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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181722
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】自律走行車
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20231218BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20231218BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20231218BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20231218BHJP
   G06T 7/33 20170101ALI20231218BHJP
   G06T 7/50 20170101ALI20231218BHJP
【FI】
G01C21/30
G05D1/02 K
G08G1/0969
B60W60/00
G06T7/33
G06T7/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095015
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正史
【テーマコード(参考)】
2F129
3D241
5H181
5H301
5L096
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB19
2F129BB22
2F129BB26
2F129BB34
2F129BB39
2F129BB40
2F129BB49
2F129EE02
2F129EE78
2F129GG04
2F129GG06
2F129GG17
2F129GG18
2F129HH20
2F129HH21
3D241BA50
3D241CA08
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB01A
3D241DB01Z
3D241DC41Z
5H181AA01
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF07
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL09
5H301AA03
5H301BB20
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG09
5L096BA04
5L096CA02
5L096CA27
5L096DA01
5L096EA26
5L096EA37
5L096FA66
5L096FA69
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】誤マッチングを抑制すること。
【解決手段】自律走行車は、カメラと、距離計と、制御装置と、を備える。制御装置は、カメラが撮像した画像データと、地図画像データとをマッチングすることによって自己位置を推定する。制御装置は、カメラから地図画像データを取得する。制御装置は、地図画像データのうち路面とカメラとの鉛直方向の距離が基準距離範囲外の部分をマスキングする。制御装置は、マスキングされた後の地図画像データに、位置情報を紐付けることで地図データを生成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を撮像するように配置された撮像装置と、
前記路面までの距離を測定する距離計と、
前記路面を予め前記撮像装置で撮像した地図画像データと位置情報とを紐付けた地図データを記憶した記憶装置と、
前記撮像装置が撮像した画像データと、前記地図画像データとをマッチングすることによって自己位置を推定する制御装置と、を備えた自律走行車であって、
前記制御装置は、前記地図データを生成する際に、
前記撮像装置から前記地図画像データを取得し、
前記地図画像データのうち前記路面と前記撮像装置との鉛直方向の距離が基準距離範囲外の部分をマスキングし、
前記マスキングされた後の前記地図画像データと前記位置情報とを紐付ける、自律走行車。
【請求項2】
路面を撮像するように配置された撮像装置と、
前記路面までの距離を測定する距離計と、
前記路面を予め前記撮像装置で撮像した地図画像データと位置情報とを紐付けた地図データを記憶した記憶装置と、
前記撮像装置が撮像した画像データと、前記地図画像データとをマッチングすることによって自己位置を推定する制御装置と、を備えた自律走行車であって、
前記制御装置は、
前記撮像装置から前記画像データを取得し、
前記画像データのうち前記路面と前記撮像装置との鉛直方向の距離が基準距離範囲外の部分をマスキングし、
前記マスキングされた後の前記画像データと、前記地図画像データとをマッチングすることで前記自己位置を推定する、自律走行車。
【請求項3】
前記距離計は、レーザー距離計である、請求項1又は請求項2に記載の自律走行車。
【請求項4】
前記撮像装置の撮像範囲は、前記距離計の測定範囲に含まれている、請求項1又は請求項2に記載の自律走行車。
【請求項5】
前記撮像装置の撮像範囲は、前記距離計の測定範囲に重なり合わず、
前記制御装置は、
オドメトリによって前記自律走行車の移動量を算出し、
