(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181692
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】鉄鉱石ペレットの粉化率の推定方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/14 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
C22B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094959
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(72)【発明者】
【氏名】藤坂 岳之
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001BA02
4K001CA17
(57)【要約】
【課題】 搬送時の衝撃によって鉄鉱石ペレットが粉化したときの粉化率を推定する。
【解決手段】 粉化率は、粉化前の鉄鉱石ペレットの質量に対する粉化物の質量の割合である。まず、粉化前の鉄鉱石ペレットに対するX線CTスキャンによって得られた三次元画像に基づいて、鉄鉱石ペレットに含まれる空隙部分を抽出する。次に、抽出した空隙部分のうち、球形度が閾値以下である空隙部分を亀裂と特定して、鉄鉱石ペレットの見掛体積に対する亀裂の総体積の割合である亀裂体積率を求める。次に、亀裂体積率及び粉化率の相関関係(一次関数)に基づいて、求めた亀裂体積率から粉化率を求める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送時の衝撃を受けて粉化する鉄鉱石ペレットについて、粉化前の鉄鉱石ペレットの質量に対する粉化物の質量の割合である粉化率を推定する方法であって、
粉化前の鉄鉱石ペレットに対するX線CTスキャンによって得られた三次元画像に基づいて、鉄鉱石ペレットに含まれる空隙部分を抽出し、
抽出した前記空隙部分のうち、球形度が閾値以下である前記空隙部分を亀裂と特定して、鉄鉱石ペレットの見掛体積に対する亀裂の総体積の割合である亀裂体積率を求め、
予め求められた、一次関数で表される前記亀裂体積率及び前記粉化率の相関関係に基づいて、求めた前記亀裂体積率から前記粉化率を求める、
ことを特徴とする鉄鉱石ペレットの粉化率の推定方法。
【請求項2】
前記閾値が0.5[-]であることを特徴とする請求項1に記載の鉄鉱石ペレットの粉化率の推定方法。
【請求項3】
前記粉化物は、粒径が6.3mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄鉱石ペレットの粉化率の推定方法。
【請求項4】
前記相関関係は、鉄鉱石ペレットの搬送経路ごとに求められることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄鉱石ペレットの粉化率の推定方法。
【請求項5】
前記球形度は、前記三次元画像における前記空隙部分の体積及び表面積から求められることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄鉱石ペレットの粉化率の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送時の衝撃によって鉄鉱石ペレットが粉化したときの粉化率を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石ペレットを搬送するとき、物理的な衝撃が鉄鉱石ペレットに加わることがあり、この衝撃によって鉄鉱石ペレットの一部が粉化してしまうことがある。ここで、粉化した部分(以下、「ペレットチップ」という)が含まれた状態で鉄鉱石ペレットを高炉や直接還元シャフト炉に装入してしまうと、ペレットチップによって炉内の通気性を悪化させてしまう。このため、通常、鉄鉱石ペレットを高炉等に装入する前には、鉄鉱石ペレットの篩い分けを行うことにより、ペレットチップを取り除くようにしている。なお、取り除かれたペレットチップは、通常、焼結工場に搬送され、塊成化した後に高炉に装入される。
