(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181723
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス用固定具及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20231218BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20231218BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H02G3/30
F16B5/06 B
F16B2/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095016
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井▲高▼ 弘稀
【テーマコード(参考)】
3J001
3J022
5G363
【Fターム(参考)】
3J001FA19
3J001GC04
3J001HA02
3J001JD27
3J001KA19
3J001KB02
3J022DA12
3J022EA16
3J022EB14
3J022EC02
3J022EC14
3J022FA05
3J022FB08
3J022GB45
3J022GB56
3J022GB74
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】電線部材を取付対象から容易に取り外すことを可能にしたワイヤハーネス用固定具及びワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス用固定具12は、取付対象Pに固定される固定部材20と、電線部材11を保持する電線保持部材30とを備える。電線保持部材30は、第1連結部31を有している。固定部材20は、第1連結部31に着脱可能に連結される第2連結部21を有している。電線保持部材30は、第1連結部31と第2連結部21との連結により、固定部材20に対して分離可能に取り付けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象に固定される固定部材と、
電線部材を保持する電線保持部材と、を備えるワイヤハーネス用固定具であって、
前記固定部材及び前記電線保持部材の一方は、第1連結部を有し、
前記固定部材及び前記電線保持部材の他方は、前記第1連結部に着脱可能に連結される第2連結部を有し、
前記電線保持部材は、前記第1連結部と前記第2連結部との連結により、前記固定部材に対して分離可能に取り付けられている、
ワイヤハーネス用固定具。
【請求項2】
前記第1連結部は、係止爪を有し、
前記第2連結部は、前記係止爪が係止される被係止部を有している、
請求項1に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項3】
前記係止爪及び前記被係止部は、それぞれ複数設けられている、
請求項2に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項4】
前記第1連結部は、前記複数の係止爪のうちの1つの係止爪における前記被係止部との係止が外れる方向への変位を許容する変位許容部を有している、
請求項3に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項5】
前記第1連結部は、前記変位許容部と協働して前記係止爪を変位させる操作部を有している、
請求項4に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項6】
前記固定部材は、前記第2連結部を有し、
前記電線保持部材は、前記操作部を含む前記第1連結部と、前記電線部材を保持する保持部と、を有し、
前記電線保持部材において、前記保持部は、前記操作部に対して干渉しないように前記操作部とは独立して設けられている、
請求項5に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項7】
前記第1連結部は、前記操作部と前記保持部との間に設けられる溝部を有している、
請求項6に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項8】
前記第1連結部は、ベース部を有し、
前記複数の係止爪は、前記ベース部から延出しており、
前記操作部は、前記ベース部の端面から突出している、
請求項6に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項9】
