(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181718
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】車両用スライドドア
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20231218BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20231218BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B60J5/00 P
B60J5/04 R
B60J5/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095001
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】染谷 紀樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 学
(57)【要約】
【課題】車両用スライドドアにおいて軽量化と剛性の確保を両立する。
【解決手段】車両用スライドドア1は、樹脂製のアウターパネル21と、アウターパネル21の車内側に配置された樹脂製のインナーパネル22と、アウターパネル21に設けられたアウトサイドハンドル3に近接する位置でインナーパネル22の車外側に固定されたリンフォース4と、を有し、アウターパネル21の内面には、車内側に突出してリンフォース4に当接する当接リブ21aが一体に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のアウターパネルと、
前記アウターパネルの車内側に配置された樹脂製のインナーパネルと、
前記アウターパネルに設けられたアウトサイドハンドルに近接する位置で前記インナーパネルの車外側に固定されたリンフォースと、を有し、
前記アウターパネルの内面には、車内側に突出して前記リンフォースに当接する当接リブが一体に形成されている、車両用スライドドア。
【請求項2】
前記リンフォースは、前記インナーパネルの車外側に車両上下方向に沿って配置され、前記当接リブは、前記アウターパネルの内面に車両前後方向に沿って形成され、前記リンフォースの車外側の面に車両前後方向にわたって当接している、請求項1に記載の車両用スライドドア。
【請求項3】
前記当接リブは、前記アウトサイドハンドルを挟んで車両上下方向の両側に設けられている、請求項2に記載の車両用スライドドア。
【請求項4】
前記リンフォースは、少なくとも接着剤により前記インナーパネルに固定されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用スライドドア。
【請求項5】
前記当接リブは、前記リンフォースに当接して接合されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用スライドドア。
【請求項6】
前記アウターパネルには、前記アウトサイドハンドルとの間に空間を形成するように車外側から車内側に凹む凹部が形成され、前記当接リブは、前記凹部の周縁部に沿って形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用スライドドア。
【請求項7】
前記スライドドアは、車体に対して、車両前方側の上部と車両前方側の下部と車両後方側の車両上下方向における中央部とでスライド可能に支持されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用スライドドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スライドドアに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアとして、ドア本体を構成するアウターパネルとインナーパネルが共に樹脂製のものが知られているが(例えば、特許文献1,2参照)、こうした樹脂製の車両用ドアでは、車体のさらなる軽量化が図られる一方、剛性の確保が重要な課題となる。このような剛性の問題に対しては、車両用ドアが樹脂製であるかどうかにかかわらず、鋼板製のリンフォース(補強部材)による補強構造をインナーパネルに採用するのが一般的である(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-123394号公報
【特許文献2】特開2020-142638号公報
【特許文献3】特開2009-143294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹脂製のスライドドアは、後部座席のドアとして採用されることが多く、その場合、車体に対して車両前方側の上端部および下端部と車両後方側の中央部の3点でスライド可能に支持されている。樹脂製のスライドドアでは、これらの支持点から最も離れた車両前方側の中央部付近で剛性が低下するため、この付近に上述した補強構造を採用して剛性を確保することが考えられる。
