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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181681
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】水素貯蔵装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
F17C13/00 301C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094942
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】平形 修二
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB13
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA12
3E172EA22
3E172EA35
3E172KA03
3E172KA22
(57)【要約】
【課題】複数のレセプタクル及び複数の水素タンクが具備された車両において、効率よく不足なく水素を充填する。
【解決手段】水素充填装置のノズルが接続される複数のレセプタクル、複数の水素タンク、及び、レセプタクルから水素タンクに水素が流れる流路を有し、流路は、1つのレセプタクルから一部の水素タンクへの独立した流路と、他のレセプタクルから他の一部の水素タンクへの独立した流路と、が形成されており、独立した流路同士は具備された電磁弁の開閉により遮断と連通とが切替可能とされ、電磁弁の開閉を制御する制御装置を有し、制御装置は、レセプタクルに接続される水素貯蔵装置の状況に基づいて電磁弁の開閉を判定する演算を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を燃料とする車両に具備され、水素充填装置から供給される水素を貯蔵する水素貯蔵装置であって、
前記水素充填装置のノズルが接続される複数のレセプタクル、複数の水素タンク、及び、前記レセプタクルから前記水素タンクに水素が流れる流路を有し、
前記流路は、
1つの前記レセプタクルから一部の水素タンクへの独立した流路と、
他の前記レセプタクルから他の一部の水素タンクへの独立した流路と、が形成されており、
前記独立した流路同士は具備された電磁弁の開閉により遮断と連通とが切替可能とされ、
前記電磁弁の開閉を制御する制御装置を有し、
前記制御装置は、
前記レセプタクルに接続される前記水素貯蔵装置の状況に基づいて前記電磁弁の開閉を判定する演算を行う、
水素貯蔵装置。
【請求項2】
前記制御装置は、複数の前記レセプタクルのうち水素が供給されない前記レセプタクルがある場合に前記電磁弁を開放する制御を行う、請求項1に記載の水素貯蔵装置。
【請求項3】
さらに、前記流路の流路内圧力を測定する圧力センサを具備し、
前記制御装置は前記圧力センサからの圧力値を取得して前記独立した流路の間で圧力差が所定以上である場合に前記電磁弁を開放する制御を行う、請求項1又は2に記載の水素貯蔵装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の水素貯蔵装置と、前記水素貯蔵装置の前記水素タンクからの水素の供給を受けて発電する燃料電池システムと、を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両に搭載される水素貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディスペンサにより供給される水素を車両に搭載された車載タンクに充填する水素充填方法であって、車載タンクに充填される水素の初期圧力値を測定する初期圧力測定ステップS1と、初期圧力値を測定した後に、車載タンクの容積を推定する容積推定ステップS2とを含む水素充填方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-095982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トラックやバスなどの商用車では走行距離を延ばすために多数の水素タンクを搭載することが考えられるが、水素の充填口が1つしかない場合には充填口からタンクまでの配管長が長く、配管内径が小さいと圧力損失が増加し、水素充填速度が遅くなってしまう。そこで、充填口を複数設けることが考えられるが、水素を供給する側で必ずしも対応しているとは限らず、効率の良い充填ができないことがあった。また、複数の充填口の間で圧力差が生じていた場合には圧力の低い側の充填口から充填された側のタンクの圧力が低い圧で充填完了してしまうため、1回の充填での充填量が十分でないことがある。
