IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通テン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電源制御装置および電源制御方法 図1
  • 特開-電源制御装置および電源制御方法 図2
  • 特開-電源制御装置および電源制御方法 図3
  • 特開-電源制御装置および電源制御方法 図4
  • 特開-電源制御装置および電源制御方法 図5
  • 特開-電源制御装置および電源制御方法 図6
  • 特開-電源制御装置および電源制御方法 図7
  • 特開-電源制御装置および電源制御方法 図8
  • 特開-電源制御装置および電源制御方法 図9
  • 特開-電源制御装置および電源制御方法 図10
  • 特開-電源制御装置および電源制御方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181682
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】電源制御装置および電源制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20231218BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231218BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20231218BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20231218BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20231218BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H02J7/34 B
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
B60L58/18
B60L1/00 L
B60L3/00 J
B60R16/02 645C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094943
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
(72)【発明者】
【氏名】吉村 実
(72)【発明者】
【氏名】木村 康臣
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB01
5G503CC02
5G503DA17
5G503DA18
5G503FA06
5G503GB03
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB09
5H125BC25
5H125EE26
5H125EE27
5H125EE48
5H125EE70
(57)【要約】
【課題】イグニッションスイッチがオフの期間に、副電源の電力損失を抑制しつつ、副電源から負荷に電力を供給することができる電源制御装置および電源制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る電源制御装置は、副電源と、第1経路と、第2経路と、制御部とを備える。副電源は、主電源の出力電圧より低い出力電圧を有し、車両のイグニッションスイッチがオフの期間に作動する負荷群に電力を供給可能である。第1経路は、副電源の出力電圧をDCDCコンバータを介して昇圧して負荷群に電力供給する。第2経路は、副電源の出力電圧をスイッチを介して負荷群に電力供給する。制御部は、イグニッションスイッチがオフの期間に、負荷群のうち副電源の出力電圧より高い電圧で作動する高圧負荷に電力供給する場合は第1経路を選択し、副電源の出力電圧で作動する低圧負荷に電力供給する場合は第2経路を選択する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源の出力電圧より低い出力電圧を有し、車両のイグニッションスイッチがオフの期間に作動する負荷群に電力を供給可能な副電源と、
前記副電源の出力電圧をDCDCコンバータを介して昇圧して前記負荷群に電力供給する第1経路と、
前記副電源の出力電圧をスイッチを介して前記負荷群に電力供給する第2経路と、
前記イグニッションスイッチがオフの期間に、前記負荷群のうち前記副電源の出力電圧より高い電圧で作動する高圧負荷に電力供給する場合は前記第1経路を選択し、前記副電源の出力電圧で作動する低圧負荷に電力供給する場合は前記第2経路を選択する制御部と
を備える電源制御装置。
【請求項2】
