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特開2023-181762避難支援装置、避難支援方法および避難支援システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181762
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】避難支援装置、避難支援方法および避難支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 27/00 20060101AFI20231218BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G08B27/00 A
G08B17/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095085
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヤン インジャ
(72)【発明者】
【氏名】厚沢 輝佳
(72)【発明者】
【氏名】野中 久典
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 匡
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C087AA05
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA19
5C087AA25
5C087AA32
5C087AA37
5C087BB20
5C087DD02
5C087DD04
5C087DD20
5C087DD23
5C087EE14
5C087EE20
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087FF16
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG82
5C087GG84
5G405BA08
5G405CA28
5G405CA60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】災害発生時、ビル内で在館者の個人属性を考慮し、障がい者など支援が必要となる要支援者を優先的に避難させる避難支援装置、方法及びシステムを提供する。
【解決手段】災害が発生した場合に、施設内の在館者の避難を支援するビル内避難支援システムにおいて、避難支援装置100は、施設に関係する災害の程度を特定し、在館者の状態を特定する現状特定部2と、避難に関係する避難関係者に対して提供する情報提供端末である情報出力部4に、在館者うち、属性が要支援者である要支援者に対する優先案内を含む発信情報を発信する避難情報算出部3と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害が発生した場合に、施設内の在館者の避難を支援するための避難支援装置において、
前記施設に関係する災害の程度を特定し、前記在館者の状態を特定する現状特定部と、
前記避難に関係する避難関係者に対して提供する情報提供端末に、前記在館者うち、属性が要支援者である要支援者に対する優先案内を含む発信情報を発信する情報発信部を有する避難支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の避難支援装置において、
さらに、前記在館者が要支援者かを示す属性を含む在館者情報を記憶する記憶部を有し、
前記情報発信部は、前記在館者情報を用いて発信情報を算出する避難支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の避難支援装置において、
前記情報発信部は、さらに前記発信情報の通知時間を算出し、前記発信情報および前記通知時間を発信することで、
前記情報提供端末は、前記通知時間に前記発信情報を提供する避難支援装置。
【請求項4】
請求項2に記載の避難支援装置において、
前記記憶部は、前記施設で発生する可能性のある災害に対する対応を示す災害対応情報を記憶し、
前記情報発信部は、現状特定部で特定した災害情報と前記災害対応情報を用いて、前記発信情報を算出する避難支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の避難支援装置において、
在館者の避難経路を算出する避難経路算出部を備え
前記記憶部は、前記施設内の状況を示すマップ情報を記憶し、
前記現状特定部は、災害の発生位置および在館者の位置を特定し、
前記避難経路算出部は、前記マップ情報および前記現状特定部で特定した災害の発生位置、在館者の位置を用いて、在館者の避難経路を算出し、
前記情報発信部は、前記避難経路を含む発信情報を発信する避難支援装置。
【請求項6】
請求項5に記載の避難支援装置において、
前記記憶部は、前記マップ情報として、前記施設の設備の配置を示す設備マップを記憶し、
前記避難経路算出部は、前記設備マップおよび前記現状特定部で特定した災害の発生位置、在館者の位置を用いて、在館者の避難経路を算出する避難支援装置。
【請求項7】
請求項5に記載の避難支援装置において、
前記記憶部は、一次避難所の位置を記憶し、
前記避難経路算出部は、避難に必要な避難時間を算出し、前記避難時間および
前記現状特定部で特定した災害位置、在館者の属性および位置を含む在館者情報から一次避難所の利用可否を判定し、
利用可の場合には、前記一次避難所を利用する避難経路を算出する避難支援装置。
【請求項8】
請求項1に記載の避難支援装置において、
前記優先案内には、通知の優先、時間の優先および空間の優先の少なくとも一つが含まれる避難支援装置。
【請求項9】
災害が発生した場合に、施設内の在館者の避難を支援するための避難支援システムを用いた避難支援方法において、
前記施設に関係する災害の程度を特定し、前記在館者の状態を特定し、
前記在館者うち、属性が要支援者である要支援者に対する優先案内を含む発信情報を発信し、
情報提供端末が、前記避難に関係する避難関係者に対して、発信された前記発信情報を提供する避難支援方法。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れかに記載の避難支援装置と、
前記情報提供端末を有する避難支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル等の施設での避難を支援するための技術に関する。この中でも特に、要支援者を考慮した避難支援に関する。
