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特開2023-181764ガラス及び水素を製造するプラント、及びガラス及び水素の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181764
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ガラス及び水素を製造するプラント、及びガラス及び水素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 3/26 20060101AFI20231218BHJP
   C03B 5/237 20060101ALI20231218BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20231218BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20231218BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20231218BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F27B3/26
C03B5/237
C01B3/02 H
C01B13/02 B
F27D17/00 101A
F27D17/00 104Z
F27D17/00 105
F27D7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095088
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000222222
【氏名又は名称】東洋ガラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東條 誠司
【テーマコード(参考)】
4G014
4G042
4K045
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4G014AF01
4G042BA09
4G042BA11
4G042BB04
4G042BC06
4K045AA07
4K045BA08
4K045CA02
4K045GB08
4K045LA03
4K045RB12
4K056AA05
4K056BB01
4K056CA10
4K056DA02
4K056DA22
4K063AA04
4K063BA06
4K063CA01
4K063CA02
(57)【要約】
【課題】環境負荷を低減することができるプラント、及びガラス及び水素の製造方法を提供する。
【解決手段】
ガラス及び水素を製造するプラント1は、燃料の燃焼熱によってガラス原料を溶解させ、溶融ガラス12を生成するガラス溶解炉2と、ガラス溶解炉から延び、ガラス溶解炉において発生した排気が通過する排気通路3と、排気通路に設けられ、排気と水の熱交換を行い、水蒸気を生成するボイラ5と、水蒸気の電気分解を行い、水素と酸素とを生成する電解装置4とを有する。ガラス溶解炉は、燃料を酸素濃度が21容量%以上の支燃ガスと共に燃焼させるバーナ14を有する。バーナは、酸素供給管18によって電解装置に接続されている。電解装置で生成された酸素が酸素供給管を介してバーナに供給される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス及び水素を製造するプラントであって、
燃料の燃焼熱によってガラス原料を溶解させ、溶融ガラスを生成するガラス溶解炉と、
前記ガラス溶解炉から延び、前記ガラス溶解炉において発生した排気が通過する排気通路と、
前記排気通路に設けられ、前記排気と水の熱交換を行い、水蒸気を生成するボイラと、
前記水蒸気の電気分解を行い、水素と酸素とを生成する電解装置とを有するプラント。
【請求項2】
前記ガラス溶解炉は、前記燃料を酸素濃度が21容量%以上の支燃ガスと共に燃焼させるバーナを有し、
前記バーナは、酸素供給管によって前記電解装置に接続され、
前記電解装置で生成された前記酸素が前記酸素供給管を介して前記バーナに供給される請求項1に記載のプラント。
【請求項3】
前記バーナは、前記燃料を酸素濃度が90容量%以上の支燃ガスと共に燃焼させる酸素燃焼バーナである請求項2に記載のプラント。
【請求項4】