前記高圧負荷および前記低圧負荷と電源入力ラインとの間には、それぞれ負荷スイッチが設けられ、
前記制御部は、
前記高圧負荷および前記低圧負荷のうち、前記イグニッションスイッチがオフの期間に作動する負荷に対応する負荷スイッチをオンし、作動しない負荷に対応する負荷スイッチをオフする、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記イグニッションスイッチがオンの期間に、前記副電源の蓄電量が所定蓄電量未満になると、前記主電源の出力電圧を前記DCDCコンバータを介して降圧して前記副電源に電力供給し、前記副電源を充電する、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記主電源の電力を前記負荷群に供給する第1系統と、
前記副電源の電力を前記負荷群に供給する第2系統と
を備え、
前記制御部は、
前記第1系統による前記負荷群への電力供給中に、前記第1系統が失陥した場合、前記第2系統による電力供給に切り替える、
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項5】
主電源の出力電圧より低い出力電圧を有し、車両のイグニッションスイッチがオフのときに作動する負荷群に電力を供給可能な副電源と、
前記副電源の出力電圧をDCDCコンバータを介して昇圧して前記負荷群に電力供給する第1経路と、
前記副電源の出力電圧をスイッチを介して前記負荷群に電力供給する第2経路と、
前記負荷群への給電制御を行う制御部と
を備える電源制御装置の前記制御部が、
前記イグニッションスイッチがオフの期間に、前記負荷群のうち前記副電源の出力電圧より高い電圧で作動する高圧負荷に電力供給する場合は前記第1経路を選択し、前記副電源の出力電圧で作動する低圧負荷に電力供給する場合は前記第2経路を選択する
電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電源制御装置および電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のイグニッションスイッチがオンの期間に、主電源から負荷に電力を供給し、イグニッションスイッチがオフの期間に負荷を作動させる場合には、主電源よりも出力電圧が低い副電源から負荷に電力を供給する電源制御装置がある。電源制御装置は、副電源による電力供給を行う場合、例えば、副電源の出力電圧をDCDCコンバータによって昇圧して、負荷に電力を供給する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-57179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、イグニッションスイッチがオフの期間に作動させる負荷によっては、主電源よりも出力電圧が低い副電源の出力電圧で作動できるものがある。この場合、電源制御装置は、副電源の出力電圧を昇圧して負荷に電力を供給するとDCDCコンバータにおいて電力損失が生じる。
【0005】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、イグニッションスイッチがオフの期間に、副電源の電力損失を抑制しつつ、副電源から負荷に電力を供給することができる電源制御装置および電源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る電源制御装置は、副電源と、第1経路と、第2経路と、制御部とを備える。副電源は、主電源の出力電圧より低い出力電圧を有し、車両のイグニッションスイッチがオフの期間に作動する負荷群に電力を供給可能である。第1経路は、前記副電源の出力電圧をDCDCコンバータを介して昇圧して前記負荷群に電力供給する。第2経路は、前記副電源の出力電圧をスイッチを介して前記負荷群に電力供給する。制御部は、前記イグニッションスイッチがオフの期間に、前記負荷群のうち前記副電源の出力電圧より高い電圧で作動する高圧負荷に電力供給する場合は前記第1経路を選択し、前記副電源の出力電圧で作動する低圧負荷に電力供給する場合は前記第2経路を選択する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様に係る電源制御装置および電源制御方法は、イグニッションスイッチがオフの期間に、副電源の電力損失を抑制しつつ、副電源から負荷に電力を供給することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る電源制御装置の構成例を示す説明図である。
図2図2は、実施形態に係る高圧負荷の一例を示す説明図である。
図3図3は、実施形態に係る低圧負荷の一例を示す説明図である。
