(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181749
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】走路推定方法及び走路推定装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20231218BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231218BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20231218BHJP
【FI】
G06T7/00 650A
G08G1/16 C
G06T7/60 200J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095061
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】武井 翔一
(72)【発明者】
【氏名】土谷 千加夫
(72)【発明者】
【氏名】村松 聡
【テーマコード(参考)】
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC24
5H181LL04
5H181LL09
5L096AA06
5L096BA04
5L096CA04
5L096FA24
5L096FA32
5L096FA64
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096GA51
5L096GA55
(57)【要約】
【課題】交差点の手前の車線数が増加する場所であっても、車線数の増加を早期に判定して適切な走路を推定する。
【解決手段】走路推定方法は、自車両から自車両が走行している道路の前方にある交差点までの距離を取得し、自車両の左右に位置する区画線を検出し、検出された左右の区画線の平行度合いを示す平行度を算出し、自車両から交差点までの距離が所定の判定距離以上である場合に、自車両の左右に位置する区画線が平行であるか否かを判定するための平行度閾値を基準値に設定し、自車両から交差点までの距離が判定距離未満である場合には、平行度閾値を基準値よりも高く設定し、算出された平行度が設定された平行度閾値よりも高い場合に、左右の区画線が平行であると判定し、左右の区画線が平行であると判定された場合に、左右の区画線に基づいて自車両が走行する走路を推定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両から前記自車両が走行している道路の前方にある交差点までの距離を取得し、
前記自車両の左右に位置する区画線を検出し、
前記検出された左右の区画線の平行度合いを示す平行度を算出し、
前記自車両から前記交差点までの距離が所定の判定距離以上である場合に、前記自車両の左右に位置する区画線が平行であるか否かを判定するための平行度閾値を基準値に設定し、前記自車両から前記交差点までの距離が前記判定距離未満である場合には、前記平行度閾値を前記基準値よりも高く設定し、
前記算出された平行度が、前記設定された平行度閾値よりも高い場合に、前記左右の区画線が平行であると判定し、
前記左右の区画線が平行であると判定された場合に、前記左右の区画線に基づいて前記自車両が走行する走路を推定する
ことを特徴とする走路推定方法。
【請求項2】
前記左右の区画線が平行でないと判定された場合には、前記左右の区画線のうち、前記自車両が走行している車線の方向との差異が小さいほうの区画線を基準区画線に設定し、前記基準区画線に基づいて、前記自車両が走行する走路を推定することを特徴とする請求項1に記載の走路推定方法。
【請求項3】
前記左右の区画線が平行でないと判定された場合には、前記基準区画線を、前記左右の区画線のもう一方の区画線の方向に車線幅だけ移動させて所定領域を設定し、前記所定領域内に区画線を示す路面標示が存在するか否かを判定し、存在する場合には前記所定領域内に存在した区画線と、前記基準区画線とに基づいて、前記自車両が走行する走路を推定することを特徴とする請求項2に記載の走路推定方法。
【請求項4】
前記左右の区画線が平行でないと判定された場合には、前記基準区画線を、前記左右の区画線のもう一方の区画線の方向に車線幅だけ移動させて仮想線を設定し、前記仮想線と、前記基準区画線とに基づいて、前記自車両が走行する走路を推定することを特徴とする請求項2に記載の走路推定方法。
【請求項5】
前記自車両の走行軌跡に基づいて、前記自車両が走行している車線の方向を設定することを特徴とする請求項2に記載の走路推定方法。
【請求項6】
前記自車両が走行する予定の道路の方向に基づいて、前記自車両が走行している車線の方向を設定することを特徴とする請求項2に記載の走路推定方法。
【請求項7】
前記自車両が走行している車線の隣接車線の方向に基づいて、前記自車両が走行している車線の方向を設定することを特徴とする請求項2に記載の走路推定方法。
【請求項8】
前記自車両が走行している車線の矢印標示に基づいて、前記自車両が走行している車線の方向を設定することを特徴とする請求項2に記載の走路推定方法。
【請求項9】
前記判定距離よりも短い切替距離を設定し、前記自車両から前記交差点までの距離が前記切替距離未満である場合に、前記平行度閾値を前記基準値よりも高い値から前記基準値に切り替えることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の走路推定方法。
【請求項10】
前記自車両から前記交差点までの距離が前記判定距離未満になり、前記左右の区画線が平行でないと判定された後に、新たに区画線を検出した場合には、前記平行度閾値を前記基準値よりも高い値から前記基準値に切り替えることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の走路推定方法。