前記電解装置は、アノード室と、カソード室と、前記アノード室と前記カソード室とを隔離し、酸素イオンが透過する固体電解質と、前記固体電解質の前記アノード室側の表面に設けられたアノードと、前記固体電解質の前記カソード室側の表面に設けられたカソードと、前記アノード及び前記カソードに接続された電源とを有し、
前記水蒸気が前記カソード室に供給され、前記水素が前記カソードにおいて生成し、前記酸素が前記アノードにおいて生成し、
前記アノード室が前記酸素供給管に接続されている請求項2に記載のプラント。
【請求項5】
前記酸素供給管には、酸素供給源が接続されている請求項4に記載のプラント。
【請求項6】
前記電解装置は、前記排気通路の外部に配置されている請求項1に記載のプラント。
【請求項7】
前記ボイラは、液体の水を加熱して前記水蒸気を発生させる第1熱交換器と、前記第1熱交換器で発生した前記水蒸気を加熱する第2熱交換器とを有し、
前記第2熱交換器は、前記排気通路において前記第1熱交換器よりも前記ガラス溶解炉側に配置されている請求項1に記載のプラント。
【請求項8】
前記ボイラで生成される前記水蒸気の温度が600℃以上1200℃以下である請求項1~7のいずれか1つの項に記載のプラント。
【請求項9】
前記排気通路において、前記ボイラの下流には前記排気に水酸化ナトリウム水溶液を噴霧することによって、前記排気中の二酸化炭素と水酸化ナトリウムとを反応させて炭酸ナトリウムを主成分とした粉体を生成させる水酸化ナトリウム噴霧装置が設けられている請求項1~7のいずれか1つの項に記載のプラント。
【請求項10】
前記排気通路において、前記水酸化ナトリウム噴霧装置の下流には前記排気中の前記粉体を収集する集塵機が設けられている請求項9に記載のプラント。
【請求項11】
前記ガラス溶解炉は、前記集塵機において収集された前記粉体を前記ガラス原料の一部として使用する請求項10に記載のプラント。
【請求項12】
ガラス及び水素の製造方法であって、
燃料の燃焼熱によって原料を溶解させ、溶融ガラスを生成する溶解工程と、
前記溶解工程において発生した排気を熱源として利用して水蒸気を生成する水蒸気生成工程と、
前記水蒸気生成工程において生成された前記水蒸気の電気分解を行い、水素と酸素を生成する電解工程とを有するガラス及び水素の製造方法。
【請求項13】
前記電解工程で生成された前記酸素を、前記溶解工程において前記燃料を燃焼させるための支燃ガスとして使用する請求項12に記載のガラス及び水素の製造方法。
【請求項14】
前記水蒸気生成工程において冷却された前記排気に水酸化ナトリウム水溶液を噴霧する水酸化ナトリウム水溶液噴霧工程と、
前記水酸化ナトリウム水溶液が噴霧された前記排気から粉体を除去する集塵工程とを有する請求項13に記載のガラス及び水素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス及び水素を製造するプラント、及びガラス及び水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス製造では、ガラス原料を溶解する際に発生する高温の排気が持つ熱エネルギーを、燃焼空気の予熱に利用するための蓄熱室を有するプラントがある。蓄熱室を有するガラス製造プラントは、特許文献1に開示されているように、ガラス溶解炉と、第1蓄熱室と、第2蓄熱室とを有する。第1蓄熱室及び第2蓄熱室は、熱を蓄える多量の煉瓦を内部に有する。ガラス製造プラントは、第1モードにおいて、第1蓄熱室を介して温められた空気をガラス溶解炉に取り込み、ガラス溶解炉において燃料の燃焼により原料を溶解させ、第2蓄熱室を介して排気を外部に排出する。一方、ガラス製造プラントは、第2モードにおいて、第2蓄熱室を介して温められた空気をガラス溶解炉に取り込み、ガラス溶解炉において燃料の燃焼により原料を溶解させ、第1蓄熱室を介して排気を外部に排出する。ガラス製造プラントは、第1モードと第2モードとを所定期間毎に繰り返すことによって、排気に含まれる熱エネルギーを第1蓄熱室及び第2蓄熱室に蓄え、ガラス溶解炉に供給する空気を加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-319121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のとおり、ガラス製造プラントでは蓄熱室を利用して燃焼空気を予熱している。しかし、蓄熱室から放出される排気は400~600℃と高温であり、熱エネルギーが十分に回収できていないという問題がある。またガラス製造プラントは高温で運用されるため、定期的に大規模な改修工事を行う必要がある。改修工事では、蓄熱室の煉瓦が交換され、古い煉瓦は大量の廃棄物になるという環境への問題がある。