(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181776
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】誘導機の制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 21/22 20160101AFI20231218BHJP
【FI】
H02P21/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095110
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】北村 圭祐
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB04
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD05
5H505EE30
5H505EE41
5H505GG02
5H505GG04
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505JJ24
5H505JJ28
5H505LL07
5H505LL22
(57)【要約】
【課題】誘導機の回転数が比較的小さい場合において、誘導機の回転数に誤差が含まれることにより発生する不要なトルクを低減する。
【解決手段】誘導機Mを駆動させるインバータ回路2と、誘導機Mの回転数ωが回転数閾値ωth1より大きい場合、励磁電流指令値Id*を励磁電流指令値Id*1とするとともにトルク電流指令値Iq*をトルク電流指令値Iq*1としてインバータ回路2の動作を制御し、回転数ωが回転数閾値ωth1以下である場合、励磁電流指令値Id1*より小さい励磁電流指令値Id*2及びトルク電流指令値Iq*1によりインバータ回路2の動作を制御する制御回路3とを備えて制御装置1を構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導機を駆動させるインバータ回路と、
外部から入力される回転数指令値と回転センサの検出値に基づく回転数とにより算出された回転数偏差がゼロに収束するようにトルク指令値を調整し、前記トルク指令値を用いて、励磁電流指令値とトルク電流指令値を取得して、前記インバータ回路の動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記誘導機の回転数が第1回転数閾値より大きい場合、前記励磁電流指令値を第1励磁電流指令値とするとともに前記トルク電流指令値を第1トルク電流指令値として前記インバータ回路の動作を制御し、
前記回転数が前記第1回転数閾値以下である場合、前記第1励磁電流指令値より小さい第2励磁電流指令値と、前記第1トルク電流指令値または前記第1トルク電流指令値より大きい第2トルク電流指令値とにより前記インバータ回路の動作を制御する
ことを特徴とする誘導機の制御装置。
【請求項2】
誘導機を駆動させるインバータ回路と、
外部から入力される回転数指令値と回転センサの検出値に基づく回転数とにより算出された回転数偏差がゼロに収束するようにトルク指令値を調整し、前記トルク指令値を用いて、励磁電流指令値とトルク電流指令値を取得して、前記インバータ回路の動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記回転数が第1回転数閾値より大きい場合、または、前記回転数が前記第1回転数閾値以下であり、前記誘導機の出力が第1出力閾値より大きい場合、前記励磁電流指令値を第1励磁電流指令値とするとともに前記トルク電流指令値を第1トルク電流指令値として前記インバータ回路の動作を制御し、
前記回転数が前記第1回転数閾値以下であり、前記誘導機の出力が前記第1出力閾値以下である場合、前記第1励磁電流指令値より小さい第2励磁電流指令値及び前記第1トルク電流指令値により前記インバータ回路の動作を制御する
ことを特徴とする誘導機の制御装置。
【請求項3】
誘導機を駆動させるインバータ回路と、
外部から入力される回転数指令値と回転センサの検出値に基づく回転数とにより算出された回転数偏差がゼロに収束するようにトルク指令値を調整し、前記トルク指令値を用いて、励磁電流指令値とトルク電流指令値を取得して、前記インバータ回路の動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記回転数が第1回転数閾値より大きい場合、または、前記回転数が前記第1回転数閾値以下であり、前記誘導機の出力が第1出力閾値より大きい場合、前記励磁電流指令値を第1励磁電流指令値とするとともに前記トルク電流指令値を第1トルク電流指令値として前記インバータ回路の動作を制御し、
前記回転数が前記第1回転数閾値より小さい第2回転数閾値より小さく、前記誘導機の出力が前記第1出力閾値より小さい第2出力閾値より小さい場合、前記第1励磁電流指令値より小さい第2励磁電流指令値及び前記第1トルク電流指令値により前記インバータ回路の動作を制御し、
前記回転数が前記第2回転数閾値より小さく、前記誘導機の出力が前記第2出力閾値から前記第1出力閾値までの範囲内である場合、前記第2励磁電流指令値から前記第1励磁電流指令値までの範囲内の前記誘導機の出力に対応する第3励磁電流指令値及び前記第1トルク電流指令値により前記インバータ回路の動作を制御する
ことを特徴とする誘導機の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の誘導機の制御装置であって、
前記制御回路は、
前記回転数が前記第2回転数閾値から前記第1回転数閾値までの範囲内であり、前記誘導機の出力が前記第2出力閾値より小さい場合、前記第2励磁電流指令値から前記第1励磁電流指令値までの範囲内の前記回転数に対応する第4励磁電流指令値及び前記第1トルク電流指令値により前記インバータ回路の動作を制御し、
前記回転数が前記第2回転数閾値から前記第1回転数閾値までの範囲内であり、前記誘導機の出力が前記第2出力閾値から前記第1出力閾値までの範囲内である場合、前記第4励磁電流指令値から前記第1励磁電流指令値までの範囲内の前記誘導機の出力に対応する第5励磁電流指令値及び前記第1トルク電流指令値により前記インバータ回路の動作を制御する
