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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181734
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】反射型スクリーン、映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/60 20140101AFI20231218BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20231218BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G03B21/60
G03B21/14 Z
G02B5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095038
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】柏木 剛
【テーマコード(参考)】
2H021
2H042
2K203
【Fターム(参考)】
2H021BA01
2H021BA02
2H042BA02
2H042BA04
2H042BA12
2H042BA14
2H042BA19
2K203FA62
2K203GC22
(57)【要約】
【課題】画面左右方向において良好な視野角を有する反射型スクリーン、映像表示装置を提供する。
【解決手段】スクリーン30は、反射型スクリーンであって、映像源側に凸となる単位光学形状351が複数配列された光学形状層35と、スクリーン30の厚み方向において光学形状層35よりも背面側に位置する反射層13とを備える。単位光学形状351は、画面上下方向を長手方向として延在し、画面左右方向に配列されており、単位光学形状351の配列方向及びスクリーン30の厚み方向に平行な断面において、単位光学形状351の最も観察者側となる点t3と最も背面側となる点t4とを通る直線がスクリーン30のスクリーン面に平行な面となす角度θ2は、5°以上25°以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から投射された映像光を反射して映像を表示する反射型スクリーンであって、
映像源側に凸となる単位光学形状が複数配列された光学形状層と、
該反射型スクリーンの厚み方向において前記光学形状層よりも背面側に位置する反射層と、
を備え、
前記単位光学形状は、画面上下方向を長手方向として延在し、画面左右方向に配列されており、
前記単位光学形状の配列方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面において、前記単位光学形状の最も観察者側となる点と最も背面側となる点とを通る直線が該反射型スクリーンのスクリーン面に平行な面となす角度θ2は、5°以上25°以下であること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
該反射型スクリーンの厚み方向において前記光学形状層と前記反射層との間に、光を拡散する光拡散層を備えること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項3】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記単位光学形状の配列方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面における前記単位光学形状の断面形状は、観察者側に凸となる曲線状であること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項4】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記単位光学形状の配列方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面における前記単位光学形状の断面形状は、三角形形状であること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項5】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記単位光学形状の配列方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面における前記単位光学形状の断面形状は、最も観察者側となる点を頂点とする略三角形形状であって、前記頂点で交差する2辺は観察者側に凹となる曲線状であること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の反射型スクリーンと、
前記反射型スクリーンへ映像光を投射する映像源と、
を備える映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型スクリーン、映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタ等の映像源から投射された映像光を反射して画面(表示面)に映像を表示する反射型のスクリーンやこれを備える映像表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-076523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、各種映像表示装置において、画面左右方向における視野角の方が、画面上下方向における視野角よりも広いことが好まれる。
特許文献1に示すスクリーンでは、透光性拡散基材を備えることにより、映像光を拡散している。この透光性拡散基材は、その拡散作用が無指向性であり、画面左右方向と同様に画面上下方向にも映像光が拡散してしまうため、映像光の利用効率が低下し、映像の明るさも低下する。
また、反射型のスクリーンにおいて、正面輝度の高い明るい映像を表示することは、常々求められていることである。
【0005】
本発明の課題は、画面左右方向において良好な視野角を有する反射型スクリーン、映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
