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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181691
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/18 20060101AFI20231218BHJP
   C08F 220/10 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
C08F2/18
C08F220/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094958
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】石倉 宏樹
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011BB09
4J011JA06
4J011JA07
4J011JA10
4J011JA13
4J011JB06
4J011JB09
4J011JB26
4J100AB02P
4J100AL03P
4J100AL63Q
4J100AL66Q
4J100BA08Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA23
4J100DA11
4J100DA62
4J100EA09
4J100EA13
4J100FA21
4J100FA27
4J100JA00
4J100JA01
(57)【要約】
【課題】光拡散性に優れ、かつ比重が高く、低粘度の液体中でも浮かび上がりにくい樹脂粒子を提供する。
【解決手段】重合性不飽和結合を有する1種以上の重合性単量体が重合された樹脂で構成され、内部に1つ以上の孔が設けられており、前記1つ以上の孔の少なくとも1つの中に粒子が存在する、樹脂粒子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性不飽和結合を有する1種以上の重合性単量体が重合された樹脂で構成され、
内部に1つ以上の孔が設けられており、前記1つ以上の孔の少なくとも1つの中に粒子が存在する、樹脂粒子。
【請求項2】
前記1種以上の重合性単量体が(メタ)アクリレート単量体を含み、前記1種以上の重合性単量体の合計質量に対する前記(メタ)アクリレート単量体の割合が50質量%以上である、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項3】
比重が0.8g/cm以上である、請求項1または2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
平均粒子径が1.0~200μmである、請求項1または2に記載の樹脂粒子。
【請求項5】
下記測定方法により測定されるヘーズが50~90%である、請求項1または2に記載の樹脂粒子。
測定方法:前記樹脂粒子2.0gと、前記樹脂粒子を構成する樹脂と同等の屈折率を有する樹脂の40質量%トルエン溶液45gとをガラス瓶に投入し、振とう機で30分間混合し、得られた分散体を厚さ1mmのガラス板にギャップ150μmのアプリケーターで塗工し、100℃で10分間乾燥し、得られた試験片のヘーズを測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
球状の樹脂粒子は、塗料、化粧料等における光反射材や液晶バックライト用光拡散板等における光拡散材として用いられる。中でも、粒子内部に孔を持つ中空樹脂粒子は、孔を持たない中実樹脂粒子に比べて光拡散性に優れており、上記の用途に好適に用いられる。
【0003】
中空樹脂粒子の製造方法としては、以下の方法が知られている。
・懸濁重合において油性界面活性剤と水溶性界面活性剤とを併用し、重合前のモノマー液滴内に水を取り込んだまま重合を完結させる方法(特許文献1)。
・特殊な高分子界面活性剤を使用する方法(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59-193901号公報
【特許文献2】特開2007-238792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既存の中空樹脂粒子は、中空であるがために比重が低く、低粘度の液体中に分散すると比重の差から浮かび上がりやすい等の問題があった。
本発明は、光拡散性に優れ、かつ比重が高く、低粘度の液体中でも浮かび上がりにくい樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]重合性不飽和結合を有する1種以上の重合性単量体が重合された樹脂で構成され、
内部に1つ以上の孔が設けられており、前記1つ以上の孔の少なくとも1つの中に粒子が存在する、樹脂粒子。
[2]前記1種以上の重合性単量体が(メタ)アクリレート単量体を含み、前記1種以上の重合性単量体の合計質量に対する前記(メタ)アクリレート単量体の割合が50質量%以上である、前記[1]に記載の樹脂粒子。
[3]比重が0.8g/cm以上である、前記[1]又は[2]に記載の樹脂粒子。
[4]平均粒子径が1.0~200μmである、前記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂粒子。
[5]下記測定方法により測定されるヘーズが50~90%である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂粒子。
