(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181772
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】発光ユニット、光学センサ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/484 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
G01S7/484
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095105
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】福田 海斗
(72)【発明者】
【氏名】新村 康介
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA10
5J084AB01
5J084AB07
5J084AC02
5J084BA04
5J084BA08
5J084BA12
5J084BA36
5J084BA40
5J084BA48
5J084BB02
5J084BB04
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA14
5J084CA23
(57)【要約】
【課題】物標のセンシング精度を確保する発光ユニットの提供。
【解決手段】センシングエリアへ照射した照射光に対する物標からの反射光を受光することで当該物標をセンシングする光学センサにおいて、照射光を発光により与える発光ユニット1は、インダクタ241及びコンデンサ242を有する共振回路部240と、逆接保護部247を有し、コンデンサ242の充電及び放電をスイッチングするスイッチング素子246と、コンデンサ242の放電に応じて共振回路部240側から流れる放電電流により、発光する強発光ダイオード22と、スイッチング素子246に対して強発光ダイオード22とは逆接保護の関係に接続され、放電電流よりも低い強度で逆接保護部247側及び共振回路部240側へ流れるリターン電流Irにより、強発光ダイオード22の発光終了に続いて強発光ダイオード22よりも低い強度に発光する弱発光ダイオード23とを、備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センシングエリア(As)へ照射した照射光に対する物標からの反射光を受光することにより、当該物標をセンシングする光学センサ(2)において、前記照射光を発光により与える発光ユニットであって、
インダクタ(241)及びコンデンサ(242)を有する共振回路部(240)と、
逆接保護部(247)を有し、前記コンデンサの充電及び放電をスイッチングするスイッチング素子(246)と、
前記コンデンサの放電に応じて前記共振回路部側から流れる放電電流(Id)により、発光する強発光ダイオード(22)と、
前記スイッチング素子に対して前記強発光ダイオードとは逆接保護の関係に接続され、前記放電電流よりも低い強度で前記逆接保護部側及び前記共振回路部側へ流れるリターン電流(Ir)により、前記強発光ダイオードの発光終了に続いて前記強発光ダイオードよりも低い強度に発光する弱発光ダイオード(23)とを、備える発光ユニット。
【請求項2】
前記スイッチング素子及び前記弱発光ダイオード間の寄生インダクタンス(Lw)は、前記スイッチング素子及び前記強発光ダイオード間の寄生インダクタンス(Ls)よりも、大きい請求項1に記載の発光ユニット。
【請求項3】
前記スイッチング素子を駆動する駆動回路部(248)を、さらに備え、
前記放電電流を発生させるオン状態の前記スイッチング素子を前記駆動回路部がオフすることにより、前記共振回路部の共振に応じた前記放電電流から前記リターン電流への切り替え後、前記コンデンサが充電される請求項1に記載の発光ユニット。
【請求項4】
オン状態の前記スイッチング素子を前記駆動回路部がオフすることによる、前記放電電流から前記リターン電流への切り替えに、スイッチング時間(ts)が空けられる請求項3に記載の発光ユニット。
【請求項5】
前記駆動回路部は、オン状態の前記スイッチング素子をオフする、スイッチング信号(ss)の立ち下がり時間(tf)を調整することにより、前記リターン電流の強度を可変設定する請求項3に記載の発光ユニット。
【請求項6】
請求項1に記載の発光ユニット(1)と、
前記発光ユニットの発光による前記照射光に対しての前記反射光を受光する受光ユニット(45)とを、含んで構成される光学センサ。
【請求項7】
請求項5に記載の発光ユニット(1)と、
前記発光ユニットの発光による前記照射光に対しての前記反射光を受光する受光ユニット(45)とを、含んで構成される光学センサ。
【請求項8】
前記駆動回路部は、前記強発光ダイオードの発光による前記照射光に対しての前記反射光を前記受光ユニットにより受光した受光強度が飽和強度(Dr)に達した、飽和時間(tr)とは順相関する時間に、前記立ち下がり時間を調整する請求項7に記載の光学センサ。
【請求項9】
前記駆動回路部は、前記強発光ダイオードの発光による前記飽和時間とは順相関する時間への前記立ち下がり時間の調整により、当該強発光ダイオードの発光終了に続く前記弱発光ダイオードの発光を与える前記リターン電流の強度を、可変設定する請求項8に記載の光学センサ。
【請求項10】
前記受光ユニットは、前記強発光ダイオードの発光による前記照射光に対して前記反射光を受光する受光画素(46)により、当該強発光ダイオードの発光終了に続く前記弱発光ダイオードの発光による前記照射光に対しての前記反射光を、受光する請求項6又は7に記載の光学センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センシングエリアへ照射した照射光に対する物標からの反射光を受光することにより、当該物標をセンシングする光学センサにおける、発光技術に関する。