第1の発明は、映像源から投射された映像光を反射して映像を表示する反射型スクリーンであって、映像源側に凸となる単位光学形状(351)が複数配列された光学形状層(35)と、該反射型スクリーンの厚み方向において前記光学形状層よりも背面側に位置する反射層(13)と、を備え、前記単位光学形状は、画面上下方向を長手方向として延在し、画面左右方向に配列されており、前記単位光学形状の配列方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面において、前記単位光学形状の最も観察者側(t3)となる点と最も背面側となる点(t4)とを通る直線が該反射型スクリーンのスクリーン面に平行な面となす角度θ2は、5°以上25°以下であること、を特徴とする反射型スクリーン(30)である。
第2の発明は、第1の発明の反射型スクリーンにおいて、該反射型スクリーンの厚み方向において前記光学形状層(35)と前記反射層(13)との間に、光を拡散する光拡散層(11)を備えること、を特徴とする反射型スクリーン(30)である。
第3の発明は、第1の発明の反射型スクリーンにおいて、前記単位光学形状(351)の配列方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面における前記単位光学形状の断面形状は、観察者側に凸となる曲線状であること、を特徴とする反射型スクリーン(30)である。
第4の発明は、第1の発明の反射型スクリーンにおいて、前記単位光学形状(351)の配列方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面における前記単位光学形状の断面形状は、三角形形状であること、を特徴とする反射型スクリーン(30)である。
第5の発明は、第1の発明の反射型スクリーンにおいて、前記単位光学形状の配列方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面における前記単位光学形状の断面形状は、最も観察者側となる点を頂点とする略三角形形状であって、前記頂点で交差する2辺は観察者側に凹となる曲線状であること、を特徴とする反射型スクリーン(30)である。
第6の発明は、第1の発明から第5の発明までのいずれかの反射型スクリーン(30)と、前記反射型スクリーンへ映像光を投射する映像源(LS)と、を備える映像表示装置(3)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画面左右方向において良好な視野角を有する反射型スクリーン、映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の映像表示装置3を説明する図である。
図2】実施形態のスクリーン30の層構成を説明する図である。
図3】実施形態の単位光学形状351の他の形状を説明する図である。
図4】実施形態のスクリーン30に入射する映像光の一例を示す図である。
図5】シミュレーションにおける実施例、比較例、参照例のスクリーンの層構成を示す図である。
図6】測定例1~5のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示す図である。
図7】測定例6~11のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示す図である。
図8】測定例12~16のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示す図である。
図9】測定例17~22のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示す図である。
図10】測定例23~27のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示す図である。
図11】測定例28~33のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示す図である。
図12】参照例である測定例34のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)を示すグラフである。
図13】実施例である測定例1~5のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)を示すグラフである。
図14】比較例である測定例6~11のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)示すグラフである。
図15】実施例である測定例12~16のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)を示すのグラフである。
図16】比較例である測定例17~22のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)示すグラフである。
図17】実施例である測定例23~27のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)示すグラフである。
図18】比較例である測定例28~33のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)示すグラフである。
図19】全測定例のスクリーンにおける、単位光学形状351の形状ごとの正面輝度と角度θ2の関係、画面左右方向における1/2角であるαHと角度θ2の関係を示す図である。
図20】測定例1~11及び参照例である測定例34のスクリーンにおけるシミュレーションの結果をまとめた表である。
図21】測定例12~22及び参照例である測定例34のスクリーンにおけるシミュレーションの結果をまとめた表である。
図22】測定例23~33及び参照例である測定例34のスクリーンにおけるシミュレーションの結果をまとめた表である。
図23】変形形態の光学形状層35を示す図である。
図24】変形形態のスクリーン40の層構成を説明する図である。
図25】変形形態のスクリーン50の層構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
また、本明細書に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0010】
本明細書において、板、シート等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
【0011】
(実施形態)
図1は、本実施形態の映像表示装置3を説明する図である。図1(a)は、映像表示装置3の斜視図であり、図1(b)は、映像表示装置3の側面図(後述する+X側から見た側面図)である。
映像表示装置3は、スクリーン30、映像源LS等を有している。本実施形態のスクリーン30は、投射された映像光を反射して、その画面(表示面)上に映像を表示する反射型のスクリーンである。映像表示装置3は、映像源LSからスクリーン30に映像光を投射し、その映像光Lをスクリーン30が反射して、その画面(表示面)上に映像を表示することにより、観察者Oに映像を表示する。