【0005】
本開示では上記問題を鑑み、複数のレセプタクル及び複数の水素タンクが具備された車両において、効率よく不足なく水素を充填することができる水素貯蔵装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、水素を燃料とする車両に具備され、水素充填装置から供給される水素を貯蔵する水素貯蔵装置であって、水素充填装置のノズルが接続される複数のレセプタクル、複数の水素タンク、及び、レセプタクルから水素タンクに水素が流れる流路を有し、流路は、1つのレセプタクルから一部の水素タンクへの独立した流路と、他のレセプタクルから他の一部の水素タンクへの独立した流路と、が形成されており、独立した流路同士は具備された電磁弁の開閉により遮断と連通とが切替可能とされ、電磁弁の開閉を制御する制御装置を有し、制御装置は、レセプタクルに接続される水素貯蔵装置の状況に基づいて電磁弁の開閉を判定する演算を行う、水素貯蔵装置を開示する。
【0007】
制御装置は、複数のレセプタクルのうち水素が供給されないレセプタクルがある場合に電磁弁を開放する制御を行うように構成してもよい。
【0008】
上記水素貯蔵装置はさらに、流路の流路内圧力を測定する圧力センサを具備し、制御装置は圧力センサからの圧力値を取得して独立した流路の間で圧力差が所定以上である場合に電磁弁を開放する制御を行うように構成してもよい。
【0009】
また、本願は、上記水素貯蔵装置と、水素貯蔵装置の水素タンクからの水素の供給を受けて発電する燃料電池システムと、を備える、車両を開示する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、複数のレセプタクル及び複数の水素タンクが具備された車両において、効率よく不足なく水素を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は車両1の概要を表す図である。
図2図2は水素充填装置50を説明する図である。
図3図3は水素貯蔵装置20を説明する図である。
図4図4は制御装置30を説明する図である。
図5図5は形態1にかかる水素充填制御S10を説明する図である。
図6図6は形態2にかかる水素充填制御S20を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.車両
図1には、水素タンク21が積載された車両1の概要を模式的に表した。なお、水素貯蔵装置20は後で別の図を用いて説明するため、図1には水素貯蔵装置20のうち水素タンク21のみを示している。本形態の車両1は大型の車両(トラック)であり、車台2、車台2の前部に配置された運転部3、車台2の後部に配置された荷台部4、車台2の下部に設けられた車輪部5、車両1を駆動する電動モータ6、及び、燃料電池ユニット10を備えている。なお、ここでは大型の車両としてトラックを示したが、これに限られずバス等にも適用できる。また、大型の車両に限定されることもなく、通常の乗用車にも適用することができる。
【0013】
燃料電池ユニット10は、燃料電池11、水素タンク21、不図示の空気取得手段、及び、水素タンク収納ケース7を有して構成されている。これにより水素タンク収納ケース7に収納された水素タンク21から水素供給配管10aを通して燃料電池11に水素を供給するとともに不図示の空気取得手段から燃料電池11に空気を供給する。燃料電池11は、供給された空気(酸素)によって水素を酸化させることにより発電を行い、電線10bを通して電動モータ6に電力を供給して電動モータ6を駆動させ、車両1は推進力を得る。
このような車両1における水素を燃料とした燃料電池11による電動モータ6の駆動については公知の通りである。
また、後で説明するように本形態の車両1は、水素ステーションに備えられた水素充填装置50から供給される水素を受け取り、水素タンク21に水素を貯蔵する水素貯蔵装置20が配置されている。当該水素貯蔵装置20により水素が水素タンク21に充填される。
【0014】
2.水素充填装置
図2には水素貯蔵装置20に対して水素を供給する水素充填装置50の概要を説明する図を表した。
水素充填装置50には、水素が封入された蓄圧器51と、蓄圧器51から配管に放出された水素を圧縮(昇圧)する圧縮機(コンプレッサ)52と、昇圧された水素を圧縮機52から車両1の水素貯蔵装置20に供給する水素供給管53と、水素供給を制御する制御装置54とを備える。水素の充填は水素供給管53の先端に設けられたノズル53aが車両1の水素貯蔵装置20に設けられたレセプタクル22に接続されることで行われる。