図4図4は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図5図5は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図6図6は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図7図7は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図8図8は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図9図9は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図10図10は、実施形態に係る電源制御装置の制御部がIGオン中に実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、実施形態に係る電源制御装置の制御部がIGオフ中に実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、電源制御装置および電源制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。実施形態に係る電源制御装置は、車両に搭載される複数の電気負荷への給電制御を行う装置である。
【0010】
[1.電源制御装置1の構成例]
図1は、実施形態に係る電源制御装置1の構成例を示す説明図である。図1に示すように、電源制御装置1は、主電源10と、DCDCコンバータ(以下、「DCDC11」と記載する)と、車両12と、複数の高圧負荷101と、複数の低圧負荷102とに接続される。
【0011】
車両12は、車両12のイグニッションスイッチ(以下、「IG」と記載する)がオンされた場合に、その旨を示すIGオン信号を、IG信号入力ライン13を介して電源制御装置1に出力する。また、車両12は、IGがオフされた場合に、その旨を示すIGオフ信号を、IG信号入力ライン13を介して電源制御装置1に出力する。
【0012】
主電源10は、車載バッテリであり、例えば、鉛バッテリである。主電源10は、鉛バッテリ以外の任意の2次バッテリであってもよい。ここでは、主電源10の出力電圧が12V~16Vであるものとして説明する。
【0013】
DCDC11は、車両12がエンジン車両である場合に、エンジンの回転エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する発電機である。また、DCDC11は、車両12が電気自動車またはハイブリッド自動車の場合、車両を走行させるモータに電力を供給する図示しない高圧バッテリの出力電圧を降圧して、主電源10または後述する副電源20を充電する電力変換装置である。
【0014】
複数の高圧負荷101は、後述する副電源20の出力電圧より高い電圧で作動する負荷群である。また、複数の低圧負荷102は、後述する副電源20の出力電圧で作動する負荷群である。
【0015】
ここで、図2および図3を参照して、高圧負荷101および低圧負荷102の一例について説明する。図2は、実施形態に係る高圧負荷101の一例を示す説明図である。図3は、実施形態に係る低圧負荷102の一例を示す説明図である。
【0016】
図2に示すように、高圧負荷101には、車両12の走行用の高圧負荷101と、非走行用の高圧負荷101とがある。また、走行用の高圧負荷101には、駐車中、つまりIGがオフの期間に使用される可能性がある高圧負荷101と、駐車中に使用される可能性がない走行時専用の高圧負荷101とがある。
【0017】
走行用の高圧負荷101のうち、駐車中に使用される可能性がある高圧負荷101は、例えば、ヘッドライト、テールライト、およびクラクションなどである。走行用の高圧負荷101のうち、駐車中に使用される可能性がない高圧負荷101、すなわち走行時専用の負荷101は、例えば、パワーステアリング装置、シフトバイワイヤ装置、およびエンジン制御ECU(Electronic Control Unit)などである。
【0018】
非走行用の高圧負荷101のうち、駐車中に使用される可能性がある高圧負荷101は、例えば、オーディオ装置、リプロ(リプログラミング)用装置、および電池監視ECUなどである。
【0019】
なお、ここでは、非走行用の高圧負荷101のうち、駐車中に使用される可能性がない高圧負荷101がない場合について説明するが、車両12には、駐車中に使用される可能性がない高圧負荷101が搭載されていてもよい。これら全ての高圧負荷101は、主電源10の出力電圧である12V~16Vの電圧で作動する。また、駐車中に使用される可能性がある高圧負荷101は、走行中にも使用される。
【0020】