【請求項11】
前記交差点が、右折または左折が可能な交差点である場合のみ、前記平行度閾値を前記基準値よりも高く設定することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の走路推定方法。
【請求項12】
自車両が走行する走路を推定するコントローラを備えた走路推定装置であって、
前記コントローラは、
前記自車両から前記自車両が走行している道路の前方にある交差点までの距離を取得し、
前記自車両の左右に位置する区画線を検出し、
前記検出された左右の区画線の平行度合いを示す平行度を算出し、
前記自車両から前記交差点までの距離が所定の判定距離以上である場合に、前記自車両の左右に位置する区画線が平行であるか否かを判定するための平行度閾値を基準値に設定し、前記自車両から前記交差点までの距離が前記判定距離未満である場合には、前記平行度閾値を前記基準値よりも高く設定し、
前記算出された平行度が、前記設定された平行度閾値よりも高い場合に、前記左右の区画線が平行であると判定し、
前記左右の区画線が平行であると判定された場合に、前記左右の区画線に基づいて前記自車両が走行する走路を推定する
ことを特徴とする走路推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走路推定方法及び走路推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、車両が走行している道路に描かれた区画線を認識する区画線認識装置が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された区画線認識装置では、車両の左側及び右側の直近にある区画線候補が平行ではないと判断した場合、車両の左側及び右側の区画線候補のうち、車両が走行している車線の方向に対して、差異が大きいほうの区画線候補を除外していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の区画線認識装置では、区画線の平行を判断するために、検出誤差を考慮して閾値を設定する必要がある。特に、自車両の区画線が遠方になるにしたがって検出誤差が大きくなるので、閾値には余裕を持たせる必要があった。しかしながら、交差点の手前のように車線数の増加によって平行でない区画線が存在する場所では、平行でない区画線を早期に判定する必要があるが、閾値に余裕があると、車線数の増加を早期に判定することができないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は上記実情に鑑みて提案されたものであり、交差点の手前の車線数が増加する場所であっても、車線数の増加を早期に判定して適切な走路を推定することのできる走路推定方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る走路推定方法及びその装置は、自車両の左右に位置する区画線を検出し、検出された左右の区画線の平行度合いを示す平行度を算出する。そして、自車両から交差点までの距離が所定の判定距離以上である場合に、自車両の左右に位置する区画線が平行であるか否かを判定するための平行度閾値を基準値に設定する。一方、自車両から交差点までの距離が判定距離未満である場合には、平行度閾値を基準値よりも高く設定する。その結果、算出された平行度が設定された平行度閾値よりも高い場合に、左右の区画線が平行であると判定し、左右の区画線が平行であると判定された場合に、左右の区画線に基づいて自車両が走行する走路を推定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、交差点の手前の車線数が増加する場所であっても、車線数の増加を早期に判定して適切な走路を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る走路推定装置を備えた車両システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る走路推定装置による平行度の算出方法を説明するための図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る走路推定装置による平行度の算出方法を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る走路推定装置による平行度の算出方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る走路推定装置による走路推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る走路推定装置による走路の推定方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る走路推定装置による自車両が走行している車線の方向を判定する方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る走路推定装置による自車両が走行している車線の方向を判定する方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る走路推定装置による自車両が走行している車線の方向を判定する方法を説明するための図である。
【
図10A】
図10Aは、第1実施形態に係る走路推定装置による自車両が走行している車線の方向を判定する方法を説明するための図である。
【
図10B】
