(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181769
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】測定用シート、自動分析装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
G01N35/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095102
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌造
(72)【発明者】
【氏名】杉村 友弘
(72)【発明者】
【氏名】増渕 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】後藤 貴士
(72)【発明者】
【氏名】秋澤 康雄
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB09
2G058CB15
2G058CC09
2G058CD12
2G058EA02
2G058ED02
2G058ED35
2G058GA01
2G058GA11
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】測定用シートを用いた検査において試料の送液速度を向上させること。
【解決手段】 実施形態に係る測定用シートは、試料を滴下するための分注部と、試料を測定するための測定部と、分注部と測定部とを接続する流路とを備える。流路は、分注部から測定部へ向かう方向について、濡れ性の勾配と毛細管力の勾配とのうち少なくとも一方を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を滴下するための分注部と、
前記試料を測定するための測定部と、
前記分注部と前記測定部とを接続する流路とを備え、
前記流路は、前記分注部から前記測定部へ向かう方向について、濡れ性の勾配と毛細管力の勾配とのうち少なくとも一方を有する、測定用シート。
【請求項2】
前記流路では、分注部側から測定部側へ向かうにつれて、濡れ性と毛細管力とのうち少なくとも一方が大きくなる、
請求項1に記載の測定用シート。
【請求項3】
前記流路は、前記濡れ性と前記毛細管力とのうち少なくとも一方が前記分注部よりも大きく、前記濡れ性と前記毛細管力とのうち少なくとも一方が前記測定部よりも小さい、
請求項1に記載の測定用シート。
【請求項4】
前記測定用シートは、紙により形成され、
前記流路では、前記分注部から前記測定部へ向かう方向について、前記紙の繊維密度または前記紙に混入する繊維が変化する、
請求項1に記載の測定用シート。
【請求項5】
前記測定用シートは、多数の孔を有する多孔質材料により形成され、
前記流路では、分注部側から測定部側へ向かう方向について、前記多孔質材料の種類または前記孔の密度が変化する、
請求項1に記載の測定用シート。
【請求項6】
請求項1に記載の測定用シートを保持するシート保持部と、
前記試料を前記測定用シートに分注する分注機構と、
前記測定用シートを用いて前記試料に関する測定を行う測定機構と、
を備え、
前記シート保持部は、前記分注部を前記測定部よりも高い位置で保持する、
自動分析装置。
【請求項7】
試料を滴下するための分注部と、前記試料を測定するための測定部と、前記分注部と前記測定部とを接続する流路とを有する測定用シートを保持するシート保持部と、
前記試料を分注する分注機構と、
前記測定用シートを用いて前記試料に関する測定を行う測定機構と、
を備え、
前記シート保持部は、前記分注部を前記測定部よりも高い位置で保持する、
自動分析装置。
【請求項8】
前記シート保持部は、前記測定用シートの前記分注部を保持する第1保持部と、前記測定用シートの前記測定部を保持する第2保持部とを備え、
前記第1保持部は、前記第2保持部よりも高い位置に設けられる、
請求項6または7に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記シート保持部の動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記測定機構による測定の実行時に前期測定部が水平に保持されるように前記シート保持部を制御する、
請求項8に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記測定用シートが前記シート保持部に保持された状態では、前記測定部は、前記分注部に対して、前記測定用シートが搬送される方向とは反対側に配置される、
請求項6または7に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記シート保持部の動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記測定用シートの搬送時において、第1の時間に渡って前記測定用シートの搬送速度を加速させ、前記第1の時間よりも長い第2の時間に渡って前記搬送速度を減速させる、
請求項10に記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記分注部に滴下された試料が前記測定部まで到達したか否かを判定し、前記試料が前記測定部まで到達していない場合に警告する警告部をさらに備える、
請求項6または7に記載の自動分析装置。
【請求項13】
請求項1に記載の測定用シートに前記試料を分注することと、
前記測定用シートを用いて前記試料に関する測定を行うことと、
を備える測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、測定用シート、自動分析装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液や尿に含まれる成分の濃度あるいは活性値などを、検査試薬との化学反応を利用して光学的、電気的に測定する装置である。このような自動分析装置として、紙媒体の測定用シートを使用して各種測定を行う自動分析装置がある。このような自動分析装置に用いられる測定用シートには、検体が滴下される分注部と、各種分析項目の測定が行われる測定部と、分注部に滴下された検体を測定部まで送液する流路が形成される。
【0003】
測定用シートを使用する自動分析装置では、検体は毛細管現象によって流路内を送液される。このため、分注部に滴下された検体が測定位置に到達するまでに時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、測定用シートを用いた検査において試料の送液速度を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る測定用シートは、試料を滴下するための分注部と、試料を測定するための測定部と、分注部と測定部とを接続する流路とを備える。流路は、分注部から測定部へ向かう方向について、濡れ性の勾配と毛細管力の勾配とのうち少なくとも一方を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る自動分析装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る分析機構の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る測定ユニットの構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る測定用シートの構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る自動分析装置による測定処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る測定用シートの構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第3の実施形態に係る測定用シートの構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態に係る自動分析装置による速度制御処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【
図13】
