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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181770
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】自動分析装置及び判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20231218BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20231218BHJP
   G01N 21/94 20060101ALI20231218BHJP
   G01N 21/90 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/00 A
G01N35/02 E
G01N21/94
G01N21/90 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095103
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 悠暉
(72)【発明者】
【氏名】杉村 友弘
(72)【発明者】
【氏名】丸山 玲子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 正明
(72)【発明者】
【氏名】細岡 敦
(72)【発明者】
【氏名】奥木 健介
【テーマコード(参考)】
2G051
2G058
【Fターム(参考)】
2G051AA18
2G051AA28
2G051AB02
2G051AB15
2G051CB02
2G051DA08
2G051EA08
2G051EB01
2G058AA05
2G058CD03
2G058CD23
2G058CF01
2G058CF11
2G058CF17
2G058FB02
2G058FB12
2G058FB17
2G058FB21
2G058FB24
2G058GA01
2G058GB05
2G058GB10
2G058GE01
2G058GE08
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】反応容器の汚れや傷を精度よく検出すること。
【解決手段】実施形態に係る自動分析装置は、反応容器と、光照射部と、光検出部と、状態判定部とを具備する。反応容器は、空の状態にある。光照射部は、前記反応容器に光を照射する。光検出部は、前記反応容器を透過した光の光量を検出する。状態判定部は、前記検出された光量に基づいて、前記反応容器の状態を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空の状態にある反応容器と、
前記反応容器に光を照射する光照射部と、
前記反応容器を透過した光の光量を検出する光検出部と、
前記検出された光量に基づいて、前記反応容器の状態を判定する状態判定部と、
を具備する自動分析装置。
【請求項2】
前記反応容器を洗浄及び乾燥する洗浄乾燥部をさらに具備し、
前記光照射部は、前記洗浄及び乾燥された反応容器に光を照射し、
前記光検出部は、前記洗浄及び乾燥された反応容器を透過した光の光量を検出する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記洗浄乾燥部は、試料の測定前における前記反応容器と、前記試料の測定後における前記反応容器とを洗浄及び乾燥し、
前記光検出部は、前記試料の測定前における前記洗浄及び乾燥された反応容器を透過した光の第1光量と、前記試料の測定後における前記洗浄及び乾燥された反応容器を透過した光の第2光量とを検出する、
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記状態判定部は、前記検出された第1光量と第2光量との間の差分に基づいて、前記試料による前記反応容器の汚染度を判定する、
請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
システム制御部をさらに具備し、
前記状態判定部は、前記検出された光量に基づいて、前記反応容器について異常の有無を判定し、
前記システム制御部は、前記反応容器について異常が有ると判定された場合、前記反応容器による試料の測定を実施しないように前記光照射部及び前記光検出部を制御する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項6】
警告出力部をさらに具備し、
前記状態判定部は、前記検出された光量に基づいて、前記反応容器について異常の有無を判定し、
前記警告出力部は、前記反応容器について異常が有ると判定された場合、前記反応容器による試料の測定結果について警告を出力する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記光検出部は、複数の反応容器を透過した光の光量をそれぞれ検出し、
前記状態判定部は、前記検出された反応容器を透過した光の光量が、前記検出された複数の反応容器を透過した光の光量に関する平均値以下である場合、前記反応容器について異常が有ると判定する、
請求項5又は6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
通知出力部をさらに具備し、
前記光検出部は、複数の反応容器を透過した光の光量をそれぞれ検出し、
前記通知出力部は、前記光照射部の初回使用時における、前記検出された複数の反応容器を透過した光の光量に関する平均値よりも、前記光照射部の2回目以降の使用時における前記平均値が低い場合、前記光照射部及び前記複数の反応容器のうち少なくとも一方の交換を促す通知を出力する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記状態判定部は、前記反応容器の汚れ及び傷のうち少なくとも一方に関する状態を判定する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項10】
反応容器と、前記反応容器に光を照射する光照射部と、前記反応容器を透過した光の光量を検出する光検出部とを具備する自動分析装置における前記反応容器の状態の判定方法であって、
前記光照射部により空の状態にある前記反応容器に光を照射し、
前記光検出部により前記空の状態にある前記反応容器を透過した光の光量を検出し、
