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特開2023-181715モータ駆動制御装置、モータ制御回路、及び、モータ駆動制御方法
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  • 特開-モータ駆動制御装置、モータ制御回路、及び、モータ駆動制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181715
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置、モータ制御回路、及び、モータ駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/14 20060101AFI20231218BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H02P23/14
H02P27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094998
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 進士
(72)【発明者】
【氏名】小久保 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】増田 重巳
(72)【発明者】
【氏名】土方 英俊
(72)【発明者】
【氏名】綾部 圭祐
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505CC01
5H505DD03
5H505EE41
5H505EE49
5H505HA09
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ12
5H505JJ16
5H505JJ17
5H505JJ18
5H505JJ24
5H505JJ29
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL41
5H505LL45
5H505LL56
5H505MM03
5H505MM04
5H505MM14
(57)【要約】
【課題】簡易な回路構成でありながら、2相のコイルの電流を取り込みつつ、モータの性能影響パラメータを測定する。
【解決手段】モータ駆動制御装置1の制御回路部4は、連続する2つのPWM周期のそれぞれの半周期においてモータ20の制御用演算処理を実行し、連続する2つのPWM周期における制御用演算処理を実行していない残りの2つの半周期に、電流検出回路2cからの3相のコイルのうちの2相のコイルの電流である第1の電流の検出結果及び第2の電流の検出結果と、性能影響パラメータ検出部からの性能影響パラメータの検出結果と、を取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの3相のコイルに交流電力を供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路に接続され、前記3相のコイルのうちの2相のコイルの電流である第1の電流及び第2の電流を検出する電流検出回路と、
前記モータの性能に影響を及ぼす少なくとも1つの性能影響パラメータを検出する性能影響パラメータ検出部と、
前記インバータ回路を含むモータ駆動部をPWM制御するとともに、前記電流検出回路にて検出した前記第1の電流及び前記第2の電流と、前記性能影響パラメータ検出部にて検出した前記少なくとも一つの性能影響パラメータと、を取り込む制御回路部と、
を備えるモータ駆動制御装置であって、
前記制御回路部は、
連続する2つのPWM周期のそれぞれの半周期において前記モータの制御用演算処理を実行し、
前記連続する2つのPWM周期における前記制御用演算処理を実行していない残りの2つの半周期に、前記第1の電流の検出結果と、前記第2の電流の検出結果と、前記少なくとも1つの性能影響パラメータの検出結果と、を取得する、
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記制御回路部は、
前記残りの2つの半周期において、前記第1の電流の検出結果と、前記第2の電流の検出結果と、前記少なくとも1つの性能影響パラメータの検出結果の3つの検出結果のそれぞれを少なくとも1回検出するとともに、それぞれの半周期に1つまたは2つの検出結果を取得する、
請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記制御回路部は、
前記残りの2つの半周期における一方の半周期に、前記第1の電流の検出結果または前記第2の電流の検出結果のいずれか一方を取得するとともに前記性能影響パラメータの1つを検出し、前記残りの2つの半周期における他方の半周期に、前記第1の電流の検出結果または前記第2の電流の検出結果のいずれか他方を取得する、
請求項1または2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記制御回路部は、
前記残りの2つの半周期に、前記第1の電流の検出結果と前記第2の電流の検出結果またはと前記性能影響パラメータのいずれかを2回取得する、
請求項1または2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項5】
前記制御回路部は、
前記性能影響パラメータの検出結果に応じて、前記モータの制御パラメータの値を調整する、
請求項1または2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項6】
前記性能影響パラメータが電源電圧であり、