また、図3に示すように、低圧負荷102には、車両12の走行用の低圧負荷102と、非走行用の低圧負荷102とがある。走行用の低圧負荷102のうち、駐車中に使用される可能性がある低圧負荷102は、例えば、ドライブレコーダおよび衝撃検知センサなどである。非走行用の低圧負荷102のうち、駐車中に使用される可能性がある低圧負荷102は、例えば、USB(登録商標)給電装置、通信装置、およびイモビライザなどである。
【0021】
なお、ここでは、走行用または非走行用の低圧負荷102のうち、駐車中に使用される可能性がない低圧負荷102がない場合について説明するが、車両12には、駐車中に使用される可能性がない低圧負荷102が搭載されていてもよい。また、駐車中に使用される可能性がある低圧負荷102は、走行中にも使用される。
【0022】
これら全ての低圧負荷102は、主電源10の最低出力電圧である12V未満の電圧で作動する。例えば、低圧負荷102は、主電源10よりも出力電圧が低い後述する副電源20の出力電圧で作動する。ただし、低圧負荷102の定格電圧は、主電源10の電圧以上に設定されており、主電源10の電圧でも熱損失が増えるものの動作可能である。
【0023】
図1の説明に戻り、電源制御装置1は、主電源10の電力を高圧負荷101に供給する第1系統110と、副電源20と、副電源20の電力を高圧負荷101および低圧負荷102に供給する第2系統120と、制御部3とを備える。
【0024】
副電源20は、第1系統110が失陥した場合に、主電源10に代わって高圧負荷101に電力を供給するバックアップ用の電源である。また、副電源20は、主電源10の出力電圧より低い出力電圧を有し、高圧負荷101および低圧負荷102のうち、車両12のIGがオフの期間に作動する負荷群に電力を供給可能な電源である。
【0025】
副電源20は、例えば、リチウムイオンバッテリである。なお、副電源20は、リチウムイオンバッテリ以外の任意の2次バッテリであってもよい。ここでは、副電源20の出力電圧が主電源10の出力電圧よりも低い10Vであるものとして説明する。
【0026】
さらに、電源制御装置1は、系統間スイッチ40と、第1~第8スイッチ41~48と、ダイオード51,52と、電流センサ53,54,55,56と、DCDCコンバータ(以下、「DCDC21」と記載する)とを備える。
【0027】
系統間スイッチ40は、第1系統110と第2系統120とを接続および切断可能なスイッチである。第1スイッチ41は、主電源10と第1系統110とを接続および切断可能なスイッチである。なお、系統間スイッチ40は、昇降圧可能な双方向DCDCコンバータであってもよい。
【0028】
第2スイッチ42は、副電源20と第2系統120とを接続および切断可能なスイッチである。第3スイッチ43は、高圧負荷101および低圧負荷102に電力を供給する電源入力ライン130と、第1系統110とを接続および切断可能なスイッチである。第4スイッチ44は、電源入力ライン130と、第2系統120とを接続および切断可能なスイッチである。
【0029】
第5スイッチ45および第6スイッチ46は、電源入力ライン130と、各高圧負荷101とを接続および切断可能な負荷スイッチである。第7スイッチ47および第8スイッチ48は、電源入力ライン130と、各低圧負荷102とを接続および切断可能な負荷スイッチである。
【0030】
ダイオード51は、第3スイッチ43と電源入力ライン130との間に接続される。ダイオード51は、アノードが第3スイッチ43に接続され、カソードが電源入力ライン130に接続される。ダイオード52は、第4スイッチ44と電源入力ライン130との間に接続される。ダイオード52は、アノードが第4スイッチ44に接続され、カソードが電源入力ライン130に接続される。
【0031】
電流センサ53,54は、電源入力ライン130から各高圧負荷101に流れる電流を検出し、検出結果を制御部3に出力する。電流センサ55,56は、電源入力ライン130から各低圧負荷102に流れる電流を検出し、検出結果を制御部3に出力する。
【0032】
DCDC21は、副電源20と第2系統120との間に、第2スイッチ42に対して並列に接続される。DCDC21は、副電源20の出力電圧を主電源10の出力電圧に相当する電圧になるまで昇圧して第2系統120に出力する機能と、主電源10の出力電圧を副電源20の充電電圧に相当する電圧まで降圧して副電源20に出力する機能とを備える。
【0033】
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。制御部3は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、系統間スイッチ40、第1~第8スイッチ41~48、およびDCDC21の動作を制御して高圧負荷101および低圧負荷102への給電制御を行う。
【0034】
なお、制御部3は、一部の機能または全部の機能がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0035】