図10Bは、第1実施形態に係る走路推定装置による自車両が走行している車線の方向を判定する方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る走路推定装置による平行度閾値の設定方法を説明するための図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る走路推定装置による平行度閾値の設定方法を説明するための図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る走路推定装置による走路推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る走路推定装置による走路の推定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明を適用した第1実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0010】
[車両システムの構成]
図1は、本実施形態に係る走路推定装置を搭載した車両の車両システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両システム100は、走路推定装置1と、地図情報受信部3と、センサ5と、GNSS受信部7と、アクチュエータ9を備えている。車両システム100は、自動運転が可能な車両や運転者の運転支援を行う車両に搭載されている。
【0011】
走路推定装置1は、自車両の左右に位置する区画線を検出し、検出された左右の区画線が平行であるか否かを判定して、平行であると判定された場合に、左右の区画線に基づいて自車両が走行する走路を推定する。このとき、走路推定装置1は、左右の区画線の平行度合いを示す平行度を算出し、算出した平行度が平行度閾値よりも高い場合に、左右の区画線が平行であると判定する。
【0012】
特に、走路推定装置1は、自車両から交差点までの距離が所定の判定距離以上である場合に、平行度閾値を基準値に設定し、自車両から交差点までの距離が判定距離未満である場合には、平行度閾値を基準値よりも高く設定する。これにより、自車両が交差点に近づくと、左右の区画線が平行であるか否かの判定を厳しく判断することができるので、交差点の手前の車線数が増加する場所であっても、車線数の増加を早期に判定して適切な走路を推定することができる。
【0013】
地図情報受信部3は、外部のサーバ等から地図情報を取得する。例えば、地図情報は、3次元の高精度地図や高精度地図より精度が低く、広いエリアをカバーするナビゲーション用の地図(ナビ地図)、グローバルマップ等を含む。取得した地図情報は走路推定装置1に出力され、図示していないメモリ等の記憶装置に記録される。
【0014】
高精度地図は、車線単位の情報として、車線基準線(例えば車線内の中央の線)上の基準点を示す車線ノードの情報と、車線ノード間の車線の区間態様を示す車線リンクの情報を含む。ナビ地図は、高精度地図よりも精度が劣るとともに、高精度地図よりも道路形状を示す情報量が少ない道路単位のノード情報やリンク情報を保持する地図データに相当する。ただし、高精度地図及びナビ地図のいずれも本実施形態の走路推定装置1に適用することができる。
【0015】
尚、地図情報は、例えば、外部のサーバから取得しても良いし、センサ5のレーダ、LiDAR等のセンシング結果に基づいて自車両で作成しても良い。地図情報は、自車両がこれから走行する走行車線情報や交差点までの距離などの交差点情報を含む。走行車線情報は、自車両が走行する車線の境界を表す区画線や道路形状、ルート情報を含む。交差点情報は、交差点までの距離や位置、右折または左折が可能であるか否か等の情報を含む。
【0016】
センサ5は、例えばカメラ、レーダセンサ等を備える。カメラは、例えばCCD(Charge Coupled Devices)カメラ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであればよい。また、近赤外線カメラ等の単眼カメラでもよいし、ステレオカメラであってもよい。カメラは、自車両に1つのみ設置されていてもよいし、複数設置されていてもよい。カメラは、車両の車幅方向中央の所定の高さに取り付けられており、自車両の前方の道路を含む領域を所定のフレームレートで連続的に撮像する。カメラは、逐次撮像する撮像画像をセンシング情報として走路推定装置1へ逐次出力し、センシング情報は図示していないメモリ等の記憶装置に記録される。
【0017】
レーダセンサとしては、レーダ(Radar)やLiDAR(Light Detection and Ranging)を備えている。レーダとLiDARは、車両に搭載され、車両の周囲に存在する物体を検出するセンサであり、検出した物体上の各点までの距離を計測する。尚、カメラ、レーダセンサ等の種類や数は上記の内容に限定されない。レーダセンサで計測された距離は走路推定装置1に出力され、図示していないメモリ等の記憶装置に記録される。
【0018】
GNSS受信部7は、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からGNSS信号を受信し、走路推定装置1へ出力する。GNSS信号は、図示していないメモリ等の記憶装置に記録される。
【0019】
アクチュエータ9は、走路推定装置1からの制御信号に応じて、自車両のステアリングホイール、アクセル及びブレーキ装置を駆動する。その結果、アクチュエータ9は、自車両のステアリングの操舵方向及び操舵量、自車両のアクセル開度、自車両のブレーキ装置の制動動作を制御して、自車両の車両挙動を発生させる。
【0020】
ここで、
図1に示すように、走路推定装置1は、自車位置推定部11と、交差点情報取得部13と、区画線検出部15と、平行度算出部17と、平行度閾値設定部19と、平行判定部21と、走路推定部23と、車両制御部25を備えている。
【0021】
