(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181687
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】端揃い状態判定システム、端揃い状態判定装置、端揃い状態判定方法、ならびに鋼材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20231218BHJP
G06V 10/145 20220101ALI20231218BHJP
【FI】
G06T7/00 610A
G06V10/145
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094951
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 裕大
(72)【発明者】
【氏名】入江 英之
(72)【発明者】
【氏名】大野 紘明
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA03
5L096BA18
5L096CA17
5L096FA09
5L096FA53
5L096HA07
(57)【要約】
【課題】積まれた物体の端揃い状態の判定を自動的に行うことができる技術を提供する。
【解決手段】複数積まれた状態の断面が同一形状の物体に対し、平面部材を押し当てて物体の端を揃える端揃え作業後に、積まれた物体の端揃い状態の判定を行う端揃い状態判定システムは、積まれた物体に対して線状光を照射する線状光照射手段と、線状光が照射された、積まれた物体を撮像する撮像手段と、線状光が照射された状態で撮像手段により撮像された、積まれた物体の画像を取得する画像取得手段と、画像取得手段で取得された画像に対し、積まれた物体の反射光形状の画像が得られるように画像処理を行う画像処理手段と、画像処理により得られた画像に基づいて積まれた物体の端揃い判定を行う判定手段とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が同一形状で複数積まれた物体の端揃い状態の判定を行う端揃い状態判定システムであって、
前記積まれた物体に対して線状光を照射する線状光照射手段と、
前記線状光が照射された、前記積まれた物体を撮像する撮像手段と、
前記線状光が照射された状態で前記撮像手段により撮像された、前記積まれた物体の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段で取得された画像に対し、前記積まれた物体の反射光形状の画像が得られるように画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理により得られた画像に基づいて前記積まれた物体の端揃い判定を行う判定手段と、
を有する、端揃い状態判定システム。
【請求項2】
前記積まれた物体は平面部材に押し当てられ静止した状態である、請求項1に記載の端揃い状態判定システム。
【請求項3】
前記線状光照射手段は、前記積まれた物体の積み方向および前記平面部材に対し平行、かつ前記積まれた物体の全数に線状光が照射されるように構成される、請求項1に記載の端揃い状態判定システム。
【請求項4】
前記撮像手段は、前記積まれた物体に照射された前記線状光源の反射光をすべて撮像可能になるようにその配置および視野が設定され、かつ前記積まれた物体それぞれを識別可能な画素分解能を備える、請求項1に記載の端揃い状態判定システム。
【請求項5】
前記判定手段は、前記積まれた物体の総数、前記積まれた物体ごとの相対位置を含む、事前に把握できる情報について、前記画像取得手段で取得された画像から得られた情報と比較し、端揃い状態を把握する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の端揃い状態判定システム。
【請求項6】
前記判定手段は、事前に取得した正解情報画像と、前記平面部材の押し当て後のタイミングで撮像した画像とを比較して端揃い判定を行う、請求項2に記載の端揃い状態判定システム。
【請求項7】