ことを特徴とする誘導機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導機の制御装置として、誘導機に設けられた回転センサ内のギア(歯車)の各歯のエッジに対応するパルス信号の立上りタイミングから立下りタイミングまでの期間により誘導機の回転数を算出し、その算出した回転数に基づいて誘導機を駆動するインバータ回路の動作を制御するものがある。
【0003】
ところで、ギアの製造バラツキにより、パルス信号の立上りタイミングから立下りタイミングまでの期間に誤差があると、算出される回転数にも誤差が含まれてしまう。例えば、目標のトルク電流指令値がゼロである場合において、回転数に誤差が含まれていると、誤差が含まれている回転数によって算出される励磁電流指令値のベクトルと、誘導機に流れる励磁電流のベクトルとの間に位相差が生じ、本来発生しないトルク電流が誘導機に流れ、誘導機に不要なトルクを発生させてしまう。
【0004】
そこで、誘導機の他の制御装置として、パルス信号の立上りタイミングや立下りタイミングにおいて、補正値を用いて回転数を補正するものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0005】
しかしながら、上記他の制御装置では、パルス信号の立上りタイミングや立下りタイミング以外のタイミングにおいて、回転数を補正することができず、算出される回転数に誤差が含まれるおそれがある。特に、回転数が低くなるほど、回転数を補正することができないタイミングが増加するため、算出される回転数に誤差が含まれ易くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一側面に係る目的は、誘導機の回転数が比較的小さい場合において、誘導機の回転数に誤差が含まれることにより発生する不要なトルクを低減することが可能な誘導機の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一つの形態である誘導機の制御装置は、誘導機を駆動させるインバータ回路と、外部から入力される回転数指令値と回転センサの検出値に基づく回転数とにより算出された回転数偏差がゼロに収束するようにトルク指令値を調整し、前記トルク指令値を用いて、励磁電流指令値とトルク電流指令値を取得して、前記インバータ回路の動作を制御する制御回路とを備える。
【0009】
前記制御回路は、前記誘導機の回転数が第1回転数閾値より大きい場合、前記励磁電流指令値を第1励磁電流指令値とするとともに前記トルク電流指令値を第1トルク電流指令値として前記インバータ回路の動作を制御し、前記回転数が前記第1回転数閾値以下である場合、前記第1励磁電流指令値より小さい第2励磁電流指令値と、前記第1トルク電流指令値または前記第1トルク電流指令値より大きい第2トルク電流指令値とにより前記インバータ回路の動作を制御する。
【0010】
これにより、誘導機の回転数が比較的小さく回転数に誤差が含まれ易くなる場合において、励磁電流指令値のベクトルや励磁電流のベクトルを比較的小さくすることができるため、励磁電流指令値のベクトルと励磁電流のベクトルとの位相差により発生するトルク電流を低減することができ、誘導機に発生する不要なトルクを低減することができる。
【0011】
また、前記制御回路は、前記回転数が前記第1回転数閾値より大きい場合、または、前記回転数が前記第1回転数閾値以下であり、前記誘導機の出力が第1出力閾値より大きい場合、前記励磁電流指令値を第1励磁電流指令値とするとともに前記トルク電流指令値を第1トルク電流指令値として前記インバータ回路の動作を制御し、前記回転数が前記第1回転数閾値以下であり、前記誘導機の出力が前記第1出力閾値以下である場合、前記第2励磁電流指令値及び前記第1トルク電流指令値により前記インバータ回路の動作を制御するように構成してもよい。
【0012】
これにより、誘導機の回転数や出力が比較的小さい場合において、誘導機に発生する不要なトルクを低減することができる。
【0013】
また、前記制御回路は、前記回転数が前記第1回転数閾値より大きい場合、または、前記回転数が前記第1回転数閾値以下であり、前記誘導機の出力が第1出力閾値より大きい場合、前記励磁電流指令値を第1励磁電流指令値とするとともに前記トルク電流指令値を第1トルク電流指令値として前記インバータ回路の動作を制御し、前記回転数が前記第1回転数閾値より小さい第2回転数閾値より小さく、前記誘導機の出力が前記第1出力閾値より小さい第2出力閾値より小さい場合、前記第1励磁電流指令値より小さい第2励磁電流指令値及び前記第1トルク電流指令値により前記インバータ回路の動作を制御し、前記回転数が前記第2回転数閾値より小さく、前記誘導機の出力が前記第2出力閾値から前記第1出力閾値までの範囲内である場合、前記第2励磁電流指令値から前記第1励磁電流指令値までの範囲内の前記誘導機の出力に対応する第3励磁電流指令値及び前記第1トルク電流指令値により前記インバータ回路の動作を制御する。
【0014】
また、前記制御回路は、前記回転数が前記第2回転数閾値から前記第1回転数閾値までの範囲内であり、前記誘導機の出力が前記第2出力閾値より小さい場合、前記第2励磁電流指令値から前記第1励磁電流指令値までの範囲内の前記回転数に対応する第4励磁電流指令値及び前記第1トルク電流指令値により前記インバータ回路の動作を制御し、前記回転数が前記第2回転数閾値から前記第1回転数閾値までの範囲内であり、前記誘導機の出力が前記第2出力閾値から前記第1出力閾値までの範囲内である場合、前記第4励磁電流指令値から前記第1励磁電流指令値までの範囲内の前記誘導機の出力に対応する第5励磁電流指令値及び前記第1トルク電流指令値により前記インバータ回路の動作を制御するように構成してもよい。
【0015】
これにより、誘導機の回転数や出力が比較的小さい場合において、励磁電流指令値が急峻に低下することを抑制することができるため、励磁電流指令値が急峻に低下することでユーザに与える違和感を緩和させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、誘導機の回転数が比較的小さい場合において、誘導機の回転数に誤差が含まれることにより発生する不要なトルクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態における誘導機の制御装置の一例を示す図である。