そのため、排気の熱エネルギーを利用でき、更に環境負荷を低減することができる熱エネルギーの回収システムが要望されている。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、排気の熱エネルギーの有効利用と環境負荷を低減することができるプラント、及びガラス及び水素の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、ガラス及び水素を製造するプラント(1)であって、燃料の燃焼熱によってガラス原料を溶解させ、溶融ガラス(12)を生成するガラス溶解炉(2)と、前記ガラス溶解炉から延び、前記ガラス溶解炉において発生した排気が通過する排気通路(3)と、前記排気通路に設けられ、前記排気と水の熱交換を行い、水蒸気を生成するボイラ(5)と、前記水蒸気の電気分解を行い、水素と酸素とを生成する電解装置(4)とを有する。
【0007】
この態様によれば、ガラス溶解炉において発生する排気の熱を利用して高温水蒸気を生成し、高温水蒸気を使用して水の電気分解を行うことができる。すなわち、ガラス溶解炉において発生する排気を、高温水蒸気電解の熱源として使用することができる。以上より、排気の熱エネルギーを有効に利用できる。更に環境負荷を低減することができるプラントを提供することができる。
【0008】
上記の態様において、前記ガラス溶解炉は、前記燃料を酸素濃度が21容量%以上の支燃ガスと共に燃焼させるバーナ(14)を有し、前記バーナは、酸素供給管(18)によって前記電解装置に接続され、前記電解装置で生成された前記酸素が前記酸素供給管を介して前記バーナに供給されてもよい。
【0009】
この態様によれば、電解装置において生成された酸素をガラス溶解炉において燃料を燃焼させるための支燃ガスとして使用することができる。これにより、排気の発生量が低減し、燃焼効率を向上させることができる。
【0010】
上記の態様において、前記バーナは、前記燃料を酸素濃度が90容量%以上の支燃ガスと共に燃焼させる酸素燃焼バーナであってもよい。
【0011】
この態様によれば、ガラス溶解炉での燃料の燃焼に空気を必要としないため、窒素酸化物の発生を抑制することができる。また、空気を使用しない場合は、空気を使用した場合に比べて火炎の温度が高温になるため、ガラスへの熱伝達効率が向上する。また、大量の煉瓦によって形成される蓄熱室を省略することができるため、プラントの改修時等に発生する廃棄物を低減することができる。
【0012】
上記の態様において、前記電解装置は、アノード室(44)と、カソード室(45)と、前記アノード室と前記カソード室とを隔離し、酸素イオンが透過する固体電解質(46)と、前記固体電解質の前記アノード室側の表面に設けられたアノード(48)と、前記固体電解質の前記カソード室側の表面に設けられたカソード(49)と、前記アノード及び前記カソードに接続された電源(51)とを有し、前記水蒸気が前記カソード室に供給され、前記水素が前記カソードにおいて生成し、前記酸素が前記アノードにおいて生成し、前記アノード室が前記酸素供給管に接続されてもよい。
【0013】
この態様によれば、水素を製造する際に生成される酸素が、ガラス溶解炉で支燃ガスとして有効利用される。
【0014】
上記の態様において、前記酸素供給管には、酸素供給源(17)が接続されてもよい。
【0015】
この態様によれば、酸素燃焼バーナへの酸素の供給量を安定させることができる。
【0016】
上記の態様において、前記電解装置は、前記排気通路の外部に配置されてもよい。
【0017】
この態様によれば、電解装置の保守作業が容易になる。
【0018】
上記の態様において、前記ボイラは、液体の水を加熱して前記水蒸気を発生させる第1熱交換器と、前記第1熱交換器で発生した前記水蒸気を加熱する第2熱交換器とを有し、前記第2熱交換器は、前記排気通路において前記第1熱交換器よりも前記ガラス溶解炉側に配置されてもよい。
【0019】
この態様によれば、排気を利用して高温の水蒸気を生成することができる。
【0020】
上記の態様において、前記ボイラで生成される前記水蒸気の温度が600℃以上1200℃以下であってもよい。
【0021】
この態様によれば、水の電気分解に必要な電力を低減することができる。
【0022】
上記の態様において、前記排気通路において、前記ボイラの下流には前記排気に水酸化ナトリウム水溶液を噴霧することによって、前記排気中の二酸化炭素と水酸化ナトリウムとを反応させて炭酸ナトリウムを主成分とした粉体を生成させる水酸化ナトリウム噴霧装置が設けられてもよい。