また、電源制御装置1は、第1電圧センサ61と、第2電圧センサ62とを備える。第1電圧センサ61は、第1系統110の電圧を検出し、検出結果を制御部3に出力する。第2電圧センサ62は、第2系統120の電圧を検出し、検出結果を制御部3に出力する。
【0036】
[2.電源制御装置1の動作例]
次に、図4図9を参照して、電源制御装置1の動作例について説明する。図4図9は、実施形態に係る電源制御装置1の動作例を示す説明図である。図4図9では、主電源10の出力電圧が供給される給電線を太実線によって示しており、副電源20の出力電圧が供給される給電線を太点線によって示している。
【0037】
[2.1.IGオン中の電源制御装置1の動作例]
まず、図4図6を参照して、IGオン中の電源制御装置1の動作例について説明する。図4に示すように、制御部3は、車両12からIGオン信号が入力されると、第1スイッチ41および第3~第8スイッチ43~48をオンし、系統間スイッチ40および第2スイッチ42をオフして、主電源10の電力を高圧負荷101および低圧負荷102に供給する。
【0038】
その後、制御部3は、副電源20から監視ライン22を介して取得する副電源20の蓄電量を監視し、副電源20の蓄電量が所定蓄電量未満になると、図5に示すように、副電源20を充電する。所定蓄電量は、例えば、副電源20のSOC(State Of Charge)が80%のときの蓄電量である。
【0039】
具体的には、制御部3は、IGがオンの期間に副電源20の蓄電量が所定蓄電量未満になると、系統間スイッチ40をオンし、DCDC21を降圧動作させ、主電源10の出力電圧をDCDC21を介して降圧して副電源20に電力供給し、副電源20を充電する。
【0040】
これにより、電源制御装置1は、IGオン中に、副電源20の蓄電量が所定蓄電量未満になった場合に、主電源10から高圧負荷101への給電を継続したまま、副電源20を充電することができる。制御部3は、副電源20の蓄電量が所定蓄電量以上になるまで回復すると、系統間スイッチ40をオフし、DCDC21の降圧動作を停止させて、副電源20の充電を終了する。
【0041】
また、電源制御装置1は、第1系統110による高圧負荷101への電力供給中に、第1系統110が失陥すると、高圧負荷101に電力が供給されなくなる。このため、制御部3は、IGオン中に、第1系統110が失陥しているか否かを判定する。
【0042】
例えば、制御部3は、第1電圧センサ61から入力される第1系統110の電圧の検出結果が所定時間継続して地絡閾値を下回ると、第1系統110の失陥としての地絡を検知する。また、制御部3は、第2電圧センサ62から入力される第2系統120の電圧の検出結果が所定時間継続して地絡閾値を下回ると、第2系統120の失陥としての地絡を検知する。
【0043】
制御部3は、第1系統110による高圧負荷101への電力供給中に、第1系統110が失陥した場合、第1系統110による高圧負荷101への電力供給を、第2系統120による電力供給に切り替える。
【0044】
具体的には、図6に示すように、制御部3は、DCDC21を昇圧動作させ、副電源20の出力電圧をDCDC21によって主電源10の出力電圧に相当する電圧まで昇圧して高圧負荷101に供給する。これにより、電源制御装置1は、第1系統110が失陥しても、第2系統120を使用して、副電源20から高圧負荷101に電力を供給するバックアップ制御を行うことができる。なお、第2系統120が失陥した場合、制御部3は、第7~第8スイッチ47,48をオフする。それにより、バックアップに必要な高圧負荷101への電力供給時間が長くなり、バックアップ制御時間を長くすることができる。
【0045】
[2.2.IGオフ中の電源制御装置1の動作例]
次に、図7図9を参照して、IGオフ中の電源制御装置1の動作例について説明する。図7に示すように、制御部3は、車両12からIG信号入力ライン13を介してIGオフ信号が入力されると、第1スイッチ41をオフし、第2スイッチ42をオンする。
【0046】
さらに、制御部3は、高圧負荷101および低圧負荷102のうち、IGがオフの期間に作動する負荷に対応する負荷スイッチをオンし、作動しない負荷に対応する負荷スイッチをオフする。
【0047】
ここでは、第5スイッチ45に接続された高圧負荷101と、第7,第8スイッチ47,48に接続された低圧負荷102とがIGオフ中に作動する可能性があるものとする。また、第6スイッチ46に接続された高圧負荷101がIGオフ中に作動する可能性がないものとする。
【0048】
この場合、制御部3は、車両12からIG信号入力ライン13を介してIGオフ信号が入力されると、第6スイッチ46をオフする。このように、制御部3は、第6スイッチ46に接続されたIGオフ中に動作する可能性がない高圧負荷101への給電経路を遮断し、不要な暗電流の消費を抑制することで、副電源20による給電時間を長くすることができる。