【0005】
しかしながら、スライドドアの車両前方側の中央部付近には、アウターパネルにアウトサイドハンドルが設けられているため、ハンドル操作時に加わる車幅方向の荷重によってアウターパネルの変形が発生しやすい。そのため、上述した補強構造だけでアウターパネルの変形を抑えようとすると、インナーパネルに取り付けるリンフォースのサイズを大きくせざる得ず、軽量化の大きな妨げになる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、軽量化と剛性の確保を両立する車両用スライドドアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の車両用スライドドアは、樹脂製のアウターパネルと、アウターパネルの車内側に配置された樹脂製のインナーパネルと、アウターパネルに設けられたアウトサイドハンドルに近接する位置でインナーパネルの車外側に固定されたリンフォースと、を有し、アウターパネルの内面には、車内側に突出してリンフォースに当接する当接リブが一体に形成されている。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明によれば、車両用スライドドアにおいて軽量化と剛性の確保を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用スライドドアを車外側から見た側面図である。
【
図2】
図1のA-A線およびB-B線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用スライドドアを車外側から見た側面図である。
図2(a)は、
図1のA-A線に沿った断面図であり、
図2(b)は、
図1のB-B線に沿った断面図である。
【0012】
本実施形態の車両用スライドドア(以下、単に「スライドドア」ともいう)1は、車両の右後部座席のドア開口を車両前後方向にスライドして開閉するものであり、ドア本体2と、ドア本体2の車内側に設けられた内装材である樹脂製のドアトリム(図示せず)とを有している。
【0013】
ドア本体2は、アウターパネル21と、アウターパネル21の車内側に配置されたインナーパネル22とを有している。アウターパネル21は樹脂製であり、好ましくは、ポリプロピレンコンパウンド製、不飽和ポリエステル樹脂をガラス繊維または炭素繊維に含浸させたシートであるシートモールディングコンパウンド(SMC)製、または、ポリカーボネート製であり、より好ましくは、ポリプロピレンコンパウンド製である。インナーパネル22も樹脂製であり、好ましくは、SMC製、あるいは、ガラス繊維または炭素繊維とポリプロピレン樹脂との複合材(ポリプロピレンコンパウンド)製である。ドア本体2は、アウターパネル21とインナーパネル22の周縁部同士が接着剤23により接合されることで構成されている。ドアトリムは、例えば樹脂製のクリップによって、インナーパネル22の車内側を覆うようにドア本体2に着脱可能に取り付けられている。
【0014】
また、インナーパネル22の前方上部領域(車両前方側の上部領域)R1、前方下部領域(車両前方側の下部領域)R2、および後方中央領域(車両後方側の車両上下方向における中央部領域)R3には、それぞれガイドローラユニット(図示せず)が設けられている。ガイドローラユニットは、車体(図示せず)のドア開口の上部、下部、および後方中央部(ドア開口に対して車両後方側の車両上下方向における中央部)にそれぞれ設けられたガイドレールにスライド可能に連結されている。これにより、スライドドア1は、車体に対して、前方上部領域R1と前方下部領域R2と後方中央領域R3に1つずつ、合計3つの支持点でスライド可能に支持されている。
【0015】
このように、本実施形態のスライドドア1は、ドア本体2が樹脂製であることから、車体のさらなる軽量化が図られる一方、ドア本体2の剛性が特定の領域で低下することが懸念される。すなわち、ドア本体2の剛性は、車体に対する3つの支持点(領域R1~R3)を中心とした
図1に示す破線で囲まれた領域では十分に確保されるが、それらの支持点から最も離れた領域、すなわち、
図1の斜線を付した前方中央領域(車両前方側の車両上下方向における中央部領域)Sの付近では低下することになる。しかも、この前方中央領域Sは、アウターパネル21にアウトサイドハンドル3が設けられている領域である。そのため、前方中央領域Sでは、アウトサイドハンドル3を操作するたびにアウターパネル21に車幅方向の荷重がかかり、アウターパネル21が変形するおそれがある。
【0016】