前記保持部は、前記ベース部の前記端面から突出する突出部を有している、
請求項8に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項10】
前記変位許容部は、前記第1連結部に形成されたスリットと、前記スリットにより撓むことが可能とされた可撓部と、を有し、
前記変位許容部により変位が許容される前記係止爪は、前記可撓部に設けられている、
請求項4に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項11】
前記第1連結部は、前記変位許容部と協働して前記係止爪を変位させる操作部を有し、
前記操作部は、前記可撓部における前記スリットの延在方向中央部に対応する位置に設けられている、
請求項10に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項12】
前記変位許容部により変位が許容される前記係止爪を第1係止爪とし、前記複数の係止爪のうちの前記第1係止爪以外の係止爪を第2係止爪として、
前記第1係止爪は、1つ設けられ、
前記第2係止爪は、複数設けられ、
前記第1係止爪の幅は、前記複数の第2係止爪の各々の幅よりも大きく設定されている、
請求項4に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のワイヤハーネス用固定具と、
前記ワイヤハーネス用固定具の前記電線保持部材に保持される電線部材と、
を備える、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネス用固定具及びワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のワイヤハーネス用固定具は、車体パネルなどの取付対象に固定される固定部と、電線部材を保持する保持部とを備える。固定部は、取付対象に係止する一対の抜止爪を有している。そして、各抜止爪が取付対象に係止されることにより、電線部材を保持するワイヤハーネス用固定具が取付対象に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のワイヤハーネス用固定具では、例えば車両の振動を受ける状況下での長年の使用により、固定部の抜止爪が変形するおそれがある。抜止爪が変形すると、固定部を取付対象から取り外せなくなる、または、取り外すことが可能であっても困難を伴う場合がある。
【0005】
本開示の目的は、電線部材を取付対象から容易に取り外すことを可能にしたワイヤハーネス用固定具及びワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤハーネス用固定具は、取付対象に固定される固定部材と、前記電線部材を保持する電線保持部材と、を備えるワイヤハーネス用固定具であって、前記固定部材及び前記電線保持部材の一方は、第1連結部を有し、前記固定部材及び前記電線保持部材の他方は、前記第1連結部に着脱可能に連結される第2連結部を有し、前記電線保持部材は、前記第1連結部と前記第2連結部との連結により、前記固定部材に対して分離可能に取り付けられている。
【0007】
また、本開示のワイヤハーネスは、上記のワイヤハーネス用固定具と、前記ワイヤハーネス用固定具の前記電線保持部材に保持される電線部材と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示のワイヤハーネス用固定具及びワイヤハーネスは、電線部材を取付対象から容易に取り外すことを可能にする効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態におけるワイヤハーネスの斜視図である。
【
図2】
図2は、同形態におけるワイヤハーネス用固定具の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、同形態におけるワイヤハーネスの断面図である。
【
図4】
図4は、変更例におけるワイヤハーネスの斜視図である。
【
図5】
図5は、同変更例におけるワイヤハーネス用固定具の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のワイヤハーネス用固定具は、
[1]取付対象に固定される固定部材と、前記電線部材を保持する電線保持部材と、を備えるワイヤハーネス用固定具であって、前記固定部材及び前記電線保持部材の一方は、第1連結部を有し、前記固定部材及び前記電線保持部材の他方は、前記第1連結部に着脱可能に連結される第2連結部を有し、前記電線保持部材は、前記第1連結部と前記第2連結部との連結により、前記固定部材に対して分離可能に取り付けられている。