水素を供給する水素ステーションには1つ以上の水素充填装置50が配置されている。すなわち、1つの水素充填装置50を具備する水素ステーションや2つ以上の水素充填装置50を具備する水素ステーションがある。
【0015】
3.水素貯蔵装置
上記したように本形態の車両1には水素を貯蔵するための装置である水素貯蔵装置20が備えられている。図3に1つの形態にかかる水素貯蔵装置20の構成を概念的に示している。図3からわかるように本形態で水素貯蔵装置20は水素タンク21、レセプタクル22、分配器23、電磁弁24、通信装置25、及び、圧力センサ26を有している。そしてこれら各部材は後述するように配管により接続され、水素が流れる流路が形成されている。また、図3では図示を省略するが、水素貯蔵装置20にはこれらを制御する制御装置30が具備されている(図4参照)。
【0016】
3.1.水素タンク
水素タンク21は水素を貯蔵しておく容器であり、水素タンク21から燃料電池11に水素が供給される。
水素タンク21の具体的構造は特に限定されることはなく、水素タンクとして利用できる公知のものを適用することが可能である。典型的には水素タンクは水素を貯蔵する部位であるタンク本体Tと、タンク本体Tの水素の出入り口となり、配管が接続される口金Kが具備されている。
【0017】
本形態では水素タンク21が複数設けられており(例えば4つ)、それぞれの水素タンク21に水素が充填される。ここでは4つの水素タンク21が配置される例を挙げ、これらを区別するために符号を21a、21b、21c、21dで表した。これらの水素タンク21は全て同じ容量であってもよいし、異なる容量の水素タンクが含まれていてもよい。
【0018】
3.2.レセプタクル
レセプタクル22は、上記した水素充填装置50のノズル53aが接続されることで水素充填装置50と水素貯蔵装置20との流路が連通して水素が水素充填装置50から水素タンク21に流れるようにする水素の供給口を具備するものである。
レセプタクル22の具体的形状は特に限定されることはなく、公知の形態のものを用いることができる。
【0019】
本形態ではレセプタクル22が複数設けられている(例えば2つ)。ここでは2つのレセプタクル22が具備される例を挙げ、これらを区別するために符号を22a、22bで表した。ただしこれに限らず3つ以上のレセプタクルが設けられてもよい。
【0020】
3.3.分配器
分配器23は複数の流路を繋いで分岐や合流をさせる部材であり、本形態では1つのレセプタクル22に対して1つの分配器23が設けられている。すなわち、本形態ではレセプタクル22aに対して分配器23a、レセプタクル22bに対して分配器23bが配置されている。
分配器23の具体的形状は特に限定されることはなく公知ものを用いることができる。
【0021】
3.4.電磁弁
電磁弁24は電磁石の力で急速開閉ができるバルブであり、全開(開放)か全閉(閉止)のいずかれのみの状態にするON-OFF弁である。電磁弁24としては公知のものを用いることができる。
【0022】
3.5.流路
上記した各部材は配管で接続され、水素が流れる流路を形成している。具体的には、レセプタクル22aは分配器23aに接続され、分配器23aからは水素タンク21a、水素タンク21b、及び、電磁弁24に流路が分岐するように配管が接続されている。一方、レセプタクル22bは分配器23bに接続され、分配器23bからは水素タンク21c、水素タンク21d、及び、電磁弁24に分岐するように配管が接続されている。
すなわち、分配器23aと分配器23bとは電磁弁24を介して連結しており、電磁弁24が開放された場合には連通し、電磁弁24が閉止された場合には連通しないように構成されている。従って、電磁弁24が閉止の状態では複数のレセプタクルのうちの1つであるレセプタクル22aによる一部の水素タンクである水素タンク21a及び水素タンク21bへの独立した水素充填の流路と、複数のレセプタクルのうちの他の1つであるレセプタクル22bによる他の一部の水素タンクである水素タンク21c及び水素タンク21dへの独立した水素充填の流路とが個別に形成される。そして、電磁弁24が開放されたときにはこの独立した流路同士が連通してレセプタクル22aから全ての水素タンク21への水素充填流路が形成されるとともにレセプタクル22bからの全ての水素タンク21への水素充填流路が形成される。
【0023】
3.6.通信装置
通信装置25は、各レセプタクル22に配置され、水素ステーションや水素充填装置50との情報の授受を行うことができるように構成されている。水素貯蔵装置20は通信手段25を介して水素ステーション(水素充填装置50)の情報を取得する。
通信装置25の具体的態様は特に限定されることはないが赤外線通信装置を挙げることができる。本形態ではレセプタクル22aに通信装置25aが配置され、レセプタクル22bに通信装置25bがそれぞれ配置されている。