前記性能影響パラメータ検出部は、前記モータ駆動部に印加する前記電源電圧の供給ラインに接続されて前記電源電圧を検出する電源電圧検出回路である、
請求項1または2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項7】
前記性能影響パラメータが前記モータの周辺の温度であり、
前記性能影響パラメータ検出部は、前記モータの周辺に設けられて前記温度を検出する温度センサである、
請求項1または2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項8】
モータの3相のコイルに交流電力を供給するモータ駆動部をPWM制御するためのモータ制御回路であって、
前記モータ制御回路は、
連続する2つのPWM周期のそれぞれの半周期において前記モータの制御用演算処理を実行し、
前記連続する2つのPWM周期における前記制御用演算処理を実行していない残りの2つの半周期に、前記3相のコイルのうちの2相のコイルの電流である第1の電流の検出結果及び第2の電流の検出結果と、前記モータの性能に影響を及ぼす少なくとも1つの性能影響パラメータの検出結果と、を取得する、
モータ制御回路。
【請求項9】
モータの3相のコイルに交流電力を供給するモータ駆動部をPWM制御するためのモータ駆動制御方法であって、
連続する2つのPWM周期のそれぞれの半周期において前記モータの制御用演算処理を実行するステップと、
前記連続する2つのPWM周期における前記制御用演算処理を実行していない残りの2つの半周期に、前記3相のコイルのうちの2相のコイルの電流である第1の電流の検出結果及び第2の電流の検出結果と、前記モータの性能に影響を及ぼす少なくとも1つの性能影響パラメータの検出結果と、を取得する、
モータ駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置、モータ制御回路、及び、モータ駆動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のモータ駆動制御装置において、インバータ回路に接続されたシャント抵抗により、3相のコイルのうちの2相のコイルの電流を検出する1シャント電流検出方式が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、1シャント電流検出方式において、1つのPWM周期の半周期において3相のコイルのうちの2相のコイルの電流の検出結果の取得を試み、同一または次回以降のPWM周期内でアナログデジタル変換処理ができなかった相の電流のみの検出結果を取得し、取得した検出電流のアナログデジタル変換処理を実行するモータ駆動制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-164321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モータの回転動作中に生じる、例えば、駆動源となる電源電圧の変動あるいはモータ内部あるいは周辺の温度変化などは、モータの性能の低下に影響を及ぼす。モータの駆動制御の安全性や安定性をより向上するには、このような製品性能の低下に影響を及ぼすパラメータ(以下、「性能影響パラメータ」という。)を監視し、その監視結果(検出結果)に応じて、モータの駆動電圧などの制御パラメータを調整するなどの対策を行うことが望ましい。
【0006】
しかしながら、モータの制御回路として処理性能が比較的低いマイコンを用いて、PWM1周期の半周期で2相のコイル電流の検出を行い、残りの半周期でロータの位置推定などの制御用演算処理を行う場合、上記の性能影響パラメータを監視(測定)するタイミングを確保することは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、簡易な回路構成でありながら、2相のコイルの電流を取り込みつつ、モータの性能影響パラメータを測定する、すなわち、モータの性能影響パラメータの検出結果を取得することができるモータ駆動制御に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のモータ駆動制御装置は、モータの3相のコイルに交流電力を供給するインバータ回路と、前記インバータ回路に接続され、前記3相のコイルのうちの2相のコイルの電流である第1の電流及び第2の電流を検出する電流検出回路と、前記モータの性能に影響を及ぼす少なくとも1つの性能影響パラメータを検出する性能影響パラメータ検出部と、前記インバータ回路を含むモータ駆動部をPWM制御するとともに、前記電流検出回路にて検出した前記第1の電流及び前記第2の電流と、前記性能影響パラメータ検出部にて検出した前記少なくとも一つの性能影響パラメータとを取り込む制御回路部と、を備え、前記制御回路部は、連続する2つのPWM周期のそれぞれの半周期において前記モータの制御用演算処理を実行し、前記連続する2つのPWM周期における前記制御用演算処理を実行していない残りの2つの半周期に、前記第1の電流の検出結果と、前記第2の電流の検出結果と、前記少なくとも一つの性能影響パラメータの検出結果と、を取得する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、簡易な回路構成でありながら、2相のコイルの電流を取り込みつつ、モータの性能影響パラメータを測定することができるモータ駆動制御に関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るモータ駆動制御装置の回路構成を示す図である。
図2】公知の電流取得方法を説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態に係るモータ駆動制御装置における検出結果取得及びAD変換処理のタイミングチャートの一例である。
