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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181703
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20231218BHJP
   F16C 33/80 20060101ALI20231218BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20231218BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20231218BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20231218BHJP
   B60B 35/18 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F16C33/78 Z
F16C33/80
F16C19/38
F16J15/3232 201
F16J15/447
B60B35/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094976
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒川 しおり
【テーマコード(参考)】
3J006
3J042
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J006AE12
3J006AE23
3J006AE30
3J006AE34
3J006AE40
3J006AE49
3J006CA01
3J042AA03
3J042AA09
3J042AA12
3J042BA01
3J042CA10
3J042CA21
3J042DA10
3J216AA02
3J216AA14
3J216AB03
3J216AB38
3J216BA03
3J216BA16
3J216CA02
3J216CA04
3J216CB02
3J216CB03
3J216CB04
3J216CB07
3J216CB18
3J216CB19
3J216CC03
3J216CC14
3J216CC15
3J216CC16
3J216CC33
3J216CC41
3J216DA01
3J216DA02
3J216DA11
3J216EA03
3J216EA05
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA72
3J701BA73
3J701DA09
3J701EA06
3J701EA31
3J701EA49
3J701FA38
3J701FA60
3J701GA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】狭小空間であっても十分なシール性能を発揮して泥水等の異物の侵入を抑制する密封装置を提供する。
【解決手段】外側部材2と、該外側部材に対して同軸回転する内側部材との間を密封する密封装置10であって、内側円筒部110と、スリンガ円板部111と、外側円筒部112とを有するスリンガ11と、前記外側部材の内周面に嵌合する芯体部12と、該芯体部に固着され前記スリンガに摺接する弾性体製のシールリップとを有する第1シール部材14と、前記外側部材の外周面に嵌合される第1円筒部と、該第1円筒部の軸方向外側の一端部から外径側に延びる円板部と、該円板部の外径側の一端部から軸方向の内側へ延び且つ前記スリンガの前記外側円筒部よりは内径側に配され、前記外側円筒部との間に隙間a10による第1ラビリンスR1を形成する第2円筒部とを有する第2シール部材15とが、組み合わされて構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側部材と、該外側部材に対して同軸回転する内側部材との間を密封する密封装置であって、
前記内側部材の外周面に嵌合される内側円筒部と、該内側円筒部の軸方向外側の一端部から前記外側部材の外周面よりもさらに外径側に延びるスリンガ円板部と、前記スリンガ円板部の外径側の一端部から軸方向の内側へ延びる外側円筒部とを有するスリンガと、
前記外側部材の内周面に嵌合する芯体部と、該芯体部に固着され前記スリンガに摺接する弾性体製のシールリップとを有する第1シール部材と、
前記外側部材の外周面に嵌合される第1円筒部と、該第1円筒部の軸方向外側の一端部から外径側に延びる円板部と、該円板部の外径側の一端部から軸方向の内側へ延び且つ前記スリンガの前記外側円筒部よりは内径側に配され、前記外側円筒部との間に隙間による第1ラビリンスを形成する第2円筒部とを有する第2シール部材とが、組み合わされて構成されることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2シール部材の前記円板部と、前記スリンガ円板部との間は、互いが近接した隙間によるラビリンスが形成されることを特徴とする密封装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第2シール部材は、前記スリンガ円板部に摺接する弾性体製のシールリップを備えることを特徴とする密封装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記第2シール部材は、前記スリンガ円板部側に近接する方向に突出した突出部を備えることを特徴とする密封装