前記移動量に基づいて前記地図画像データのうち前記路面と前記撮像装置との鉛直方向の距離が前記基準距離範囲外の部分をマスキングする、請求項1に記載の自律走行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の自律走行車は、カメラと、記憶装置と、制御部と、を備える。カメラは、路面を撮像するように配置されている。記憶装置は、地図データを記憶している。地図データは、予め路面を撮像した地図画像データと位置情報とが紐付けされたデータである。制御部は、カメラから画像データを取得する。制御部は、画像データと地図データとのマッチングにより自己位置を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-29706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
路面を撮像した画像データを用いて自己位置を推定する場合、路面に存在する凹凸による特徴を用いてマッチングを行う。グレーチング、及び時間経過によって移動し得る物体の少なくとも一方が地図画像データに含まれていると、誤マッチングの原因となるおそれがある。グレーチング、及び時間経過によって移動し得る物体の少なくとも一方が画像データに含まれている場合も、同様の課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する自律走行車は、路面を撮像するように配置された撮像装置と、前記路面までの距離を測定する距離計と、前記路面を予め前記撮像装置で撮像した地図画像データと位置情報とを紐付けた地図データを記憶した記憶装置と、前記撮像装置が撮像した画像データと、前記地図画像データとをマッチングすることによって自己位置を推定する制御装置と、を備えた自律走行車であって、前記制御装置は、前記地図データを生成する際に、前記撮像装置から前記地図画像データを取得し、前記地図画像データのうち前記路面と前記撮像装置との鉛直方向の距離が基準距離範囲外の部分をマスキングし、前記マスキングされた後の前記地図画像データと前記位置情報とを紐付ける。
【0006】
地図画像データのうち路面と撮像装置との鉛直方向の距離が基準距離範囲外の部分は、マスキングされている。地図画像データのうち路面と撮像装置との鉛直方向の距離が基準距離範囲外の部分は、誤マッチングの原因となるおそれがある。この部分をマスキングすることによって、制御装置が自己位置推定をする際に誤マッチングを抑制できる。
【0007】
上記課題を解決する自律走行車は、路面を撮像するように配置された撮像装置と、前記路面までの距離を測定する距離計と、前記路面を予め前記撮像装置で撮像した地図画像データと位置情報とを紐付けた地図データを記憶した記憶装置と、前記撮像装置が撮像した画像データと、前記地図画像データとをマッチングすることによって自己位置を推定する制御装置と、を備えた自律走行車であって、前記制御装置は、前記撮像装置から前記画像データを取得し、前記画像データのうち前記路面と前記撮像装置との鉛直方向の距離が基準距離範囲外の部分をマスキングし、前記マスキングされた後の前記画像データと、前記地図画像データとをマッチングすることで前記自己位置を推定する。
【0008】
制御装置は、画像データのうち路面と撮像装置との鉛直方向の距離が基準距離範囲外の部分をマスキングする。画像データのうち路面と撮像装置との鉛直方向の距離が基準距離範囲外の部分は、誤マッチングの原因となるおそれがある。この部分をマスキングすることによって、制御装置が自己位置推定をする際に誤マッチングを抑制できる。
【0009】
上記自律走行車について、前記距離計は、レーザー距離計であってもよい。
上記自律走行車について、前記撮像装置の撮像範囲は、前記距離計の測定範囲に含まれていてもよい。
【0010】
上記自律走行車について、前記撮像装置の撮像範囲は、前記距離計の測定範囲に重なり合わず、前記制御装置は、オドメトリによって前記自律走行車の移動量を算出し、前記移動量に基づいて前記地図画像データのうち前記路面と前記撮像装置との鉛直方向の距離が前記基準距離範囲外の部分をマスキングしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、誤マッチングを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】自律走行車を示す側面図である。
図2】自律走行車を示す概略構成図である。
図3】画像データの一例を示す図である。
図4】地図データの生成の際に制御装置が行う制御を示すフローチャートである。
図5】基準距離範囲を示す模式図である。
図6】マスキングされた後の地図画像データの一例を示す図である。
図7】自己位置推定を行う際に制御装置が行う制御を示すフローチャートである。
図8】変更例の自律走行車を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、自律走行車の一実施形態について説明する。
<自律走行車>
図1及び図2に示すように、自律走行車10は、車体11と、駆動輪21と、操舵輪31と、走行モータドライバ22と、走行モータ23と、操舵モータドライバ32と、操舵モータ33と、カメラ41と、距離計51と、補助記憶装置71と、制御装置81と、を備える。自律走行車10は、乗用車であってもよいし、産業車両であってもよい。産業車両は、フォークリフト、トーイングトラクタ、及び無人搬送車を含む。
【0014】