測定方法:前記樹脂粒子2.0gと、前記樹脂粒子を構成する樹脂と同等の屈折率を有する樹脂の40質量%トルエン溶液45gとをガラス瓶に投入し、振とう機で30分間混合し、得られた分散体を厚さ1mmのガラス板にギャップ150μmのアプリケーターで塗工し、100℃で10分間乾燥し、得られた試験片のヘーズを測定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光拡散性に優れ、かつ比重が高く、低粘度の液体中でも浮かび上がりにくい樹脂粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る樹脂粒子の模式断面図である。
図2】実施例1で得た樹脂粒子の表面の電子顕微鏡写真である。
図3】実施例1で得た樹脂粒子の断面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートおよびアクリレートの総称である。「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイルおよびアクリロイルの総称である。「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸およびアクリル酸の総称である。「(メタ)アクリロニトリル」とは、メタクリロニトリルおよびアクリロニトリルの総称である。「(メタ)アクリルアミド」とは、メタクリルアミドおよびアクリルアミドの総称である。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂粒子1の模式断面図である。
図1に示すように、樹脂粒子1の内部には、1つ以上の孔3が設けられている。また、1つ以上の孔3の少なくとも1つの中に粒子5が存在する。
樹脂粒子1は、粒子5を含めて、1種以上の重合性単量体が重合された樹脂で構成されている。樹脂については後で詳しく説明する。
【0011】
樹脂粒子1、粒子5それぞれの形状は特に限定されず、例えば真球状、楕円体状、不定形状等であってよい。
粒子5は、孔3の壁に固着していてもよく、固着していなくてもよい。1つの孔3の中に存在する粒子5の数は、1つでもよく2つ以上でもよい。
孔3は、樹脂粒子1の外部に連通していてもよく、連通していなくてもよい。
【0012】
図1においては、樹脂粒子1の内部に複数の孔3が設けられている例を示しているが、孔3の数は1つでもよい。
孔3の数は、光拡散性の観点では、2つ以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。
孔3の数は、樹脂粒子の断面を電子顕微鏡で観察することにより測定される。なお、電子顕微鏡で観察される断面以外の部分で互いに連通していても断面において別々に存在する孔3は、異なる孔3としてカウントする。
【0013】
樹脂粒子1の断面観察に用いる試験片を作製する際、孔3から脱落してしまう粒子5があるため、樹脂粒子1の内部に含まれる粒子5の存在割合の正確な値を算出することは困難である。一方、樹脂粒子1の比重は、孔3内に存在する粒子5の存在を推察するに足るものと考えられる。樹脂粒子1の比重を樹脂粒子1を構成する樹脂の比重で割った値(樹脂粒子1の比重/樹脂粒子1を構成する樹脂の比重)が1に近いほど、樹脂粒子1の内部に含まれる粒子5の存在割合が高いと考えられる。
樹脂粒子1の比重/樹脂粒子1を構成する樹脂の比重の値は、比重および強度の観点から、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。樹脂粒子1の比重/樹脂粒子1を構成する樹脂の比重の値は、典型的には1未満であり、光拡散性の観点から、0.95以下が好ましい。
【0014】
樹脂粒子1内の孔3の直径は、特に限定されないが、光拡散性の観点から、樹脂粒子1の粒子径の5~40%であることが好ましい。
孔3の直径および樹脂粒子1の粒子径は、樹脂粒子断面の電子顕微鏡観察により測定される。
樹脂粒子1の内部に複数の孔3が設けられている場合、孔3の直径は、複数の孔3それぞれの直径である。直径が樹脂粒子1の粒子径の5%未満または40%超である孔が併存していてもよい。
【0015】
樹脂粒子1の内部に1つ以上の孔3が設けられていることから、樹脂粒子1の比重は、樹脂粒子1を構成する樹脂の比重よりも低い。樹脂の比重は、一般的には、0.9~1.2g/cmの範囲内である。
一方で、粒子内部に孔を有する粒子、一般的に中空粒子と呼ばれる粒子は、内部に空洞部を有することから、通常の樹脂より比重は極端に低くなる。
樹脂粒子1は、少なくとも1つの孔3の中に粒子5が存在することから、樹脂粒子1の比重は、粒子5が存在しない場合よりも高い。樹脂粒子1の比重は、樹脂粒子1の低粘度の液体への分散安定性の観点から、0.8g/cm以上が好ましく、0.9g/cm以上がより好ましい。
【0016】
樹脂粒子1の平均粒子径は、光拡散性の観点から、1.0~200μmが好ましい。
樹脂粒子1の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される体積基準の値である。
【0017】
樹脂粒子1の下記測定方法により測定されるヘーズは、50~90%が好ましく、70~90%がより好ましい。ヘーズが50%以上であれば、光拡散性がより優れ、90%以下であれば、光の透過性がより優れる。
測定方法:樹脂粒子2.0gと、樹脂粒子を構成する樹脂と同等の屈折率を有する樹脂の40質量%トルエン溶液45gとをガラス瓶に投入し、振とう機で30分間混合し、得られた分散体を厚さ1mmのガラス板にギャップ150μmのアプリケーターで塗工し、100℃で10分間乾燥し、得られた試験片のヘーズを測定する。
ヘーズは、ヘーズメーターを用いて測定される。
【0018】
<樹脂>
樹脂粒子1を構成する樹脂は、1種以上の重合性単量体が重合されたものである。