図4】本発明の一実施形態に係るモータ駆動制御装置における検出結果取得およびAD変換処理のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置、モータ制御回路、及び、モータ駆動制御方法について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ駆動制御装置の回路構成を示す図である。図1に示すように、モータ駆動制御装置1は、モータ駆動部2及び制御回路部(モータ制御回路の一例)4を備えている。
【0013】
モータ駆動部2は、インバータ回路2aと、プリドライブ回路2bと、電流検出回路2cと、を備えている。
【0014】
インバータ回路2aは、6つのスイッチング素子Q1~Q6を有し、モータ20の3相(U相,V相,W相)のコイルLu,Lv,Lwに交流電力を供給する。スイッチング素子Q1,Q3,Q5は、電源の正極側に配置されたNチャンネルのMOSFETからなるハイサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q1,Q3,Q5には、電源から電源電圧Vccが印加される。スイッチング素子Q2,Q4,Q6は、電源の負極側に配置されたNチャンネルのMOSFETからなるローサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q1,Q2の接続点は、U相のコイルLuに接続される。スイッチング素子Q3,Q4の接続点は、V相のコイルLvに接続される。スイッチング素子Q5,Q6の接続点は、W相のコイルLwに接続される。
【0015】
プリドライブ回路2bは、インバータ回路2aの6つのスイッチング素子Q1~Q6のそれぞれのゲート端子に接続される6つの出力端子を備えている。プリドライブ回路2bは、制御回路部4から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、出力信号Vuh,Vul,Vvh,Vvl,Vwh,Vwlを出力する。プリドライブ回路2bは、出力信号Vuh,Vul,Vvh,Vvl,Vwh,Vwlにより、スイッチング素子Q1~Q6のオン/オフ動作を制御する。
【0016】
電流検出回路2cは、インバータ回路2aに接続される。電流検出回路2cは、例えばシャント抵抗を含む。電流検出回路2cは、モータ20に流れる電流を検出する。具体的には、電流検出回路2cは、このシャント抵抗の両端の電圧から、3相のコイルLu,Lv,Lwの電流Iu,Iv,Iwのいずれかの2相のコイルの電流を検出する。電流検出回路2cは、検出結果として、検出した電流に対応する検出電圧信号Vmを制御回路部4に出力する。
【0017】
モータ20には、3相のコイルLu,Lv,Lwに対応して、モータ20の回転位置に応じて信号を出力する3つのホール素子(位置検出センサの一例)25u,25v,25wが配置されている。ホール素子25u,25v,25wは、それぞれ、ロータの磁極の位置を検出する。ホール素子25u,25v,25wは、検出したロータの磁極の位置に応じたホール信号Shu,Shv,Shw(総称してSh)を出力する。ホール信号Shは、制御回路部4に入力される。
【0018】
なお、位置検出センサは、ホール素子に限定されるものではない。また、モータ駆動制御装置1は、位置検出センサを有さない位置センサレス方式でもよい。
【0019】
制御回路部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の各種メモリ、タイマ、カウンタ、A/D変換回路、入出力I/F回路、およびクロック生成回路等のハードウェア要素を有し、各構成要素がバスや専用線を介して互いに接続されたプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ:MCU(Micro Control Unit)などのコンピュータ)である。制御回路部4は、メモリとして、例えば、フラッシュメモリやEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の書き換え可能な不揮発性の記憶装置を有している。
【0020】
制御回路部4は、ベクトル制御部41と、PWM生成回路42と、タイミング生成回路43と、アナログデジタル変換器(ADC)44と、を備えている。制御回路部4は、以上の機能部によりモータ駆動部2をPWM制御する。これらの機能ブロックは、上述したMCU内のプロセッサが、メモリに記憶されているモータ制御プログラムに従って各種演算を実行するとともに、タイマおよびカウンタ、A/D変換回路および入出力I/F回路等の周辺回路を制御することによって、実現される。制御回路部4には、例えば、外部から、モータ20の回転速度に関する信号である速度指令信号Scが入力される。
【0021】
ベクトル制御部41は、周知のベクトル制御に従って、電圧値Vα,VβをPWM生成回路42(例えば、空間ベクトル変調回路:SVM)に出力する。
【0022】
PWM生成回路42は、駆動制御信号Sdをモータ駆動部2に出力し、モータ駆動部2をPWM制御する。
【0023】
タイミング生成回路43は、PWMのカウント開始と同期してタイミング生成のカウンタを開始して、アナログデジタル変換器44にトリガをかける。具体的には、タイミング生成回路43は、後述する図3における検出結果取り込みタイミングt5、t15において、トリガ信号Tr1をアナログデジタル変換器44に出力する。また、タイミング生成回路43は、後述する図3における電流取り込みタイミングt6、t16において、トリガ信号Tr2をアナログデジタル変換器44に出力する。
【0024】
