(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181761
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、および半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10B 43/27 20230101AFI20231218BHJP
H10B 41/27 20230101ALI20231218BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H01L27/11582
H01L27/11556
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095084
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大理 知哉
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP01
5F083EP22
5F083EP76
5F083ER21
5F083GA10
5F083JA39
5F083MA06
5F083MA16
5F083MA19
5F083PR21
5F083PR22
5F101BA00
5F101BB02
5F101BD16
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH02
5F101BH13
(57)【要約】
【課題】長手方向に延びるボイドの発生を抑制しつつトレンチを充填すること。
【解決手段】実施形態の半導体装置の製造方法は、第1トレンチの一部を覆うようにマスク膜を形成することにより前記第1トレンチを長手方向に分割して1以上の第2トレンチを形成し、前記第2トレンチに第1絶縁膜を充填し、前記マスク膜を除去し、前記第1トレンチの全体を覆うように第2絶縁膜を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トレンチの一部を覆うようにマスク膜を形成することにより前記第1トレンチを長手方向に分割して1以上の第2トレンチを形成し、
前記第2トレンチに第1絶縁膜を充填し、
前記マスク膜を除去し、
前記第1トレンチの全体を覆うように第2絶縁膜を形成する、
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2トレンチの輪郭を構成する辺であって前記第1トレンチの幅方向の第1辺の長さが、前記第1トレンチの長手方向の第2辺の長さ以上となるように前記マスク膜を形成する、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1絶縁膜または前記第2絶縁膜のうち少なくともいずれかはALD法により形成される、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
複数の第1絶縁層と複数の第2絶縁層とを1層ずつ交互に積層した積層体を形成し、
前記積層体に第1トレンチを形成し、
前記第1トレンチの一部を覆うようにマスク膜を形成することにより前記第1トレンチを長手方向に分割して1以上の第2トレンチを形成し、
前記第2トレンチに第1絶縁膜を充填し、
前記マスク膜を除去し、
前記第1トレンチの全体を覆うように第2絶縁膜を形成する、
半導体装置の製造方法。
【請求項5】
絶縁膜が充填されたトレンチと、
前記トレンチにおいて前記絶縁膜内を前記トレンチの深さ方向に延び、前記トレンチの長手方向に沿って複数配列される空隙と、
を備える、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法、および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレンチに埋め込まれた所定膜にコンタクト等の加工がなされた半導体装置がある。トレンチのアスペクト比が高くなると、所定膜の埋め込み性が低下し、その結果として、トレンチの長手方向に延びるボイドが発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-181844号公報
【特許文献2】特開2013-118258号公報