【0003】
一方、高炉等に装入される酸化鉄原料(ペレットや焼結鉱)の粉化に関して、特許文献1には、ペレットの還元粉化を評価する技術が開示されており、特許文献2には、焼結鉱の破壊靭性値を把握する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1では、製鉄用ペレットの気孔率及び平均気孔径を測定し、これらの測定値から反応帯幅を推定し、この反応帯幅から総亀裂面積を推定し、この総亀裂面積から製鉄用ペレットの還元粉化指数を推定している。ここで、反応帯幅とは、還元に伴うペレットの径方向におけるマグネタイトの濃度変化を表す傾きの逆数である。また、総亀裂面積とは、還元により生じるペレット内の単位体積あたりの総亀裂面積である。
【0005】
特許文献2では、ビッカース圧子を試料(焼結鉱)に押し込んだときに形成される亀裂の長さを算出し、亀裂の長さと、ビッカース圧子を試料に押し込んだときに形成される圧痕の長さと、試料のビッカース硬さとに基づいて、試料の破壊靭性値を算出している。ここで、亀裂の長さは、ビッカース圧子を試料に押し込んだときときのAE波から算出されるAEエネルギと、試料の厚さと、試料の気孔率とから算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-60920号公報
【特許文献2】特開2018-44210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、搬送時に発生する衝撃に伴う鉄鉱石ペレットの粉化を推定することにある。特許文献1では、製鉄用ペレットを還元したときの粉化(還元粉化)に着目しており、本発明のように、搬送時の衝撃に伴う鉄鉱石ペレットの粉化に着目していない。また、特許文献2では、焼結鉱の破壊靭性値を推定しており、本発明のように、搬送時の衝撃に伴う鉄鉱石ペレットの粉化を推定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、搬送時の衝撃を受けて粉化する鉄鉱石ペレットについて、粉化前の鉄鉱石ペレットの質量に対する粉化物の質量の割合である粉化率を推定する方法である。まず、粉化前の鉄鉱石ペレットに対するX線CTスキャンによって得られた三次元画像に基づいて、鉄鉱石ペレットに含まれる空隙部分を抽出する。次に、抽出した空隙部分のうち、球形度が閾値以下である空隙部分を亀裂と特定して、鉄鉱石ペレットの見掛体積に対する亀裂の総体積の割合である亀裂体積率を求める。次に、亀裂体積率及び粉化率の相関関係に基づいて、求めた亀裂体積率から粉化率を求める。ここで、亀裂体積率及び粉化率の相関関係は、一次関数で表され、予め求められたものである。
【0009】
閾値を0.5[-]とすることができる。粉化物は、粒径が6.3mm以下である粒子とすることができる。亀裂体積率及び粉化率の相関関係は、鉄鉱石ペレットの搬送経路ごとに求めておくことができる。球形度は、三次元画像における空隙部分の体積及び表面積から求めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、亀裂体積率及び粉化率の相関関係に着目することにより、粉化前の鉄鉱石ペレットの亀裂体積率から粉化率を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】鉄鉱石ペレットの粉化率を推定する方法を説明するフローチャートである。
【
図2】1つの断面における鉄鉱石ペレットのX線画像(一例)を示す図である。
【
図3】1つの断面における鉄鉱石ペレットのX線画像において、空隙部分を抽出した画像(一例)を示す図である。
【
図4】1つの断面における鉄鉱石ペレットのX線画像において、空隙部分(亀裂)を抽出した画像(一例)を示す図である。
【