【0023】
この態様によれば、大気中に放出される排気中の二酸化炭素排出量を低減することができる。
【0024】
上記の態様において、前記排気通路において、前記水酸化ナトリウム噴霧装置の下流には前記排気中の前記粉体を収集する集塵機が設けられてもよい。
【0025】
この態様によれば、排気中の二酸化炭素から生成された炭酸ナトリウムを回収することができる。
【0026】
上記の態様において、前記ガラス溶解炉は、前記集塵機において収集された前記粉体を前記ガラス原料の一部として使用してもよい。
【0027】
この態様によれば、排気中の二酸化炭素から生成された炭酸ナトリウムを原料として再利用することによって、ガラス製造時に発生する二酸化炭素排出量を低減させることができる。
【0028】
本発明の他の態様は、ガラス及び水素の製造方法であって、燃料の燃焼熱によって原料を溶解させ、溶融ガラス(12)を生成する溶解工程と、前記溶解工程において発生した排気を熱源として利用して水蒸気を生成する水蒸気生成工程と、前記水蒸気生成工程において生成された前記水蒸気の電気分解を行い、水素と酸素を生成する電解工程とを有してもよい。
【0029】
この態様によれば、ガラス溶解炉において発生する排気の熱を利用して高温水蒸気を生成し、高温水蒸気を使用して水の電気分解を行うことができる。すなわち、ガラス溶解炉において発生する排気を、高温水蒸気電解の熱源として使用することができる。以上より、排気を活用でき、更に環境負荷を低減することができるガラス及び水素の製造方法を提供することができる。
【0030】
上記の態様において、前記電解工程で生成された前記酸素を、前記溶解工程において前記燃料を燃焼させるための支燃ガスとして使用してもよい。
【0031】
この態様によれば、水素を製造する際に生成される酸素が、ガラス溶解炉で支燃ガスとして有効利用される。ガラス溶解炉での燃料の燃焼時に発生する排気量を低減することができるため、燃焼効率が向上する。また、酸素濃度が90容量%以上の支燃ガスを使用する場合は、空気を使用した場合に比べて火炎の温度が高温になるため、ガラスへの熱伝達効率が向上でき、窒素酸化物の発生を抑制することができる。大量の煉瓦によって形成される蓄熱室を省略することができるため、プラントの改修時等に発生する廃棄物を低減することができる。
【0032】
上記の態様において、前記水蒸気生成工程において冷却された前記排気に水酸化ナトリウム水溶液を噴霧する水酸化ナトリウム水溶液噴霧工程と、前記水酸化ナトリウム水溶液が噴霧された前記排気から粉体を除去する集塵工程とを有してもよい。
【0033】
この態様によれば、大気中に放出される排気中の二酸化炭素排出量を低減することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、熱エネルギーを含む排気の有効利用と環境負荷を低減することができるプラント、及びガラス及び水素の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】ガラス及び水素の製造プラントのブロック図
図2】ガラス溶解炉及び排気通路の模式図
図3】電解装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、実施形態に係るガラス及び水素を製造するプラント1は、ガラス溶解炉2と、排気通路3と、電解装置4と、ボイラ5とを有する。
【0037】
ガラス溶解炉2は、燃料の燃焼熱によってガラス原料を溶解させ、溶融ガラス12を生成する。ガラス溶解炉2は、ガラス溶解槽ともいう。ガラス原料は、硅砂、ソーダ灰、石灰等を含む公知の原料である。図2に示すように、ガラス溶解炉2は、溶解室7を画定する底壁8、側壁9、及び天井11を有する。ガラス溶解炉2は、ガラス原料が投入される原料投入口から溶融ガラス12を排出するガラス排出口に水平方向に延びている。溶解室7の底部には、溶融ガラス12が貯留されている。
【0038】
側壁9には、燃料を燃焼させるための複数のバーナ14が設けられている。燃料は、メタンを主成分とする混合ガスである天然ガス、プロパン又はブタン等を主成分とする液化石油ガス、水素ガス等の気体燃料、又は重油、軽油、石油等の液体燃料であってよい。バーナ14は、加圧された燃料及び支燃ガスを混合して溶解室7内に放出する。支燃ガスは、酸素ガス、空気、又は酸素濃度を高めた空気等であってよい。本実施形態では、バーナ14は、燃料を酸素濃度が21容量%以上の支燃ガスと共に燃焼させる。バーナ14は、燃料を酸素濃度が90容量%以上の支燃ガスと共に燃焼させる酸素燃焼バーナであってもよい。バーナ14は、燃料供給源15に燃料配管16によって接続されている。また、バーナ14は、酸素ガス供給源17に酸素供給管18によって接続されている。酸素ガス供給源17は、例えば液化酸素タンクであるとよい。