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記突出部は、前記第2円筒部の軸方向外側の一端部から前記スリンガ円板部に近接するように延び、該スリンガ円板部との間に、前記第1ラビリンスから連続する隙間によるラビリンスを形成することを特徴とする密封装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記第2シール部材は、前記第2円筒部の軸方向内側の他端部から外径側へ延び、前記外側円筒部の外周面の少なくとも一部と間隔を設けて形成された延出部を備えることを特徴とする密封装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記スリンガ円板部は、前記外側部材の軸方向の外側端面との間に隙間によるラビリンスを形成することを特徴とする密封装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側部材と、該外側部材に対して同軸回転する内側部材との間に密封する密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の軸受装置用の密封装置としては、内側部材に装着されるスリンガと、外側部材に装着される芯金とを組み合わせ、芯金に設けられたシールリップをスリンガに摺接させ、外方空間からの泥水等の侵入を防止するものが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、上記構成に加え、外側部材の外周面よりも外径側に配される円筒状部分を有した断面U字型の外付けスリンガを組み合わせ、泥水等の異物の侵入を抑制したものが開示されている。また、下記特許文献2には、スリンガを外側部材の外周面よりも外径側に延出して形成するとともに、外側部材の外周面に嵌合させた小さなスリンガとで、外側部材の外周面側からの泥水等の侵入を抑制したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-197975号公報
【特許文献2】特開2010-053893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような密封装置において、シール性能を向上させる手段のひとつとして、シールリップの本数を増やすことが考えられるが、内側部材の外周面と外側部材の内周面との間の空間が狭い軸受装置では、内側部材の外周面と外側部材の内周面との間にサイズの小さい密封装置しか装着できない場合があり、そのような密封装置では、シールリップの本数を増やしにくい。そこで、シールリップの本数が少ないことを補うために、特許文献1の図1に示すように外側部材の軸方向の外側端面とハブフランジに沿って配されたスリンガとの間を密封するシールリップを設けることが考えられる。しかし、外側部材の軸方向の外側端面とハブフランジとの間の空間が狭い場合、シールリップを設けることが難しいことが問題となる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、狭小空間であっても十分なシール性能を発揮して泥水等の異物の侵入を抑制する密封装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の密封装置は、外側部材と、該外側部材に対して同軸回転する内側部材との間を密封する密封装置であって、前記内側部材の外周面に嵌合される内側円筒部と、該内側円筒部の軸方向外側の一端部から前記外側部材の外周面よりもさらに外径側に延びるスリンガ円板部と、前記スリンガ円板部の外径側の一端部から軸方向の内側へ延びる外側円筒部とを有するスリンガと、前記外側部材の内周面に嵌合する芯体部と、該芯体部に固着され前記スリンガに摺接する弾性体製のシールリップとを有する第1シール部材と、前記外側部材の外周面に嵌合される第1円筒部と、該第1円筒部の軸方向外側の一端部から外径側に延びる円板部と、該円板部の外径側の一端部から軸方向の内側へ延び且つ前記スリンガの前記外側円筒部よりは内径側に配され、前記外側円筒部との間に隙間による第1ラビリンスを形成する第2円筒部とを有する第2シール部材とが、組み合わされて構成されることを特徴とする。
【0008】
上記密封装置において、前記第2シール部材の前記円板部と、前記スリンガ円板部との間は、互いが近接した隙間によるラビリンスが形成されてもよい。
【0009】
また、上記密封装置において、前記第2シール部材は、前記スリンガ円板部に摺接する弾性体製のシールリップを備えてもよい。
【0010】
また、上記密封装置において、前記第2シール部材は、前記スリンガ円板部側に近接する方向に突出した突出部を備えてもよい。
【0011】
また、上記密封装置において、前記突出部は、前記第2円筒部の軸方向外側の一端部から前記スリンガ円板部に近接するように延び、該スリンガ円板部との間に、前記第1ラビリンスから連続する隙間によるラビリンスを形成してもよい。
【0012】
さらに、上記密封装置において、前記第2シール部材は、前記第2円筒部の軸方向内側の他端部から外径側へ延び、前記外側円筒部の外周面の少なくとも一部と間隔を設けて形成された延出部を備えてもよい。
【0013】
そして、上記密封装置において、前記スリンガ円板部は、前記外側部材の軸方向の外側端面との間に隙間によるラビリンスを形成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の密封装置は上述した構成とされるため、狭小空間であっても十分なシール性能を発揮して泥水等の異物の侵入を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】各実施形態に係る密封装置が装着される軸受装置の一例を示す概略的縦断面図である。