前記判定手段は、前記積まれた物体の1つずつの特徴点を抽出し、その特徴点の数が前記正解情報画像と判定画像とで一致するか否かにより端揃い判定を行う、請求項6に記載の端揃い状態判定システム。
【請求項8】
前記積まれた物体は鋼材である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の端揃い状態判定システム。
【請求項9】
前記線状光はレーザー光である、請求項1から請求項4にいずれか一項に記載の端揃い状態判定システム。
【請求項10】
断面が同一形状で複数積まれた物体の端揃い状態の判定を行う端揃い状態判定装置であって、
線状光が照射された状態で撮像手段により撮像された、前記積まれた物体の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段で取得された画像に対し、前記積まれた物体の反射光形状の画像が得られるように画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理により得られた画像に基づいて前記積まれた物体の端揃い判定を行う判定手段と、
を有する、端揃い状態判定装置。
【請求項11】
前記積まれた物体は平面部材に押し当てられ静止した状態である、請求項10に記載の端揃い状態判定装置。
【請求項12】
前記判定手段は、前記積まれた物体の総数、前記積まれた物体ごとの相対位置を含む、事前に把握できる情報について、前記画像取得手段で取得された画像から得られた情報と比較し、端揃い状態を把握する、請求項10に記載の端揃い状態判定装置。
【請求項13】
前記判定手段は、事前に取得した正解情報画像と、前記平面部材の押し当て後のタイミングで撮像した画像とを比較して端揃い判定を行う、請求項11に記載の端揃い状態判定装置。
【請求項14】
前記判定手段は、前記積まれた物体の1つずつの特徴点を抽出し、その特徴点の数が前記正解情報画像と判定画像とで一致するか否かにより端揃い判定を行う、請求項13に記載の端揃い状態判定装置。
【請求項15】
断面が同一形状で複数積まれた物体の端揃い状態の判定を行う端揃い状態判定方法であって、
前記積まれた物体に対して線状光を照射する工程と、
前記線状光が照射された、前記積まれた物体を撮像する工程と、
前記線状光が照射された状態で撮像された、前記積まれた物体の画像を取得する工程と、
前記取得された画像に対し、前記積まれた物体の反射光形状の画像が得られるように画像処理を行う工程と、
前記画像処理により得られた画像に基づいて前記積まれた物体の端揃い判定を行う工程と、
を有する、端揃い状態判定方法。
【請求項16】
前記積まれた物体は平面部材に押し当てられ静止した状態である、請求項15に記載の端揃い状態判定方法。
【請求項17】
前記撮像する工程は、前記積まれた物体に照射された前記線状光源の反射光をすべて撮像可能になるようにその配置および視野を設定し、かつ前記積まれた物体それぞれを識別可能な画素分解能で撮像する、請求項15に記載の端揃い状態判定方法。
【請求項18】
前記端揃い判定を行う工程は、前記積まれた物体の総数、前記積まれた物体ごとの相対位置を含む、事前に把握できる情報について、前記画像を取得する工程で取得された画像から得られた情報と比較し、端揃い状態を把握する、請求項15から請求項17のいずれか一項に記載の端揃い状態判定方法。
【請求項19】
前記端揃い判定を行う工程は、事前に取得した正解情報画像と、前記平面部材の押し当て後のタイミングで撮像した画像とを比較して端揃い判定を行う、請求項16に記載の端揃い状態判定方法。
【請求項20】
前記端揃い判定を行う工程は、前記積まれた物体の1つずつの特徴点を抽出し、その特徴点の数が前記正解情報画像と判定画像とで一致するか否かにより端揃い判定を行う、請求項19に記載の端揃い状態判定方法。
【請求項21】
加熱された鋼材を所定の形状になるまで圧延する工程と、
圧延された鋼材を冷却する工程と、
冷却された鋼材を所定の状態で積む工程と、
請求項1に記載の端揃い状態判定システムにより積まれた状態の前記鋼材の端揃い状態を判定する工程と、