自車位置推定部11は、地図情報受信部3から受信した地図情報及びセンサ5から取得したセンサデータに基づき自車両の自己位置を推定する。例えば、地図情報に含まれる物標情報とセンサデータに含まれる物標情報に対してマッチング処理を行うことにより自車両の位置を推定することができる。
【0022】
また、自車位置推定部11は、GNSS受信部7によるGNSS信号及びセンサ5からのセンサデータに基づき自車両の自己位置を推定してもよい。さらに、自車位置推定部11は、自車両が走行しているナビ地図上の位置を取得してもよい。自車両の位置を推定する方法としては、GNSS信号を利用したカルマンフィルタなどを用いることができる。
【0023】
交差点情報取得部13は、地図情報受信部3から受信した地図情報に基づいて、自車両が走行している道路の前方にある交差点の交差点情報及び自車両から交差点までの距離情報を取得する。交差点とは、2本以上の道路同士の交差部分と、かかる交差部分の周辺とを含む領域を意味する。また本実施形態が適用される交差点は、右折もしくは左折が可能な交差点のみとしても良い。
【0024】
交差点情報では、異なる進行方向の道路のノードが交わる、あるいはリンクが交差する位置を交差点とし、自車両から自車両前方の交差点までの距離が算出される。または、ノード、リンク、あるいはそれらの集合を道路区分として、いずれかに交差点であるタグや、信号機の有無が記録されていれば、それを交差点としてもよい。交差点までの距離は、自車両の位置するノードまたはリンクから、交差点情報を持つノードまたはリンクまでをたどり、各ノードとリンクの累積距離から計算することができる。交差点情報には、交差点の道路構造、信号情報、かかる交差点を走行予定の対向車の情報、交差点を右折または左折が可能であるか否かについての情報、かかる交差点に存在する他車両の位置等が含まれてもよい。交差点情報は、GNSS受信部7で検出された自車両の現在位置の情報と地図情報受信部3の地図情報とに基づいて検出されても良い。
【0025】
区画線検出部15は、センサ5の検出距離内から、自車両が走行している道路の左右に位置する区画線を検出する。具体的に、区画線検出部15は、センサ5のカメラにより撮像される自車両の前方の道路の画像から、ペイント等によって描かれている左右のレーンマークを左右の区画線として検出する。また、区画線検出部15は、公知の画像認識処理であるパターンマッチングや直線抽出ハフ変換処理等により、検出距離内にある道路上のレーンマークらしきものを左右の区画線の候補として抽出してもよい。
【0026】
区画線検出部15は、上記において認識された左右の区画線の候補を、過去の画像で区画線と認識された線に接続して、区画線となる線を作成する。具体的に、区画線検出部15は、過去の画像で認識された区画線と最も近い位置にある区画線の候補を、過去の画像の区画線の先につなげることで、過去に認識された区画線と連続する区画線を作成する。
【0027】
平行度算出部17は、区画線検出部15で検出された左右の区画線の平行度を算出する。平行度は、自車両の左右に位置する区画線の平行度合いを示すものである。具体的に、平行度算出部17は、区画線を含む道路の画像を鳥瞰変換により自車両の上方の視点からの上視図に変換し、変換された上視図に基づいて区画線の平行度を算出する。
【0028】
例えば、
図2に示すように、平行度算出部17は、左右の区画線の間の幅を算出し、幅の差分から平行度を算出する。具体的には、基準となる自車近傍の区画線の基準幅w1と、自車両から一定距離前方の区画線の比較幅w2と、定数rを用いて、下記の式(1)で平行度の値を計算する。
【数1】
【0029】
基準幅w1、比較幅w2は、センサ5のカメラにより取得された画像を鳥瞰変換により自車両の上方の視点からの上視図に変換し、左右の区画線の幅方向の距離を取得することにより特定する。基準幅w1は交差点手前の自車走行車線の幅とする。または過去の検出結果から統計値を算出した値としてもよい。比較幅w2の検出位置は、自車両前方2m(最小検出距離以上)から20mの範囲で、尚且つ交差点の手前10mから交差点の停止線までの範囲で検出する。区画線の間の幅w1、w2は、例えばw2とw1の差が0[m]の場合に平行度が1の値となり、1車線分増加する場合、つまりw2とw1の差が3.0[m]の場合(車線幅を3[m]と仮定)に平行度が0の値となるように正規化(つまりr=3)する。したがって、区画線の幅が増加しない場合(w2とw1の差がない場合)には平行度が高く、区画線の幅が増加する場合(w2とw1の差が大きい場合)には平行度は低い値となる。
【0030】
また、
図3に示すように、区画線L1、L2の始点から終点までの方向ベクトルV1、V2を算出し、方向ベクトルV1、V2の間の角度、内積から平行度を算出してもよい。この場合、始点から終点を複数の点に分割し、それぞれの点の間の方向ベクトルを算出して、左右の区画線のそれぞれ対になる方向ベクトルの間の角度(0~180)、内積(-1~1)から平均値などをもとに平行度を算出してもよい。内積が負の値の場合には符号を反転する。角度が小さいほど、内積値が大きいほど方向が類似しているため、平行度は高い値となる。
【0031】
この他に、
図4に示すように、左右の区画線L1、L2の各点における法線ベクトルVn1、Vn2を求め、左右の区画線L1、L2の対応する2点の法線ベクトルの間の角度(0~180)、内積(-1~1)から平均値などをもとに平行度を算出してもよい。内積が負の値の場合には符号を反転する。角度が小さいほど、内積値が大きいほど平行度は高い値となるように設定する。
【0032】