走行モータ23は、駆動輪21を回転させるためのモータである。走行モータドライバ22は、制御装置81からの指令に応じて走行モータ23を駆動させる。走行モータ23の駆動により駆動輪21が回転することで、自律走行車10は走行する。操舵モータ33は、操舵輪31を操舵するためのモータである。操舵モータドライバ32は、制御装置81からの指令に応じて操舵モータ33を駆動させる。操舵モータ33の駆動により操舵輪31が操舵されることで、自律走行車10は旋回する。
【0015】
カメラ41は、撮像装置である。カメラ41は、デジタルカメラである。カメラ41は、撮像素子を備える。撮像素子としては、例えば、CCDイメージセンサ(Charge Coupled Device image sensor)、及びCMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor image sensor)を挙げることができる。カメラ41としては、例えば、RGBカメラ、赤外線カメラ、グレースケールカメラ、及び可視光カメラを挙げることができる。
【0016】
カメラ41は、所定のフレームレートで撮像を行って画像データを生成する。この画像データは、カメラ41で撮像した画像のデジタルデータである。
カメラ41は、路面Srを撮像するように配置されている。本実施形態において、カメラ41は、下方を向いた状態で車体11の底部に設けられている。カメラ41は、路面Srを撮像した画像を示す画像データを生成するといえる。
【0017】
図3に示すように、カメラ41で生成される画像データIM1は、例えば、円形の範囲を撮像したデータである。画像データIM1は、円形の範囲の一部を切り出したデータであってもよい。例えば、画像データIM1は、半円の範囲を撮像したデータであってもよい。画像データIM1には、路面Srの特徴部分F1が写っている。路面Srの特徴部分F1とは、例えば、路面Srに存在する微細な凹凸である。
【0018】
距離計51は、路面Srまでの距離を測定する。距離計51は、レーザー距離計である。距離計51は、車体11の底部に設けられている。距離計51は、レーザーの照射方向を変更しながら距離を測定する。距離計51は、自律走行車10の前後方向、及び自律走行車10の左右方向に照射方向を変更しながらレーザーを照射する。
【0019】
図2に示すように、測位装置61は、衛星航法装置62と、慣性測定装置63と、を備える。衛星航法装置62は、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星から送信される衛星信号を受信する。衛星航法装置62は、衛星信号を用いて位置を測定する。慣性測定装置63は、ジャイロセンサ、及び加速度センサを含む。
【0020】
制御装置81は、プロセッサ82と、記憶部83と、を備える。プロセッサ82としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びDSP(Digital Signal Processor)を挙げることができる。記憶部83は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部83は、処理をプロセッサ82に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部83、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置81は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置81は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0021】
補助記憶装置71は、制御装置81が読み取り可能な情報を記憶している。補助記憶装置71としては、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、及びフラッシュメモリを挙げることができる。
【0022】
補助記憶装置71は、地図データM1を記憶している。補助記憶装置71は、記憶装置である。地図データM1は、カメラ41によって路面Srを予め撮像した地図画像データと位置情報とを紐付けたデータである。自律走行車10が走行する範囲は、予め定められている。位置情報は、座標と、姿勢と、を含む。座標は、絶対位置を表す座標系である地図座標系の座標である。地図座標系は、直交座標系であってもよいし、地理座標系であってもよい。姿勢は、地図座標系の座標軸に対する自律走行車10の傾きを示す情報である。
【0023】
<地図データの生成>
地図データM1は、制御装置81によって生成される。制御装置81が地図データM1を生成する際の処理について説明する。地図データM1は、自律走行車10の運用前に生成される。
【0024】
図4に示すように、ステップS1において、制御装置81は、位置情報を取得する。位置情報は、例えば、測位装置61から取得することができる。制御装置81は、トータルステーションから位置情報を取得してもよい。
【0025】
次に、ステップS2において、制御装置81は、カメラ41から地図画像データを取得する。カメラ41から取得する画像データであって地図データM1に用いられる画像データが地図画像データである。
【0026】
次に、ステップS3において、制御装置81は、地図画像データのうち路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲外の部分を特定する。路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲外の部分は、距離計51によって特定することができる。