前記検出された光量に基づいて、前記反応容器の状態を判定する、判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、自動分析装置及び判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、患者から採取された試料(例:血液、尿)を自動的に分析することで、試料中の各種成分の濃度等を光学的に測定する装置である。具体的には、自動分析装置は、試料が収容された反応容器に所定の試薬を添加して混合し、この混合液に光を照射して透過した光を検出することで、各種の測定を行う。
【0003】
ところで、反応容器の表面には、試料と試薬との化学反応等による汚れが付着したり、温度変化や洗浄等による傷が生じたりし得る。従来、斯かる汚れや傷を検出するため、水(純水)が分注された反応容器に光を照射して透過した光を検出する方法が採られている。汚れや傷の程度が大きいほど、照射された光量に対して検出される光量は大きく低下するため、この光量の低下量から反応容器の汚れや傷の程度を検出できる。
【0004】
しかしながら、上記の方法では、比較的大きな汚れや傷でなければ光量の低下を検出できないため、反応容器の汚れや傷を精度よく検出することは困難である。特に、当該方法では、反応容器の内面に生じた傷には水が浸入することにより十分に光量が低下せず、斯かる傷を精度よく検出することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-127960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、反応容器の汚れや傷を精度よく検出することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る自動分析装置は、反応容器と、光照射部と、光検出部と、状態判定部とを具備する。反応容器は、空の状態にある。光照射部は、前記反応容器に光を照射する。光検出部は、前記反応容器を透過した光の光量を検出する。状態判定部は、前記検出された光量に基づいて、前記反応容器の状態を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る自動分析装置の構成例を示す図。
図2図2は、第1実施形態に係る自動分析装置の分析機構の構成例を示す図。
図3図3は、第1実施形態に係る自動分析装置の動作例を示すフロー図。
図4図4は、第1実施形態に係る2種類のブランク値の測定方法を示す図。
図5図5は、第1実施形態に係る2種類のブランク値の測定結果の一例を示す図。
図6図6は、第2実施形態に係る自動分析装置の動作例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態に係る自動分析装置及び判定方法について説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行うものとして、重複する説明を適宜、省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る自動分析装置1の構成例を示す図である。自動分析装置1は、分析機構2、解析回路3、駆動機構4、入力インタフェース5、出力インタフェース6、通信インタフェース7、記憶回路8及び処理回路9を備える。
【0011】
分析機構2は、駆動機構4及び処理回路9による制御に従って、血液や尿などの試料(サンプル)を光学的に分析する機構である。具体的には、分析機構2は、被検試料と試薬との混合液や、標準試料と試薬との混合液について光学的な物性値(例:透過光強度、吸光度、散乱光強度)を測定する。これにより、分析機構2は、被検試料を含む混合液の物性値を表す被検データと、標準試料を含む混合液の物性値を表す標準データとを生成する。分析機構2は、生成した被検データ及び標準データを解析回路3に出力する。本実施形態において、分析機構2は、分析部の一例である。
【0012】
図2は、第1実施形態に係る自動分析装置1の分析機構2の構成例を示す図である。分析機構2は、反応ディスク201、試料ディスク202、第1試薬庫203及び第2試薬庫204を備える。
【0013】
<ディスク系>反応ディスク201は、複数の反応容器201aを環状に配列して保持するディスクである。具体的には、反応ディスク201は、駆動機構4による制御に従って、所定の時間間隔(例:4.5秒、9.0秒)で回動及び停止を交互に繰り返すことで、複数の反応容器201aを環状の軌道に沿って搬送する。また、反応ディスク201は、反応容器201a内の混合液を所定の温度に保温する恒温槽と、反応容器201aの外面に付着した気泡や汚れを拭き取るセルワイパとを備える。
【0014】
反応容器201aは、試料及び試薬の混合液を反応させて保持する容器である。反応容器201aは、例えばガラス、ポリプロピレン又はアクリルにより形成される。反応容器201aは、例えば直方体形状又は円筒形状を成す。なお、反応容器201aは、反応管又はセルとも称される。
【0015】
試料ディスク202は、複数の試料容器202aを環状に配列して保持するディスクである。具体的には、試料ディスク202は、駆動機構4による制御に従って、回動及び停止を交互に繰り返すことで、複数の試料容器202aを環状の軌道に沿って搬送する。なお、試料容器202aは、血液や尿などの試料を保持する容器である。
【0016】
第1試薬庫203は、複数の第1試薬容器203aを保冷する貯蔵庫である。また、第1試薬庫203には、複数の第1試薬容器203aを保持する第1試薬ラック203bが回動可能に設けられる。なお、第1試薬容器203aは、血液や尿などの試料に含まれる所定の成分と反応する第1試薬を保持する容器である。
【0017】
第2試薬庫204は、複数の第2試薬容器204aを保冷する貯蔵庫である。また、第2試薬庫204には、複数の第2試薬容器204aを保持する第2試薬ラック204bが回動可能に設けられる。なお、第2試薬容器204aは、2試薬系において第1試薬と対を成す第2試薬を保持する容器である。
【0018】
上記の各構成に加え、分析機構2は、試料分注アーム205、試料分注プローブ205a、試料プローブ洗浄槽205b、第1試薬分注アーム206、第1試薬分注プローブ206a、第1プローブ洗浄槽206b、第2試薬分注アーム207、第2試薬分注プローブ207a、第2プローブ洗浄槽207b、第1攪拌アーム208、第1攪拌子208a、第1攪拌子洗浄槽208b、第2攪拌アーム209、第2攪拌子209a及び第2攪拌子洗浄槽209bをさらに備える。
【0019】
<アーム系>試料分注アーム205は、試料分注プローブ205aを介して、試料ディスク202の試料容器202aから試料を吸引し、この試料を反応ディスク201の反応容器201aに分注するアームである。具体的には、試料分注アーム205は、駆動機構4による制御に従って、鉛直方向に上下動し、水平方向に回動する。試料分注アーム205の運動に伴い、試料分注アーム205の一端に固定された試料分注プローブ205aも同様に運動する。
【0020】