平行度閾値設定部19は、自車両から交差点までの距離が所定の判定距離以上である場合に、平行度閾値を基準値に設定する。平行度閾値は、自車両の左右の区画線が平行であるか否かを判定するための閾値である。そして、自車両から交差点までの距離が判定距離未満である場合には、平行度閾値を基準値よりも高く設定する。尚、判定距離は、交差点の手前で増加する走行車線(右折レーンや左折レーン)の長さに応じて設定されており、増加する走行車線が開始する地点から交差点までの距離である。すなわち、平行度閾値設定部19は、自車両が交差点の右折レーンが開始する地点を通過すると、平行度閾値を基準値よりも高くして、左右の区画線が平行であるか否かをより厳しく判定している。ただし、判定距離は、増加する車線の開始地点から交差点までの距離に、センサ5の検出距離を加算したものであってもよい。
【0033】
例えば、
図2の例では、区画線の幅が増加しない場合(w2とw1の差が0[m]の場合)には平行度が1、区画線の幅が1車線分増加する場合(車線幅を3[m]と仮定してw2とw1の差が3.0[m]の場合)、平行度が0となるように正規化されている。したがって、平行度閾値は、0~1の値で設定されることになる。そこで、平行度閾値設定部19は、平行度閾値の基準値を0.7に設定し、自車両から交差点までの距離が判定距離未満になると、平行度閾値を基準値の0.7よりも高い0.9に設定する。これにより、車線数が増加する可能性が高い交差点の手前の区間では、平行度閾値を高くして左右の区画線が平行であるか否かを早期に判断し、増加する車線の区画線を除外して、正しい走路を推定できるようにしている。ただし、平行度閾値は、自車両から交差点までの距離が短くなるのにしたがって徐々に高くなるように設定しても良い。
【0034】
なお、区画線1本分の幅を0.2[m]とすると、区画線の内側を検出するか、外側を検出するかで0.4[m]の差が生じる可能性がある。そこで、区画線の幅(w2とw1の差)の最小値を0.4[m]とし、1車線分増加した場合を3.0[m]として、この範囲を正規化して平行度を算出してもよい。すなわち、式(1)のrを、3.0-0.4=2.6として正規化する。この場合、平行度閾値の基準値は、w2とw1の差が1.0[m]の場合に相当する0.77に設定され、判定距離未満では平行度閾値を、w2とw1の差が0.5[m]の場合に相当する0.96に高めるように設定する。
【0035】
平行判定部21は、平行度算出部17で算出された平行度が、平行度閾値設定部19で設定された平行度閾値よりも高い場合に左右の区画線が平行であると判定する。一方、算出された平行度が、設定された平行度閾値以下である場合に、左右の区画線が平行ではないと判定する。カメラにより撮像された画像では、消し線跡や、自車線から分岐する別の車線に沿って描かれた分岐線、道路の補修跡や光の加減により路面の一部が線状に変色した部位など、区画線と紛らわしい対象物が写る場合がある。そこで、平行の判定を行うことによって、区画線と紛らわしい対象物を、自車両が走行する車線の区画線と誤認識することを抑制している。
【0036】
走路推定部23は、平行判定部21で自車両の左右の区画線が平行であると判定された場合に、左右の区画線に基づいて自車両が走行する走路を推定する。つまり、自車両の左右の区画線の候補が平行であると判定された場合には、自車両が走行する車線の左右に位置する区画線の候補を自車両の走路として推定する。
【0037】
一方、走路推定部23は、自車両の左右の区画線が平行でないと判定された場合には、左右の区画線のうち、自車両が走行している車線の方向との差異が小さい方の区画線を基準区画線に設定し、基準区画線に基づいて自車両が走行する走路を推定する。
【0038】
具体的に、走路推定部23は、自車両が走行する車線の区画線を含む道路の画像を鳥瞰変換により自車両の上方の視点から見た上視図に変換する。そして、変換された上視図において、自車両の左右の区画線の候補の傾きと自車両が走行している車線の延びる方向の傾きとを比較し、傾きの差が小さいほうの区画線を選択して基準区画線に設定する。
【0039】
この時、自車両の過去の走行軌跡に基づいて、自車両の走行車線を推定しても良く、地図情報受信部3から取得したナビ地図のルート情報などの地図情報に基づいて自車両の走行車線を推定しても良い。さらに、自車両の走行車線の路面に描かれた矢印標示に基づいて自車両の走行車線を推定しても良い。
【0040】
車両制御部25は、走路推定部23により自車両の走路として推定された区画線及び道路形状に関する情報に基づき、自車両の運転者に対して各種の運転支援を実行する。車両制御部25が実行する運転支援としては、車線維持支援機能がある。車線維持支援機能は、自車両が車線から逸脱する可能性があると判断した場合、車線の中央付近を走行しやすいように操舵装置を自動的に制御する機能である。
【0041】
尚、走路推定装置1は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、CPUを含む汎用の電子回路と、メモリ等の周辺機器から構成されたコントローラであり、走路推定処理を実行するためのコンピュータプログラムがインストールされている。走路推定装置1の各機能は、1または複数の処理回路によって実装することができる。処理回路は、例えば電気回路を含むプログラムされた処理装置を含んでおり、また実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含んでいてもよい。
【0042】
[走路推定処理]
次に、本実施形態に係る走路推定装置1によって実行される走路推定処理を説明する。
図5は、本実施形態に係る走路推定装置1による走路推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0043】
図5に示すように、ステップS101において、自車位置推定部11は、地図情報受信部3で受信した地図情報を取得する。
【0044】
ステップS103において、自車位置推定部11は、GNSS受信部7で受信した自車両の現在位置と、センサ5で検出したセンサデータとを取得し、ステップS101で取得した地図情報と照合して、自車両の自己位置を推定する。
【0045】