図13は、第4の実施形態に係る自動分析装置による自動警告処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、自動分析装置の実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る自動分析装置1の構成を示す図である。自動分析装置1は、分析機構2と、解析回路3と、駆動機構4と、入力インタフェース5と、出力インタフェース6と、通信インタフェース7と、記憶回路8と、制御回路9とを備える。
【0010】
分析機構2は、測定用シートに血液または尿などの試料を吐出する。また、分析機構2は、検査項目によっては、試料を所定の倍率で希釈した標準液を後述の測定用シートに吐出する。分析機構2は、測定用シートを用いて試料と試薬とを反応させ、試料に含まれる特定の成分を測定することにより、試料の物性値を測定する。測定方法としては、撮像装置を用いて試薬と反応した試料の色の変化を測定する呈色測定や、電極の電位の変化を測定する電極測定が用いられる。分析機構2は、測定結果を含む標準データおよび被検データを生成する。なお、試料は検体と呼ばれてもよい。
【0011】
解析回路3は、分析機構2により生成される標準データおよび被検データを解析することで、検量データおよび分析データを生成するプロセッサである。解析回路3は、例えば、記憶回路8から解析プログラムを読み出し、読み出した解析プログラムに従って標準データおよび被検データを解析する。例えば、解析回路3は、分析機構2により測定された試料の色の変化や電位に基づいて、試料(検体)中に含まれる特定の成分の濃度を算出する。なお、解析回路3は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えてもよい。
【0012】
駆動機構4は、制御回路9の制御に従い、分析機構2を駆動させる。駆動機構4は、例えば、ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベアおよびリードスクリューなどにより実現される。
【0013】
入力インタフェース5は、例えば、操作者が測定を指示した試料または病院内ネットワークNWを介して測定を依頼された試料に係る各検査項目の分析パラメータなどの設定を受け付ける。入力インタフェース5は、例えば、マウス、キーボード、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパッド、およびタッチパネルなどにより実現される。入力インタフェース5は、制御回路9に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路9へ出力する。入力インタフェース5は、入力手段の一例である。
【0014】
なお、入力インタフェース5は、本明細書において、マウスおよびキーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、入力インタフェース5には、自動分析装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路9へ出力する電気信号の処理回路が含まれてもよい。
【0015】
出力インタフェース6は、制御回路9に接続され、制御回路9から供給される信号を出力する。出力インタフェース6は、例えば、表示回路、印刷回路および音声デバイスなどにより実現される。出力インタフェース6は、残水の検知結果をユーザに通知する。出力インタフェース6は、通知手段の一例である。通知手段は、報告手段と呼ばれてもよい。
【0016】
表示回路には、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイおよびプラズマディスプレイなどが含まれる。また、表示回路には、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、ビデオ信号を外部へ出力する処理回路が含まれてもよい。印刷回路は、例えば、プリンタなどを含む。また、印刷回路には、印刷対象を表すデータを外部へ出力する出力回路が含まれてもよい。音声デバイスは、例えば、スピーカなどを含む。また、音声デバイスには、音声信号を外部へ出力する出力回路が含まれてもよい。尚、出力インタフェース6は、入力インタフェース5と共にタッチパネル、或いはタッチスクリーンとして実現されてもよい。
【0017】
通信インタフェース7は、例えば、病院内ネットワークNWと接続する。通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWを介してHIS(Hospital Information System)とデータ通信を行う。尚、通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWと接続する検査部門システム(Laboratory Information System:LIS)を介してHISとデータ通信を行ってもよい。
【0018】
記憶回路8は、解析回路3で実行される解析プログラム、および制御回路9に備わる機能を実現するための制御プログラムを記憶している。記憶回路8は、解析回路3により生成される検量データを検査項目毎に記憶する。記憶回路8は、解析回路3により生成される分析データを試料毎に記憶する。記憶回路8は、操作者から入力された検査オーダ、または通信インタフェース7が病院内ネットワークNWを介して受信した検査オーダを記憶する。
【0019】
記憶回路8は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路等の記憶装置である。また、記憶回路8は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体であってもよい。なお、記憶回路8は、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。記憶回路8は、メモリと呼ばれてもよい。
【0020】
記憶回路8は、制御回路9によって実行されるプログラム、制御回路9の処理に用いられる各種データ等を記憶する。プログラムとしては、例えば、予めネットワーク又は非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からコンピュータにインストールされ、制御回路9の各機能を当該コンピュータに実現させるプログラムが用いられる。なお、本明細書において扱う各種データは、典型的にはデジタルデータである。記憶回路8は、記憶手段の一例である。
【0021】
制御回路9は、自動分析装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路9は、記憶回路8から読み出したプログラムを実行することにより、システム制御機能91を実行する。すなわち、制御回路9は、システム制御機能91を備える。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによって各機能が実現されるものとして説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。また、システム制御機能91は、それぞれシステム制御回路と呼んでもよく、個別のハードウェア回路として実装してもよい。制御回路9が実行する各機能についての上記説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。なお、制御回路9は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えてもよい。制御回路9は、制御部又は処理回路と呼ばれてもよい。
【0022】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、ASIC、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路8に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路8にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。上記「プロセッサ」の説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0023】