【背景技術】
【0002】
照射光に対しての反射光を受光する光学センサにおいて、当該照射光を発光により与える発光技術が、特許文献1に開示されている。この特許文献1の開示技術では、インダクタ及びコンデンサを有する共振回路において、コンデンサの充電及び放電がスイッチング素子によりスイッチングされることで、コンデンサの放電に応じて発光ダイオードが発光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の開示技術では、物標による照射光の反射強度が高い場合、反射光に対する受光強度の飽和が生じることで、センシング精度の低下を招くおそれがあった。
【0005】
そこで本開示の課題は、物標のセンシング精度を確保する、発光ユニット及び光学センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
センシングエリア(As)へ照射した照射光に対する物標からの反射光を受光することにより、当該物標をセンシングする光学センサ(2)において、照射光を発光により与える発光ユニットであって、
インダクタ(241)及びコンデンサ(242)を有する共振回路部(240)と、
逆接保護部(247)を有し、コンデンサの充電及び放電をスイッチングするスイッチング素子(246)と、
コンデンサの放電に応じて共振回路部側から流れる放電電流(Id)により、発光する強発光ダイオード(22)と、
スイッチング素子に対して強発光ダイオードとは逆接保護の関係に接続され、放電電流よりも低い強度で逆接保護部側及び共振回路部側へ流れるリターン電流(Ir)により、強発光ダイオードの発光終了に続いて強発光ダイオードよりも低い強度に発光する弱発光ダイオード(23)とを、備える。
【0008】
本開示の第二態様は、
第一態様の発光ユニット(1)と、発光ユニットの発光による照射光に対しての反射光を受光する受光ユニット(45)とを、含んで構成される。
【0009】
これら第一及び第二態様による弱発光ダイオードは、コンデンサの放電に応じて共振回路部側から流れる放電電流により発光する強発光ダイオードとは、逆接保護部を有するスイッチング素子に対して、逆接保護の関係に接続される。そこで弱発光ダイオードは、放電電流よりも低強度で逆接保護部側及び共振回路部側へ流れるリターン電流により、強発光ダイオードの発光終了に続いて強発光ダイオードよりも低い強度に発光することとなる。これによれば、強発光ダイオードの発光による照射光に対しての反射光の受光強度に飽和が生じたとしても、弱発光ダイオードの発光による照射光に対しての反射光の受光強度を適正な低強度に抑えることができる。故に、強弱二種の発光に対する受光強度に基づくことで、物標のセンシング精度を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態による光学センサの構成を示す断面図である。
【
図2】一実施形態による光学センサの構成を示す回路図である。
【
図3】一実施形態による光学センサの発光特性を示すグラフである。
【
図4】一実施形態による光学センサの発光特性を示すグラフである。
【
図5】一実施形態による発光ユニットの発光特性を説明するための回路図である。
【
図6】一実施形態による発光ユニットの発光特性を説明するための回路図である。
【
図7】一実施形態による発光ユニットの発光特性を説明するための回路図である。
【
図8】一実施形態による発光ユニットの発光特性を説明するための回路図である。
【
図9】一実施形態による発光ユニットの発光特性を示すグラフである。
【
図10】一実施形態による発光ユニットの発光特性を示すグラフである。
【
図11】一実施形態による制御フローを示すフローチャートである。
【
図12】一実施形態による受光ユニットでの受光特性を説明するための模式図である。
【
図13】一実施形態による受光ユニットでの受光特性を説明するための模式図である。
【
図14】一実施形態による受光ユニットでの受光特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すように本開示の一実施形態は、発光ユニット1を含んで構成される光学センサ2に関する。光学センサ2は、車両5に搭載される。車両5は、乗員の搭乗状態において走行路を走行可能な、例えば自動車等の移動体である。
【0012】
車両5は、自動運転制御モードにおいて定常的、又は一時的に自動走行可能となっている。ここで自動運転制御モードは、条件付運転自動化、高度運転自動化、又は完全運転自動化といった、作動時のシステムが全ての運転タスクを実行する自律運転制御により、実現されてもよい。自動運転制御モードは、運転支援、又は部分運転自動化といった、乗員が一部又は全ての運転タスクを実行する高度運転支援制御において、実現されてもよい。自動運転制御モードは、それら自律運転制御と高度運転支援制御とのいずれか一方、組み合わせ、又は切り替えにより実現されてもよい。
【0013】
尚、以下の説明では断り書きがない限り、前、後、上、下、左、及び右の各方向は、水平面上の車両5を基準として定義される。また水平方向とは、車両5の方向基準となる水平面に対して、平行方向を示す。さらに鉛直方向とは、車両5の方向基準となる水平面に対して、上下方向でもある垂直方向を示す。
【0014】
光学センサ2は、自動制御運転モードを含む車両5の運転制御に活用可能な画像データを取得するための、所謂LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)である。光学センサ2は、例えば前方部、左右の側方部、後方部、及び上方のルーフ等のうち、車両5の少なくとも一箇所に配置される。