【
図2】励磁電流指令値と誘導機に流れる電流の一例を示す図である。
【
図3】実施例1における電流指令値出力部の動作を示すフローチャートである。
【
図4】実施例2における電流指令値出力部の動作を示すフローチャートである。
【
図5】実施例3における電流指令値出力部の動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施例4における電流指令値出力部の動作を説明するための図である。
【
図7】誘導機の回転数と誘導機の出力と励磁電流閾値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0019】
図1は、実施形態における誘導機の制御装置の一例を示す図である。
【0020】
図1に示す制御装置1は、例えば、電動フォークリフトや電動自動車などの車両に搭載される誘導機Mの動作を制御するものであって、インバータ回路2と、制御回路3とを備える。なお、誘導機Mは、例えば、巻線形三相誘導電動機などとする。
【0021】
インバータ回路2は、電源Pから供給される電力により誘導機Mを駆動させるものであって、コンデンサCと、スイッチング素子SW1~SW6(例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))と、電流センサSe1、Se2とを備える。すなわち、コンデンサCの一方端子が電源Pの正極端子及びスイッチング素子SW1、SW3、SW5の各コレクタ端子に接続され、コンデンサCの他方端子が電源Pの負極端子及びスイッチング素子SW2、SW4、SW6の各エミッタ端子に接続されている。スイッチング素子SW1のエミッタ端子とスイッチング素子SW2のコレクタ端子との接続点は電流センサSe1を介して誘導機MのU相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW3のエミッタ端子とスイッチング素子SW4のコレクタ端子との接続点は電流センサSe2を介して誘導機MのV相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW5のエミッタ端子とスイッチング素子SW6のコレクタ端子との接続点は誘導機MのW相の入力端子に接続されている。
【0022】
コンデンサCは、電源Pから出力されインバータ回路2へ入力される電圧を平滑する。
【0023】
スイッチング素子SW1は、制御回路3から出力される駆動信号S1に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW2は、制御回路3から出力される駆動信号S2に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW3は、制御回路3から出力される駆動信号S3に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW4は、制御回路3から出力される駆動信号S4に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW5は、制御回路3から出力される駆動信号S5に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW6は、制御回路3から出力される駆動信号S6に基づいて、オンまたはオフする。スイッチング素子SW1~SW6がそれぞれオンまたはオフすることで、電源Pから出力される直流電圧が、互いに位相が120度ずつ異なる3つの交流電圧に変換され、それら交流電圧が誘導機MのU相、V相、及びW相の入力端子に印加され誘導機Mの回転子が回転する。すなわち、インバータ回路2は、スイッチング素子SW1~SW6がオン、オフすることで誘導機Mの回転子を回転させる。
【0024】
電流センサSe1は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、誘導機MのU相に流れるU相電流Iuを検出して制御回路3に出力する。また、電流センサSe2は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、誘導機MのV相に流れるV相電流Ivを検出して制御回路3に出力する。
【0025】
制御回路3は、記憶部4と、ドライブ回路5と、演算部6とを備える。
【0026】
記憶部4は、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などにより構成される。
【0027】
ドライブ回路5は、IC(Integrated Circuit)などにより構成され、搬送波(三角波、ノコギリ波、または逆ノコギリ波など)の電圧値と、演算部6から出力されるU相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*とを比較し、その比較結果に応じた駆動信号S1~S6をスイッチング素子SW1~SW6のそれぞれのゲート端子に出力する。
【0028】
例えば、ドライブ回路5は、U相電圧指令値Vu*が搬送波の電圧値以上である場合、ハイレベルの駆動信号S1を出力するとともに、ローレベルの駆動信号S2を出力し、U相電圧指令値Vu*が搬送波の電圧値より小さい場合、ローレベルの駆動信号S1を出力するとともに、ハイレベルの駆動信号S2を出力する。また、ドライブ回路5は、V相電圧指令値Vv*が搬送波の電圧値以上である場合、ハイレベルの駆動信号S3を出力するとともに、ローレベルの駆動信号S4を出力し、V相電圧指令値Vv*が搬送波の電圧値より小さい場合、ローレベルの駆動信号S3を出力するとともに、ハイレベルの駆動信号S4を出力する。また、ドライブ回路5は、W相電圧指令値Vw*が搬送波の電圧値以上である場合、ハイレベルの駆動信号S5を出力するとともに、ローレベルの駆動信号S6を出力し、W相電圧指令値Vw*が搬送波の電圧値より小さい場合、ローレベルの駆動信号S5を出力するとともに、ハイレベルの駆動信号S6を出力する。
【0029】