制御回路9は、システム制御機能91により、入力インタフェース5から入力される入力情報に基づき、自動分析装置1における各部を統括して制御する。例えば、システム制御機能91において制御回路9は、検査項目に応じた測定を実施するように駆動機構4を駆動し、分析機構2で生成される標準データおよび被検データを解析するように解析回路3を制御する。システム制御機能91を実現する制御回路9は、制御部の一例である。
【0024】
次に、分析機構2の構成について詳しく説明する。
図2は、
図1に示される分析機構2の構成の一例を示す図である。分析機構2は、試料ラック201と、ラック投入部202と、搬送部203と、分注レール204と、分注プローブ205と、複数の測定ユニット206と、ラック格納部207とを備える。
【0025】
試料ラック201は、測定対象の試料を収容する試料容器200を複数保持する。例えば、試料ラック201は、5本の試料容器を並列して保持可能である。
【0026】
ラック投入部202には、投入された試料ラック201が配置される。
【0027】
搬送部203は、駆動機構4により、ラック投入部202に配置された試料ラック201を吸引位置P1へ搬送する。吸引位置P1では、未測定の試料が吸引される。
【0028】
分注レール204は、分注プローブ205を移動可能に支持する。分注プローブ205は、試料ラック201に収容された試料を分注する。具体的には、分注プローブ205は、吸引位置P1に搬送された試料ラック201に収容された試料を吸引した後、分注レール204に沿って測定ユニット206へ向かって移動し、吸引した試料を測定ユニット206に設定された分注位置P2に吐出する。分注位置は、吐出位置と呼ばれてもよい。
【0029】
上述のように、分注プローブ205は、駆動機構4によって駆動され、吸引位置P1、分注位置P2において上下方向に移動する。分注プローブ205は、制御回路9の制御に従い、吸引位置P1に位置する試料ラック201から試料を吸引する。また、分注プローブ205は、制御回路9の制御に従い、吸引した試料を、分注位置P2に位置する測定ユニット206へ吐出する。
【0030】
各測定ユニット206は、試料ラックから分注した試料の物理的性質を測定する。具体的には、各測定ユニット206は、分注位置P2おいて吐出された試料を測定ユニット206に設定された測定位置P3へ搬送し、測定位置P3に搬送された試料に対して所定の測定方法で測定を実行する。測定方法は、例えば、電極測定または呈色測定である。各測定ユニット206は、測定結果に基づいて標準データ又は被検データを生成し、生成した標準データ及び被検データを解析回路3へ出力する。
【0031】
本実施形態では、1つの測定ユニット206に対して1種類の測定方法による測定が実行される。例えば、1つの測定ユニット206において電極測定が行われ、残りの複数の測定ユニット206において呈色測定が行われる。測定ユニット206は、科学的に安定した物質で構成されることが好ましい。科学的に安定した物質としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどが挙げられる。測定ユニット206は、保持手段の一例である。
【0032】
なお、設けられる測定ユニット206の数は1つ以上であればよく、8個以上であってもよい。また、本実施形態では、測定ユニット206全体で呈色測定と電極測定の2つの測定方法を実行可能な例について説明するが、これに限るものではない。例えば、全ての測定ユニット206が呈色測定を行ってよく、複数の測定ユニット206により3つ以上の測定方法による測定が行われてもよい。
【0033】
分注プローブ205の先端部には、図示しないサンプリングチップが取り付けられている。サンプリングチップは、分注プローブ205に対して着脱可能であり、使い捨て可能である。また、分析機構2は、チップ装着機構214と、チップ廃棄機構215とを備える。チップ装着機構214及びチップ廃棄機構215は、分注プローブ205の移動軌道上に配置されている。分注プローブ205を用いて試料を分注する際、サンプリングチップ内に試料が吸引される。試料を測定ユニット206へ吐出した後、分注プローブ205はチップ廃棄機構215の上部に移動する。使用済みのサンプリングチップは、チップ廃棄機構215により分注プローブ205から取り外され廃棄される。その後、分注プローブ205はチップ装着機構214の上部に移動し、チップ装着機構214により分注プローブ205に新たなサンプリングチップが装着される。
【0034】
使い捨てのサンプリングチップを用いることにより、分注プローブ205の洗浄が不要となるため、洗浄機構を設けることなく、試料のキャリーオーバを無くすことができる。洗浄機構を設けないことにより、装置を小型化することができる。
【0035】
なお、チップ装着機構214及びチップ廃棄機構215の代わりに、試料の分注を行った後の分注プローブ205を純水及び洗剤を用いて洗浄する洗浄機構が設けられてもよい。この場合、前述のサンプリングチップは設けられなくてもよい。
【0036】
搬送部203は、測定が完了した試料ラック201を、ラック格納部207へ搬送する。ラック格納部207には、測定ユニット206による測定が完了した試料ラック201が搬送される。ラック格納部207では、測定が完了した試料ラック201が回収される。
【0037】
次に、測定ユニット206の構成について説明する。
図3は、測定ユニット206の構成の一例を示す図である。測定ユニット206は、測定用シート220を保持し、測定用シート220を用いて試料に関する測定を行う。測定ユニット206は、シート保持部及び測定機構の一例である。
【0038】
測定ユニット206は、搬送レーン2061を備える。搬送レーン2061は、複数の測定用シート220を1枚ずつ所定の方向に沿って搬送する。搬送レーン2061は、シート保持部の一例である。搬送レーン2061は、例えば、ベルトコンベア方式の搬送ベルトである。搬送レーン2061上には、測定用シート220が設置される設置位置と、測定用シート220に試料が滴下される分注位置P2と、測定用シート220に滴下された試料の測定を行う測定位置P3と、測定が終了した測定用シート220を回収する回収位置が設定されている。搬送レーン2061は、所定の時間毎に駆動と停止を繰り返すことにより、設置位置において設置された測定用シート220を分注位置P2及び測定位置P3へ搬送する。シート設置部では、設置した測定用シート220が送り出される度に、新たな測定用シート220が設置される。分注位置P2では、分注プローブ205により試料が測定用シート220に分注される。分注プローブ205は、分注機構の一例である。
【0039】
測定用シート220は、紙の基板に作製された微小な構造体や流路を反応場として、試料の反応、分析などを行うマイクロ流体分析デバイスである。紙基板は、例えば、セルロース繊維で構成される。測定用シート220の幅は、例えば、1cm~5cmである。測定用シート220は、例えば、毛細管現象により被検試料を所定の位置に運ぶ構成が用いられる。紙の基板を用いることにより、測定用シート220を薄く、軽量で、安価に作成することができる。また、紙の基板を用いることにより、測定用シート220に生体物質が付着しても、測定用シート220を焼却することにより安全に廃棄可能である。また、紙に試料を垂らすと、試料は毛細管現象により流路の中を自然に流れるため、ガラスやプラスチックの基板を用いる場合に比べて、ポンプなどの外部装置を設ける必要がなく、装置を小型化することができる。その他、使用後に廃棄可能な紙を基板とした測定用シート220を用いることにより、使用後に再利用する反応管等を用いる場合に比べて、反応管の洗浄機構等を省略することができ、装置を小型化することができる。紙の基板上に作成される微小な構造体や流路としては、例えば、山田健太郎, 鈴木孝治, チッテリオ ダニエル, “紙基板マイクロ流体分析デバイス”, Electrochemistry, The Electrochemical Society of Japan, 2014年12月27日, p.30-35に記載のものを用いることができる。測定用シート220は、測定シートと呼ばれてもよい。
【0040】
また、測定用シート220として、多孔質材料をシート状に形成したものを用いてもよい。多孔質材料としては、例えば、ゴム、スポンジ、シリコン、ポリプロピレン等の樹脂が用いられる。この場合、多孔質材料の毛細管現象を利用して試料が送液される。
