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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181758
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】乗客コンベアの踏段ローラー
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/14 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
B66B23/14 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095079
(22)【出願日】2022-06-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】白井 健太
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA02
3F321CB21
(57)【要約】
【課題】寿命を的確に判断できる乗客コンベアの踏段ローラーを提供する。
【解決手段】乗客コンベアの踏段ローラーは、円環状の軸受と、径方向において軸受よりも外側に設けられたタイヤ部50と、を備え、タイヤ部50は、周方向の少なくとも一部において、内層51と、径方向において内層51よりも外側に設けられた外層52と、を有しており、外層52は、タイヤ部50の外周面50aを構成しており、内層51の色は、外層52の色と異なっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の軸受と、
径方向において前記軸受よりも外側に設けられたタイヤ部と、
を備え、
前記タイヤ部は、周方向の少なくとも一部において、第1層と、前記径方向において前記第1層よりも外側に設けられた第2層と、を有しており、
前記第2層は、前記タイヤ部の外周面を構成しており、
前記第1層の色は、前記第2層の色と異なっている乗客コンベアの踏段ローラー。
【請求項2】
前記タイヤ部は、埋込み部品を有しており、
前記埋込み部品は、前記周方向の一部において前記タイヤ部に埋め込まれており、
前記埋込み部品は、前記第1層及び前記第2層を有している請求項1に記載の乗客コンベアの踏段ローラー。
【請求項3】
前記第1層は、撥油性を有する材料により形成されている請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベアの踏段ローラー。
【請求項4】
前記第1層の色は蛍光色である請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベアの踏段ローラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアの踏段ローラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乗客コンベアの踏段ローラーが開示されている。この踏段ローラーは、軸受、内層体及びタイヤを有している。軸受の内輪には、踏段の軸が挿通されている。軸受の外輪は、内層体の内周部に固定されている。タイヤは、内層体の外周部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-292443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
踏段ローラーの軸受には、グリースが封入されている。一般に、踏段ローラーの寿命は、グリースの劣化状態に大きく左右される。このため、踏段ローラーの寿命は、踏段ローラーの外観からは判断しにくい。従来、踏段ローラーの寿命は、以下のいずれかの点検方法によって判断されていた。
【0005】
第1の点検方法では、点検作業者は、踏段ローラーを手に持ち、軸受の内輪に指を差し込んで踏段ローラーを回転させる。点検作業者は、踏段ローラーの回転のスムーズさに基づき、踏段ローラーが寿命に達しているか否かを判断する。
【0006】
第2の点検方法では、軸受のシール部材を取り外し、グリースの量及び色を目視により確認する。点検作業者は、グリースの量及び色に基づき、踏段ローラーが寿命に達しているか否かを判断する。
【0007】
しかしながら、いずれの点検方法においても、踏段ローラーの寿命の判断は点検作業者の経験及び感覚に依存する。このため、踏段ローラーの寿命を的確に判断するのは困難であるという課題があった。
