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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181714
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】作業用台船の電気供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20231218BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20231218BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H02J7/34 J
H02J7/34 H
H02J3/32
H02J3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094993
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】514309239
【氏名又は名称】熊本ドック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃司
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HB02
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA05
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】夜間停泊中の騒音対策に功を奏し、確実な蓄電と電力供給を行うことができる作業用台船の電力供給システムを提供する。
【解決手段】作業に使用されるクレーンやポンプといった機器からなる作業用負荷と、作業員の居住区画に使用される機器からなる生活用負荷と、作業用負荷と生活用負荷へ送電する配電盤と、配電盤に接続される第一発電機と、第一発電機と同様に配電盤に接続される第二発電機と、第二発電機により発電された電力を、配電盤を介して蓄電する蓄電装置と、を有したことにより課題を解決した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用台船に搭載された負荷への電力供給を行うシステムであって、
作業に使用されるクレーンやポンプといった機器からなる作業用負荷と、
作業員の居住区画に使用される機器からなる生活用負荷と、
前記作業用負荷と前記生活用負荷へ送電する配電盤と、
前記配電盤に接続される第一発電機及び第二発電機と、
前記発電機と同様に前記配電盤に接続される蓄電装置と、を備え、
前記蓄電装置は、
前記配電盤を介して前記第二発電機により発電された電力を蓄電することを特徴とする作業用台船の電力供給システム。
【請求項2】
前記作業用台船には、
前記作業用台船の横移動や定点保持のために用いられるスラスターを備え、
前記スラスターの駆動エンジンを前記第二発電機もしくは別途設けられた第三発電機と接続することにより、
前記第二発電機又は第三発電機を稼動させることを特徴とした請求項1に記載された作業用台船の電力供給システム。
【請求項3】
前記第二発電機は、
作業中に前記第一発電機により発電された電力により前記作業用負荷及び前記生活用負荷への電力供給が行われている際には、
発電した電力を、前記配電盤を介して前記蓄電装置へ蓄電し、
作業中の消費電力が少ない軽作業時には、
発電した電力を、前記配電盤を介して前記作業用負荷及び前記生活用負荷への電力供給を行い、そこで生じた余剰電力を、配電盤を介して蓄電装置へ蓄電することを特徴とした請求項1に記載された作業用台船の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は港湾や海洋で工事を行う際に使用される作業用台船の電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
港湾や海洋で工事を行う際に使用される作業用の台船は、クレーンやポンプ等の作業用機器と長期間の作業に備えた居住設備とを備えている。
【0003】
この作業用機器と居住設備とは、作業用負荷と生活用負荷としてどちらも使用に電力供給を行う必要がある。
【0004】
そこで従来、作業用台船の電力供給の手段として、発電容量の大きい主発電機と該主発電機よりも発電容量の小さい補発電機を備えていた。
【0005】
主発電機は、日中の作業時に作業用負荷と生活用負荷の電力供給に用いられており、要するに必要となる電力が大きいときに使用するものである。
【0006】
補発電機は、主に夜間の生活用負荷への電力供給に用いられており、要するに必要となる電力が小さいときに使用するものである。
【0007】