【0015】
光学センサ2においては、互いに直交する三軸としてのX軸、Y軸、及びZ軸により、三次元直交座標系が定義されている。特に本実施形態では、X軸及びZ軸がそれぞれ車両5の相異なる水平方向に沿って設定され、またY軸が車両5の鉛直方向に沿って設定される。尚、
図1においてY軸に沿う一点鎖線よりも左側部分(後述の光学窓12側)は、実際には当該一点鎖線よりも右側部分(後述のモジュール21,41側)に対して垂直な断面を図示している。
【0016】
光学センサ2は、車両5の外界空間のうち配置箇所及び視野角に応じたセンシングエリアAsへと向けて、光を照射する。光学センサ2は、照射した光がセンシングエリアAsから反射されることで入射してくる反射光を、受光する。こうした照射光に対しての反射光の受光に応じて光学センサ2は、センシングエリアAs内において光を反射した物標を、センシングする。ここで特に本実施形態におけるセンシングとは、光学センサ2から物標までの反射点距離、及び物標からの反射強度のうち、少なくとも前者を測定することを意味する。
【0017】
車両5に適用される光学センサ2において代表的なセンシング対象物標は、例えば歩行者、サイクリスト、人間以外の動物、及び他車両等の移動物体のうち、少なくとも一種類であってもよい。車両5に適用される光学センサ2において代表的なセンシング対象物標は、例えばガードレール、道路標識、道路脇の構造物、及び道路上の落下物等の静止物体のうち、少なくとも一種類であってもよい。
【0018】
光学センサ2は、ケーシングモジュール10、投光モジュール21、走査モジュール31、受光モジュール41、及び制御モジュール51を含んで構成されている。ケーシングモジュール10は、筐体11、及び光学窓12を備えている。筐体11は、例えば金属又は合成樹脂等の遮光性部材を主体として、中空箱状に形成されている。筐体11は、投光モジュール21、走査モジュール31、及び受光モジュール41を内部に収容している。筐体11には、例えばガラス又は合成樹脂等の透光性部材から板状に形成された、光学窓12が保持されている。
【0019】
投光モジュール21は、発光ユニット1、及び投光レンズ系28を備えている。
図2に示すように発光ユニット1は、センシングエリアAsへの照射光を赤外域での発光により与える強弱二種類の発光ダイオード22,23の組を、少なくとも一組備えている。
図3に示すように強発光ダイオード22は、照射光の照射周期となる発光周期Tlにおいて発光するように、制御モジュール51により制御される。弱発光ダイオード23は、発光周期Tlにおいて強発光ダイオード22の発光終了に続いて発光するように、制御モジュール51により制御される。このとき弱発光ダイオード23は、
図4に示すように強発光ダイオード22の発光強度Dsよりも弱い強度Dwで発光する。これにより、弱発光ダイオード23の発光による照射光の強度が、強発光ダイオード22の発光による照射光の強度よりも弱くなる。
【0020】
図1に示すように投光レンズ系28は、発光ユニット1での発光による照射光を、走査モジュール31の走査ミラー32へ向かって投光する。投光レンズ系28は、例えば集光、コリメート、及び整形等のうち、少なくとも一種類の光学作用を発揮する。投光レンズ系28は、Z軸に沿った投光光軸を、形成する。投光レンズ系28は、発揮する光学作用に応じたレンズ形状の投光レンズ29を、投光光軸上に少なくとも一つ有している。投光レンズ系28の投光光軸上には、発光ユニット1が位置決めされている。発光ユニット1において各発光ダイオード22,23の発光による照射光は、投光レンズ系28の投光光軸に沿って導光される。
【0021】
走査モジュール31は、走査ミラー32、及び走査モータ35を備えている。走査ミラー32は、基材の片面である反射面33に反射膜が蒸着されることで、板状に形成されている。走査ミラー32は、Y軸に沿う回転中心線まわりに回転可能に、筐体11により支持されている。走査ミラー32は、機械的又は電気的なストッパにより有限となる駆動区間内において、揺動運動する。
【0022】
走査ミラー32は、投光モジュール21と受光モジュール41とに共通に設けられている。走査ミラー32は、投光モジュール21の投光レンズ系28から入射する照射光を、回転角度に応じた向きとなる反射面33での反射により光学窓12を通してセンシングエリアAsへと照射することで、当該エリアAsを時間的且つ空間的に走査する。特に本実施形態では、照射光によるセンシングエリアAsの走査が、水平方向での走査に実質制限されている。このような走査と同時的に走査ミラー32は、センシングエリアAsから光学窓12を通して入射してくる反射光を、回転角度に応じた向きの反射面33により受光モジュール41側へとさらに反射する。ここで走査ミラー32の回転運動速度に対しては、照射光及び反射光の速度が十分に大きい。これにより照射光に対する反射光は、照射光と略同一回転角度の走査ミラー32により照射光と逆行するように、受光モジュール41側へ導光される。
【0023】
走査モータ35は、例えばボイスコイルモータ、ブラシ付き直流モータ、又はステッピングモータ等である。走査モータ35は、制御モジュール51からの制御に従って走査ミラー32を、有限の駆動区間内にて回転駆動(即ち、揺動駆動)する。このとき走査ミラー32の回転角度は、投光モジュール21の発光ユニット1による発光周期Tl(
図3参照)と同期させて、順次変化させられる。
【0024】