【0008】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、寿命を的確に判断できる乗客コンベアの踏段ローラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る乗客コンベアの踏段ローラーは、円環状の軸受と、径方向において前記軸受よりも外側に設けられたタイヤ部と、を備え、前記タイヤ部は、周方向の少なくとも一部において、第1層と、前記径方向において前記第1層よりも外側に設けられた第2層と、を有しており、前記第2層は、前記タイヤ部の外周面を構成しており、前記第1層の色は、前記第2層の色と異なっている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、踏段ローラーの寿命を的確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る乗客コンベアの踏段の概略構成を示す斜視図である。
図2】実施の形態1に係る乗客コンベアの踏段ローラーの概略構成を示す斜視図である。
図3】実施の形態1に係る乗客コンベアの踏段ローラーにおけるボス部及びタイヤ部の構成を示す断面図である。
図4】実施の形態1の変形例に係る乗客コンベアにおける踏段チェーンの構成を示す斜視図である。
図5】実施の形態2に係る乗客コンベアの踏段ローラーにおけるボス部及びタイヤ部の構成を示す断面図である。
図6】実施の形態3に係る乗客コンベアの踏段ローラーの構成を示す正面図である。
図7図6のVII-VII断面を示す断面図である。
図8】実施の形態3に係る乗客コンベアの踏段ローラーの製造工程を示す断面図である。
図9】実施の形態3に係る乗客コンベアの踏段ローラーの製造工程を示す断面図である。
図10】実施の形態3に係る乗客コンベアの踏段ローラーにおいてタイヤ部の摩耗が進行した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
実施の形態1に係る乗客コンベアの踏段ローラーについて説明する。図1は、本実施の形態に係る乗客コンベアの踏段の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、踏段10は、踏板12、ライザ13、踏段ブラケット14、一対の追従ローラー軸16、一対の追従ローラー20、不図示の踏段軸、及び不図示の一対の駆動ローラーを有している。追従ローラー20、追従ローラー軸16、及び駆動ローラーは、踏段10の幅方向両側に1つずつ設けられている。
【0013】
踏板12は、乗客を乗せる長方形平板状の部材である。ライザ13は、上昇運転中の踏段10の移動方向において踏板12の後方に設けられている。
【0014】
踏段ブラケット14は、踏板12及びライザ13を支持している。踏段ブラケット14は、一対の枠状部14aを有している。各枠状部14aは、三角形状の枠状に形成されている。枠状部14aは、踏段10の幅方向両側に1つずつ配置されている。
【0015】
追従ローラー軸16は、各枠状部14aに取り付けられている。追従ローラー軸16は、各枠状部14aから踏段10の幅方向に沿って外側に延びている。各追従ローラー軸16には、追従ローラー20が取り付けられている。各追従ローラー20は、不図示の追従レールによって案内される。追従レールは、トラスに固定されている。
【0016】
踏段軸は、踏板12の下方において踏段10の幅方向に沿って延びている。踏段軸は、踏段ブラケット14に固定されている。踏段軸の一端部は、踏段チェーンに連結されている。踏段軸の他端部は、別の踏段チェーンに連結されている。
【0017】
駆動ローラーは、踏段軸の一端部及び他端部に1つずつ取り付けられている。駆動ローラーは、上昇運転中の踏段10の移動方向において、追従ローラー20よりも前方に設けられている。各駆動ローラーは、不図示の駆動レールによって案内される。駆動レールは、トラスに固定されている。
【0018】
図2は、本実施の形態に係る乗客コンベアの踏段ローラーの概略構成を示す斜視図である。本実施の形態では、踏段ローラーとして追従ローラー20が例示されている。ただし、本実施の形態は、駆動ローラーにも適用可能である。
【0019】
以下の説明では、追従ローラー20の中心軸21に沿う方向のことを、「追従ローラー20の軸方向」、又は単に「軸方向」という場合がある。中心軸21を中心とした円周に沿う方向のことを、「追従ローラー20の周方向」、又は単に「周方向」という場合がある。中心軸21を中心とした追従ローラー20の半径に沿う方向のことを、「追従ローラー20の径方向」、又は単に「径方向」という場合がある。
【0020】
図2に示すように、追従ローラー20は、中心軸21を中心とした円筒状の形状を有している。追従ローラー20は、軸受30、ボス部40及びタイヤ部50を有している。
【0021】