【0012】
ここで、理解を容易にするために、図1を含め、以下に示す各図において、適宜、XYZ直交座標系を設けて示している。この座標系では、スクリーン30の画面左右方向をX方向、画面上下方向をY方向とし、スクリーン30の厚み方向をZ方向とする。スクリーン30の画面(表示面)は、XY面に平行であり、スクリーン30の厚み方向(Z方向)は、スクリーン30の画面に直交する。
スクリーン30の正面方向に位置する観察者Oから見て左右方向の右側に向かう方向を+X方向、上下方向の上側に向かう方向を+Y方向、厚み方向において背面側(裏面側)から観察者側(映像源側)に向かう方向を+Z方向とする。
【0013】
本実施形態のスクリーン30は、その使用状態において、画面上下方向(Y方向)が鉛直方向、画面左右方向(X方向)が水平方向となるように配置される。以下の説明において、画面上下方向、画面左右方向、厚み方向とは、特に断りが無い場合、このスクリーン30の使用状態における画面上下方向(鉛直方向)、画面左右方向(水平方向)、厚み方向(奥行方向)であり、それぞれ、Y方向、X方向、Z方向に平行であるとする。
また、本実施形態において、スクリーン面とは、スクリーン30をスクリーン全体として見たときにおける、その平面方向となる面を示すものであり、スクリーン30の使用状態においては、スクリーン面は、XY面に平行な面である。
【0014】
映像源LSは、映像光Lをスクリーン30へ投射する映像光投射装置である。本実施形態の映像源LSは、汎用のプロジェクタである。
映像源LSは、使用状態において、スクリーン30の画面(表示領域)の幾何学的中心(画面中央)となる点Aを通り、スクリーン30のスクリーン面の法線方向に沿って観察者側に所定の距離だけ離れた位置に配置されている。
【0015】
スクリーン30は、映像源LSが投射した映像光Lを観察者O側へ向けて反射し、画面に映像を表示するスクリーンである。
スクリーン30の画面(表示領域)は、その使用状態において観察者O側(映像源側)から見て、長辺方向が画面左右方向(X方向)、短辺方向が画面上下方向(Y方向)となる略矩形状である。
スクリーン30は、その画面サイズが対角40~100インチ程度の大きな画面を有しており、画面の横縦比が16:9である。なお、これに限らず、スクリーン30の画面サイズは、例えば、40インチ未満としてもよいし、100インチより大きいものとしてもよく、使用目的や使用環境等に応じて、その大きさや形状は適宜選択できるものとする。
【0016】
スクリーン30は、不図示の支持板を背面側に備えることにより、その平面性を維持する形態としてもよい。このような支持板としては、樹脂製や金属製、木製、ガラス製等の板状の部材等が好適である。また、スクリーン30は、不図示の支持部材等により、少なくとも対向する2辺が支持されて、その平面性を維持する形態としてもよい。
また、上記形態に限らず、スクリーン30は、巻き取り可能な可撓性を有し、不使用時には、巻き取って不図示の所定の箱等に収納可能であり、使用時には、巻き出されて不図示の支持部材等により壁面に沿わせるように吊るされる形態等としてもよい。
【0017】
図2は、本実施形態のスクリーン30の層構成を説明する図である。図2(a)は、スクリーン30の画面(表示領域)の幾何学的中心(画面中央)となる点A(図1(a)、(b)参照)を通り、画面上下方向(Y方向)及びスクリーン面に垂直な方向(厚み方向、Z方向)に平行な断面(YZ断面)の一部を拡大した図である。図2(b)は、スクリーン30の画面(表示領域)の幾何学的中心(画面中央)となる点A(図1(a),(b)参照)を通り、画面左右方向(X方向)及びスクリーン面に垂直な方向(Z方向)に平行な断面(XZ断面)の一部を拡大した図である。
【0018】
スクリーン30は、図2に示すように、その厚み方向において、観察者側(+Z側)から順に、光学形状層35、光拡散層11、反射層13を備えている。
光学形状層35は、光透過性を有する樹脂により形成された層であり、映像光を主に画面左右方向に広げる機能を有する。この光学形状層35は、光拡散層11の観察者側(+Z側)に位置している。
【0019】
光学形状層35は、観察者側の面に単位光学形状351が複数配列されている。
単位光学形状351は、観察者側に凸となる形状であって、画面上下方向(Y方向)に延在し、画面左右方向(X方向)に配列されている。本実施形態では、図2(b)に示す断面において、単位光学形状351の断面形状は、観察者側に凸となる曲線状である。また、この単位光学形状351は、図2(b)に示す断面形状が、画面左右方向(X方向)において対称であることが好ましい。
【0020】
図2(b)に示す断面において、単位光学形状351の最も映像源側(+Z側)となる点t3と、最も背面側(-Z側)となる点t4とを通る直線が、スクリーン面に平行な面(XY面)となす角度θ2は、5°以上25°以下とすることが好ましい。
角度θ2は、大きくなるにつれて、画面左右方向(X方向)の視野角を広げる効果が大きくなる。その一方で、角度θ2が大きくなると、スクリーン30の正面輝度が低下したり、不要なサイドピーク等が生じたりする。したがって、スクリーンとしての十分な画面左右方向の視野角を実現しつつ正面輝度も高く保持し、サイドピークを抑制する観点から、角度θ2は、5°以上25°以下とすることが好ましい。
【0021】
本実施形態において、光学形状層35は、単層である例を示したが、これに限らず、例えば、シート状の不図示の基材層の片面に、単位光学形状351が配列された光学形状部が形成された形態としてもよい。
【0022】
図3は、本実施形態の単位光学形状351の他の形状を説明する図である。図3では、単位光学形状351の配列方向(すなわち、画面左右方向、X方向)及びスクリーン30の厚み方向(Z方向)に平行な光学形状層35の断面の一部を拡大して示している。
図3(a)に示すように、単位光学形状351は、その断面形状が、三角形形状である形態としてもよい。このとき、単位光学形状351の断面形状は、二等辺三角形形状であることが好ましい。
【0023】
また、図3(b)に示すように、単位光学形状351は、その断面形状が、最も観察者側(+Z側)となる点t3を頂点とする略三角形形状であって、点t3で交差する2辺が観察者側に対して凹となる曲線状である形態としてもよい。
なお、以下の説明において、理解を容易にするために、単位光学形状351の断面形状について、前述の図2(b)に示す断面形状を形状Aと呼び、図3(a)に示す断面形状を形状Bと呼び、図3(b)に示す断面形状を、形状Cと呼ぶ。
【0024】