図2図1のX部の拡大図であって、第1実施形態に係る密封装置を模式的に示す概略的縦断面図である。
図3】(a)及び(b)は、第2実施形態に係る密封装置とその変形例を模式的に示す概略的縦断面図である。
図4】第3実施形態に係る密封装置を模式的に示す概略的縦断面図である。
図5】(a)及び(b)は、第4実施形態に係る密封装置とその変形例を模式的に示す概略的縦断面図である。
図6】(a)及び(b)は、第5実施形態に係る密封装置とその変形例を模式的に示す概略的縦断面図である。
図7図1のY部の拡大図であって、第6実施形態に係る密封装置を模式的に示す概略的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、各実施形態について図面に基づいて説明する。なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。まず、図1図2を参照しながら第1実施形態に係る密封装置10について説明する。
第1実施形態に係る密封装置10は、外側部材(2)と、外側部材(2)に対して同軸回転する内側部材(5)との間を密封する装置である。密封装置10は、スリンガ11と、第1シール部材14と、第2シール部材15とが組み合わされて構成される。スリンガ11は、内側部材の外周面に嵌合される内側円筒部110と、内側円筒部110の軸方向外側の一端部110aから外側部材の外周面よりもさらに外径側に延びるスリンガ円板部111と、スリンガ円板部111の外径側の一端部111aから軸方向の内側へ延びる外側円筒部112とを有する。第1シール部材14は、外側部材の内周面に嵌合する芯体部12と、芯体部12に固着されスリンガ11に摺接する弾性体製のシールリップ131,132,133とを有する。第2シール部材15は、外側部材の外周面に嵌合される第1円筒部160と、第1円筒部160の軸方向外側の一端部160aから外径側に延びる円板部151と、円板部151の外径側の一端部161aから軸方向の内側へ延び且つスリンガ11の外側円筒部112よりは内径側に配され、外側円筒部112との間に隙間a10による第1ラビリンスR1を形成する第2円筒部152とを有する。
なお、以下において軸Lに沿って車輪に向く側(図1等において右側)を車輪側、車体に向く側(図1等において左側)を車体側という。また、図2図6に示す第1~4実施形態では、車輪側を軸方向の外側、車体側(環状空間S側)を軸方向の内側として説明し、図7の第5実施形態では、車輪側を軸方向の内側、車体側(環状空間S側)を軸方向の外側として説明する。また、図中において、第1シール部材14及び第2シール部材15における二点鎖線で示している部分は、変形前の原形状を示している。
以下、詳述する。
【0017】
図1は、自動車の車輪(不図示)を軸回転可能に支持する軸受装置1を示す。この軸受装置1は、大略的に、上述の外側部材に相当する外輪2と、上述の内側部材に相当する内輪5と、外輪2と内輪5との間に介装される2列の転動体(ボール)6…とを含んで構成される。内輪5は、ハブ輪3と内輪部材4とで回転部材として構成され、内輪部材4はハブ輪3の車体側に嵌合一体とされる。ハブ輪3にはドライブシャフト7が同軸的にスプライン嵌合され、ドライブシャフト7は等速ジョイント8を介して不図示の駆動源(駆動伝達部)に連結される。ドライブシャフト7はナット9によって、ハブ輪3と一体化され、ハブ輪3のドライブシャフト7からの脱落が防止されている。内輪5(ハブ輪3及び内輪部材4)は、外輪2に対して、軸L回りに回転可能な回転部材とされ、外輪2と、内輪5とにより、相対的に回転する2部材が構成され、環状空間Sが形成される。環状空間S内には、2列の転動体6…が、リテーナ6aに保持された状態で、外輪2の軌道輪2a、ハブ輪3及び内輪部材4の軌道輪3a,4aを転動可能に介装されている。ハブ輪3は、円筒形状のハブ輪本体30と、ハブ輪本体30より立上基部31を介して径方向外方に延出するよう形成されたハブフランジ32とを有し、ハブフランジ32にボルト33及び不図示のナットによって車輪が取付固定される。
【0018】
外輪2の内周面2cとハブ輪3の外周面3bとの隙間a1の寸法及び外輪2の軸方向外側の端面2dとハブフランジ32の車体側のフランジ面32aとの隙間a2の寸法は、特に限定されないが、外輪2の内周面2cとハブ輪3の外周面3bとの隙間a1は7mm以下に構成されるものとしてよい。また外輪2の軸方向外側の端面2dとハブフランジ32の車体側のフランジ面32aとの隙間a2の寸法は2.4mm以下に構成されるものとしてもよい。
【0019】
図2は、図1のX部を拡大した部分断面図であり、図2には、第1実施形態に係る密封装置10を示している。密封装置10は、車輪側となる外輪2とハブ輪3との間の端部に装着され、スリンガ11と、第1シール部材14と、第2シール部材15とが組み合わされて構成される。スリンガ11は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成され、図2に示すように片側の断面が略U字形状の円筒形とされる。スリンガ11は、ハブ輪3の外周面3bに嵌合される内側円筒部110と、内側円筒部110の軸方向の外側(車輪側)の一端部110aから外輪2の外周面2bよりもさらに外径側に延びるスリンガ円板部111と、スリンガ円板部111の外径側の一端部111aから軸方向の内側(車体側)へ延びる外側円筒部112とを有する。スリンガ円板部111は、車体側の面111bと外輪2の車輪側の端面2dとの間に径方向に延びる隙間a20による第2ラビリンスR2を形成する。スリンガ円板部111は、車輪側の面111cがハブフランジ32の車体側のフランジ面32aに当接する。