軸受30は、中心軸21を中心とした円環状の形状を有している。軸受30は、内輪、外輪及び転動体を有する転がり軸受である。軸受30の内輪と外輪との間には、グリースが充填されている。追従ローラー20の軸方向において、グリースの充填部分よりも外側には、シール部材32が設けられている。これにより、グリースは、軸受30の内輪と外輪との間に封入されている。
【0022】
軸受30の中心軸21上には、軸穴31が形成されている。軸穴31には、図1に示した追従ローラー軸16が挿入されている。追従ローラー軸16は、軸受30の内輪に固定されている。
【0023】
ボス部40は、追従ローラー20の径方向において、軸受30よりも外側に設けられている。ボス部40は、中心軸21を中心とした円筒状の形状を有している。ボス部40は、軸受30の外輪に固定されている。ボス部40は、中心軸21を中心として追従ローラー軸16に対し回転自在となっている。ボス部40は、樹脂により形成されている。
【0024】
タイヤ部50は、追従ローラー20の径方向において、ボス部40よりも外側に設けられている。タイヤ部50は、中心軸21を中心とした円筒状の形状を有している。タイヤ部50は、ボス部40と一体に、中心軸21を中心として追従ローラー軸16に対し回転自在となっている。タイヤ部50の外周面50aは、追従レールと接触する接触面となる。タイヤ部50は、ボス部40の形成材料よりも硬度の低い樹脂によって形成されている。
【0025】
図3は、本実施の形態に係る乗客コンベアの踏段ローラーにおけるボス部及びタイヤ部の構成を示す断面図である。図3には、ボス部40及びタイヤ部50が中心軸21と垂直に切断された断面が示されている。
【0026】
図3に示すように、タイヤ部50は、追従ローラー20の周方向の全体において、内層51及び外層52を有している。内層51及び外層52は、二層成形によって形成されている。外層52は、追従ローラー20の径方向において、内層51よりも外側に設けられている。外層52は、タイヤ部50の外周面50aを構成している。すなわち、外層52の外周面は、タイヤ部50の外周面50aとなっている。内層51の色は、外層52の色とは異なっている。内層51は、例えば、外層52と同種の樹脂によって形成されている。
【0027】
タイヤ部50が摩耗すると、追従ローラー20の径方向における外層52の厚さが徐々に減少する。タイヤ部50の摩耗がさらに進行すると、タイヤ部50の外周面50aにおいて、外層52の色とは異なる色の内層51が露出する。点検作業者は、タイヤ部50の外周面50aにおいて内層51の露出を視認できた場合、追従ローラー20が寿命に達したと判断する。
【0028】
一般に、踏段ローラーは、タイヤ部が摩耗によって消失するよりも先に、グリースの劣化等の軸受の劣化によって寿命に達することが多い。つまり、踏段ローラーにおいて、タイヤ部の寿命は、軸受の寿命よりも長い。このため、一般的な踏段ローラーでは、タイヤ部を目視することによって踏段ローラーの寿命を判断するのは困難である。
【0029】
ただし、タイヤ部50の摩耗量と、軸受30の劣化度合いと、の間には相関がある。本実施の形態では、外層52の厚さは、タイヤ部50全体の厚さよりも薄くなっている。外層52の厚さは、軸受30が寿命に達したときの外層52の推定摩耗量に基づいて設定されている。このため、本実施の形態では、タイヤ部50の外周面50aにおいて内層51が露出した場合、軸受30すなわち追従ローラー20が寿命に達したと判断できる。
【0030】
内層51の色は、外層52の色と異なっている。このため、外周面50aにおいて内層51が露出したことは、容易かつ客観的に判断できる。このため、本実施の形態では、タイヤ部50の目視という簡単な手法によって、追従ローラー20の寿命を的確に判断することができる。
【0031】
内層51は、油を弾きやすい撥油性を有する材料によって形成されていてもよい。これにより、内層51に油が付着しにくくなるため、内層51の視認性が向上する。したがって、油により汚れている乗客コンベア内部においても、内層51が露出しているか否かを点検作業者が確認しやすくなる。
【0032】
また、内層51の色は、蛍光色であってもよい。これにより、内層51の視認性が向上する。したがって、油により汚れている乗客コンベア内部においても、内層51が露出しているか否かを点検作業者が確認しやすくなる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態に係る追従ローラー20は、軸受30と、タイヤ部50と、を備えている。軸受30は、円環状の形状を有している。タイヤ部50は、径方向において軸受30よりも外側に設けられている。タイヤ部50は、内層51と、外層52と、を有している。外層52は、径方向において内層51よりも外側に設けられている。外層52は、タイヤ部50の外周面50aを構成している。内層51の色は、外層52の色と異なっている。ここで、追従ローラー20は、乗客コンベアの踏段ローラーの一例である。内層51は、第1層の一例である。外層52は、第2層の一例である。