【0049】
なお、図7に示す状態では、第5スイッチ45に接続された高圧負荷101と、第7,第8スイッチ47,48に接続された低圧負荷102とに副電源20の出力電圧が印加されるが、これらの高圧負荷101および低圧負荷102が作動しなければ、暗電流以上の電力は消費されない。
【0050】
その後、制御部3は、IGがオフの期間に、高圧負荷101または低圧負荷102が作動を開始したか否かを判定する。制御部3は、例えば、電流センサ53によって電流が検出された場合に、第5スイッチ45に接続された高圧負荷101が動作を開始したと判定する。また、制御部3は、電流センサ55によって電流が検出された場合に、第7スイッチ47に接続された低圧負荷102が動作を開始したと判定する。また、制御部3は、電流センサ56によって電流が検出された場合に、第8スイッチ48に接続された低圧負荷102が動作を開始したと判定する。
【0051】
制御部3は、IGがオフの期間に、第5スイッチ45に接続された高圧負荷101が動作を開始したと判定した場合、図8に示すように、第2スイッチ42をオフし、DCDC21を昇圧動作させる。
【0052】
こうして、制御部3は、副電源20の出力電圧をDCDC21を介して昇圧して負荷群に電力供給する第1経路31を使用して、第5スイッチ45に接続される高圧負荷101に副電源20の出力電圧よりも高電圧の電力を供給する。このとき、電源制御装置1は、第6スイッチ46をオフしているので、不要な暗電流の発生を抑制できる。
【0053】
なお、このときは低圧負荷102にも第7スイッチ47、第8スイッチ48を介して電力が供給されるが、低圧負荷102が作動しなければ、低圧負荷102では暗電流以上の電力は消費されない。
【0054】
また、制御部3は、IGがオフの期間に、第7,第8スイッチ47,48に接続された低圧負荷102が動作を開始したと判定した場合、図9に示すように、第2,第7,第8スイッチ42,47,48をオンした状態に維持する。
【0055】
こうして、制御部3は、副電源20の出力電圧を昇圧することなく、第2スイッチ42を介して負荷群に電力供給する第2経路32を使用して、第7,第8スイッチ47,48に接続された低圧負荷102に副電源20の出力電圧の電力を供給する。このとき、電源制御装置1は、第6スイッチ46をオフしているので、不要な暗電流の発生を抑制できる。
【0056】
なお、このときは第5スイッチ45を介して高圧負荷101にも電力が供給されるが、高圧負荷101が作動しなければ、高圧負荷101では暗電流以上の電力は消費されない。この状態で第5スイッチ45に接続される高圧負荷101も作動した場合は、図8に示したように、副電源20の出力電圧をDCDC21を介して昇圧して負荷群に電力供給する第1経路31を使用して、第5スイッチ45に接続される高圧負荷101に副電源20の出力電圧よりも高電圧の電力を供給する。
【0057】
また、制御部3は、IGがオフの期間に、作動を開始した負荷が高圧負荷101か低圧負荷102かを検出するように構成されてもよい。この場合、制御部3は、複数の高圧負荷101および複数の低圧負荷102のうち、IGがオフの期間に、作動を開始した高圧負荷101または低圧負荷102に電力を供給する。
【0058】
一方、制御部3は、IGがオフの期間に、作動していない高圧負荷101および低圧負荷102への給電を停止する。これにより、電源制御装置1は、IGがオフの期間に、副電源20の消費電力を最小限に抑えることができる。
【0059】
また、制御部3は、IGがオフの期間に、負荷群のうち副電源20の出力電圧より高い電圧で作動する高圧負荷101に電力供給する場合は第1経路31を選択し、副電源20の出力電圧で作動する低圧負荷102に電力供給する場合は第2経路32を選択する。
【0060】
つまり、制御部3は、IGがオフの期間に、副電源20の出力電圧で作動する低圧負荷102に電力供給する場合には、DCDC21に比べて電力損失が極めて小さな第2スイッチ42を介して副電源20から低圧負荷102に電力を供給する。これにより、電源制御装置1は、IGがオフの期間に、副電源20の電力損失を抑制しつつ、副電源20から低圧負荷102に電力を供給することができる。
【0061】
また、電源制御装置1は、IGがオフの期間に、副電源20から高圧負荷101または低圧負荷102に電力供給する場合には、冗長電源システムにおける第1系統110のバックアップ用として備える第2系統120を使用して電力供給を行う。これにより、電源制御装置1は、IGオフ中の給電のために新たな構成を追加することなく、副電源20から高圧負荷101または低圧負荷102に電力を供給することができる。
【0062】
[3.電源制御装置1の制御部3が実行する処理]