演算部6は、マイクロコンピュータなどにより構成され、回転数算出部7と、位置算出部8と、電流変換部9と、減算部10と、トルク指令値算出部11と、電流指令値出力部12と、減算部13と、減算部14と、電圧指令値算出部15と、電圧指令値変換部16とを備える。例えば、マイクロコンピュータが記憶部4に記憶されているプログラムを実行することにより、回転数算出部7、位置算出部8、電流変換部9、減算部10、トルク指令値算出部11、電流指令値出力部12、減算部13、減算部14、電圧指令値算出部15、及び電圧指令値変換部16が構成される。
【0030】
回転数算出部7は、誘導機Mに設けられるエンコーダなどの回転センサEnから出力されるパルス信号Spの立上りタイミングと立下りタイミングとに基づいて、誘導機Mの回転数ωを算出する。例えば、回転数算出部7は、1秒間に入力される、パルス信号Spのパルス数をカウントし、そのパルス数に2πを乗算した結果を回転センサEn内のギアの歯の数で除算することにより回転数(角速度)ωを求める。
【0031】
位置算出部8は、回転数ωに基づいて、誘導機Mの回転子の位置(位相角)θを算出する。例えば、位置算出部8は、回転数ωに単位時間(例えば1秒)を乗算した結果を、位置θとする。
【0032】
電流変換部9は、電流センサSe1により検出されるU相電流Iu及び電流センサSe2により検出されるV相電流Ivを用いて、誘導機MのW相に流れるW相電流Iwを求める。
【0033】
また、電流変換部9は、位置算出部8により算出される位置θを用いて、U相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwを励磁電流Id(誘導機Mに弱め界磁を発生させるための電流成分)及びトルク電流Iq(誘導機Mにトルクを発生させるための電流成分)に変換する。
【0034】
例えば、電流変換部9は、位置θ及び3相から2相に変換するための変換行列を用いて、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwを、励磁電流Id及びトルク電流Iqに変換する。
【0035】
なお、電流センサSe1、Se2により検出される電流は、U相電流Iu及びV相電流Ivの組み合わせに限定されず、V相電流Iv及びW相電流Iwの組み合わせ、または、U相電流Iu及びW相電流Iwの組み合わせでもよい。電流センサSe1、Se2によりV相電流Iv及びW相電流Iwが検出される場合、電流変換部9は、V相電流Iv及びW相電流Iwを用いて、U相電流Iuを求める。また、電流センサSe1、Se2によりU相電流Iu及びW相電流Iwが検出される場合、電流変換部9は、U相電流Iu及びW相電流Iwを用いて、V相電流Ivを求める。
【0036】
また、インバータ回路2において、電流センサSe1、Se2の他に、誘導機MのW相に流れる電流を検出する電流センサSe3をさらに備える場合、電流変換部9は、位置算出部8により算出される位置θを用いて、電流センサSe1~Se3により検出されるU相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwを励磁電流Id及びトルク電流Iqに変換するように構成してもよい。
【0037】
減算部10は、外部から入力される回転数指令値ω*と回転数算出部7により算出される回転数ωとの回転数偏差Δωを算出する。
【0038】
トルク指令値算出部11は、減算部10から出力される回転数偏差Δωを用いて、トルク指令値T*を算出する。例えば、トルク指令値算出部11は、記憶部4に記憶されている、誘導機Mの回転数と誘導機Mのトルクとが互いに対応付けられている情報(不図示)を参照して、回転数偏差Δωに相当する回転数に対応するトルクを、トルク指令値T*として求める。
【0039】
また、トルク指令値算出部11は、回転数偏差Δωに基づいて、誘導機Mの出力Poを算出する。誘導機Mの出力Poは、最大トルクに対して、現在、回転数偏差Δωに応じて出力しているトルクの割合とする。例えば、トルク指令値算出部11は、下記式1を計算することで出力Poを求める。なお、出力Poの取り得る範囲を-100[%]~+100[%]とする。
【0040】
出力Po=比例ゲイン×回転数偏差Δω+積分ゲイン×∫回転数偏差Δωdt ・・・式1
【0041】
電流指令値出力部12は、トルク指令値T*を用いて、励磁電流指令値Id*及びトルク電流指令値Iq*を求める。例えば、電流指令値出力部12は、記憶部4に記憶されている、誘導機Mのトルクと励磁電流指令値Id*及びトルク電流指令値Iq*とが互いに対応付けられている情報(不図示)を参照して、トルク指令値T*に相当するトルクに対応する励磁電流指令値Id*及びトルク電流指令値Iq*を求める。
【0042】
また、電流指令値出力部12は、回転数ωや出力Poに基づいて、トルク指令値T*により求めた励磁電流指令値Id*を、その値のまま、または、その値を小さくして出力する。また、電流指令値出力部12は、回転数ωや出力Poに基づいて、トルク指令値T*により求めたトルク電流指令値Iq*を、その値のまま、または、その値を大きくして出力する。
【0043】
減算部13は、電流指令値出力部12から出力される励磁電流指令値Id*と、電流変換部9から出力される励磁電流Idとの差ΔIdを算出する。
【0044】
減算部14は、電流指令値出力部12から出力されるトルク電流指令値Iq*と、電流変換部9から出力されるトルク電流Iqとの差ΔIqを算出する。
【0045】
電圧指令値算出部15は、減算部13から出力される差ΔId及び減算部14から出力される差ΔIqを用いたPI制御により、励磁電圧指令値Vd*及びトルク電圧指令値Vq*を算出する。例えば、電圧指令値算出部15は、下記式2を計算することにより励磁電圧指令値Vd*を求めるとともに、下記式3を計算することによりトルク電圧指令値Vq*を求める。なお、KpはPI制御の比例項の定数とし、KiはPI制御の積分項の定数とし、Lqは誘導機Mのトルクインダクタンスとし、Ldは誘導機Mの励磁インダクタンスとし、ωは回転数算出部7により算出される回転数ωとし、Ψは誘起電圧とする。
【0046】
励磁電圧指令値Vd*=Kp×差ΔId+∫(Ki×差ΔId)-ωLqIq ・・・式2
トルク電圧指令値Vq*=Kp×差ΔIq+∫(Ki×差ΔIq)+ωLdId+ωΨ ・・・式3
【0047】