【特許文献3】特開2000-174018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、長手方向に延びるボイドの発生を抑制しつつトレンチを充填することが可能な半導体装置の製造方法および半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体装置の製造方法は、第1トレンチの一部を覆うようにマスク膜を形成することにより前記第1トレンチを長手方向に分割して1以上の第2トレンチを形成し、前記第2トレンチに第1絶縁膜を充填し、前記マスク膜を除去し、前記第1トレンチの全体を覆うように第2絶縁膜を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態にかかる半導体装置の概略の構成例を示す図。
【
図2】実施形態にかかる半導体装置の詳細の構成例を示す図。
【
図3】実施形態にかかる半導体装置の製造方法の手順の一部を順に例示する図。
【
図4】実施形態にかかる半導体装置の製造方法の手順の一部を順に例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0008】
(半導体装置の構成例)
図1は、実施形態にかかる半導体装置1の概略の構成例を示す図である。
図1(a)は半導体装置1のX方向に沿う断面図であり、
図1(b)は半導体装置1のレイアウトを示す模式的な平面図である。ただし、
図1(a)においては図面の見やすさを考慮してハッチングを省略する。また、
図1(a)においては一部の上層配線が省略されている。
【0009】
なお、本明細書において、X方向及びY方向はともに、後述するワード線WLの面の向きに沿う方向であり、X方向とY方向とは互いに直交する。
【0010】
図1に示すように、半導体装置1は、基板SB上に、周辺回路CUA、メモリ領域MR、貫通コンタクト領域TP、及び階段領域SRを備える。
【0011】
基板SBは、例えばシリコン基板等の半導体基板である。基板SB上にはトランジスタTR及び配線等を含む周辺回路CUAが配置されている。周辺回路CUAは、後述するメモリセルの動作に寄与する。
【0012】
周辺回路CUAは絶縁層50で覆われている。絶縁層50上にはソース線SLが配置されている。ソース線SL上には複数のワード線WLが積層されている。複数のワード線WLは絶縁膜49で覆われている。絶縁膜49は、複数のワード線WLの周囲にも広がっている。
【0013】
複数のワード線WLには、ワード線WLを積層方向に貫通し、かつ、X方向に沿う方向に延びる複数の板状コンタクトLIが配置されている。これにより、複数のワード線WLは、複数の板状コンタクトLIによってY方向に分割される。
【0014】
複数の板状コンタクトLIの間には、複数のメモリ領域MR、階段領域SR、及び貫通コンタクト領域TPが、互いにX方向に並んで配置されている。複数のメモリ領域MRは、階段領域SR及び貫通コンタクト領域TPを間に挟み、互いにX方向に離れて配置されている。
【0015】
メモリ領域MRには、ワード線WLを積層方向に貫通する複数のピラーPLが配置されている。ピラーPLとワード線WLとの交差部には複数のメモリセルが形成される。これにより、半導体装置1は、例えばメモリ領域MRにメモリセルが3次元に配置された3次元不揮発性メモリとして構成される。
【0016】
階段領域SRは、複数のワード線WLが積層方向に擂り鉢状に掘り下げられた階段部SPを含む。
【0017】
階段部SPは、X方向の両側及びY方向の一方側から底面に向かって階段状に下降していく擂り鉢状の形状の一辺をなす。
【0018】
階段部SPの各段は、各階層のワード線WLにより構成される。各階層のワード線WLは、階段部SPを介して、階段領域SRを挟んだX方向両側で電気的な導通を保っている。階段部SPの各段のテラス部分には、各階層のワード線WLと上層配線MXとを接続するコンタクトCCがそれぞれ配置される。
【0019】
これにより、多層に積層されるワード線WLを個々に引き出すことができる。これらのコンタクトCCからは、X方向両側のメモリ領域MR内のメモリセルに対し、そのメモリセルと同じ高さ位置のワード線WLを介して書き込み電圧及び読み出し電圧等が印加される。
【0020】
なお、本明細書においては、階段部SPの各段のテラス面が向いた方向を上方向と規定する。
【0021】