【背景技術】
【0002】
災害発生時において、人が避難するための避難経路を、ネットワークを介して、無線端末に災害情報と避難情報を送信する装置がある。しかし、人の属性によって、避難する能力、速度、通過可能な路線は異なっている。そこで、特許文献1には、個人の位置情報、属性情報、通路情報、災害情報に基づいて個人に対する最適な路線を算出し、無線端末により報知させる避難誘導装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-004213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、避難経路の計算についてのみ避難者の障がい者などの個人属性を考慮している。このため、避難者の障がいの程度や種類などにより、適切な災害通知方法といった支援の具体的な内容が異なる。
【0005】
また、障がい者と健常者が同時に避難する場合、避難速度の相違や避難人数の増加により、避難経路が混雑する可能性がある。このため、障がい者など避難能力が低い方の避難は阻害され、避難しにくい。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、個人属性により、適切な避難支援を実現することを目的とする。特に、障がい者など支援が必要となる要支援者が、優先的に避難するように誘導する
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明では、障がい者など支援が必要となる要支援者に対して、優先案内を実行する。
【0008】
より具体的には、災害が発生した場合に、施設内の在館者の避難を支援するための避難支援装置において、前記施設に関係する災害の程度を特定し、前記在館者の状態を特定する現状特定部と、前記避難に関係する避難関係者に対して提供する情報提供端末に、前記在館者うち、属性が要支援者である要支援者に対する優先案内を含む発信情報を発信する情報発信を有する避難支援装置、この避難支援装置を用いた避難支援方法たこの避難支援装置を含む避難支援システムである。
【0009】
また、本発明には、避難支援装置ないし避難支援システムを用いた方法、さらに、避難支援装置をコンピュータとして機能させるプログラムならびにこれを格納した記憶媒体も本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、施設内で在館者の個人属性を考慮した避難支援を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態におけるビル内避難支援システムの全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態における避難情報算出処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態における避難経路算出処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態におけるマップ情報に含まれる災害ポテンシャルマップを示す図である。
図5】本発明の実施形態におけるマップ情報に含まれる設備マップを示す図である。
図6A】本発明の一実施形態における要支援者の避難経路を示す図(その1)である。
図6B】本発明の一実施形態における要支援者の避難経路を示す図(その2)である。
図6C】本発明の一実施形態における要支援者の避難経路を示す図(その3)である。
図6D】本発明の一実施形態における要支援者の避難経路を示す図(その4)である。
図7】本発明の一実施形態における要支援者の優先的な避難を説明するための図である。
図8A】本発明の一実施形態における要支援者の優先的な避難を実現する要支援者の避難者端末の画面を示す図である。
図8B】本発明の一実施形態における要支援者の周りにいる健常者の避難者端末の画面を示す図である。
図9】本発明の一実施形態における救援呼び出しを行っている避難者端末の画面を示す図である。
図10A】本発明の一実施形態で用いられる災害対応情報を示す図である。
図10B】本発明の一実施形態で用いられる在館者情報を示す図である。
図10C】本発明の一実施形態で用いられる設備情報を示す図である。
図11】本発明の一実施形態における状態検知装置として用いられるデバイスを説明するための図である。
図12】本発明の一実施形態における災害の程度やこれに応じた必要な支援、避難の要否の判断基準を示す図である。
図13】本発明の一実施形態における避難経路の算出を説明するための図である。
図14】本発明の一実施形態における避難支援装置のハードウエア構成を含むシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、施設として複数階を有するビルを一例として説明する。以下では、本発明の避難支援システムの一例として、ビル内避難支援システムを例示する。図1は、本実施形態におけるビル内避難支援システムの全体構成図である。
【0013】
図1に示すように、ビル内避難システムは、情報登録部1、現状特定部2、避難情報算出部3および情報出力部4から構成される。まず、情報登録部1は、災害対応情報登録機能11、在館者情報登録機能12および設備情報登録機能13を有する。また、現状特定部2は、災害状態特定機能21、在館者状態特定機能22および設備状態特定機能23を有する。また、避難情報算出部3は、災害程度算出機能31、障がい者などが必要な支援を算出する必要支援算出機能32、避難経路算出機能33および発信情報算出機能34を有する。なお、これらの各機能については、追って説明する。なお、ビル内避難システムには、後述する各種情報を記憶する記憶部を有することが望ましい。
【0014】
そして、情報出力部4は、避難情報算出部3から算出した内容である発信情報を受け付け、これを出力する。また、情報出力部4は、避難者端末41、救援者端末42、館内発信端末43など各種端末で実現できる。これら情報出力部4は、携帯電話、スマートフォン、表示モニタ等各種装置で実現できる。以上のように、情報出力部4は、在館者、救援支援者、要支援者といった避難に関係する避難関係者に対して、音声や文字、画像など出力形式を問わず発信情報を提供する。このため、情報出力部4は、情報提供端末とも表現できる。なお、避難関係者には、消防局員など在館者以外を含めてもよい。
【0015】