ステップS105において、交差点情報取得部13は、地図情報受信部3から受信した地図情報に基づいて、自車両が走行している道路の前方にある交差点の交差点情報を取得する。特に、交差点情報取得部13は、自車両から自車両が走行している道路の前方にある交差点までの距離を取得する。また、自車両前方の交差点が、右折または左折が可能であるか否かの情報を取得する。
【0046】
ステップS107において、区画線検出部15は、センサ5のカメラにより撮像される自車両の前方の道路の画像から、ペイント等によって道路上に描かれている自車両の左右に位置する区画線を検出する。
【0047】
ステップS109において、平行度閾値設定部19は、自車両から交差点までの距離が所定の判定距離以上である場合に平行度閾値を基準値に設定する。すなわち、平行度閾値設定部19は、交差点の右折レーンが始まる地点よりも手前を自車両が走行している場合には、平行度閾値を基準値に設定する。
【0048】
ステップS111において、平行度閾値設定部19は、自車両から交差点までの距離が判定距離未満であるか否かを判定する。すなわち、平行度閾値設定部19は、自車両が交差点の右折レーンが始まる地点を通過したか否かを判定する。そして、自車両から交差点までの距離が判定距離未満である場合には、ステップS113に進み、自車両から交差点までの距離が判定距離未満ではない場合には、ステップS115に進む。
【0049】
ステップS113において、平行度閾値設定部19は、自車両から交差点までの距離が判定距離未満になったので、平行度閾値を基準値よりも高く設定する。すなわち、平行度閾値設定部19は、自車両が交差点の右折レーンが始まる地点を通過したので、平行度閾値を基準値よりも高く設定する。これにより、交差点の手前で右折レーンが始まり、走行車線が増加しても、左右の区画線が平行でないことを早期に判定できるので、増加した車線側に膨らむような誤った走路を推定することを防止できる。尚、交差点情報に基づいて、自車両前方の交差点が、右折または左折が可能な交差点である場合のみ、平行度閾値を基準値よりも高く設定するようにしてもよい。
【0050】
ステップS115において、平行度算出部17は、ステップS107で検出された自車両の左右に位置する区画線の平行度を算出する。
【0051】
ステップS117において、平行判定部21は、ステップS115で算出された平行度が、ステップS109またはステップS113で設定された平行度閾値よりも高いか否かを判定する。そして、平行度が平行度閾値よりも高い場合には、自車両の左右に位置する区画線が平行であると判定してステップS119に進み、平行度が平行度閾値以下である場合には、自車両の左右に位置する区画線が平行ではないと判定してステップS121に進む。
【0052】
ステップS119において、走路推定部23は、自車両の左右に位置する区画線に基づいて、自車両が走行する走路を推定する。具体的に、走路推定部23は、自車両の左右に位置する区画線が平行である場合には、左右に位置する2本の区画線を自車両が走行する走路として推定する。また、左右の区画線の中心線を走路として推定しても良いし、左右の区画線のうちの一方の線を自車両の中心に移動した線を走路として推定しても良い。
【0053】
ステップS121において、走路推定部23は、自車両の左右に位置する区画線のうち、自車両が走行している車線の方向との差異が小さいほうの区画線を基準区画線に設定し、基準区画線に基づいて、自車両が走行する走路を推定する。
【0054】
例えば、
図6に示すように、2本の区画線L1、L2が平行でないと判定された場合に、自車両が走行している車線の方向との差異が小さいほうの区画線L1を基準区画線に設定する。そして、この基準区画線を、左右の区画線のもう一方の区画線L2の方向に車線幅だけ移動させて仮想線VL1を設定し、この仮想線VL1と基準区画線L1を走路として推定する。
【0055】
尚、自車両が走行している車線の方向については、自車両の走行軌跡に基づいて設定すればよい。
図7に示すように、自車両が現在時刻まで走行してきた走行軌跡R1が示す方向を、自車両が走行している車線の方向として設定する。そして、左右の区画線L1、L2のベクトルV1、V2と走行軌跡R1のベクトルVR1とを比較すると、ベクトルV1、V2のうち、ベクトルVR1との差異が小さいほうのベクトルは、V1であることが分かる。そこで、区画線L1を基準区画線として設定する。
【0056】
また、自車両が走行している車線の方向は、自車両が走行する予定の道路の方向に基づいて設定しても良い。
図8に示すように、地図情報から自車両が走行する予定の交差点の位置を取得し、現在位置からその交差点の方向を示すベクトルVR2を、自車両が走行する予定の道路の方向として求める。そして、この自車両が走行する予定の道路の方向を、自車両が走行している車線の方向として設定しても良い。
【0057】
さらに、自車両が走行している車線の方向は、自車両が走行している車線の隣接車線の方向に基づいて設定しても良い。
図9に示すように、自車両が走行している車線に隣接車線がある場合に、隣接車線の2本の区画線L1、L3の方向を、自車両が走行している車線の方向として設定してもよい。隣接車線があるか否かの判断方法としては、区画線L1の線種が、破線のような車線変更可能な区画線である場合に、隣接車線が存在すると判断することができる。また、隣接車線の2本の区画線L1、L3の幅が、自車両の車線幅と近く、平行度が高い場合に、隣接車線が存在すると判断してもよい。
【0058】
また、自車両が走行している車線の方向を、自車両が走行している車線の矢印標示に基づいて設定しても良い。例えば、
図10Aに示すように、自車両が走行している車線上に直進と右折の矢印標示30がある場合には、右側の区画線L2は外側に拡大していくので、左側の区画線L1の方向を、自車両が走行している車線の方向として設定する。同様に、