【0011】
この構成によれば、固定部材を取付対象から取り外すことが困難な状況であっても、第1連結部と第2連結部との連結状態を解除することにより、取付対象に固定された状態の固定部材から電線部材を電線保持部材と共に容易に取り外すことが可能となる。
【0012】
[2]上記[1]において、前記第1連結部は、係止爪を有し、前記第2連結部は、前記係止爪が係止される被係止部を有していてもよい。
この構成によれば、第1連結部の係止爪と第2連結部の被係止部との係止によって、電線保持部材を固定部材に取り付けることが可能となる。
【0013】
[3]上記[2]において、前記係止爪及び前記被係止部は、それぞれ複数設けられていてもよい。
この構成によれば、係止爪と被係止部の複数の組によって、第1連結部と第2連結部とを強固に連結させることが可能となる。また、振動時などにおいて1つの係止爪に掛かる負荷を軽減させることが可能となる。
【0014】
[4]上記[3]において、前記第1連結部は、前記複数の係止爪のうちの1つの係止爪における前記被係止部との係止が外れる方向への変位を許容する変位許容部を有していてもよい。
【0015】
この構成によれば、変位許容部によって係止爪を変位させることで、被係止部に対する係止爪の係止を容易に解除することが可能となる。
[5]上記[4]において、前記第1連結部は、前記変位許容部と協働して前記係止爪を変位させる操作部を有していてもよい。
【0016】
この構成によれば、変位許容部と協働する操作部によって、係止爪の変位を容易に操作することが可能となる。したがって、操作部によって被係止部に対する係止爪の係止をより容易に解除することが可能となる。
【0017】
[6]上記[5]において、前記固定部材は、前記第2連結部を有し、前記電線保持部材は、前記操作部を含む前記第1連結部と、前記電線部材を保持する保持部と、を有し、前記電線保持部材において、前記保持部は、前記操作部に対して干渉しないように前記操作部とは独立して設けられていてもよい。
【0018】
この構成によれば、電線部材から伝わる力が保持部を介して操作部に伝わりにくい構成とすることが可能となる。したがって、電線部材から伝わる力によって操作部が動き、その結果、係止爪が変位して被係止部との係止が意図せず解除されることを抑制することが可能となる。
【0019】
[7]上記[6]において、前記第1連結部は、前記操作部と前記保持部との間に設けられる溝部を有していてもよい。
この構成によれば、保持部と操作部との間に設けられた溝部によって、保持部が操作部に対して干渉しないように構成することが可能となる。
【0020】
[8]上記[6]または[7]において、前記第1連結部は、ベース部を有し、前記複数の係止爪は、前記ベース部から延出しており、前記操作部は、前記ベース部の端面から突出していてもよい。
【0021】
この構成によれば、操作部がベース部から突出していることで、操作部の操作を容易に行うことが可能となる。
[9]上記[8]において、前記保持部は、前記ベース部の前記端面から突出する突出部を有していてもよい。
【0022】
この構成によれば、保持部の突出部と操作部とがベース部の同一の端面から突出する。このため、ベース部から突出する部位を同一の端面に一纏めにすることが可能となる。したがって、ワイヤハーネス用固定具と周辺部品との干渉を抑制することが可能となる。
【0023】
[10]上記[4]から[9]のいずれかにおいて、前記変位許容部は、前記第1連結部に形成されたスリットと、前記スリットにより撓むことが可能とされた可撓部と、を有し、前記変位許容部により変位が許容される前記係止爪は、前記可撓部に設けられていてもよい。
【0024】
この構成によれば、第1連結部に設けられたスリットと可撓部とによって、係止爪を容易に変位させることが可能となる。したがって、被係止部に対する係止爪の係止をより容易に解除することが可能となる。
【0025】
[11]上記[10]において、前記第1連結部は、前記変位許容部と協働して前記係止爪を変位させる操作部を有し、前記操作部は、前記可撓部における前記スリットの延在方向中央部に対応する位置に設けられていてもよい。
【0026】
この構成によれば、可撓部は、スリットの延在方向中央部においてより撓みやすい。つまり、可撓部において撓みやすい部位に操作部が設けられるため、操作部によって被係止部に対する係止爪の係止をより容易に解除することが可能となる。
【0027】
[12]上記[4]から[11]のいずれかにおいて、前記変位許容部により変位が許容される前記係止爪を第1係止爪とし、前記複数の係止爪のうちの前記第1係止爪以外の係止爪を第2係止爪として、前記第1係止爪は、1つ設けられ、前記第2係止爪は、複数設けられ、前記第1係止爪の幅は、前記複数の第2係止爪の各々の幅よりも大きく設定されていてもよい。
