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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181781
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ロータリー式切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/074 20060101AFI20231218BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F16K11/074 Z
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095121
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 宏光
【テーマコード(参考)】
3H067
4F202
【Fターム(参考)】
3H067AA13
3H067AA32
3H067BB04
3H067BB12
3H067CC55
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD32
3H067DD45
3H067EA02
3H067EA16
3H067EA24
3H067EB07
3H067EB12
3H067ED10
3H067FF11
3H067GG01
3H067GG23
3H067GG24
4F202AH13
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK06
4F202CK12
(57)【要約】
【課題】本発明は、中心孔近傍にウェルドラインを生じ難くさせ、熱応力割れを抑制するロータリー式切換弁を得ることを目的とする。
【解決手段】ロータリー式切換弁100の主弁3は、円筒状のピストン部31と、ピストン部31の内側に設けられた副弁収容室33にて副弁4を回転摺動可能に支持する副弁弁座シート面35a1と、隣り合う2個のポートを連通させる高圧流路30Hおよび低圧流路30Lと、副弁収容室33と低圧流路30Lとを連通させる均圧孔30aと、中心軸6の軸線X方向に貫通する第一軸挿入孔3aと、を有した樹脂成形部品である。主弁3の外面には、樹脂成形の際のゲート位置Gに形成されたゲート痕が設けられ、ゲート痕と中心第一軸挿入孔3aとの間には、それらを結ぶ線分と交差して肉抜き部36が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を構成する弁本体と、前記弁室に開口する複数のポートを有する弁座部と、前記弁本体の内部で前記弁座部に交差する中心軸まわりに回転可能に設けられる主弁と、前記中心軸まわりに回転可能に設けられて前記主弁の均圧孔を開閉する副弁と、前記副弁を回転駆動する駆動部と、を備えるロータリー式切換弁であって、
前記主弁は、
円筒状のピストン部と、
前記ピストン部の内側に設けられた副弁室にて前記副弁を回転摺動可能に支持する副弁シート面と、
隣り合う2個のポートを連通させる高圧流路および低圧流路と、
前記副弁室と前記低圧流路とを連通させる前記均圧孔と、
前記中心軸の軸線方向に貫通する中心孔と、を有した樹脂成形部品であり、
前記主弁の外面には、樹脂成形の際のゲート位置に形成されたゲート痕が設けられ、
前記ゲート痕と前記中心孔との間には、それらを結ぶ線分と交差して肉抜き部が設けられていることを特徴とするロータリー式切換弁。
【請求項2】
前記肉抜き部は、前記ゲート痕と前記中心孔とを結ぶ径方向と交差する交差方向に延び、前記副弁シート面に開口し、前記軸線方向に深さを有する溝であることを特徴とする請求項1に記載のロータリー式切換弁。
【請求項3】
前記肉抜き部の前記交差方向の寸法である第一寸法は、前記中心孔の内径寸法以上であることを特徴とする請求項2に記載のロータリー式切換弁。
【請求項4】
前記肉抜き部における前記軸線方向に沿った寸法である深さ寸法は、前記肉抜き部の前記中心軸側の面である内径側面と前記中心軸の軸線との距離以上であることを特徴とする請求項3に記載のロータリー式切換弁。
【請求項5】
前記肉抜き部は、前記中心軸まわりに延びる円弧状または円環状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のロータリー式切換弁。
【請求項6】
前記肉抜き部が円弧状の場合、前記肉抜き部の周方向の一端から他端までにおける前記中心軸まわりの角度が100°以上であることを特徴とする請求項5に記載のロータリー式切換弁。