試料分注プローブ205aの回動軌道上には、試料分注プローブ205aが試料容器202aから試料を吸引する位置(試料吸引位置)、試料分注プローブ205aが反応容器201aに試料を分注する位置(試料分注位置)、及び試料分注プローブ205aが試料プローブ洗浄槽205bにより洗浄される位置(洗浄位置)がそれぞれ設定される。具体的には、試料吸引位置は、試料容器202aの回動軌道上に設定され、試料分注位置は、反応容器201aの回動軌道上に設定される。試料分注プローブ205aは、試料吸引位置、試料分注位置及び洗浄位置のそれぞれにおいて上下動することで、試料の吸引及び分注と、試料分注プローブ205aの洗浄とを行う。
【0021】
第1試薬分注アーム206は、第1試薬分注プローブ206aを介して、第1試薬庫203の第1試薬容器203aから第1試薬を吸引し、この第1試薬を反応ディスク201の反応容器201aに分注するアームである。具体的には、第1試薬分注アーム206は、駆動機構4による制御に従って、鉛直方向に上下動し、水平方向に回動する。第1試薬分注アーム206の運動に伴い、第1試薬分注アーム206の一端に固定された第1試薬分注プローブ206aも同様に運動する。
【0022】
第1試薬分注プローブ206aの回動軌道上には、第1試薬分注プローブ206aが第1試薬容器203aから第1試薬を吸引する位置(第1試薬吸引位置)、第1試薬分注プローブ206aが反応容器201aに第1試薬を分注する位置(第1試薬分注位置)、及び第1試薬分注プローブ206aが第1プローブ洗浄槽206bにより洗浄される位置(洗浄位置)がそれぞれ設定される。具体的には、第1試薬吸引位置は、第1試薬容器203aの回動軌道上に設定され、第1試薬分注位置は、反応容器201aの回動軌道上に設定される。第1試薬分注プローブ206aは、第1試薬吸引位置、第1試薬分注位置及び洗浄位置のそれぞれにおいて上下動することで、第1試薬の吸引及び分注と、第1試薬分注プローブ206aの洗浄とを行う。
【0023】
第2試薬分注アーム207は、第2試薬分注プローブ207aを介して、第2試薬庫204の第2試薬容器204aから第2試薬を吸引し、この第2試薬を反応ディスク201の反応容器201aに分注するアームである。具体的には、第2試薬分注アーム207は、駆動機構4による制御に従って、鉛直方向に上下動し、水平方向に回動する。第2試薬分注アーム207の運動に伴い、第2試薬分注アーム207の一端に固定された第2試薬分注プローブ207aも同様に運動する。
【0024】
第2試薬分注プローブ207aの回動軌道上には、第2試薬分注プローブ207aが第2試薬容器204aから第2試薬を吸引する位置(第2試薬吸引位置)、第2試薬分注プローブ207aが反応容器201aに第2試薬を分注する位置(第2試薬分注位置)、及び第2試薬分注プローブ207aが第2プローブ洗浄槽207bにより洗浄される位置(洗浄位置)がそれぞれ設定される。具体的には、第2試薬吸引位置は、第2試薬容器204aの回動軌道上に設定され、第2試薬分注位置は、反応容器201aの回動軌道上に設定される。第2試薬分注プローブ207aは、第2試薬吸引位置、第2試薬分注位置及び洗浄位置のそれぞれにおいて上下動することで、第2試薬の吸引及び分注と、第2試薬分注プローブ207aの洗浄とを行う。
【0025】
第1攪拌アーム208は、第1攪拌子208aを介して、反応容器201a内の試料と第1試薬との混合液を攪拌するアームである。具体的には、第1攪拌アーム208は、駆動機構4による制御に従って、鉛直方向に上下動し、水平方向に回動する。第1攪拌アーム208の運動に伴い、第1攪拌アーム208の一端に固定された第1攪拌子208aも同様に運動する。
【0026】
第1攪拌子208aの回動軌道上には、第1攪拌子208aが反応容器201aの混合液を攪拌する位置(第1攪拌位置)、及び第1攪拌子208aが第1攪拌子洗浄槽208bにより洗浄される位置(洗浄位置)がそれぞれ設定される。具体的には、第1攪拌位置は、反応容器201aの回動軌道上に設定される。第1攪拌子208aは、第1攪拌位置及び洗浄位置のそれぞれにおいて上下動することで、混合液の攪拌と、第1攪拌子208aの洗浄とを行う。
【0027】
第2攪拌アーム209は、第2攪拌子209aを介して、反応容器201a内の試料と第1試薬と第2試薬との混合液を攪拌するアームである。具体的には、第2攪拌アーム209は、駆動機構4による制御に従って、鉛直方向に上下動し、水平方向に回動する。第2攪拌アーム209の運動に伴い、第2攪拌アーム209の一端に固定された第2攪拌子209aも同様に運動する。
【0028】
第2攪拌子209aの回動軌道上には、第2攪拌子209aが反応容器201aの混合液を攪拌する位置(第2攪拌位置)、及び第2攪拌子209aが第2攪拌子洗浄槽209bにより洗浄される位置(洗浄位置)がそれぞれ設定される。具体的には、第2攪拌位置は、反応容器201aの回動軌道上に設定される。第2攪拌子209aは、第2攪拌位置及び洗浄位置のそれぞれにおいて上下動することで、混合液の攪拌と、第2攪拌子209aの洗浄とを行う。
【0029】
上記の各構成に加え、分析機構2は、測光ユニット220及び洗浄乾燥ユニット230をさらに備える。本実施形態において、測光ユニット220は測光部の一例であり、洗浄乾燥ユニット230は洗浄乾燥部の一例である。
【0030】
<測光系>測光ユニット220は、反応容器201a内の混合液に光を照射し、この混合液を透過した光を光学的に測定するユニットである。具体的には、測光ユニット220は、反応容器201aの回動軌道上にある所定の位置(測光位置)に設置される。測光ユニット220は、反応容器201aに光を照射する光源220aと、反応容器201aを透過した光の光量(透過光強度)を検出する光検出器220bとを備える。本実施形態において、光源220aは光照射部の一例であり、光検出器220bは光検出部の一例である。
【0031】
光源220aは、光源220aと光検出器220bとの間を通過する反応容器201aに光を照射する。試料の測定において、光源220aは反応容器201a内に収容された試料と試薬との混合液に光を照射する。光源220aは、ランプとも称される。
【0032】
光検出器220bは、反応容器201a内の混合液を透過した光を検出する。具体的には、光検出器220bは、被検試料と試薬との混合液や、標準試料と試薬との混合液を透過した光を検出する。次に、光検出器220bは、検出した光をフォトダイオードアレイ等により電気信号に変換し、この電気信号をアンプ等により増幅する。続いて、光検出器220bは、増幅した電気信号をアナログデジタル変換回路(ADC:Analog-Digital Converter)等によりデジタル信号に変換する。このデジタル信号の信号値は、透過光強度とも称される。
【0033】