電圧指令値変換部16は、位置算出部8により算出される位置θを用いて、励磁電圧指令値Vd*及びトルク電圧指令値Vq*を、U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*に変換する。例えば、電圧指令値変換部16は、位置θ及び2相から3相に変換するための変換行列を用いて、励磁電圧指令値Vd*及びトルク電圧指令値Vq*を、U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、W相電圧指令値Vw*に変換する。
【0048】
すなわち、制御回路3は、外部から入力される回転数指令値ω*と回転センサEnの検出値に基づく回転数ωとにより算出された回転数偏差Δωがゼロに収束するようにトルク指令値T*を調整し、トルク指令値T*を用いて、励磁電流指令値Id*とトルク電流指令値Iq*を取得して、インバータ回路2の動作を制御する。
【0049】
ここで、
図2(a)は、回転数ωに誤差が含まれていない場合における励磁電流指令値Id*と誘導機Mに流れる電流の一例を示す図である。なお、d軸q軸回転座標系のd軸上に示す実線を、誤差が含まれていない理想の励磁電流指令値Id*とし、d軸q軸回転座標系のd軸上に示す破線を、誘導機Mに流れる励磁電流Idとする。また、トルク電流指令値Iq*をゼロとする。
【0050】
回転数ωに誤差が含まれていない場合、
図2(a)に示すように、励磁電流指令値Id*のベクトルと、励磁電流Idのベクトルとの間に位相差が生じず、不定なトルク電流が誘導機Mに流れない。そのため、誘導機Mに不要なトルクが発生せず、誘導機Mを搭載する車両を停止させ続けることができる。
【0051】
また、
図2(b)及び
図2(c)は、回転数ωに誤差が含まれている場合における励磁電流指令値Id*と誘導機Mに流れる電流の一例を示す図である。なお、d軸q軸回転座標系と位相が異なるγ軸δ軸回転座標系のγ軸上に示す実線を、誤差が含まれている励磁電流指令値Id*とし、d軸q軸回転座標系のd軸上に示す破線を、誘導機Mに流れる励磁電流Idとし、d軸q軸回転座標系のq軸上に示す一点鎖線を、誘導機Mに流れるトルク電流Iqとする。また、トルク電流指令値Iq*をゼロとする。また、
図2(c)に示す励磁電流指令値Id*は、
図2(b)に示す励磁電流指令値Id*より小さいものとする。
【0052】
回転数ωに誤差が含まれている場合、
図2(b)に示すように、励磁電流指令値Id*のベクトルと励磁電流Idのベクトルとの間に位相差が生じ、励磁電流指令値Id*のベクトルは、励磁電流Idのベクトルとトルク電流Iqのベクトルとの合成ベクトルになる。すなわち、回転数ωに誤差が含まれている場合、トルク電流指令値Iq*がゼロにもかかわらず、不定なトルク電流Iqが誘導機Mに流れてしまう。そのため、本来発生しないトルクが誘導機Mに発生することで誘導機Mを搭載する車両を駆動させてしまい、車両を運転するユーザに違和感を与えてしまうおそれがある。
【0053】
そこで、実施形態の電流指令値出力部12では、回転数ωが比較的小さくなる場合(回転数ωに誤差が含まれ易くなる場合)において、
図2(c)に示すように、励磁電流指令値Id*を、
図2(b)に示す励磁電流指令値Id*より小さくする。このように、励磁電流Idのベクトルとトルク電流Iqのベクトルとの合成ベクトルである励磁電流指令値Id*を小さくすることで、トルク電流Iqが小さくなる。これにより、回転数ωに誤差が含まれることで本来発生しないトルク電流Iqが誘導機Mに流れても、そのトルク電流Iqを低減することができるため、誘導機Mに発生するトルクを低減することができ、車両を運転するユーザに与える違和感を抑えることができる。
【0054】
<実施例1>
図3は、実施例1における電流指令値出力部12の動作を示すフローチャートである。
【0055】
まず、電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth1(第1回転数閾値)以上より大きい場合(ステップS1:No)、励磁電流指令値Id*として励磁電流指令値Id*1(第1励磁電流指令値)を減算部13に出力するとともにトルク電流指令値Iq*としてトルク電流指令値Iq*1(第1トルク電流指令値)を減算部14に出力する(ステップS2)。なお、励磁電流指令値Id*1は、トルク指令値T*により求められた励磁電流指令値Id*とする。また、トルク電流指令値Iq*1は、トルク指令値T*により求められたトルク電流指令値Iq*とする。
【0056】
一方、電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth1以下である場合(ステップS1:Yes)、励磁電流指令値Id*1より小さい励磁電流指令値Id*2(第2励磁電流指令値)を減算部13に出力するとともにトルク電流指令値Iq*1を減算部14に出力する(ステップS3)。
【0057】
これにより、誘導機Mの回転数ωが比較的小さく回転数ωに誤差が含まれ易くなる場合において、励磁電流指令値Id*のベクトルや励磁電流Idのベクトルを比較的小さくすることができるため、励磁電流指令値Id*のベクトルと励磁電流Idのベクトルとの位相差により発生するトルク電流Iqを低減することができ、誘導機Mに発生する不要なトルクを低減することができる。
【0058】
<実施例2>
図4は、実施例2における電流指令値出力部12の動作を示すフローチャートである。
【0059】
まず、電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth1より大きい場合(ステップS1:No)、励磁電流指令値Id*として励磁電流指令値Id*1を減算部13に出力するとともにトルク電流指令値Iq*としてトルク電流指令値Iq*1を減算部14に出力する(ステップS2)。
【0060】
一方、電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth1以下である場合(ステップS1:Yes)、励磁電流指令値Id*2を減算部13に出力するとともにトルク電流指令値Iq*1より大きいトルク電流指令値Iq*2(第2トルク電流指令値)を減算部14に出力する(ステップS3´)。
【0061】