アナログデジタル変換器44は、トリガ信号Tr1に基づいて、3相のコイルLu,Lv,Lwの電流Iu,Iv,Iwのいずれかの2相のコイルの電流(本実施の形態では、電流Iu,Iw)に対応する検出電圧信号Vmのアナログデジタル変換(以下、AD変換とも記す)処理を実行し、デジタル電圧信号Vadをベクトル制御部41に出力する。
【0025】
また、アナログデジタル変換器44は、トリガ信号Tr2に基づいて、3相のコイルLu,Lv,Lwの電流Iu,Iv,Iwのいずれかの2相のコイルの電流(本実施の形態では、電流Iu,Iw)に対応する検出電圧信号Vmのアナログデジタル変換処理を実行し、デジタル電圧信号Vadをベクトル制御部41に出力する。
【0026】
また、アナログデジタル変換器44は、性能影響パラメータ検出部からの性能影響パラメータの検出結果を取得する。具体的には、アナログデジタル変換器44は、性能影響パラメータ検出部としての温度センサ45から取得されるモータ20の周辺の温度(モータ20の内部の温度も含む)を検出温度電圧Vtとして取得する。温度センサ45は、モータ20の内部または外部に設けられる。また、アナログデジタル変換器44は、性能影響パラメータ検出部としての電源電圧検出回路3から検出電圧Vsens(モータ20の電源電圧Vccを分圧した電圧)を取得する。
【0027】
アナログデジタル変換器44は、上述した性能影響パラメータとしての検出温度電圧Vtや検出電圧Vsensの検出結果に応じて、デジタル電圧信号Vadの値をベクトル制御部41に出力する。
【0028】
その後、ベクトル制御部41は、タイミング生成回路43からタイミング信号Stが入力されると、取得した2相のコイルの電流値から求めた3相の電流値と位置検出センサ情報をもとにベクトル制御を行い、PWM生成回路42の通電の大きさを計算する。また、検出温度電圧Vtおよび/または検出電圧Vsensに基づくデジタル電圧信号Vadの値に基づき、必要に応じて、制御パラメータを調整する。
【0029】
図2は、公知の電流取得方法を説明するための図である。
【0030】
図2(a)は、空間ベクトル変調によって生成された波形であり、図2(b)は、セクタ2におけるPWM信号の波形であり、図2(c)は、セクタ3におけるPWM信号の波形である。
【0031】
図2(a)に示すように、セクタ2において、U相ハイサイドPWM信号PWM_UHはオンデューティがほぼ100%であり、V相ハイサイドPWM信号PWM_VHはオンデューティがほぼ0%であるので、これに対応して、図2(b)に示すように、スイッチング素子Q1をオンにする出力信号Vuhは、オン期間が長く、スイッチング素子Q3をオンにする出力信号Vvhは、オン期間が短い。また、図2(a)に示すように、セクタ2において、W相ハイサイドPWM信号PWM_WHのオンデューティは、U相ハイサイドPWM信号PWM_UHとV相ハイサイドPWM信号PWM_VHのオンデューティとの中間であるので、これに対応して、図2(b)に示すように、スイッチング素子Q5をオンにする出力信号Vwhは、VuhとVvhとの中間のオン期間の長さを有する。なお、図2(b)において、スイッチング素子Q2,Q4,Q6をオンにする出力信号Vul,Vvl,Vwlは、それぞれ、出力信号Vuh,Vvh,Vwhと相補的になっている。
【0032】
図2(b)において、時刻t1では、出力信号Vuh,Vwh,Vvlがハイレベルであるため、スイッチング素子Q1,Q4,Q5がオンになる。それゆえ、V相のコイルLvから流出する電流(-Iv)が取得できる。また、時刻t2では、出力信号Vuh,Vvl,Vwlがハイレベルであるため、スイッチング素子Q1,Q4,Q6がオンになる。それゆえ、U相のコイルLuに流入する電流(Iu)が取得できる。その結果、3相の電流の総和はゼロとなるという法則から、電流(-Iv)および電流(Iu)から、電流(Iw)(=-Iu-Iv)を計算で求めることができる。
【0033】
図2(c)の場合も同様に、時刻t3では、W相のコイルLwから流出する電流(-Iw)が取得でき、時刻t4では、U相のコイルLuに流入する電流(Iu)が取得でき、電流(Iv)(=-Iu-Iw)を計算で求めることができる。
【0034】
このように、公知の電流取得方法では、1つのPWM周期の前半もしくは後半の半周期にセクタごとに決められた2相のコイルの電流を取得し、残りの1相のコイルの電流を計算で求める。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態に係るモータ駆動制御装置における検出結果取得及びAD変換処理のタイミングチャートの一例である。
【0036】
図3は、制御回路部4が、連続する2つのPWM周期(以下、順番に、第1のPWM周期、第2のPWM周期とも呼ぶ)のそれぞれの半周期(本実施の形態では、後半の半周期)において、モータ20の制御用演算処理(本実施の形態では、モータ20のロータの位置推定処理)を実行し、連続する2つのPWM周期における制御用演算処理が行われていない残りの2つの半周期(本実施の形態では、前半の半周期)において、電流検出回路2cにおいて検出した2相のコイルの電流(本実施の形態では、第1の電流Ia=+Iw及び第2の電流Ib=-Iu)の検出結果と、性能影響パラメータとしての電源電圧Vccに対応する検出電圧Vsensを取り込み、第1の電流Ia、第2の電流Ib及び検出電圧VsensのAD変換処理を実行するタイミングチャートを示している。
【0037】
図3において、上から、(a)PWMタイマカウンタの出力設定、(b)PWM信号の波形、(c)検出結果取り込みタイミング、(d)2相のコイルの電流と検出電圧VsensのAD変換処理、及び電流取り込み状態を示す。なお、電流取り込み状態とは、制御回路部4において、電流検出回路2cより取得した検出電流のAD変換処理を実行した結果としての電流の取り込み状態を意味する。
【0038】
図3(a)に示すように、PWMタイマカウンタは三角波形状である。1つのPWM周期(第1のPWM周期、第2のPWM周期)は、前半と後半とに分けられる。