を含む鋼材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積まれた物体の端揃い状態を判定する端揃い状態判定システム、端揃い状態判定装置、端揃い状態判定方法、ならびに鋼材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材製造ラインでは、加熱炉によって熱された鋼片は、圧延設備において所定の形状になるまで熱間圧延処理され、その後、冷却工程と矯正工程を経て製品としての鋼材となる。製造された鋼材は出荷のためパイリングという作業により特定のグループで積み上げられる。積み上げられた複数材は次工程にて全鋼材端面に刻印作業やラベル貼付け作業があるため、積まれている材すべての端面が誤差10mm程度の精度で揃っていることが好ましい。しかしパイリング作業において、鋼材の端面を誤差10mm程度に揃えながら積み上げることは非常に難しい。
【0003】
このため、手動操作で回転するテーブルロールにより搬送される積まれた鋼材端部をストッパーに衝突させることで端面を揃えている。このときの鋼材端面が揃っているか否かの判定は、従来、人間の目視により行っており、目視にて揃っていれば次工程送り、揃っていなければストッパーへの再衝突といったように次の行動を人間が決定している。この端揃い判定を自動で行うことができれば作業全体の自動化が見込める。
【0004】
特許文献1には、結束された棒鋼の端部の画像を撮影しその画像を処理することで棒鋼部分のみ抜出しその本数を計数する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、端部の画像を撮影するものではあるが、棒鋼のみをターゲットとしており、かつその本数の計数に特化しているため、端揃いの状態を把握することは困難である。
【0007】
したがって、本発明は、積まれた物体の端揃い状態の判定を自動的に行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の[1]~[21]の手段を提供する。
【0009】
[1]断面が同一形状で複数積まれた物体の端揃い状態の判定を行う端揃い状態判定システムであって、
前記積まれた物体に対して線状光を照射する線状光照射手段と、
前記線状光が照射された、前記積まれた物体を撮像する撮像手段と、
前記線状光が照射された状態で前記撮像手段により撮像された、前記積まれた物体の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段で取得された画像に対し、前記積まれた物体の反射光形状の画像が得られるように画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理により得られた画像に基づいて前記積まれた物体の端揃い判定を行う判定手段と、
を有する、端揃い状態判定システム。
【0010】
[2]前記積まれた物体は平面部材に押し当てられ静止した状態である、[1]に記載の端揃い状態判定システム。
【0011】
[3]前記線状光照射手段は、前記積まれた物体の積み方向および前記平面部材に対し平行、かつ前記積まれた物体の全数に線状光が照射されるように構成される、[1]に記載の端揃い状態判定システム。
【0012】
[4]前記撮像手段は、前記積まれた物体に照射された前記線状光源の反射光をすべて撮像可能になるようにその配置および視野が設定され、かつ前記積まれた物体それぞれを識別可能な画素分解能を備える、[1]に記載の端揃い状態判定システム。
【0013】
[5]前記判定手段は、前記積まれた物体の総数、前記積まれた物体ごとの相対位置を含む、事前に把握できる情報について、前記画像取得手段で取得された画像から得られた情報と比較し、端揃い状態を把握する、[1]から[4]のいずれか記載の端揃い状態判定システム。
【0014】
[6]前記判定手段は、事前に取得した正解情報画像と、前記平面部材の押し当て後のタイミングで撮像した画像とを比較して端揃い判定を行う、[2]に記載の端揃い状態判定システム。
【0015】
[7]前記判定手段は、前記積まれた物体の1つずつの特徴点を抽出し、その特徴点の数が前記正解情報画像と判定画像とで一致するか否かにより端揃い判定を行う、[6]に記載の端揃い状態判定システム。
【0016】
[8]前記積まれた物体は鋼材である、[1]から[4]のいずれかに記載の端揃い状態判定システム。