階段領域SRのX方向の一方側には、貫通コンタクト領域TPが配置される。貫通コンタクト領域TPには、複数のワード線WLを貫通する貫通コンタクトC4が配置されている。貫通コンタクトC4は、下方の基板SB上に配置された周辺回路CUAと、階段部SPのコンタクトCCに接続される上層配線MXとを接続する。コンタクトCCからメモリセルに印加される各種電圧は、貫通コンタクトC4及び上層配線MX等を介して周辺回路CUAにより制御される。
【0022】
次に、
図2を用いて、半導体装置1の詳細の構成例について説明する。
図2は、実施形態にかかる半導体装置1の詳細の構成例を示す図である。
【0023】
【0024】
図2(b)は、
図2(a)のa-a’線における階段領域SRの断面図である。
図2(c)は、
図2(a)のb-b’線における階段領域SRの断面図である。
図2(d)は、
図2(a)のc-c’線における階段領域SRの断面図である。
図2(e)は、
図2(a)のd-d’線における階段領域SRの断面図である。
図2(f)は、
図2(a)のe-e’線における階段領域SRの断面図である。
【0025】
ただし、
図2においては、絶縁層50、及び上層配線MX等が省略されている。また、
図2(a)においては、説明の便宜上、階段部SP、SPf、及びSPsのように、上面から見た場合に必ずしも視認することができない構成も描かれているものとする。
【0026】
図2(b)~(f)に示すように、半導体装置1は、ソース線SL上に配置される積層体LMを備える。
【0027】
積層体LMは、タングステン層またはモリブデン層等のワード線WLと、SiO2層等の絶縁層OLとが1層ずつ交互に複数積層された構成を有する。
【0028】
第1トレンチとしての階段領域SRは、積層体LMが積層方向に擂り鉢状に掘り下げられた形状を有している。階段領域SRは、X方向に長手方向を有する。
【0029】
階段領域SRには、階段部SP、SPf、SPsが配置されている。階段部SP、SPf、SPsはそれぞれ、複数のワード線WL及び複数の絶縁層OLが階段状に加工された形状を有する。
【0030】
これらの階段部SP、SPf、SPsのうち、階段部SPは複数のワード線WLを上層配線MXに電気的に引き出す機能を有する。一方、階段部SPs、及び階段部SPfは、半導体装置1の機能に寄与しないダミーの階段部である。
【0031】
階段部SPは、
図1のメモリ領域MRから離れた貫通コンタクト領域TP寄りの位置でX方向に延び、メモリ領域MRに近づく方向に向かって降段していく。階段部SPfは、
図1のメモリ領域MR寄りの位置で階段部SPと対向するようにX方向に延び、階段部SPに近づく方向に向かって降段していく。
【0032】
階段部SPsは、階段部SP、SPfの間のY方向両側に配置される。個々の階段部SPsは、
図1のY方向に隣接する板状コンタクトLIにそれぞれ近接する位置でY方向に延び、もう一方側の板状コンタクトLIに近づく方向に向かって降段していく。
【0033】
このように階段部SP、SPf、SPsが配置されることで、階段領域SRでは、積層体LMが擂り鉢状に窪んだ形状となっている。
【0034】
階段領域SRには、階段部SP、SPf、SPsの上面を覆うように、第1絶縁膜としての絶縁膜61、及び第2絶縁膜としての絶縁膜62が配置されている。絶縁膜61及び絶縁膜62は、積層体LMの上面の高さまで形成される。
【0035】
絶縁膜61及び絶縁膜62は、階段領域SRをX方向に分割するようにY方向に沿って延び、階段領域SR内に交互に充填されている。絶縁膜61及び絶縁膜62は、生産性の観点からCVD(Chemical Vapor Deposition)法等により形成される。絶縁膜61及び絶縁膜62には、例えばTEOS(Tetra-Ethyl Ortho-Silicate)膜等のSiO2膜が用いられる。
【0036】
ここで、階段領域SR内に交互に充填された絶縁膜61及び絶縁膜62のそれぞれを、絶縁膜61A~61C及び絶縁膜62A~62Dと区別して称する。また、絶縁膜61A~61C及び絶縁膜62A~62Dを特に区別しない場合は、絶縁膜61、絶縁膜62と称する。
【0037】
絶縁膜61A~61Cのそれぞれは、絶縁膜62B~62Cのそれぞれを間に挟み、互いにX方向に離れて配置される。絶縁膜61A~61CのY方向の幅Y1は、X方向の幅X61A~X61C以上であることが好ましい。
【0038】