図3(a),(b)に示す単位光学形状351においても、その断面形状が、画面左右方向(X方向)において対称であることが好ましい。また、図3(a),(b)に示す単位光学形状351においても、図3(a),(b)に示す断面において、最も観察者側(+Z側)となる点t3と、最も背面側(-Z側)となる点t4とを通る直線が、スクリーン面に平行な面(XY面)となす角度を、角度θ2とする。この角度θ2は、5°以上25°以下とすることが好ましい。
【0025】
図2に戻り、光拡散層11は、無指向性の拡散作用を有する層である。この光拡散層11は、光透過性を有する樹脂を基材樹脂とし、この基材樹脂とは屈折率差を有する粒子状の拡散材を含有している。
このような基材樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂や、PC(ポリカーボネート)樹脂、MS(メチルメタクリレート・スチレン)樹脂、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、アクリル系樹脂等を用いることができる。
【0026】
光拡散層11に含まれる拡散材としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂、シリコン系等の樹脂製の粒子やガラスビーズ等の無機粒子等が好適に用いられる。なお、拡散材は、無機系拡散材と有機系拡散材とを組み合わせて用いてもよい。この拡散材は、球形又は略球形であり、平均粒径が約1~50μmであるものを用いることが好ましく、2~10μmであるものがより好ましい。
【0027】
また、光拡散層11の基材樹脂及び拡散材の屈折率は、いずれも1.48~1.65程度であることが好ましい。また、基材樹脂と拡散材との屈折率差は、0.01~0.10であることが好ましく、0.01~0.03であることがさらに好ましい。基材樹脂と拡散材とは、どちらの屈折率が大きい形態としてもよい。
光拡散層11の厚さは、スクリーン10の画面サイズ等にも依るが、約10~2000μmとすることが好ましい。また、光拡散層11は、そのヘイズ値が、70~95%の範囲であることが望ましい。
【0028】
反射層13は、光拡散層11の背面側(-Z側)に位置し、光を反射する層である。本実施形態では、反射層13は、平面状である例を挙げて説明する。
反射層13は、例えば、光反射性の高い金属、例えば、アルミニウムや銀、ニッケル等の金属を蒸着する、スパッタリングする、又は、これらの金属箔を転写する等により形成することができる。また、反射層13は、前述のような光反射性の高い金属の蒸着膜や金属箔等を粉砕した粒子や微小なフレークを含む塗料等を、スプレーコートや、ダイコート、スクリーン印刷等の各種塗布方法により塗布して硬化させることにより形成することもできる。また、反射層13は、白色系の塗料や、白色系の顔料やビーズ等を含有する樹脂を各種塗布方法により塗布して硬化させて形成することも可能である。
反射層13は、光を十分反射できる程度の厚さを有していればよく、その厚さは、用いる材料等により適宜選択してよい。
【0029】
図4は、本実施形態のスクリーン30に入射する映像光の一例を示す図である。図4では、スクリーン30の画面左右方向(X方向)及び厚み方向(Z方向)に平行な断面の一部を模式的に示している。
本実施形態の映像源LSは、前述のような汎用のプロジェクタであり、画面上下方向(Y方向)及び画面左右方向(X方向)における入射角度は、短焦点プロジェクタ等に比べて小さい。
映像源LSから投射された映像光は、画面上下方向(Y方向)においては、スクリーン面に対して0°~45°程度の入射角度でスクリーン30に入射し、光学形状層35を透過して光拡散層11において拡散された後、反射層13で反射して再び光拡散層11で拡散され、光学形状層35を透過して観察者側(+Z側)へ出射する。
【0030】
また、画面左右方向(X方向)においては、図4に示すように、スクリーン10に入射した映像光は、例えば、映像光L1,L3,L5のように、光学形状層35に入射する際に、単位光学形状351と空気との界面でその入射角度に応じて、屈折することなく、又は、屈折して、光学形状層35に入射する。そして光拡散層11で拡散され、反射層13で反射する。その後、映像光L2,L4,L6のように、光拡散層11に入射して再び無指向性の拡散作用を受け、光学形状層35に入射し、単位光学形状351と空気との界面でその入射角度に応じて、屈折することなく、又は、屈折して、観察者側(+Z側)へ出射する。
すなわち、スクリーン30に入射した映像光は、画面左右方向においては、光拡散層11による無指向性の拡散作用に加えて、光学形状層35の単位光学形状351により拡散される。
したがって、本実施形態によれば、光学形状層35により画面左右方向に映像光を拡散することができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、光拡散層11は、無指向性の光拡散作用を有するので、映像光は画面上下方向(Y方向)にも拡散される。これにより、本実施形態のスクリーン30は、画面上下方向においても十分な視野角を確保できる。
また、例えば、スクリーン30が光学形状層35を備えない形態とした場合、光拡散層11のみで画面左右方向(X方向)の視野角を十分に確保するために、光拡散層11の拡散材の含有量を大きくしたり、基材樹脂と拡散材との屈折率差を大きくしたりする必要がある。しかし、このような形態のスクリーンでは、映像の黒輝度が上がって映像が白っぽくなったり、映像が暗くなったり、映像の解像度が低下したりして画質が低下するという問題がある。
しかし、本実施形態によれば、スクリーン30は、光学形状層35を備えるので、画面左右方向(X方向)の視野角を十分に確保しつつ、明るく解像度の高い良好な映像を表示することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、角度θ2が5°以上25°以下であるので、高い正面輝度を維持しつつ画面左右方向の視野角を広げることができ、不要なサイドピークの発生も抑制できる。
【0033】
(画面左右方向の視野角及び正面輝度の評価)
ここで、光学シミュレーションにより、本実施形態のスクリーン30の実施例及び比較例に相当する測定例1~33のスクリーンと、参照例となる測定例34のスクリーンとに対して、輝度分布等を測定し、ピーク輝度の1/2角や正面輝度等を評価した。
図5は、シミュレーションにおける実施例、比較例、参照例のスクリーンの層構成を示す図である。図5では、実施例、比較例、参照例のスクリーンの断面の一部を示しており、理解を容易にするために、光学形状層35の単位光学形状351の形状に関しては省略して示している。
【0034】