【0039】
図3(b)に示すように、U相ハイサイドPWM信号PWM_UH,V相ハイサイドPWM信号PWM_VH,W相ハイサイドPWM信号PWM_WHは、スイッチング素子Q1,Q3,Q5をオンにする出力信号Vuh,Vvh,Vwhに対応し、U相ローサイドPWM信号PWM_UL,V相ローサイドPWM信号PWM_VL,W相ローサイドPWM信号PWM_WLは、スイッチング素子Q2,Q4,Q6をオンにする出力信号Vul,Vvl,Vwlに対応する。また、U相ハイサイドPWM信号PWM_UH,V相ハイサイドPWM信号PWM_VH,W相ハイサイドPWM信号PWM_WHとU相ローサイドPWM信号PWM_UL,V相ローサイドPWM信号PWM_VL,W相ローサイドPWM信号PWM_WLとは、互いに相補的である。
【0040】
図3において、第1のPWM周期の前半における時刻t5では、W相ハイサイドPWM信号PWM_WH,U相ローサイドPWM信号PWM_UL,V相ローサイドPWM信号PWM_VLがハイレベルであるため、スイッチング素子Q2,Q4,Q5がオンになる。それゆえ、W相のコイルLwに流入する電流(+Iw:第1の電流Ia)の検出結果を取得する。第1の電流Iaの値は、連続する2つのPWM周期(第1のPWM周期及び第2のPWM周期)に渡って処理を行うため、メモリに記憶する処理が必要である。時刻t5は、AD変換処理のトリガとなり、図3(d)に示すように、時刻t5において第1の電流IaのAD変換処理が開始され、時刻t5aにおいて第1の電流IaのAD変換処理が終了する。AD変換処理が終了したため、時刻t5aにおいて電流取り込みOKのフラグを設定する。例えば、8ビットフラグの場合、00000001に設定する。
【0041】
時刻t6では、モータ20の電源電圧Vccが分圧された検出電圧Vsensを取得する。検出電圧Vsensの測定は、例えば、モータ20の1回転当り1周期(例えば、750周期/回転であれば、750周期当り1周期)に実行する。なお、検出電圧Vsensの測定頻度は、上述の例に限定されない。検出電圧Vsensの値は、取得後すぐにAD処理が行われる場合、検出電圧Vsensをメモリに記憶する処理は不要である。時刻t6は、検出電圧Vsensを取得するトリガとなり、図3(d)に示すように、時刻t6において検出電圧VsensのAD変換処理が開始され、時刻t6aにおいて検出電圧VsensのAD変換処理が終了する。
【0042】
連続する2つのPWM周期のうちの1つのPWM周期の半周期(本実施の形態では、第1のPWM周期の前半)に検出電圧VsensのAD変換処理が終了した後、連続する2つのPWM周期のうちの1つのPWM周期の半周期(本実施の形態では、第1のPWM周期の後半)において、制御回路部4は、ロータの位置推定などの制御用演算処理を実行する。
【0043】
連続する2つのPWM周期のうちのもう1つのPWM周期の半周期(本実施の形態では、第2のPWM周期の前半)における、時刻t16では、V相ハイサイドPWM信号PWM_VH,W相ハイサイドPWM信号PWM_WH,U相ローサイドPWM信号PWM_ULがハイレベルであるため、スイッチング素子Q2,Q3,Q5がオンになる。それゆえ、U相のコイルLuから流出する電流(-Iu:第2の電流Ib)の検出結果を取得する。第2の電流Ibの値は、連続する2つのPWM周期に渡って処理を行うため、メモリに記憶する処理が必要である。また、時刻t16において第2の電流Ib(-Iu)のAD変換処理が開始され、時刻t16aにおいてAD変換処理が終了する。第2の電流Ib(-Iu)のAD変換処理が終了したため、時刻t16aにおいて電流取り込み状態のフラグを設定する。例えば、8ビットフラグの場合、00000011に設定する。
【0044】
モータ駆動制御装置1において、制御回路部4は、連続する2つのPWM周期(第1のPWM周期及び第2のPWM周期)において2相分のコイル電流(第1の電流Ia及び第2の電流Ib)を取得する。
【0045】
制御回路部4は、取得した第1の電流Iaおよび第2の電流Ibの値から、第3の電流Ic(Iv=-Iu-Iw)の値を算出する。
【0046】
この電流取り込み動作を、連続する2つのPWM周期において実行する。
【0047】
第2の電流IbのAD変換処理が終了した後、連続する2つのPWM周期のうちのもう1つのPWM周期の半周期(本実施の形態では、第2のPWM周期の後半)において、制御回路部4は、ロータの位置推定などの制御用演算処理を実行する。
【0048】
なお、連続する2つのPWM周期のうちのもう1つのPWM周期(第2のPWM周期)の前半における、時刻t15では、時刻t5と同様に、W相ハイサイドPWM信号PWM_WH,U相ローサイドPWM信号PWM_UL,V相ローサイドPWM信号PWM_VLがハイレベルである。このため、スイッチング素子Q2,Q4,Q5がオンになる。それゆえ、W相のコイルLwに流入する電流(+Iw:第1の電流Ia)の検出結果を再度取得してもよい。この場合において、時刻t15は、AD変換処理のトリガとなり、第1の電流IaのAD変換処理が開始され、時刻t15aにおいて第1の電流IaのAD変換処理が終了する。
【0049】
また、時刻t15において、時刻t6で行ったように、モータ20の電源電圧Vccが分圧された検出電圧Vsensを取得してもよい。この場合において、時刻t15は、検出電圧Vsensを取得するトリガとなり、検出電圧VsensのAD変換処理が開始され、時刻t15aにおいて検出電圧VsensのAD変換処理が終了する。
【0050】