その後、光検出器220bは、上記のデジタルの信号値の時間変化を示す信号波形(測光波形)に基づいて、前述の被検データ及び標準データを生成する。光検出器220bは、生成した被検データ及び標準データを解析回路3に出力する。光検出器220bは、上記のデジタルの信号値や被検データ、標準データを記憶回路8に出力してもよい。なお、光検出器220bは、測光波形を処理回路9に出力してもよい。
【0034】
<洗浄系>洗浄乾燥ユニット230は、反応容器201aを洗浄及び乾燥するユニットである。具体的には、洗浄乾燥ユニット230は、反応容器201aの回動軌道上にある所定の位置(洗浄位置)に設置される。洗浄乾燥ユニット230は、試料の測定前における反応容器201aや、測光ユニット220による試料の測定後における反応容器201aを洗浄及び乾燥する。
【0035】
例えば、洗浄乾燥ユニット230は、試料の測定後における反応容器201aを洗浄する場合、まず反応容器201a内の混合液を排出する。次に、洗浄乾燥ユニット230は、排出された混合液の種類に適する洗浄液(例:酸性洗剤、アルカリ性洗剤、純水)を、反応容器201aに分注し洗浄する。続いて、洗浄乾燥ユニット230は、洗浄液を排出した後、反応容器201aを乾燥する。特に、乾燥工程において、洗浄乾燥ユニット230は、ワイパを反応容器201aの内面に接した状態で上下動させることで、反応容器201aの内面に付着した水分を拭き取ってもよい。
【0036】
図1の説明に戻る。解析回路3は、分析機構2から出力された被検データ及び標準データを解析する回路である。例えば、解析回路3は、プロセッサを介して解析プログラムを記憶回路8から読み出し、当該プログラムに従って被検データ及び標準データを解析する。これにより、解析回路3は、被検データ及び標準データから分析データ及び検量データをそれぞれ生成する。解析回路3は、生成した分析データ及び検量データを記憶回路8に出力する。なお、解析回路3は、処理回路9に一体化されてもよい。本実施形態において、解析回路3は、解析部の一例である。
【0037】
駆動機構4は、処理回路9による制御に従って、分析機構2を駆動する機構である。具体的には、駆動機構4は、各種の機械部品(例:ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベア、リードスクリュー)により構成される。本実施形態において、駆動機構4は、駆動部の一例である。
【0038】
入力インタフェース5は、自動分析装置1の操作者からの各種入力を受け付けて電気信号に変換し、この電気信号を処理回路9に出力する装置である。例えば、入力インタフェース5は、分析機構2により分析される試料の種類や成分に関する指定を受け付ける。具体的には、入力インタフェース5は、各種の操作部品(例:マウス、キーボード、タッチパッド、タッチパネル)により構成される。なお、入力インタフェース5は、自動分析装置1とは別体に構成された外部の入力装置から、所定の入力に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路9に出力するプロセッサでもよい。本実施形態において、入力インタフェース5は、入力部の一例である。
【0039】
出力インタフェース6は、処理回路9から出力された信号を所定の形式に変換し、この信号を出力する装置である。例えば、出力インタフェース6は、表示回路(例:CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ)、印刷回路(例:プリンタ)又は音声変換回路(例:スピーカ)により構成される。なお、出力インタフェース6は、入力インタフェース5と一体化され得る。本実施形態において、出力インタフェース6は、出力部の一例である。
【0040】
通信インタフェース7は、自動分析装置1と外部のシステムとの間でデータ通信を行う装置である。具体的には、通信インタフェース7は、病院ネットワークNWに接続され、当該ネットワークを介して病院情報システム(HIS:Hospital Information System)や検査部門システム(LIS:Laboratory Information System)とデータ通信を行う。本実施形態において、通信インタフェース7は、通信部の一例である。
【0041】
記憶回路8は、各種の情報(例:データ、プログラム)を記憶する装置である。具体的には、記憶回路8は、解析回路3が実行する解析プログラムや、処理回路9が実行する制御プログラムを記憶する。また、記憶回路8は、解析回路3により生成された分析データ及び検量データを記憶する。記憶回路8は、前述のデジタルの信号値や被検データ、標準データを記憶してもよい。さらに、記憶回路8は、操作者が入力インタフェース5を介して入力した検査オーダや、通信インタフェース7が病院ネットワークNWを介して受信した検査オーダを記憶する。記憶回路8は、各種の記憶装置(例:HDD、SSD、RAM、集積回路)でもよいし、各種の可搬性記憶媒体(例:CD、DVD、フラッシュメモリ)でもよい。あるいは、記憶回路8は、これら可搬性記憶媒体との間で情報を読み書きする駆動装置でもよい。本実施形態において、記憶回路8は、記憶部の一例である。
【0042】
処理回路9は、自動分析装置1の全体の動作を制御する。処理回路9は、少なくとも一つのプロセッサを含む。「プロセッサ」という文言は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例:単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサがCPUである場合、プロセッサは記憶回路8に記憶されたプログラムを読み出して実行することで各機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、各機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。プロセッサは、単一の回路として構成されてもよいし、複数の独立した回路を組み合わせて構成されてもよい。本実施形態において、処理回路9は各機能(例:システム制御機能91、状態判定機能92、警告出力機能93、通知出力機能94)を実現する。処理回路9は、処理部の一例である。
【0043】
処理回路9は、システム制御機能91により、自動分析装置1に含まれる各構成の動作を制御する。例えば、処理回路9は、試料の測定を実施するように分析機構2及び駆動機構4を制御する。このとき、処理回路9は、反応容器201aについて異常が有ると判定された場合、この反応容器201aによる試料の測定を実施しないように、分析機構2の光源220a及び光検出器220bを制御してもよい。また、処理回路9は、分析機構2により生成された被検データ及び標準データを解析するように解析回路3を制御する。本実施形態において、システム制御機能91を実現する処理回路9は、システム制御部の一例である。
【0044】