【0027】
図5に示すように、カメラ41と距離計51とは離れて設けられている。このため、カメラ41の原点と距離計51の原点とは異なる。制御装置81は、カメラ41の原点と距離計51の原点との離間距離に基づいて距離計51を基準とする距離を、カメラ41を基準とする距離に変換する。制御装置81は、距離計51によって測定された距離とレーザーの照射角度に基づいて、距離計51によって測定された距離から鉛直方向の距離を算出する。距離計51によって測定された距離は、極座標とみなすことができるから、極座標を直交座標に変換することによって鉛直方向の距離を算出することができる。上記したように、制御装置81は、距離計51によって測定された距離を、路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離に変換することができる。これにより、距離計51のレーザーの照射範囲A2に位置する路面Srまでのカメラ41からの鉛直方向の距離を算出できる。
【0028】
カメラ41の撮像範囲A1は、全体に亘って距離計51のレーザーの照射範囲A2に含まれている。従って、地図画像データの画素に対して、レーザーの照射角度を対応付けることができる。言い換えれば、地図画像データの画素に対して、距離計51によって測定された距離を直交座標に変換した場合の当該直交座標の水平方向の座標を対応付けることができる。これにより、制御装置81は、地図画像データの画素毎に路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離を対応付けることができる。距離計51のレーザーの照射範囲A2は、測定範囲である。測定範囲は、距離計51によって距離が測定される範囲である。
【0029】
基準距離範囲L1は、予め設定されている。基準距離範囲L1は、路面Srのうち過度に大きな凹凸がない箇所までのカメラ41からの鉛直方向の距離を中心として上下方向に拡がる範囲である。路面Srのうち過度に大きな凹凸がない箇所とは、例えば、路面Srのうちグレーチングが存在しない箇所、及び路面Srのうち時間経過によって移動し得る物体が存在しない箇所である。制御装置81は、地図画像データのうち路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外の部分を特定する。図5に示す例では、基準距離範囲L1よりも下方に位置する位置P1と、基準距離範囲L1よりも上方に位置する位置P2とが存在している。制御装置81は、地図画像データのうち位置P1,P2が写る部分、即ち、位置P1,P2が写る画素を特定する。
【0030】
次に、ステップS4において、制御装置81は、地図画像データのうち路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外の部分をマスキングする。本実施形態において、制御装置81は、地図画像データのうち路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外の画素に加えて、当該画素から所定範囲の画素をマスキングする。所定範囲は、任意に設定することができる。制御装置81がステップS4の処理を行うことによって、図6に示すように、地図画像データIM2のうち一部M10がマスキングされた地図画像データを得ることができる。
【0031】
次に、ステップS5において、制御装置81は、マスキングされた後の地図画像データにステップS1で取得した位置情報を紐付ける。ステップS1で取得した位置情報は、地図画像データを取得した時点での位置情報である。
【0032】
制御装置81は、自律走行車10を走行させながらステップS1~S5の処理を繰り返し実行する。これによって、地図データM1が生成される。
<自己位置推定>
自律走行車10を走行させる際には、制御装置81は、自己位置推定を行う。自己位置推定は、画像データと地図データM1とを用いて行われる。
【0033】
図7に示すように、ステップS11において、制御装置81は、カメラ41から画像データを取得する。
次に、ステップS12において、制御装置81は、画像データのうち路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外の部分を特定する。ステップS12の処理は、ステップS3と同様の処理である。即ち、ステップS3で地図画像データに対して行った処理を画像データに対して行えばよい。
【0034】
次に、ステップS13において、制御装置81は、画像データのうち路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外の部分をマスキングする。ステップS13の処理は、ステップS4と同様の処理である。即ち、ステップS4で地図画像データに対して行った処理を画像データに対して行えばよい。
【0035】
次に、ステップS14において、制御装置81は、マスキングされた後の画像データと地図画像データとのマッチングを行う。制御装置81は、画像データから特徴点を抽出する。制御装置81は、特徴点の特徴量を記述する。特徴量としては、例えば、特徴量ベクトル、及び輝度値を挙げることができる。また、制御装置81は、地図画像データを用いて特徴点の抽出、及び特徴量の記述を行う。制御装置81は、画像データから得られた特徴点及び特徴量と、地図画像データから得られた特徴点及び特徴量とを照合し、特徴量が類似する特徴点のペアを探索する。制御装置81は、特徴点のペアに基づき、画像データに対応する地図画像データを特定する。例えば、制御装置81は、特徴点のペアが集中している地図画像データを画像データに対応する地図画像データと特定する。上記したマッチングは、特徴量記述子を用いて行うことができる。特徴量記述子としては、例えば、ORB、SIFT、及びSURFを挙げることができる。地図画像データのうちマスキングされた部分については、特徴点が抽出されない。画像データのうちマスキングされた部分については、特徴点が抽出されない。マスキングとは、該当箇所に対する特徴点の抽出が行われなくすることである。