次に、図10および図11を参照して実施形態に係る電源制御装置1の制御部が実行する処理について説明する。図10は、実施形態に係る電源制御装置1の制御部3がIGオン中に実行する処理の一例を示すフローチャートである。図11は、実施形態に係る電源制御装置1の制御部3がIGオフ中に実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0063】
電源制御装置1の制御部3は、IGがオンされると、IGがオフされるまでの間、図10に示す処理を繰り返し実行する。具体的には、図10に示すように、制御部3は、IGがオンされると、まず、系統間スイッチ40をオフし、第1,第3~第8スイッチ41,43,44,45,46,47,48をオンし、第2スイッチ42をオフする(ステップS101)。こうして、電源制御装置1は、主電源10から第1系統110を介して高圧負荷101および低圧負荷102に電力を供給する。
【0064】
続いて、制御部3は、副電源20の蓄電量が所定蓄電量未満か否かを判定する(ステップS102)。制御部3は、副電源20の蓄電量が所定蓄電量未満でないと判定した場合(ステップS102,No)、処理をステップS107へ移す。
【0065】
また、制御部3は、副電源20の蓄電量が所定蓄電量未満であると判定した場合(ステップS102,Yes)、系統間スイッチ40をオンし(ステップS103)、DCDC21を降圧動作させ(ステップS104)、主電源10の出力電圧をDCDC21によって昇圧して副電源20に供給し、副電源20を充電する。このとき、DCDC11は、主電源10の出力電圧が十分に高くない場合には、主電源10の出力電圧が十分な高さになるまで主電源10を充電する。
【0066】
その後、制御部3は、副電源20の蓄電量が所定蓄電量以上になったか否かを判定する(ステップS105)。制御部3は、副電源20の蓄電量が所定蓄電量以上になっていないと判定した場合(ステップS105,No)、処理をステップS104へ移す。
【0067】
また、制御部3は、副電源20の蓄電量が所定蓄電量以上になったと判定した場合(ステップS105,Yes)、系統間スイッチ40をオフし(ステップS106)、第1系統110が失陥しているか否かを判定する(ステップS107)。制御部3は、第1系統110が失陥していないと判定した場合(ステップS107,No)、処理を終了し、ステップS101から再度処理を開始する。
【0068】
制御部3は、第1系統110が失陥していると判定した場合(ステップS107,Yes)、DCDC21を昇圧動作させ(ステップS108)、副電源20の出力電圧をDCDC21によって昇圧して高圧負荷101に電力を供給する。これにより、電源制御装置1は、第1系統110が失陥しても、副電源20によってフェイルセーフ制御を行うことができる。その後、制御部3は、処理を終了する。
【0069】
その後、制御部3は、IGがオフされると、図11に示す処理を実行する。ここでは、第5スイッチ45に接続される高圧負荷101と第7スイッチ47、第8スイッチ48に接続される低圧負荷102がIGオフ中に作動する可能性のある負荷であり、第6スイッチ46に接続される高圧負荷101がIGオフ中に作動する可能性のない負荷である場合について説明する。
【0070】
この場合、図11に示すように、制御部3は、IGがオフされると、まず、第1,第6スイッチ41,46をオフし、第2スイッチ42オンする(ステップS201)。これにより、第5スイッチ45に接続される高圧負荷101および低圧負荷102と副電源20とが接続されることになるが、このとき、高圧負荷101および低圧負荷102は、作動していなければ、副電源20から供給される電力を消費しない。
【0071】
その後、制御部3は、高圧負荷101が作動を開始したか否かを判定する(ステップS202)。このとき、制御部3は、電流センサ53によって電流が検出された場合に、電流センサ53に接続された高圧負荷101が作動を開始したと判定する。
【0072】
制御部3は、高圧負荷101が作動を開始したと判定した場合(ステップS202,Yes)、第2スイッチ42をオフし(ステップS203)、DCDC21を昇圧動作させる(ステップS204)。こうして、制御部3は、副電源20の出力電圧をDCDC21によって昇圧して高圧負荷101に電力を供給し、処理を終了する。
【0073】
また、制御部3は、高圧負荷101が作動を開始していないと判定した場合(ステップS202,No)、低圧負荷102が動作を開始したか否かを判定する(ステップS205)。制御部3は、電流センサ55,56によって電流が検出された場合に、電流センサ55,56に接続された低圧負荷102が作動を開始したと判定する。
【0074】