このように、二つの発電機を使い分けする理由としては、主発電機の発電容量が大きいため、夜間、すなわち非作業時に生活負荷のみに電力供給を行うと余剰が多く出て無駄が大きいことや、主発電機の稼動音が大きく騒音問題となることが挙げられる。
【0008】
しかしながら、夜間の生活用負荷のために用いられる補発電機も稼動音が大きく騒音対策には十分とは云えなかった。また、日中の作業後から翌朝の作業開始までの間、稼動させ続ける必要があり、発電容量の小さい発電機であっても時間帯によっては余剰が大きく発生する問題もあった。
【0009】
ところで、日中の作業時に使用する主発電機も、その日の作業内容と使用機器により発電された電力に余剰が生まれる。これは、作業が円滑に行えるように作業用負荷と生活用負荷を全て最大限使用したときでも電力不足とならないような発電容量としていることに起因する。
【0010】
そこで、特許文献1には、補発電機を廃し、その代わりに主発電機の余剰電力を蓄電する蓄電システムを備えた作業用台船が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2018-68113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載された作業用台船は、日中の作業時に発生した主発電機の余剰電力を蓄電地に蓄電させ、その蓄電された電力を停泊時の生活用負荷に用いることで、夜間に騒音を発生しない構成としている。また、主発電機の余剰電力を蓄電することにより、全体のランニングコストを低減させることができる。
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載の作業用台船では、日中作業の内容次第で蓄電の進行状況が変化し、場合によっては満足な蓄電がされない虞がある。この、蓄電が不十分であると、生活用負荷への電力供給が翌朝の作業開始時まで行えない可能性がある。
【0014】
また、万が一蓄電量が不足してブラックアウトとなった場合には、電力供給を主発電機で行わねばならず、一番の課題である騒音の発生を回避することができない欠点がある。
【0015】
また、作業用の台船は、海上での作業を行うため、物資の供給等に制限があり、不測の事態に備える必要があり、特許文献1に記載された作業用台船では、上述した問題から、不測の事態における電力供給の備えが十分であるとは云い難い。
【0016】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、夜間停泊中の騒音対策に功を奏し、確実な蓄電と電力供給を行うことができる作業用台船の電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記従来の課題を解決するために、作業に使用されるクレーンやポンプといった機器からなる作業用負荷と、作業員の居住区画に使用される機器からなる生活用負荷と、作業用負荷と生活用負荷へ送電する配電盤と、配電盤に接続される第一発電機及び第二発電機と、発電機と同様に配電盤に接続される蓄電装置と、を備え、蓄電装置は、配電盤を介して前記第二発電機により発電された電力を蓄電することに特徴を有する。
【0018】
また、作業用台船には、作業用台船の横移動や定点保持のために用いられるスラスターを備え、該スラスターの稼動エンジンを第二発電機もしくは別途設けられた第三発電機に接続することにより、第二発電機又は第三発電機を稼動させることにも特徴を有する。
【0019】
また、第二発電機は、作業中に第一発電機により発電された電力により作業用負荷及び生活用負荷への電力供給が行われている際には、発電した電力を、配電盤を介して蓄電装置へ蓄電し、作業中の消費電力が少ない軽作業時には、発電した電力を、配電盤を介して作業用負荷及び生活用負荷への電力供給を行い、そこで生じた余剰電力を、配電盤を介して蓄電装置へ蓄電することにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第一発電機の発電した電力を作業用負荷及び生活用負荷へ供給し、第二の発電機の発電した電力を蓄電装置への蓄電に用いることで、常に確実な電力供給と蓄電が行える効果がある。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、定点保持のために常時作動させるスラスターのエンジン駆動を利用して第二発電機もしくは第三発電機を稼動させることにより、日中の作業時間中に蓄電装置への蓄電を行うことができる。
【0022】
また、スラスターのエンジン駆動を利用することで発電時のランニングコストを低減させることができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、作業中に必要となる作業用負荷及び生活用負荷への電力供給を第一発電機により行うと同時に、第二発電機を稼動させ蓄電装置への蓄電を行うことで、確実に蓄電装置への蓄電が可能となる効果がある。
【0024】
また、蓄電装置への蓄電を日中の作業中に集中して行うことで、夜間の発電を行わず騒音を発生させないようにすることができる。