【0036】
次に、ステップS15において、制御装置81は、地図画像データに基づき、自己位置を推定する。自己位置とは、地図座標系での自律走行車10の座標、及び自律走行車10の姿勢を含む。制御装置81は、地図画像データと画像データとの相対位置、及び地図画像データと画像データとの相対角度を算出する。地図画像データと画像データとの相対位置とは、画像データと地図画像データとのずれ量である。画像データと地図画像データとの相対角度とは、画像データと地図画像データとのずれ角である。画像データと地図画像データとは、完全には一致しない場合が多い。これは、地図画像データを取得した時点と、画像データを取得した時点とで自律走行車10の位置及び姿勢が完全に一致することが少ないためである。このため、画像データは、地図画像データの一部にのみ一致することが多い。地図画像データを取得した時点と、画像データを取得した時点で、自律走行車10の位置がずれていた場合、自律走行車10の位置の差によって地図画像データに写る路面Srの位置と画像データに写る路面Srの位置にずれが生じる。このずれ量が、地図画像データと画像データとの相対位置である。ずれ量は、地図画像データの特徴点と画像データの特徴点との位置関係から把握することができる。同様に、地図画像データを取得した時点と、画像データを取得した時点での自律走行車10の姿勢の差によって、画像データは、地図画像データを回転させたものになる。この回転により生じるずれ角が、画像データと地図画像データとの相対角度である。制御装置81は、地図画像データに対応付けられた位置情報と、相対位置と、相対角度とに基づき自己位置を推定する。制御装置81は、地図画像データに紐付けられた座標を相対位置に対応する座標だけずらす。制御装置81は、地図画像データに紐付けられた姿勢を相対角度分だけずらす。これにより得られる地図座標系での座標、及び姿勢を制御装置81は自己位置とする。
【0037】
[本実施形態の作用]
制御装置81は、画像データと地図画像データとをマッチングすることで自己位置を推定する。地図データを生成する際に、制御装置81は、地図画像データのうち路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外の部分をマスキングする。路面Srにグレーチングが存在する場合、グレーチングの下に存在する物体の影響によって誤マッチングが生じるおそれがある。路面Srに時間経過によって移動し得る物体が存在する場合、誤マッチングが生じるおそれがある。時間経過によって移動し得る物体としては、例えば、石や異物を挙げることができる。グレーチングの下に存在する物体は、当該物体の周囲よりも下方に位置する。時間経過によって移動し得る物体は、当該物体の周囲よりも上方に位置する。基準距離範囲L1を設定して、基準距離範囲L1外の部分をマスキングすることによって、地図画像データから誤マッチングの原因となる部分を除外することができる。
【0038】
[本実施形態の効果]
(1)制御装置81は、地図画像データのうち路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外の部分をマスキングする。地図画像データのうち路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外の部分は、誤マッチングの原因となるおそれがある。地図画像データのうちマスキングされた部分については自己位置の推定に用いられない。このため、マスキングによって、誤マッチングを抑制できる。
【0039】
(2)制御装置81は、画像データのうち路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外の部分をマスキングする。画像データであっても、地図画像データと同様に路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外の部分は、誤マッチングの原因となるおそれがある。この部分をマスキングすることによって、誤マッチングを抑制できる。
【0040】
(3)距離計51としてレーザー距離計を用いている。路面Srに水溜まりが存在している場合等、路面Srにレーザーを正反射する鏡面が存在している場合、鏡面に車体11の底面が写ることによって自己位置の推定精度が低下するおそれがある。距離計51から照射されたレーザーが鏡面に照射されると、鏡面で正反射されたレーザーが更に他の部材によって反射された反射光を距離計51は受光することになる。結果として、レーザーが鏡面に照射されると、距離計51から鏡面までの実距離よりも長い距離が測定されることになる。地図画像データのうち鏡面が写る部分については、路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外となる。地図画像データのうち鏡面が写る部分がマスキングされることによって自己位置の推定精度の低下を抑制できる。画像データについても、同様の効果を得ることができる。
