(環境温度下)において析出反応を進行させても、高い析出率において、硫酸複塩を迅速に析出せしめ得る特徴が発揮され得るのである。
【0021】
その後、かくの如くして析出せしめられた希土類元素の硫酸複塩(固体)は、従来と同様にして、混合液から濾過等の分離操作にて取り出されて、回収された後、焼成等の処理や、希土類元素複塩の分別等の公知の処理が施されて、目的とする用途に供されることとなる。
【実施例0022】
以下に、本発明の代表的な実施例を、比較例と共に示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、それら実施例や比較例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0023】
-実施例1-
希土類元素としての、PrCl3・7H2O、NdCl3・6H2O、TbCl3・6H2O及びDyCl3・6H2Oと共に、FeCl3・6H2Oを、それぞれ2.5重量%含有する混合水溶液に対して、酢酸を、2.5%、5.0%、10.0%、15.0%又は20.0%濃度となるように添加し、25℃の温度で、3分間、3000rpmの条件下において、撹拌した。次いで、沈殿形成剤としてのNa2SO4を、粉末形態にて、又はそれを蒸留水に溶解してなる液状形態にて、反応当量に相当する量において配合し、手振り混合した後、24時間保持(熟成)することにより、各種希土類元素(Pr、Nd、Tb、Dy)を含む混合硫酸複塩を、析出せしめた。
【0024】
次いで、かかる析出物を濾過、回収する一方、それぞれの濾液をICP-AES分析することにより、濾液中のPr、Nd、Tb、Dy及びFeの残留量を求めて、各希土類元素及び鉄の析出率をそれぞれ算出し、その結果を、下記表1に示した。なお、析出率(%)は、式:[(Na2SO4添加前組成-経時変化後組成)/Na2SO4添加前組成]×100にて、求められたものである。
【0025】
【表1】
【0026】
かかる表1の結果から明らかなように、各希土類元素は、何れも、高い析出率にて析出せしめられているが、特に、重希土類元素であるTb及びDyの析出率は、沈殿形成剤として固形のNa2SO4粉末を用いることにより、それを溶液として用いた場合よりも、より一層高い析出率が実現され得ていることが理解され、これによって、固形のNa2SO4を用いることにより、希土類元素全体の析出率も、効果的に向上せしめられ得ることが認められる。
【0027】
-実施例2-
Nd-B-Fe系合金からなる廃磁石材料(Ln:Pr、Nd、Tb、Dy含有)を塩酸に溶解して、pHを約3に調整することにより、希土類元素含有溶液を調製した後、この希土類元素含有溶液に、酢酸を10%濃度となるように添加して、15分間撹拌した。更にその後、Na2SO4粉末を反応当量に相当する量において添加し、手振り混合を行って、かかる硫酸ナトリウム粉末を溶解させて、25℃の温度で24時間保持することにより、希土類元素の混合硫酸複塩を析出せしめ、更に濾過によって、その析出した混合硫酸複塩を回収した。そして、その混合硫酸複塩について、ICP-AES分析の結果、希土類元素全体の析出率が90%以上となることを確認した。
【0028】
-実施例3-
実施例1において調製された、各種塩化物を2.5重量%の割合で含む混合水溶液を用いて、これに、酢酸を10%濃度となるように、又は塩酸を1.0モル濃度となるように加えて、25℃の温度で、20分間、3000rpmの条件下に撹拌して、均一に混合せしめた後、固形の沈殿形成剤であるNa2SO4の粉末を、反応当量に相当する割合にて添加し、手振り混合により溶解させ、そして10~120分間保持することにより、各希土類元素の硫酸複塩を混合複塩の形態において析出せしめた。
【0029】
次いで、酢酸添加の場合と塩酸添加の場合とにおける、各経過時間毎に析出した析出物の析出量を、理論量に対する回収量の割合において、ICP-AES分析とXRD分析により求め、その結果を、図1及び図2に示した。
【0030】
そして、それら図1図2との対比から明らかな如く、各塩化物の混合水溶液に酢酸を加えた場合の方が、塩酸を加えた場合よりも、硫酸複塩の析出量がより多くなることが、理解されるのであり、しかも、析出反応時間が短くても、より多くの析出量が実現され得ることを、認めることが出来る。
【0031】
-比較例1-
希土類磁石材料から実施例2と同様にして調製された希土類元素含有溶液(Pr、Nd、Dy及びFe含有)を用い、その溶液に、酢酸を10%濃度となるように添加した後、沈殿形成剤としてのNa2SO4粉末を反応当量に相当する量において蒸留水に溶解せしめてなる溶液を添加した。次いで、25℃の温度で、5分間、3000rpmの条件下に撹拌した後、所定時間保持して、硫酸複塩を析出せしめ、そしてその析出率を、実施例1と同様にして求めて、その結果を、図3に示した。
【0032】
かかる図3の結果より明らかなように、沈殿形成剤としてのNa2SO4を溶液形態において添加すると、軽希土類元素(Pr、Nd)に比べて、重希土類元素(Dy)の析出率が、充分でないことが理解される。
図1
図2
図3