【0025】
また、蓄電装置は、夜間の生活用負荷にあたって事前に電力供給の対象となる機器、例えば照明や空調設備や冷蔵庫等を限定することにより、必要となる電力に合わせた蓄電能力を有したものを選択することができ全体のランニングコストの低減に功を奏することができる。
【0026】
また、作業に係る消費電力が少ない場合には、第二発電機により電力供給を行う構成としていることで、作業時の電力余剰を最小限とすることができる。
【0027】
また、蓄電池への電力供給のため、第二発電機を備えた構成としていることで、万が一蓄電容量が足りずブラックアウトした際にも騒音を最小限に抑えることができる第二発電機の稼動で対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る作業用台船の構成を説明する説明図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムの構成を説明する説明図である。
図3】本発明の第一の実施形態に係る日中作業時における電力供給を示す説明図である。
図4】本発明の第一の実施形態に係る日中作業終了後における電力供給を示す説明図である。
図5】本発明の第二の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムの構成を説明する説明図である。
図6】本発明の第三の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムの構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の要旨は、作業に使用されるクレーンやポンプといった機器からなる作業用負荷と、作業員の居住区画に使用される機器からなる生活用負荷と、作業用負荷と生活用負荷へ送電する配電盤と、配電盤に接続される第一発電機及び第二発電機と、発電機と同様に配電盤に接続される蓄電装置と、を備え、蓄電装置は、配電盤を介して前記第二発電機により発電された電力を蓄電することにある。
【0030】
また、作業用台船には、作業用台船の横移動や定点保持のために用いられるスラスターを備え、該スラスターの駆動エンジンを第二発電機もしくは別途設けられた第三発電機と接続することにより、第二発電機又は第三発電機を稼動させることにも特徴を有する。
【0031】
また、第二発電機は、作業中に第一発電機により発電された電力により作業用負荷及び生活用負荷への電力供給が行われている際には、発電した電力を、配電盤を介して蓄電装置へ蓄電し、作業中の消費電力が少ない軽作業時には、発電した電力を、配電盤を介して作業用負荷及び生活用負荷への電力供給を行い、そこで生じた余剰電力を、配電盤を介して蓄電装置へ蓄電することにも特徴を有する。
【0032】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る作業用台船の電力供給システムMの一実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0033】
図1は、本実施形態に係る作業用台船100の主な構成を説明するための図である。図2は、第一の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムM1のシステム構成を説明するための図である。
【0034】
以下、本実施形態において、作業用台船100は、タグボートを用いて移動させる非自航式のものを例として説明している。ただし、本発明に係る作業用台船の電力供給システムMは、非自航式の作業用台船100に限らず、推進装置を備えた自航式の作業用台船に設けられてもよい。
【0035】
本実施形態に係る作業用台船100は、図1に示すように、進行するための推進装置を有さないため、作業用台船100を押すためのタグボートが接続する接続部110と作業用台船100を横移動させたり定点保持させたりするための補助的な推進装置であるスラスター120と本実施形態に係る作業用台船の電力供給システムMとを備えている。
【0036】
具体的にスラスター120は、作業用台船100が横移動を必要とする離岸時や接岸時に用いられる。また、海上での作業中に風や波そして潮の流れによって流されないようにする定点保持のために用いられる。その構成としては、海水を水流として送りその応力を利用するものであり、作業用台船100の前後左右に1機ずつ計4機を備え、各それぞれに駆動源となるエンジン121が設けられている。特に本実施形態においては、図1に示すように、前方に備えるスラスター120を作業用台船100の先端湾曲部の基端近傍に、後方に備えるスラスター120をタグボートが接続する接続部110よりやや前方位置となる箇所に設けられている。
【0037】