【0017】
[9]前記線状光はレーザー光である、[1]から[4]のいずれかに記載の端揃い状態判定システム。
【0018】
[10]断面が同一形状で複数積まれた物体の端揃い状態の判定を行う端揃い状態判定装置であって、
前記線状光が照射された状態で前記撮像手段により撮像された、前記積まれた物体の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段で取得された画像に対し、前記積まれた物体の反射光形状の画像が得られるように画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理により得られた画像に基づいて前記積まれた物体の端揃い判定を行う判定手段と、
を有する、端揃い状態判定装置。
【0019】
[11]前記積まれた物体は平面部材に押し当てられ静止した状態である、[10]に記載の端揃い状態判定装置。
【0020】
[12]前記判定手段は、前記積まれた物体の総数、前記積まれた物体ごとの相対位置を含む、事前に把握できる情報について、前記画像取得手段で取得された画像から得られた情報と比較し、端揃い状態を把握する、[10]に記載の端揃い状態判定装置。
【0021】
[13]前記判定手段は、事前に取得した正解情報画像と、前記平面部材の押し当て後のタイミングで撮像した画像とを比較して端揃い判定を行う、[11]に記載の端揃い状態判定装置。
【0022】
[14]前記判定手段は、前記積まれた物体の1つずつの特徴点を抽出し、その特徴点の数が前記正解情報画像と判定画像とで一致するか否かにより端揃い判定を行う、[13]に記載の端揃い状態判定装置。
【0023】
[15]断面が同一形状で複数積まれた物体の端揃い状態の判定を行う端揃い状態判定方法であって、
前記積まれた物体に対して線状光を照射する工程と、
前記線状光が照射された、前記積まれた物体を撮像する工程と、
前記線状光が照射された状態で撮像された、前記積まれた物体の画像を取得する工程と、
前記取得された画像に対し、前記積まれた物体の反射光形状の画像が得られるように画像処理を行う工程と、
前記画像処理により得られた画像に基づいて前記積まれた物体の端揃い判定を行う工程と、
を有する、端揃い状態判定方法。
【0024】
[16]前記積まれた物体は平面部材に押し当てられ静止した状態である、[15]に記載の端揃い状態判定方法。
【0025】
[17]前記撮像する工程は、前記積まれた物体に照射された前記線状光源の反射光をすべて撮像可能になるようにその配置および視野を設定し、かつ前記積まれた物体それぞれを識別可能な画素分解能で撮像する、[15]に記載の端揃い状態判定方法。
【0026】
[18]前記端揃い判定を行う工程は、前記積まれた物体の総数、前記積まれた物体ごとの相対位置を含む、事前に把握できる情報について、前記画像を取得する工程で取得された画像から得られた情報と比較し、端揃い状態を把握する、[15]から[17]のいずれかに記載の端揃い状態判定方法。
【0027】
[19]前記端揃い判定を行う工程は、事前に取得した正解情報画像と、前記平面部材の押し当て後のタイミングで撮像した画像とを比較して端揃い判定を行う、[16]に記載の端揃い状態判定方法。
【0028】
[20]前記端揃い判定を行う工程は、前記積まれた物体の1つずつの特徴点を抽出し、その特徴点の数が前記正解情報画像と判定画像とで一致するか否かにより端揃い判定を行う、[19]に記載の端揃い状態判定方法。
【0029】
[21]加熱された鋼材を所定の形状になるまで圧延する工程と、
圧延された鋼材を冷却する工程と、
冷却された鋼材を所定の状態で積む工程と、
[1]に記載の端揃い状態判定システムにより積まれた状態の前記鋼材の端揃い状態を判定する工程と、
を含む鋼材の製造方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、複数の撮像装置と複数の光源を設置することで積まれた物体の端揃い状態判定を自動的に行うことができる。このため、人間の目視による判定が不要となり、設備自動化による作業効率化、作業省力化、判定精度向上が見込める。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態に係る端揃い状態判定システムを示すブロック図である。