【0020】
第1シール部材14は、芯体部12とシール部13とを有する。芯体部12は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成され、図2に示すように片側の断面が略逆L字形状の円筒形とされる。芯体部12は、外輪2の内周面2cに嵌合される円筒部120と、円筒部120の車輪側の一端部120aから内径側に延びる円板部121とを有する。芯体部12は、外輪2の車輪側の端面2dよりも車体側に位置するように設けられている。
【0021】
シール部13は、ゴム等の弾性体からなり、芯体部12に対して加硫接着されることで一体成形されている。シール部13は、シール基部130と、シール基部130から延出された2個のサイドリップ(シールリップ)131,132及びラジアルリップ(シールリップ)133と、環状突部134とを有している。サイドリップ131,132は、拡径しながら車輪側に延出してスリンガ11のスリンガ円板部111の車体側の面111bに弾接しながら摺接し、ラジアルリップ133は、スリンガ11の内側円筒部110の外周面110bに弾接しながら摺接する。
【0022】
シール基部130は、芯体部12における円板部121の車体側の面121aの内径側の一部を覆って円板部121の内側端部121bを回り込み、円板部121の車輪側の面121cの全面を覆うように芯体部12に固着一体とされている。シール基部130の外径側の端部には、外径側に隆起する環状突部134が形成されている。環状突部134は、第1シール部材14が外輪2の内周面2cに嵌合された際、外輪2の内周面2cとシール基部130との間に圧縮した状態で介在するように形成されている。環状突部134が圧縮した状態で介在することにより、外輪2の内周面2cと芯体部12の円筒部120との嵌合部位へ泥水等が侵入することを抑制でき、発錆を防止する。
【0023】
第2シール部材15は、芯体部16と、シール部17とを有する。芯体部16は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成され、図2に示すように片側の断面が略U字形状の円筒形とされる。芯体部16は、外輪2の外周面2bに嵌合される第1円筒部160と、第1円筒部160の車輪側の一端部160aから外径側に延びる円板部161と、円板部161の外径側の一端部161aから車体側に延びる第2円筒部162とを有する。芯体部16は、外輪2の車輪側の端面2dよりも車体側に位置するように設けられている。
【0024】
シール部17は、ゴム等の弾性体からなり、芯体部16に対して加硫接着されることで一体成形されている。シール部17は、シール基部170と、シール基部170から延出された2個のサイドリップ(シールリップ)173,174と、環状突部175とを有している。シール基部170は、芯体部16の円板部161の車輪側の面161bの全面を覆うシール円板部171と、芯体部16の第2円筒部162の外周面162aの全面を覆う第2円筒部172とにより、芯体部16に固着一体とされている。
【0025】
シール基部170のシール円板部171の内径側の端部には、内径側に隆起する環状突部175が形成されている。環状突部175は、第2シール部材15が外輪2の外周面2bに嵌合された際、外輪2の外周面2bとシール円板部171との間に圧縮した状態で介在するように形成されている。
【0026】
サイドリップ173,174は、シール基部170のシール円板部171から拡径しながら車輪側に延出してスリンガ11のスリンガ円板部111の車体側の面111bに弾接しながら摺接する。
【0027】
第2シール部材15は、芯体部16の第1円筒部160が第2シール部材15の第1円筒部とされる。また、第2シール部材15は、芯体部16の円板部161とシール部17のシール円板部171とにより構成された円板部151と、芯体部16の第2円筒部162とシール部17の第2円筒部172とにより構成された第2円筒部152とを備える。この第2円筒部152の一部であるシール部17の外周面172aとスリンガ11の外側円筒部112の内周面112aとの間に軸方向の車輪側に延びる隙間a10による第1ラビリンスR1が形成される。
【0028】
上述のとおり、本実施形態に係る密封装置10は、スリンガ11と第1シール部材14と第2シール部材15とが組み合わされて構成され、第1シール部材14がスリンガ11に摺接するシールリップ131,132,133を備えていることに加え、第1ラビリンスR1が形成されるので、第1シール部材14のシールリップの本数を増やさなくても高いシール性能を有する。よって、シールリップの本数の増加によるトルクの増大を抑制することができる。また密封装置10は、外輪2の内周面2cとハブ輪3の外周面3bとの間a1や、外輪2の軸方向外側の端面2dとハブフランジ32の車体側のフランジ面32aとの間a2が、シールリップの本数を増やす空間が確保できない狭小空間であっても、上記構成の第2シール部材15とスリンガ11とによって、高いシール性能を発揮できる。
【0029】