【請求項7】
前記交差方向は、前記ゲート痕と前記中心孔とを結ぶ前記径方向と直交する直交方向であり、
前記肉抜き部が円弧状の場合、前記第一寸法は、前記内径側面と前記中心軸の軸線との距離の2倍以上であることを特徴とする請求項5または6に記載のロータリー式切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリー式切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
弁ハウジングと、主弁と、副弁と、駆動部と、を備えたロータリー式切換弁が知られており(例えば、特許文献1参照)、主弁は、全体略円筒状の樹脂成形部品であり、内部にはそれぞれドーム状の一対の連通路である、高圧流路および低圧流路が設けられ、中心には回動駆動軸を挿通させる中心孔が軸線方向に貫通して設けられている。また、主弁の上面側には副弁を回転摺動させる副弁弁座面が設けられ、副弁弁座面には、主弁の連通路と弁室とを連通させるとともに副弁によって開閉される均圧孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再表2009/147932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、射出成形によって主弁を成形するための金型には、中心孔を成形するためのピンが設けられており、ゲート位置から金型内部に充填される溶融樹脂はピンを避けて流れた後に合流するため、ピンの周方向合流位置、すなわち主弁の中心孔付近にウェルドラインができやすくなる。そして、このウェルドラインのできやすい中心孔付近は、肉厚となりやすい部分でもあることから、熱による膨張収縮量が大きくなり、その応力がウェルドラインに作用して割れが生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、中心孔近傍にウェルドラインを生じ難くさせ、熱応力割れを抑制するロータリー式切換弁を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のロータリー式切換弁は、弁室を構成する弁本体と、前記弁室に開口する複数のポートを有する弁座部と、前記弁本体の内部で前記弁座部に交差する中心軸まわりに回転可能に設けられる主弁と、前記中心軸まわりに回転可能に設けられて前記主弁の均圧孔を開閉する副弁と、前記副弁を回転駆動する駆動部と、を備えるロータリー式切換弁であって、前記主弁は、円筒状のピストン部と、前記ピストン部の内側に設けられた副弁室にて前記副弁を回転摺動可能に支持する副弁シート面と、隣り合う2個のポートを連通させる高圧流路および低圧流路と、前記副弁室と前記低圧流路とを連通させる前記均圧孔と、前記中心軸の軸線方向に貫通する中心孔と、を有した樹脂成形部品であり、前記主弁の外面には、樹脂成形の際のゲート位置に形成されたゲート痕が設けられ、前記ゲート痕と前記中心孔との間には、それらを結ぶ線分と交差して肉抜き部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、主弁の外面には、樹脂成形の際のゲート位置に形成されたゲート痕が設けられ、ゲート痕と中心孔との間には、それらを結ぶ線分と交差して肉抜き部が設けられている。したがって、このような主弁を成形する金型には、ゲート位置と、中心孔を成形するためのピンと、の間に、肉抜き部を成形するための壁である肉抜成形壁が存在することとなる。このため、主弁を射出成形する際には、ゲート位置から流入した溶融樹脂がピンに到達する前に、その溶融樹脂の流れ方向を肉抜成形壁によって変えることができる。これにより、ピンの径方向に向かう溶融樹脂を少なくすることができるので、ピンに衝突して周方向一方と他方とに分かれ、ピンに沿って流れた後で合流する溶融樹脂を少なくすることができ、中心孔近傍にウェルドラインを生じ難くさせることができる。また、ゲート痕と中心孔の間に肉抜き部を設けたことで、中心孔付近の肉厚を低減することができ、溶融樹脂が膨張収縮した場合の応力が中心孔付近に集中することを抑制することができる。したがって、中心孔近傍にウェルドラインを生じ難くさせ、熱応力割れを抑制するロータリー式切換弁を得ることができる。
【0008】