以上で説明したように、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、モータ20の性能に影響を及ぼす少なくとも1つの性能影響パラメータを検出する性能影響パラメータ検出部としての温度センサ45と電源電圧検出回路3とを備える。モータ駆動制御装置1において、制御回路部4のベクトル制御部41は、連続する2つのPWM周期(第1のPWM周期及び第2のPWM周期)におけるそれぞれの半周期(本実施の形態では各PWM周期の後半)において制御用演算処理を実行する。また、ベクトル制御部41は、連続する2つのPWM周期(第1のPWM周期、第2のPWM周期)における制御用演算処理を実行していない残りの2つの半周期(本実施の形態では各PWM周期の前半)に、3相のコイルのうちの2相のコイルの電流である第1の電流Ia及び第2の電流Ibの検出結果と、性能影響パラメータの検出結果と、を取得する。
【0051】
以上のように構成されることにより、モータ駆動制御装置1によれば、処理性能が比較的低いマイコンであっても、制御用演算処理が実行されていない2つのPWM周期における2つの半周期を有効に利用して、性能影響パラメータを取得することができる。モータ駆動制御装置1によれば、モータ20の駆動中であっても性能影響パラメータによる影響に対処することができる。
【0052】
例えば、制御回路部4のアナログデジタル変換器44は、連続する2つのPWM周期における制御用演算処理を実行していない残りの2つの半周期における一方の半周期に、第1の電流Iaの検出結果または第2の電流Ibの検出結果のいずれか一方の電流の検出結果を取得するとともに、他方の電流の検出タイミングに他方の電流を検出する代わりに性能影響パラメータの1つを検出し、残りの半周期における他方の半周期に、第1の電流Iaの検出結果または第2の電流Ibの検出結果のいずれか他方の電流の検出結果を取得する。
【0053】
以上のように構成されることにより、モータ駆動制御装置1によれば、性能影響パラメータの検出タイミングを他方の電流の検出タイミングである半周期に合わせることで、取得しない電流の検出タイミングに性能影響パラメータの検出時間を確保することができる。
【0054】
また、制御回路部4のベクトル制御部41は、連続する2つのPWM周期における制御用演算処理を実行していない残りの2つの半周期に、第1の電流Iaの検出結果、第2の電流Ibの検出結果、または性能影響パラメータのいずれかを2回取得してもよい。このように構成されることにより、モータ駆動制御装置1によれば、1回目の電流または性能影響パラメータの取得結果に応じて、取得失敗や検出精度の向上を図るなどの要因により取得の必要性が生じた検出結果を再度取り込むことができる。
【0055】
制御回路部4は、性能影響パラメータの検出結果に応じて、モータ20の制御パラメータの値を調整する。このように構成されることにより、モータ駆動制御装置1によれば、制御パラメータに対する性能影響パラメータの影響を低減することができる。
【0056】
モータ駆動制御装置1において、性能影響パラメータ検出部は、例えば、モータ駆動部2に印加する電源電圧Vccの供給ラインに接続されて電源電圧Vccに対応する検出電圧Vsensを検出する電源電圧検出回路3である。この場合、性能影響パラメータは電源電圧Vccである。このように構成されることにより、モータ駆動制御装置1によれば、電源電圧Vccの変動が検出された場合は、電源電圧Vccに依存する制御パラメータの値(例えば、PI制御などの自動制御における係数など)を調整することにより、電源電圧Vccの変動に対する適切な処理が可能となる。また、電源電圧Vccの異常が検出された場合は、低電圧または過電圧保護機能を含む適切な処置が可能となる。
【0057】
また、モータ駆動制御装置1において、性能影響パラメータ検出部は、例えば、モータ20の周辺に設けられて、モータ20の周辺の温度を検出する温度センサ45である。この場合、性能影響パラメータは検出温度電圧Vtである。このように構成されることにより、モータ駆動制御装置1によれば、温度の変動が検出された場合は、温度に依存する制御パラメータの値(例えば、PI制御などの自動制御における係数、コイルの抵抗値、粘性摩擦係数など)を調整することにより、温度の変動に対する適切な処理が可能となる。また、変動許容値を超える温度の異常が検出された場合は、過熱保護機能を含む適切な処置が可能となる。
【0058】
上述した本実施の形態では、連続する2つのPWM周期(第1のPWM周期及び第2のPWM周期)のうちの1つのPWM周期(第1のPWM周期)の前半において検出結果(具体例として、第1の電流Iaの検出結果と検出電圧Vsensの検出結果)を取得し、連続する2つのPWM周期のうちのもう1つのPWM周期(第2のPWM周期)の前半において検出結果(具体例として、第2の電流Ibの検出結果)を取得し、それぞれのPWM周期の後半にて制御用演算処理を実行するものとして説明したが、本発明における検出結果の取得タイミングと制御用演算処理の実行タイミングの組み合わせは本実施の形態に限定されるものではなく、例えば、表1に示すように、ケースA~C(ケースAが本実施の形態に相当)が考えられる。
【0059】
【表1】
【0060】
ケースBでは、連続する2つのPWM周期(第1のPWM周期及び第2のPWM周期)のそれぞれの前半に制御用演算処理を実行し、連続する2つのPWM周期のそれぞれの後半に検出結果を取得する。
【0061】
ケースCでは、連続する2つのPWM周期(第1のPWM周期及び第2のPWM周期)のうちの1つのPWM周期(表2では、第1のPWM周期)において、前半に制御用演算処理を実行し、後半に検出結果を取得し、連続する2つのPWM周期のうちのもう1つのPWM周期(表2では、第2のPWM周期)において、前半に検出結果を取得し、後半に制御用演算処理を実行する。
【0062】