【0041】
(4)カメラ41の撮像範囲A1は、距離計51のレーザーの照射範囲A2に含まれている。仮に、カメラ41の撮像範囲A1が距離計51のレーザーの照射範囲A2に含まれない場合、路面Srの同一位置について距離計51が距離を測定するタイミングとカメラ41が撮像を行うタイミングにはずれが生じることになる。この場合、自律走行車10の移動量を算出することによって地図画像データのうち路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外の部分を特定する必要がある。これに対し、カメラ41及び距離計51を実施形態のように配置すると、路面Srのうちカメラ41によって撮像されている箇所について、カメラ41による撮像と同時に距離計51によって距離を測定することができる。この場合、自律走行車10の移動量を算出することなく、地図画像データのうち路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外の部分を特定できる。制御装置81が行う処理を簡易にすることができるため、処理負荷を軽減することができる。画像データについても、同様の効果を得ることができる。
【0042】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0043】
図8に示すように、距離計51は車体11の前方に設けられていてもよい。この場合、カメラ41の撮像範囲A1は、距離計51のレーザーの照射範囲A2に重なり合わない。路面Srの同一位置について距離計51が距離を測定するタイミングとカメラ41が撮像を行うタイミングにはずれが生じることになる。このため、距離計51によって距離が測定された位置と地図画像データの画素との対応付けは、自律走行車10の移動量に基づいて行う必要がある。自律走行車10の移動量は、例えば、慣性測定装置63を用いたオドメトリによって算出することができる。
【0044】
制御装置81が、距離計51によって基準距離範囲L1外の位置P3を検出したとする。位置P3は、カメラ41よりも距離L2前方に位置している。制御装置81は、オドメトリによって自律走行車10の移動量を算出しつつ、位置P3が地図画像データに写るようになると、地図画像データの該当部分をマスキングする。例えば、カメラ41と距離計51との相対位置は既知であるため、制御装置81は、距離計51によって得られた基準距離範囲L1外の位置P3の座標と撮像範囲A1の座標との差は算出できる。この座標の差と移動量に基づいて、制御装置81は、地図画像データのうち路面Srとカメラ41との鉛直方向の距離が基準距離範囲L1外の部分を特定できる。制御装置81は、この部分のマスキングを行う。
【0045】
上記した例では、車体11の前方に距離計51が設けられていたが、車体11の前方に加えて車体11の後方に距離計51が設けられていてもよい。この場合、自律走行車10が前進している場合には、車体11の前方の距離計51の測定結果、自律走行車10が後進している場合には車体11の後方の距離計51の測定結果を用いてマスキングを行えばよい。
【0046】
上記した例では、地図画像データをマスキングする場合について説明したが、同様の手法によって画像データのマスキングを行ってもよい。
自律走行車10は、障害物との接触を抑制するために車体11の前方に距離計51を備えている場合がある。上記したようにマスキングを行うことによって、自律走行車10の既存の距離計51を用いてマスキングを行うことができる。
【0047】
○制御装置81は、地図データM1を生成する際にのみマスキングを行ってもよい。言い換えれば、マスキングを行う対象は地図画像データのみであってもよい。この場合であっても、地図画像データはマスキングされているため、自己位置推定の際に誤マッチングが生じることは抑制される。地図データM1を生成した後には、自律走行車10から距離計51を取り外してもよい。
【0048】
○制御装置81は、自己位置推定の際にのみマスキングを行ってもよい。言い換えれば、マスキングを行う対象は画像データのみであってもよい。この場合であっても、画像データはマスキングされているため、自己位置推定の際に誤マッチングが生じることは抑制される。
【0049】
○距離計51としては、レーダー等を用いてもよい。
○撮像装置としてステレオカメラを用いてもよい。この場合、ステレオカメラを距離計として用いてもよい。
【0050】
○撮像装置は、リニアイメージセンサであってもよい。
○地図データM1が記憶される記憶装置は、記憶部83であってもよい。
[付記]
実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
【0051】
(1)路面を撮像するように配置された撮像装置と、前記路面を予め前記撮像装置で撮像した地図画像データと位置情報とを紐付けた地図データを記憶した記憶装置と、前記撮像装置が撮像した画像データと、前記地図画像データとをマッチングすることによって自己位置を推定する制御装置と、を備えた自律走行車であって、前記地図画像データのうち、前記路面と前記撮像装置との鉛直方向の距離が基準距離範囲外の部分はマスキングされている、自律走行車。
【符号の説明】
【0052】
A1…撮像範囲、A2…測定範囲である照射範囲、M1…地図データ、Sr…路面、10…自律走行車、41…撮像装置であるカメラ、51…距離計、71…記憶装置である補助記憶装置、81…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8