ここで情報登録部1、現状特定部2および避難情報算出部3が、本実施形態における避難支援装置100を構成することになる。これは、サーバといったコンピュータで実現できる。以下、避難支援装置100をコンピュータで実現した場合のハードウエア構成について説明する。
【0016】
図14は、本実施形態における避難支援装置100のハードウエア構成を含むシステム構成図である。図14に示すように、避難支援装置100は、ネットワーク80を介して、情報出力部4である避難者端末41、救援者端末42、館内発信端末43と接続する。また、避難支援装置100は、在館者が利用するICカード51やICカードリーダ52、火災検知器61、カメラ62、レーザセンサ63、エレベータ70および気象情報提供システム90ともネットワーク80を介して接続される。
【0017】
ここで、ICカード51やICカードリーダ52は、在館者により利用され、在館者情報109を登録するために用いられる。このため、ICカードリーダ52は、ビルや各居室の出入口などに設置される。つまり、ICカードリーダ52は、在館者の入退出の際に、ICカード51から在館者に関する情報を読み取る。なお、ICカード51やICカードリーダ52は、在館者情報109を登録するための在館者情報登録装置の一例であり、他にログインを受け付ける端末装置や、避難者端末41を用いて在館者情報109を登録してもよい。
【0018】
また、火災検知器61は、ビルに設けられ、火災の発生を検知する。図では火災検知器61を1つ記載しているが、複数設けることが望ましい。また、火災検知器61は、災害状態を検知する災害状態検知装置の一例であり、他に地震計、津波・水害等を検知する水位計、サーモカメラ、カメラを用いてもよい。なお、本実施形態における災害とは、二次災害も含む広い概念である。
【0019】
また、カメラ62は、ビル内の在館者の状態を検知する。この状態には、その位置、姿勢を用いることができる。さらに、カメラ62は、在館者状態検知装置の一例であり、避難者端末41(のGPS機能)、無線通信のアクセスポイント、ビーコンなどを用いてもよい。
【0020】
また、レーザセンサ63は、ビルに設けられた各種設備の状態を検知する。この状態には、その位置や稼働状況が含まれる。特に、稼働状況は、避難での利用可能性を含む。なお、レーザセンサ63は、設備状態検知装置の一例であり、赤外線センサや超音波センサなどを用いてもよい。
【0021】
また、エレベータ70は、設備の一例であり、避難へも利用可能である。なお、設備には、エスカレータ、非常口、車椅子などが含まれる。また、ネットワーク80は、各種装置を接続する。なお、ネットワーク80は、ビル内のローカルなネットワークと、インタネットのような広域ネットワークで構成されてもよい。このため、避難支援装置100は、ビル内に設けられてもよいし、複数のビルで共用するように設けられてもよい。
【0022】
また、気象情報提供システム90は、気象庁、気象協会、気象情報提供会社などで運営され、地震や水害などの広域災害情報を提供する。
【0023】
ここで、避難支援装置100について説明する。避難支援装置100は、サーバ等のコンピュータで実現される。このため、避難支援装置100は、通信装置101、処理装置102、メモリ103および記憶装置104を有し、これらは互いにバスのような通信路を介して互いに接続される。以下、これら各構成について説明する。
【0024】
まず、通信装置101は、ネットワーク80と接続し、他の装置との通信を行う。
また、処理装置102は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサで実現でき、後述する記憶装置104に記憶されている情報登録プログラム105、現状特定プログラム106、避難情報算出プログラム107に従って演算を実行する。これら各プログラムについては、後述する。
【0025】
また、メモリ103には、情報登録プログラム105、現状特定プログラム106、避難情報算出プログラム107やこれらでの演算で用いられる各種情報が展開される。記憶装置104は、いわゆるストレージで実現でき、上述のプログラムの他、災害対応情報108、在館者情報109、設備情報110およびマップ情報111を記憶する。記憶装置104は、外付けのHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカードなどの各種記憶媒体で実現できる。さらに、ファイルサーバのように避難支援装置100とは別装置で実現してもよい。
【0026】
ここで、情報登録プログラム105は、図1に示す情報登録部1の機能を実現する。このため、情報登録プログラム105は、災害対応情報登録機能11、在館者情報登録機能12および設備情報登録機能13を実現するためのモジュールで構成することができる。
【0027】
また、現状特定プログラム106は、図1に示す現状特定部2の機能についての演算を実現する。このため、現状特定プログラム106は、災害状態特定機能21、在館者状態特定機能22および設備状態特定機能23を実現するためのモジュールで構成することができる。
【0028】
また、避難情報算出プログラム107は、図1に示す避難情報算出部3の機能を実現する。このため、避難情報算出プログラム107は、災害程度算出機能31、必要支援算出機能32、避難経路算出機能33および発信情報算出機能34を実現するためのモジュールで構成することができる。
【0029】
このため、処理装置102は、各プログラムに従って、情報登録部1、現状特定部2および避難情報算出部3の演算(処理)を実行することになる。なお、災害対応情報108、在館者情報109、設備情報110およびマップ情報111については後述する。
【0030】
以上で、本実施形態の構成の説明を終わり、以下、本実施形態のおける避難支援装置100の処理内容を説明する。
【0031】
まず、簡単に、情報登録部1および現状特定部2の処理について説明する。情報登録部1は、適宜、取得される各種情報を、図14の記憶装置104に登録する。つまり、発生する可能性のある災害に対する対応を示す災害対応情報108、該当のビルに在館している在館者情報109およびビルの設備についての設備情報110が登録される。
【0032】
災害対応情報108は、災害に対する対応を示す情報であり、管理者等の端末装置に対する操作に応じて、災害対応情報登録機能11により登録される。また、在館者情報109は、カメラ62やICカードリーダ52等で、在館者がビルに入場した際などに取得され、在館者情報登録機能12により登録される。但し、在館者情報登録機能12は、予め在館の可能性のある人についての在館者情報109を登録しておき、取得された際にこれを有効化してもよい。また、設備情報110は、レーザセンサ63等で適宜取得され、設備情報登録機能13により登録される。このように、各種装置、デバイスで取得された災害対応情報108、在館者情報109および設備情報110が、情報登録部1により登録される。