【
図2】
図1の端揃い状態判定システムが適用される端揃え設備を示す斜視図である。
【
図3】端揃えを行った後の積まれた鋼材を撮像装置で撮像し、取得した画像の例を示す図であり、鋼材の端が揃っている状態を示している。
【
図4】端揃えを行った後の積まれた鋼材を撮像装置で撮像し、取得した画像の例を示す図であり、鋼材の端が揃っていない状態を示している。
【
図5】積まれた物体の端揃い状態を判定する方法の手順を示すフローチャートである。
【
図6】端揃い状態判定方法を実施する際の、制御装置における具体的な処理例について示す図である。
【
図7】積まれた物体である鋼材としてH型鋼を用いた例を示す図である。
【
図8】第1の実施例において、4枚積まれた状態の不等辺山形鋼の正解情報画像に対し、
図6のステップS102~S106の画像処理を行った際の画像を示す図である。
【
図9】
図8の画像に対し、
図6のステップS107の画像処理を行った際の画像を示す図である。
【
図10】第1の実施例において、4枚積まれた状態の不等辺山形鋼の端不揃い画像に対し、
図6のステップS102~S107の画像処理を行った際の画像を示す図である。
【
図11】第1の実施例において、4枚積まれた状態の不等辺山形鋼の端揃い画像に対し、
図6のステップS102~S107の画像処理を行った際の画像を示す図である。
【
図12】第2の実施例において、5本積まれた状態のH型鋼の正解情報画像に対し、
図6のステップS102~S107の画像処理を行った際の画像を示す図である。
【
図13】第2の実施例において、5本積まれた状態のH型鋼の端不揃い画像に対し、
図6のステップS102~S107の画像処理を行った際の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0033】
図1は、本実施形態における端揃い状態判定システムを示すブロック図であり、
図2は、
図1の端揃い状態判定システムが適用される端揃え設備を示す斜視図である。
【0034】
図1に示すように、本実施形態の端揃い状態判定システム10は、積まれた物体の端揃い判定を行うもので、撮像装置(撮像手段)1と、線状光源(線状光照射手段)2と、制御装置3とを備えている。制御装置3には外部PC4が接続されている。
【0035】
撮像装置1は、CCDまたはCMOSなどの撮像素子を持つ装置であり、カメラが例示される。線状光源2はレーザーやLEDなどの光源である。
【0036】
制御装置3は、CPUを備えており、撮像装置1で撮像された画像を取得する画像取得部5と、取得された画像の処理プログラムを実行する画像処理部6と、端揃い状態の判定の判定プログラムを実行する判定部7とを有する。制御装置3は、端揃い状態判定システム10の主要部である端揃い状態判定装置として機能する。制御装置3は、外部PC4から撮像トリガを受け撮像装置1に撮像指令を与えることができる。
【0037】
外部PC4は、撮像のタイミングを制御装置3に与えるものである。また、外部PC4は、制御装置3の判定部7で得た端揃いの判定結果が与えられる。この判定結果は他機器の動作などに活用することが可能である。
【0038】
端揃い状態判定システム10が適用される端揃え設備20は、
図2に示すように、平面部材であるストッパー13と、断面が同一形状で複数積まれた物体を搬送する搬送ロール14とを有する。断面が同一形状で複数積まれた物体は、全長に対して一様であり、このような物体として鋼材を挙げることができる。
図2では断面が同一形状で複数積まれた物体である鋼材の一例として不等辺山形鋼15を例示している。本例では、不等辺山形鋼15が上下に複数枚重ねられた状態で積まれている。
【0039】
端揃え設備20は、積まれた物体である不等辺山形鋼15を搬送ロール14で搬送し、平面部材であるストッパー13の当て止め面13aに押し当てることで、不等辺山形鋼15の端を揃える。
【0040】
上述した端揃い状態判定システム10は、このような端揃え設備20で平面部材13に押し当てられ静止した状態の積まれた物体である不等辺山形鋼15の端揃い状態を判定する。
【0041】