絶縁膜62A~62Dのそれぞれは、絶縁膜61A~61Cのそれぞれを間に挟み、互いにX方向に離れて配置される。絶縁膜62A~62DのY方向の幅Y1は、X方向の幅X62A~X62D以上であることが好ましい。
【0039】
絶縁膜61及び絶縁膜62の上面は、絶縁層52で覆われている。なお、絶縁層52、絶縁膜61、及び絶縁膜62は、それぞれ
図1(a)の絶縁膜49の一部分を構成する。
【0040】
コンタクトCCは絶縁層52、及び絶縁膜61または絶縁膜62を深さ方向に貫通し、階段部SPの各段を構成するワード線WLに接続されている。図示はしないが、コンタクトCCは、積層体LMの深さ方向に延び、ワード線WLに接続される金属層を備える。また、図示はしないが、コンタクトCCは、金属層のライナ層となる絶縁層を備えていてもよい。
【0041】
コンタクトCC周辺及び階段部SPの各段のテラス部分が絶縁膜61及び絶縁膜62で覆われることにより、コンタクトCC間のリーク電流の発生が抑制される。
【0042】
ところで、絶縁膜61及び絶縁膜62には、階段領域SRの深さ方向に延びる空隙としての空孔71及び72がX方向に沿って複数配列されている場合がある。
【0043】
空孔71は、絶縁膜61A~61Cの少なくともいずれかにおいて、XY方向の中央付近に形成されることがある。空孔71は、例えば、上面から見ると略正円のピンホール様、またはY方向に長辺を有するスリット様である。
【0044】
空孔72は、絶縁膜62A~62Dの少なくともいずれかにおいて、XY方向の中央付近に形成されることがある。空孔72は、例えば、上面から見ると略正円のピンホール様、またはY方向に長辺を有するスリット様である。
【0045】
なお、空孔71及び72は必ずしも形成されていなくともよい。
【0046】
また、
図2においては、図面の見やすさを考慮して絶縁膜61及び絶縁膜62に異なるハッチングを施して示しているが、実際の半導体装置1において、絶縁膜61及び絶縁膜62のそれぞれは区別して認識できなくともよい。絶縁膜61及び絶縁膜62には、例えば同種の材質が用いられるからである。
【0047】
(半導体装置の製造方法)
次に、
図3及び
図4を用いて、実施形態の半導体装置1の製造方法の例について説明する。
図3及び
図4は、実施形態にかかる半導体装置1の製造方法の手順の一部を順に例示する図である。
【0048】
なお、
図3及び
図4に示す処理の前に、基板SB上に周辺回路CUAが形成され、周辺回路CUAを覆う絶縁層50が形成済みであるものとする。
【0049】
図3及び
図4の(A)~(F)は、順次、処理が進んでいく様子を示している。
図3及び
図4の(A)~(F)にaが付された図は、その処理における階段領域SRの上面図である。
図3及び
図4の(A)~(F)にb~dが付された各図は、aが付された図におけるa-a’線の断面図、b-b’線の断面図、及びc-c’線の断面図である。
【0050】
なお、
図3(Ba)、(Ca)、
図4(Da)、(Ea)、(Fa)においては、説明の便宜上、階段部SP、SPf、及びSPsのように、上面から見た場合に必ずしも視認できない構成も描かれているものとする。
【0051】
半導体装置1の製造方法においては、絶縁層50上に、ソース線SLを形成する。ソース線SLは、例えばポリシリコン層等である。そして、ソース線SL上に積層体LMsを形成する。
【0052】
積層体LMsは、SiN層等の第1絶縁層としての絶縁層NLと、SiO2層等の第2絶縁層としての絶縁層OLとが1層ずつ交互に複数積層された構成を有する。絶縁層NLは、後に導電材料等に置き換えられてワード線WLとなる犠牲層として機能する。このような積層体LMsの一部領域において、絶縁層NLと絶縁層OLとを階段状に掘り下げて、階段領域SRが形成される。
【0053】
図3(A)に示すように、階段領域SRの一部を覆うようにマスク膜としてのマスクパターン100を形成する。具体的には、スピンコーティング法によって積層体LMs上にレジスト膜を全面塗布する。これにより階段領域SRにレジスト膜が充填される。そして階段領域SRに所定の露光・現像処理を施すことにより、マスクパターン100が形成される。
【0054】