【0033】
また、現状特定部2は、避難情報算出部3から要求に応じて、登録された災害対応情報108、在館者情報109および設備情報110を読み出す。また、現状特定部2は、災害の発生が検出された場合に、読出しを実行してもよい。このように、現状特定部2は、読出しを実行した際の災害状態、在館者状態および設備状態を特定することになる。そして、避難情報算出部3がこれらを用いて、避難情報を算出する避難情報算出処理を実行する。
【0034】
ここで、避難情報算出処理の説明の前に、現状特定部2が読み出す災害対応情報108、在館者情報109および設備情報110について、説明する。
【0035】
図10Aは、本実施形態で用いられる災害対応情報108を示す図である。この災害対応情報108は、ビル内で発生する可能性のある災害である災害ポテンシャル(リスク)やこれに対する対応事項を示す情報である。具体的には、災害対応情報108は、ビルID、建物用途、階数、場所、災害ポテンシャル、災害発生元、リスク評価および対応事項の各項目を有する。
【0036】
ビルIDは、ビルを識別する。建物用途は、該当のビルの用途を示す。階数は、災害ポテンシャルが発生し得る階数を示す。場所は、災害ポテンシャルが発生し得る階数における場所を識別する。災害ポテンシャルは、災害ポテンシャル、つまり、災害の要因を示す。災害発生元は、災害ポテンシャルの発生元を示す。リスク値は、災害ポテンシャルの発生可能性および発生した場合の緊急性から算出されるリスクの度合いを示す。対応事項は、災害ポテンシャルへどのように対応するかを示す。
【0037】
例えば、図10Aでは、13階のオフィスビル内の1階、災害ポテンシャルマップで「1-A」と記載する場所において、高電圧電源があり、高電圧の災害ポテンシャルがあること示す。普段はその場所に人は行かないため、人的被害が発生する可能性は低いため、リスクはEと評価されている。この災害ポテンシャルに対しては表示、絶縁対策など以外、ビル内で火災が発生した際、その地域においては電気火災対応できる消火方法を利用する必要がある。
【0038】
また、図10Aでは、2階建ての工場の中、1階の「1-B」の場所において、窒素ガスボンベが設置され、普段は表示、酸欠対策など以外、工場内で火災発生時、窒素ガスボンベの内圧上昇による容器破裂の恐れがあることが示される。この結果、風上から消火剤を噴霧し、容器を冷やしながら周囲の消火を行う必要があることがわかる。
【0039】
次に、在館者情報109について説明する。図10Bは、本実施形態で用いられる在館者情報109を示す図である。在館者情報109は、対象のビルの在館者の要支援に関する情報である。なお、本実施形態では、在館者としてビルへ訪問する顧客を用いるが、これに限定されない。このため、在館者情報109は、顧客ID、氏名、年齢、属性、障がい種類、必要設備、外部リンクおよび現在位置の各項目を有する。顧客IDは、顧客を識別する。氏名および年齢は、顧客の氏名および年齢をそれぞれ示す。属性は、顧客が要支援者かを示す項目であり、本実施形態では障がい者か健常者を示す。障がい種類は、顧客の具体的な障がいの種類を示す。必要設備は、顧客が要支援者、例えば、障がい者の場合、非難に必要な設備を示す。また、外部リンクは、外部情報源のリンク先を示す。ここで、外部リンクとは、顧客の要支援についての外部情報源を示し、障がい者サービスID(ポータル)等で実現できる。また、現在位置は、該当の在館者の位置を示す。これは、在館者状態検知装置で適宜取得される。
【0040】
図10Bの例では、顧客IDが「0124」の東京花子さんは62歳の障がい者であり、移動が困難なため、車いすを利用する必要があることが示される。また、同じく図10Bでは、外部情報源として、障がい者サービスと情報連携していることが示される。
【0041】
次に、設備情報110について説明する。図10Cは、本実施形態で用いられる設備情報110を示す図である。設備情報110は、ビルに設けられる設備に関する情報である。
【0042】
具体的には、図10Cに示すように、ビルID、建物用途、階数、階段数、エスカレータ数、エレベータ数、非常用エレベータ数および一次避難所の各項目を有する。ここで、ビルIDは、ビルを識別する。建物用途は、該当のビルの用途を示す。ビル階数は、該当のビルの回数を示す。階段数、エスカレータ数、エレベータ数および非常用エレベータ数は、それぞれ一階当たりの階段/エスカレータ/エレベータ/非常用エレベータの数を示す。一次避難所は、該当のビルにおける一次避難所の数およびその場所を示す。
【0043】
設備情報110では、例えば、ビルIDが「1003」のホテルは12階建てのビルである。そして、一階当たり階段が6個、エスカレータが2台、エレベータが4台、非常用エレベータが2台設置されている。さらに、1階、6階および屋上において合計3か所の一次避難所が設置されている。
【0044】
以上で、災害対応情報108、在館者情報109および設備情報110の説明を終わり、以下、図2に示すフローチャートに従い、避難情報算出部3での避難情報算出処理を説明する。ここで、本実施形態では、障がい者のような要支援者を見た目で判断できず優先案内が不可能である場合が存在する。以下のフローチャートでの処理では、この課題を解決できる。まず、避難情報算出部3は、現状特定部2から災害状態、在館者状態、設備状態を取得する(ステップS301)。これは周期的に実行されてもよいし、後述のステップS302との順序を変更し、災害を検出した場合に、ステップS301を実行してもよい。
【0045】
また、避難情報算出部3は、災害が検出されているかを判断する。(ステップS302)。この結果、災害が検出された場合(Yes)、ステップS311に遷移する。また、検出されない場合(No)、処理を終了する。
【0046】
また、避難情報算出部3は、災害の程度を判断する(ステップS311)。つまり、災害程度算出機能31が実行される。ここで、災害の程度として、震度や火災の程度、発生箇所(数)などを用いることができる。
【0047】