図2に示すように、端揃い状態判定システム10の線状光源2は、ストッパー13の直近において、ストッパー13の当て止め面13aに対して平行に、かつ、複数積まれた不等辺山形鋼15の全数に線状光が照射されるよう設置される。
【0042】
端揃い状態判定システム10の撮像装置1は、積まれた物体である不等辺山形鋼15を、線状光源2から線状光が照射された状態で撮像する。撮像装置1は、積まれた物体である不等辺山形鋼15の全数の反射光が撮影できるように配置および視野が調整される。視野の調整は画角を調整することにより行われる。この際、複数積まれた不等辺山形鋼15のそれぞれの反射光を区別できる画角が好ましく、そのために
図2の例では鋼材長手方向を低角から睨むよう設置している。また、撮像装置1は、積まれた物体それぞれを識別可能な画素分解能を有するものとする。
【0043】
撮像装置1としてカラーカメラを使用し、線状光源2の色成分のみを抽出する処理により反射光のみを抜き出す、または線状光の波長のみを抽出するためのカラーフィルター、赤外光カットフィルターなどを装備する、もしくはその両方を備えることも有効な手法である。
【0044】
制御装置3の画像取得部5は、線状光が照射された状態で撮像装置1により撮像された、積まれた物体の画像を取得する。
【0045】
制御装置3の画像処理部6は、画像取得部5で取得された画像に対し、積まれた物体の反射光形状の画像が得られるように画像処理を行い、判定部7において積まれた物体の端揃い状態の判定が可能となるようにする。画像処理部6では、例えば、画像取得部5で取得された画像から線状光の反射光のみを取得する処理、例えば、該当エリアのみを抜き出すための切り出し処理を行ってもよい。必要に応じて画像を回転してもよい。撮像装置1がカラーカメラの場合は、線状光源2の色成分のみを抽出してもよい。
【0046】
制御装置3の判定部7は、画像処理部6での処理により得られた画像に基づいて積まれた物体の端揃い判定を行う。判定部7は、線状光源2の照射位置と平面物体であるストッパー13との距離を端揃いの許容ズレとし、許容ズレ以内であれば端が揃っていると判定するようにすることができる。
【0047】
また、判定部7は、積まれた物体である不等辺山形鋼15の層数や、不等辺山形鋼15ごとの相対位置などの事前に把握できる物体情報について、画像取得部5で取得された画像から得られた情報を比較し、端揃い状態を把握することができる。さらに、判定部7は、事前に取得した正解情報画像と、押し当て後のタイミングで撮像した判定用の画像とを比較して端揃い状態を判定してもよい。ここで、正解情報画像とは、先端から数十cm~1m程度長手方向内側の、積まれた物体が確実に全数揃って積まれている部分に線状光を照射して物体からの反射光を含む画像を撮像し、画像処理して得られた反射光形状の画像をいう。
【0048】
この場合に、撮像装置1と線状光源2とを2組用意し、1組は判定する前段階もしくは判定と同じタイミングで、正解情報画像の取得に使用し、他の1組は平面物体であるストッパー13直近の端揃いを評価したい位置(例えば、物体(鋼材)の先端から10mm程度の位置)に線状光を照射して端揃い判定用の画像の取得に使用して、これらにより得られた2つの画像を比較することで端揃いの状態を判定してもよい。端揃い判定用の画像を取得する際には、例えば、物体がストッパー13に衝突した後、物体が停止しているタイミングで物体を撮像する。
【0049】
また、判定部7は、物体1つずつの特徴点を抽出し、その特徴点の数が、正解情報画像と判定用の画像とで一致するか否かにより端揃い判定を行ってもよい。例えば、特徴点として積まれた物体の個々の反射光をブロブ(塊)として抽出したものを用い、その数により端揃い判定を行うことができる。このとき、ブロブの数とともに重心座標を取得してもよい。積まれた物体ごとの相対位置として、重心座標の相対位置を取得することで、外乱要素を区別することができ、外乱をブロブと認識してしまう誤検出を抑制することができる。
【0050】
図3および
図4は、
図2で示した端揃え設備20において端揃えを行った後の積まれた鋼材(不等辺山形鋼15)を撮像装置(カメラ)1で撮影し、取得した画像の例を示す図である。
図3および