【0028】
この構成によれば、変位許容部によって変位可能な第1係止爪の幅を各第2係止爪の幅よりも大きくすることで、第1連結部と第2連結部とを好適に連結させることが可能となる。
【0029】
[13]また、本開示のワイヤハーネスは、上記[1]から[12]のいずれかのワイヤハーネス用固定具と、前記ワイヤハーネス用固定具の前記電線保持部材に保持される電線部材と、を備える。
【0030】
この構成によれば、上記[1]のワイヤハーネス用固定具と同様の効果を得ることができる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネス用固定具及びワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。また、本明細書における「平行」や「垂直」は、厳密に平行や垂直の場合のみでなく、本実施形態における作用ならびに効果を奏する範囲内で概ね平行や垂直の場合も含まれる。
【0031】
また、本明細書における「対向」とは、面同士又は部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。また、本明細書における「対向」とは、2つの部分の間に、2つの部分とは別の部材が介在している場合と、2つの部分の間に何も介在していない場合の両方を含む。
【0032】
図1に示すように、本実施形態のワイヤハーネス10は、例えば車両用のワイヤハーネスである。ワイヤハーネス10は、電線部材11と、ワイヤハーネス用固定具12とを備えている。
【0033】
電線部材11は、例えば、複数の電線の束である電線束を含んでいる。電線部材11は、車両に搭載される図示しない電気機器に電気的に接続される。電線部材11は、前記電線束の外周を覆う筒状の外装部材を含む構成であってもよい。
【0034】
(ワイヤハーネス用固定具12の構成)
ワイヤハーネス用固定具12は、固定部材20と、固定部材20に取り付けられる電線保持部材30とを備える。固定部材20は、
図3に示す取付対象Pに固定される。取付対象Pは、例えば車両のボディパネルである。電線保持部材30は、電線部材11を保持する。すなわち、電線部材11は、ワイヤハーネス用固定具12によって取付対象Pに対して固定される。
【0035】
図2及び
図3に示すように、電線保持部材30は、第1連結部31を有している。固定部材20は、第1連結部31に着脱可能に連結される第2連結部21を有している。電線保持部材30は、第1連結部31と第2連結部21との連結により、固定部材20に対して分離可能に取り付けられている。なお、固定部材20及び電線保持部材30は、例えば合成樹脂により形成されている。
【0036】
なお、図面において、X軸は、電線部材11の長さ方向に沿った軸である。Y軸は、X軸に対して垂直、かつ、取付対象Pの表面に対して平行な軸である。また、Z軸は、ワイヤハーネス用固定具12の高さ方向に沿った軸であって、X軸及びY軸のそれぞれに対して垂直な軸である。以下では、X軸に沿った方向をX軸方向とし、Y軸に沿った方向をY軸方向とし、Z軸に沿った方向をZ軸方向として説明する。
【0037】
(固定部材20の構成)
固定部材20は、第2連結部21と、固定部22とを有している。
固定部22は、例えば、取付対象Pに貫通形成された取付孔Paに挿入されて固定される。固定部22は、例えば、図示しない一対の係止片を備える。固定部22は、前記一対の係止片が取付対象Pに係止されることで、取付対象Pの取付孔Paに固定される。
【0038】
第2連結部21は、ベース部23と、ベース部23に設けられた係止凹部24とを有している。ベース部23は、平面視、すなわちZ軸方向から見て、例えばX軸方向に長い長方形をなしている。また、ベース部23は、略直方体状をなしている。固定部22は、ベース部23のZ軸方向の一側面から突出するように、ベース部23に一体に形成されている。
【0039】
係止凹部24は、ベース部23に例えば3つ設けられている。以下の説明では、これら3つの係止凹部24のうちの1つを第1係止凹部24aとし、残りの2つの係止凹部24を第2係止凹部24bとする。
【0040】
(電線保持部材30の構成)
図1、
図2及び
図3に示すように、電線保持部材30は、第1連結部31と、電線部材11を保持する保持部32とを有している。電線保持部材30は、第1連結部31と保持部32とが一体に形成された射出成形品である。第1連結部31は、Z軸方向から見て、例えばX軸方向に長い長方形をなしている。
【0041】