【0039】
側壁9には各バーナ14を取り付けるためのバーナ孔19が形成されている。バーナ14は、燃焼室内に燃料及び支燃ガスを噴射する。バーナ14は、溶融ガラス12及びガラス原料の上方において、燃料及び支燃ガスを水平方向、又は水平方向に対してやや上方に向けて噴射するとよい。他の実施形態では、各バーナ14が天井11に設けられ、各バーナ14が燃料及び支燃ガスを下方に向けて噴射してもよい。各バーナ14から噴射された燃料及び支燃ガスは燃焼し、火炎を形成する。燃料の燃焼熱によってガラス原料が溶解して溶融ガラス12が生成される。また、燃料の燃焼によって、排気が生成される。
【0040】
側壁9には、排気ポート21が形成されている。排気ポート21には、排気通路3が接続されている。排気通路3は、ガラス溶解炉2から延び、ガラス溶解炉2において発生した排気が通過する。
【0041】
図1に示すように、排気通路3には、ガラス溶解炉2側から順にボイラ5、水酸化ナトリウム噴霧装置23、集塵機24、及び煙突25が設けられている。本実施形態の排気通路3では、従来の蓄熱室は省略されている。他の実施形態では、排気通路3の後に蓄熱室が設けられ、蓄熱室からボイラ5に排気が供給されてもよい。蓄熱室の有無は、目的に応じて選択されるとよい。
【0042】
ボイラ5は、排気と水との熱交換を行い、水から水蒸気を生成する熱交換器である。ボイラ5は、排気を熱源として使用することによって水を沸騰させて水蒸気を発生させる。図2に示すように、ボイラ5は、一例として、ハウジング31と、第1熱交換器32と、第2熱交換器33とを有する。第1熱交換器32は、液体の水を加熱して水蒸気を発生させる。第1熱交換器32において発生する水蒸気の温度は、例えば100℃以上600℃以下であるとよい。第2熱交換器33は、第1熱交換器32で発生した水蒸気を加熱する。第2熱交換器33は、目的に応じて省略されてもよい。ハウジング31の内部には、排気が通過する。ハウジング31は、排気通路3の一部を構成するとよい。第1熱交換器32及び第2熱交換器33は、ハウジング31の内部に配置されている。第2熱交換器33は、排気通路3において第1熱交換器32よりも上流側、すなわちガラス溶解炉2側に配置されている。
【0043】
第1熱交換器32は、水ドラム35、気水ドラム36、及び複数の水管37を有する。気水ドラム36は水ドラム35より上方に配置されている。複数の水管37は上下に延び、気水ドラム36と水ドラム35とに接続されている。気水ドラム36には、給水管38と、蒸気管39とが接続されている。水は、給水管38を通して気水ドラム36に供給される。水は水管37内において蒸発して水蒸気になると共に加熱される。
【0044】
蒸気管39は、気水ドラム36と第2熱交換器33とを接続している。水蒸気は気水ドラム36及び蒸気管39を介して第2熱交換器33に供給される。水蒸気は、第2熱交換器33において更に加熱される。第2熱交換器33において、水蒸気は、600℃以上1200℃以下の温度まで加熱されるとよい。すなわち、ボイラ5で生成される水蒸気の温度が600℃以上1200℃以下であるとよい。第1熱交換器32は、蒸気管41によって電解装置4に接続されている。
【0045】
第1熱交換器32及び第2熱交換器33は、ステンレス鋼、又はクロムモリブデン鋼によって形成されているとよい。また、第1熱交換器32及び第2熱交換器33の外面は、Cr、Si、及びAlの少なくとも1つを含む酸化物被膜を有するとよい。これらにより、排気中に含まれる硫黄酸化物及び水蒸気、酸素、アルカリガス、ガラス原料由来のダスト等による第1熱交換器32及び第2熱交換器33の腐食が抑制される。
【0046】
ボイラ5は、第1熱交換器32及び第2熱交換器33の外面に付着するダストを除去するためのダスト除去装置42を有するとよい。これにより、排気から第1熱交換器32及び第2熱交換器33に伝達される熱量の低下を抑制することができる。また、ハウジング31内の閉塞を防ぐことができる。ダスト除去装置42は、各第1熱交換器32及び第2熱交換器33の外面に向けて圧縮空気及び高圧水蒸気の少なくとも一方を噴射するブロー装置43を含むとよい。これにより、高温環境下において適切にダストを除去することができる。他の実施形態では、ダスト除去装置42は、第1熱交換器32及び第2熱交換器33の外面を叩くことによって振動させる加振装置であってもよい。また、ダスト除去装置42は、第1熱交換器32及び第2熱交換器33の外面を擦る研磨装置であってもよい。