図4の(1)~(4)は不等辺山形鋼15表面の線状光源の反射光を示している。
図3は、4枚の鋼板全てから反射光が得られていて鋼材の端が揃っている状況を示している。
図4は、
図3とは異なり上から3番目に積まれた(3)の鋼材の反射光が得られておらず、端が揃っていない状況を示している。
【0051】
次に、端揃い状態判定システム10にて積まれた物体の端揃いを判定する方法について説明する。
図5は、積まれた物体の端揃い状態を判定する方法の手順を示すフローチャートである。
【0052】
まず、線状光源2から積まれた物体(
図2の例では不等辺山形鋼15)の表面に線状光を照射する(ST1)。線状光源2からの線状光は、ストッパー13の直近において、ストッパー13の当て止め面に対して平行に、かつ、複数積まれた不等辺山形鋼15の全数に照射される。
【0053】
次いで、線状光が照射された、積まれた物体を撮像装置1により撮像する(ST2)。このとき、積まれた物体の全数の反射光が撮影できるように撮像装置1の配置および視野が調整される。
【0054】
次いで、制御装置3の画像取得部5で、線状光が照射された状態で撮像装置1により撮像された、積まれた物体の画像を取得する(ST3)。
【0055】
次いで、制御装置3の画像処理部6で、画像取得部5で取得された画像に対して、積まれた物体の反射光形状の画像が得られるように画像処理を行う(ST4)。これにより、判定部7において積まれた物体の端揃い状態の判定が可能となる。
【0056】
次いで、制御装置3の判定部7で、画像処理部6での画像処理により得られた画像に基づいて積まれた物体の端揃い判定を行う(ST5)。
【0057】
次に、以上の端揃い状態判定方法を実施する際の、制御装置3における具体的な処理例について、
図6を参照して説明する。
【0058】
まず、線状光が照射された状態で撮像装置1により撮像された、積まれた物体の画像を取得する(S101)。
【0059】
次に物体に照射された線状光源の反射光のみを取得するため該当エリアのみを抜き出すための切り出し処理を行う(S102)。このとき切り出す範囲の指定は物体のサイズ・位置がある程度定まっているものであれば画素座標の固定値で切り出してもよい。または反射光の輝度などの情報により切り出す範囲をソフトにより自動決定してもよい。
【0060】
次に積まれた物体の形状によっては、画像を回転する(S103)。画像の回転する手法は、後の処理を簡略化するために有効である。例えば、物体毎に直線成分が得られる場合はその直線が水平あるいは垂直になるように画像回転を行う。この場合、物体と撮像装置の位置関係が一定であれば、その関係から定められる固定角度としてもよい。また、画像処理を用いて直線抽出を行い、例えば一番長い直線を水平あるいは垂直になるように角度演算して画像回転してもよい。
【0061】
次いで、撮像装置1としてカラーカメラを使用する場合は、線状光源の色のみを抽出する処理を行う(S104)。これにより反射光のみを抜き出すことが可能である。
【0062】
次いで、一定以下の輝度の成分を除去することでノイズを除去する(S105)。
【0063】
次いで、ステップS105までの処理を行った画像に対して二値化処理を行う(S106)。
【0064】
次いで、二値化を行った画像に対して、必要に応じて、収縮/膨張処理を行う(S107)。この処理は、積まれたた物体1つ1つの反射光が区別できるようにすることが目的である。収縮処理は、取り除けなかったノイズ成分を削除したり、積まれた物体同士の反射光が繋がってしまう場合などに切り離したりする際に有効である。膨張処理は物体の反射光の強度が弱く途切れてしまう場合などに有効である。
【0065】
次いで、ステップS107まで処理を行った画像から物体の反射光1つずつをブロブ(塊)として認識させ、その個数と重心座標を算出する処理を行う(S108)。
【0066】
次に、ステップS108で得た情報から端揃い状態の判定を行う(S109)。ここでは、ブロブ個数が正解情報画像と一致すれば線状光源照射範囲に積まれた物体の全数が存在していると判断することが基本思想であり、これに基づいて端揃いがOKか否かを判定する(S110)。ブロブ個数が正解情報画像と一致すれば端揃いOKとする(S111)。ブロブ個数が正解情報画像と一致しなければ端揃いNGとする(S112)。正解情報画像としては、積まれた物体の定常部(先端から一定距離入った、全数物体が積まれている位置)の画像を事前にステップS101の手法で取得し、同様にステップS102からステップS108までの処理を行って、ブロブの個数と重心座標を算出したものを用いる。