これにより、誘導機Mの回転数ωを比較的小さく、かつ、誘導機Mのトルクを比較的大きくしたい場合において、誘導機Mに発生する不要なトルクを低減することができる。
【0062】
<実施例3>
図5は、実施例3における電流指令値出力部12の動作を示すフローチャートである。
【0063】
まず、電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth1より大きい場合(ステップS1:No)、または、回転数ωが回転数閾値ωth1以下である場合で(ステップS1:Yes)、かつ、誘導機Mの出力Poが出力閾値Poth1(第1出力閾値)より大きい場合(ステップS4:No)、励磁電流指令値Id*として励磁電流指令値Id*1を減算部13に出力するとともにトルク電流指令値Iq*としてトルク電流指令値Iq*1を減算部14に出力する(ステップS2)。
【0064】
一方、電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth1以下である場合で(ステップS1:Yes)、かつ、誘導機Mの出力Poが出力閾値Poth1以下である場合(ステップS4:Yes)、励磁電流指令値Id*として励磁電流指令値Id*2を減算部13に出力するとともにトルク電流指令値Iq*としてトルク電流指令値Iq*1を減算部14に出力する(ステップS3)。
【0065】
これにより、誘導機Mの回転数ωや出力Poが比較的小さい場合において、誘導機Mに発生する不要なトルクを低減することができる。
【0066】
なお、
図5に示すフローチャートのステップS3において、電流指令値出力部12は、励磁電流指令値Id*2及びトルク電流指令値Iq*2を出力するように構成してもよい。
【0067】
<実施例4>
図6は、実施例4における電流指令値出力部12の動作を説明するための図である。
【0068】
図6(a)に示す二次元座標の横軸は回転数ωを示し、縦軸は励磁電流指令値Id*を示し、実線は回転数ωと励磁電流指令値Id*との対応関係を示すマップM1を示す。マップM1は記憶部4に予め記憶されているものとする。なお、マップM1において、回転数閾値ωth2(第2回転数閾値)は回転数閾値ωth1より小さい値とする。また、マップM1において、回転数算出部7により算出される回転数ωが回転数閾値ωth1より大きい場合、その回転数ωに対応する励磁電流指令値Id*は励磁電流指令値Id*1になるものとする。また、マップM1において、回転数算出部7により算出される回転数ωが回転数閾値ωth2より小さい場合、その回転数ωに対応する励磁電流指令値Id*は励磁電流指令値Id*2になるものとする。また、マップM1において、回転数算出部7により算出される回転数ωが回転数閾値ωth2から回転数閾値ωth1までの範囲内である場合、その回転数ωが大きくなるほど、その回転数ωに対応する励磁電流指令値Id*は励磁電流指令値Id*2から励磁電流指令値Id*1までの範囲内において大きくなるものとする。すなわち、マップM1において、回転数算出部7により算出される回転数ωが回転数閾値ωth2から回転数閾値ωth1までの範囲内である場合、励磁電流指令値Id*は回転数ωと比例関係になるものとする。
【0069】
図6(b)~
図6(d)に示す二次元座標の横軸は出力Poを示し、縦軸は励磁電流指令値Id*を示し、実線は出力Poと励磁電流指令値Id*との対応関係を示すマップM2を示す。なお、
図6(c)及び
図6(d)に示すマップM2において、出力閾値Poth2(第2出力閾値)は出力閾値Poth1より小さい値とする。また、マップM2は、マップM1により求められた励磁電流指令値Id*に応じて、出力閾値Poth2より小さい出力Poに対応する励磁電流指令値Id*や出力閾値Poth2から出力閾値Poth1までの範囲内の出力Poに対応する励磁電流指令値Id*が変化するものとする。
【0070】
図6(b)に示すマップM2は、マップM1により求められた励磁電流指令値Id*が励磁電流指令値Id*1である場合(回転数ωが回転数閾値ωth1より大きい場合)における出力Poと励磁電流指令値Id*との対応関係を示す。
図6(b)に示すマップM2において、出力閾値Poth1より大きい出力Poに対応する励磁電流指令値Id*、出力閾値Poth2より小さい出力Poに対応する励磁電流指令値Id*、及び出力閾値Poth2から出力閾値Poth1までの範囲内の出力Poに対応する励磁電流指令値Id*は、それぞれ、励磁電流指令値Id*1になるものとする。すなわち、
図6(b)に示すマップM2において、全ての出力Poはそれぞれ励磁電流指令値Id*1に対応する。
【0071】
また、
図6(c)に示すマップM2は、マップM1により求められた励磁電流指令値Id*が励磁電流指令値Id*2である場合(回転数ωが回転数閾値ωth2より小さい場合)における出力Poと励磁電流指令値Id*との対応関係を示す。また、
図6(c)に示すマップM2において、求められた出力Poが出力閾値Poth1より大きい場合、その出力Poに対応する励磁電流指令値Id*は励磁電流指令値Id*1になるものとする。また、
図6(c)に示すマップM2において、求められた出力Poが出力閾値Poth2より小さい場合、その出力Poに対応する励磁電流指令値Id*は励磁電流指令値Id*2になるものとする。また、
図6(c)に示すマップM2において、求められた出力Poが出力閾値Poth2から出力閾値Poth1までの範囲内である場合、その出力Poが大きくなるほど、その出力Poに対応する励磁電流指令値Id*は励磁電流指令値Id*2から励磁電流指令値Id*1までの範囲内において大きくなるものとする。すなわち、
図6(c)に示すマップM2において、求められた出力Poが出力閾値Poth2から出力閾値Poth1までの範囲内である場合、励磁電流指令値Id*は出力Poと比例関係になるものとする。
【0072】
また、
図6(d)に示すマップM2は、マップM1により求められた励磁電流指令値Id*が励磁電流指令値Id*2から励磁電流指令値Id*1までの範囲内である場合(回転数ωが回転数閾値ωth2から回転数閾値ωth1までの範囲内である場合)における出力Poと励磁電流指令値Id*との対応関係を示す。また、
図6(d)に示すマップM2において、求められた出力Poが出力閾値Poth1より大きい場合、その出力Poに対応する励磁電流指令値Id*は励磁電流指令値Id*1になるものとする。また、