図5】1つの断面における鉄鉱石ペレットのX線画像において、空隙部分(気孔)を抽出した画像(一例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態は、搬送時に発生する衝撃によって鉄鉱石ペレットが粉化するときの粉化率を推定するものである。ここでいう粉化には、炉内での還元に伴う鉄鉱石ペレットの粉化は含まれない。鉄鉱石ペレットの搬送経路は、鉄鉱石ペレットを製造した直後から高炉等に装入するまでの間の搬送経路となるが、鉄鉱石ペレットの荷役(例えば、船の積み降ろし)において鉄鉱石ペレットに最も衝撃が作用して粉化が発生しやすくなる。粉化率の推定においては、鉄鉱石ペレットの搬送経路が同一であることを前提としており、同一の搬送経路においては、鉄鉱石ペレットに作用する衝撃が同程度であるとみなしている。
【0013】
鉄鉱石ペレットは、所定粒径(例えば、100μm以下)の微粉鉄鉱石を十数mm程度の大きさに塊成化した焼成物であり、高炉プロセスや直接還元プロセスの原料として用いられる。鉄鉱石ペレットの製造工程には、主に造粒工程と焼成工程が含まれる。造粒工程では、造粒機を用いて、粒度と水分を調整した微粉鉄鉱石を造粒することにより、生ペレットを製造する。焼成工程では、生ペレットを加熱して焼き固めることで鉄鉱石ペレットが製造される。
【0014】
衝撃に伴う鉄鉱石ペレットの粉化は、鉄鉱石ペレットの表面が摩耗することによる粉化(以下、「摩耗粉化」という)と、鉄鉱石ペレット中の亀裂を起点とした割れによる粉化(以下、「亀裂粉化」という)とに大別できる。鉄鉱石ペレット中の亀裂は、焼成工程で急速な水分の蒸発や鉄鉱石中の結晶水の熱分解により、生ペレットの内圧が上昇することで生じる。
【0015】
摩耗粉化は、焼成工程において、焼成温度が目標温度よりも低かったり、焼成時間が目標時間よりも短かったりすること(いわゆる、焼成不足)により、鉄鉱石ペレットの基質強度が低下したときに顕著に発生すると考えられる。ただし、通常の焼成工程では、焼成温度や焼成時間が適正に管理されているため、摩耗粉化は発生しにくいと考えられる。このため、衝撃に伴う鉄鉱石ペレットの粉化としては、亀裂粉化が支配的であると考えられる。
【0016】
(鉄鉱石ペレットの粉化率の推定方法)
鉄鉱石ペレットの粉化率Rpを推定する方法について、
図1に示すフローチャートを用いて説明する。後述するように、鉄鉱石ペレットの粉化率Rpは、鉄鉱石ペレットの亀裂体積率Rvcに基づいて推定する。まず、粉化率Rp及び亀裂体積率Rvcについて、以下に説明する。
【0017】
粉化率Rpとは、粉化前の鉄鉱石ペレットの質量M1に対して、衝撃に伴う鉄鉱石ペレットの粉化によって発生した粉化物の総質量M2が占める割合(wt%)であり、下記式(1)で表される。
【0018】
【0019】
粉化前の鉄鉱石ペレットとしては、上述した製造工程によって製造された直後の鉄鉱石ペレットであって、粉化を発生させる搬送を行う前の鉄鉱石ペレットとすることができる。ここで、上述したように、鉄鉱石ペレットの荷役(例えば、船の積み降ろし)において鉄鉱石ペレットに最も衝撃が作用して粉化が発生しやすくなることを踏まえると、粉化前の鉄鉱石ペレットとしては、荷役前(例えば、船に積む前)の鉄鉱石ペレットとすることができる。一方、粉化物は、所定粒径以下の粒体として規定することができ、所定粒径を例えば6.3[mm]とすることができる。
【0020】
亀裂体積率Rvcとは、鉄鉱石ペレット(粉化前)の見掛体積V1に対して、鉄鉱石ペレット(粉化前)に存在するすべての亀裂の総体積V2が占める割合であり、下記式(2)で表される。
【0021】
【0022】
見掛体積V1は、鉄鉱石ペレット(粉化前)に対してX線CTスキャンを行うことによって得られた三次元画像の表面形状から求められる。鉄鉱石ペレットには空隙部分が含まれるが、この空隙部分の体積も見掛体積V1に含まれる。亀裂の総体積V2は、鉄鉱石ペレット(粉化前)に対してX線CTスキャンを行うことによって得られた三次元画像において、亀裂を特定することによって求められる。すなわち、鉄鉱石ペレット(粉化前)に含まれるすべての亀裂を特定し、これらの亀裂の体積の合計値が総体積V2となる。亀裂を特定する方法については、後述する。