【0067】
外乱をブロブと認識してしまった場合、個数の誤検出の発生する恐れがある。その誤検出のための対策として、積まれた物体ごとの相対位置、すなわち重心座標の相対的な位置を比較することで外乱要素を区別することも有効である。また、外部PC4から取得した、上位計算機が把握している積まれた物体の総数とブロブ個数の比較を行うことも有効である。端揃い判定を実施したい対象物体の種類や積み数が特性上常に同一である場合などは正解情報に変動が無いため正解情報のブロブ個数やブロブ座標値を固定としてもよい。
【0068】
このように、本実施形態によれば、線状光源2から積まれた物体に線状光を照射し、その反射を含む画像を撮像装置1で撮像し、その画像を画像取得部5で取得し、画像処理部6で画像処理し、判定部7で、画像処理部6での処理により得られた結果に基づいて積まれた物体の端揃い判定を行う。これにより、積まれた物体の端揃い状態の判定を自動的に行うことができ、人間の目視による判定が不要となり、設備自動化による作業効率化、作業省力化、判定精度向上が見込める。
【0069】
以上の実施形態では、積まれた物体である鋼材として不等辺山形鋼15を用い、上下に複数枚重ねた状態で積まれている例を示したが、これに限らず、種々の形状の鋼材を用いることができ、積み方も任意である。例えば、
図7の例では、積まれた物体である鋼材としてH型鋼16を用い、上下2段となるようにして横方向に5本積まれた状態を示している。
【0070】
また、物体が鋼材の場合には、以下のような製造方法により鋼材を製造することがきる。すなわち、加熱された鋼材を所定の形状になるまで圧延する工程と、圧延された鋼材を冷却する工程と、冷却された鋼材を所定の状態で積む工程と、上述したように積まれた鋼材の端揃い状態を判定する工程とを含む鋼板の製造方法である。冷却する工程の後に冷却された鋼材を矯正する工程を含んでもよい。
【実施例0071】
[第1の実施例]
ここでは、積まれた物体として不等辺山形鋼を用いた。
図2に示すように4枚積まれた状態の不等辺山形鋼の長手方向中腹部(4枚すべて存在する箇所)にラインレーザーを照射した状態を撮像した画像(正解情報画像)に対し、上述したステップS102~S106までの画像処理を行った。その際の画像を
図8に示す。
図8の画像に対してさらに収縮・膨張処理を行い形状安定させた画像が
図9に示すものである。
【0072】
また、ストッパー当て止め後最上段の鋼材のみレーザーが当たらなかった状態を撮像した画像に対し、上記と同様の処理を施した際の画像を
図10に示し、ストッパー当て止め後4枚すべての鋼材にレーザーが照射された状態を撮像した画像に対し、上記と同様の処理を施した際の画像を
図11に示す。
図10が端不揃い画像であり、
図11が端揃い画像である。
【0073】
図9、
図10、
図11についてブロブ個数と重心座標を取得した。その結果を表1に示す。この表1に示すように各図のブロブ総数により端揃い判定が可能であることがわかる。すなわち、積まれた物体である不等辺山形鋼の反射光形状を画像として取得し、画像処理することにより、自動的に端揃い判定を行えることが確認された。また重心座標を利用することで外乱光をブロブと検知した場合でもノイズ成分として除去することが可能であることがわかる。
【0074】
【0075】
[第2の実施例]
ここでは、積まれた物体としてH型鋼を用いた。
図7に示すように5枚積まれたH型鋼の5枚すべて存在する箇所に、第1の実施例と同様、ラインレーザーを照射した状態を撮像した画像(正解情報画像)に対し、上述したステップS102~S107までの画像処理を行った。その際の画像を
図12に示す。また、
図13は
図12の正解情報画像に対して不揃いとして判定された画像である。
図12と
図13とで明確に異なっており、積まれたH型鋼ごとの特徴点を画像から抽出することで端揃い判定が可能である。