また、避難情報算出部3は、必要支援算出機能32により、検出された災害により避難が必要になるかを判断する(ステップS312)。このために、避難情報算出部3は、災害の程度および在館者情報109を用いる。例えば、避難情報算出部3は、要支援者が一定数以上であり、震度や火災が検知された場所数といった災害の程度が、予め設定された閾値以上である場合に、避難が必要と判断する。また、避難情報算出部3は、災害の程度と災害状態を比較して判断してもよい。例えば、リスク評価ごとに、災害の程度(震度や火災の場所)を比較し、所定条件を満たす場合、避難が必要と判断してもよい。なお、ステップS312においては、避難情報算出部3は、災害の程度に応じて関連機関へ連絡するかを判断してもよい。この結果、避難が必要と判断された場合(Yes)、ステップS32に遷移する。また、避難が必要でない判断された場合(No)、処理を終了する。
【0048】
また、避難情報算出部3の必要支援算出機能32により、在館者の個人属性に基づき、避難に必要な支援を算出する(ステップS32)。また、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、在館者の位置と個人属性に基づき、適切な避難経路を算出する(ステップS33)。
【0049】
また、避難情報算出部3の発信情報算出機能34により、災害の程度、必要な支援および避難経路に基づき、発信情報を算出する(ステップS34)。ここで、避難情報算出部3は、現状特定部2の災害状態特定機能21が特定した災害の状態を示す災害情報と、災害対応情報108が用いられる。つまり、発信情報算出機能34により、災害対応情報108のうち、災害情報に該当する対応事項を、発信情報として算出される。
【0050】
この際、避難情報算出部3の発信情報算出機能34により、発信情報を通知するタイミングである通知時間を算出することが望ましい。また、避難情報算出部3は、算出した発信情報通知時間を、情報出力部4へ発信する(ステップS4)。この際、避難情報算出部3は、通知時間も発信することが望ましい。この結果、情報出力部4が、通知された発信情報を出力、つまり提供する。また、通知時間が発信された場合、情報出力部4は、発信された通知時間に発信情報を出力することになる。したがって、在館者は適切に避難することが可能となる。このように、避難情報算出部3は、発信情報を発報するため、情報発信部とも表現できる。
【0051】
そして、避難情報算出部3は、避難が完了したかを判断する(ステップS5)。これは、救援者端末42からの完了報告を用いて判断される。また、避難情報算出部3は、在館者状態を用いて判断してもよい。この結果、避難が完了するまで(No)、ステップS301からS5までの処理が繰り返される。また、避難が完了した場合(Yes)、処理を終了する。なお、本実施形態では、発信情報を、避難情報算出部3、つまり、避難支援装置100で算出しているが、これ以外の装置で算出してもよい。例えば、図14の気象情報提供システム90のようなネットワーク80に接続される外部装置で作成してもよい。この場合、外部装置で作成された発信情報を、避難支援装置100が記憶しておき、ステップS4において、情報出力部4へ発信する構成とすることができる。
【0052】
ここで、図2に示す避難情報算出処理のうち、ステップS33(避難経路算出処理)の詳細を説明する。図3は、本実施形態における避難経路算出処理を示すフローチャートである。なお、避難情報算出処理および避難経路算出処理は、周期的に複数回実行されることが望ましい。つまり、災害が時間経過とともに変化するため、これに応じて適切な避難情報算出処理および避難経路算出処理が実行されることが望ましい。
【0053】
ステップS301、S302およびステップS311~S32は、図2と同じ処理である。そして、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、在館者それぞれについて要支援者であるかを判断する(ステップS333)。このために、避難情報算出部3は、現状特定部2で特定された在館者状態を用いる。例えば、「障がいの種類」や「必要設備」に応じて、判断される。つまり、「障がいの種類」が所定の内容である場合や「必要設備」がある場合に、要支援者が存在すると判断される。さらに、本ステップでは、災害の程度と「障がいの種類」や「必要設備」との比較摘果に応じて判断が実行されてもよい。例えば、震度2以上で「必要設備」がある場合に、要支援者が存在すると判断されてもよいし、震度4以上では「必要設備」があることに加え、「障がいの種類」が「移動速度低い」ことも条件としてもよい。この結果、要支援者が存在する場合(Yes)、ステップS3331に遷移する。また、要支援者が存在しない場合(No)、ステップS3332に遷移する。なお、以下では各在館者に対する避難経路を算出することになる。
【0054】
また、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、必要支援算出機能32で算出された、要支援者に対する必要な支援内容を取得する(ステップS3331)。そして、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、適切な方法で災害対応情報108、つまり、発信情報を作成し、これを該当の要支援者の情報出力部4に通知する(ステップS3341)。このよに、適宜通知することで、要支援者に対する優先案内が実行されることになる。また、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、必要な支援と設備が利用できる避難経路を算出する(ステップS3351)。より具体的には、避難経路算出機能33により、特定された災害の発生位置、要支援者の状態に含まれる位置およびマップ情報111により、避難経路が算出される。なお、要支援者でない在館者の避難経路も、災害の発生位置、その位置およびマップ情報111により算出される。また、マップ情報111として、設備マップが用いられることが望ましい。
【0055】
また、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、要支援者でない在館者の周囲に要支援者がいるかを判断する(ステップS3332)。このために、在館者情報109の現在位置を用いることになる。例えば、該当の在館者と要支援者が同じ位置もしくは隣接する位置にいる場合、周囲に要介護者がいると判断される。この結果、要介護者がいない場合(No)、ステップS3351に遷移する。また、要介護者がいる場合(Yes)、ステップS3342もしくはステップS3352に遷移する。
【0056】