【0041】
図4は、1枚の測定用シート220の構成を示す図である。
図5は、
図4のA-A線断面図である。測定用シート220は、試料を滴下するための分注部221と、試料を測定するための測定部222と、分注部221と測定部222とを接続する流路223とを備える。分注部221、測定部222及び流路223は、例えば、シリコン等で周りを囲むことにより形成される。
【0042】
ここでは、1枚の測定用シート220に、分注部221と測定部222と流路223が1つずつ設けられる場合を例に説明する。このような測定用シート220は、例えば、呈色測定に用いられる。呈色測定用の測定用シート220において、1つの分注部221に対して複数の流路223と複数の測定部222が接続されてもよい。電極測定では、1つの分注部221に対して複数の測定部222が設けられた測定用シート220が用いられる。電極測定用の測定用シート220では、複数の測定部222のうちの1つにリファレンス用電極測定端子が設けられ、残りの測定部222に電極項目測定用端子が設けられる。また、1つの測定用シート220に複数の分注部221が形成され、分注部221のそれぞれに1つ以上の流路223と測定部222が接続されてもよい。すなわち、1つの測定用シート220上に、試料が移動可能な分注部221、流路223、及び測定部222を含むユニットが複数設けられてもよい。
【0043】
搬送レーン2061は、測定用シート220を分注位置へ搬送する。分注位置では、分注プローブ205から分注部221に試料が吐出される。試料が分注部221に吐出されると、搬送レーン2061は、測定用シート220が分注位置から測定位置へ搬送される。この際、分注部221に滴下された試料は、流路223内に流入し、毛細管現象により測定部222まで自動的に搬送される。測定位置では、測定部222まで搬送された試料に対して図示しない測定装置による測定が行われる。
【0044】
測定装置は、試料の物性値を測定する。測定装置は、例えば、各測定ユニット206に1つずつ設けられている。測定装置は、測定が実行される測定位置において、搬送レーン2061の上部に固定される。また、測定装置は、搬送レーン2061上に設置された測定用シート220の測定部222と対向する位置に設けられる。測定装置は、測定位置に搬送された測定用シート220に対して呈色測定又は電極測定を行う。
【0045】
呈色測定を行う測定ユニット206では、呈色測定用の測定用シート220と呈色測定用の測定装置が用いられる。呈色測定用の測定用シート220では、流路223には、試料に含まれる所定の成分と反応する試薬が収容される。呈色測定に用いられる測定用シート220は、試薬シートと呼ばれてもよい。分注部221に吐出された試料は、毛細管現象により流路223の内部へ自然に流入し、流路223を通って測定部222まで流れる。この際、流路223の内部において試料と試薬が反応する。測定部222では、試薬と反応した後の試料の色の変化が測定装置を用いて測定される。この際、例えば、試薬と反応した試料の色の変化を撮影可能な撮像装置が用いられる。なお、試薬は、流路223の代わりに測定部222に収容されてもよい。
【0046】
電極測定を行う測定ユニット206では、電極測定用の測定用シート220と電極測定用の測定装置が用いられる。電極測定用の測定用シート220では、分注部221に吐出された試料は、毛細管現象により流路223の内部へ自然に流入し、流路223を通って測定部222まで流れる。測定部222では、試料に含まれる所定の成分と反応する電極を有する測定装置を用いて、試料に含まれる特定の電解質が測定される。電極測定を行う測定装置としては、例えば、測定部222の電位を測定可能な測定装置が用いられる。特定の電解質は、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオンおよび塩素イオンである。電極測定を行う測定装置は、試料に含まれる特定の成分の量に応じた電位を発生する電極を備える。例えば、電極としてイオン選択性電極(Ion Selective Electrode:ISE)が用いられ、自動分析装置1はイオン選択性電極の電位を測定することにより試料に含まれる電解質の濃度を検出する。
【0047】
反応管を用いた電極測定では、測定と次の測定の間に校正液の電位測定が必要である。このため、測定のスループットが低下する。一方、測定用シート220を用いて測定を行う場合、校正液の電位測定が不要となる。このため、電極測定を連続で測定を行う場合のスループットが向上する。
【0048】
また、測定ユニット206には恒温部が設けられることが好ましい。恒温部は、例えば、搬送レーン2061の下側に配置される。恒温部が設けられることにより、搬送レーン2061上を搬送される測定用シート220を、搬送レーン2061の裏側から加温して一定の温度に保つことができる。
【0049】
流路223は、分注部221から測定部222へ向かう方向について、濡れ性の勾配と毛細管力の勾配とのうち少なくとも一方を有する。例えば、流路223は、分注部側から測定部側へ向かうにつれて、濡れ性と毛細管力とのうち少なくとも一方が大きくなるように形成されている。なお、濡れ性の勾配と毛細管力の勾配の一方のみを流路223に持たせてもよく、濡れ性の勾配と毛細管力の勾配の両方を流路223に持たせてもよい。
【0050】
測定部222は、濡れ性と毛細管力とのうち少なくとも一方が分注部221よりも大きくなるように形成されている。また、流路223は、濡れ性と毛細管力とのうち少なくとも一方が分注部221よりも大きく、濡れ性と毛細管力とのうち少なくとも一方が測定部222よりも小さくなるように形成されている。例えば、流路223の中で分注部221に隣接する部分の濡れ性または毛細管力が分注部221よりも僅かに大きくなるように形成され、測定部222に近づくにつれて濡れ性または毛細管力が大きくなるように形成され、流路223の中で測定部222に隣接する部分の濡れ性または毛細管力が測定部222よりも僅かに小さくなるように形成される。
【0051】
まず、流路223に濡れ性の勾配を持たせる場合について説明する。
【0052】
流路223に濡れ性の勾配を持たせる方法としては、例えば、混入させる繊維を変化させる方法が挙げられる。この方法では、例えば、流路223を構成する紙基板に疎水性の高い繊維(以下、混入繊維と呼ぶ)を混入させる。混入繊維としては、例えば、ポリプロピレンや羊毛が用いられる。混入繊維として、1種類の繊維を用いてもよく、2種類以上の繊維を用いてもよい。混入繊維が混入された部分では、混入繊維を混入されていない部分に比べて、親水性が低く、疎水性が高く、濡れ性が低い状態となる。
【0053】
このため、分注部221から測定部222へ向かう方向について、位置に応じて紙基板に混入する混入繊維の量、種類、比率等を変化させることにより、流路223に濡れ性の勾配を持たせることができる。例えば、分注部側から測定部側へ向かうにつれて混入繊維を混入させる量(以下、混入量と呼ぶ)を徐々に少なくすることで、疎水性が徐々に低くなる、親水性及び濡れ性が徐々に高くなる状態にすることができる。また、分注部側から測定部側へ向かうにつれて混入繊維の種類を疎水性の低い繊維に変更することで、疎水性が徐々に低くなる、親水性及び濡れ性が徐々に高くなる状態にすることができる。なお、混入繊維の種類、各繊維の比率、混入量等のうちの複数の項目を変化させてもよい。また、分注部側から測定部側へ向かうにつれて、濡れ性を連続的に変化させてもよく、段階的に変化させてもよい。
【0054】
同様に、分注部221及び測定部222を構成する紙基板に混入させる混入繊維の量、種類、比率等を変更することにより、分注部221の濡れ性を流路223の濡れ性よりも低くし、測定部222の濡れ性を流路223の濡れ性よりも高くすることができる。
【0055】
このような構成にすることで、流路223における分注部側の端部の親水性が分注部221の親水性よりも高くなるため、親水性が低い分注部221から親水性が高い流路223への試料の送液が促される。流路223内では、分注部側から測定部側へ向かうにつれて親水性が高くなるため、親水性が低い分注部側から親水性が高い測定部側への試料の送液が促される。そして、測定部222の親水性が流路223における測定部側の端部の親水性よりも高くなるため、親水性が低い流路223から親水性が高い測定部222への試料の送液が促される。