【0034】
この構成によれば、タイヤ部50の外周面50aにおいて内層51が露出した場合、追従ローラー20が寿命に達したと判断することができる。内層51の色は外層52の色と異なっているため、外周面50aにおいて内層51が露出したことは、点検作業者の経験及び感覚に依存せず、点検作業者が容易かつ客観的に判断できる。したがって、本実施の形態では、点検作業者の熟練度によらず、追従ローラー20の寿命を的確に判断することができる。
【0035】
本実施の形態に係る追従ローラー20において、内層51は、撥油性を有する材料により形成されている。この構成によれば、内層51に油が付着しにくくなるため、内層51の視認性を向上させることができる。したがって、油により汚れている乗客コンベア内部においても、内層51が露出しているか否かを点検作業者が容易に判断することができる。
【0036】
本実施の形態に係る追従ローラー20において、内層51の色は蛍光色である。この構成によれば、内層51の視認性を向上させることができる。したがって、油により汚れている乗客コンベア内部においても、内層51が露出しているか否かを点検作業者が容易に判断することができる。
【0037】
図4は、本実施の形態の変形例に係る乗客コンベアにおける踏段チェーンの構成を示す斜視図である。図4に示すように、本変形例の踏段チェーンは、インナーローラー型の踏段チェーンである。踏段チェーンは、内側踏段チェーン62及び外側踏段チェーン63を有している。駆動ローラー60は、内側踏段チェーン62及び外側踏段チェーン63によって両側から挟まれている。駆動ローラー60は、踏段軸61の端部に設けられた踏段ピン64を介して、内側踏段チェーン62及び外側踏段チェーン63のそれぞれに連結されている。
【0038】
本変形例のようにインナーローラー型の踏段チェーンが用いられている場合、駆動ローラー60は内側踏段チェーン62及び外側踏段チェーン63の内部に組み込まれる。このため、本変形例では、駆動ローラー60を取り外すことはできない。
【0039】
しかしながら、本実施の形態では、駆動ローラー60を取り外さずに駆動ローラー60の寿命を判断することができる。このため、インナーローラー型の踏段チェーンが用いられている場合にも、駆動ローラー60の寿命を容易に判断することができる。
【0040】
実施の形態2.
実施の形態2に係る乗客コンベアの踏段ローラーについて説明する。図5は、本実施の形態に係る乗客コンベアの踏段ローラーにおけるボス部及びタイヤ部の構成を示す断面図である。図5には、ボス部40及びタイヤ部50が中心軸21と垂直に切断された断面が示されている。本実施の形態では、踏段ローラーとして追従ローラー20が例示されている。ただし、本実施の形態は、駆動ローラーにも適用可能である。
【0041】
図5に示すように、タイヤ部50は、タイヤ層53及びコーティング層54を有している。コーティング層54は、追従ローラー20の径方向において、タイヤ層53よりも外側に設けられている。タイヤ層53は、ボス部40の形成材料よりも硬度の低い樹脂によって形成されている。コーティング層54は、タイヤ層53に塗布されたコーティング材によって形成されている。コーティング層54の色は、タイヤ層53の色とは異なっている。コーティング層54は、タイヤ部50の外周面50aを構成している。すなわち、コーティング層54の外周面は、タイヤ部50の外周面50aとなっている。
【0042】
コーティング層54の厚さは、例えば、軸受30が寿命に達したときのコーティング層54の推定摩耗量に基づいて設定されている。それ以外の構成は、実施の形態1と同様である。
【0043】
コーティング層54が摩耗すると、コーティング層54の厚さが徐々に減少するとともに、コーティング層54がタイヤ層53から徐々に剥がれる。コーティング層54の摩耗がさらに進行すると、タイヤ部50の外周面50aにおいて、コーティング層54の色とは異なる色のタイヤ層53が露出する。点検作業者は、タイヤ部50の外周面50aにおいてタイヤ層53の露出を視認できた場合、追従ローラー20が寿命に達したと判断する。
【0044】
本実施の形態において、タイヤ層53は、第1層の一例である。コーティング層54は、第2層の一例である。本実施の形態によれば、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0045】
実施の形態3.
