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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181754
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】脱脂洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   C23G 5/032 20060101AFI20231218BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20231218BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C23G5/032
C11D7/50
C11D7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095074
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】390002808
【氏名又は名称】マークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173406
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 真貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100067301
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】高荷 悠
(72)【発明者】
【氏名】幡谷 尚宏
【テーマコード(参考)】
4H003
4K053
【Fターム(参考)】
4H003DA05
4H003DA09
4H003DA14
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB13
4H003FA07
4H003FA45
4K053QA04
4K053RA40
4K053RA41
4K053RA63
4K053ZA10
(57)【要約】
【課題】
金属材料等の表面に付着した油類を除去する脱脂洗浄剤であって、主溶剤が、引火点が21℃以上の水溶性溶剤なので引火し難く、また、脱脂洗浄した金属材料表面に錆が生じ難い脱脂洗浄剤を提供する。
【解決手段】
水溶性溶剤を主溶剤とする脱脂洗浄剤であって、前記水溶性溶剤は引火点が21℃以上であり、前記脱脂洗浄剤は、炭素数が6以上かつ12以下の脂肪族アミン塩を0.05重量%以上かつ3.0重量%以下含有する脱脂洗浄剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性溶剤を主溶剤とする脱脂洗浄剤であって、前記水溶性溶剤は引火点が21℃以上であり、前記脱脂洗浄剤は、炭素数が6以上かつ12以下の脂肪族アミン塩を0.05重量%以上かつ3.0重量%以下含有する脱脂洗浄剤。
【請求項2】
前記水溶性溶剤を70重量%以上含有する請求項1記載の脱脂洗浄剤。
【請求項3】
前記水溶性溶剤がプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、メチルメトキシブタノールから選択される1種又は2種以上である請求項1又は2記載の脱脂洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料等に付着した油類を除去する脱脂洗浄剤に関する。詳しくは、該脱脂洗浄剤は主溶剤が、引火点が21℃以上の水溶性溶剤であり、引火し難いため安全性が高く、また、脱脂洗浄した後の金属材料が錆び難い脱脂洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料の脱脂洗浄剤の多くは非水溶性溶剤を主溶剤とする。
【0003】
しかし、非水溶性溶剤は引火点が低く、脱脂洗浄作業中に引火する虞があるため安全性の問題がある。
【0004】
第二石油類以上の非水溶性溶剤であれば、引火の可能性は低くなるが、水溶性溶剤と比べて、指定数量が1/2であり、消防法上、使用量に制限があるという問題がある。
【0005】
水溶性溶剤を主溶剤とする脱脂洗浄剤であれば、引火の可能性は低いため安全性は高いが、金属材料を脱脂洗浄した後の乾燥工程において、気化冷却された金属材料表面が空気中の水分を吸着して錆が発生するという問題がある。
【0006】
そこで、水溶性溶剤が主溶剤であって引火し難く、安全性の高い脱脂洗浄剤であって、しかも、脱脂洗浄後に錆が発生し難い脱脂洗浄剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1-132785
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、ジクロロトリフルオロエタンを有効成分として含有する金属部品等に付着した油類を除去するための脱脂洗浄剤が記載されている。
【0009】
しかし、ジクロロトリフルオロエタンは環境への負荷が大きいため環境法規等によって使用が制限されるという問題がある。
【0010】