処理回路9は、状態判定機能92により、反応容器201aを透過し、かつ光検出器220bにより検出された光の光量に基づいて、反応容器201aの状態を判定する。例えば、処理回路9は、反応容器201aの汚れ及び傷のうち少なくとも一方に関する状態を判定する。処理回路9は、判定結果として、反応容器201aの汚れや傷の程度に関する測定データ(図5に後述)を出力してもよい。本実施形態において、状態判定機能92を実現する処理回路9は、状態判定部の一例である。
【0045】
また、処理回路9は、状態判定機能92により、試料による反応容器201aの汚染度を判定する。例えば、処理回路9は、試料の測定前において洗浄及び乾燥された反応容器201aを透過した光の光量(第1光量)と、試料の測定後において洗浄及び乾燥された反応容器201aを透過した光の光量(第2光量)との間の差分に基づいて、上記の判定を行う。ここで、第1光量及び第2光量の間の差分の算出は、処理回路9により実行されてもよい。なお、反応容器201aの汚染度は、複数の段階(レベル)別に判定されてもよい。
【0046】
また、処理回路9は、状態判定機能92により、反応容器201aを透過し、かつ光検出器220bにより検出された光の光量に基づいて、反応容器201aについて異常の有無を判定する。例えば、処理回路9は、検出された光量が所定の平均値以下である場合、反応容器201aについて異常が有ると判定する。ここで、光検出器220bは、複数の反応容器201aを透過した光の光量をそれぞれ検出した後、処理回路9は、複数の反応容器201aを透過した光の光量について上記の平均値を算出してもよい。もちろん、処理回路9は、検出された光量が所定の平均値に比して一定程度低い場合、反応容器201aについて異常が有ると判定してもよい。
【0047】
処理回路9は、警告出力機能93により、反応容器201aについて異常が有ると判定された場合、反応容器201aによる試料の測定結果について警告を出力する。本実施形態において、警告出力機能93を実現する処理回路9は、警告出力部の一例である。
【0048】
処理回路9は、通知出力機能94により、光源220aの初回使用時における所定の平均値よりも、光源220aの2回目以降の使用時における当該平均値が低い場合、光源220a及び複数の反応容器201aのうち少なくとも一方の交換を促す通知を出力する。ここで、光検出器220bは、複数の反応容器201aを透過した光の光量をそれぞれ検出した後、処理回路9は、複数の反応容器201aを透過した光の光量について上記の平均値を算出してもよい。本実施形態において、通知出力機能94を実現する処理回路9は、通知出力部の一例である。
【0049】
図3は、第1実施形態に係る自動分析装置1の動作例を示すフロー図である。本動作例は、自動分析装置1の操作者からの開始指示に応じて開始されてもよい。なお、本動作例は、自動分析装置1が試料を測定する際のフローである。
【0050】
(ステップS101)まず、自動分析装置1は、試料の測定前における反応容器201aを洗浄及び乾燥する。具体的には、自動分析装置1の洗浄乾燥ユニット230は、予備洗浄動作として、試料の測定に使用される予定の反応容器201aを洗浄及び乾燥する。これにより、反応容器201aは乾燥状態(空の状態)に置かれる。
【0051】
(ステップS102)次に、自動分析装置1は、空の状態に置かれた反応容器201aに光を照射し、反応容器201aを透過した光の光量(透過光強度;エアブランク値)を測定する。具体的には、自動分析装置1の測光ユニット220は、光源220aにより反応容器201aに光を照射し、反応容器201aを透過した光の光量を光検出器220bにより検出する。検出された光の光量は、記憶回路8に記憶される。このとき、反応容器201aごとにエアブランク値が対応付けられて記憶されてもよい。
【0052】
図4は、第1実施形態に係る2種類のブランク値の測定方法を示す図である。ここでは、反応容器201aが空の状態におけるブランク値(エアブランク値)の測定方法を示す図4Aと、反応容器201aに水が分注された状態におけるブランク値(水ブランク値)の測定方法を示す図4Bが図示される。また、反応容器201aの内面の一部には傷が生じていると想定する。特に、図4Aの測定方法では、この傷に水が浸入していない一方、図4Bの測定方法では、この傷に水が浸入している。
【0053】
両者の測定方法において、光源220aから照射された光(ビーム)は、反応容器201aの内面にある傷を透過して、光検出器220bにより検出される。このとき、図4Aに示す測定方法では、光は反応容器201a内の空気を透過するのに対し、図4Bに示す測定方法では、光は反応容器201a内の水を透過する。これにより、エアブランク値及び水ブランク値がそれぞれ測定される。
【0054】
図5は、第1実施形態に係る2種類のブランク値の測定結果の一例を示す図である。ここでは、両者の測定方法による複数の反応容器201aのそれぞれのブランク値を示すグラフ300が図示される。
【0055】
グラフ300には、図4Aの方法で測定されたエアブランク値を示す第1測定データ310Aと、図4Bの方法で測定された水ブランク値を示す第2測定データ310Bとが示される。グラフ300の縦軸はブランク値を表し、横軸は反応容器の番号(反応容器No.)を表す。本例では、11個の反応容器201aに関するデータが示される。これらのうち、3つの反応容器(反応容器No.4-6)は、比較的大きな汚れや傷が存在する容器(異常あり容器)であり、残る8つの反応容器(反応容器No.1-3,7-11)は、比較的大きな汚れや傷が存在しない容器(異常なし容器)である。特に、3つの異常あり容器のうち、2つの反応容器(反応容器No.4,5)は、残る1つの反応容器(反応容器No.6)よりも汚れや傷の程度が大きい。なお、グラフ300及び第1測定データ310Aは、出力インタフェース6に出力されてもよい。
【0056】
第1測定データ310Aによれば、異常あり容器のエアブランク値は「約20000乃至23000」であり、異常なし容器のエアブランク値は、いずれも「約24500」であると理解される。したがって、異常あり容器のエアブランク値と、異常なし容器のエアブランク値との間の差分は、「約1500乃至4500」である。また、3つの異常あり容器のうち、反応容器No.4,5のエアブランク値は「約20000」であり、反応容器No.6のエアブランク値は「約23000」である。
【0057】
一方、第2測定データ310Bによれば、異常あり容器の水ブランク値は「約27500乃至28000」であり、異常なし容器の水ブランク値は、いずれも「約28500」であると理解される。したがって、異常あり容器の水ブランク値と、異常なし容器の水ブランク値との間の差分は、「約500乃至1000」である。また、3つの異常あり容器のうち、反応容器No.4,5の水ブランク値は「約27500」であり、反応容器No.6の水ブランク値は「約28000」である。