図6(d)に示すマップM2において、求められた出力Poが出力閾値Poth2より小さい場合、その出力Poに対応する励磁電流指令値Id*はマップM1により求められた、励磁電流指令値Id*2から励磁電流指令値Id*1までの範囲内の励磁電流指令値Id*4と等しい値になる。また、
図6(d)に示すマップM2において、求められた出力Poが出力閾値Poth2から出力閾値Poth1までの範囲内である場合、その出力Poが大きくなるほど、その出力Poに対応する励磁電流指令値Id*は励磁電流指令値Id*4から励磁電流指令値Id*1までの範囲内において大きくなるものとする。すなわち、
図6(d)に示すマップM2において、求められた出力Poが出力閾値Poth2から出力閾値Poth1までの範囲内である場合、励磁電流指令値Id*は出力Poと比例関係になるものとする。
【0073】
実施例4における電流指令値出力部12は、
図6(a)に示すマップM1及び
図6(b)~
図6(d)に示す各マップM2のうちの何れかのマップM2を用いて、励磁電流指令値Id*を出力するとともに、トルク電流指令値Iq*を出力する。
【0074】
<励磁電流指令値Id*の出力例1>
例えば、回転数ωが回転数閾値ωth1より大きい回転数ωaである場合で、かつ、出力Poが出力閾値Poth1より大きい出力Poaである場合を想定する。
【0075】
まず、電流指令値出力部12は、
図6(a)に示すマップM1を参照して、回転数ωaに対応する励磁電流指令値Id*1を求める。
【0076】
次に、電流指令値出力部12は、励磁電流指令値Id*1に基づいて、
図6(b)に示すマップM2を作成する。
【0077】
そして、電流指令値出力部12は、
図6(b)に示すマップM2を参照して、出力Poaに対応する励磁電流指令値Id*1(第1励磁電流指令値)を求め、その励磁電流指令値Id*1を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0078】
同様に、回転数ωが回転数閾値ωth1より大きい回転数ωaである場合で、かつ、出力Poが出力閾値Poth2より小さい出力Pobである場合や回転数ωが回転数閾値ωth1より大きい回転数ωaである場合で、かつ、出力Poが出力閾値Poth2から出力閾値Poth1までの範囲内の出力Pocである場合においても、電流指令値出力部12は、励磁電流指令値Id*1を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0079】
すなわち、実施例4における電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth1より大きい場合、
図7に示すように、
図6(b)に示すマップM2を参照して求められる励磁電流指令値Id*1を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0080】
<励磁電流指令値Id*の出力例2>
例えば、回転数ωが回転数閾値ωth2より小さい回転数ωbである場合で、かつ、出力Poが出力閾値Poth1より大きい出力Poaである場合を想定する。
【0081】
まず、電流指令値出力部12は、
図6(a)に示すマップM1を参照して、回転数ωbに対応する励磁電流指令値Id*2を求める。
【0082】
次に、電流指令値出力部12は、励磁電流指令値Id*2に基づいて、
図6(c)に示すマップM2を作成する。
【0083】
そして、電流指令値出力部12は、
図6(c)に示すマップM2を参照して、出力Poaに対応する励磁電流指令値Id*1を求め、その励磁電流指令値Id*1を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0084】
すなわち、実施例4における電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth2より小さく、出力Poが出力閾値Poth1より大きい場合、
図7に示すように、
図6(c)に示すマップM2を参照して求められる励磁電流指令値Id*1を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0085】
<励磁電流指令値Id*の出力例3>
例えば、回転数ωが回転数閾値ωth2から回転数閾値ωth1までの範囲内の回転数ωcである場合で、かつ、出力Poが出力閾値Poth1より大きい出力Poaである場合を想定する。
【0086】
まず、電流指令値出力部12は、
図6(a)に示すマップM1を参照して、回転数ωcに対応する励磁電流指令値Id*4を求める。
【0087】
次に、電流指令値出力部12は、励磁電流指令値Id*4に基づいて、
図6(d)に示すマップM2を作成する。
【0088】
そして、電流指令値出力部12は、
図6(d)に示すマップM2を参照して、出力Poaに対応する励磁電流指令値Id*1を求め、その励磁電流指令値Id*1を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0089】
すなわち、実施例4における電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth2から回転数閾値ωth1までの範囲内であり、出力Poが出力閾値Poth1より大きい場合、
図7に示すように、
図6(d)に示すマップM2を参照して求められる励磁電流指令値Id*1を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0090】
<励磁電流指令値Id*´の出力例4>
例えば、回転数ωが回転数閾値ωth2より小さい回転数ωbであり、出力Poが出力閾値Poth2より小さい出力Pobである場合を想定する。
【0091】
まず、電流指令値出力部12は、
図6(a)に示すマップM1を参照して、回転数ωbに対応する励磁電流指令値Id*2を求める。
【0092】
次に、電流指令値出力部12は、励磁電流指令値Id*2に基づいて、
図6(c)に示すマップM2を作成する。
【0093】
そして、電流指令値出力部12は、