【0056】
なお、多孔質材料の測定用シート220を用いる場合、多孔質材料の種類を変更することにより、流路223に濡れ性の勾配を持たせてもよい。この場合、流路223では、分注部側から測定部側へ向かう方向の位置に応じて、多孔質材料の種類が変化する。例えば、濡れ性を低くしたい部分を疎水性の低い多孔質材料を用いて形成し、濡れ性を高くしたい部分を疎水性の高い多孔質材料を用いて形成する。
【0057】
次に、流路223に毛細管力の勾配を持たせる場合について説明する。
【0058】
流路223に毛細管力の勾配を持たせる方法としては、例えば、紙基板を構成する繊維の密度を変更する方法が挙げられる。流路223を構成する紙基板の繊維の密度(以下、繊維密度と呼ぶ)が高い部分では、繊維密度が低い部分に比べて、毛細管力が大きくなる。このため、位置に応じて紙基板の繊維密度を変化させることにより、流路223に毛細管力の勾配を持たせることができる。例えば、分注部側から測定部側へ向かうにつれて繊維密度を大きくすることで、毛細管力が徐々に大きくなる状態にすることができる。
【0059】
同様に、分注部221及び測定部222を構成する紙基板の繊維密度を変更することにより、分注部221の毛細管力を流路223の毛細管力よりも小さくし、測定部222の毛細管力を流路223の毛細管力よりも大きくすることができる。
【0060】
また、多孔質材料の測定用シート220を用いる場合、多孔質材料の気孔の大きさ(以下、気孔サイズと呼ぶ)を変更することにより、流路223に毛細管力の勾配を持たせてもよい。この場合、流路223では、分注部側から測定部側へ向かう方向の位置に応じて、多孔質材料の気孔サイズが変化する。例えば、毛細管力を小さくしたい部分の気孔サイズを大きくし、毛細管力を大きくしたい部分の気孔サイズを小さくする。
【0061】
このような構成にすることで、流路223における分注部側の端部の毛細管力が分注部221の毛細管力よりも大きくなるため、毛細管力が小さい分注部221から毛細管力が大きい流路223への試料の送液が促される。流路223内では、分注部側から測定部側へ向かうにつれて毛細管力が大きくなるため、毛細管力が小さい分注部側から毛細管力が大きい測定部側への試料の送液が促される。そして、測定部222の毛細管力が流路223における測定部側の端部の毛細管力よりも大きくなるため、毛細管力が小さい流路223から毛細管力が大きい測定部222への試料の送液が促される。
【0062】
次に、自動分析装置1の動作について説明する。
図6は、制御回路9により実行される測定処理の手順の一例を示すフローチャートである。測定処理とは、測定用シート220を用いて試料の物性値を測定する処理である。なお、以下で説明する各処理における処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り適宜変更可能である。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。各処理における処理手順についての上記説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0063】
(測定処理)
(ステップS101)
測定処理は、測定用シート220が搬送レーン2061の設置位置に設置された状態で開始される。制御回路9は、搬送レーン2061を1サイクル分だけ駆動することにより、測定用シート220を1サイクル分送り出す。測定用シート220が1サイクル分送り出されると、測定用シート220は、測定用シート220の搬送方向へ所定の量だけ移動する。この時、分注位置P2に配置されていた測定用シート220は分注位置P2から測定位置P3へ向かって搬送され、分注位置P2に隣接する位置に配置されていた測定用シート220が分注位置P2に新たに配置される。
【0064】
また、測定用シート220が1サイクル分送り出される度に、測定位置P3に配置されていた測定用シート220が、回収位置へ向かって順次搬送され、測定位置P3に隣接する位置に配置されていた測定用シート220が測定位置P3に新たに配置される。
【0065】
(ステップS102)
分注プローブ205は、制御回路9の制御に従い、吸引位置P1に新たに配置された試料ラック201から所定の量の試料を吸引し、測定を行う測定ユニット206へ移動する。その後、分注プローブ205は、制御回路9の制御に従い、分注位置P2に新たに配置された測定用シート220の分注部221に吸引した試料を滴下する。
【0066】
(ステップS103)
測定装置は、制御回路9の制御に従い、測定位置P3に新たに配置された測定用シート220に対する所定の項目の測定を実行する。例えば、試料の測定として、電極測定または呈色測定が行われる。
【0067】
ここで、電極測定を実行する方法について簡単に説明する。電極測定を行う測定装置は、搬送レーン2061上で搬送される測定用シート220に対向する面に接続部を備える。接続部は、1つの参照電極と、1つ以上のイオン選択性電極(Ion Selective Electrode:ISE)を備える。各イオン選択性電極は、試料に含まれる特定の成分の量に応じて電位が変化する。具体的には、各イオン選択性電極は、特定の電解質を選択的に検出する感応膜を有する。例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオンおよび塩素イオンをそれぞれ検出する3つのイオン選択性電極が設けられる。また、電極測定用の測定用シート220では、複数の測定部222のうちの1つに参照用端子が設けられ、残りの測定部222に電極項目測定用端子が設けられる。
【0068】
測定装置は、駆動機構4により、搬送レーン2061に対して近づく方向又は離れる方向に移動することができる。電極測定を実行する際には、制御回路9の制御に従い、測定装置が搬送レーン2061上に配置された測定用シート220に近づく方向に移動し、各イオン選択性電極と参照電極が対象の測定部222に接続される。このとき、測定装置の参照電極が測定部222の参照用端子に接続され、測定装置のイオン選択性電極が測定部222の電極項目測定用端子に接続される。測定装置は、各イオン選択性電極の電圧と参照電極の電圧を測定し、各イオン選択性電極と参照電極の間の電位を算出する。その後、測定装置は、測定したデータを標準データまたは被検データとして解析回路3へと出力する。そして、例えば、試料に含まれるナトリウムイオン、カリウムイオンおよび塩素イオンが検出される。
【0069】
次に、呈色測定を実行する方法について簡単に説明する。呈色測定を行う測定装置は、搬送レーン2061上で搬送される測定用シート220に対向する面に、撮像部を備える。撮像部は、対向する測定用シート220の測定部222を撮像する。撮像部は、例えば、カメラである。対向する測定用シート220の測定部222に光を照射することにより、撮像部による撮像を行いやすくする照明部が設けられてもよい。
【0070】
測定装置は、駆動機構4により、搬送レーン2061に対して近づく方向又は離れる方向に移動することができる。呈色測定を実行する際には、撮像部は、制御回路9の制御に従い、測定部222の色の変化を測定する。その後、測定装置は、測定結果を含む標準データ及び被検データを生成し、生成した標準データ及び被検データを解析回路3へ送信する。
【0071】
(ステップS104)
制御回路9は、予め設定された全ての検査項目の測定が終了したか否かを判定する。全ての測定が終了していない場合(ステップS104-No)、制御回路9は、予め設定された全ての測定が完了するまで、ステップS101からステップS103までの処理を繰り返し実行する。これにより、設置位置に設置された測定用シート220は分注位置P2に搬送され、分注位置P2において分注部221に試料が滴下された後、測定位置P3へ搬送される。搬送されている間には、分注部221に吐出された試料が流路223を通って測定部222に搬送され、流路223または測定部222において試料と試薬との反応が生じる。そして、測定位置P3において、反応が完了した試料の測定が行われる。
【0072】
予め設定された全ての検査項目の測定が終了した場合(ステップS104-Yes)、制御回路9は測定処理を終了する。
【0073】
以下、本実施形態に係る自動分析装置1の効果について説明する。