図5(a)に示すように、実施例(測定例1~5,12~16,23~27)のスクリーン30、比較例(測定例6~11,17~22,28~33)のスクリーン30Dは、スクリーン30,30Dの厚み方向に沿って観察者側から順に、光学形状層35、光拡散層11、反射層13を備えている。
図5(b)に示すように、参照例(測定例34)のスクリーン30Cは、スクリーン30Cの厚み方向に沿って観察者側から順に、表面層14、光拡散層11、反射層13を備えている。
【0035】
シミュレーションにおいて、光学形状層35の単位光学形状351の断面形状は3種類設定した。
測定例1~5(実施例)及び測定例6~11(比較例)のスクリーンでは、単位光学形状351の断面形状は、形状Aであり、観察者側(+Z側)に凸となる曲線状(図2(b)参照)である。
測定例12~16(実施例)及び測定例17~22(比較例)のスクリーンでは、単位光学形状351の断面形状は、形状Bであり、三角形形状(図3(a)参照)である。
測定例23~27(実施例)及び測定例28~33(比較例)のスクリーンでは、単位光学形状351の断面形状は、形状Cであり、最も観察者側(+Z側)となる点t3を頂点とする略三角形形状であって、点t3で交差する2辺は観察者側に凹となる曲線状となる形状(図3(b)参照)である。
【0036】
また、上記の単位光学形状351の3種類の断面形状において、それぞれ、単位光学形状351の最も観察者側となる点t3と最も背面側となる点t4とを結んだ直線がスクリーン面に平行な面となす角度θ2について、5°、10°、15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°、60°、75°の11例設定した。
【0037】
図6は、測定例1~5のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示す図である。また、図7は、測定例6~11のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示す図である。測定例1~11のスクリーンの単位光学形状351の断面形状は、形状Aである。
図6(a)は、角度θ2=5°である測定例1のスクリーン、図6(b)は、角度θ2=10°である測定例2のスクリーン、図6(c)は、角度θ2=15°である測定例3のスクリーン、図6(d)は、角度θ2=20°である測定例4のスクリーン、図6(e)は、角度θ2=25°である測定例5のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示している。
【0038】
図7(a)は、角度θ2=30°である測定例6のスクリーン、図7(b)は、角度θ2=35°である測定例7のスクリーン、図7(c)は、角度θ2=40°である測定例8のスクリーン、図7(d)は、角度θ2=45°である測定例9のスクリーン、図7(e)は、角度θ2=60°である測定例10のスクリーン、図7(f)は、角度θ2=75°である測定例11のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示している。
【0039】
図8は、測定例12~16のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示す図である。また、図9は、測定例17~22のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示す図である。測定例12~22のスクリーンの単位光学形状351の断面形状は、形状Bである。
図8(a)は、角度θ2=5°である測定例12のスクリーン、図8(b)は、角度θ2=10°である測定例13のスクリーン、図8(c)は、角度θ2=15°である測定例14のスクリーン、図8(d)は、角度θ2=20°である測定例15のスクリーン、図8(e)は、角度θ2=25°である測定例16のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示している。
【0040】
図9(a)は、角度θ2=30°である測定例17のスクリーン、図9(b)は、角度θ2=35°である測定例18のスクリーン、図9(c)は、角度θ2=40°である測定例19のスクリーン、図9(d)は、角度θ2=45°である測定例20のスクリーン、図9(e)は、角度θ2=60°である測定例21のスクリーン、図9(f)は、角度θ2=75°である測定例22のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示している。
【0041】
図10は、測定例23~27のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示す図である。また、図11は、測定例28~33のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示す図である。測定例23~33のスクリーンの単位光学形状351の断面形状は、形状Cである。
図10(a)は、角度θ2=5°である測定例23のスクリーン、図10(b)は、角度θ2=10°である測定例24のスクリーン、図10(c)は、角度θ2=15°である測定例25のスクリーン、図10(d)は、角度θ2=20°である測定例26のスクリーン、図10(e)は、角度θ2=25°である測定例27のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示している。
【0042】
図11(a)は、角度θ2=30°である測定例28のスクリーン、図11(b)は、角度θ2=35°である測定例29のスクリーン、図11(c)は、角度θ2=40°である測定例30のスクリーン、図11(d)は、角度θ2=45°である測定例31のスクリーン、図11(e)は、角度θ2=60°である測定例32のスクリーン、図11(f)は、角度θ2=75°である測定例33のスクリーンでの単位光学形状351の断面形状を示している。
【0043】
単位光学形状351については、その形状に依らず、その画面左右方向(X方向)における配列ピッチは等しく、0.03mmである。
また、形状A及び形状Cについては、図6図7図10図11に示すように、XZ面に7点設定し、各点の間を直線でつないだ形状により、断面形状を近似した。この7点は、単位光学形状351の断面形状において、最も観察者側となる点t3(図2(b)、図3(b)参照)と、単位光学形状351の配列方向における両端部となる2点(最も背面側となる点t4に相当。図2(b)、図3(b)参照)と、点t3と一方の端部との間の2点、点t3と他方の端部の間の2点である。
【0044】