受光モジュール41は、投光モジュール21に対してY軸方向にずれて配置されている。受光モジュール41は、受光レンズ系42、及び受光ユニット45を備えている。受光レンズ系42は、センシングエリアAsからの反射光を受光ユニット45に対して結像させるように、光学作用を発揮する。受光レンズ系42は、Z軸に沿った受光光軸を、形成する。受光レンズ系42は、発揮する光学作用に応じたレンズ形状の受光レンズ43を、受光光軸上に少なくとも一つ有している。走査ミラー32において反射面33から入射した反射光は、走査ミラー32の駆動区間内において受光レンズ系42の受光光軸に沿って導光される。
【0025】
受光ユニット45は、受光レンズ系42の受光光軸上に位置決めされている。受光ユニット45は、複数の受光画素46が基板上においてアレイ状に配列されることで、構築されている。特に本実施形態の各受光画素46は、Y軸及びX軸に沿って二次元アレイ状に配列されている。各受光画素46はさらに、それぞれ複数ずつの受光素子から構成されている。各受光画素46の受光素子は、例えばシングルフォトンアバランシェダイオード(SPAD:Single Photon Avalanche Diode)等のフォトダイオードを主体に、形成されている。各受光画素46は、受光レンズ系42から入射した反射光を、それぞれの受光素子によって受光する。
【0026】
受光ユニット45は、出力回路48を一体に有している。出力回路48は、発光周期Tlに応じた走査ミラー32の回転角度に対応付けられる走査ライン別に、制御モジュール51からの制御に従ってサンプリング処理を実行する。そこで、サンプリング処理により出力回路48は、受光ユニット45の各受光画素46からの出力信号に基づく走査ライン別の受光データを、生成する。こうして生成された受光データは、出力回路48から制御モジュール51へ出力される。
【0027】
制御モジュール51は、プロセッサ52及びメモリ53を有する、少なくとも一つのコンピュータを主体に構成されている。制御モジュール51は、その全体が筐体11内部に収容されていてもよい(
図1の例)。制御モジュール51は、その全体が筐体11外部の車両5に配置されていてもよい。制御モジュール51は、筐体11内部と外部の車両5とに跨って分散配置されていてもよい。
【0028】
制御モジュール51は、発光ユニット1、走査モータ35、及び出力回路48に接続されている。制御モジュール51は、メモリ53に記憶の制御プログラムをプロセッサ52により実行することで、それら接続対象を制御する。具体的に制御モジュール51は、発光ユニット1における各発光ダイオード22,23の発光と、走査モータ35による走査ミラー32の回転とを、発光周期Tl毎に同期制御する。それと並行して制御モジュール51は、発光周期Tl毎となる走査ライン別に出力回路48からの受光データの出力を制御することで、光学センサ2から物標までの反射点距離を少なくともセンシングしたセンシング情報を、当該受光データに基づき構築する。
【0029】
次に、発光ユニット1の詳細構成を説明する。
図2に示すように発光ユニット1においては、発光ダイオード22,23の組数に応じた数の発光回路24が、構築されている。発光回路24は、発光ダイオード22,23の組に加え、共振回路部240、スイッチング素子246、及び駆動回路部248を備えている。
【0030】
共振回路部240には、電源電圧の印加される電源端子Evと、アース電圧の印加されるアース端子E0とが、設けられている。共振回路部240は、電源端子Evからアース端子E0の間において直列接続された、インダクタ241及びコンデンサ242を有する、所謂LC直列回路である。インダクタ241は、インダクションコイルを主体に構成されている。コンデンサ242は、例えば電解型等の耐熱コンデンサを主体に構成されている。
【0031】
発光回路24では、共振回路部240におけるインダクタ241及びコンデンサ242間の中点Emからアース端子E0までを、接続経路Rmがコンデンサ242とは並列に接続している。接続経路Rmには、スイッチング素子246が設けられている。スイッチング素子246は、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の電界効果トランジスタを主体に構成され、ボディダイオード(即ち、寄生ダイオード)をソース側からドレイン側への逆接保護部247として有している。
図2の例では、Nチャンネル型MOSFETにおいて中点Em側にドレイン、アース端子E0側にソースが、それぞれ接続されている。
【0032】
発光回路24におけるコンデンサ242の充電及び放電は、スイッチング素子246によりスイッチングされる。具体的に、スイッチング素子246のオフ状態においてコンデンサ242は充電される一方、オフ状態からのスイッチング素子246のオンをトリガとしてコンデンサ242が放電する。
【0033】
発光回路24において、中点Emからアース端子E0までの接続経路Rmのうち、スイッチング素子246よりもアース端子E0側には、強発光ダイオード22が設けられている。強発光ダイオード22は、赤外域のレーザダイオード(Laser Diode)を主体に構成されている。強発光ダイオード22が整流する順方向は、スイッチング素子246側からアース端子E0側へ向かう電流方向に、設定されている。強発光ダイオード22は、
図3の如く仕様の閾電流よりも高強度の電流Idを印加されて発振モードとなることで、
図4の如く高強度Dsで発光する。
【0034】
図2に示すように発光回路24では、接続経路Rmのうちスイッチング素子246及び強発光ダイオード22間の分岐点Ejからアース端子E0までを、分岐経路Rjが強発光ダイオード22とは並列に接続している。分岐経路Rjには、弱発光ダイオード23が設けられている。弱発光ダイオード23は、赤外域の発光ダイオード(Light Emitting Diode)を主体に構成されている。弱発光ダイオード23が整流する順方向は、アース端子E0側からスイッチング素子246側へ向かう電流方向に、設定されている。これらの構成により弱発光ダイオード23は、スイッチング素子246に対して強発光ダイオード22とは逆接保護の関係に接続されている。弱発光ダイオード23は、