また、本実施の形態では、検出結果の取得について、連続する2つのPWM周期(第1のPWM周期及び第2のPWM周期)のうち、第1のPWM周期の前半に第1の電流Iaの検出結果と検出電圧Vsensの検出結果とを取得し、第2のPWM周期の前半に第2の電流Ibの検出結果を取得するものとして説明したが、本発明は、本実施の形態に限定されるものではなく、例えば、表2に示すように、ケース1~3が考えられる。
【0063】
【表2】
【0064】
ケース1では、3つの検出結果(第1の電流Ia,第2の電流Ib,性能影響パラメータの1つ)を各1回ずつ取得する。具体的には、第1の半周期(例えば、第1のPWM周期の前半または後半)と第2の半周期(例えば、第2のPWM周期の前半または後半)とで3つの検出結果(第1の電流Ia,第2の電流Ib,検出電圧Vsensまたは検出温度電圧Vt)を1回ずつ取得する。ケース1では、連続する2つのPWM周期のうちの1つのPWM周期(例えば、第1のPWM周期)の半周期(例えば、第1の半周期)に、第1の電流Ia、第2の電流Ib、検出電圧Vsensまたは検出温度電圧Vtの検出結果のいずれか2つを取得し、連続する2つのPWM周期のうちのもう1つのPWM周期(例えば、第2のPWM周期)の半周期(例えば、第2の半周期)に、先のPWM半周期(例えば、第1の半周期)に取得しなかった残りの1つの検出結果を取得する。
【0065】
また、ケース2では、3つの検出結果(第1の電流Ia,第2の電流Ib,性能影響パラメータの1つ)のうちの2つの検出結果は各1回ずつ取得し、残りのいずれか1つの検出結果は2回取得する。具体的には、第1の半周期と第2の半周期とで3つの検出結果(第1の電流Ia,第2の電流Ib,検出電圧Vsensまたは検出温度電圧Vt)のいずれか2つを1回取得し、残りの1つを1回取得する。ケース2では、第1の半周期に、3つの検出結果(第1の電流Ia,第2の電流Ib,検出電圧Vsensまたは検出温度電圧Vt)のいずれか2つを取得し、第2の半周期に、先のPWM周期にて取得しなかった検出結果を取得するとともに、先のPWM周期にて取得した検出結果のいずれか1つを再度取得する。このように、モータ駆動制御装置1において、第1の電流Ia,第2の電流Ib,検出電圧Vsens,または検出温度電圧Vtの検出結果は、連続する2つのPWM周期において2回取得してもよい。
【0066】
また、ケース3では、2つの性能影響パラメータ(例えば、検出電圧Vsens及び検出温度電圧Vt)の検出結果を両方とも取得する。具体的には、第1の半周期に、4つの検出結果(第1の電流Ia,第2の電流Ib,検出電圧Vsens,検出温度電圧Vt)のいずれか2つの検出結果を取得し、第2の半周期に残りの2つの検出結果を取得する。
【0067】
なお、表2において、第1の半周期と第2の半周期の順序は逆であってもよい。
【0068】
図4は、本発明の一実施形態に係るモータ駆動制御装置1における検出結果取得及びAD変換処理のフローチャートの一例である。図4では、一例として、連続する2つのPWM周期のそれぞれの前半における電流取得、検出電圧の取得、及び取得結果のAD(アナログデジタル)変換処理と、連続する2つのPWM周期のそれぞれの後半における制御用演算処理の手順を示している。
【0069】
PWM周期の半周期において、制御回路部4は、第1の電流Iaの取り込み状態フラグが、例えば、制御回路部4内の図示しないメモリ内に設定されているか否かを確認する(ステップS101)。例えば、フラグの初期値は0であり、第1の電流Iaの取り込み状態フラグが設定されていない場合(ステップS101:NO)、制御回路部4は、ステップS102の処理を行う。
【0070】
制御回路部4は、第1の電流Iaの検出結果を取得する(ステップS102)。
【0071】
その後、制御回路部4は、取得した第1の電流IaのAD変換処理を実行する(ステップS103)。
【0072】
第1の電流IaのAD変換処理が終了すると、制御回路部4は、第1の電流Iaが取り込み状態であることを示す、第1の電流Iaの取り込み状態フラグを設定する(ステップS104)。
【0073】
第1の電流Iaの取り込みが完了した後、制御回路部4は、第1の電流Ia=+Iwを、例えば、制御回路部4内の図示しないメモリ内に記憶する(ステップS105)。
【0074】
なお、第1の電流Iaの取り込み状態フラグが設定されている(フラグの値が、第1の電流Iaが取り込み状態であることを示している)場合(ステップS101:YES)、制御回路部4は、ステップS106の処理に移行する。
【0075】
ステップS102~S105は、図3(d)の時刻t5aにおける動作に対応する。
【0076】
PWM周期の半周期において、制御回路部4は、検出電圧Vsensの計測が必要か否かを判定する(ステップS106)。検出電圧Vsensの取得が必要ない場合(ステップS106:NO)、制御回路部4は、ステップS110の処理に移行する。
【0077】
一方、制御回路部4は、検出電圧Vsensの取得が必要である場合(ステップS106:YES)、検出電圧Vsensに応じたデジタル電圧信号Vadを生成するAD変換処理を行うために、電圧チャンネルへの切り替えを行う(ステップS107)。
【0078】
制御回路部4は、電圧チャンネルの切り替え後、検出電圧Vsensの検出結果を取得し、検出電圧Vsensに応じたデジタル電圧信号Vadを生成するAD変換処理を行う(ステップS108)。
【0079】
制御回路部4は、ステップS108に示したAD変換処理後、検出した電流に対応する検出電圧信号Vmに応じたデジタル電圧信号Vadを生成するAD変換処理を行うために、電流チャンネルへの切り替えを行う(ステップS109)。ステップS109の処理後、ステップS115の処理に移行する。
【0080】
ステップS107~S109は、図3(d)の時刻t6aにおける動作に対応する。
【0081】