図10Bに示すように、自車両が走行している車線上に直進と左折の矢印標示32がある場合には、右側の区画線L2の方向を、自車両が走行している車線の方向として設定する。
【0059】
尚、自車両から交差点までの距離が判定距離未満になった後に、さらに以下のような処理を行っても良い。平行度閾値設定部19は、判定距離よりも短い切替距離を設定し、自車両から交差点までの距離が切替距離未満になった場合に、平行度閾値を基準値よりも高い値から基準値に切り替えるようにしても良い。
【0060】
例えば、
図11に示すように、車線の増加が完了した地点P2から交差点までの距離を、切替距離K2として設定する。切替距離K2は、右折レーンが開始する地点P1から交差点までの距離に設定された判定距離K1よりも短くなる。
【0061】
自車両から交差点までの距離が判定距離K1未満になると、車線数の増加により、左右の区画線が平行でない可能性が高いので、平行度閾値を基準値よりも高くする必要がある。しかし、自車両から交差点までの距離が切替距離K2未満になると、車線数の増加が完了しているので、左右の区画線は平行である可能性が高くなり、平行度閾値を基準値よりも高くする必要はなくなる。そこで、平行度閾値設定部19は、自車両から交差点までの距離が切替距離K2未満になると、平行度閾値を基準値よりも高い値から基準値に切り替えるように制御する。
【0062】
また、平行度閾値設定部19は、自車両から交差点までの距離が判定距離未満になり、自車両の左右に位置する区画線が平行でないと判定された後に、新たに区画線を検出した場合には、平行度閾値を基準値よりも高い値から基準値に切り替えるようにしても良い。
【0063】
図12に示すように、自車両から交差点までの距離が判定距離K1未満になり、自車両の左右に位置する区画線L1、L2が平行でないと判定された後に、自車両が走行していくと、新たに区画線L4を検出する場合がある。この場合には、車線の増加が完了して、増加した車線の区画線を検出しているので、平行度閾値を基準値よりも高くしておく必要はなくなる。そこで、平行度閾値設定部19は、平行度閾値を基準値よりも高い値から基準値に切り替えるように制御する。
【0064】
このように、ステップS119またはステップS121で自車両が走行する走路が推定されると、次にステップS123に進む。ステップS123において、車両制御部25は、ステップS119またはステップS121で推定された走路を、自車両が走行するようにアクチュエータ9に対して制御信号を出力する。そして、アクチュエータ9が、車両制御部25からの制御信号に応じて、自車両のステアリングホイールやアクセル、ブレーキを駆動すると、本実施形態に係る走路推定処理は終了する。
【0065】
[第1実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る走路推定装置1は、自車両の左右に位置する区画線を検出し、検出された左右の区画線の平行度を算出し、自車両から交差点までの距離が所定の判定距離以上である場合に、平行度閾値を基準値に設定する。一方、自車両から交差点までの距離が判定距離未満である場合には、平行度閾値を基準値よりも高く設定する。そして、算出された平行度が、設定された平行度閾値よりも高い場合に、左右の区画線が平行であると判定し、左右の区画線が平行であると判定された場合に、左右の区画線に基づいて自車両が走行する走路を推定する。これにより、交差点の手前の車線数が増加する場所であっても、車線数の増加を早期に判定して適切な走路を推定することができる。
【0066】
特に、本実施形態に係る走路推定装置1では、自車両が交差点に近づくと、左右の区画線が平行であるか否かの判定を厳しく判断することができるので、交差点の手前の車線数が増加する場所であっても、車線数の増加を早期に判定することができる。これにより、交差点の手前で車線数が増加しても、増加した車線側に膨らむような誤った走路の推定を防止できるので、適切な走路を推定することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る走路推定装置1では、左右の区画線が平行でないと判定された場合には、左右の区画線のうち自車両が走行している車線の方向との差異が小さいほうの区画線を基準区画線に設定し、基準区画線に基づいて自車両が走行する走路を推定する。これにより、左右の区画線が平行でない場合であっても、自車両が走行している車線の方向との差異が小さいほうの区画線を選択し、増加する車線側の区画線は利用しないので、増加した車線側に膨らむような誤った走路の推定を防止することができる。
【0068】
さらに、本実施形態に係る走路推定装置1では、左右の区画線が平行でないと判定された場合には、基準区画線を左右の区画線のもう一方の区画線の方向に車線幅だけ移動させて仮想線を設定し、仮想線と基準区画線とに基づいて自車両が走行する走路を推定する。
これにより、左右の区画線が平行でない場合に、自車両が走行している車線の方向との差異が小さいほうの区画線を選択し、その区画線から仮想線を設定するので、増加した車線側に膨らむような誤った走路の推定を防止することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る走路推定装置1では、自車両の走行軌跡に基づいて、自車両が走行している車線の方向を設定する。これにより、左右の区画線が平行でない場合に、自車両が走行している車線の方向を正確に設定できるので、増加した車線側に膨らむような誤った走路の推定を防止して適切な走路を推定することができる。
【0070】