また、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、要支援者でない在館者が利用できる避難経路を算出する(ステップS3351)。また、周囲に要支援者がいて、周期的な避難経路算出処理のうち初回(災害検出されてからの初回)である場合は、ステップS3342が実行される。すなわち、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、ステップS3341とは時間差で発信情報を、該当の在館者の情報出力部4に通知する(ステップS3342)。また、周期的な避難経路算出処理のうち2回目以降においては、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、要支援者を避けるような避難経路を算出する(ステップS3352)。
【0057】
また、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、在館者の移動速度と避難経路から、必要な避難時間を算出する(ステップS336)。ここで、移動速度は、在館者情報109の現在位置の時系列変化により特定できる。また、在館者情報109に、移動速度の項目を設けてもよい。
【0058】
また、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、避難時間が災害発展に対して十分かを判断する(ステップS337)。このために、在館者情報109の現在位置と設備情報110の一次避難場所を用いることが望ましい。つまり、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、現在位置と一次避難場所の距離を算出し、一定範囲内であれば時間が十分と判断することが望ましい。この際、災害の程度を考慮して、時間が十分かを判断してもよい。この結果、時間が十分である場合は(Yes)、ステップS34に遷移する。また、十分でない場合は(No)、ステップS338に遷移する。
【0059】
また、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、一次避難所の利用が可能かを判断する(ステップS338)。この判断は、一次避難所が災害の発生場所に近傍しているか等で実行される。この結果、一次避難所を利用できない場合は(No)、ステップS34に遷移する。また、一次避難所が利用できる場合は(Yes)、ステップS339に遷移する。
【0060】
また、避難情報算出部3の避難経路算出機能33により、一次避難所を避難目的地として設定する(ステップS339)。
【0061】
そして、図2に示したステップS34~S5を実行する。つまり、避難が完了するまで、S331から、S5までのステップを繰り返す。
【0062】
上述の形態では災害が発生した際、障がい者が優先的に避難誘導され、健常者は時間的もしくは空間的に、障がい者の避難する経路を阻害しないように避難誘導されるため、混雑を避け、障がい者が阻害せずに避難することができる。
【0063】
以上で、本実施形態の処理についての説明を終わる。次に、本実施形態で作成される発信情報の一例であるマップ情報111とこの作成について説明する。マップ情報111は、施設(ビル)内の状況を示す情報である。この状況には、設備の配置が含まれる。図4は、本実施形態におけるマップ情報111に含まれる災害ポテンシャルマップを示す図である。図5に示す災害ポテンシャルマップは、5階建ての研究用途のビルの1階の災害ポテンシャルマップを示す。そして、図4(a)は、ビル(建物)の1階をいわゆるフロアマップの形状で示しており、階段、エレベータ、非常口、消火器の場所など以外、薬品保管棚や実験機器といった各種設備の場所が示される。そして、1階における災害ポテンシャルが記載されている。例えば、図4に示す例では、実験室101には、薬品保管棚と冷蔵庫に薬品が保管され、薬品保管棚では硝酸のような酸化性液体、およびアルコールのような可燃性液体が保存されている。このため、災害時は特別注意する必要がある。また、実験室102と実験室103はレーザを取り扱うため、レーザ作業中に災害が発生した場合はまず電源を落とし、レーザ光が発光している場合は室内に入るのに保護具の着用が必要である。また、実験室105では、電子顕微鏡があるため、高電圧機器であり、災害発生時は電源を落とし、火災発生時は電気火災の消火方法で対応する必要がある。また、図4(b)が示す災害ポテンシャルマップでは、各災害ポテンシャル発生しうる場所の番号を示す。以上の災害ポテンシャルマップは、予め管理者等で作成されていてもよい。
【0064】
また、図5は、本実施形態におけるマップ情報111に含まれる設備マップを示す図である。設備マップは、施設(ビル)の設備の配置を示す。なお、設備マップは、設備情報登録機能13により、記憶装置104に登録されてもよい。ここで、図5(a)は、3階建ての事務所用ビルの階層図を示す。また、図5(b)は、図5(a)が示す事務所用ビルの3階の平面図を示す。そして、図5(a)で示したように、事務所用ビルの各階において、階段は2カ所あり、エレベータは1カ所で3台並べ、非常用エレベータは1台ある。また、消火器は左端の階段近くと、右端の非常用エレベータの近くにあり、消火栓は中央のエレベータ近くに設置されている。それ以外に各階の中央部に、救急用のAED設備がある。また、図5(b)に示したように、事務所用ビルは主となるオフィスエリア以外、事務室、会議室、顧客対応用の個室が設置されている。なお、マップ情報111は、事前に作成され、記憶装置104に予め記憶されてもよい。さらに、本実施形態では、マップ情報111として、災害ポテンシャルマップおよび設備マップの少なくとも一方が用いられればよい。
【0065】
次に、災害状態検知装置、在館者状態検知装置および設備状態検知装置といった状態検知装置の詳細を、具体なデバイスを例示して説明する。図11は、本実施形態における状態検知装置として用いられるデバイスを説明するための図である。災害状態検知装置としては、例えば、震度計を用いることができる。このような地震計によれば、地震の災害程度の評価が可能である。また、災害状態検知装置として、水位計も用いることができる。水位計によれば、津波や大雨によるビル地域内での浸水の検知と災害程度の評価が可能である。また、災害状態検知装置として、火災検知器61も用いることができる。
【0066】
さらに、災害状態検知装置として、サーモカメラも用いることができる。サーモカメラにより、火災の検知と火災程度、および危険範囲の評価が可能である。それに外に、災害状態検知装置として、カメラを用いることもできる。カメラの映像でも地震、津波、土砂災害、火災などの検知は可能であり、低価格でビル内複数個所での設置が可能である。