【0058】
両者の測定データにおける2つの差分を比較すると、エアブランク値に基づく差分のほうが、水ブランク値に基づく差分よりも大きいことが理解される。したがって、自動分析装置1はエアブランク値を利用することで、異常あり容器及び異常なし容器をより精度良く識別できる。また、反応容器No.4,5と、反応容器No.6との間のブランク値の差分に着目すると、エアブランク値に基づく差分のほうが、水ブランク値に基づく差分よりも大きいことが理解される。したがって、自動分析装置1はエアブランク値を利用することで、反応容器201aの汚れや傷の程度をより精度よく検出できる。
【0059】
(ステップS103)図3の説明に戻る。ここで、自動分析装置1は、反応容器201aのエアブランク値が、操作者が設定した値(設定値)以下であるか否かを判定する。具体的には、自動分析装置1の処理回路9は、状態判定機能92により、試料の測定に使用される予定の反応容器201aのエアブランク値が設定値以下であるか否かを判定する。この設定値は、自動分析装置1に予め設定されている値でもよい。なお、この設定値は、反応容器201aが異常あり容器であるか、それとも異常なし容器であるかの識別に使用される。図5の例によれば、この設定値は、異常あり容器である反応容器No.6のエアブランク値(約23000)と、異常なし容器である反応容器No.7のエアブランク値(約24500)との間の値に設定されてもよい。本判定条件が満たされる場合(ステップS103のYes)、処理はステップS104Bに進む。一方、本判定条件が満たされない場合(ステップS103のNo)、処理はステップS104Aに進む。
【0060】
(ステップS104B)この場合、自動分析装置1は、反応容器201aに汚れや傷などの異常が有ると判定し、この反応容器201aを試料の測定に使用しない。そこで、自動分析装置1は、異常が有ると判定された反応容器201aとは異なる次の反応容器201aを選択する。例えば、自動分析装置1は、反応ディスク201を回動させることで、次の反応容器201aを洗浄乾燥ユニット230の位置に搬送してもよい。これにより、次の反応容器201aが洗浄及び乾燥された後、そのエアブランク値が測定されることになる。本ステップの後、処理はステップS101に戻る。
【0061】
(ステップS104A)この場合、自動分析装置1は、反応容器201aに汚れや傷などの異常が無いと判定し、この反応容器201aを試料の測定に使用する。具体的には、自動分析装置1は、反応容器201aに試料、第1試薬及び第2試薬を分注して攪拌した後、この混合液に対し測光ユニット220を用いて試料の測定を行う。混合液を透過して検出された光の光量は、試料の測定結果として記憶回路8に記憶される。
【0062】
(ステップS105)続いて、自動分析装置1は、試料の測定後における反応容器201aを洗浄及び乾燥する。試料の測定後であるため、自動分析装置1は、反応容器201a内の混合液を排出してから、洗浄及び乾燥を行う。本ステップは、ステップS101と同様である。
【0063】
(ステップS106)続いて、自動分析装置1は、空の状態に置かれた反応容器201aに光を照射し、反応容器201aを透過した光の光量(透過光強度;エアブランク値)を測定する。検出された光の光量は、記憶回路8に記憶される。試料の測定後であるため、反応容器201aには、試料と試薬との化学反応等による汚れが付着していたり、温度変化や洗浄等による傷が生じていたりし得る。すなわち、これらの汚れや傷により、試料の測定後におけるエアブランク値は、試料の測定前におけるエアブランク値よりも低下することがある。本ステップは、ステップS102と同様である。
【0064】
(ステップS107)続いて、自動分析装置1は、複数の反応容器201aのエアブランク値について平均値を算出する。具体的には、自動分析装置1は、記憶回路8に記憶された、試料の測定後における複数の反応容器201aのエアブランク値を用いて、当該平均値を算出する。例えば、自動分析装置1は、試料の測定後における全ての反応容器201aのエアブランク値を用いて、当該平均値を算出してもよい。このとき、自動分析装置1は、ステップS106で測定された処理対象となる所定の反応容器201aのエアブランク値を含めて平均値を算出してもよい。本実施形態において、自動分析装置1は、当該所定の反応容器201aのエアブランク値を含めずに平均値を算出すると想定する。算出された平均値は、記憶回路8に記憶される。
【0065】
なお、ステップS106で測定された所定の反応容器201aのエアブランク値とは異なる、他の反応容器201aのエアブランク値が記憶回路8に記憶されていない場合、本ステップは実行されなくともよい。さらに、この場合、本ステップ以降の各ステップを実行せずに、処理を終了しても構わない。
【0066】
(ステップS108)ここで、自動分析装置1は、処理対象となる所定の反応容器201aのエアブランク値が、上記の平均値以下であるか否かを判定する。具体的には、自動分析装置1の処理回路9は、状態判定機能92により、ステップS106で測定された所定の反応容器201aのエアブランク値が、ステップS107で算出された複数の反応容器201aのエアブランク値の平均値以下であるか否かを判定する。このとき、自動分析装置1は、当該平均値に一定程度の許容範囲を持たせて、本判定を行ってもよい。本判定条件が満たされる場合(ステップS108のYes)、処理はステップS109Bに進む。一方、本判定条件が満たされない場合(ステップS108のNo)、処理はステップS109Aに進む。
【0067】
(ステップS109B)この場合、自動分析装置1は、処理対象となる所定の反応容器201aに汚れや傷などの異常が有ると判定し、この反応容器201aによる試料の測定結果に警告を出力する。例えば、自動分析装置1の処理回路9は、警告出力機能93により、記憶回路8に記憶された、この反応容器201aによる試料の測定結果に警告を付与する。また、自動分析装置1は、警告とともに試料の測定結果を出力インタフェース6に出力してもよい。出力インタフェース6が表示回路である場合、表示回路は、試料の測定結果を警告メッセージとともに表示する画面を表示してもよい。これにより、自動分析装置1の操作者は、試料の測定結果に異常が有ることを認識できる。本ステップの後、自動分析装置1は、一連の処理を終了する。
【0068】
(ステップS109A)この場合、自動分析装置1は、ステップS108の判定で使用した平均値が所定の閾値(第1閾値)以下であるか否かを判定する。第1閾値は、例えば、測光ユニット220の光源220aの初回使用時における、反応容器201aのエアブランク値である。当該エアブランク値は、光源220aが劣化していない状態におけるエアブランク値とも換言される。このとき、自動分析装置1は、第1閾値に一定程度の許容範囲を持たせて、本判定を行ってもよい。もちろん、第1閾値は、操作者により所定の値に設定されてもよい。本判定条件が満たされない場合(ステップS109AのNo)、処理はステップS110Bに進む。一方、本判定条件が満たされる場合(ステップS109AのYes)、処理はステップS110Aに進む。