図3の如く強発光ダイオード22よりも低強度の電流Irを印加されることで、
図4の如く強発光ダイオード22よりも低強度Dwで発光する。
【0035】
図2に示す発光回路24では、コンデンサ242からの放電に応じて強発光ダイオード22の発光が優先されるよう、スイッチング素子246及び強発光ダイオード22間の配線による経路長が、同素子246及び弱発光ダイオード23間の配線による経路長よりも、短く設定されている。これにより
図5に仮想的に示すように、スイッチング素子246及び弱発光ダイオード23間の寄生インダクタンスLwは、同素子246及び強発光ダイオード22間の寄生インダクタンスLsよりも、大きくなっている。
【0036】
図2に示すように発光回路24では、スイッチング素子246のゲートに対して駆動回路部248が接続されている。駆動回路部248は、制御モジュール51にも接続されている。駆動回路部248は、制御モジュール51からの制御に従ってスイッチング素子246のゲートへと入力するスイッチング信号ssにより、スイッチング素子246をオンオフ駆動する。具体的に
図3に示すように駆動回路部248は、信号電圧がオフレベルVoffのスイッチング信号ssによりスイッチング素子246をオフする一方、信号電圧がオンレベルVonのスイッチング信号ssによりスイッチング素子246をオンする。
【0037】
このような構成の発光回路24において、今回発光周期Tlの開始前となる前回発光周期Tlの充電期間Tlcには、
図3の如く駆動回路部248がスイッチング素子246をオフ状態に保持していることで、
図6に示すようにコンデンサ242が充電される。そこで、発光回路24において今回発光周期Tlが開始されると、
図3の如く駆動回路部248がオフ状態のスイッチング素子246をオンすることでコンデンサ242から放電させる、放電期間Tldが開始される。
【0038】
発光回路24において放電期間Tldには、
図9に示す周期Tpにて共振回路部240が共振する。そこで放電期間Tldのうち、Tp/2以上となる強発光期間Tldsには、
図3,7,9の如くコンデンサ242の放電に応じた放電電流Idが、当該共振回路部240側から強発光ダイオード22へ流れる。これにより強発光ダイオード22は、
図4の如き高強度Dsで強発光する。
【0039】
発光回路24における放電期間Tldのうち、Tp/2超過且つTp未満の弱発光期間Tldwには、
図3,8,9の如く放電電流Idとは逆電流且つ低電流となる、リターン電流Irが発生する。このときリターン電流Irは、弱発光ダイオード23からスイッチング素子246の逆接保護部247側及び共振回路部240のコンデンサ242側へ流れる。これにより弱発光ダイオード23は、リターン電流Irの強度に応じた、強発光ダイオード22よりも低い低強度Dwにて、
図4の如く弱発光することとなる。
【0040】
発光回路24において
図3の如く強発光期間Tlds中には、駆動回路部248がオン状態のスイッチング素子246をオフする。これにより、放電期間Tldにおける共振回路部240の共振が
図9の如く一共振周期Tpに制限されることで、当該共振に応じた放電電流Idからリターン電流Irへの切り替え後には、
図3の如く充電期間Tlcとしてコンデンサ242が充電される。
【0041】
ここで共振回路部240の共振に応じた、放電期間Tldでの時間tに対する電流過渡特性i(t)を、具体的に説明する。
図9に示すように電流過渡特性i(t)は、下記の数1により表される。数1において、Vcはコンデンサ242の両端電圧であり、Cはコンデンサ242の静電容量であり、Rは電流経路上の寄生抵抗の大きさである。数1において、Lは電流経路上の寄生インダクタンスであって、強発光期間Tldsには下記の数2、また弱発光期間Tldwには下記の数3で表される。数2,3において、
図5の如くLsとLwは、上述したスイッチング素子246と各発光ダイオード22,23との間の寄生インダクタンスである。数2,3においてLcは、
図5の如くスイッチング素子246とコンデンサ242との間の寄生インダクタンスである。
【数1】
【数2】
【数3】
【0042】
こうした電流過渡特性i(t)によると、
図3,9,10に示すように強発光期間Tldsには、放電電流Idとして順方向のi(t)が流れる。さらに強発光期間Tlds後の弱発光期間Tldwには、逆方向のi(t)のうち、弱発光ダイオード23の閾値電圧Vthを逆起電力により当該逆方向へと超えた分が、放電電流Idよりも低強度のリターン電流Irとして流れる。このとき弱発光期間Tldwにおけるリターン電流Irの強度ピーク値Irpは、強発光期間Tldsにおいて放電電流Idを発生させるオン状態のスイッチング素子246をオフする、スイッチング信号ssの立ち下がり時間tfに応じて、
図3,10の如く変化する。またこのとき、逆方向のi(t)が弱発光ダイオード23の閾値電圧Vthを超えるのに要する時間が、放電電流Idからリターン電流Irへの切り替えに伴って空けられるスイッチング時間tsとして、発生する。
【0043】
そこで駆動回路部248は、制御モジュール51からの制御に従って立ち下がり時間tfを調整することで、リターン電流Irの強度ピーク値Irpを可変設定する。具体的に駆動回路部248は、長い立ち下がり時間tfの調整によりリターン電流Irの強度ピーク値Irpを減少させる一方、短い立ち下がり時間tfの調整によりリターン電流Irの強度ピーク値Irpを増大させる。以上により、立ち下がり時間tfに逆相関するリターン電流Irの強度に対しては、順相関することになる低強度Dwでの弱発光ダイオード23の発光が、高強度Dsでの強発光ダイオード22の発光終了に続いて、実現される。ここまで説明したように逆起電力によるリターン電流Irの利用は、弱発光ダイオード23を発光させるための消費電力の低減を可能にする。