さらに、本実施形態に係る走路推定装置1では、自車両が走行する予定の道路の方向に基づいて、自車両が走行している車線の方向を設定する。これにより、左右の区画線が平行でない場合に、自車両が走行している車線の方向を正確に設定できるので、増加した車線側に膨らむような誤った走路の推定を防止して適切な走路を推定することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る走路推定装置1では、自車両が走行している車線の隣接車線の方向に基づいて、自車両が走行している車線の方向を設定する。これにより、左右の区画線が平行でない場合に、自車両が走行している車線の方向を正確に設定できるので、増加した車線側に膨らむような誤った走路の推定を防止して適切な走路を推定することができる。
【0072】
さらに、本実施形態に係る走路推定装置1では、自車両が走行している車線の矢印標示に基づいて、自車両が走行している車線の方向を設定する。これにより、左右の区画線が平行でない場合に、自車両が走行している車線の方向を正確に設定できるので、増加した車線側に膨らむような誤った走路の推定を防止して適切な走路を推定することができる。
【0073】
また、本実施形態に係る走路推定装置1では、判定距離よりも短い切替距離を設定し、自車両から交差点までの距離が切替距離未満である場合に、平行度閾値を基準値よりも高い値から基準値に切り替える。これにより、交差点の手前の車線数が増加する区間のみで平行度閾値を高くするので、必要な区間のみ平行の判定を厳しく判断することができ、効率的に左右の区画線の平行を判定することができる。
【0074】
さらに、本実施形態に係る走路推定装置1では、自車両から交差点までの距離が判定距離未満になり、左右の区画線が平行でないと判定された後に、新たに区画線を検出した場合には、平行度閾値を基準値よりも高い値から基準値に切り替える。これにより、交差点の手前で新たに区画線を検出した場合には平行度閾値を基準値に戻すので、無駄に平行の判定を厳しくすることがなくなり、効率的に左右の区画線の平行を判定することができる。
【0075】
また、本実施形態に係る走路推定装置1では、交差点が、右折または左折が可能な交差点である場合のみ、平行度閾値を基準値よりも高く設定する。これにより、右折または左折ができない交差点では、無駄に平行の判定を厳しくすることがなくなり、効率的に左右の区画線の平行を判定することができる。
【0076】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。尚、本実施形態に係る走路推定装置1は、
図1に示す第1実施形態の構成と同一である。
【0077】
図13は、本実施形態に係る走路推定装置1による走路推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図13に示すように、本実施形態に係る走路推定処理は、
図5に示す第1実施形態の走路推定処理に、ステップS201~S205の処理を追加したことが相違している。
【0078】
ステップS101~S117の処理を第1実施形態と同様に実行し、ステップS117において、平行判定部21は、ステップS115で算出された平行度が、ステップS109またはステップS113で設定された平行度閾値よりも高いか否かを判定する。そして、平行度が平行度閾値よりも高い場合には、自車両の左右に位置する区画線が平行であると判定してステップS119に進み、平行度が平行度閾値以下である場合には、自車両の左右に位置する区画線が平行ではないと判定してステップS201に進む。
【0079】
ステップS201において、走路推定部23は、自車両の左右に位置する区画線の間に所定領域を設定する。
図14に示すように、走路推定部23は、自車両の左右に位置する区画線L1、L2のうち、自車両が走行している車線の方向との差異が小さいほうの区画線L1を基準区画線に設定する。そして、基準区画線L1を区画線L2の方向に車線幅だけ移動させた位置に、所定の幅を有する所定領域40を設定する。
【0080】
ステップS203において、走路推定部23は、ステップS201で設定された所定領域40内に区画線を示す路面標示が存在するか否かを判定する。そして、所定領域40内に区画線を示す路面標示が存在する場合にはステップS205に進み、所定領域40内に区画線を示す路面標示が存在しない場合にはステップS121に進む。
【0081】
ステップS205において、走路推定部23は、所定領域40内に存在した区画線と基準区画線とに基づいて、自車両が走行する走路を推定する。
図14に示すように、走路推定部23は、基準区画線に設定された区画線L1と、所定領域40内に存在する区画線を、自車両が走行する走路として推定する。
【0082】
この後、第1実施形態と同様に、ステップS119~ステップS123の処理を実行して、本実施形態に係る走路推定処理は終了する。
【0083】
[第2実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る走路推定装置1では、左右の区画線が平行でないと判定された場合には、基準区画線を、左右の区画線のもう一方の区画線の方向に車線幅だけ移動させて所定領域を設定する。そして、所定領域内に区画線を示す路面標示が存在するか否かを判定し、存在する場合には、所定領域内に存在した区画線と基準区画線とに基づいて自車両が走行する走路を推定する。これにより、左右の区画線が平行でない場合に、自車両が走行している車線の方向との差異が小さいほうの区画線を選択し、その区画線から所定領域を設定して他方の区画線を検出するので、増加した車線側に膨らむような誤った走路の推定を防止することができる。
【0084】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0085】
1 走路推定装置
3 地図情報受信部
5 センサ
7 GNSS受信部
9 アクチュエータ
11 自車位置推定部
13 交差点情報取得部
15 区画線検出部
17 平行度算出部
19 平行度閾値設定部
21 平行判定部
23 走路推定部
25 車両制御部
30、32 矢印標示
40 所定領域
100 車両システム