【0067】
また、在館者状態装置として、カメラ62やサーモカメラを用いることができる。これらによれば、在館者位置の検出以外、在館者現在の状態も確認できる。なお、これらに加え、在館者識別と動作識別用のAIシステムと連携することで、これらの情報の精度を向上できる。さらに、在館者状態装置として、在館者が利用する携帯端末(避難者端末41等)を用いることができる。このような携帯端末でのGPS信号、もしくは携帯端末からビル内の無線通信のアクセスポイントトへの接続、および携帯端末に搭載されるビーコンアプリからビル内所定位置のビーコンとの接続により、在館者の位置の測定が可能である。携帯端末では、カメラのように在館者現在の動作を測定することは困難であるが、移動と滞在がわかるため、避難に困難があるかについては検知可能である。
【0068】
そして、設備状態検知装置として、レーザセンサ63や赤外線センサ、超音波センサを用いることができる。これらにより、エレベータなど設備の位置と稼働状況の測定は可能である。また、設備の設置場所によっては、設備の変形や傾斜などの状態を測定することが可能である。それ以外に、カメラの映像でも設備の位置と状態を測定するころが可能であり、低価格でビル内複数個所での設置が可能である。つまり、カメラを設備状態検知装置として用いることもできる。
【0069】
次に、災害の程度と、これに応じた必要な支援や避難の要否の判定の一例について説明する。ここで、ビル内で火災が発生した場合を例とする。ここでは、要支援者の避難を優先(優先案内)させるために、要支援者と健常者についての災害の程度の判断についても説明する。
【0070】
図12は、本実施形態のおける災害の程度やこれに応じた必要な支援、避難の要否の判断基準を示す図である。図12では、ビル内に火災が発生した場合の判断基準を示す。具体的には、図12では、火の高さが0.6m程度の場合、要支援者は出火階から避難する必要があること示す。また、健常者に対しては、避難指示は出さないことを示している。
【0071】
また、火の高さが1.2m程度の場合、要支援者はビル外まで避難するように判断される但し、健常者に対しては出火階から避難するように判断される。つまり、上述のようにステップS312の判断が実行される。
【0072】
次に、避難経路の算出について説明する。ここでは、ビル内火災が発生した場合に、車椅子を利用する障がい者に向けた避難経路を例に説明する。図13は、本実施形態における避難経路の算出を説明するための図である。図14では、災害の程度毎に、災害の関連場所・設備およびその対応事項が規定されている。具体的には、災害の程度、出火階、障がい者階、非常エレベータ、一次避難所および対応事項が規定されている。そして、図13災害の程度Aでは、出火階が1階で、障がい者が1階にいる場合、対応事項として障がい者は自力でビル外へ避難する、ことが規定されている。これは、障がい者が車椅子を利用することがあるため、階段の利用を避けることが必要であることに起因する。ここで、この場合の避難経路を図6Aに示す。この場合、図6Aに示すように、1階(1F)の要支援者(車椅子)は、矢印に示す避難経路で、ビル外に避難することになる。
【0073】
また、図13の災害の程度BやCでは、出火階と障がい者がそれぞれ3階である。これらの場合も、車椅子を利用する障がい者は階段を利用できないため、対応事項として非常用エレベータを利用して出火階から避難することになる。これら場合の避難経路を図6Bに示す。図6Bに示すように、3階(3F)の要支援者(車椅子)は、矢印に示すように、避難経路で非常エレベータに移動し、非常エレベータにより1階(1F)へ避難することになる。
【0074】
また、図13の災害の程度Dでは、出火階と障がい者がそれぞれ3階である。但し、この例では、ビル内に非常用エレベータがなく、車椅子を利用する障がい者は階段を利用できないため、対応事項として一次避難所への避難が示される。この場合の避難経路を図6Cに示す。この場合、図6Cに示すように、1階(1F)の要支援者(車椅子)は、矢印に示す避難経路で、一次避難所に避難することになる。
【0075】
またさらに、図13の災害の程度Eでは、出火階と障がい者がそれぞれ3階である。この例では、ビル内に非常用エレベータと一次避難所両方ともない。このため、車椅子を利用する障がい者は階段を利用できないため、対応事項として出火点から最も離れている場所で救援を待つことが規定される。この場合の避難経路を図6Dに示す。この場合、図6Dに示すように、3階(3F)の要支援者(車椅子)は、矢印に示す避難経路で、出火点(場所)から最も遠い場所に避難することになる。以上のように、本実施形態では、設備情報110を用いて、設備を利用した避難を実現する避難経路が作成される。
【0076】
なお、図11図13の各テーブルについては、記憶装置104に記憶しておき、避難情報算出部3がこれを用いて、各処理を実行してもよい。
【0077】
次に、避難経路算出機能33による、要支援者の優先的な避難を示す発信情報の算出について、説明する。ここでは、図12に示すビルの判断基準を用いる。つまり、ビルに火災が発生し、火の高さが1.2m程度とする。そして、このビルは火が1m以上の場合、障がい者はビル外へ避難する必要があり、その他の在館者は出火階から避難する必要がある。また、このビルには、非常用エレベータが設置されている。
【0078】
避難経路算出機能33により、要支援者に対して、以下の(1)~(3)の少なくとも一つで、健常者より優先的に避難誘導するための処理を実行する。
【0079】
(1)通知の優先:火災が0.5m以上と検知された後、要支援者は出火階から避難するように避難情報を通知し、誘導する。健常者に対してはまだ避難情報を通知しない。火災が1m以上と検知された際、健常者は出火階から避難するように避難情報を通知することで、誘導する。
【0080】
つまり、災害程度が低く、健常者には避難する必要ない場合でも、要支援者は先に避難するように通知することもなる。
【0081】
(2)時間の優先:火災が1m以上と検知された際、もし要支援者が避難を終えてなく、周囲にいる場合は、あらかじめ設定した時間差(例えば、火災が1m以上と検知後の1分後)後に、健常者へ避難情報を通知する。
【0082】
つまり、健常者が避難する際、要支援者が周囲にいる場合は、設定した時間差が経過した後に、健常者へ避難情報を通知する。
【0083】
(3)空間の優先:(1)と(2)の要支援者優先避難誘導を実施した後にもかかわらず、健常者の周囲に要支援者がいる場合、要支援者を避けて健常者の避難経路を設定する。