また、形状Bについては、図8図9に示すように、XZ面に3点設定し、各点の間を直線でつないだ形状とした。この3点は、単位光学形状351の最も観察者側となる点t3(図3(a)参照)と、単位光学形状351の配列方向の両端部となる2点(最も背面側となる点t4に相当。図3(a)参照)である。
【0045】
さらに、測定例1~34のスクリーンに共通する光拡散層11、反射層13については、以下の通りに設定した。
光拡散層11の基材樹脂の屈折率は、1.595である。また、光拡散層11は、この光拡散層11に入射角0°で入射し、光拡散層11を透過して出射した光のピーク輝度となる出射角が0°であり、画面上下方向及び画面左右方向においてピーク輝度の1/2の輝度となる角度(1/2角)が±20°である。また、光拡散層11は、シミュレーションにおいては厚みを考慮しない形態、すなわち、拡散面として設定した。
反射層13は、入射角0°で入射した光の全光線反射率が70%である。
また、参照例となる測定例34のスクリーンにおいて、光拡散層11の観察者側に配置される表面層14は、その屈折率が1.55であると設定した。この表面層14は、単位光学形状等が形成されておらず、観察者側(+Z側)の表面が平面状である。
【0046】
上述した全測定例のスクリーンに対して、LightTools(Synopsys社製)を用いて光学シミュレーションを行い、その画面上下方向(Y方向)及び画面左右方向(X方向)における輝度の角度分布を測定した。
図12は、参照例である測定例34のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)を示すグラフである。図12において、縦軸は規格化輝度であり、横軸は画面中央となる点Aを通る画面左右方向及び画面上下方向におけるスクリーンからの出射角(°)である。この図12に示すグラフにおいて、実線は、画面左右方向(X方向)での輝度分布を示し、破線は、画面上下方向(Y方向)での輝度分布を示している。
【0047】
この図12に示すグラフ及び後述する図13図18に示す各グラフにおいて、縦軸の規格化輝度は、参照例である測定例34のスクリーンにおけるピーク輝度を100として規格化している。この測定例34のスクリーンにおけるピーク輝度とは、測定例34のスクリーンの画面中央となる点Aを通りスクリーン面に直交する方向(スクリーン面の法線方向)を中心軸として極角と方位角とを設定し、極角方向は1°間隔で90°分割、方位角方向は10°分割で36分割した際の、極角0~1°、方位角0~360°における輝度の平均値である。
【0048】
図13は、実施例である測定例1~5のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)を示すグラフである。
図14は、比較例である測定例6~11のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)示すグラフである。
図15は、実施例である測定例12~16のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)を示すのグラフである。
図16は、比較例である測定例17~22のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)示すグラフである。
図17は、実施例である測定例23~27のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)示すグラフである。
図18は、比較例である測定例28~33のスクリーンでのシミュレーション結果(輝度分布)示すグラフである。
図13から図18において示す各測定例の輝度分布のグラフにおいて、縦軸は、上述したように参照例である測定例34のスクリーンのピーク輝度を100とした規格化輝度であり、横軸は、出射角(°)である。
また、図13図18に示す各グラフにおいて、実線は、画面左右方向(X方向)での輝度分布を示し、破線は、画面上下方向(Y方向)での輝度分布を示している。
【0049】
図19は、全測定例のスクリーンにおける、単位光学形状351の形状ごとの正面輝度と角度θ2の関係、画面左右方向における1/2角であるαHと角度θ2の関係を示す図である。
図19(a)は、正面輝度と角度θ2の関係を示すグラフであり、縦軸は、前述のシミュレーション結果で得られた正面輝度であり、横軸は、角度θ2(°)である。なお、縦軸の正面輝度とは、画面左右方向(X方向)及び画面上下方向(Y方向)における出射角0°での輝度の平均値であり、参照例である測定例34のスクリーンのピーク輝度を100として規格化された値で示している。
【0050】
図19(b)は、画面左右方向における1/2角であるαHと角度θ2の関係を示すグラフであり、縦軸は、αH(°)であり、横軸は、角度θ2(°)である。画面左右方向(X方向)における1/2角であるαHは、X方向(画面左右方向)における+X側の1/2角及び-X側の1/2角の絶対値の平均値である。
図19に示す各グラフにおいて、横軸の角度θ2は、前述の図2(b)や図3(a),(b)に示す光学形状層35の断面において、単位光学形状351の最も観察者側(+Z側)となる点t3と、最も背面側(-Z側)となる点t4とを通る直線が、スクリーン面に平行な面(XY面)となす角度θ2である。
【0051】
図20は、測定例1~11及び参照例である測定例34のスクリーンにおけるシミュレーションの結果をまとめた表である。
図21は、測定例12~22及び参照例である測定例34のスクリーンにおけるシミュレーションの結果をまとめた表である。
図22は、測定例23~33及び参照例である測定例34のスクリーンにおけるシミュレーションの結果をまとめた表である。
図20から図22に示す各表では、各測定例のスクリーンにおける単位光学形状351の断面形状や、角度θ2等も合わせて示している。また、図20から図22に示す各表において、画面左右方向(X方向)における1/2角であるαHは、+X側の1/2角及び-X側の1/2角の絶対値の平均値であり、画面上下方向(Y方向)における1/2角であるαVは、+Y側の1/2角及び-Y側の1/2角の絶対値の平均値である。
【0052】
また、図20から図22に示す各表において、正面輝度とは、図19(a)に示すグラフ等と同様に、画面左右方向(X方向)及び画面上下方向(Y方向)における出射角0°での輝度の平均値であり、参照例である測定例34のスクリーンのピーク輝度を100として規格化された値で示している。
また、図20から図22に示す各表おいて、サイドピークに関する評価は、サイドピーク状のピークが生じていないものや、ピークが生じていてもその輝度がピーク輝度の1/3未満であるものについては、サイドピーク無しとし、サイドピーク状のピークが生じており、その輝度がピーク輝度の1/3以上であるものは、サイドピーク有りとして評価した。