【0074】
本実施形態に係る自動分析装置1は、測定用シート220を保持する測定ユニット206と、試料を測定用シート220に分注する分注プローブ205とを備える。測定ユニット206は、測定用シート220を用いて試料に関する測定を行う。
【0075】
自動分析装置1に用いられる測定用シート220は、試料を滴下するための分注部221と、試料を測定するための測定部222と、分注部221と測定部222とを接続する流路223とを備える。流路223は、分注部221から測定部222へ向かう方向について、濡れ性の勾配と毛細管力の勾配とのうち少なくとも一方を有する。
【0076】
上記構成の測定用シート220を用いることにより、本実施形態に係る自動分析装置1は、濡れ性と毛細管力のうち少なくとも一方の勾配を有するように流路223を形成することにより、分注部221から流入した試料が、測定部222が位置する方向へ流れやすくなる。これにより、流路223において試料の送液が促され、試料の送液速度を向上させることができる。これにより、自動分析装置1による検査のスループットを向上させることができる。また、試料の送液が促されることにより、粘性が高い試料を希釈無しで使用しやすくなる。
【0077】
例えば、流路223は、分注部側から測定部側へ向かうにつれて、濡れ性と毛細管力とのうち少なくとも一方が大きくなるように形成することができる。
【0078】
また、例えば、測定用シート220が紙により形成されている場合、流路223では、分注部221から測定部222へ向かう方向について、紙の繊維密度または紙に混入する繊維を変化させることにより、濡れ性と毛細管力とのうち少なくとも一方を変化させることができる。
【0079】
また、測定用シート220が多数の孔を有する多孔質材料により形成されている場合、流路223では、分注部221から測定部222へ向かう方向について、多孔質材料の種類または孔の密度を変化させることにより、濡れ性と毛細管力とのうち少なくとも一方を変化させることができる。
【0080】
また、本実施形態に係る自動分析装置1に用いられる測定用シート220の流路223は、濡れ性と毛細管力とのうち少なくとも一方が分注部221よりも大きく、濡れ性と毛細管力とのうち少なくとも一方が測定部222よりも小さくなるように形成される。
【0081】
上記構成の測定用シート220を用いることにより、本実施形態に係る自動分析装置1では、流路223の濡れ性または毛細管力が分注部221よりも大きくなるため、分注部221から流路223への試料の送液が促される。また、流路223内では、分注部側から測定部側へ向かうにつれて濡れ性または毛細管力が大きくなるため、分注部側から測定部側への試料の送液が促される。そして、測定部222の濡れ性または毛細管力が流路223よりも大きくなるため、流路223から測定部222への試料の送液が促される。このようにして、分注部221に滴下された試料が測定部222まで送液されやすくなり、送液速度が向上する。
【0082】
なお、分注部221または測定部222の内部においても、試料を送液する方向について、濡れ性及び毛細管力のうち少なくとも一方の勾配を持たせてもよい。分注部221または測定部222に濡れ性及び毛細管力のうち少なくとも一方の勾配を持たせる場合、流路223に勾配を持たせる方法と同様の方法を用いることができる。例えば、流路223から離れた位置から流路223に近づくにつれて濡れ性及び毛細管力のうち少なくとも一方が大きくなるように分注部221を形成することにより、分注部221に滴下された試料の流路223への送液をさらに促すことができる。また、流路223から離れるにつれて濡れ性及び毛細管力のうち少なくとも一方が大きくなるように測定部222を形成することにより、流路223から測定部222に流入した試料を測定装置による測定が実行される位置まで効果的に送液することができる。
【0083】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を以下の通りに変形したものである。第1の実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。本実施形態に係る自動分析装置1では、測定用シート220の分注部221から測定部222までの間に傾斜を持たせることで、重力により試料の送液が促される。
【0084】
図7は、本実施形態の自動分析装置1に用いられる測定用シート220の構成を示す図である。
図8は、
図7のB-B線断面図である。
図7及び
図8に示すように、測定用シート220には、1つの分注部221と、4つの測定部222と、4つの流路223が形成されている。分注部221は、測定用シート220中央に形成されている。各流路223は、4つの測定部222のうちの1つと分注部221とを接続している。
【0085】
ここで、水平方向のうち、搬送レーン2061の搬送方向に対して直交する方向を幅方向と規定する。搬送レーン2061は、幅方向について中央に位置する中央部20611と、幅方向について中央部20611の両外側に位置する外側部20612とを備える。中央部20611は、幅方向について2つの外側部20612の間に位置する。
【0086】
中央部20611は、搬送レーン2061の延設方向に沿って略水平に延設されている。すなわち、中央部20611は、測定用シート220の搬送方向に沿うように形成されている。外側部20612は、水平方向及び中央部20611に対して傾斜している。外側部20612は、幅方向について外側に向かうにつれて、下側に向かう状態に形成されている。搬送レーン2061は、中央部20611と外側部20612との境界部において折り曲がった形状に形成されている。搬送レーン2061は、中央部20611が最も高い位置に位置し、中央部20611から外側に離れるにつれて位置が低くなるように形成されている。
【0087】
測定用シート220は、所定の向きで搬送レーン2061上に設置される。測定用シート220は、流路223の一部と分注部221が中央部20611上に配置され、流路223の大部分と測定部222が外側部20612上に配置されるような向きで、搬送レーン2061上に設置される。このため、測定用シート220は、分注部221と測定部222の間に折り目が形成され、この折り目の位置で折り曲がった状態で搬送レーン2061に設置される。この状態では、分注部221は測定部222よりも高い位置に位置する。また、流路223のうち外側部20612上に配置されている部分は、分注部側から測定部側へ向かうにつれて下側に向かうように傾斜した状態となる。
【0088】
中央部20611は、測定用シート220の分注部221を保持する第1保持部の一例であり、外側部20612は、測定用シート220の測定部222を保持する第2保持部の一例である。中央部20611は、外側部20612よりも高い位置に設けられている。また、測定ユニット206の搬送レーン2061は、分注部221を測定部222よりも高い位置で保持するシート保持部の一例である。
【0089】
また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、流路223は、分注部側から測定部側へ向かう方向について、濡れ性の勾配と毛細管力の勾配とのうち少なくとも一方を有するように形成される。
【0090】
以下、本実施形態に係る自動分析装置1の効果について説明する。
【0091】
本実施形態に係る自動分析装置1では、搬送レーン2061は、分注部221を測定部222よりも高い位置で保持するように形成されている。具体的には、搬送レーン2061は、測定用シート220の分注部221を保持する中央部20611と、測定用シート220の測定部222を保持する外側部20612とを備え、中央部20611は、外側部20612よりも高い位置に設けられている。
【0092】
上記構成により、分注部221が測定部222よりも高い位置で保持されるため、分注部221と測定部222とを接続する流路223が傾斜した状態となる。このため、流路223を流れる試料に作用する重力の影響により、流路223の下側に位置する測定部222への試料の送液が促進される。このように、分注部221と測定部222の間の流路223に傾斜を持たせることで、重力を利用して試料の送液を促すことができる。
【0093】