【0084】
つまり、健常者が避難する際、要支援者が周囲にいる場合は、要支援者の避難経路を避けて、健常者の避難経路を設定する。
【0085】
以上では、災害の程度に応じた避難経路を含む発信情報が算出されることになる。この結果、要支援者の優先的な避難が実行される。この中、(3)空間の優先は図7に示す。図7では、車椅子を利用する必要がある要支援者と健常者が、同時にオフィスエリアから避難することになり、要支援者は優先的に避難経路が最短になるように算出される。これに対し、健常者は上部の出口のほうに近いが、要支援者の避難経路と重ならないように、有意に下部の出口からオフィスエリアを出て、階段まで避難するように避難経路が、避難経路算出機能33により、算出される。
【0086】
次に、本実施形態における情報出力部4の出力内容(表示画面)について説明する。ここでは、要支援者と健常者が同じ地域にいる場合、要支援者向けと健常者向けの発信情報を例に説明する。図8Aは、本実施形態における要支援者の優先的な避難を実現する要支援者の避難者端末41の画面を示す図である。 ここで、避難者端末41を利用している在館者の属性に応じた、適切な通知方法での表示がされている。例えば、健常者に対しては、災害の検知は、音声のアラームや図8Aに示すような画面での通知を行う。これに対して、聴覚障がい者に対しては音声のアラームではなく、携帯の振動や図8Aにしめすような画面での通知を行う。また、視覚障がい者に対しては音声のアラームや音声による避難誘導を提供する。
【0087】
ここで、災害が発生すると、緊急地震速報のように、避難者端末41の使用状況にかかわらず、災害の通知画面に切り替えることが望ましい。また、災害の通知画面では、災害の種類、災害程度、避難目的地、および現在在館者がいる階のマップが表示される。マップ上では、災害位置(同じ階に発生した場合)、在館者の現在位置、避難経路を示す。
【0088】
例えば、非常用エレベータがあるビルの3階で火災が発生し、要支援者に対する災害程度は「ビル外避難要」と判断される。この結果、避難者端末41を利用している要支援者は3階のオフィスエリアにいて、車椅子の利用が必要である。このため、非常用エレベータで1階まで降り、屋外へ避難する必要がある。そこで、通知画面では「火災」の文字とイラストで以下の内容が表示される。「ビル外避難要」の災害程度と「→屋外」の避難目的地が表示され、現在位置の3階のマップ上に、左下の階段近くに火災が発生し、現在位置のオフィスエリアから非常用エレベータまでの避難経路を青い点線で示す。
【0089】
また、この要支援者が視覚障がい者の場合は、画面上では避難経路を確認することができない。このため、登録している在館者情報で、避難経路の誘導は現在位置に基づき、「左に曲がり、5メートル進む」、「ドアから出た後、右に曲がり2メートル進む」、「非常用エレベータに乗る」などの音声案内で要支援者の避難を誘導する。
【0090】
次に、要支援者の周りにいる健常者の避難者端末41の画面について、図8Bを用いて説明する。健常者に対しては、音声のアラームと通知画面で通知する。そして、通知画面では、災害の種類、災害程度、避難目的地、および現在在館者がいる階のマップが表示される。
【0091】
また、マップ上には、災害位置(同じ階に発生した場合)、在館者の現在位置、避難経路以外、周囲にいる要支援者の位置が示される。このため、要支援者の位置がわかり、避難経路も要支援者をよけたため、要支援者の避難を阻害しないように、健常者が誘導される。
【0092】
例えば、非常用エレベータがあるビルの3階で火災が発生し、健常者に対する災害程度は「ビル内避難要」と判断される。そして、避難者端末41を利用している健常者は3階のオフィスエリアにいて、周囲には要支援者がいる。このため、要支援者の避難経路を避けて避難する必要がある。そこで、通知画面では「火災」の文字やイラストで、「ビル内避難要」の災害程度と「→1F」の避難目的地が表示される。また、通知画面においては、現在いる3階のマップ上に、左下の階段近くに火災が発生し、現在位置のオフィスエリアから階段までの避難経路を紫の点線で示される。さらに、周りにいる要支援者は青いマークで示される。また、周囲の要支援者がオフィスエリアの上部の出口を利用するため、この避難者端末41を利用している健常者はオフィスエリアの下部の出口を利用して避難することが可能となる。
【0093】
最後に、避難中、在館者が必要な設備がなく、もしくは災害により外部へ避難することができない場合は救援呼び出しする事例について、図9を用いて説明する。図9は、本実施形態における救援呼び出しを行っている避難者端末41の画面を示す図である。
【0094】
ここでは、火災が発生し、室内の在館者が逃げる出入口付近まで火が広がっている場合は、外へ逃げることができなく、室内で移動できなくなることと想定する。もしくは、地震により、避難中通路の先方の壁が倒れ、外へ逃げることができなく、通路の途中で移動できないことを想定する。在館者(避難者)が利用する避難者端末41の位置が避難経路に沿って移動していなく、ある範囲内でとどまっていると検知されたとする。この検知は、避難者端末41のGPS機能で実行できる。このように検知された場合、避難者端末41の通知画面に救援呼び出しボタンがポップアウトされる。救援呼び出しボタンに対して、もし60秒以内当所定時間内に反応しない場合は、避難者端末41は、意識が失われているか、他の手動的に救援呼び出しが困難な場合と判断し、自動的に救援の呼び出しを行う。もし、在館者が救援を呼びたくないが、間違って救援を呼んだ場合、もしくは救援呼び出し中に避難できるようになれた場合、救援を取り消しすることも可能である。
【0095】
以上で、本実施形態の説明を終わるが、本発明はこの実施形態に限定されない。例えば、避難情報算出部3は、発信情報として、避難経路に応じたエレベータや非常用エレベータの運転制御指令を作成し、通知してもよい。この結果、エレベータや非常用エレベータは、災害の際に該当階で在館者を待ち受けることが可能となる。
【符号の説明】
【0096】
1 情報登録部
11 災害対応情報登録機能
12 在館者情報登録機能
13 設備情報登録機能
2 現状特定部
21 災害状態特定機能
22 在館者状態特定機能
23 設備状態特定機能
3 避難情報算出部
31 災害程度算出機能
32 必要支援算出機能
33 避難経路算出機能
34 発信情報算出機能
4 情報出力部
41 避難者端末
42 救援者端末
43 館内発信端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14