【0044】
次に、制御モジュール51がメモリ53に記憶の制御プログラムをプロセッサ52により実行することで遂行される制御フローを、
図11に基づき説明する。制御フローは、車両5の起動中において発光周期Tl毎に繰り返される。尚、制御フローにおける各「S」は、制御プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。
【0045】
S101において制御モジュール51は、走査モータ35による走査ミラー32の回転角度を、今回の発光周期Tlに対応する角度に同期させる、同期処理を遂行する。このような同期処理により、受光ユニット45において反射光を受光する受光画素46の列が、
図12,13に示すように今回発光周期Tlに対応する走査ライン(以下、今回走査ラインという)Xに、設定される。
【0046】
図11に示すように、S101に続くS102において制御モジュール51は、今回発光周期Tlのうち放電期間Tldにおいて駆動回路部248を制御することで、オフ状態のスイッチング素子246をオンにする。これに応答して開始される強発光期間Tldsには、放電電流Idに応じた高強度Dsでの強発光ダイオード22の発光による照射光に対して、
図12の如く反射光が今回走査ラインXにより受光される。その結果として制御モジュール51は、強発光期間Tldsにおける受光結果を表す受光データを、受光ユニット45から取得する。
【0047】
図11に示すように、S102に続くS103において制御モジュール51は、S102による強発光期間Tldsでの受光データから、今回走査ラインXにおいて少なくとも一つの受光画素46での受光強度が、その上限値となる飽和強度Drに、
図14に示すように達しているか否かを判定する。
【0048】
図11に示すように、S103において肯定判定が下された場合には、制御フローがS104,S105へ順次移行する。まず、S104において制御モジュール51は、
図14の如く少なくとも一つの受光画素46での受光強度が飽和強度Drに達した飽和時間trを、抽出する。このとき、飽和強度Drに達した受光画素46が単一の場合、当該単一画素46での受光強度の飽和時間trが抽出される。また、飽和強度Drに達した受光画素46が複数の場合、当該複数画素46での受光強度の飽和時間trのうち、例えば最大値、最小値、又は平均値等が抽出される。
【0049】
次に、
図11に示すS105において制御モジュール51は、S102によりオン状態となったスイッチング素子246を駆動回路部248によりオフさせるスイッチング信号ssの立ち下がり時間tfを、飽和時間trに応じて決定する。このとき、飽和時間trが長いほど、即ち飽和強度Drを超過する反射光の反射強度が高いほど、立ち下がり時間tfを延長する。
【0050】
これらS104,S105への移行に対し、S103において否定判定が下された場合には、制御フローがS106へ移行する。S106において制御モジュール51は、S102によりオン状態となったスイッチング素子246を駆動回路部248によりオフさせるスイッチング信号ssの立ち下がり時間tfを、設定時間に決定する。このとき設定時間は、S105では飽和時間trに応じて可変となる立ち下がり時間tfのうち、例えば最短時間等に予め設定される。
【0051】
以上において、S104,S105の順次実行終了後には、制御フローがS107へ移行する。また、S106の実行終了後にも、制御フローがS107へ移行する。そこでS107において制御モジュール51は、今回発光周期Tlのうち放電期間Tldにおいて駆動回路部248を制御することで、オフ状態のスイッチング素子246をオフにする。このとき駆動回路部248は、スイッチング素子246をオフするスイッチング信号ssの立ち下がり時間tfを、S105,S106のうち、S107の直前に経由した一方のステップによる決定値に、調整する。
【0052】
S107での調整としては特に、直前のS105での決定に従って駆動回路部248は、強発光ダイオード22の発光による飽和時間trに対して順相関するように立ち下がり時間tfを調整する場合が、想定される。この場合、強発光ダイオード22の発光終了に続く弱発光ダイオード23の発光を与えるリターン電流Irの強度は、調整された立ち下がり時間tfに対して逆相関するように可変設定される。例えば駆動回路部248は、長い飽和時間trとは順相関する時間に立ち下がり時間tfを延長調整することで、当該時間tfとは逆相関する低強度側に、リターン電流Irの強度ピーク値Irp及び弱発光ダイオード23の発光強度Dwを設定することになる。
【0053】
S107でのスイッチング素子246のオフに応答して開始される弱発光期間Tldwには、リターン電流Irに応じた低強度Dwでの弱発光ダイオード23の発光による照射光に対して、
図13の如く反射光が直前の強発光期間Tldsと同じ今回走査ラインXにより受光される。即ち、強発光ダイオード22の発光による照射光に対して反射光を受光する今回走査ラインXの受光画素46により、当該強発光ダイオード22の発光終了に続く弱発光ダイオード23の発光による照射光に対しての反射光も、受光される。その結果として制御モジュール51は、弱発光期間Tldwにおける受光結果を表す受光データを、受光ユニット45から取得する。
【0054】