【0047】
図3に示すように、電解装置4は、アノード室44と、カソード室45と、アノード室44とカソード室45とを隔離し、酸素イオンが透過する固体電解質46と、固体電解質46のアノード室44側の表面に設けられたアノード48と、固体電解質46のカソード室45側の表面に設けられたカソード49と、アノード48及びカソード49に接続された電源51とを有する。電解装置4は、いわゆる、固体酸化物形電解セル(SOEC:Solid Oxide Electrolysis Cell)であるとよい。電解装置4は、アノード室44、カソード室45、固体電解質46、アノード48、及びカソード49を含むセルが複数積層されたセルスタックであってもよい。アノード室44及びカソード室45は、ハウジング53の内部に形成されているとよい。電解装置4は、排気通路3の外部に配置されているとよい。
【0048】
固体電解質46は、固体酸化物電解質であり、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ: Yttria-Stabilized Zirconia)等の安定化ジルコニア、(La,Li)TiO3等のペロブスカイト型リチウムイオン伝導性酸化物、ジルコニアドープセリア(Ce1-xZrxO2-y)及びガドリニアドープセリア(Ce1-xGdxO2-y)等のセリア系固体電解質であってよい。
【0049】
ボイラ5の蒸気管41は、電解装置4のカソード室45に接続されている。ボイラ5で生成された水蒸気は、蒸気管41を介してカソード室45に供給される。第2熱交換器33が省略されている場合には、ボイラ5の蒸気管39が電解装置4のカソード室45に接続されているとよい。すなわち、第1熱交換器32で生成された水蒸気が、蒸気管39を介してカソード室45に供給されるとよい。カソード室45において、水蒸気の温度は、100℃以上1200℃以下、好ましくは600℃以上1200℃以下であるとよい。カソード室45は、配管55を介して気液分離装置56に接続されている。気液分離装置56のガス出口は、配管57を介して水素タンク58に接続されている。配管57には圧縮機59が設けられている。
【0050】
アノード室44は、配管61を介して酸素供給管18に接続されている。配管61には、圧縮機62と、一方向弁63とが設けられているとよい。一方向弁63は、アノード室44側から酸素供給管18側への酸素ガスの流れを許容し、逆向きの流れを禁止する。
【0051】
カソード49では、以下の式(1)の電気化学反応が行われる。
O+2e→H+O2- ...(1)
式(1)の反応によって、カソード室45には水素ガスが発生する。カソード49で発生した酸素イオン(O2-)は、固体電解質46を通過してアノード48側に移動する。
【0052】
アノード48では、以下の式(2)の電気化学反応が行われる。
2-→0.5O+2e ...(2)
式(2)の反応によって、アノード室44には酸素ガスが発生する。
【0053】
カソード室45に発生した水素ガスは、水蒸気と共に配管55を介して気液分離装置56に流れる。気液分離装置56では、水素ガスと水蒸気とが冷却され、水蒸気が液化して水素ガスから分離される。気液分離装置56で水蒸気から分離された水素ガスは、圧縮機59で圧縮され、水素タンク58に送られる。気液分離装置56の冷却過程で、水素ガスと水蒸気から取り出した熱エネルギーを回収して他の用途に再利用してもよい。熱エネルギーの回収は、例えば気液分離装置56と再利用設備とを配管で繋いでもよい。熱エネルギーの再利用は、ボイラ5に供給する水の温め、ガラス溶解炉2に供給する燃料及び酸素の温め、ガラス原料の温め、電解装置4の温め等であってもよい。
【0054】
アノード室44に発生した酸素ガスは、配管61、圧縮機62、一方向弁63、及び酸素供給管18を介して各バーナ14に支燃ガスとして供給される。
【0055】
水酸化ナトリウム噴霧装置23は、排気に水酸化ナトリウム水溶液を噴霧する。これにより、以下の化学式(3)で表されるように、排気中の二酸化炭素と水酸化ナトリウムとが反応して炭酸ナトリウムと水が生成する。
CO+2NaOH→NaCO+HO ...(3)
水酸化ナトリウム噴霧装置23において、排気の温度は100℃以上であるため、化学式(3)によって生成する水は水蒸気になり、炭酸ナトリウムは粉体として排気中に浮遊する。これにより、排気中の二酸化炭素量を低減させることができる。なお、化学式(3)の反応に加えて、排気中の硫黄分が水酸化ナトリウムと反応して硫酸ナトリウム(NaSO)が生成する。生成した硫酸ナトリウムは粉体として排気中に浮遊する。