制御部3は、低圧負荷102が動作を開始していないと判定した場合(ステップS205,No)、処理を終了し、ステップS201から再度処理を開始する。また、制御部3は、低圧負荷102が動作を開始したと判定した場合(ステップS205,Yes)、第2スイッチ42をオンし(ステップS206)、処理を終了する。こうして、制御部3は、DCDC21を介さずに、副電源20の出力電圧を昇圧することなく、副電源20から低圧負荷102に電力を供給する。
【0075】
なお、上述した実施形態では、制御部3がIGのオフ中に、高圧負荷101の作動を検出した場合に第1経路31を選択し、低圧負荷102の作動を検出した場合に第2経路32を選択して給電したが、これは一例である。
【0076】
例えば、制御部3は、IGがオフの期間に作動する高圧負荷101または低圧負荷102が予め決まっている場合には、IGオフ中に作動する高圧負荷101または低圧負荷102を記憶しておく。
【0077】
そして、制御部3は、IGがオフの期間に作動する負荷が高圧負荷101の場合、IGオフ信号が入力されると、例えば、図8に示す状態にし、さらに、第7~第8スイッチ47,48をオフするように制御する。また、制御部3は、IGがオフの期間に作動する負荷が低圧負荷102の場合、IGオフ信号が入力されると、例えば、図9に示す状態にし、さらに、第5スイッチ45をオフするように制御する。これにより、電源制御装置1は、IGがオフの期間に、副電源20の電力損失を抑制しつつ、副電源20から低圧負荷102に電力を供給することができると共に、暗電流をさらに低減することができる。
【0078】
[4.付記]
付記として、本発明の特徴を以下の通り示す。
(1)
主電源の出力電圧より低い出力電圧を有し、車両のイグニッションスイッチがオフの期間に作動する負荷群に電力を供給可能な副電源と、
前記副電源の出力電圧をDCDCコンバータを介して昇圧して前記負荷群に電力供給する第1経路と、
前記副電源の出力電圧をスイッチを介して前記負荷群に電力供給する第2経路と、
前記イグニッションスイッチがオフの期間に、前記負荷群のうち前記副電源の出力電圧より高い電圧で作動する高圧負荷に電力供給する場合は前記第1経路を選択し、前記副電源の出力電圧で作動する低圧負荷に電力供給する場合は前記第2経路を選択する制御部と
を備える電源制御装置。
(2)
前記高圧負荷および前記低圧負荷と電源入力ラインとの間には、それぞれ負荷スイッチが設けられ、
前記制御部は、
前記高圧負荷および前記低圧負荷のうち、前記イグニッションスイッチがオフの期間に作動する負荷に対応する負荷スイッチをオンし、作動しない負荷に対応する負荷スイッチをオフする、
前記(1)に記載の電源制御装置。
(3)
前記制御部は、
前記イグニッションスイッチがオンの期間に、前記副電源の蓄電量が所定蓄電量未満になると、前記主電源の出力電圧を前記DCDCコンバータを介して降圧して前記副電源に電力供給し、前記副電源を充電する、
前記(1)または(2)に記載の電源制御装置。
(4)
前記主電源の電力を前記負荷群に供給する第1系統と、
前記副電源の電力を前記負荷群に供給する第2系統と
を備え、
前記制御部は、
前記第1系統による前記負荷群への電力供給中に、前記第1系統が失陥した場合、前記第2系統による電力供給に切り替える、
前記(1)~(3)のいずれか一つに記載の電源制御装置。
(5)
主電源の出力電圧より低い出力電圧を有し、車両のイグニッションスイッチがオフのときに作動する負荷群に電力を供給可能な副電源と、
前記副電源の出力電圧をDCDCコンバータを介して昇圧して前記負荷群に電力供給する第1経路と、
前記副電源の出力電圧をスイッチを介して前記負荷群に電力供給する第2経路と、
前記負荷群への給電制御を行う制御部と
を備える電源制御装置の前記制御部が、
前記イグニッションスイッチがオフの期間に、前記負荷群のうち前記副電源の出力電圧より高い電圧で作動する高圧負荷に電力供給する場合は前記第1経路を選択し、前記副電源の出力電圧で作動する低圧負荷に電力供給する場合は前記第2経路を選択する
電源制御方法。
【0079】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 電源制御装置
10 主電源
11,21 DCDC
12 車両
13 IG信号入力ライン
20 副電源
22 監視ライン
3 制御部
31 第1経路
32 第2経路
40 系統間スイッチ
41 第1スイッチ
42 第2スイッチ
43 第3スイッチ
44 第4スイッチ
45 第5スイッチ
46 第6スイッチ
47 第7スイッチ
48 第8スイッチ
51,52 ダイオード
53,54,55,56 電流センサ
61 第1電圧センサ
62 第2電圧センサ
101 高圧負荷
102 低圧負荷
110 第1系統
120 第2系統
130 電源入力ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11