【0053】
図13から図22に示すように、測定例1~33(実施例及び比較例)のスクリーンでは、単位光学形状351の断面形状に依らず、角度θ2が大きくなるにつれて、正面輝度(出射角0°方向の輝度)が下がり、画面左右方向における1/2角αHが大きくなっている。
しかし、角度θ2が大きすぎる場合、例えば、角度θ2が45°以上である場合、単位光学形状351の断面形状によらず、スクリーンの正面輝度が下がりすぎ、好ましくない。
【0054】
また、単位光学形状351の断面形状が形状Aである場合、角度θ2が40°~75°となる測定例8~11のスクリーンでは、画面左右方向において、正面方向(出射角0°方向)を挟んで対称な斜め方向に輝度のピーク、いわゆる、サイドピークが生じている。このようなサイドピークは、単位光学形状351の断面形状が形状Bである場合には角度θ2が45~75°となる測定例20~22のスクリーンや、単位光学形状351の断面形状が形状Cである場合には角度θ2が30~75°となる測定例28~33のスクリーンにおいても生じていた。
【0055】
サイドピークは、特に大画面のスクリーンにおいて、スクリーンを斜め方向から観察した場合に、画面内に明るい領域と暗い領域とが太い縦筋(バンド状)となって観察される要因となる。このような明暗の筋は、画面の品質の低下を招き、好ましくない。また、サイドピークは、スクリーンとして想定した視野角範囲外の不要な方向に生じることが多く、光の利用効率の観点からも好ましくない。
さらに、図19(b)等に示すように、サイドピークが生じている測定例のスクリーン(特に、角度θ2が30~45°でサイドピークが生じている測定例7~10,19~20,28~31のスクリーン)では、画面左右方向における視野角を広げる効果も大きく低下していた。
【0056】
これに対して、角度θ2が5°以上25°以下であり、実施例である測定例1~5,12~16,23~27のスクリーンでは、角度θ2が大きくなるにつれて正面輝度(0°方向の輝度)が下がり輝度分布がゆるやかになり、画面左右方向の1/2角αHが大きくなり、視野角が広くなっている。また、実施例となる測定例1~5,12~16,23~25のスクリーンでは、単位光学形状351の形状によらず、サイドピークは生じていない。
なお、実施例となる測定例26,27のスクリーンでは、画面左右方向の出射角の±85°付近に、小さなピークができているが、通常想定される観察者の視野角範囲から大きく外れていることや輝度がピーク輝度の1/3以下であるため、スクリーンとしての使用に問題はなく、好適に使用できる。したがって、前述のように、図22に示す表においては、サイドピーク無しとして示している。
【0057】
なお、画面左右方向におけるサイドピークに関して、スクリーン30は、さらに以下のような条件を満たすことが、より高品位なスクリーン及び映像表示装置とする観点から好ましい。
スクリーン30は、輝度がピーク輝度(最大輝度)の1/2となる出射角、すなわち、1/2角αHよりも絶対値が大きい出射角において、輝度がピーク輝度の1/2以上となるサイドピークが存在しないことが好ましい。
また、スクリーン30は、1/2角αHよりも絶対値が大きい出射角において、輝度がピーク輝度の1/3以上となるサイドピークが存在しないことがより好ましい。
さらに、スクリーン30は、1/2角αHよりも絶対値が大きい出射角において、輝度がピーク輝度の1/10以上となるサイドピークが存在しないことが最も好ましい。
【0058】
実施例のスクリーンでは、図13から図18等に示すように、輝度がピーク輝度の1/2となる出射角である1/2角αHよりも絶対値が大きい出射角において、ピーク輝度の1/2以上やピーク輝度の1/3以上となるサイドピークが存在しておらず、サイドピークに関する好ましい条件、及び、より好ましい条件をいずれも満たしている。
なお、実施例に相当するスクリーンのうち、測定例26,27のスクリーンは、図18(d),(e)に示すように、1/2角αHよりも絶対値が大きい出射角(85°付近)において、ピーク輝度の1/10以上となるサイドピークが生じている。しかし、測定例26,27のスクリーンのこのサイドピークは、上述のように、通常想定される観察角度の範囲外であり、ピークも小さいので、スクリーンとして好適に使用できる。
また、実施例に相当するその他の測定例のスクリーンは、1/2角αHよりも絶対値が大きい出射角において、最大輝度の1/10以上となるサイドピークが存在しておらず、最も好ましい条件を満たしており、より高品位のスクリーンとすることができる。
【0059】
実施例となる測定例1~5,12~16,23~27のスクリーンは、角度θ2の好ましい範囲内において、画面左右方向の視野角の広さよりも正面輝度の高さを重視する場合には、角度θ2が小さいスクリーンを選択することができ、正面輝度の高さよりも画面左右方向の視野角の広さを重視する場合には、角度θ2が大きいスクリーンを選択することができる。また、実施例となる測定例1~5,12~16,23~27のスクリーンは、所望する光学性能等に応じて、単位光学形状351の断面形状等も自由に選択できる。
【0060】
したがって、本実施形態によれば、画面左右方向の良好な視野角を有しつつ、正面輝度も高いスクリーン及び映像表示装置を提供できる。また、本実施形態によれば、角度θ2の好ましい範囲を満たすことにより、単位光学形状351の形状によらず、画面左右方向の良好な視野角を有しつつ、正面輝度も高いスクリーン及び映像表示装置を提供できる。
【0061】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
【0062】
(1)実施形態において、単位光学形状351は、その頂部や隣り合う単位光学形状351との間に平坦部を有する形態としてもよい。
図23は、変形形態の光学形状層35を示す図である。図23では、単位光学形状351の配列方向及びスクリーンの厚み方向(光学形状層35の厚み方向)に平行な断面を示している。なお、図23では、一例として、単位光学形状351は観察者側に凸となる曲線状である例を挙げて説明する。
図23(a)に示すように、単位光学形状351は、最も観察者側が平面状の頂面部352となる形態としてもよい。この場合、点t3は、単位光学形状351の配列方向における頂面部352の中央となる点とする。
【0063】
また、図23(b)に示すように、単位光学形状351は、その配列方向において隣り合う単位光学形状351との間に平坦部353を備える形態としてもよい。このとき、点t4は、単位光学形状351の配列方向における平坦部353の中央となる点とする。