実施の形態3に係る乗客コンベアの踏段ローラーについて説明する。図6は、本実施の形態に係る乗客コンベアの踏段ローラーの構成を示す正面図である。図7は、図6のVII-VII断面を示す断面図である。本実施の形態では、踏段ローラーとして追従ローラー20が例示されている。ただし、本実施の形態は、駆動ローラーにも適用可能である。
【0046】
図6及び図7に示すように、タイヤ部50は、タイヤ層57及び埋込み部品55を有している。タイヤ層57は、追従ローラー20の径方向において、ボス部40よりも外側に設けられている。タイヤ層57は、ボス部40の形成材料よりも硬度の低い樹脂によって形成されている。
【0047】
埋込み部品55は、追従ローラー20の周方向の一部において、タイヤ部50及びボス部40に埋め込まれている。埋込み部品55は、円柱状の形状を有している。埋込み部品55の中心軸は、追従ローラー20の径方向に沿っている。埋込み部品55は、内層55a及び外層55bを有している。外層55bは、追従ローラー20の径方向において、内層55aよりも外側に配置されている。内層55a及び外層55bは、例えば、二層成形によって形成されている。
【0048】
外層55bは、例えば、タイヤ層57と同種の樹脂によって形成されている。追従ローラー20の径方向における外層55bの厚さは、追従ローラー20の径方向におけるタイヤ層57の厚さよりも薄くなっている。外層55bの厚さは、軸受30が寿命に達したときの外層55bの推定摩耗量に基づいて設定されている。外層55bの色は、タイヤ層57の色と同一である。
【0049】
外層55bの表面55b1は、タイヤ層57の外周面と概ね同一の円筒面を構成している。外層55bの表面55b1は、タイヤ部50の外周面50aの一部を構成している。タイヤ層57の外周面は、タイヤ部50の外周面50aの他の部分を構成している。すなわち、外層55bの表面55b1及びタイヤ層57の外周面は、タイヤ部50の外周面50aとなる。
【0050】
内層55aは、例えば、外層55bと同種の樹脂によって形成されている。内層55aの色は、外層55bの色とは異なっている。内層55aの色は、タイヤ層57の色とも異なっている。それ以外の構成は、実施の形態1と同様である。
【0051】
次に、追従ローラー20の製造方法について説明する。図8及び図9は、本実施の形態に係る乗客コンベアの踏段ローラーの製造工程を示す断面図である。
【0052】
まず、ボス部40及びタイヤ層57を有する追従ローラー20を形成する。タイヤ層57は、追従ローラー20の径方向においてボス部40よりも外側に形成される。
【0053】
次に、図8に示すように、タイヤ層57の一部に穴開け加工を施し、穴56を形成する。穴56は、追従ローラー20の径方向に沿って、タイヤ層57の外周面からボス部40にまで達するように形成される。穴56の開口形状は、円形である。
【0054】
また、図9に示すように、円柱状の埋込み部品55が形成される。埋込み部品55の内層55a及び外層55bは、二層成形により一体に形成される。内層55a及び外層55bは、別々に形成された後に互いに接着されてもよい。埋込み部品55の全体の厚さは、穴56の深さと同一である。
【0055】
外層55bは、タイヤ層57と同一の色に形成される。内層55aは、外層55b及びタイヤ層57とは異なる色に形成される。外層55bの厚さT1は、軸受30が寿命に達したときの外層55bの推定摩耗量に基づいて設定されている。
【0056】
次に、埋込み部品55を穴56に埋め込む。これらの工程を経て、図6及び図7に示した追従ローラー20が作製される。
【0057】
図10は、本実施の形態に係る乗客コンベアの踏段ローラーにおいてタイヤ部の摩耗が進行した状態を示す断面図である。図10の破線は、タイヤ部50が摩耗していない状態の外周面50aを表している。
【0058】