第1連結部31は、ベース部33と、ベース部33に設けられた係止爪34とを有している。ベース部33は、平面視、すなわちZ軸方向から見て、例えばX軸方向に長い長方形をなしている。また、ベース部33は、略直方体状をなしている。Z軸方向から見たときのベース部33の大きさは、固定部材20のベース部23の大きさよりも小さい。すなわち、ベース部33は、X軸方向及びY軸方向の各々における寸法がベース部23よりも小さい。
【0042】
保持部32は、ベース部33のZ軸方向の一側面に設けられている。ベース部33のZ軸方向の両側面のうち、保持部32が設けられた側面を上面33aとしたとき、係止爪34はベース部33の下面33bから突出するように設けられている。ベース部33の下面33bは、例えば、Z軸方向に対して垂直な平面状をなしている。なお、以下では、ベース部33におけるZ軸方向の上面33a側を上側または上方とし、ベース部33におけるZ軸方向の下面33b側を下側または下方として説明する。
【0043】
固定部材20におけるベース部23の上面23aは、例えば、Z軸方向に対して垂直な平面状をなしている。電線保持部材30が固定部材20に取り付けられた状態において、ベース部33の下面33bは、ベース部23の上面23aに当接する。第1係止凹部24a及び各第2係止凹部24bは、ベース部23の上面23aに形成されている。また、固定部22は、ベース部23の下面23bに設けられている。
【0044】
(溝部35の構成)
図1、
図2及び
図3に示すように、ベース部33のY軸方向の一端部には、X軸方向に沿って延びる溝部35が形成されている。溝部35は、例えば、ベース部33の当該Y軸方向の一端部における、X軸方向の一端から他端にわたって形成されている。また、溝部35は、例えば、ベース部33の当該Y軸方向の一端部における、Z軸方向の中央部に形成されている。以下の説明では、ベース部33の当該Y軸方向の一端部において、溝部35にてZ軸方向に分けられる2つの部位をそれぞれ第1部位33c及び第2部位33dとする。第1部位33cと第2部位33dとは、溝部35を挟んでZ軸方向に互いに対向する。第1部位33cは、Z軸方向において溝部35の下側に位置し、第2部位33dは、Z軸方向において溝部35の上側に位置する。
【0045】
(スリット36及び可撓部37の構成)
図2及び
図3に示すように、第1部位33cには、第1部位33cをZ軸方向に貫通するスリット36が形成されている。スリット36は、例えばX軸方向に沿って延在している。X軸方向において、スリット36の長さは、例えば、ベース部33の長さの半分以上に設定されている。
【0046】
第1部位33cは、スリット36よりもY軸方向の外側の部位である可撓部37を有している。可撓部37は、スリット36が形成されることによってY軸方向に変形しやすい。詳しくは、可撓部37は、Y軸方向においてスリット36の幅が狭くなる方向に撓みやすくなっている。
【0047】
(操作部38の構成)
第1部位33cは、可撓部37から延出する操作部38を有している。操作部38は、可撓部37からY軸方向に沿ってスリット36とは反対側に延出している。操作部38は、X軸方向においてスリット36の中央部に対応する位置に設けられている。操作部38のY軸方向の先端部は、ベース部33のY軸方向の端面33eよりも外方に突出している。操作部38がY軸方向に押し込まれることによって、スリット36のY軸方向の幅が狭まるように可撓部37が変形する。
【0048】
(係止爪34の構成)
図2に示すように、係止爪34は、ベース部33の下面33bに例えば3つ設けられている。以下の説明では、これら3つの係止爪34のうちの1つを第1係止爪34aとし、残りの2つの係止爪34を第2係止爪34bとする。第1係止爪34aは、第1係止凹部24aに挿入される。各第2係止爪34bは、各第2係止凹部24bに挿入される。
【0049】
各第2係止爪34bは、ベース部33の下面33bにおけるY軸方向の端部に設けられている。また、各第2係止爪34bは、Y軸方向において溝部35が設けられた側とは反対側に設けられている。一方の第2係止爪34bは、X軸方向においてベース部33の中央部に対する一方側に設けられ、他方の第2係止爪34bは、X軸方向においてベース部33の中央部に対する他方側に設けられている。また、2つの第2係止爪34bは、X軸方向の中央部に対して線対称となる位置に設けられている。
【0050】
固定部材20のベース部23において、各第2係止凹部24bは、各第2係止爪34bに対応する位置に設けられている。