本実施形態において、作業用台船100は、定点保持機機能を有した作業用台船100を用いるため前後左右に1機ずつ計4機のスラスター120を備えた構成として説明をしている。しかしながら、これに限定されることは無く、例えば定点保持機能を有しない離接岸や方向転換用のスラスター120を1機や2機備えたものであってもよい。さらに、大型の作業用台船100の場合には、前後左右に3機ずつの計6機のスラスター120を備えたものであってもよい。すなわち、本発明に係る作業用台船の電力供給システムMは、スラスター120を少なくとも1機以上備えたものであればよい。
【0038】
[1.第一の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムの構成について]
まず、本発明の作業台船の電力供給システムMに係る第一の実施形態について説明する。
【0039】
第一の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムM1は、図2に示すように、作業に使用されるクレーンやポンプ等の機器からなる作業用負荷200と、長期間の作業のために設けられた作業員の居住区画で使用される生活用負荷300と、作業用負荷200及び生活用負荷300へ電力を供給する配電盤400と、配電盤400に接続される第一発電機500及び第二発電機600と、第一発電機500及び第二発電機600と同様に配電盤400に接続される蓄電装置800と、から構成される。
【0040】
作業用負荷200は、クレーンや各種ポンプ等の作業機器であり、作業用台船100に搭載される一つ又は複数の機器で構成される。この作業用負荷200は、そのほとんどが例えば200V~220Vの高電圧を必要とする。
【0041】
生活用負荷300は、長期間に渡る作業に伴い作業用台船100に設けられた居住区にある照明や家電等で構成される。この生活用負荷300は、そのほとんどが例えば100V又は24Vの電圧を必要とする。
【0042】
配電盤400は、後述する第一発電機500、第二発電機600及び蓄電装置800が接続される。また、配電盤400は、内部に一つ又は複数の変圧器410を備えており、送電先の作業用負荷200や生活用負荷300の必要とする電圧に変圧することができる。
【0043】
第一発電機500は、主に日中に行う作業時に消費される電力を供給するものである。すなわち、作業用負荷200及び生活用負荷300を最大限活用した状態でも電力不足とならないような高出力の発電機となっている。
【0044】
第二発電機600は、主に日中の作業時に稼動させ配電盤400を介して後述する蓄電装置800への蓄電を行う。すなわち、第二発電機600は、日中の作業時に第一発電機500が作業用負荷200と生活用負荷300とに電力供給を行っている間に稼働し、生じた電力を蓄電装置800へ供給し蓄電を行う。第二発電機600より発電された電力は、蓄電装置800に蓄電されたのち、作業終了後(主に夜間から翌朝作業開始まで)の作業用負荷200への電力供給を行う。したがって、夜間に発電機を稼動させる必要がなくなるため騒音問題に寄与することができる構成となっている。
【0045】
蓄電装置800は、第二発電機600により発電された電力を蓄電する。このとき蓄電可能な電圧への変換を行うため、配電盤400を介して第二発電機600より生じた電力を蓄電装置800へ供給する。蓄電装置800は、非作業時に電力供給を行う対象、すなわち照明や空調設備や冷蔵庫等の機器を予め選択しておくことでそれらに適した蓄電容量の物を搭載されることが望ましい。このように、供給対象が限定される場合には、余分な蓄電又は第二発電機600による発電を避けランニングコスト無駄を抑えることができる。
【0046】
また、作業用台船の電力供給システムM1は、蓄電装置800の充電に係る時間や作業用負荷200への電力供給可能予測時間等の蓄電状況をモニター及び算出するモニタリング手段900を備えている。モニタリング手段900は、例えば、各種演算処理や制御を実行する演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶装置、データ入出力用の入出力インターフェイス等の入出力装置、クロック回路等の周辺回路等をバス等により接続した構成を備える。モニタリング手段900のCPUは、ROM等に記憶された各種のプログラムに従って演算処理を行う。
【0047】
[2.第一の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムの運用について]
次に、上述した第一の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムM1の運用について詳しく説明する。図3は、日中作業時における電力供給を示す図であり、(a)は第一発電機500による電力供給を、(b)は第二発電機600による電力供給をそれぞれ示している。
【0048】
以下、第一発電機500及び第二発電機600が発電した電気の電圧は220V、作業用負荷200が必要とする電圧は220V、200V及び100V、生活用負荷300が必要とする電圧は100V及び24Vとして説明をする。ただし、これは一例であって必ずしもこの電圧に限定されるものではない。