重合性単量体は、重合性不飽和結合を有する。重合性不飽和結合としては、例えば重合性炭素-炭素二重結合、重合性炭素-炭素三重結合が挙げられる。
重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリレート単量体、芳香族ビニル単量体、他の重合性単量体が挙げられる。
【0019】
(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0020】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、脂環構造を有する(メタ)アクリレート、および官能基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、へプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(n-プロポキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(n-ブトキシ)エチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(n-プロポキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-(n-ブトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
脂環構造を有する(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
官能基を有する(メタ)アクリレートにおいて、官能基としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ポリオキシアルキレン基、エポキシ基が挙げられる。
アミノ基を有する(メタ)アクリレートとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
多官能(メタ)アクリレートとしては、エチレンオキシド(EO)の付加モル数が1~9の(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルキレン基の炭素数が4~9のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン系単量体、ジビニルベンゼンが挙げられ、スチレン系単量体が好ましい。
スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等が挙げられる。
【0025】
他の重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、アミド基を有する重合性単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
アミド基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
これらの重合性単量体は、1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
重合性単量体は、安定的に目的の構造を得やすいことから、(メタ)アクリレート単量体を含むことが好ましい。
重合性単量体の合計質量に対する(メタ)アクリレート単量体の割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0027】
(メタ)アクリレート単量体は、重合安定性の観点から、単官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
(メタ)アクリレート単量体として、単官能(メタ)アクリレートと、多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて用いてもよい。多官能(メタ)アクリレートを用いることで、樹脂に架橋構造が導入され、耐溶剤性、耐熱性等が向上する。
(メタ)アクリレート単量体と、芳香族ビニル単量体とを組み合わせて用いてもよい。芳香族ビニル単量体を用いることで、分散媒体となる樹脂や溶剤との相性を調整することができ、例えば媒体への分散性等が向上する。
【0028】
重合性単量体における単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートおよび芳香族ビニル単量体の比率は特に限定されないが、例えば、重合性単量体の合計質量に対して、単官能(メタ)アクリレートが20~100質量%、多官能(メタ)アクリレートが0~30質量%、芳香族ビニル単量体が0~50質量%であってよい。
【0029】
<樹脂粒子の製造方法>
樹脂粒子1は、例えば、1種以上の重合性単量体を、水性媒体に分散させ、懸濁化し、重合させる方法において、懸濁化の条件を調整することにより得ることができる。
例えば、以下の工程1~工程3を含む製造方法により樹脂粒子1を製造できる。
【0030】
(工程1)
重合開始剤、1種以上の重合性単量体、水性媒体(第1の水性媒体)および第1の界面活性剤を含み、1種以上の重合性単量体を連続相、第1の水性媒体を分散相としたW/O型(water in oil型)の分散液(第1混合液)を調製する。
具体的には、重合開始剤と1種以上の重合性単量体と第1の界面活性剤との混合液を調製し、この混合液をホモミキサー等の撹拌機を用いて攪拌する。攪拌された混合液中に第1の水性媒体を分散させることで、第1の混合液を調製する。
水性媒体、重合開始剤、第1の界面活性剤については後で詳しく説明する。
必要に応じて、連鎖移動剤等の添加剤を第1の混合液に含有させてもよい。
【0031】