本発明者は、前記諸問題点を解決することを技術的課題とし、試行錯誤的な数多くの試作・実験を重ねた結果、水溶性溶剤を主溶剤とする脱脂洗浄剤であって、前記水溶性溶剤は引火点が21℃以上であり、前記脱脂洗浄剤は、炭素数6以上かつ12以下の脂肪族アミン塩を0.05重量%以上かつ3.0重量%以下含有する脱脂洗浄剤であれば、引火の可能性が低くて安全性が高く、しかも、脱脂洗浄後に金属材料表面に錆が生じ難いという刮目すべき知見を得て、前記技術的課題を解決したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記技術的課題は、次のとおり本発明によって解決できる。
【0012】
本発明は、水溶性溶剤を主溶剤とする脱脂洗浄剤であって、前記水溶性溶剤は引火点が21℃以上であり、前記脱脂洗浄剤は、炭素数が6以上かつ12以下の脂肪族アミン塩を0.05重量%以上かつ3.0重量%以下含有する脱脂洗浄剤である。
【0013】
また本発明は、前記水溶性溶剤を70重量%以上含有する前記の脱脂洗浄剤である。
【0014】
また本発明は、前記水溶性溶剤がプロピレングリコールモノプロピルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテル,ジアセトンアルコール,メチルメトキシブタノールから選択される1種又は2種以上である前記の脱脂洗浄剤である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の脱脂洗浄剤は、主溶剤が、引火点が21℃以上の水溶性溶剤だから、脱脂洗浄作業中に引火の可能性が低く、安全性の高い脱脂洗浄剤である。
【0016】
また、主溶剤が水溶性溶剤なので、消防法やその他の法規の使用量の制限が非水溶性溶剤と比べて軽い。
【0017】
また、炭素数が6~12の脂肪族アミン塩を0.05重量%~3.0重量%含有するから、脱脂洗浄後の乾燥中においても金属材料表面に錆が生じ難い脱脂洗浄剤である。
【0018】
また、水溶性溶剤がプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、メチルメトキシブタノールから選択される1種又は2種以上であると、さらに脱脂洗浄力及び錆の抑制に優れる脱脂洗浄剤になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明における脱脂洗浄剤は、水溶性溶剤を主溶剤とする。
【0020】
水溶性溶剤は70重量%~95重量%含有することが好ましい。
【0021】
70重量%より少ないと、金属材料表面を十分に脱脂洗浄できない虞があるからである。
【0022】
本発明における水溶性溶剤は特に限定されないが、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、メチルメトキシブタノールを例示する。
【0023】
水溶性溶剤は1種で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
本発明における脱脂洗浄剤は炭素数が6~12の脂肪族アミン塩を含有する。
【0025】
水溶性溶剤が揮発する際、蒸発熱(吸熱)により金属材料表面に結露が発生し、金属材料表面を腐食して錆を発生させるのだが、炭素数が6~12の脂肪族アミン塩を含有すれば、結露の水が金属材料表面に付着するのを脂肪族アミン塩が妨ぐため、錆の発生を抑制することができる。
【0026】
炭素数が6~12の脂肪族アミン塩は特に限定されないが、ファーミン08D(花王株式会社製)を例示する。
【0027】
脱脂洗浄剤中の脂肪族アミン塩の含有量は0.05重量%~3.0重量%が好ましく、より好ましくは0.1重量%~1.0重量%である。
【0028】
0.05重量%より少ないと、錆の抑制効果が低く、また、3.0重量%より多いと脂肪族アミン塩が皮膜として残る虞があるからである。
【実施例0029】
本発明を実施例及び比較例を挙げてより詳しく説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0030】
表1及び表2記載の通り各成分を混合し、30分間撹拌して実施例及び比較例の脱脂洗浄剤を作製した。
【0031】
メチルメトキシブタノールは引火点が68℃、第2石油類水溶性であり、プロピレングリコールモノプロピルエーテルは引火点が48℃、第2石油類水溶性であり、n-ウンデカンは引火点が65℃、第2石油類非水溶性である。
【0032】
炭素数6~12(C6~12)の脂肪族アミン塩としてファーミン08D(花王株式会社製)、炭素数4(C4)の脂肪族アミン塩として、ブチルアミン塩酸塩(東京化成工業株式会社製)、炭素数14(C14)の脂肪族アミン塩としてファーミンDM2098(花王株式会社製)を使用した。
【0033】
(発錆確認試験)
サンドブラストした金属材料を温度25℃、相対湿度95%の恒温槽中に2分間静置し、各脱脂洗浄剤を金属材料表面にスポイドで0.5mL垂らした後、温度25℃、相対湿度95%の恒温槽中に5分間静置して錆による変色の有無を目視により確認した。
【0034】
金属材料表面に変色が現れなかったものを〇、変色が現れたものを×として評価した。
【0035】
結果を表1及び表2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1及び表2に示した通り、本発明における脱脂洗浄剤であれば、錆が発生し難いことが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、引火点が21℃以上の水溶性溶剤を主溶剤とするから、引火し難くて安全性が高く、また、炭素数が6~12の脂肪族アミン塩を含有するので、脱脂洗浄後の乾燥中の金属材料表面に錆が発生し難い脱脂洗浄剤である。
よって、本発明の産業上の利用可能性は高い。