一方、ステップS106において、PWM周期の半周期に、検出電圧Vsensの取得が必要ない場合(ステップS106:NO)、制御回路部4は、第2の電流Ibの取り込み状態フラグが、例えば、制御回路部4内の図示しないメモリ内に設定されているか否かを確認する(ステップS110)。第2の電流Ibの取り込み状態フラグが設定されている(フラグの値が、第2の電流Ibが取り込み状態であることを示している)場合(ステップS110:YES)、制御回路部4は、ステップS115の処理に移行する。一方、第2の電流Ibの取り込み状態フラグが設定されていない場合(ステップS110:NO)、制御回路部4は、ステップS111の処理を行う。
【0082】
制御回路部4は、第2の電流Ibの検出結果を取得する(ステップS111)。
【0083】
その後、制御回路部4は、取得した第2の電流IbのAD変換処理を実行する(ステップS112)。
【0084】
第2の電流IbのAD変換処理が終了すると、制御回路部4は、第2の電流Ibが取り込み状態であることを示す、第2の電流Ibの取り込み状態フラグを設定する(ステップS113)。
【0085】
第2の電流Ibの取り込みが完了した後、制御回路部4は、第2の電流Ib=-Iuを、例えば、制御回路部4内の図示しないメモリ内に記憶する(ステップS114)。
【0086】
ステップS110~S114は、図3(d)の時刻t16aにおける動作に対応する。
【0087】
制御回路部4は、第1の電流Iaの取り込み状態フラグ及び第2の電流Ibの取り込み状態フラグが、例えば、制御回路部4内の図示しないメモリ内に設定されているか否かを確認する(ステップS115)。第1の電流Iaの取り込み状態フラグ及び第2の電流Ibの取り込み状態フラグが設定されていない場合(ステップS115:NO)、制御回路部4は、処理を終了する。なお、ステップS109からステップS115に移行した場合は、現在のPWM周期で第2の電流Ibの検出結果を取得していないので、次のPWM周期で第2の電流Ibを取得する。一方、第1の電流Iaの取り込み状態フラグ及び第2の電流Ibの取り込み状態フラグが設定されている場合(ステップS115:YES)、制御回路部4は、ステップS116の処理に移行する。
【0088】
制御回路部4は、連続する2つのPWM周期において取り込んだ第1の電流Iaおよび第2の電流Ibから、第3の電流Ic(Iv=+Iu-(-Iw))を計算する(ステップS116)。
【0089】
その後、制御回路部4は、第1の電流Iaの取り込み状態フラグをメモリからクリアする(ステップS117)。
【0090】
また、制御回路部4は、第2の電流Ibの取り込み状態フラグをメモリからクリアする(ステップS118)。
ステップS116~S118は、図3(d)の時刻t16a~t17における動作に対応する。
【0091】
連続する2つのPWM周期のそれぞれの検出結果を取得しない残りの半周期において、制御回路部4は、ロータの位置推定などの制御用演算処理を実行する(ステップS119)。制御用演算処理の実行後、各PWM周期における処理を終了する。
【0092】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さまざまな変形が可能である。
【0093】
例えば、本発明は、空間ベクトル変調方式に限定されるものではなく、例えば、三角波比較方式でもよい。また、モータ駆動制御装置1の構成は図1の構成に限定されない。図4に示したフローチャートも具体例であって、これに限定されず、他の処理の挿入、処理手順の変更、平行的な処理の実行などが行われてもよい。
【0094】
例えば、電源電圧検出回路3により検出した検出電圧Vsensの値は、モータ20の異常判定に用いてもよい。この場合において、電源電圧値の異常判定は、過敏に作動して不要な停止となることを防ぐため、異常な電圧値が所定時間継続した場合に、異常が生じていると判定してもよい。
【0095】
例えば、性能影響パラメータの検出タイミングは、必ずしも、第1の電流Iaまたは第2の電流Ibの検出タイミングと同じでなくてもよい。すなわち、性能影響パラメータは、検出結果の取得が可能であれば、検出タイミングを任意に設定できる。
【0096】
例えば、本発明の実施形態では、性能影響パラメータを電源電圧あるいはモータの周辺の温度として説明をしたが、性能影響パラメータはこれらに限定されるものではない。
【0097】
例えば、第1の電流Ia,第2の電流IbのAD変換処理と検出電圧VsensのAD変換処理は、チャンネルの切り替えにより共通のアナログデジタル変換器44を用いる例について説明したが、第1の電流Ia,第2の電流IbのAD変換処理と検出電圧VsensのAD変換処理をそれぞれ別個のアナログデジタル変換器を用いて行ってもよい。
【0098】
例えば、連続する2つのPWM周期のそれぞれにおいて行われる制御用演算処理は、上述したロータの位置推定に限定しない。その他の制御用演算処理としては、モータ20の回転速度演算、トルク演算などが考えられる。
【符号の説明】
【0099】
1…モータ駆動制御装置、2…モータ駆動部、2a…インバータ回路、2b…プリドライブ回路、2c…電流検出回路、3…電源電圧検出回路、4…制御回路部(モータ制御回路の一例)、20…モータ、25u,25v,25w…ホール素子、41…ベクトル制御部、42…PWM生成回路、43…タイミング生成回路、44…アナログデジタル変換器、45…温度センサ、Vcc…電源電圧、Q1~Q6…スイッチング素子、Lu…U相のコイル、Lv…V相のコイル、Lw…W相のコイル、Sc…速度指令信号、Vα,Vβ…電圧値、Sd…駆動制御信号、Tr1,Tr2…トリガ信号、Vuh,Vul,Vvh,Vvl,Vwh,Vwl…出力信号、Vsens…検出電圧、Vt…検出温度電圧、Iu,Iv,Iw…電流、Shu,Shv,Shw(Sh)…ホール信号、Vm…検出電圧信号、Vad…デジタル電圧信号、St…タイミング信号、Ia…第1の電流、Ib…第2の電流、Ic…第3の電流
図1
図2
図3
図4