【0023】
ステップS101では、鉄鉱石ペレット(粉化前)に対してX線CTスキャンを行う。X線CTスキャンによって、スキャン方向と直交する断面に関して、鉄鉱石ペレットの複数のX線画像を得ることができる。
図2には、1つの断面における鉄鉱石ペレットのX線画像(一例)を示す。なお、上述した複数のX線画像を重ねることにより、鉄鉱石ペレットの三次元画像が得られる。
【0024】
ステップS102では、ステップS101のX線CTスキャンによって得られた三次元画像に基づいて、鉄鉱石ペレットに含まれる空隙部分を抽出する。具体的には、鉄鉱石ペレットのX線画像(断面画像)に対して2値化処理を行うことにより、すべてのX線画像のそれぞれにおいて、空隙部分と、空隙部分ではない部分(以下、「非空隙部分」という)とを区別する。非空隙部分は、鉄鉱石ペレットの基質に相当する部分である。ここで、基質とは、固体とX線CTスキャンで検出されない微細な気孔(空間分解能以下の大きさの空隙)とを合わせた部分を指す。
【0025】
2値化処理では、0~255の輝度値において閾値を設定し、閾値以上の輝度値を示す部分と、閾値未満の輝度値を示す部分とに区別する。ここで、空隙部分の輝度値は、非空隙部分の輝度値よりも小さくなるため、閾値未満の輝度値を示す部分が空隙部分となり、閾値以上の輝度値を示す部分が非空隙部分となる。これにより、鉄鉱石ペレットに含まれる空隙部分(三次元形状)を抽出することができる。なお、2値化処理に加えて、空隙部分を抽出するために必要な画像処理(例えば、トップハット変換処理)を行うことができる。
【0026】
空隙部分の抽出においては、非空隙部分によって囲まれた1つの連続した空間が1つの空隙部分を構成し、通常、鉄鉱石ペレットには複数の空隙部分が存在する。
図3には、1つの断面における鉄鉱石ペレットのX線画像(
図2に相当する)において、空隙部分を抽出した画像(一例)を示す。
【0027】
ステップS103では、各空隙部分の球形度Ψmを測定する。球形度Ψmは、下記式(3)から求められる。球形度Ψmは1.0[-]以下の値であり、球形度Ψmが1.0であるときには、真円の球を示す。
【0028】
【0029】
上記式(3)において、Ψmは球形度[-]であり、Vvは1つの空隙部分の体積[mm3]であり、Avは1つの空隙部分の表面積[mm2]である。体積Vv及び表面積Avは、X線CTスキャンによって得られた三次元画像から求められる。すなわち、鉄鉱石ペレットに含まれる各空隙部分を特定することにより、体積Vv及び表面積Avを求めることができる。
【0030】
ステップS104では、ステップS103で測定された球形度Ψmに基づいて、ステップS102で抽出された空隙部分の中から亀裂を特定する。通常、鉄鉱石ペレットに含まれる空隙部分には気孔及び亀裂が含まれるが、上述した亀裂体積率Rvcを求めるために、空隙部分に含まれる亀裂だけを特定する。気孔及び亀裂のそれぞれの形成過程を踏まえると、気孔は球形に近い形状を有するのに対して、亀裂は球形とはいえない形状を有する。このため、気孔及び亀裂は、これらの形状(すなわち、球形度Ψm)によって区別することができる。
【0031】
具体的には、気孔及び亀裂を区別するための球形度Ψmの閾値Ψthを設定しておき、球形度Ψmが閾値Ψth以下である空隙部分を亀裂として特定する。球形度Ψmが閾値Ψthよりも大きい空隙部分については、気孔とみなす。
図4には、1つの断面における鉄鉱石ペレットのX線画像(
図2に相当する)において、空隙部分(亀裂)を抽出した画像(一例)を示す。
図5には、1つの断面における鉄鉱石ペレットのX線画像(
図2に相当する)において、空隙部分(気孔)を抽出した画像(一例)を示す。
【0032】
閾値Ψthは、空隙部分が気孔及び亀裂のいずれに該当するかを判断するための球形度Ψmの境界値であり、1.0[-]よりも小さい値とすることができる。ここで、閾値Ψthは0.5[-]であることが好ましい。閾値Ψthを0.5よりも小さくすると、亀裂を特定する評価において過小評価が行われやすくなり、本来、亀裂であると認められる空隙部分が亀裂として特定されないおそれがある。一方、閾値Ψthを0.5よりも大きくすると、気孔を特定する評価において過小評価が行われやすくなり、本来、気孔であると認められる空隙部分が亀裂として特定されてしまうおそれがある。