マスクパターン100は、階段領域SRのY方向の幅全体を覆って、Y方向に延びるラインパターンである。Y方向に延びるマスクパターン100が、階段領域SRに跨って形成され、階段領域SRのY方向側の両端から突出するように延びていてもよい。マスクパターン100が階段領域SRの一部を覆うことにより階段領域SRがX方向に分割され、第2トレンチとしてのトレンチ110が1つ以上形成される。なお、マスクパターン100のX方向の幅X100が、階段領域SRのY方向の幅Y1未満となるようにマスクパターン100の寸法を調整するとよい。
【0055】
トレンチ110は、第1辺として階段領域SRのY方向の幅Y1と、階段領域SRのX方向が分割されて形成された第2辺としての幅X110とからその輪郭が構成される。例えばマスクパターン100の寸法が上記のように調整されることで、トレンチ110のX方向の幅X110が、階段領域SRのY方向の幅Y1未満となっていることが好ましい。
【0056】
また、
図3(A)に示した例では、4本のマスクパターン100によって3つのトレンチ110が形成されているが、この例に限定されない。マスクパターン100、及び形成されるトレンチ110の数は、階段領域SRのXY方向の寸法に応じて任意に変更することができる。例えば、マスクパターン100を階段領域SRのX方向中央に1本配置することによって階段領域SRのX方向両側に2つのトレンチ110を形成することができる。また例えば、マスクパターン100を階段領域SRのX方向両側に1本ずつ2本配置することによって階段領域SRのX方向中央に1つのトレンチ110を形成することができる。上記のように、マスクパターン100及びトレンチ110のX方向の幅X100,X110が、階段領域SRのY方向の幅Y1未満となるよう、階段領域SRのX方向の幅がY方向の幅に比べて長くなるほど、マスクパターン100及びトレンチ110の数を増やしていくことが好ましい。
【0057】
図3(B)及び
図3(C)に示すように、トレンチ110内に充填され、さらにマスクパターン100が形成された積層体LMsの上面全体を覆う絶縁膜61を形成する。
【0058】
具体的には、
図3(B)に示すように、当初、絶縁膜61は、階段部SP、SPf、SPsの上面上、トレンチ110のX方向に延びる側壁上、及びマスクパターン100のY方向に延びる側壁上に堆積されていく。また、絶縁膜61は、マスクパターン100の上面上にも堆積される。
【0059】
図3(C)に示すように、絶縁膜61が上記各部に堆積していき所定膜厚に達すると、トレンチ110の中央付近に空孔71が形成される場合がある。上記のように、絶縁膜61は、トレンチ110のX方向に延びる側壁と、マスクパターン100のY方向に延びる側壁の両方側から徐々に膜厚を増して形成される。そのため、トレンチ110のような一定の閉じられた領域では、絶縁膜61の形成に伴い、トレンチ110の中央付近の未充填の領域が徐々に小さくなる。CVD法では、原料ガスからなる反応物質が堆積面の表面に吸着することで成膜が進むため、未充填の領域が小さくなると、原料ガスが入り込めず、トレンチ110が完全に充填されづらくなる。このようにして空孔71が形成される。
【0060】
空孔71は、トレンチ110の形状に応じた形状を有する。例えば、トレンチ110の幅X110と、幅Y1とが略等しい場合には、空孔71はピンホール様となり、幅X110が幅Y1より小さくなるに従い、空孔71はY方向に長辺を有するスリット様になりやすい。CVD法では、堆積面に対して略均一に成膜が進むためである。
【0061】
また、このような空孔71は、階段領域SRの深さ方向に延びている場合もある。例えば、トレンチ110の幅Y1に対して階段領域SRの深さが深い場合、即ちアスペクト比が高い場合には、階段領域SRの深さ方向に原料ガスが入り込みづらいからである。
【0062】
図4(D)に示すように、マスクパターン100の上面を含む積層体LMs上面に形成された絶縁膜61をエッチバックする。これにより、マスクパターン100及び積層体LMsの上面が露出し、トレンチ110に充填された絶縁膜61が個々に分離される。
【0063】
図4(E)に示すように、アッシング及びSH処理等によってマスクパターン100を除去する。マスクパターン100が除去された部分に、トレンチ120が形成される。
【0064】
ここで、絶縁膜61及びトレンチ120が形成された積層体LMsを熱処理してもよい。これにより絶縁膜61が緻密化され、空孔71を縮小させることができる。
【0065】
図4(F)に示すように、トレンチ120に充填され、さらに絶縁膜61が形成された積層体LMsの上面全体を覆う絶縁膜62を形成する。