図3に示すように、第2係止凹部24bに挿入された第2係止爪34bは、第2係止凹部24bの内側に形成された被係止部25に対してZ軸方向に係止される。なお、X軸方向における第2係止爪34bの両側面は、例えば、第2係止凹部24bの側面に当接している。これにより、固定部材20と電線保持部材30との間のがたつきが抑制されている。その結果、ワイヤハーネス用固定具12によって電線部材11を安定して保持することが可能となる。
【0051】
(第1係止爪34aの構成)
図2に示すように、第1係止爪34aは、可撓部37からZ軸方向の下側に突出している。第1係止爪34aは、X軸方向においてスリット36の中央部に対応する位置に設けられている。すなわち、第1係止爪34aは、X軸方向において操作部38と同位置に設けられている。また、X軸方向における第1係止爪34aの幅は、X軸方向における各第2係止爪34bの幅よりも大きい。なお、X軸方向における各第2係止爪34bの幅は、例えば、同等の大きさに設定されている。
【0052】
固定部材20のベース部23において、第1係止凹部24aは、第1係止爪34aに対応する位置に設けられている。
図3に示すように、第1係止凹部24aに挿入された第1係止爪34aは、第1係止凹部24aの内側に形成された被係止部26に対してZ軸方向に係止される。第1係止爪34aは、可撓部37のY軸方向内側への変位に伴い、可撓部37と共にY軸方向内側に変位する。このY軸方向内側の変位により、第1係止爪34aと被係止部26との係止が外れるようになっている。すなわち、第1連結部31に設けられたスリット36及び可撓部37は、第1係止爪34aにおける被係止部26との係止が外れる方向への変位を許容する変位許容部を構成している。なお、X軸方向における第1係止爪34aの両側面は、例えば、第1係止凹部24aの側面に当接している。これにより、固定部材20と電線保持部材30との間のがたつきが抑制されている。その結果、ワイヤハーネス用固定具12によって電線部材11を安定して保持することが可能となる。
【0053】
(保持部32の構成)
図1及び
図3に示すように、保持部32は、例えば、電線部材11の外周を囲むバンド部41と、バンド部41が係止されるロック部42とを有している。ロック部42は、バンド部41の長さ方向の一端に形成されている。また、ロック部42は、例えば、ベース部33のX軸方向の中央部に一体に形成されている。
【0054】
バンド部41は、電線部材11の周囲に巻き付けられるとともに、バンド部41の先端がロック部42の貫通孔42aに挿入されて係止されている。これにより、電線部材11は、バンド部41とロック部42とによって保持される。なお、貫通孔42aは、例えばロック部42をY軸方向に貫通している。バンド部41の先端部41aは、例えば、貫通孔42aからY軸方向に突出している。また、バンド部41の先端部41aは、Y軸方向におけるベース部23の端面33eから突出している。すなわち、バンド部41の先端部41aは、Y軸方向においてベース部23における操作部38と同じ側から突出している。
【0055】
電線保持部材30において、ベース部33の第1部位33c及び操作部38は、例えば、保持部32に対してZ軸方向に並設されるように構成されている。そして、保持部32のロック部42は、操作部38に対して干渉しないように操作部38とは独立して設けられている。詳しくは、第1連結部31のベース部33は、操作部38と保持部32との間に設けられる前記溝部35を有している。これにより、外力を受ける電線部材11から保持部32に伝わった力が、ロック部42を介して操作部38及び可撓部37に伝わりにくい構成となっている。
【0056】
本実施形態の作用について説明する。
電線部材11を保持する電線保持部材30は、固定部材20から分離可能である。したがって、固定部材20を取付対象Pから取り外すことなく、電線保持部材30及び電線部材11を取付対象Pから取り外すことが可能である。したがって、例えば車両の振動を受ける状況下での長年の使用によって固定部22が変形し、それにより、固定部22を取付孔Paから取り外すことが困難な状況になったとしても、電線部材11を取付対象Pから容易に取り外すことが可能となっている。また、取付対象Pに固定されている固定部材20に対して電線保持部材30を装着可能であるため、新たな電線部材11を電線保持部材30ごと交換することが可能である。
【0057】
本実施形態の効果について説明する。
(1)電線保持部材30は、第1連結部31と第2連結部21との連結により、固定部材20に対して分離可能に取り付けられている。この構成によれば、固定部材20を取付対象Pから取り外すことが困難な状況であっても、第1連結部31と第2連結部21との連結状態を解除することにより、取付対象Pに固定された状態の固定部材20から電線部材11を電線保持部材30と共に容易に取り外すことが可能となる。
【0058】