【0033】
ステップS105では、鉄鉱石ペレットの亀裂体積率Rvcを求める。亀裂体積率Rvcは、上記式(2)から求められるが、上記式(2)に示す総体積V2は、上記式(3)に示す体積Vvのうち、亀裂として特定された空隙部分の体積Vvを合計した値である。なお、上記式(2)に示す見掛体積V1は、上述したように、ステップS101のX線CTスキャンによって得られた三次元画像の表面形状から求めることができる。
【0034】
ステップS106では、ステップS105で求められた亀裂体積率Rvcから粉化率Rpを求める。粉化率Rp及び亀裂体積率Rvcの間には、下記式(4)の一次関数で表される相関関係が成り立つことが分かった。この相関関係を予め求めておけば、亀裂体積率Rvcから粉化率Rpを求めることができる。
【0035】
【0036】
上記式(4)において、a及びbのそれぞれは係数であり、予め決めておくことができる。係数aは正の値であり、係数bは正又は負の値である。係数a,bは、鉄鉱石ペレットの搬送経路や種類に依存するため、この依存要素ごとに予め決めておけばよい。
【0037】
事前に、粉化率Rpの推定対象となる鉄鉱石ペレットと同一種類の鉄鉱石ペレットを用い、粉化率Rpの推定対象となる鉄鉱石ペレットの搬送経路と同一の搬送経路で搬送させることにより、粉化率Rp及び亀裂体積率Rvcを測定することができる。この測定値に基づいて、粉化率Rp及び亀裂体積率Rvcの相関関係(上記式(4))を予め求めておくことができる。
【0038】
上述したように、粉化率Rpを推定する上では、鉄鉱石ペレットが同一の搬送経路で搬送されることを前提としており、搬送時に鉄鉱石ペレットに作用する衝撃が同等であるとみなしている。このため、鉄鉱石ペレットの搬送経路が異なる場合には、各搬送経路について、粉化率Rp及び亀裂体積率Rvcの相関関係を求めておき、この相関関係を用いて亀裂体積率Rvcから粉化率Rpを推定する。一方、鉄鉱石ペレットの種類が異なれば、衝撃に伴う粉化の度合いが異なることがあるため、鉄鉱石ペレットの種類ごとに、粉化率Rp及び亀裂体積率Rvcの相関関係を求めておき、この相関関係を用いて亀裂体積率Rvcから粉化率Rpを推定する。
【0039】
本実施形態によれば、粉化前の鉄鉱石ペレットについて、X線CTスキャンによって得られた三次元画像から亀裂体積率Rvcを測定すれば、粉化率Rp及び亀裂体積率Rvcの相関関係(一次関数)に基づいて粉化率Rpを推定することができる。これにより、鉄鉱石ペレットの搬送時において、鉄鉱石ペレットがどの程度の質量比率(粉化率Rp)で粉化するのかを把握することができる。
【0040】
また、粉化後の鉄鉱石ペレット(粉化物を除く)の質量を把握することができ、鉄鉱石ペレットを高炉に装入するときのペレット比率を予め見積もることができる。ここで、鉄鉱石ペレットの装入量が目標量に到達していない場合には、この不足量に応じて、高炉に装入される鉄鉱石ペレットを予め増やしておくことができる。
【実施例0041】
まず、ロットだけが異なる8つの鉄鉱石ペレット(No.1~No.8)を用いて、粉化率Rp及び亀裂体積率Rvcの相関関係を求めた。具体的には、8つの鉄鉱石ペレットを所定の搬送経路で搬送させることにより、各鉄鉱石ペレットについて、粉化率Rp及び亀裂体積率Rvcをそれぞれ求めた。この結果に基づいて、粉化率Rp及び亀裂体積率Rvcの相関関係(一次関数)を求めた。以下、具体的に説明する。
【0042】
荷役後の鉄鉱石ペレットを50kg(上記式(1)に示す質量M1に相当する)採取し、この鉄鉱石ペレットを105℃で24時間乾燥させることにより、鉄鉱石ペレットに付着しているペレットチップ(粉化物)を鉄鉱石ペレットから分離させやすくした。この後、目開きが6.3mmである篩を用いて篩分けを行い、粒径が6.3mm以下であるペレットチップの質量(上記式(1)に示す質量M2に相当する)を測定した。