【0024】
3.7.圧力センサ
圧力センサ26は、各分配器23に配置され、分配器23における流路内圧力(水素の圧力)を測定する。すなわち、上記した独立の流路ごとの流路内圧力を測定する。具体的な圧力センサの種類は特に限定されることはなく公知のものを適用すればよい。
本形態では分配器23aに圧力センサ26aが配置され、分配器23bに圧力センサ26bがそれぞれ配置されている。
【0025】
3.8.制御装置
制御装置は、通信装置25や圧力センサ26から情報を取得して演算を行い、例えば電磁弁24を操作して所望の態様で水素充填が行われるように制御を行う。図4に概念的に示したように制御装置30は、プロセッサーであり演算を行うCPU(Central Processing Unit、中央演算ユニット)31、作業領域として機能するRAM(Random Access Memory)32、記録媒体として機能するROM(Read-Only Memory)33、有線、無線を問わず情報を制御装置30に受け入れるインターフェイスである受信部34、及び、有線、無線を問わず情報を制御装置30から外部に送るインターフェイスである送信部35を備える。
従って制御装置30は受信部34に通信装置25、圧力センサ26が接続されて情報を受信し、送信部35に電磁弁24が接続されて電磁弁24に開閉の信号の送信ができるように構成されている。
【0026】
制御装置30には、通信装置25、圧力センサ26からの情報を処理をして電磁弁24の開閉を判定及び操作するプログラムが保存されている。制御装置30では、ハードウェア資源としてのCPU31、RAM32、及びROM33と、プログラムとが協働する。具体的には、CPU31が、ROM33に記録されたコンピュータプログラムを、作業領域として機能するRAM32で実行することによって、電磁弁24を操作して適切な水素充填態様を実現する。CPU31が取得または生成した情報は、RAM32に格納される。その他、制御装置30の内部や外部に別途記録媒体が具備されて、ここにプログラムや各種データが記録されてもよい。
【0027】
本形態では制御装置30は、通信装置25、圧力センサ26から受信部34を介して情報を取得する。そして制御装置30は取得したデータに基づいて、ROM33や他の記録媒体に記録されたデータベースを用いる等しつつ、ROM33や他の記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを実行して演算処理を行い電磁弁24の開閉の判別を行ってRAM32や記録媒体に記録する。電磁弁24の開閉判別のための具体的な内容は後で説明する。開閉判別の結果は送信部35から電磁弁24に送信され電磁弁24はこの指令に従って開閉する。
【0028】
このような制御装置30は典型的にはコンピュータにより構成できる。
【0029】
4.水素充填制御
次に水素充填制御について説明する。
【0030】
上記したように本形態の水素貯蔵装置20では、電磁弁24の開放及び閉止を変更することで複数のレセプタクル22と複数の水素タンク21との水素充填流路の変更(独立した水素流路同士の遮断及び連通)が可能である。このような電磁弁24の開放及び閉止の基本的な考え方は次の通りである。
【0031】
電磁弁24を開放する場合は限られることはないが例えば次のような状況が想定される。
(A1)水素充填装置(水素ステーション)の設備数の制限
車両にレセプタクルが複数配置されていても水素ステーションに1つの水素充填装置しかなかったり、2つ以上の水素充填装置があっても1つしか使用できない場合、1つのレセプタクルからしか水素を充填することができないため、電磁弁を開放して独立した流路同士を連通し、1つのレセプタクルから全ての水素タンクに水素を充填することができるようにする。
【0032】
(A2)水素充填装置のノズル又はレセプタクルの故障
例えば複数のレセプタクルうち1つのレセプタクルでOリングが破損している、又は、複数の水素充填装置があっても1つの水素充填装置のノズルが故障している等して複数のレセプタクルのそれぞれにノズルを挿しても、水素漏れが発生する等して水素を充填ができない場合、電磁弁が閉止したままであると充填できない水素タンクが生じる。これに対して、電磁弁を開放して独立した流路同士を連通し、他のレセプタクルから全ての水素タンクに水素を充填できるようにする。
【0033】
一方、電磁弁を閉止する場合は限られることはないが例えば次のような状況が想定される。
複数のレセプタクルのそれぞれにノズルが接続され、独立した水素流路ごとに、それぞれのレセプタクルに割り当てられた水素タンク(例えばレセプタクル22aに対して水素タンク21a、21b)に水素を充填する。これにより効率よい水素充填が可能である。水素充填装置が複数存在し、複数のノズルのそれぞれからレセプタクルに同じように水素が供給されれば原則としてこのような水素充填が行われることで高い効率で水素を充填できる。