また、図23(c)に示すように、単位光学形状351が平面状の頂面部352を備え、かつ、隣り合う単位光学形状351の間に平坦部353が設けられた形態としてもよい。このとき、点t3は、単位光学形状351の配列方向における頂面部352の中央となる点とし、点t4は、単位光学形状351の配列方向における平坦部353の中央となる点とする。
また、上述の例に限らず、単位光学形状351は、その配列方向及びスクリーン30の厚み方向に平行な断面における断面形状が、形状B(三角形形状)である場合や形状C(側面が凹曲線状の三角形状)である形態とし、上述のような頂面部や平坦部を有する形態としてもよい。
【0064】
(2)実施形態において、単位光学形状351は、その配列方向及びスクリーン30の厚み方向に平行な断面における断面形状が形状Aや形状Cである場合、断面形状における曲線部分が複数の曲線から構成される形状としてもよい。
【0065】
(3)実施形態において、単位光学形状351は、その表面に微細な凹凸形状を有する形態としてもよい。このような形態とすることにより、映像光は、スクリーン30への入射時及び出射時に拡散され、画面左右方向(X方向)の視野角をさらに広げることができ、また、画面上下方向の視野角も広げることができる。
また、実施形態において、反射層13は、拡散反射する作用を有する形態としてもよい。例えば、反射層13は、アルミニウムの粒子が配列されて形成され、反射層13の観察者側の面が微細な凹凸形状を有する形態としてもよい。
【0066】
(4)実施形態において、スクリーンは、光拡散層と反射層との間に、背面側に単位レンズ241が複数配列されたフレネルレンズ形状を有するレンズ層24を備える形態としてもよい。
図24は、変形形態のスクリーン40の層構成を説明する図である。図24では、スクリーン40の画面中央を通り単位レンズ241の配列方向及びスクリーン40の厚み方向(Z方向)に平行な断面を示している。
この変形形態のスクリーン40は、光学形状層35、光拡散層11、レンズ層24、反射層23を備えている。
【0067】
レンズ層24は、背面側の面にサーキュラーフレネルレンズ形状を有しており、スクリーン40の表示領域外に位置する点を中心として単位レンズ241が同心円状に複数配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状を有している。仮に、レンズ層24を背面側(-Z側)のスクリーン面の法線方向から見た場合に、単位レンズ241は、真円の一部形状(円弧状)であり、これが複数配列されているように観察される。
【0068】
反射層23は、単位レンズ241の少なくともレンズ面241aの一部に形成されることが好ましい。図24では、反射層23は、レンズ面241a及び非レンズ面241bに形成される形態を示している。反射層23は、前述の実施形態において反射層13を形成する材料として示した材料と同様の材料や製法により形成できる。
なお、レンズ面241aにのみ反射層23を形成し、反射層23の背面側に光吸収層等を備えることにより、非レンズ面241b上には光吸収層が形成される形態としてもよい。このような形態とすることにより、光吸収層が不要な迷光や外光を吸収し、スクリーンは、より良好な映像を表示できる。
【0069】
このようなレンズ層24及び反射層23を備えるスクリーン40は、スクリーン40の観察者側の下方に位置し、映像光を斜めに投射する短焦点プロジェクタや、短焦点プロジェクタよりも奥行方向においてより近い位置から映像光を投射する超短焦点プロジェクタ等の映像源LSに好適である。
なお、レンズ層24において、サーキュラーフレネルレンズ形状の中心となる点は、映像源LSをスクリーン40の表示領域外下方に配置する場合、スクリーン40の画面の外(表示領域外)であって、スクリーン40の画面左右方向の中央であってスクリーン40の下方に位置する形態とすることが好ましい。
【0070】
このような映像源LSは、奥行方向(Z方向)において、従来の汎用プロジェクタに比べて大幅に近い位置から映像光を投射することができる。また、超短焦点プロジェクタであれば、さらにその距離を小さくすることができる(例えば、映像源LSからスクリーン40までの奥行方向の距離が300mm程度)。
従来のように汎用のプロジェクタや汎用の短焦点プロジェクタを映像源として用いた場合、映像源と反射型のスクリーンとの間隔は、1m~数m以上空ける必要があったため、スクリーンと映像源との間を人が横切ったりして、映像の表示が遮られてしまう場合があった。また、このような配置間隔で映像源とスクリーンとを設置するには、十分な広さの空間が必要となっていた。
これに対して、映像源LSとして超短焦点プロジェクタを使用した場合には、映像源LSとスクリーン10との距離を大幅に近くすることができ、上記問題点を解消することができる。
【0071】
(5)実施形態において、スクリーン30は、光学形状層35の観察者側(+Z側)に、例えば、反射防止機能や防眩機能、ハードコート機能、紫外線吸収機能、防汚機能や帯電防止機能等、適宜必要な機能を1つ以上備える層を設けてもよい。これらの層は、光学形状層35の単位光学形状351の表面に形成される。
また、スクリーン30は、反射層13の背面側(-Z側)に、反射層13を保護するための保護層等を設けてもよい。
また、スクリーン30は、反射層13の背面側に、不図示の光吸収層を設けてもよい。光吸収層を設けることにより、例えば、背面側から入射する外光を吸収したり、反射層13を透過した映像光や外光を吸収したりすることができる。
【0072】
(6)実施形態において、スクリーンは、その用途や使用環境等に応じて、光拡散層を備えない形態としてもよい。
図25は、変形形態のスクリーン50の層構成を説明する図である。図25では、単位光学形状351の配列方向(画面左右方向)及びスクリーン50の厚み方向(Z方向)に平行なスクリーン50の断面を示している。
図25に示すように、変形形態のスクリーン50は、その厚み方向において、観察者側から順に、光学形状層35、反射層13を備えている。
この変形形態のスクリーン50のような形態としても、角度θ2等を好適に設定することにより、使用環境等に応じた十分な視野角を有する良好な映像を表示できる。
【0073】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態等によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0074】
3 映像表示装置
30 スクリーン
35 光学形状層
351 単位光学形状
11 光拡散層
13 反射層
LS 映像源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図24
図25