また、外輪2の外周面2bを伝ってきた泥水は、外輪2の外周面2bに嵌合された第2シール部材15によってそれ以上の侵入が抑制することができる。さらに、第2シール部材15に設けられた環状突部175が圧縮した状態で介在することによって、外輪2の外周面2bを伝ってきた泥水のそれ以上の侵入が抑制される。そして、第2シール部材15はシールリップ173,174を備えているので、例え泥水等の異物が第1ラビリンスR1を通過したとしてもそれ以上の侵入がシールリップ173,174によって抑制され、第1シール部材14側にまで到達しにくくなる。また、スリンガ円板部111の車体側の面111bと外輪2の車輪側の端面2dとの間が狭ければ狭いほど、径方向に延びる隙間a20による第2ラビリンスR2となり、シール性能の向上を図ることができる。
【0030】
<第2実施形態>
次に、図3(a)に示す第2実施形態に係る密封装置10Aと図3(b)に示す図3(a)の変形例である密封装置10A’について説明する。なお、第1実施形態の密封装置10と共通する部分の構成及び効果の説明は省略する。
密封装置10A,10A’は、第1シール部材14のシール部13及び第2シール部材15のシール部17の構成が第1実施形態の密封装置10と異なり、スリンガ11と第1シール部材14の芯体部12と第2シール部材15の芯体部16との構成は、第1実施形態の密封装置10と略同一である。また、スリンガ11がスリンガ円板部111と外輪2の車輪側の端面2dとの間に第2ラビリンスR2を形成する点も第1実施形態と略同様である
【0031】
第1シール部材14のシール部13は、シール基部130から延出したサイドリップ(シールリップ)131とラジアルリップ(シールリップ)133とを有する。シール基部130から延出したサイドリップが2個から1個に減っている点で、シール部13は第1実施形態のものと異なっており、その他の構成は第1実施形態のものと略同一である。
【0032】
第2シール部材15のシール部17は、シール基部170から延出したサイドリップ174を有し、サイドリップが2個から1個に減っている点で(図3(a))、第1実施形態のものと異なっている。また、シール基部170は、芯体部16の第2円筒部162の車体側の一端部162bを覆うように芯体部16に固着一体とされている点で、第1実施形態のものと異なっている。そして、第2シール部材15は、突出部18を備えている点で第1実施形態のものと異なっている。
【0033】
第2シール部材15は、シール部17のシール基部170からスリンガ円板部111側に近接する方向である車輪側に突出した突出部18を備えている。突出部18は、第2円筒部172の外周面172aと略面一となるように延出して形成され、その先端部18aはスリンガ円板部111に近接しながらも非接触とされ、スリンガ円板部111との間に第1ラビリンスR1から内径側に連続する隙間a30による第3ラビリンスR3を形成する。
【0034】
図3(a)に示す第2実施形態に係る密封装置10A及び図3(b)に示す密封装置10Aの変形例である密封装置10A’は、突出部18により、突出部18とスリンガ円板部111との間が小さくなって異物が通りにくくなる。また、突出部18はスリンガ円板部111に近接するように形成されることによって、第1ラビリンスR1のラビリンス長が長くなるとともに第1ラビリンスR1に連続し、径方向に延びる隙間a30による第3ラビリンスR3が形成され、シール性能がより向上する。第1ラビリンスR1及び第3ラビリンスR3により高いシール性能を有するため、図3(b)に示す密封装置10A’に示すように、第2シール部材15がシールリップを備えていなくてもよい。また、密封装置10A’は、スリンガ11と第2シール部材15との間にシールリップを設ける隙間がない場合に好適に使用できる。密封装置10A,10A’は、第3ラビリンスR3を備えているため、第1実施形態の密封装置10よりもシールリップの個数が少ない構成であっても高いシール性能を維持できる。
【0035】
<第3実施形態>
次に図4に示す第3実施形態に係る密封装置10Bについて説明する。なお、第1実施形態の密封装置10と共通する部分の構成及び効果の説明は省略する。
図4の密封装置10Bは、シール部13,シール部17の構成が第1実施形態の密封装置10と異なり、スリンガ11と第1シール部材14の芯体部12と第2シール部材15の芯体部16との構成は、第1実施形態の密封装置10と略同一である。また、スリンガ11がスリンガ円板部111と外輪2の車輪側の端面2dとの間に第2ラビリンスR2を形成する点も第1実施形態と略同様である
【0036】
第1シール部材14のシール部13は、シール基部130から延出したサイドリップ(シールリップ)132とラジアルリップ(シールリップ)133とを有する。シール基部130から延出したサイドリップが2個から1個に減っている点で、シール部13は、第1実施形態のものと異なっており、その他の構成は第1実施形態のものと略同一である。
【0037】
第2シール部材15のシール部17は、シール基部170のシール円板部171とサイドリップ173,174と環状突部175との構成は、第1実施形態のものと略同一である。シール部17は、シール基部170は、芯体部16の第2円筒部162の車体側の一端部162bを覆うように芯体部16に固着一体とされている点で、第1実施形態のものと異なっている。また、第2シール部材15は、延出部19を備えている点で第1実施形態のものと異なっている。
【0038】
第2シール部材15は、第2円筒部152を構成する一部であるシール部17の第2円筒部172の車体側の端部172bから外径側に延び、スリンガ11の外側円筒部112の外周面112bの車体側の一部と間隔を設けて形成された延出部19を備える。延出部19は、第2円筒部172の車体側の端部172bから外径側に延びる円板部191と、円板部191の外径側の一端部191aから車輪側に延びる円筒部192とを備える。延出部19は、円筒部192の内周面192aとスリンガ11の外側円筒部112の外周面112bの車体側の一部と間隔を設けて、軸方向に延びる隙間a40による第4ラビリンスR4を形成する。また、延出部19は、円板部191の車輪側の面191bと、スリンガ11の外側円筒部112の車体側の端面112cとの間に径方向の延びる隙間a50による第5ラビリンスR5を形成する。