【0049】
作業用台船の電力供給システムM1は、図3に示すように、海上での日中作業時に第一発電機500及び第二発電機600を稼動する。稼動した第一発電機500及び第二発電機600は、発電した電圧220Vの電力を配電盤400へ送る。
【0050】
第一発電機500に発電され配電盤400へ送られた電力は、図3(a)に示すように、供給先となる作業用負荷200及び生活用負荷300に合わせて変圧器410により変圧される。すなわち、作業用負荷200であるクレーンやポンプ等の作業用機器それぞれが必要とする電圧である220V、200V及び100Vのうち、変圧が必要となる200V及び100Vに合わせてそれぞれ変圧器410による変圧が行われる。それと同様に、生活用負荷300である生活家電等の機器それぞれが必要とする100V及び24Vに合わせてそれぞれ変圧器410による変圧が行われる。
【0051】
変圧された電力は、作業用負荷200及び生活用負荷300へそれぞれ供給され、作業用機器の駆動や日中に使用する生活家電等の駆動を可能とする。
【0052】
第二発電機600で発電され配電盤400へ送られた電力は、図3(b)に示すように、蓄電装置800への蓄電に使用される。このときの電圧は、用いられる蓄電装置800の仕様によって変圧される。すなわち、蓄電装置800が蓄電可能な電圧を220Vとしている場合には、変圧せず配電盤400より直接電力供給がなされ、蓄電装置800が蓄電可能な電圧を200Vとしている場合には、配電盤400が備える変圧器により200Vへ変圧を行ったのち蓄電装置800へ供給を行う。
【0053】
上述したように、日中作業時の作業用負荷200への電力供給を第一発電機500により発電された電力により行い、その作業時間中に第二発電機600により発電された電力を蓄電装置800への蓄電に使用する。
【0054】
日中の作業が終了した後は、第一発電機500及び第二発電機600の稼動を停止する。それに伴い、図4に示すように、蓄電装置800に蓄電された電力により、生活用負荷300への電力供給を開始する。この蓄電装置800による電力供給は、翌朝の作業開始時まで行われる。
【0055】
すなわち、第一の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムM1は、日中の作業終了後から発電機稼動を停止させるため、騒音を発生しない利点が得られる。
【0056】
また、従来行われていた作業用台船の電力供給システムでは、作業終了後の生活用負荷300への電力供給を補発電機の稼動により行っていた。そのため、作業員の就寝中等の電力消費が僅かな状況であっても常に同じように補発電機は稼動を続ける必要がある。すなわち、朝の9時から夕方の5時までを作業時間とし、その前後30分を主発電機による電力供給とすれば、それ以外の時間であるおおよそ14時間補発電機は稼動を続けることとなる。
【0057】
しかしながら、第一の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムM1は、日中の作業時間中の6時間~10時間の間に蓄電装置800の蓄電を完了させ、作業終了後の生活用負荷300への電力供給を蓄電装置800により行うことで、第二発電機600の稼動時間を従来の補発電機よりも短い時間にすることができランニングコストを下げる効果がある。
【0058】
また、非作業時の生活用負荷300への電力供給を蓄電装置800より行うことにより、使用電力のみを都度供給し、従来の補発電機により翌朝までの電力供給を行う際に生じる余剰電力が発生しない利点がある。すなわち、作業終了から翌朝までの生活用負荷300への電力供給は日中の作業時間よりも長い時間となるが、余分な電力供給を行わないため、日中の第二発電機600の稼動で蓄電された電力でもブラックアウトする虞も少ない利点がある。
【0059】
また、蓄電装置800には、図2に示すように、モニタリング手段900が接続されており、蓄電時の充電状況(全体容量に対して何%の蓄電がされているか)や電力供給時の残り電力供給可能時間(蓄電された電力の残量と残量から算出される生活用負荷への供給可能な時間)を算出している。そのため、万が一翌朝の作業開始時間までにブラックアウトする可能性がある場合には警告を出し、予備発電機(本実施形態では第二発電機600)による電力供給へスムーズな切り替えを可能としている。
【0060】
[3.第二の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムの構成について]
次に、本発明の作業台船の電力供給システムMに係る第二の実施形態について説明する。図5は、第二の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムM2のシステム構成を説明するための図である。
【0061】