図11に示すように、S107に続くS108において制御モジュール51は、S102,S107の各々による受光データに基づき、反射光を与えた物標に関してのセンシング情報を構築する。このとき、S104,S105が経由されている場合の今回発光周期Tlでは、S102による強発光期間Tldsでの受光データよりも優先的に、S107による弱発光期間Tldwでの非飽和受光データに基づくことで、センシングデータが構築される。逆に、S106が経由されている場合の今回発光周期Tlでは、S107による弱発光期間Tldwでの受光データよりも優先的に、S102による強発光期間Tldsでの高SN比の受光データに基づくことで、センシングデータが構築される。S108の実行が終了すると、今回発光周期Tlでの制御フローの実行も終了する。
【0055】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0056】
本実施形態による弱発光ダイオード23は、コンデンサ242の放電に応じて共振回路部240側から流れる放電電流Idにより発光する強発光ダイオード22とは、逆接保護部247を有するスイッチング素子246に対して、逆接保護の関係に接続される。そこで弱発光ダイオード23は、放電電流Idよりも低強度で逆接保護部247側及び共振回路部240側へ流れるリターン電流Irにより、強発光ダイオード22の発光終了に続いて強発光ダイオード22よりも低い強度Dwに発光することとなる。これによれば、強発光ダイオード22の発光による照射光に対しての反射光の受光強度に飽和が生じたとしても、弱発光ダイオード23の発光による照射光に対しての反射光の受光強度を適正な低強度に抑えることができる。故に、強弱二種の発光に対する受光強度に基づくことで、物標のセンシング精度を確保することが可能となる。
【0057】
本実施形態によると、スイッチング素子246及び弱発光ダイオード23間の寄生インダクタンスLwは、同素子246及び強発光ダイオード22間の寄生インダクタンスLsよりも、大きい。このような寄生インダクタンスLw,Lsの大小関係によれば、上述の式1から、強発光ダイオード22を発光させる放電電流Idよりも低強度の範囲に、弱発光ダイオード23を発光させるリターン電流Irが設定され易くなる。故に、弱発光ダイオード23の発光に対する受光強度をセンシングに必要な低強度に適正に抑えて、センシング精度の確保への信頼性を高めることが可能となる。
【0058】
本実施形態においてスイッチング素子246を駆動する駆動回路部248は、放電電流Idを発生させるオン状態のスイッチング素子246をオフする。これにより、共振回路部240の共振に応じた放電電流Idからリターン電流Irへの切り替え後、コンデンサ242が充電されるので、強発光ダイオード22の発光と弱発光ダイオード23の発光とが一回ずつに制限され得る。故に、強弱二種の発光に対する受光強度に基づいたセンシング精度の確保への信頼性を高めることが可能となる。
【0059】
本実施形態によると、オン状態のスイッチング素子246を駆動回路部248がオフすることによる、放電電流Idからリターン電流Irへの切り替えに、スイッチング時間tsが空けられる。これによれば、強発光ダイオード22の発光と弱発光ダイオード23の発光とが時間的に分離され得るので、強弱二種の発光に対する受光強度に基づいたセンシング精度の確保への信頼性を、保証することが可能となる。
【0060】
本実施形態による駆動回路部248は、オン状態のスイッチング素子246をオフする、スイッチング信号ssの立ち下がり時間tfを調整することで、リターン電流Irの強度を可変設定する。これによれば、強発光ダイオード22を発光させる放電電流Idよりも低強度の範囲で、スイッチング信号ssの立ち下がり時間tfに合わせた強度のリターン電流Irを高精度に可変設定することができる。故に、弱発光ダイオード23の発光に対する受光強度をセンシングに必要な低強度に適正に抑えて、センシング精度の確保への信頼性を保証することが可能となる。
【0061】
本実施形態による駆動回路部248は、強発光ダイオード22の発光による照射光に対しての反射光を受光ユニット45により受光した受光強度が飽和強度Drに達した、飽和時間trとは順相関する時間に、スイッチング信号ssの立ち下がり時間tfを調整する。これによれば、強発光ダイオード22の発光に対する受光強度の飽和を解消し得る低強度のリターン電流Irを、立ち下がり時間tfの調整により高精度に可変設定することができる。故に、弱発光ダイオード23の発光に対する受光強度をセンシングに必要な低強度に適正に抑えて、センシング精度の確保への高い信頼性を保証することが可能となる。
【0062】
本実施形態による駆動回路部248は、強発光ダイオード22の発光による飽和時間trとは順相関する時間への立ち下がり時間tfの調整により、当該強発光ダイオード22の発光終了に続く弱発光ダイオード23の発光を与えるリターン電流Irの強度を、可変設定する。これによれば、強発光ダイオード22の発光に対する受光強度の飽和を解消し得る低強度のリターン電流Irを、強発光ダイオード22の当該発光直後から高精度に可変設定することができる。故に、弱発光ダイオード23の発光に対する受光強度をセンシングに必要な低強度に適時且つ適正に抑えて、センシング精度の確保への高い信頼性を保証することが可能となる。
【0063】
本実施形態の受光ユニット45によると、強発光ダイオード22の発光による照射光に対して反射光を受光する受光画素46により、当該強発光ダイオード22の発光終了に続く弱発光ダイオード23の発光による照射光に対しての反射光が、受光される。これによれば、連続する強弱二種の発光に対して共通な受光画素46での受光強度に基づき物標をセンシングすることができるので、強発光ダイオード22の発光により受光強度が飽和したとしても、弱発光ダイオード23の発光により適正な低強度の受光強度を担保して、センシング精度を確保することが可能となる。
【0064】
(他の実施形態)
以上、一実施形態について説明したが、本開示は、当該説明の実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0065】