【0069】
(ステップS110B)この場合、自動分析装置1は、処理対象となる所定の反応容器201aに汚れや傷などの異常が無いと判定し、この反応容器201aによる試料の測定結果を出力する。例えば、自動分析装置1の処理回路9は、反応容器201aによる試料の測定結果を出力インタフェース6に出力する。出力インタフェース6が表示回路である場合、表示回路は、試料の測定結果を表示する画面を表示してもよい。これにより、自動分析装置1の操作者は、この試料の測定結果を認識できる。本ステップの後、自動分析装置1は、一連の処理を終了する。
【0070】
(ステップS110A)この場合、自動分析装置1は、光源220aの使用時間が所定の閾値(第2閾値)以上であるか否かを判定する。第2閾値は、例えば、光源220aが交換された日付からの所定の経過日数である。もちろん、第2閾値は、操作者により所定の値に設定されてもよい。本判定条件が満たされない場合(ステップS110AのNo)、処理はステップS111Bに進む。一方、本判定条件が満たされる場合(ステップS110AのYes)、処理はステップS111Aに進む。
【0071】
(ステップS111B)この場合、自動分析装置1は、複数の反応容器201aの多くに汚れや傷が生じていたために、これら複数の反応容器201aのエアブランク値の平均値が第1閾値以下にまで低下していたと判定する。すなわち、自動分析装置1は、ステップS108における判定に用いた平均値が、不適切であったと判定する。そこで、自動分析装置1は、処理対象となる所定の反応容器201aによる試料の測定結果に警告を出力する。警告の出力は、ステップS109Bと同様である。また、自動分析装置1は、平均値の算出に用いた複数の反応容器201aによる試料の測定結果に警告を出力してもよい。さらに、自動分析装置1は、これら複数の反応容器201aの交換を促す通知を出力してもよい。本ステップの後、自動分析装置1は、一連の処理を終了する。
【0072】
(ステップS111A)この場合、自動分析装置1は、光源220aを長時間に亘って使用して光源220aが劣化していたために、複数の反応容器201aのエアブランク値の平均値が第1閾値以下にまで低下していたと判定する。すなわち、自動分析装置1は、ステップS108における判定に用いた平均値が、不適切であったと判定する。そこで、自動分析装置1は、光源220aの交換を促す通知を出力する。具体的には、自動分析装置1の処理回路9は、通知出力機能94により、当該通知を出力インタフェース6に出力する。出力インタフェース6が表示回路である場合、表示回路は、当該通知を表示する画面を表示してもよい。これにより、自動分析装置1の操作者は、光源220aの交換が必要であることを認識できる。また、自動分析装置1は、処理対象となる所定の反応容器201aによる試料の測定結果に警告を出力してもよい。警告の出力は、ステップS109Bと同様である。本ステップの後、自動分析装置1は、一連の処理を終了する。
【0073】
なお、上記の動作例において、自動分析装置1の処理回路9は、状態判定機能92より、試料の測定前における反応容器201aのエアブランク値と、試料の測定後における反応容器201aのエアブランク値との間の差分を算出してもよい。さらに、自動分析装置1は、算出された差分に基づいて、当該試料により反応容器201aがどの程度汚染されたか(汚染度)を判定してもよい。もちろん、自動分析装置1は、汚染度を出力インタフェース6に出力してもよい。これにより、自動分析装置1の操作者は、反応容器201aを汚染しやすい試料と、反応容器201aを汚染しにくい試料とを識別できる。
【0074】
以上、第1実施形態に係る自動分析装置1について説明した。自動分析装置1は、光源220aを介して、空の状態にある反応容器201aに光を照射し、光検出器220bを介して、反応容器201aを透過した光の光量(エアブランク値)を検出する。そして、自動分析装置1は、検出された光量に基づいて、反応容器201aの状態を判定する。
【0075】
これにより、自動分析装置1は、水ブランク値を利用する方法と比較して、反応容器201aの汚れや傷をより精度よく検出することができる。特に、エアブランク値を利用する方法では、反応容器201aの内面に生じた傷に水が浸入しないため、自動分析装置1は、反応容器201aの内面に生じた傷をより精度よく検出することができる。また、エアブランク値を利用する方法は、新たな機構を必要としないため、既に市場に流通している自動分析装置にも適用可能である。
【0076】
(第2実施形態)
第1実施形態に係る自動分析装置1は、普段のルーティン検査時などの試薬を測定するタイミングにおいて、反応容器のエアブランク値を測定する。一方、第2実施形態に係る自動分析装置1は、メンテナンス時などの試薬を測定しないタイミングにおいて、反応容器のエアブランク値を測定する。なお、第2実施形態に係る自動分析装置1の構成は、第1実施形態と同様である。
【0077】
図6は、第2実施形態に係る自動分析装置1の動作例を示すフロー図である。本動作例は、自動分析装置1の操作者からの開始指示に応じて開始されてもよい。なお、本動作例は、自動分析装置1がメンテナンス動作(例:スタートアップ動作、シャットダウン動作)を行う際のフローである。
【0078】
(ステップS201)まず、自動分析装置1は、光源220aの使用時間が所定の閾値(第2閾値)以上であるか否かを判定する。本ステップは、ステップS110Aと同様である。本判定条件が満たされる場合(ステップS201のYes)、処理はステップS202Bに進む。一方、本判定条件が満たされない場合(ステップS201のNo)、処理はステップS202Aに進む。
【0079】
(ステップS202B)この場合、自動分析装置1は、光源220aを長時間に亘って使用したために、光源220aが劣化していると判定する。すなわち、自動分析装置1は、この光源220aを用いてエアブランク値を測定すべきではないと判定する。そこで、自動分析装置1は、光源220aの交換を促す通知を出力する。本ステップの後、自動分析装置1は、一連の処理を終了する。
【0080】
(ステップS202A)この場合、自動分析装置1は、全ての反応容器201aを洗浄及び乾燥する。これにより、全ての反応容器201aは乾燥状態(空の状態)に置かれる。なお、全ての反応容器201aが交換されたばかりである場合(すなわち、未使用の場合)、本ステップは実行されなくともよい。これにより、自動分析装置1は、続くステップS203を直ちに実行するため、迅速にエアブランク値を測定することができる。
【0081】