(工程2)
工程1の後、第2の界面活性剤または分散剤と水性媒体(第2の水性媒体)との混合液(第2混合液)を、撹拌機で撹拌中の上記第1混合液に加えることにより、連続相が水性媒体、分散相が1種以上の重合性単量体となるよう相転換(分散相転換)をして、W/O/W型(water in oil in water型)の懸濁液を調製する。
水性媒体、第2の界面活性剤、分散剤については後で詳しく説明する。
工程2において、第2混合液を第1混合液に加える際、第1混合液の攪拌は、回転翼を備えた撹拌機を用い、回転翼の先端における周速(攪拌周速)が4.3~17.6m/sとなるように行われる。攪拌周速を上記範囲内とすることで、目的の構造を得られやすい。攪拌周速は、5.1~16.9m/sが好ましく、5.9~16.1m/sがより好ましい。
回転翼を備えた撹拌機としては、例えば、高速せん断式分散機が挙げられる。
【0032】
(工程3)
工程2の後、前記懸濁液を重合する。これにより樹脂粒子1が生成し、樹脂粒子1が水性媒体に分散した分散体が得られる。
工程3の後、必要に応じて、分散体から樹脂粒子1を回収してもよい。回収方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0033】
なお、本製造方法では、水性媒体を2回の工程に分けて添加する際に、どちらの工程で添加する水性媒体であるかの理解を容易にするために、「第1の水性媒体」、「第2の水性媒体」のように呼んでいる。第1の水性媒体と第2の水性媒体は同一でも異なっていてもよい。界面活性剤も同様である。
【0034】
(水性媒体)
「水性媒体」は、水を含む媒体であり、水のみからなるものであってもよく、本発明の目的および効果を阻害しない範囲において、有機溶剤をさらに含むものであってもよい。
水としては、イオン交換水等の公知の水を使用できる。
有機溶剤としては、水と混和可能なものであればよく、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールが挙げられる。
水性媒体の総質量に対する水の割合は、特に限定されないが、50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0035】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができ、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルのような過酸化物系開始剤、および、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)のような油溶性アゾ系重合開始剤等が挙げられる。
【0036】
重合開始剤の使用量は、例えば、1種以上の重合性単量体の合計100質量部に対して、0.05~3.0質量部であってもよく、0.1~2.0質量部が好ましく、0.2~1.5質量部がより好ましい。重合開始剤の使用量が0.05質量部以上であれば、重合時の未反応の重合性単量体の割合を減らすことができる。一方、重合開始剤の使用量が3.0質量部以下であれば、重合開始剤が分解した分解物が不純物として残るのを抑制できる。
【0037】
(第1の界面活性剤)
第1の界面活性剤は、下記式(1)で表される界面活性剤Aを含む。第1の界面活性剤が界面活性剤Aを含むことで、目的の構造が得られやすい。この理由としては、界面活性剤Aの存在下、前記した所定の攪拌周速で重合性単量体を懸濁化すると、重合性単量体の液滴内に、重合性単量体の微細な液滴を含む水滴が取り込まれることが考えられる。
O-(RO)(EO)-T… (1)
【0038】
式(1)中、Tは水素原子、炭素数1~18のアルキル基、または炭素数2~18のアルケニル基であり、Tは水素原子、スルホン酸基、スルホン酸塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、アミノ基、またはアンモニウム基であり、ROは炭素数3~18のオキシアルキレン基であり、nは1~50の整数であり、EOはオキシエチレン基であり、mは0~200の整数である。
樹脂粒子中に界面活性剤が残存した場合に、ブリードを抑制できるという点で、Tはアルケニル基であることが好ましい。
【0039】
界面活性剤Aは、市販品を用いることができる。例えば、市販のアニオン性の界面活性剤Aとしては、第一工業製薬のアクアロンKHシリーズ、ハイテノーXJ-630Sもしくは花王製のラテムルPD-104等が挙げられる。市販のノニオン性の界面活性剤Aとしては、第一工業製薬社のノイゲンXLシリーズ、花王社のラテムル-420、430、450、エマルゲンLSシリーズ、エマルゲンMSシリーズ、エマルゲンPPシリーズ、および青木油脂工業社のファインサーフNDBシリーズ、IDEPシリーズ、ワンダーサーフNDRシリーズ、IDシリーズ、Sシリーズ等が挙げられる。
界面活性剤Aは1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
工程1における界面活性剤Aの使用量は、例えば、1種以上の重合性単量体の合計100質量部に対して0.05~5.0質量部が好ましい。界面活性剤Aの使用量が上記範囲内であると、安定的に樹脂粒子1が形成されやすい。界面活性剤Aの使用量が0.05質量部未満であると、構造が不完全となり、5.0質量部を超えると、樹脂粒子を構成する樹脂の特性を損なうおそれがある。
【0041】
第1の界面活性剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、界面活性剤Aとは異なる界面活性剤(他の界面活性剤)をさらに含んでいてもよい。