(2)第1連結部31は、係止爪34を有している。第2連結部21は、係止爪34が係止される被係止部25,26を有している。この構成によれば、第1連結部31の係止爪34と第2連結部21の被係止部25,26との係止によって、電線保持部材30を固定部材20に取り付けることが可能となる。
【0059】
(3)係止爪34及び被係止部25,26は、それぞれ複数設けられている。この構成によれば、係止爪34と被係止部25,26の複数の組によって、第1連結部31と第2連結部21とを強固に連結させることが可能となる。また、係止爪34及び被係止部25,26がそれぞれ複数設けられることで、車両振動時などにおいて1つの係止爪34に掛かる負荷を軽減させることが可能となる。
【0060】
(4)第1連結部31に設けられたスリット36及び可撓部37は、第1係止爪34aにおける被係止部26との係止が外れる方向への変位を許容する変位許容部を構成している。この構成によれば、スリット36及び可撓部37にて構成される変位許容部によって係止爪34を変位させることで、被係止部26に対する第1係止爪34aの係止を容易に解除することが可能となる。
【0061】
(5)第1連結部31は、前記変位許容部と協働して第1係止爪34aを変位させる操作部38を有している。この構成によれば、操作部38によって、係止爪34の変位を容易に操作することが可能となる。したがって、操作部38によって被係止部26に対する第1係止爪34aの係止をより容易に解除することが可能となる。
【0062】
(6)固定部材20は、第2連結部21を有している。電線保持部材30は、操作部38を含む第1連結部31と、電線部材11を保持する保持部32と、を有している。電線保持部材30において、保持部32は、操作部38に対して干渉しないように操作部38とは独立して設けられている。この構成によれば、電線部材11から伝わる力が保持部32を介して操作部38に伝わりにくい構成とすることが可能となる。したがって、電線部材11から伝わる力によって操作部38が動き、その結果、係止爪34が変位して被係止部26との係止が意図せず解除されることを抑制することが可能となる。
【0063】
(7)第1連結部31は、操作部38と保持部32との間に設けられる溝部35を有している。この構成によれば、保持部32と操作部38との間に設けられた溝部35によって、保持部32が操作部38に対して干渉しないように構成することが可能となる。
【0064】
(8)第1連結部31は、ベース部33を有している。複数の係止爪34は、ベース部33の下面33bから延出している。操作部38は、ベース部33の端面33eから突出している。この構成によれば、操作部38がベース部33から突出していることで、操作部38の操作を容易に行うことが可能となる。
【0065】
(9)保持部32は、ベース部33の端面33eから突出する突出部として、バンド部41の先端部41aを有している。この構成によれば、バンド部41の先端部41aと操作部38とがベース部33の同一の端面33eから突出する。このため、ベース部33から突出する部位を同一の端面33eに一纏めにすることが可能となる。したがって、ワイヤハーネス用固定具12と周辺部品との干渉を抑制することが可能となる。
【0066】
(10)第1連結部31に設けられる前記変位許容部は、第1連結部31に形成されたスリット36と、スリット36により撓むことが可能とされた可撓部37と、を有している。そして、第1係止爪34aは、可撓部37に設けられている。この構成によれば、第1連結部31に設けられたスリット36と可撓部37によって、第1係止爪34aを容易に変位させることが可能となる。したがって、被係止部26に対する第1係止爪34aの係止をより容易に解除することが可能となる。
【0067】
(11)操作部38は、可撓部37におけるスリット36の延在方向中央部に対応する位置に設けられている。この構成によれば、可撓部37は、スリット36の延在方向中央部においてより撓みやすい。つまり、可撓部37において撓みやすい部位に操作部38が設けられるため、操作部38によって被係止部26に対する第1係止爪34aの係止をより容易に解除することが可能となる。
【0068】
(12)第1係止爪34aの幅は、複数の第2係止爪34bの各々の幅よりも大きく設定されている。この構成によれば、第1係止爪34aの幅を各第2係止爪34bの幅よりも大きくすることで、第1連結部31と第2連結部21とを好適に連結させることが可能となる。本実施形態では、変位する第1係止爪34aは、ベース部33のY軸方向の一端部寄りに設けられ、可動しない2つの第2係止爪34bは、ベース部33のY軸方向の他端部寄りに設けられる。そして、第1係止爪34aは、可撓部37において撓み量が確保しやすいX軸方向の中央部に1つのみ設けられる。これにより、第1係止爪34aに、より負荷が掛かりやすい構成であるため、第1係止爪34aの幅を各第2係止爪34bの幅よりも大きくすることで、電線部材11を安定して保持することが可能となる。