【0039】
密封装置10Bは、延出部19の円筒部192によって、スリンガ11の外側円筒部112の外周面112bの車体側の一部が覆われている。これにより、外部から泥水等の異物が密封装置10B内に侵入しにくくなって第1ラビリンスR1まで至ることが抑制される。また、密封装置10Bは、第4ラビリンスR4、第5ラビリンスR5、第1ラビリンスR1が連続して形成されることで、全体のラビリンス長が長くなっている。また、第4ラビリンスR4、第5ラビリンスR5、第1ラビリンスR1によって屈折した連続ラビリンスになっているため、密封装置10Bは、内部への泥水等の異物の侵入が抑制されて高いシール性能を有する。
【0040】
<第4実施形態>
次に、図5(a)に示す第4実施形態に係る密封装置10Cについて説明する。なお、第1実施形態の密封装置10と共通する部分の構成及び効果の説明は省略する。
図5(a)の密封装置10Cは、第2シール部材15の構成が第1実施形態の密封装置10と異なり、スリンガ11及び第1シール部材14の構成は第1実施形態の密封装置10と略同一である。スリンガ11がスリンガ円板部111と外輪2の車輪側の端面2dとの間に第2ラビリンスR2を形成する点も第1実施形態と略同様である。
【0041】
第2シール部材15は、断面視においてU字状且つ環状の芯体部16のみで構成されており、シール部17を備えていない点で第1実施形態のものと異なっている。芯体部16は、第1円筒部160、円板部161、第2円筒部162を備えた2重円筒形状とされ、第2円筒部162の外周面162aとスリンガ11の外側円筒部112の内周面112aとの間に第1ラビリンスR1を形成する。芯体部16は、円板部161の車輪側の面161bが外輪2の車輪側の端面2dと略面一か外輪2の車輪側の端面2dよりもわずかに車輪側に突出するように設けられている。芯体部16は、円板部161の車輪側の面161bとスリンガ11のスリンガ円板部111の車体側の面111bとの間に径方向に延びる隙間a60の第6ラビリンスR6を形成する。
【0042】
密封装置10Cは、第2シール部材15の芯体部16がスリンガ11との間に軸方向に延びる第1ラビリンスR1及び径方向に延びる第6ラビリンスR6とを形成する。また、密封装置10Cは、第6ラビリンスR6と第2ラビリンスR2が連続して形成されることにより径方向のラビリンス長が長くなる。そのため、密封装置10Cは、第1ラビリンスR1、第6ラビリンスR6により第2シール部材15にシールリップを設けなくても高いシール性能を有する。
【0043】
図5(b)は第4実施形態の密封装置10Cの変形例である密封装置10C’を示している。図5(b)では、外輪2の車輪側の端面2dが図5(a)よりも車体側に位置するように設けられている。また密封装置10C’では、第2シール部材15の芯体部16の円板部161が外輪2の車輪側の端面2dよりも突出しているため、第1円筒部160の車体側の一端部160bが第2円筒部162の車体側の一端部162bよりも車体側に延伸している。これにより、芯体部16が外輪2の外周面2bに安定して嵌合することができる。また、図5(b)に示すように外輪2の車輪側の端面2dとハブフランジ32の車体側のフランジ面32aとの間の隙間a2が大きい場合でも、密封装置10C’では、第2シール部材15の芯体部16の円板部161を端面2dよりも突出させ、スリンガ円板部111に近接させて配置することができる。よって、円板部161の車輪側の面161bとスリンガ11のスリンガ円板部111の車体側の面111bとの間に径方向に延びる隙間a60を形成し、隙間a60による第6ラビリンスR6を形成することができる。すなわち、第2ラビリンスR2が形成されていなくても、第1ラビリンスR1及び第6ラビリンスR6により、密封装置10C’は高いシール性能を有する。
【0044】
<第5実施形態>
次に、図6(a),図6(b)を参照しながら、第5実施形態の密封装置10Dとその変形例である密封装置10D’について説明する。なお、密封装置10D及び密封装置10D’の説明では、第4実施形態の密封装置10Cと共通する部分の構成及び効果の説明は省略する。図6(a)の密封装置10Dは、第2シール部材15がシール部17を備えている点で第4実施形態の密封装置10Cと異なっており、スリンガ11及び第1シール部材14の構成は略同一である。
【0045】
第2シール部材15の芯体部16の構成は第4実施形態の密封装置10Cと略同一である。芯体部16は、円板部161の外径側の一端部161aと第2円筒部162の外周面162aの全面と車体側の一端部162bとを覆うようにシール部17が固着一体とされている。シール部17は、芯体部16の第2円筒部162の外周面162aの全面を覆う第2円筒部172を有している。第2シール部材15は、芯体部16の第2円筒部162及びシール部17の第2円筒部172により構成された第2円筒部152を有する。密封装置10Dは、第2シール部材15の第2円筒部152とスリンガ11の外側円筒部112との間の隙間によって軸方向に延びる隙間a10に形成された第1ラビリンスR1を備える。
【0046】