他の界面活性剤としては、公知の界面活性剤を用いることができ、例えば、以下に示すアニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0042】
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウム等のアルキル(もしくはアリール)スルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等のアルキル(もしくはアルケニル)硫酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキル(もしくはアルケニル)エーテル硫酸塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ-2-エチルへキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩、これらの誘導体等が挙げられる。これらアニオン性界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
カチオン性界面活性剤としては、具体的には、ドデシルベンジルメチルアンモニウムクロライド等のアルキルベンジルメチルアンモニウム塩;ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウム塩;ドデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライト等のアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩;等の四級アンモニウム塩が挙げられる。これらカチオン性界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
(第2の界面活性剤)
第2の界面活性剤は、重合の安定性を向上させる目的で用いられる。
第2の界面活性剤としては、特に制限はなく、例えば界面活性剤Aを用いてもよく、他の界面活性剤を用いてもよく、それらを併用してもよい。
第2の界面活性剤は1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(分散剤)
分散剤は、第2の界面活性剤と同様に、重合の安定性を向上させる目的で用いられる。
分散剤としては、例えば有機系分散剤、無機系分散剤が挙げられる。
有機系分散剤としては、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
無機系分散剤としては、第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
これらの分散剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
(その他の添加剤)
本発明においては、樹脂粒子の特性を損なわない範囲で、その他の添加剤を用いてもよい。その他の添加剤としては、例えば有機硫黄化合物等の連鎖移動剤や防腐剤、酸化防止剤等が挙げられる。また、粒子を着色するための顔料や染料、粒子の改質を目的としての金属粒子や無機微粒子、有機微粒子を添加することもできる。
【0047】
<作用効果>
以上説明した樹脂粒子1は、内部に1つ以上の孔3が設けられていることから、孔3部分(空気)と樹脂部分の屈折率の違いによって、それらの界面で光が散乱され、光の拡散性に優れる。
また、樹脂粒子1は、少なくとも1つの孔3の中に粒子5が存在することから、比重が孔3のない中実樹脂粒子の比重に近く、低粘度の液体(水性媒体、低粘度の有機溶剤、低粘度の樹脂溶液等)中でも浮き上がりにくい。
【0048】
以上、本発明の樹脂粒子について、実施形態を示して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0049】
本発明の樹脂粒子の用途は特に限定されないが、例えば、塗料、化粧料等における光反射材や艶消し材、液晶バックライト用光拡散板等における光拡散材として用いることができる。
例えば、本発明の樹脂粒子を、光反射材または艶消し材として塗料等に含有させると、優れた光反射効果または艶消し効果を示す。本発明の樹脂粒子を、光拡散材として液晶バックライト用光拡散板等に含有させると、優れた光拡散効果を示す。
【実施例0050】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
「部」は「質量部」を意味する。
【0051】
<実施例1>
(樹脂粒子の調製)
表1に示す配合に従い、実施例1に係る樹脂粒子を調製した。
樹脂粒子の調製においては、連続相を重合開始剤-重合性単量体-界面活性剤、分散層を水とした懸濁液を製造し、撹拌機で撹拌中の上記懸濁液に、分散剤と水との混合液を加えることにより、連続相が水、分散層が重合性単量体となった懸濁液を得た後、重合を行うことで、樹脂粒子を得た。詳細には、以下の通りである。
重合性単量体としてメチルメタクリレート(MMA)60部、スチレン(St)30部、およびエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)10部の合計100部に対し、界面活性剤としてエマルゲンPP-290が2.0部、水が30部となるように混合した液を、ホモミキサーを備え付けた容器に投入し、ホモミキサーで混合して第1混合液を得た。
別途、分散剤であるポリビニルアルコールの1.0部、水の270部を混合して第2混合液を得た。
攪拌周速14.7m/sにて攪拌中の上記第1混合液中に上記第2混合液を加えることで、W/O/W型(water in oil in water型)の懸濁液を得た。