そこで、本実施形態では、ドア本体2の前方中央領域Sに、このようなアウターパネル21の変形を抑制するための構成が設けられている。具体的には、インナーパネル22の車外側に、補強部材としての鋼板製(金属製)のリンフォース5が設けられている。リンフォース5は、アウトサイドハンドル3に近接する位置で車両上下方向に沿って配置され、リベット24と接着剤25によりインナーパネル22に固定されている。加えて、アウターパネル21の内面には、車内側に突出してリンフォース5に当接する当接リブ21aが一体に形成されている。当接リブ21aは、アウターパネル21に入力される荷重をリンフォース4に伝達する機能を有している。
【0017】
したがって、アウトサイドハンドル3の操作時にアウターパネル21に車内側への荷重(応力)が加わったとしても、そのような荷重を当接リブ21aからリンフォース4を通じてインナーパネル22に伝達させることができる。その結果、アウトサイドハンドル3周辺の剛性を向上させることができ、アウトサイドハンドル3の操作に伴うアウターパネル21の変形を抑制することができる。また、補強部材としてのリンフォース4には、それだけでアウターパネル21の変形を抑え込むほどの強度や剛性は要求されないため、リンフォース4のサイズをそれほど大きくする必要がなく、それが軽量化の妨げになることもない。
【0018】
アウターパネル21に入力される荷重は広範囲に分散されてリンフォース4に伝達されることが好ましく、それにより、アウトサイドハンドル3周辺の剛性を効果的に向上させることができる。そのために、当接リブ21aは、できるだけ広範囲でリンフォース4に当接していることが好ましい。すなわち、当接リブ21aは、図示したように、アウターパネル21の内面に車両前後方向に沿って形成され、リンフォース4の車外側の面に車両前後方向にわたって当接していることが好ましい。同様の理由から、当接リブ21aは、車両上下方向に複数設けられていることが好ましく、具体的には、アウトサイドハンドル3を挟んで車両上下方向の両側に設けられていることが好ましい。
【0019】
ところで、当接リブ21aは、樹脂製のアウターパネル21と一体に形成されているため、アウターパネル21の外面にヒケを生じさせ、外観性を悪化させる要因にもなる。そのため、当接リブ21aの形成位置は、そのようなヒケが発生しても目立たない位置であることが好ましく、その位置は、例えば、アウターパネル21に形成された凹部21bの周縁部である。すなわち、アウターパネル21には、車外側から車内側に凹む凹部21bが形成され、それにより、アウトサイドハンドル3との間には、使用者の手を挿入するためのポケット部(空間)Pが形成されているが、当接リブ21aは、その凹部21bの周縁部に沿って形成されていることが好ましい。特に、上述した剛性の観点からは、当接リブ21aは、図示したように、凹部21bの周縁部のうちアウトサイドハンドル3を挟んだ上下の部分に沿って形成されていることが好ましい。
【0020】
リンフォース4は、リベット24だけで固定されていてもよいが、接着剤25でもインナーパネル22に接合されていることが好ましい。これにより、アウターパネル21から当接リブ21aを通じてリンフォース5に入力される荷重がインナーパネル22へと伝達しやすくなり、アウトサイドハンドル3の操作に伴うアウターパネル21の変形をより確実に抑制することができる。ただし、接着剤25を用いてリンフォース4とインナーパネル22を接合する場合、そのための工程が必要になり、工程数が増加してコストアップにつながるおそれがあるが、本実施形態では、アウターパネル21に当接リブ21aが設けられていることで、そのようなおそれが生じることはない。
【0021】
すなわち、当接リブ21aは、アウターパネル21とインナーパネル22を接合する際にリンフォース4に当接することで、リンフォース4をインナーパネル22に押し付けて接合するための治具としても機能する。そのため、追加の工程を必要とすることなく、アウターパネル21とインナーパネル22を接合するのと同時に、リンフォース4とインナーパネル22を接合することができる。したがって、このような観点からも、当接リブ21aは、できるだけ広範囲でリンフォース4に当接するようになっていることが好ましく、これにより、リンフォース4とインナーパネル21との接合を確実に行うことが可能になる。
【0022】
なお、当接リブ21aは、単にリンフォース4に当接しているだけでもよいが、アウターパネル21にかかる車外側への荷重に対しても剛性を確保するために、接着剤などでリンフォース4に接着されていてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 車両用スライドドア
2 ドア本体
3 アウトサイドハンドル
4 リンフォース
21 アウターパネル
21a 当接リブ
22b 凹部
22 インナーパネル
23,25 接着剤
24 リベット
P ポケット部
R1 前方上部領域(車両前方側の上部領域)
R2 前方下部領域(車両前方側の下部領域)
R3 後方中央領域(車両後方側の車両上下方向における中央部領域)
S 前方中央領域(車両前方側の車両上下方向における中央部領域)