作業用台船の電力供給システムM2は、図5に示すように、作業に使用されるクレーンやポンプ等の機器からなる作業用負荷200と、長期間の作業のために設けられた作業員の居住区画で使用される生活用負荷300と、作業用負荷200及び生活用負荷300へ電力を供給する配電盤400と、配電盤400に接続される第一発電機500と、第一発電機500と同様に配電盤400に接続されると共にスラスター120のエンジン121にも接続される第二発電機と、第一発電機500及び第二発電機600と同様に配電盤に接続される蓄電装置800と、から構成される。
【0062】
第二の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムM2は、主な構成を上述した第一の実施形態と同じとしている。具体的には、作業用負荷200、生活用負荷300、配電盤400、第一発電機500及び蓄電装置800、モニタリング手段900は、同様の構成としている。
【0063】
作業用台船の電力供給システムM2が上述した第一の実施形態と異なる点は、第二発電機600が作業用台船100に搭載されたスラスター120のエンジン121と接続されている点である。
【0064】
スラスター120は、図1に示すように、本実施形態においては作業用台船100の左右に前後1機ずつ計4機備えており、離岸又は接岸時の横移動や、海上での作業時に風や波や潮の影響で船体が流されないようにする定点保持のために用いられる。より詳しくは、図1に示すように、作業用台船100の先端部の基端近傍の左右に1機ずつ、作業用台船100の接続部110のやや前方位置の左右に1機ずつ設けられている。
【0065】
スラスター120は、4機それぞれに駆動のためのエンジン121が設けられている。このエンジン121は用途や状況に応じて駆動の出力を複数段階に切り換え可能としており、例えば、離岸時や接岸時には高い出力を行い、海上に出た後で比較的海が穏やかであるときは定点保持用の駆動を低出力とすることができる。また、エンジン121は、船体が離岸又は接岸する際に駆動させることは勿論、作業場所においては、常に作業位置を安定させるため(定点保持のため)常に駆動させ続ける必要がある。
【0066】
そのため、作業用台船100の位置が安定している際や、4機のスラスター120のうち一部が出力される場合には、その他のスラスター120の出力がされないままエンジン121が駆動している場合がある。
【0067】
そこで、蓄電装置800への蓄電を行うために設けられた第二発電機600をスラスター120のエンジン121と接続し、スラスター120への出力が行われないとき及びスラスター120への出力に余剰が発生しているときにエンジン121の駆動力により第二発電機600を稼動させる。
【0068】
すなわち、スラスター120のエンジン121は、作業用台船100の定点保持のため、常に駆動し続ける必要があり、さらにスラスター120への出力が行われない場合やスラスター120への出力が行われていても余剰が発生する場合がある。そのため、エンジン121による駆動力の余剰を第二発電機600の稼動に使用する。
【0069】
第二発電機600の稼動により生じた電力は、配電盤400を介して蓄電装置800への蓄電に用いられる。蓄電装置800に蓄電された電力は、日中の作業終了後の生活用負荷300への電力供給に使用される。
【0070】
具体的には、本実施形態のスラスター120のように作業用台船100に4機備えられている場合、一つの蓄電装置800へは4機同時に電力供給を行うことができない。そのため、4機のうち発生する余剰が一番大きなものからの供給を常に行う。どのエンジン121の駆動を利用するかの判断は、定点保持を制御する図示しない制御部の情報を基に手動又は自動で切り替えを行うようにするとよい。
【0071】
また、蓄電装置800に複数の蓄電池を備えた構成をとることで、4機すべてのスラスター120のエンジン121とそれぞれ接続させ余剰電力を余すことなく利用することも考えられる。
【0072】
このような構成とすることで、日中の作業時に蓄電装置800への蓄電を可能とすると共に、第二発電機600を稼動させるための燃料を節約することができる。また、定点保持のための出力が少ない場合、すなわち、海や風、潮の流れが穏やかであるときにはスラスター120のエンジン121を低出力とすることができる。このとき、スラスター120のエンジン121を低出力とした場合であっても、第二発電機600を稼働させる余剰電力が発生するため、蓄電装置800への蓄電に影響が出ることは無い。
【0073】
したがって、日中に第二発電機600により蓄電された蓄電装置800から作業終了後の生活用負荷300への電力供給を行うことで騒音の発生を抑制することができる。また、第二発電機600の稼動に係る燃料を節約することで全体のランニングコストを低減させることができる。
【0074】