【0034】
また次のように水素充填の途中で電磁弁の開閉を変更することも想定できる。
同じ水素ステーションに備えられた水素充填装置であっても当該装置ごとに水素圧力が異なる場合がある。例えば水素充填装置50Aは70MPa、水素充填装置50Bは50MPaで蓄圧されている場合で、水素充填装置50Aのノズル53aはレセプタクル22aに接続し、水素充填装置50Bのノズル53aはレセプタクル22bに接続したときに最後まで電磁弁24を閉止したままであると水素タンク21a及び水素タンク21bには70MPaまで水素が充填されるが、水素タンク21c及び水素タンク21dには50MPaまでしか水素を充填することができない。
これに対して、初めに電磁弁24を閉止して水素タンク21a及び水素タンク21bに70MPaまで、水素タンク21c及び水素タンク21dに50MPaまで水素を充填した後、電磁弁24を開放することで独立した水素流路同士を連通し、水素充填装置50Aから水素タンク21c及び水素タンク21dに水素を充填することができ、最終的に全ての水素タンクに70MPaまで水素を充填することができる。
【0035】
以上のように、水素充填装置のノズルの状況等による充填の可否や、圧力の状況による充填の不足の補填等の観点から電磁弁の開閉を変更することで効率よく不足のない水素充填が可能となる。
【0036】
以下、具体的な例として形態1及び形態2を示す。以下に示す形態で水素充填制御は、上記したように通信装置25、圧力センサ26で得た情報を制御装置30で処理することで行われる。この方法の具体的な実行は、当該方法の各過程に対応した各ステップを有するコンピュータプログラムが作成され、制御装置30のROM33や記録媒体に記録され、実行することで水素充填制御を行うことができる。以下、形態例1、形態例2にかかる水素充填制御を説明するが、上記のようにこれに基づいたコンピュータプログラムは、制御装置30のROM33や記録媒体に記録されていることで水素貯蔵装置20の1つの構成要素として機能する。
【0037】
4.1.形態例1
図5は形態例1にかかる水素充填制御S10の流れを示す図である。図5からわかるように、水素充填制御S10は、過程S11~過程S17を有している。以下各過程について説明する。
【0038】
4.1.1.過程S11
過程S11では、水素充填装置50のノズル53aがレセプタクル22に接続され、水素充填が開始される。なお、水素充填(水素の供給)は過程S17で水素充填が停止されるまで連続的に行われている。また、初期状態で電磁弁24は閉止されている。
【0039】
4.1.2.過程S12
過程S12では、レセプタクル22a及びレセプタクル22bの両者で水素が充填可能であるかを判定する。両者で水素の充填が可能である場合にはYesとされて過程S15に進む。両者のうち一方でのみ充填する必要があるときにはNoとされて過程S13に進む。
【0040】
両方のレセプタクル22で水素の充填が可能である(Yesとなる)場合として、水素充填装置50が複数利用でき、レセプタクル22a及びレセプタクル22bのそれぞれに対して水素充填装置50のノズル53aが接続されており、正常に水素充填が可能であることが挙げられる。
一方のレセプタクル22で充填する必要がある(Noとなる)場合として、水素充填装置50が1つしか利用できず、レセプタクル22a又はレセプタクル22bのいずれかにしかノズル53aが接続されてない場合が挙げられる。また、レセプタクル22a及びレセプタクル22bの両方にノズル53aが接続された場合であっても、例えば一方のレセプタクルでOリングが破損する等して他方のレセプタクルでしか水素充填ができない場合もNoとされる。
【0041】
過程S12における判定は、上記したように制御装置30には通信装置25が接続されており、通信装置25を介して水素ステーション(水素充填装置50)からの情報を取得して行うことができる。
【0042】
4.1.3.過程S13
過程S12でNoと判定されると過程S13で電磁弁24を開放する。これにより分配器23aと分配器23bとが連通し、独立した水素流路同士が連通して、一方のレセプタクル22から全ての水素タンク21に水素を充填できるようになる。
【0043】
4.1.4.過程S14
過程S14では、過程S13で電磁弁24が開放された状態で水素の充填が行われている状況で、圧力条件1が満たされているかを判定する。圧力条件1が満たされているかの判定は圧力値によって行われ、具体的には分配器23a、分配器23bに設けられたそれぞれの圧力センサ26a、26bで取得した圧力データを制御装置30で取得して演算することで判定する。