(ステップS203)次に、自動分析装置1は、空の状態に置かれた全ての反応容器201aのエアブランク値を測定する。全ての反応容器201aのそれぞれのエアブランク値は、記憶回路8に記憶される。
【0082】
(ステップS204)続いて、自動分析装置1は、全ての反応容器201aのエアブランク値について平均値を算出する。具体的には、自動分析装置1は、記憶回路8に記憶された、全ての反応容器201aのエアブランク値を用いて当該平均値を算出する。算出された平均値は、記憶回路8に記憶される。
【0083】
(ステップS205)ここで、自動分析装置1は、ステップS204で算出した平均値が所定の閾値(第1閾値)以下であるか否かを判定する。本ステップは、ステップS109Aと同様である。本判定条件が満たされる場合(ステップS205のYes)、処理はステップS206Bに進む。一方、本判定条件が満たされない場合(ステップS205のNo)、処理はステップS206Aに進む。
【0084】
(ステップS206B)この場合、自動分析装置1は、全ての反応容器201aの多くに汚れや傷が生じているために、全ての反応容器201aの平均値が第1閾値以下であると判定する。そこで、自動分析装置1は、全ての反応容器201aの交換を促す通知を出力する。本ステップの後、自動分析装置1は、一連の処理を終了する。
【0085】
(ステップS206A)この場合、自動分析装置1は、全ての反応容器201aに含まれる個々の反応容器201aについて、エアブランク値が上記の平均値以下であるか否かを判定する。具体的には、自動分析装置1は、処理対象となる所定の反応容器201aのエアブランク値が平均値以下であるか否かを判定する。本ステップは、ステップS108と同様である。本判定条件が満たされる場合(ステップS206AのYes)、処理はステップS207に進む。一方、本判定条件が満たされない場合(ステップS206AのNo)、処理はステップS208に進む。
【0086】
(ステップS207)この場合、自動分析装置1は、処理対象となる所定の反応容器201aを異常あり容器と判定し記憶する。異常が有ると判定された反応容器201aの番号(反応容器No.)は、記憶回路8に記憶される。
【0087】
(ステップS208)続いて、自動分析装置1は、全ての反応容器201aについて処理したか否かを判定する。具体的には、自動分析装置1は、全ての反応容器201aについて異常の有無を判定したか否かを判定する。本判定条件が満たされる場合(ステップS208のYes)、処理はステップS209に進む。一方、本判定条件が満たされない場合(ステップS208のNo)、処理はステップS206Aに戻る。
【0088】
(ステップS209)続いて、自動分析装置1は、ステップS207において異常ありと判定された各反応容器201aの交換を促す通知を出力する。本ステップの後、自動分析装置1は、一連の処理を終了する。
【0089】
なお、ステップS209が終了した後、自動分析装置1の操作者は、異常が有ると判定された各反応容器201aを交換する際に、各反応容器201a内の残水の有無を目視により確認してもよい。残水により反応容器201aのエアブランク値は大幅に低下するため、自動分析装置1は、ステップS206Aにおいて、この残水により反応容器201aに異常が有ると判定した可能性がある。操作者は、反応容器201a内の残水を視認することで、自動分析装置1の洗浄乾燥ユニット230に異常が生じ、反応容器201a内の乾燥が不十分であったことを認識できる。
【0090】
なお、上記の通り、メンテナンス動作時において、自動分析装置1は、複数の反応容器201aを透過した光の光量をそれぞれ検出し、かつ複数の反応容器201aを透過した光の光量について平均値を算出してもよい。さらに、自動分析装置1は、光源220aの初回使用時における当該平均値よりも、光源220aの2回目以降の使用時における当該平均値が低い場合、光源220a及び複数の反応容器201aのうち少なくとも一方の交換を促す通知を出力してもよい。もちろん、自動分析装置1は、当該通知を出力インタフェース6に出力してもよい。操作者は、当該通知を確認することで、光源220aが劣化していることや、複数の反応容器201aに汚れや傷などの異常が有ることを認識できる。また、操作者は、当該通知に従って、光源220aや複数の反応容器201aを交換することができる。これにより、自動分析装置1は保守性の高いシステムとなり得る。
【0091】
以上、第2実施形態に係る自動分析装置1について説明した。第1実施形態と同様に、第2実施形態において、自動分析装置1は、光源220aを介して、空の状態にある反応容器201aに光を照射し、光検出器220bを介して、反応容器201aを透過した光の光量(エアブランク値)を検出する。そして、自動分析装置1は、検出された光量に基づいて、反応容器201aの状態を判定する。
【0092】
これにより、第2実施形態に係る自動分析装置1は、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。特に、第2実施形態に係る自動分析装置1は、エアブランク値の測定を、反応容器201aの使用前に実施することで、反応容器201aの使用前に異常のある反応容器201aを精度よく検出することができる。
【0093】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、反応容器の汚れや傷を精度よく検出することができる。
【0094】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0095】
1 自動分析装置
2 分析機構
3 解析回路
4 駆動機構
5 入力インタフェース
6 出力インタフェース
7 通信インタフェース
8 記憶回路
9 処理回路
91 システム制御機能
92 状態判定機能
93 警告出力機能
94 通知出力機能
201 反応ディスク
201a 反応容器
202 試料ディスク
202a 試料容器
203 第1試薬庫
203a 第1試薬容器
203b 第1試薬ラック
204 第2試薬庫
204a 第2試薬容器
204b 第2試薬ラック
205 試料分注アーム
205a 試料分注プローブ
205b 試料プローブ洗浄槽
206 第1試薬分注アーム
206a 第1試薬分注プローブ
206b 第1プローブ洗浄槽
207 第2試薬分注アーム
207a 第2試薬分注プローブ
207b 第2プローブ洗浄槽
208 第1攪拌アーム
208a 第1攪拌子
208b 第1攪拌子洗浄槽
209 第2攪拌アーム
209a 第2攪拌子
209b 第2攪拌子洗浄槽
220 測光ユニット
220a 光源
220b 光検出器
230 洗浄乾燥ユニット
300 グラフ
310A 第1測定データ
310B 第2測定データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6