また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、流路223は、分注部221から測定部222へ向かう方向について、濡れ性の勾配と毛細管力の勾配とのうち少なくとも一方を有するように形成される。これにより、分注部221から測定部222への試料の送液をさらに促進することができる。
なお、流路223には、濡れ性の勾配と毛細管力の勾配のいずれも設けられなくてもよい。
【0094】
(第2の実施形態の変形例)
また、測定装置の構成や配置によっては、測定部222が水平な状態で呈色測定や電極測定を行うことが好ましい場合がある。このような場合、制御回路9の制御により、分注位置P2から測定位置P3までの間では、
図7及び
図8に示すように中央部20611と外側部20612の境界位置で搬送レーン2061が折り曲がり、測定位置P3に到達した状態では搬送レーン2061が略水平になるように搬送レーン2061の形状が制御されてもよい。
【0095】
この場合、制御回路9は、搬送レーン2061の動作を制御し、測定装置による測定の実行時に測定用シート220の測定部222が水平に保持されるように搬送レーン2061を制御する。
【0096】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を以下の通りに変形したものである。第1の実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。本実施形態に係る自動分析装置1では、慣性力を利用して、分注部221から測定部222への試料の送液を促すことができる。
【0097】
図9は、本実施形態の自動分析装置1に用いられる測定用シート220の構成を示す図である。
図10は、
図9のC-C線断面図である。
図9及び
図10に示すように、測定用シート220には、1つの分注部221と、4つの測定部222と、4つの流路223が形成されている。分注部221は、測定用シート220中央に形成されている。各流路223は、4つの測定部222のうちの1つと分注部221とを接続している。
【0098】
各流路223は、分注部221から同じ方向へ向かって延設されている。また、各測定部222は、分注部221に対して同じ方向に形成されている。したがって、分注部221と測定部222は、測定用シート220における反対側の端部に配置されている。
【0099】
測定用シート220は、所定の向きで搬送レーン2061上に設置される。測定用シート220は、分注部221が搬送方向側に位置し、各測定部222が搬送方向とは反対側に位置し、搬送方向に沿って各流路223が延びるような向きで、搬送レーン2061上に設置される。このため、測定用シート220が搬送レーン2061に保持された状態では、測定部222は、分注部221に対して、測定用シート220が搬送される方向とは反対側に配置される。
【0100】
また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、流路223は、分注部側から測定部側へ向かう方向について、濡れ性の勾配と毛細管力の勾配とのうち少なくとも一方を有するように形成される。
【0101】
制御回路9は、搬送レーン2061の駆動を制御することにより、測定用シート220の搬送速度を制御する。制御回路9は、測定用シート220を搬送レーン2061上の分注位置P2から測定位置P3まで搬送する間において慣性力により試料の送液が促されるように、測定用シート220の搬送速度を制御する。具体的には、制御回路9は、分注位置P2から測定位置P3まで測定用シート220を搬送する際に、第1の時間に渡って測定用シート220の搬送速度を加速させた後、第1の時間よりも長い第2の時間に渡って測定用シート220の搬送速度を減速させる。第1の時間は、例えば、第2の時間の半分の時間である。
【0102】
次に、自動分析装置1の動作について説明する。
図11は、制御回路9により実行される速度制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。速度制御処理とは、
図6に示すステップS101の処理において、測定用シート220を1サイクル分移動させる際に、測定用シート220の搬送速度及び加速度を制御する処理である。なお、以下で説明する各処理における処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り適宜変更可能である。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。各処理における処理手順についての上記説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0103】
(速度制御処理)
(ステップS201)
制御回路9は、搬送レーン2061が停止した状態において、搬送レーン2061を駆動し、搬送レーン2061上に設置された測定用シート220を1サイクル分移動させる。この際、制御回路9は、まず、停止した状態の搬送レーン2061を駆動し、搬送レーン2061の駆動速度を徐々に加速する。この際、加速度a1で搬送レーン2061を加速させる。搬送レーン2061上に設置された測定用シート220は、搬送レーン2061の駆動に伴い、加速度a1で加速しながら搬送される。
【0104】
分注位置P2に設置されていた測定用シート220は、加速度a1で加速しながら測定位置P3へ向かって搬送される。このため、測定用シート220に滴下された試料には、搬送方向と反対側を向く慣性力が作用する。測定部222が位置する方向へ向かう力が試料に作用するため、分注部221から測定部222への試料の送液がさらに促進される。なお、試料の質量をmとすると、試料に作用する慣性力Fの大きさは、F=m・a1で表される。
【0105】
(ステップS202)
制御回路9は、加速を開始した時刻から所定の切り替え時間tが経過するまで、加速度a1で測定用シート220の移動速度を加速させる。
【0106】
(ステップS203)
加速を開始した時刻から切り替え時間tが経過すると、制御回路9は、搬送レーン2061の駆動速度を徐々に減速する。この際、加速度a2で搬送レーン2061を減速させる。搬送レーン2061上に設置された測定用シート220は、搬送レーン2061の駆動に伴い、加速度a2で減速しながら搬送される。加速度a2は、加速度a1よりも充分に小さい大きさに設定される。例えば、加速度a2は、加速度a1の半分の大きさに設定される。
【0107】
制御回路9は、搬送レーン2061が停止するまで、すなわち、搬送レーン2061の駆動速度が0になるまで、加速度a2で搬送レーン2061を減速させる。加速度a1、a2、切り替え時間tは、搬送速度が0になった際に、測定用シート220の1サイクル分の移動が完了するように設定される。このため、分注位置P2から測定位置P3へ搬送される測定用シート220は、停止した状態から加速度a1で加速した後に加速度a2で減速し、測定位置P3に到達する際に移動速度が0になり停止する。
【0108】
測定用シート220は、加速する時間よりも長い時間をかけて減速し、減速する際には、加速する際の加速度a1よりも小さい加速度a2で減速する。このため、減速する際に搬送方向とは反対側へ作用する慣性力F(=ma2)は、加速する際に作用する慣性力F(=ma1)よりも小さくなる。
【0109】
以下、本実施形態に係る自動分析装置1の効果について説明する。
【0110】
本実施形態に係る自動分析装置1に用いられる測定用シート220は、搬送方向と同じ側に分注部221が配置され、搬送方向とは反対側に全ての測定部222が配置され、分注部221と測定部222とを繋ぐ流路223が搬送方向に沿って延びるように形成されている。このため、分注部221に分注された試料は、流路223の内部を搬送方向とは反対側へ送液される。
【0111】
また、自動分析装置1の制御回路9は、測定用シート220の搬送時において、第1の時間に渡って測定用シート220の搬送速度を加速させ、第1の時間よりも長い第2の時間に渡って測定用シート220の搬送速度を減速させる。これにより、測定用シート220が加速している期間において、流路223内を移動する試料には搬送方向とは反対側へ慣性力が作用するため、試料の測定部222への送液がさらに促される。また、測定用シート220を減速する期間は加速する期間よりも長く設定されているため、減速時の加速度を小さくすることができる。このため、減速時に試料に作用する搬送方向への慣性力を小さくすることができ、減速時に作用する慣性力による試料の送液への影響を最小限に抑えることができる。