図6(c)に示すマップM2を参照して、出力Pobに対応する励磁電流指令値Id*2を求め、その励磁電流指令値Id*2を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0094】
すなわち、実施例4における電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth2より小さく、出力Poが出力閾値Poth2より小さい場合、
図7に示すように、
図6(c)に示すマップM2を参照して求められる励磁電流指令値Id*2を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0095】
<励磁電流指令値Id*´の出力例5>
例えば、回転数ωが回転数閾値ωth2より小さい回転数ωbであり、出力Poが出力閾値Poth2から出力閾値Poth1までの範囲内の出力Pocである場合を想定する。
【0096】
まず、電流指令値出力部12は、
図6(a)に示すマップM1を参照して、回転数ωbに対応する励磁電流指令値Id*2を求める。
【0097】
次に、電流指令値出力部12は、励磁電流指令値Id*2に基づいて、
図6(c)に示すマップM2を作成する。
【0098】
そして、電流指令値出力部12は、
図6(c)に示すマップM2を参照して、出力Pocに対応する励磁電流指令値Id*3(第3励磁電流指令値)を求め、その励磁電流指令値Id*3を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0099】
すなわち、実施例4における電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth2より小さく、出力Poが出力閾値Poth2から出力閾値Poth1までの範囲内である場合、
図7に示すように、
図6(c)に示すマップM2を参照して求められる励磁電流指令値Id*3を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0100】
<励磁電流指令値Id*´の出力例6>
例えば、回転数ωが回転数閾値ωth2から回転数閾値ωth1までの範囲内の回転数ωcであり、出力Poが出力閾値Poth2より小さい出力Pobである場合を想定する。
【0101】
まず、電流指令値出力部12は、
図6(a)に示すマップM1を参照して、回転数ωcに対応する励磁電流指令値Id*4(第4励磁電流指令値)を求める。
【0102】
次に、電流指令値出力部12は、励磁電流指令値Id*4に基づいて、
図6(d)に示すマップM2を作成する。
【0103】
そして、電流指令値出力部12は、
図6(d)に示すマップM2を参照して、出力Pobに対応する励磁電流指令値Id*4を求め、その励磁電流指令値Id*4を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0104】
すなわち、実施例4における電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth2から回転数閾値ωth1までの範囲内であり、出力Poが出力閾値Poth2より小さい場合、
図7に示すように、
図6(d)に示すマップM2を参照して求められる励磁電流指令値Id*4を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0105】
<励磁電流指令値Id*´の出力例7>
例えば、回転数ωが回転数閾値ωth2から回転数閾値ωth1までの範囲内である回転数ωcであり、出力Poが出力閾値Poth2から出力閾値Poth1までの範囲内である出力Pocである場合を想定する。
【0106】
まず、電流指令値出力部12は、
図6(a)に示すマップM1を参照して、回転数ωcに対応する励磁電流指令値Id*4を求める。
【0107】
次に、電流指令値出力部12は、励磁電流指令値Id*4に基づいて、
図6(d)に示すマップM2を作成する。
【0108】
そして、電流指令値出力部12は、
図6(d)に示すマップM2を参照して、出力Pocに対応する励磁電流指令値Id*5(第5励磁電流指令値)を求め、その励磁電流指令値Id*5を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。なお、励磁電流指令値Id*2<励磁電流指令値Id*4<励磁電流指令値Id*5<励磁電流指令値Id*1とする。
【0109】
すなわち、実施例4における電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth2から回転数閾値ωth1までの範囲内であり、出力Poが出力閾値Poth2から出力閾値Poth1までの範囲内である場合、
図7に示すように、
図6(d)に示すマップM2を参照して求められる励磁電流指令値Id*5を励磁電流指令値Id*として減算部13に出力する。
【0110】
このように、マップM1及びマップM2を用いることで、励磁電流指令値Id*2から励磁電流指令値Id*1までの範囲内の励磁電流指令値Id*として、励磁電流指令値Id*3、励磁電流指令値Id*4、または励磁電流指令値Id*5を求めることができる。
【0111】
そのため、回転数ωや出力Poが徐々に低下する場合、励磁電流指令値Id*も徐々に低下させることができる。
【0112】
これにより、誘導機Mの回転数ωや出力Poが比較的小さい場合において、励磁電流指令値Id*が急峻に低下することを抑制することができるため、励磁電流指令値が急峻に低下することでユーザに与える違和感を緩和させることができる。
【0113】
なお、実施例4において、電流指令値出力部12は、回転数ωが回転数閾値ωth1以下である場合、トルク電流指令値Iq*1ではなくトルク電流指令値Iq*2を出力するように構成してもよい。
【0114】
また、本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 制御装置
2 インバータ回路
3 制御回路
4 記憶部
5 ドライブ回路
6 演算部
7 回転数算出部
8 位置算出部
9 電流変換部
10 減算部
11 トルク指令値算出部
12 電流指令値出力部
13 減算部
14 減算部
15 電圧指令値算出部
16 電圧指令値変換部
P 電源
C コンデンサ
Se1 電流センサ
Se2 電流センサ
En 回転センサ