図10に示すように、タイヤ部50の摩耗が進行すると、埋込み部品55の外層55bがタイヤ層57よりも先に消失し、内層55aが露出する。これにより、タイヤ部50の外周面50aにおける埋込み部品55の色は、外層55bの色から内層55aの色に変化する。点検作業者は、タイヤ部50の外周面50aの一部において内層55aの露出を視認できた場合、追従ローラー20が寿命に達したと判断する。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態に係る乗客コンベアの踏段ローラーにおいて、タイヤ部50は、埋込み部品55を有している。埋込み部品55は、周方向の一部においてタイヤ部50に埋め込まれている。埋込み部品55は、内層55a及び外層55bを有している。ここで、内層55aは、第1層の一例である。外層55bは、第2層の一例である。すなわち、タイヤ部50は、周方向の一部において、第1層及び第2層を有している。
【0060】
この構成によれば、タイヤ部50の外周面50aにおいて内層55aが露出した場合、追従ローラー20が寿命に達したと判断することができる。内層55aの色は外層55bの色と異なっているため、外周面50aにおいて内層55aが露出したことは、点検作業者の経験及び感覚に依存せず、点検作業者が容易かつ客観的に判断できる。したがって、本実施の形態によれば、点検作業者の熟練度によらず、追従ローラー20の寿命を的確に判断することができる。
【0061】
本実施の形態のタイヤ部50は、埋込み部品55以外の部分にタイヤ層57を有している。内層55aの色は、タイヤ層57の色とも異なっている。したがって、外周面50aにおいて内層55aが露出しているか否かを点検作業者が容易に判断することができる。
【0062】
上記の各実施の形態は、互いに組み合わせて実施することが可能である。
【0063】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0064】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0065】
(付記1)
円環状の軸受と、
径方向において前記軸受よりも外側に設けられたタイヤ部と、
を備え、
前記タイヤ部は、周方向の少なくとも一部において、第1層と、前記径方向において前記第1層よりも外側に設けられた第2層と、を有しており、
前記第2層は、前記タイヤ部の外周面を構成しており、
前記第1層の色は、前記第2層の色と異なっている乗客コンベアの踏段ローラー。
(付記2)
前記タイヤ部は、埋込み部品を有しており、
前記埋込み部品は、前記周方向において前記タイヤ部の一部に埋め込まれており、
前記埋込み部品は、前記第1層及び前記第2層を有している付記1に記載の乗客コンベアの踏段ローラー。
(付記3)
前記第1層は、撥油性を有する材料により形成されている付記1又は付記2に記載の乗客コンベアの踏段ローラー。
(付記4)
前記第1層の色は蛍光色である付記1~付記3のいずれか一項に記載の乗客コンベアの踏段ローラー。
【符号の説明】
【0066】
10 踏段、12 踏板、13 ライザ、14 踏段ブラケット、14a 枠状部、16 追従ローラー軸、20 追従ローラー、21 中心軸、30 軸受、31 軸穴、32 シール部材、40 ボス部、50 タイヤ部、50a 外周面、51 内層(第1層)、52 外層(第2層)、53 タイヤ層(第1層)、54 コーティング層(第2層)、55 埋込み部品、55a 内層(第1層)、55b 外層(第2層)、55b1 表面、56 穴、57 タイヤ層、60 駆動ローラー、61 踏段軸、62 内側踏段チェーン、63 外側踏段チェーン、64 踏段ピン、T1 厚さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の軸受と、
径方向において前記軸受よりも外側に設けられたタイヤ部と、
を備え、
前記タイヤ部は、周方向の少なくとも一部において、第1層と、前記径方向において前記第1層よりも外側に設けられた第2層と、を有しており、
前記第2層は、前記タイヤ部の外周面を構成しており、
前記第1層の色は、前記第2層の色と異なっており、
前記タイヤ部は、埋込み部品を有しており、
前記埋込み部品は、前記周方向の一部において前記タイヤ部に埋め込まれており、
前記埋込み部品は、前記第1層及び前記第2層を有している乗客コンベアの踏段ローラー。
【請求項2】
前記第1層は、撥油性を有する材料により形成されている請求項に記載の乗客コンベアの踏段ローラー。
【請求項3】
前記第1層の色は蛍光色である請求項に記載の乗客コンベアの踏段ローラー。