変形例では、仕様の閾電流よりも低強度の電流Irを印加されて未発振状態の発光モードとなる、赤外域のレーザダイオードが弱発光ダイオード23として用いられてもよい。変形例では、弱発光ダイオード23に減光フィルタが一体に設けられていてもよい。変形例では、スイッチング素子246及び弱発光ダイオード23間の寄生インダクタンスLwは、同素子246及び強発光ダイオード22間の寄生インダクタンスLsと実質等しく設定されてもよい。変形例では、スイッチング素子246及び弱発光ダイオード23間の寄生インダクタンスLwは、同素子246及び強発光ダイオード22間の寄生インダクタンスLsよりも小さく設定されてもよい。
【0066】
変形例では、スイッチング信号ssの立ち下がり時間tfが、飽和時間tr以外の条件に応じて調整されてもよい。変形例では、スイッチング信号ssの立ち下がり時間tfが固定されることで、リターン電流Irの強度も固定されてもよい。変形例では、前回発光周期Tlの飽和時間trに応じて決定された時間に、今回発光周期Tlでのスイッチング信号ssの立ち下がり時間tfが調整されてもよい。変形例では、強発光ダイオード22の発光による照射光に対して反射光を受光する受光画素46と、当該強発光ダイオード22の発光終了に続く弱発光ダイオード23の発光による照射光に対して反射光を受光する受光画素46とは、それぞれ異なる走査ラインに制御されてもよい。
【0067】
変形例において発光ユニット1を含む光学センサ2の適用される車両5は、例えば自律走行又はリモート走行により荷物搬送若しくは情報収集等の可能な自律走行ロボットであってもよい。変形例において発光ユニット1を含む光学センサ2の適用される対象は、例えば車両5以外の移動体、又は構造物といった静止物であってもよい。
【0068】
(付言)
本明細書には、以下に列挙する複数の技術的思想と、それらの複数の組み合わせが開示されている。
【0069】
(技術的思想1)
センシングエリア(As)へ照射した照射光に対する物標からの反射光を受光することにより、当該物標をセンシングする光学センサ(2)において、照射光を発光により与える発光ユニットであって、
インダクタ(241)及びコンデンサ(242)を有する共振回路部(240)と、
逆接保護部(247)を有し、コンデンサの充電及び放電をスイッチングするスイッチング素子(246)と、
コンデンサの放電に応じて共振回路部側から流れる放電電流(Id)により、発光する強発光ダイオード(22)と、
スイッチング素子に対して強発光ダイオードとは逆接保護の関係に接続され、放電電流よりも低い強度で逆接保護部側及び共振回路部側へ流れるリターン電流(Ir)により、強発光ダイオードの発光終了に続いて強発光ダイオードよりも低い強度に発光する弱発光ダイオード(23)とを、備える発光ユニット。
【0070】
(技術的思想2)
スイッチング素子及び弱発光ダイオード間の寄生インダクタンス(Lw)は、スイッチング素子及び強発光ダイオード間の寄生インダクタンス(Ls)よりも、大きい技術的思想1に記載の発光ユニット。
【0071】
(技術的思想3)
スイッチング素子を駆動する駆動回路部(248)を、さらに備え、
放電電流を発生させるオン状態のスイッチング素子を駆動回路部がオフすることにより、共振回路部の共振に応じた放電電流からリターン電流への切り替え後、コンデンサが充電される技術的思想1又は2に記載の発光ユニット。
【0072】
(技術的思想4)
オン状態のスイッチング素子を駆動回路部がオフすることによる、放電電流からリターン電流への切り替えに、スイッチング時間(ts)を空けられる技術的思想3に記載の発光ユニット。
【0073】
(技術的思想5)
駆動回路部は、オン状態のスイッチング素子をオフする、スイッチング信号(ss)の立ち下がり時間(tf)を調整することにより、リターン電流の強度を可変設定する技術的思想3又は4に記載の発光ユニット。
【0074】
(技術的思想6)
技術的思想1~4のいずれか一項に記載の発光ユニット(1)と、
発光ユニットの発光による照射光に対しての反射光を受光する受光ユニット(45)とを、含んで構成される光学センサ。
【0075】
(技術的思想7)
技術的思想5に記載の発光ユニット(1)と、
発光ユニットの発光による照射光に対しての反射光を受光する受光ユニット(45)とを、含んで構成される光学センサ。
【0076】
(技術的思想8)
駆動回路部は、強発光ダイオードの発光による照射光に対しての反射光を受光ユニットにより受光した受光強度が飽和強度(Dr)に達した、飽和時間(tr)とは順相関する時間に立ち下がり時間を調整する技術的思想7に記載の光学センサ。
【0077】
(技術的思想9)
駆動回路部は、強発光ダイオードの発光による飽和時間とは順相関する時間への立ち下がり時間の調整により、当該強発光ダイオードの発光終了に続く弱発光ダイオードの発光を与えるリターン電流の強度を、可変設定する技術的思想8に記載の光学センサ。
【0078】
(技術的思想10)
受光ユニットは、強発光ダイオードの発光による照射光に対して反射光を受光する受光画素(46)により、当該強発光ダイオードの発光終了に続く弱発光ダイオードの発光による照射光に対しての反射光を受光する技術的思想6~9のいずれか一項に記載の光学センサ。
【符号の説明】
【0079】
1:発光ユニット、2:光学センサ、22:強発光ダイオード、23:弱発光ダイオード、45:受光ユニット、46:受光画素、240:共振回路部、241:インダクタ、242:コンデンサ、246:スイッチング素子、247:逆接保護部、248:駆動回路部、As:センシングエリア、Dr:飽和強度、Id:放電電流、Ir:リターン電流、Ls,Lw:寄生インダクタンス、ss:スイッチング信号、tf:立ち下がり時間、tr:飽和時間、ts:スイッチング時間