ここで、圧力条件1は例えば、分配器23aにおける圧力をP及び分配器23bにおける圧力をPとしたとき、P及びPが水素タンクにある程度水素が充填されたことを示す閾値を満たすとともに、PとPとの差の絶対値が所定の閾値以内であることが挙げられる。これにより、この段階で全ての水素タンク21に同程度の水素がある程度以上のレベルで充填されていることになる。
【0044】
過程S14で圧力条件1を満たしていると判定されたときにはYesとされて過程S15に進み、過程S14で圧力条件1を満たしていないと判定されたときにはNoとされて過程S14が繰り返される。上記したように過程S14がNoと判定されている間は水素充填が継続している。
【0045】
4.1.5.過程S15
過程S15では過程S14でYesと判定されて水素充填が圧力条件1を満たしている状態で電磁弁24を閉止する。そして過程S16に進む。なお、過程S12でYesと判定されたときには、この過程S15に進み電磁弁24が閉止した状態が維持されたまま水素の充填がおこなわれている。
【0046】
4.1.6.過程S16
過程S16では、過程S15で電磁弁24が閉止した状態で水素の充填が行われている状況で、圧力条件2が満たされているかを判定する。圧力条件2が満たされているかの判定は圧力値によって行われ、具体的には分配器23a、分配器23bに設けられたそれぞれの圧力センサ26a、26bで取得した圧力データを制御装置30で取得して演算することで判定する。
ここで、圧力条件2は例えば、分配器23aにおける圧力をP及び分配器23bにおける圧力をPとしたとき、P及びPが、水素タンクにある程度水素が充填がされたことを示す閾値を満たすことが挙げられる。これにより、この段階で全ての水素タンク21に水素が必要レベルで充填されていることになる。なお、この場合、過程S16の圧力条件2におけるP、Pは過程S14の圧力条件1におけるP、Pの値以下とされる。
【0047】
過程S16で圧力条件2を満たしていると判定されたときにはYesとされて過程S17に進み、過程S16で圧力条件を満たしていないと判定されたときにはNoとされて過程S16が繰り返される。上記したように過程S16がNoと判定されている間は水素充填が継続している。
4.1.7.過程S17
過程S17で水素の充填を停止し、水素充填を終了する。
【0048】
4.2.形態例2
図6は形態例2にかかる水素充填制御S20の流れを示す図である。図6からわかるように、水素充填制御S20は、過程S21~過程S29を有している。以下各過程について説明する。
【0049】
4.2.1.過程S21
過程S21では水素充填装置50のノズル53aをレセプタクル22に接続する。
【0050】
4.2.2.過程S22
過程S22では、レセプタクル22a及びレセプタクル22bの両者で水素が充填可能であるかを判定する。両者で水素の充填が可能である場合にはYesとされて過程S26に進む。両者のうち一方でのみ充填する必要があるときにはNoとされて過程S23に進む。
【0051】
両方のレセプタクル22で水素の充填が可能である(Yesとなる)場合として、水素充填装置50が複数利用でき、レセプタクル22a及びレセプタクル22bのそれぞれに対して水素充填装置50のノズル53aが接続されており、正常に水素充填が可能であることが挙げられる。
一方のレセプタクル22で充填する必要がある(Noとなる)場合として、水素充填装置50が1つしか利用できず、レセプタクル22a又はレセプタクル22bのいずれかにしかノズル53aが接続されてない場合が挙げられる。また、レセプタクル22a及びレセプタクル22bの両方にノズル53aが接続された場合であっても、例えば一方のレセプタクルでOリングが破損する等して他方のレセプタクルでしか水素充填ができない場合もNoとされる。
【0052】
過程S22における判定は、上記したように制御装置30には通信装置25が接続されており、通信装置25を介して水素ステーション(水素充填装置50)からの情報を取得して行うことができる。
【0053】
4.2.3.過程S23
過程S23では、過程S22でNoとされたとき、電磁弁24を開放して水素の充填を開始する。この過程によれば独立した水素流路同士が連通して1つのレセプタクル22から全ての水素タンク21に水素が充填される。また、過程S25で水素の充填が停止されるまで水素の充填は継続される。
【0054】
4.2.4.過程S24
過程S24では、過程S23で電磁弁24が開放された状態で水素の充填が行われている状況で、水素充填が完了したかを判定する。水素充填が完了したかの判定は圧力値によって行われ、具体的には分配器23a、分配器23bに設けられたそれぞれの圧力センサ26a、26bで取得した圧力データを制御装置30で取得して演算することで判定する。