【0069】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・
図4及び
図5に示すように、第2連結部21のベース部23は、第1連結部31のベース部33の一部が嵌まり込む凹部50を有していてもよい。凹部50には、ベース部33のZ軸方向における一部が嵌まり込む。凹部50とベース部33とは、X軸方向及びY軸方向において互いに当接可能である。このような構成によれば、固定部材20と電線保持部材30との間のがたつきを抑制することが可能となる。その結果、ワイヤハーネス用固定具12によって電線部材11を安定して保持することが可能となる。また、ベース部33が凹部50の内側面に対してX軸方向及びY軸方向において当接することによって、車両振動時などにおける各係止爪34に掛かる負荷を軽減させることが可能となる。
【0070】
なお、
図4及び
図5に示す構成のベース部23は、凹部50と繋がる切り欠き部51を有している。切り欠き部51には、操作部38が嵌まり込む。操作部38は、切り欠き部51を通じてY軸方向に突出する。
【0071】
・第1係止爪34aの幅が、各第2係止爪34bの幅と同等、または各第2係止爪34bの幅よりも小さい構成であってもよい。
・上記実施形態の第2係止凹部24bは、複数の第2係止爪34bにそれぞれ対応して複数設けられるが、これ以外に例えば、各第2係止凹部24bが互いに繋がっている構成としてもよい。
【0072】
・第1係止爪34aの数、及び被係止部26を有する第1係止凹部24aの数は上記実施形態に限らず、2つ以上であってもよい。
・第2係止爪34bの数、及び被係止部25を有する第2係止凹部24bの数は上記実施形態に限らず、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0073】
・上記実施形態の電線保持部材30では、スリット36及び可撓部37を有する変位許容部と操作部38は、保持部32のロック部42に対してZ軸方向に並設されるように構成されるが、これに特に限定されるものではない。例えば、スリット36及び可撓部37を有する変位許容部と操作部38が、ロック部42に対してX軸方向に並設される構成であってもよい。
【0074】
・第1係止爪34aにおける被係止部26との係止が外れる方向への変位を許容する変位許容部の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
・Z軸方向から見たときの各ベース部23,33の形状は上記実施形態に限らず、ワイヤハーネス用固定具12の構成に応じて適宜変更可能である。
【0075】
・Z軸方向から見たときの第1連結部31のベース部33の大きさが、固定部材20のベース部23の大きさと同等であってもよい。また、Z軸方向から見たときの第1連結部31のベース部33の大きさが、固定部材20のベース部23の大きさよりも大きい構成であってもよい。
【0076】
・固定部材20が係止爪34を含む第1連結部31を有し、電線保持部材30が被係止部25,26を含む第2連結部21を有する構成であってもよい。
・保持部32の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、構成に応じて適宜変更してもよい。
【0077】
・固定部22の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、構成に応じて適宜変更してもよい。
・今回開示された実施形態及び変更例はすべての点で例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
10 ワイヤハーネス
11 電線部材
12 ワイヤハーネス用固定具
20 固定部材
21 第2連結部
22 固定部
23 ベース部
23a 上面
23b 下面
24 係止凹部
24a 第1係止凹部
24b 第2係止凹部
25 被係止部
26 被係止部
30 電線保持部材
31 第1連結部
32 保持部
33 ベース部
33a 上面
33b 下面
33c 第1部位
33d 第2部位
33e 端面
34 係止爪
34a 第1係止爪
34b 第2係止爪
35 溝部
36 スリット(変位許容部)
37 可撓部(変位許容部)
38 操作部
41 バンド部
41a バンド部の先端部(突出部)
42 ロック部
42a 貫通孔
50 凹部
51 切り欠き部
P 取付対象
Pa 取付孔