得られた懸濁液を、攪拌機、コンデンサ、温度計、窒素導入管を付した4口フラスコに投入し、窒素封入下で75℃まで昇温し、75℃で4時間反応させた。その後、得られた樹脂粒子分散液についてろ過を行い、ろ取した樹脂粒子を500部の水で洗浄し、60℃で12時間乾燥することで、樹脂粒子を回収した。
回収した樹脂粒子について、以下の評価を行った。
【0052】
(形状)
走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子社製)により、樹脂粒子表面および樹脂粒子断面の観察を行った。樹脂粒子断面の観察には、樹脂粒子を紫外線硬化樹脂に分散した後、樹脂に紫外線を照射して硬化せしめ、その硬化物をミクロトームにより切削し、作成した切片を用いた。その結果、樹脂粒子内部に多孔質構造が確認できるとともに、多孔質構造のなかに、粒子が内包されている孔の存在が観認された。
図2に、樹脂粒子表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。図3に、樹脂粒子断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0053】
(平均粒子径)
回収した樹脂粒子0.1gと、界面活性剤の希薄水溶液100gとを混合し、超音波照射器にて樹脂粒子を媒体に分散した。得られた樹脂粒子分散液について、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製)を用いて、体積基準の粒度分布を測定し、平均粒子径を求めた。その結果、樹脂粒子の平均粒子径は3.1μmであった。
【0054】
(比重)
メタノール浸漬により樹脂粒子の比重を求めた。結果を表1に示す。
メタノール浸漬は下記の手順で行った。
樹脂粒子5gを精秤し、50mLメスフラスコに投入した。次いでメスフラスコにメタノールを投入し、樹脂粒子をメタノールに馴染ませながらメスフラスコ内の充填量を50mLとした。メスフラスコと内容物を合わせた質量(A)を精秤し、その質量から、あらかじめ計っておいたメスフラスコの風袋(B)と樹脂粒子の質量(C)を引き、投入したメタノールの質量(D)を算出した。算出したメタノールの質量(D)を20℃下におけるメタノールの比重0.792g/cmで割ることで、メスフラスコ中のメタノールの体積(E)を算出した。メスフラスコの内容物の体積(50mL)からメタノールの体積(E)を引くことで、樹脂粒子の体積(F)を算出した。樹脂粒子の質量(C)を得られた樹脂粒子の体積(F)で割ることで、樹脂粒子の比重を算出した。
【0055】
求めた樹脂粒子の比重と、樹脂粒子を構成する樹脂成分と同等の屈折率を有する樹脂の比重から「樹脂粒子の比重/樹脂粒子を構成する樹脂の比重」の値を算出した。結果を「粒子比重/樹脂比重」として表1に示す。
本実施例では、樹脂粒子を構成するアクリル系成分の屈折率をPMMAの1.49、スチレン系成分の屈折率をポリスチレンの1.59とし、樹脂粒子を構成する樹脂成分と屈折率が同等となるようメチルメタクリレートとスチレンの共重合比率を算出し、この共重合比率の共重合体を作製して、樹脂粒子を構成する樹脂成分と同等の屈折率を有する樹脂として用いた。
【0056】
(ヘーズ)
樹脂粒子の光拡散性の指標として、以下の手順でヘーズを測定した。結果を表1に示す。
回収した樹脂粒子2.0gと、樹脂粒子を構成する樹脂成分と同等の屈折率を有する樹脂の40質量%トルエン溶液45gとをガラス瓶に投入し、振とう機で30分間混合することで、樹脂粒子分散体を得た。得られた樹脂粒子分散体を厚さ1mmのガラス板にギャップ150μmのアプリケーターで塗工し、100℃で10分間乾燥することで、試験片を得た。得られた試験片のヘーズをヘーズメーター(村上色彩技術研究所製)にて測定した。
【0057】
<実施例2~7、比較例2、4>
W/O/W型の懸濁液を得る際の攪拌周速、または単量体組成を表1に示すようにしたこと以外は、実施例1の(樹脂粒子の調製)と同様の操作を行い、得られた樹脂粒子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
なお、比較例2では、重合物が塊状になり粒子化しなかったため、評価は行わなかった。
【0058】
【表1】
【0059】
表1中の略号は以下のものを示す。
MMA:メチルメタクリレート。
nBA:n-ブチルアクリレート。
EMA:エチルメタクリレート。
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート。
St:スチレン。
nBMA:n-ブチルメタクリレート。
AMBN:2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)。
PP-290:花王社製「エマルゲンPP-290」、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、固形分100%。
D-3-D:花王社製「エマールD-3-D」、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムの水溶液、固形分26%。
PVA:ポリビニルアルコール、平均重合度3500。
【0060】
表1中、「形状」における「粒有多孔」は、樹脂粒子内部に多孔質構造が確認できるとともに、多孔質構造のなかに、粒子が内包されている孔の存在が観認されたことを示す。「真球状」は、外観が球状、且つ粒子断面に孔が存在しないことを示す。
【0061】
実施例1~7の樹脂粒子は、試験片のヘーズが50%以上と高く、光拡散性に優れていた。また、比重が0.8g/cm以上と高く、低粘度の液体中でも浮かび上がりにくいものであった。
【符号の説明】
【0062】
1 樹脂粒子、3 孔、5 粒子
図1
図2
図3