ここで、水素充填が完了した条件は例えば、分配器23aにおける圧力をP及び分配器23bにおける圧力をPとしたとき、P及びPが、水素タンクにある程度水素が充填がされたことを示す閾値(例えば70MPa)を超えたことが挙げられる。これにより、この段階で全ての水素タンク21に水素が必要レベルで充填されていることになる。
【0055】
過程S24で水素充填が完了していると判定されたときにはYesとされて過程S25に進み過程S25で水素の充填を停止する。過程S24で水素充填が完了していないと判定されたときにはNoとされて過程S24が繰り返される。上記したように過程S24がNoと判定されている間は水素充填を継続している。
【0056】
4.2.5.過程S26
過程S26では、過程S22でYesとされたとき、電磁弁24を閉止して(閉止を維持して)水素の充填を開始する。この過程によれば、独立した水素流路毎にレセプタクル22からそれぞれに割り当てられた水素タンク21に水素が充填される。また、過程S25で水素の充填が停止されるまで水素の充填は継続される。
【0057】
4.2.6.過程S27
過程S27では、過程S26で電磁弁24が閉止された状態で水素の充填が行われている状況で、圧力が閾値以上であるかを判定する。具体的には分配器23a、分配器23bに設けられたそれぞれの圧力センサ26a、26bで取得した圧力データを制御装置30で取得して演算することで判定する。
ここで、圧力が閾値以上である条件は例えば、分配器23aにおける圧力をP及び分配器23bにおける圧力をPとしたとき、P又はPが、水素タンクにある程度水素が充填がされたことを示す閾値(例えば68MPa)を超えたことが挙げられる。これにより、この段階で全ての水素タンク21に水素が必要レベルで充填されていることを判定する。
【0058】
過程S27で圧力が閾値以上であると判定されたときにはYesとされて過程S28に進む。過程S27で圧力が閾値以上でないと判定されたときにはNoとされて過程S27が繰り返される。上記したように過程S27がNoと判定されている間は水素充填が継続されている。
【0059】
4.2.7.過程S28
過程S28では、過程S27で電磁弁24が閉止された状態で水素の充填が行われている状況で、圧力が閾値以上であるとき、PとPとの圧力差の絶対値が閾値以上であるかを判定する。具体的には分配器23a、分配器23bに設けられたそれぞれの圧力センサ26a、26bで取得した圧力データを制御装置30で取得して演算することで判定する。
ここで、圧力差が閾値以上である条件は例えば、PとPとの差の絶対値が、閾値(例えば1MPa)以上であることが挙げられる。圧力差が閾値以上であると、この段階で水素タンク間で水素の充填レベルに差があることを意味する。
【0060】
過程S28で圧力差の絶対値が閾値以上であると判定されたときにはYesとされて過程S29に進む。過程S28で圧力差の絶対値が閾値以上でないと判定されたときにはNoとされて過程S25に進み水素の充填が停止される。
【0061】
4.2.8.過程S29
過程S29では電磁弁24を開放する。これにより独立した水素流路が連通し、全てのレセプタクル22(全ての水素充填装置50)と全ての水素タンク21とが連通するため、複数の水素タンク21の間で差圧があった場合にその差圧を小さくすることができる。
過程S29で電磁弁24が開放された後は過程S28に戻り、過程S28でNoとなるまで電磁弁24が開放されたままで水素が充填される。
【0062】
5.効果等
本開示によれば、複数のレセプタクル及び複数の水素タンクを有する場合に、水素充填装置側の状況に応じて効率よく不足なく水素を充填することができる。
【0063】
以上説明した例は2つのレセプタクル及び4つの水素タンクを具備する例であるが、レセプタクル及び水素タンクの員数は複数具備されていれば特に限定されることはない。すなわち、1つのレセプタクルとこれに割り当てられた水素タンクとからなる独立した水素流路が3つ以上具備され、電磁弁が2つ以上備えられる形態であってもよい。
【0064】
また、上記の説明では独立した水素流路において1つのレセプタクルに対していずれも2つの水素タンクが割り当てられていたが、1つのレセプタクルに割り当てられる水素タンクの員数は等しい必要はなく異なっていてもよい。これは例えば水素タンクの容量で割り当てる水素タンクの員数を調整することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 車両
10 燃料電池ユニット
20 水素貯蔵装置
21 水素タンク
22 レセプタクル
23 分配器
24 電磁弁
25 通信装置
26 圧力センサ
30 制御装置
50 水素充填装置
53a ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6