また、第2シール部材15は、シール部17の第2円筒部172の車輪側の一端部172cからスリンガ11のスリンガ円板部111に近接する方向である車輪側に突出した突出部18を備えている。突出部18は、その外周面が第2円筒部172の外周面172aと略面一となるように形成され、その先端部18aは芯体部16の円板部161の車輪側の面161bよりも車輪側に突出して、スリンガ円板部111に近接するように延びる。スリンガ11は、スリンガ円板部111との間に第1ラビリンスR1から連続し、径方向に延びる隙間a30による第3ラビリンスR3を形成する。そして、密封装置10Dは、第3ラビリンスR3よりもラビリンス幅は大きいが、第3ラビリンスR3に連続してスリンガ円板部111と芯体部16の円板部161との隙間a60により形成された第6ラビリンスR6と、スリンガ円板部111と外輪2の車輪側の端面2dとの隙間a20により形成された第2ラビリンスR2とを備える。突出部18により第1ラビリンスR1のラビリンス長が長くなることに加え、第3ラビリンスR3、第6ラビリンスR6、第2ラビリンスR2が連続することで径方向に延びるラビリンス長が長くなり、密封装置10Dは高いシール性能を有する。
【0047】
図3(a),図3(b)の密封装置10A,10A’及び図6(a)の密封装置10Dでは、シール部17のシール基部170をスリンガ円板部111に近接する方向に突出させることで突出部18を構成しているが、これに限定されることはない。図6(b)に示す密封装置10D’では、第2シール部材15は弾性体製のシール部17を有さず、芯体部16により構成された突出部18を有している。突出部18は、芯体部16の円板部161と第2円筒部162との間に形成されており、円板部161の外径側の一端部161aからスリンガ円板部111に近接するように折曲して構成されている。よって、密封装置10D’は、突出部18が第2シール部材15の芯体部16の一部として構成されても、突出部18とスリンガ11のスリンガ円板部111との隙間a30による第3ラビリンスR3を構成し、高いシール性能を有する。
【0048】
<第6実施形態>
次に図1のY部を拡大した部分断面図である図7を参照しながら第6実施形態に係る密封装置20について説明する。図7の密封装置20は、上述した外輪2の車輪側に設けられている図2図6に示す密封装置10~10D’と異なり、外輪2の車体側に設けられている。密封装置20は、車体に設けられた磁気センサ(不図示)に対峙するように設けられた磁気エンコーダ214がスリンガ21に設けられている。以下、詳述する。なお、図7の密封装置20においては、車輪側(環状空間S側)を軸方向の内側、車体側を軸方向の外側として説明する。また、第1実施形態と共通する部分の構成及び効果の説明は省略する。
【0049】
密封装置20は、スリンガ21と、第1シール部材24と、第2シール部材25とが組み合わされて構成される。スリンガ21は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成され、図7に示すように片側の断面が略U字形状の円筒形とされる。スリンガ21は、内輪部材4の外周面4bに嵌合される内側円筒部210と、軸方向の外側(車体側)の一端部210aから外輪2の外周面2bよりもさらに外径側に延びるスリンガ円板部211と、スリンガ円板部211の外径側の一端部211aから軸方向の内側(車輪側)へ延びる外側円筒部212とを有する。スリンガ円板部211は、車体側の面211cが内輪部材4の車体側の面4cと略面一になるように設けられ、車輪側の面211bと外輪2の車体側の端面2eとの間に径方向に延びる隙間a20’による第2ラビリンスR2を形成する。
【0050】
また、スリンガ21は、スリンガ円板部211の車体側の面211cの内径側の一部に、N極とS極とが周方向に交互に着磁された円板状の磁気エンコーダ214が設けられている。磁気エンコーダ214は、車体に設けられた磁気センサ(不図示)に対峙するように設けられており、磁気センサと磁気エンコーダ214により車輪の回転速度等を検出することができる。
【0051】
第1シール部材24は、芯体部22とシール部23とを有する。芯体部22は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成され、図7に示すように片側の断面が略逆L字形状の円筒形とされる。芯体部22は、外輪2の内周面2cに嵌合される円筒部220と、円筒部220の車体側の一端部220aから内径側に延びる円板部221とを有する。芯体部22は、外輪2の車体側の端面2eよりも車輪側に位置するように設けられている。
【0052】
シール部23は、ゴム等の弾性体からなり、芯体部22に対して加硫接着されることで一体成形されている。シール部23は、シール基部230と、シール基部230から延出されたサイドリップ(シールリップ)231及びラジアルリップ(シールリップ)232と、環状突部234とを有している。サイドリップ231は、拡径しながら車体側に延出してスリンガ21のスリンガ円板部211の車輪側の面211bに弾接しながら摺接し、ラジアルリップ232は、スリンガ21の内側円筒部210の外周面210bに弾接しながら摺接する。
【0053】
シール基部230は、芯体部22における円板部221の車輪側の面221aの内径側の一部から円板部221の内側端部221bを回り込み、円板部221の車体側の面221cの全面を覆うように芯体部22に固着一体とされている。シール基部230の外径側の端部には、外径側に隆起する環状突部234が形成されている。環状突部234は、第1シール部材24が外輪2の内周面2cに嵌合された際、外輪2の内周面2cとシール基部230との間に圧縮した状態で介在するように形成されている。環状突部234が圧縮した状態で介在することにより、外輪2の内周面2cと芯体部22の円筒部220との嵌合部位へ泥水等が侵入することを抑制でき、発錆を防止する。