【0066】
具体的には、絶縁膜62は、階段部SP,SPf,SPsの上面上、トレンチ120のX方向に延びる側壁上、及び絶縁膜61のY方向に延びる側壁上に堆積されていく。また、絶縁膜62は、絶縁膜61の上面上にも堆積されていく。
【0067】
絶縁膜62が上記各部に堆積していき所定膜厚に達すると、トレンチ120の中央付近に空孔72が形成される場合がある。上記のように、絶縁膜62は、トレンチ120のX方向に延びる側壁及び絶縁膜61のY方向に延びる側壁の両方側から徐々に膜厚を増して形成される。そのため、トレンチ120のような一定の閉じられた領域では、絶縁膜62の形成に伴い、トレンチ120の中央付近の未充填の領域が徐々に小さくなる。すると、未充填の領域の細部に原料ガスが入り込めず、トレンチ120が完全に充填されづらくなる。このようにして空孔72が形成される。
【0068】
空孔72は、トレンチ120の形状に応じた形状を有する。例えば、トレンチ120の幅X120と、幅Y1とが略等しい場合には、空孔72はピンホール様となり、トレンチ120の幅X120が幅Y1より小さくなるに従い、空孔72はY方向に長辺を有するスリット様になりやすい。
【0069】
このような空孔72は、階段領域SRの深さ方向に延びている場合もある。アスペクト比が高い場合には、階段領域SRの深さ方向に原料ガスが入り込みづらいからである。
【0070】
また、絶縁膜62の形成の際に、絶縁膜61に形成された空孔71の一部または全部が、絶縁膜62によって充填される場合もある。
【0071】
なお、本実施形態において、絶縁膜61または絶縁膜62はCVD法により形成されるものとして説明したが、成膜方法はこれに限定されない。絶縁膜61または絶縁膜62のうち少なくともいずれかがALD(Atomic Layer Deposition)法により形成されてもよい。ALD法では、原子層レベルで成膜が進むため、CVD法と比較して緻密な膜の形成が可能である。ALD法によれば、階段領域SRに対して絶縁膜61及び絶縁膜62をさらに緻密に充填することができる。
【0072】
また、図示はしないが、積層体LMsの上面、及び絶縁膜61及び62の上面には、これらを覆う絶縁層52がさらに形成される。
【0073】
また、積層体LMsにおいて、所定の手法によりピラーPLを形成する。なお、ピラーPLは、階段領域SRの形成前に形成されてもよいものとする。また、積層体LMsの絶縁層NLをワード線WLに置換し積層体LMを形成する。
【0074】
積層体LMにおいて、階段部SPの各段を構成するワード線WLにそれぞれ到達する複数のコンタクトCCを形成する。
【0075】
コンタクトCCの形成後、あるいは、コンタクトCCの形成に先駆けて、貫通コンタクト領域TPに貫通コンタクトC4を形成する。また、貫通コンタクトC4の形成前あるいは形成時のタイミングで板状コンタクトLIを形成する。そして、貫通コンタクトC4、板状コンタクトLI、及びコンタクトCCに上層配線MXを接続し、ピラーPLに図示しないビット線等を接続する。
【0076】
以上により、実施形態の半導体装置1が製造される。
【0077】
(比較例)
次に、
図5~6を用いて、比較例の半導体装置の製造方法について説明する。
図5~6は、比較例の半導体装置の構成例を示す図である。
【0078】
図5(a)は、比較例の絶縁膜63が充填された階段領域SRcの上面図である。
図5(b)は、
図5(a)のa-a’線における階段領域SRcの断面図である。
図5(c)は、
図5(a)のb-b’線における階段領域SRcの断面図である。
【0079】
図5に示すように、階段領域SRcに絶縁膜63を充填すると、X方向及び階段領域SRcの深さ方向に延びるスリット様のボイドQが形成される場合がある。ボイドQは、階段領域SRcのアスペクト比が、例えば0.7以上と高いほど階段領域SRcの深さ方向に形成されやすく、また、階段領域SRcがX方向に長いほどX方向に長く形成されやすい。
【0080】
ボイドQは、絶縁膜63等にクラックを生じさせる場合がある。
図6(Aa)に示すように、絶縁膜63が充填された積層体LMsに所定の熱処理がなされると、熱により絶縁膜63が収縮する。また、絶縁膜63には引張り応力が生じやすく、一方、異種層の積層構造である積層体LMsは圧縮応力を生じさせ易い。その結果、絶縁膜63にはY方向の両側へと向かう応力が加わり、ボイドQの上下端を起点として階段領域SRcの深さ方向、及び