【0043】
これにより、上記式(1)に基づいて、8つの鉄鉱石ペレットのそれぞれについて、粉化率Rpを求めた。なお、荷役後の鉄鉱石ペレットでは既に粉化が発生しているが、ペレットチップが鉄鉱石ペレットに付着したままであるとみなし、荷役後の鉄鉱石ペレットの質量を上記式(1)に示す質量M1(粉化前の鉄鉱石ペレットの質量)としている。
【0044】
上述した8つの鉄鉱石ペレットのそれぞれについて、荷役前の鉄鉱石ペレットを20粒採取し、三次元計測X線CT装置(TDM3000H-FP,ヤマト科学株式会社)を用いて、1粒ごとに鉄鉱石ペレットに対してX線CTスキャンを行った。X線CTスキャンの撮影条件を下記表1に示す。画素サイズとしては、鉄鉱石ペレットに含まれる空隙部分(気孔及び亀裂を含む)の検出に支障のない空間分解能(16.6[μm/pixel])に設定した。
【0045】
【0046】
X線CTスキャンによって得られた鉄鉱石ペレットの三次元画像に対して2値化処理を行うことにより、空隙部分(亀裂及び空孔を含む)を抽出した。ここで、2値化処理の閾値を110とし、輝度値が110未満である部分を空隙部分として特定した。次に、閾値Ψthを0.3(実施例1),0.5(実施例2),0.7(実施例3),1.0(比較例)のそれぞれに設定し、空隙部分の中から亀裂を特定した後、亀裂体積率Rvcを求めた。亀裂体積率Rvcの求め方は上述したとおりである。
【0047】
本実施例では、8つの鉄鉱石ペレットのそれぞれについて、20粒の鉄鉱石ペレットを採取したため、各粒の鉄鉱石ペレットについて亀裂体積率Rvcを求めた後、20粒の亀裂体積率Rvcの平均値Rvc_aveを算出した。
【0048】
上述した粉化率Rp及び亀裂体積率Rvc_aveの測定結果を下記表2に示す。下記表2には、鉄鉱石ペレットの見掛体積に対して、空隙部分(亀裂及び空孔を含む)が占める割合である空隙率も示す。
【0049】
【0050】
実施例1~3及び比較例のそれぞれにおいて、鉄鉱石ペレット(No.1~No.8)における粉化率Rp及び亀裂体積率Rvc_aveに基づいて、粉化率Rp及び亀裂体積率Rvcの相関関係(近似式)を求めたところ、下記表3に示すように一次関数で表すことができた。下記表3には、実施例1~3及び比較例の相関関係における決定係数R2も示す。
【0051】
【0052】
上記表3から分かるように、閾値Ψthを1.0よりも小さくすることにより、閾値Ψthを1.0とした場合に比べて、決定係数R2が高くなった。また、閾値Ψthを0.5に設定したとき、決定係数R2が最も高くなった。このため、閾値Ψthを0.5とすることにより、粉化率Rp及び亀裂体積率Rvcの相関関係を最も良く表していることが分かる。
【0053】
次に、粉化率Rpを推定しようとする鉄鉱石ペレットについて、亀裂体積率Rvcを測定した。この鉄鉱石ペレットは、上述した粉化率Rp及び亀裂体積率Rvcの相関関係(一次関数)を求めたときに用いられた鉄鉱石ペレットと同一種類であり、ロットだけが異なる。亀裂体積率Rvcは、上述した鉄鉱石ペレット(No.1~No.8)の亀裂体積率Rvc_aveを測定した方法と同様の方法によって測定した。
【0054】
閾値Ψthを0.5に設定して亀裂体積率Rvcを測定したところ、亀裂体積率Rvcが2.3[vоl%]であった。また、閾値Ψthが0.5であるときの相関関係(上記表3に示す実施例2;Rp=2.72×Rvc+3.27)を用い、測定した亀裂体積率Rvcから粉化率Rpを求めたところ、粉化率(推定値)Rpが9.53[wt%]であった。
【0055】
一方、粉化率Rpを推定しようとする鉄鉱石ペレット(50kg)について、荷役後のペレットチップの質量を測定して粉化率Rpを求めたところ、粉化率(実測値)Rpが9.50[wt%]であった。上述した粉化率Rpの推定結果及び実測結果を下記表4に示す。下記表4から分かる通り、粉化率(推定値)Rpは粉化率(実測値)Rpとほぼ一致した。このことから、本実施例のように粉化率Rpを推定することにより、粉化率Rpの推定精度を担保することができる。
【0056】