【0054】
第2シール部材25は、芯体部26と、シール部27とを有する。芯体部26は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成され、図7に示すように片側の断面が略U字形状の円筒形とされる。芯体部26は、外輪2の外周面2bに嵌合される第1円筒部260と、第1円筒部260の車体側の一端部260aから外径側に延びる円板部261と、円板部261の外径側の一端部261aから車輪側に延びる第2円筒部262とを有する。芯体部26は、外輪2の車体側の端面2eよりも車輪側に位置するように設けられている。
【0055】
シール部27は、ゴム等の弾性体からなり、芯体部26に対して加硫接着されることで一体成形されている。シール部27は、シール基部270と、シール基部270から延出されたサイドリップ(シールリップ)273を有している。シール基部270は、芯体部26の円板部261の車体側の面261bの大部分の面を覆って芯体部16に固着一体とされている。サイドリップ273は、シール基部270から拡径しながら車体側に延出して形成されてスリンガ21のスリンガ円板部211の車輪側の面211bに弾接しながら摺接する。
【0056】
第2シール部材25は、芯体部26の第1円筒部260が第2シール部材25の第1円筒部とされ、芯体部26の第2円筒部262が第2シール部材25の第2円筒部とされる。また、第2シール部材25は、芯体部26の円板部261と当該円板部261に固着されたシール基部270とにより構成された円板部251を備える。第2シール部材25は、芯体部26の第2円筒部262の外周面262aとスリンガ21の外側円筒部212の内周面212aとの間に軸方向の車輪側に延びる隙間a10’による第1ラビリンスR1が形成される。
【0057】
上述のとおり、本実施形態に係る密封装置20は、スリンガ21と第1シール部材24と第2シール部材25とが組み合わされて構成され、第1シール部材24がスリンガ21に摺接するシールリップ231,232を備えていることに加え、第1ラビリンスR1が形成されるので、第1シール部材24のシールリップの本数を増やさなくても高いシール性能を有する。よって、シールリップの本数の増加によるトルクの増大を抑制することができる。また密封装置20は、外輪2の内周面2cと内輪部材4の外周面4bとの間a1’やスリンガ21の車輪側の面211bと外輪2の車体側の端面2eとの間に径方向に延びる隙間a2’がシールリップの本数を増やす空間が確保できない狭小空間であっても、上記構成の第2シール部材25とスリンガ21とによって、高いシール性能を発揮できる。
【0058】
また、外輪2の外周面2bを伝ってきた泥水は、外輪2の外周面2bに嵌合された第2シール部材25によってそれ以上の侵入が抑制することができる。第2シール部材25はシールリップ273を備えているので、例え泥水等の異物が第1ラビリンスR1を通過したとしてもそれ以上の侵入がシールリップ273によって抑制され、第1シール部材24側にまで到達しにくくなる。また、スリンガ円板部211の車輪側の面211bと外輪2の車体側の端面2eとの間a2’が狭ければ狭いほど、径方向に延びる隙間a20’による第2ラビリンスR2となり、シール性能の向上を図ることができる。
【0059】
上述した各実施形態の密封装置10~10D’,20は、図面の形状・構成に限定されることはない。例えば、各芯体部や各スリンガは、鋼板に限定されず硬質な樹脂材料等で形成されてもよい。また、各シールリップは、その形状や個数は図示したものに限定されることはなく、またゴム材以外の弾性を有する樹脂材等で構成されてもよい。
【0060】
密封装置10~10D’では、突出部18または延出部19のいずれか一方を備える若しくは突出部18、延出部19のいずれも備えない構成を示しているが、突出部18、延出部19の両方を備えたものであってもよい。また、延出部19は、シール部17から外径側に延びて形成されることに限定されず、芯体部16の第2円筒部162の車体側の端部162bから外径側に延びて形成されてもよい。また、突出部18及び延出部19は、いずれか一方がシール部17から形成され、他方が芯体部16から形成される構成であってもよい。
【0061】
密封装置20が備える磁気エンコーダ214は、図示したものに限定されず、その形状や設けられる位置は適宜設計されればよい。また、図7では第2シール部材25が突出部及び延出部を備えない構成であるが、それらの一方もしくは両方を備える構成であってもよい。また、第2シール部材25が密封装置10~10D’と同様に、内径側に隆起する環状突部がシール部27に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 軸受装置
2 外側部材(外輪)
3 ハブ輪
4 内輪部材
5 内側部材(内輪)
10~10D’,20 密封装置
11,21 スリンガ
110,210 内側円筒部
111,211 スリンガ円板部
112,212 外側円筒部
12,22 芯体部
131,132,133,231,232 シールリップ
14,24 第1シール部材
15,25 第2シール部材
173,174,273 シールリップ
18 突出部
19 延出部
R1 第1ラビリンス
R2 第2ラビリンス
R3 第3ラビリンス
R4 第4ラビリンス
R5 第5ラビリンス
R6 第6ラビリンス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7