図5(a)のX方向に広範囲のクラックが発生する。
【0081】
このようなクラックの発生により、電気的なショートが誘発される場合がある。例えば、
図6(Ab)に示すように、コンタクトCCの接続対象となるワード線WLのさらに下層のワード線WLまでクラックが到達している場合、コンタクトCC形成時に、コンタクトCCの金属層が下層のワード線WLまで形成されることがある。これにより上下層のワード線WLで電気的なショートが発生する。
【0082】
また、このようなクラック及びボイドQの発生により、コンタクトCCの加工精度が低下する場合がある。
図6(B)に示すように、絶縁膜63内部にボイドQが形成されている場合、ボイドQが形成されている場所とされていない場所とでエッチングレートに差異が生じるからである。例えば、コンタクトCC形成時のコンタクトホールHcの加工の際に、ボイドQが形成されている場所ではエッチングレートが速くなる。そのため、後にコンタクトCCの接続対象となる階層の絶縁層NLを貫通して、下層の絶縁層NLにコンタクトホールHcが到達してしまうことがある。このような場合にも、コンタクトCC形成の際に、コンタクトCCの金属層が下層のワード線WLまで形成され、上下層のワード線WLで電気的なショートが発生することがある。
【0083】
実施形態の半導体装置1の製造方法によれば、階段領域SRの一部を覆うようにマスクパターン100を形成することにより階段領域SRをX方向に分割して1以上のトレンチ110を形成する。そして、トレンチ110に絶縁膜61を充填し、マスクパターン100を除去し、階段領域SRの全体を覆うように絶縁膜62を形成する。これにより、X方向に延びるスリット様のボイドQの発生を抑制しつつ階段領域SRを充填することができる。
【0084】
実施形態の半導体装置1の製造方法によれば、トレンチ110の輪郭を構成する辺であって階段領域SRの幅方向の幅Y1が、トレンチ110のX方向の幅X100以上となるようにマスクパターン100を形成する。これにより、トレンチ110の中央部に空孔71が形成されたとしても、空孔71は、略正円あるいはY方向に長辺を有するスリット様となる。これによりX方向に延びるスリット様のボイドQの発生を抑制することができる。
【0085】
実施形態の半導体装置1の製造方法によれば、絶縁膜61または絶縁膜62のうち少なくともいずれかはALD法により形成される。即ち、絶縁膜61及び絶縁膜62のうち、絶縁膜61のみをALD法で形成してもよく、または絶縁膜62のみをALD法で形成してもよい。またあるいは、絶縁膜61及び絶縁膜62のいずれもALD法で形成してもよい。これにより、絶縁膜61のみをALD法で形成した場合には少なくとも空孔71の形成が抑制される。また、絶縁膜62のみをALD法で形成した場合には空孔72の形成が抑制されるとともに、絶縁膜61の空孔71が絶縁膜62により充填されやすくなる。また、絶縁膜61及び絶縁膜62のいずれもALD法で形成した場合には空孔71及び空孔72のいずれの形成も抑制することができる。このように絶縁膜61または絶縁膜62のうち少なくともいずれかをALD法により形成することでさらに緻密に階段領域SRを充填することができる。
【0086】
(変形例)
上述の実施形態では、マスクパターン100等のレジスト膜によって階段領域SRの少なくとも一部を覆いX方向に分割させることとしたが、マスクパターン100の材質はこれに限定されない。例えば、感光性を有していない有機膜で階段領域SRを覆ってもよい。この場合、まず階段領域SRに有機膜を埋め込み、有機膜の上層にレジスト膜を形成し、当該レジスト膜をマスクにして有機膜をエッチングし、マスクパターン100を形成すればよい。有機膜は、埋め込み性を考慮してスピンコーティング法で成膜されることが好ましい。
【0087】
上述の実施形態では、階段領域SRを有する半導体装置1を例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば、所定膜が埋め込まれたトレンチを有する半導体装置の構成にも適用可能である。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1 半導体装置、61、62 絶縁膜、71、72 空孔、100 マスクパターン、110、120 トレンチ、LM、LMs 積層体、NL、OL 絶縁層、SR 階段領域。