【0056】
集塵機24は、排気中の炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムを含む粉体を捕集する。集塵機24は、公知の電気集塵機やバグフィルタであるとよい。集塵機24で捕集された粉体は、集塵機24の粉体排出口から排出される。粉体は、ガラス原料の一部としてガラス溶解炉2に投入されるとよい。これにより、排気中の二酸化炭素をガラス原料として有効利用することができる。集塵機24を通過した排気は、煙突25から外部に排出される。
【0057】
排気通路3は、ガラス溶解炉2から側方に延びた後、下方に延びているとよい。第2熱交換器33は、ガラス溶解炉2の側方に配置されているとよい。第1熱交換器32は、第2熱交換器33の下方に配置されているとよい。この配置によれば、第1熱交換器32及び第2熱交換器33をガラス溶解炉2の周囲に効率良く配置することができる。
【0058】
本実施形態に係るプラント1は、ガラス及び水素の製造方法に使用される。ガラス及び水素の製造方法は、燃料の燃焼熱によって原料を溶解させ、溶融ガラス12を生成する溶解工程と、溶解工程において発生した排気を熱源として利用して水蒸気を生成する水蒸気生成工程と、水蒸気生成工程において生成された水蒸気の電気分解を行い、水素と酸素を生成する電解工程とを有する。また、ガラス及び水素の製造方法は、電解工程で生成された酸素を、溶解工程において燃料を燃焼させるための支燃ガスとして使用する。また、ガラス及び水素の製造方法は、水蒸気生成工程において冷却された排気に水酸化ナトリウム水溶液を噴霧する水酸化ナトリウム水溶液噴霧工程と、水酸化ナトリウム水溶液が噴霧された排気から粉体を除去する集塵工程とを有する。
【0059】
以上の実施形態によれば、ガラス溶解炉2において発生する排気の熱を利用して高温水蒸気を生成し、高温水蒸気を使用して水の電気分解を行うことができる。すなわち、ガラス溶解炉2において発生する排気を、高温水蒸気電解の熱源として使用することができ、環境負荷を低減することができるプラント1を提供することができる。また、プラント1から蓄熱室を省略した場合には、煉瓦を蓄熱材として使用する蓄熱室を利用しないため、プラント1の改修時等に発生する廃棄物を低減することができる。以上より、環境負荷を低減することができるプラント1を提供することができる。また、電解装置4に供給される水蒸気が排気を利用したボイラ5によって生成されるため、排気が有する熱を有効に利用することができる。ガラス溶解炉2で発生する排気は1000℃以上1600℃以下の高温であるため、水蒸気を600℃以上1200℃以下の高温に加熱することができる。水蒸気が高温に加熱されることによって、水の電気分解に必要な電圧を低下させることができ、エネルギー効率良く水素を製造することができる。
【0060】
ガラス溶解炉2は、燃料を酸素濃度が90容量%以上の支燃ガスと共に燃焼させる酸素燃焼用のバーナ14を有する。そのため、ガラス溶解炉2での燃料の燃焼に空気を必要としないため、窒素酸化物の発生を抑制することができる。また、酸素ガスを使用する場合、空気を使用する場合に比べて、支燃ガスの体積を低減することができるため火炎の温度を高温化することができる。このため、ガラス及びガラス溶解炉2への熱伝達効率が高まる。電解装置4は水蒸気の電気分解によって水素と共に酸素も生成する。そのため、酸素を支燃ガスとして使用するガラス溶解炉2に電解装置4を適用することは、電解装置4で生成される酸素を有効利用することができる。このように、ガラス溶解炉2と電解装置4との組み合わせは、相乗効果を奏する。
【0061】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、電解装置4のカソード室45が配管を介して燃料配管16に接続されてもよい。これにより、電解装置4において生成された水素が、バーナ14に供給される燃料の一部として使用される。
【符号の説明】
【0062】
1 :プラント
2 :ガラス溶解炉
3 :排気通路
4 :電解装置
5 :ボイラ
12 :溶融ガラス
14 :バーナ
16 :燃料配管
17 :酸素ガス供給源
18 :酸素供給管
32 :第1熱交換器
33 :第2熱交換器
41 :蒸気管
44 :アノード室
45 :カソード室
46 :固体電解質
48 :アノード
49 :カソード
51 :電源
56 :気液分離装置
図1
図2
図3