【0112】
(第3の実施形態の変形例)
第3の実施形態の変形例について説明する。本変形例は、慣性力を利用して試料の送液を促進することに加えて、重力を利用して試料の送液をさらに促進するものである。第3の実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。
【0113】
図12は、本変形例に係る測定ユニット206の構成を示す図である。
図12は、
図9のC-C線断面図である。
図12に示すように、本変形例では、試料を搬送したい方向に重力が作用するように、搬送レーン2061が傾斜した状態で設置される。具体的には、搬送レーン2061は、分注位置P2が測定位置P3よりも低い位置になる状態で設置される。このため、測定用シート220は、搬送レーン2061上を上側に向かって搬送される。
【0114】
上記構成により、搬送レーン2061上に設置された測定用シート220の分注部221は、測定部222よりも上側に位置する。このため、試料は、流路223内において、上側から下側へ送液される。このため、試料に重力が作用することにより、試料の測定部222への送液がさらに促進される。
【0115】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を以下の通りに変形したものである。第1の実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。本実施形態に係る自動分析装置1では、試料が測定部222に到達しているかを確認する機能を有し、測定開始前等の所定のタイミングで試料が測定部に到達していない場合、ユーザに通知する。
【0116】
本実施形態の制御回路9は、分注部221に滴下された試料が測定部222まで到達したか否かを判定し、試料が測定部222まで到達していない場合、ユーザに警告する。制御回路9は、警告部の一例である。
【0117】
試料が測定部222まで到達したか否かを判定する方法としては、例えば、画像処理技術を用いる方法や、液面検知技術を用いる方法が挙げられる。例えば、画像処理技術を用いる場合、測定位置P3の近傍に、測定部222を撮影可能なカメラが設けられる。比色測定を行う測定ユニット206の場合、比色測定に用いられるカメラを利用してもよい。制御回路9は、測定位置P3の近傍で測定部222を撮影した画像をカメラから取得し、画像内における色の変化や輝度値を分析することにより、試料が測定部222まで到達したか否かを判定する。例えば、測定部222を撮影した画像において、一部が他の部分よりも濃くなっていた場合、その部分に試料が到達したと判定される。
【0118】
また、液面検知技術を用いる場合、例えば、測定位置P3の近傍に予め設けられた電極を測定部222に接触させる。制御回路9は、電極を流れる電流を検知することにより、測定部222と電極が通電したか否かを検知する。通電した場合、制御回路9は、試料が測定部222まで到達したと判定する。電極測定を行う測定ユニット206の場合、電極測定に用いられる電極を利用してもよい。
【0119】
試料が測定部222まで到達していないことをユーザに通知する方法としては、例えば、出力インタフェース6として設けられるディスプレイに、試料が測定部222まで到達していないことを示すエラー表示を表示させる方法が挙げられる。あるいは、エラー表示の代わりに、または、エラー表示に加えて、音声や振動を用いてユーザに通知してもよい。
【0120】
次に、自動分析装置1の動作について説明する。
図13は、制御回路9により実行される自動警告処理の手順の一例を示すフローチャートである。自動警告処理とは、測定開始前等の所定のタイミングで試料が測定部に到達していない場合、自動的にユーザに通知する処理である。なお、以下で説明する各処理における処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り適宜変更可能である。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。各処理における処理手順についての上記説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0121】
(自動警告処理)
(ステップS301)
制御回路9は、搬送レーン2061を1サイクル分だけ駆動することにより、測定用シート220を1サイクル分送り出す。
図6のステップS101の処理と同様のため、説明を省略する。
【0122】
(ステップS302)
分注プローブ205は、制御回路9の制御に従い、吸引位置P1に新たに配置された試料ラック201から所定の量の試料を吸引し、測定を行う測定ユニット206へ移動する。その後、分注プローブ205は、制御回路9の制御に従い、分注位置P2に新たに配置された測定用シート220の分注部221に吸引した試料を滴下する。
【0123】
(ステップS303)
制御回路9は、上述の画像処理技術や液面検知技術を用いて、分注部221に滴下された試料が測定部222まで到達したか否かを判定する。
【0124】
(ステップS305)
試料が測定部222まで到達している場合(ステップS304-Yes)、測定装置は、制御回路9の制御に従い、測定位置P3に新たに配置された測定用シート220に対する所定の項目の測定を実行する。例えば、試料の測定として、電極測定または呈色測定が行われる。
【0125】
(ステップS306)
制御回路9は、予め設定された全ての検査項目の測定が終了したか否かを判定し、予め設定された全ての測定が終了していない場合(ステップS306-NO)、終了するまで、ステップS301からステップS305までの処理を繰り返し実行する。そして、予め設定された全ての検査項目の測定が終了した場合(ステップS306-Yes)、制御回路9は測定処理を終了する。
【0126】
(ステップS307)
ステップS304の処理において、試料が測定部222まで到達していない場合(ステップS304-No)は、制御回路9は、測定ができないことを示すエラー表示をディスプレイに表示させる。その後、制御回路9は測定処理を終了する。
【0127】
以下、本実施形態に係る自動分析装置1の効果について説明する。
【0128】
本実施形態に係る自動分析装置1は、測定用シート220の分注部221に滴下された試料が測定部222まで到達したか否かを判定し、試料が測定部222まで到達していない場合に警告することができる。例えば、エラー表示をディスプレイに表示させることで、測定ができないことをユーザに通知することができる。
【0129】
通知を確認したユーザは、測定ができない原因を特定し、対策を行ったうえで再度測定を実行することができる。例えば、試料の粘性が高すぎることが原因で測定時までに試料が測定部222に到達していなかった場合、ユーザは、試料を希釈して再度測定を行うことにより、測定を適切に実行し、検査精度を向上させることができる。また、分注プローブ205等の不良により所定の量の試料が分注されていないことが原因で、測定時までに試料が測定部222に到達していなかった場合、ユーザは、不良部品を交換して再度測定を行うことにより、測定を適切に実行し、検査精度を向上させることができる。
【0130】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、測定用シートを用いた検査において試料の送液速度を向上させることができる。
【0131】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0132】
1…自動分析装置
2…分析機構
3…解析回路
4…駆動機構
5…入力インタフェース
6…出力インタフェース
7…通信インタフェース
8…記憶回路
9…制御回路
91…システム制御機能
200…試料容器
201…試料ラック
202…ラック投入部
203…搬送部
204…分注レール
205…分注プローブ
206…測定ユニット
2061…搬送レーン
20611…中央部
20612…外側部
207…ラック格納部
214…チップ装着機構
215…チップ廃棄機構
220…測定用シート
221…分注部
222…測定部
223…流路
P1…吸引位置
P2…分注位置
P3…測定位置