上述したように、第二の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムM2は、蓄電装置800の蓄電を行うために用いる第二発電機600を作業用台船100に備え付けられたスラスター120のエンジン121によって稼動させる構成としている。また、作業用台船の電力供給システムM2の第二発電機600は、4機のスラスター120の数に合わせて最低限の発電容量を備えた小型の第二発電機600をそれぞれ設けた構成とすることも考えられる。
【0075】
[4.第三の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムの構成について]
次に、本発明の作業台船の電力供給システムMに係る第三の実施形態について説明する。図6は、第三の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムM3のシステム構成を説明するための図である。
【0076】
作業用台船の電力供給システムM3は、図6に示すように、作業に使用されるクレーンやポンプ等の機器からなる作業用負荷200と、長期間の作業のために設けられた作業員の居住区画で使用される生活用負荷300と、作業用負荷200及び生活用負荷300へ電力を供給する配電盤400と、配電盤400に接続される第一発電機500及び第二発電機600と、第一発電機500及び第二発電機600と同様に配電盤400に接続されると共にスラスター120のエンジン121にも接続される第三発電機700と、第一発電機500及び第二発電機600と同様に配電盤に接続される蓄電装置800と、モニタリング手段900と、から構成される。
【0077】
第三の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムM3は、上述した第一の実施形態及び第二の実施形態と同様に、第一発電機500により生じた電力を用いて日中の作業時に必要となる作業用負荷200及び生活用負荷300への電力供給を行う。また、その間に第二発電機600又は第三発電機700の稼動により生じた電力を蓄電装置800に蓄電する態様としている。
【0078】
第三発電機700は、上述した第二の実施形態で説明したスラスター120のエンジン121と接続しており、スラスター120への出力が行われないとき及びスラスター120への出力に余剰が発生するときにスラスター120のエンジン121の駆動力により第三発電機700を稼動させることができる。
【0079】
すなわち、第三の実施形態に係る作業用台船の電力供給システムM3は、日中の作業時に第一発電機500により作業用負荷200及び生活用負荷300への電力供給を行いつつ、第二発電機600及び第三発電機700により蓄電装置800への蓄電を行うことができる。
【0080】
このような構成とすることで、第二発電機600の稼動を最小限とし、より全体におけるランニングコストを低減させることができる。また、海上では、資源等の供給が容易でない場合があるため、有事に常に備えておくことが大切となる。そのため、蓄電装置800への蓄電を第三発電機700による電力供給を主とすることにより、第二発電機600の稼動に必要となる燃料の節約を行うことができる。
【0081】
また、日中の作業内容によっては、必要とする電力が少ない場合がある。その時に出力の大きな第一発電機500を稼動させると、余剰電力が多くなりランニングコストが上がる問題がある。そのような場合には、第二発電機600を日中作業時の作業用負荷200及び生活用負荷300への電力供給のため稼動させることも考えられる。
【0082】
作業用台船の電力供給システムM3は、スラスター120のエンジン121に接続された第三発電機700を備えていることにより、第二発電機600を日中作業時の電力供給に用いた際にも、蓄電装置800への蓄電を日中作業中に行うことができる。
【0083】
また、作業終了後からは、蓄電装置800に溜められた電力を生活用負荷300へ供給することとなるが、万が一電力不足となりブラックアウトした場合にも、比較的稼動音の小さい第二発電機600を稼動させることで生活用負荷300への電力供給を再度行うことができる。
【0084】
この電力不足に関しては、蓄電装置800に接続されたモニタリング手段900によって蓄電装置800の蓄電情報をモニタリングすることで、第二発電機600への切り替えを速やかに行うことができる。
【0085】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、上述した各種効果は、本発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0086】
M 作業用台船の電力供給システム
100 作業用台船
110 接続部
120 スラスター
121 エンジン
200 作業用負荷
300 生活用負荷
400 配電盤
410 変圧器
500 第一発電機
600 第二発電機
700 第三発電機
800 蓄電装置
900 モニタリング手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6