また、この際、前記肉抜き部は、前記ゲート痕と前記中心孔とを結ぶ径方向と交差する交差方向に延び、前記副弁シート面に開口し、前記軸線方向に深さを有する溝であることが好ましい。このような構成によれば、肉抜き部は交差方向に延び、副弁シート面に開口する溝である。したがって、このような主弁を成形する金型の肉抜成形壁は、上述のゲート位置と、ピンと、の間で交差方向に延びることとなる。このため、主弁を射出成形する際には、ゲート位置から流入しピンに向かって径方向に流れる溶融樹脂がピンに到達する前に、その溶融樹脂の流れ方向を肉抜成形壁によって交差方向に変えることができる。これにより、ピンの径方向に向かう溶融樹脂を少なくすることができ、中心孔近傍にウェルドラインを生じ難くさせることができる。
【0009】
また、前記肉抜き部の前記交差方向の寸法である第一寸法は、前記中心孔の内径寸法以上であることが好ましい。このような構成によれば、主弁を成形する金型の肉抜成形壁の交差方向の寸法は、中心孔の内径寸法以上に設定されることとなる。したがって、ゲート位置から流入しピンに向かって径方向に流れる溶融樹脂を、中心孔の内径寸法以上に延びる交差方向の壁で遮ることができる。これにより、ピンの径方向に向かう溶融樹脂を少なくすることができ、中心孔近傍にウェルドラインを生じ難くさせることができる。
【0010】
また、前記肉抜き部における前記軸線方向に沿った寸法である深さ寸法は、前記肉抜き部の前記中心軸側の面である内径側面と前記中心軸の軸線との距離以上であることが好ましい。このような構成によれば、主弁を成形する金型の肉抜成形壁の軸線方向の寸法は、内径側面と中心軸の軸線との距離以上に設定されることとなる。したがって、ゲート位置から流入しピンに向かって径方向に流れる溶融樹脂を、内径側面と中心軸の軸線との距離以上に延びる軸線方向の壁で遮ることができる。これにより、ピンの径方向に向かう溶融樹脂を少なくすることができ、中心孔近傍にウェルドラインを生じ難くさせることができる。
【0011】
また、前記肉抜き部は、前記中心軸まわりに延びる円弧状または円環状に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、主弁を成形する金型の肉抜成形壁は、中心軸が配置されることになる位置に配置されるピンを軸線まわりに円弧状または円環状に囲むこととなる。したがって、ゲート位置から流入しピンに向かって径方向に流れる溶融樹脂を、ピンの軸線まわりの所定範囲(円弧状または円環状の範囲)に亘って肉抜成形壁で遮ることができる。これにより、ピンの径方向に向かう溶融樹脂を少なくすることができ、中心孔近傍にウェルドラインを生じ難くさせることができる。
【0012】
また、前記肉抜き部が円弧状の場合、前記肉抜き部の周方向の一端から他端までにおける前記中心軸まわりの角度が100°以上であることが好ましい。このような構成によれば、主弁を成形する金型の肉抜成形壁は、ピンまわりの角度が100°となるように湾曲することとなる。したがって、ゲート位置から流入しピンに向かって流れる溶融樹脂は、この肉抜成形壁に沿って滑らかに流れることとなる。このため、肉抜成形壁に遮られた溶融樹脂の流れが止まることを抑制しつつ、ピンの径方向に向かう溶融樹脂を少なくすることができ、中心孔近傍にウェルドラインを生じ難くさせることができる。
【0013】
また、前記交差方向は、前記ゲート痕と前記中心孔とを結ぶ前記径方向と直交する直交方向であり、前記肉抜き部が円弧状の場合、前記第一寸法は、前記内径側面と前記中心軸の軸線との距離の2倍以上であることが好ましい。このような構成によれば、主弁を成形する金型の肉抜成形壁の直交方向の寸法は、内径側面と中心軸の軸線との距離の2倍以上に設定されることとなる。したがって、ゲート位置から流入しピンに向かって径方向に流れる溶融樹脂を、内径側面と中心軸の軸線との距離の2倍以上に延びる直交方向の壁で遮ることができる。これにより、ピンの径方向に向かう溶融樹脂を少なくすることができ、中心孔近傍にウェルドラインを生じ難くさせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中心孔近傍にウェルドラインを生じ難くさせ、熱応力割れの可能性を抑制するロータリー式切換弁を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るロータリー式切換弁の組立断面図。
図2】(A)は、主弁の平面図であり、(B)は、主弁の断面図。
図3】(A)は、主弁の拡大平面図であり、(B)は、主弁の拡大断面図。
図4】(A)は、主弁の平面図に各部の寸法を記載した図であり、(B)は、主弁の断面図に各部の寸法を記載した図。
図5】(A)は、主弁の平面図において溶融樹脂の流れ方向を示す図であり、(B)は、主弁の断面図において溶融樹脂の流れ方向および二点のゲートの位置を示す図。
図6】(A)は、主弁の平面図において溶融樹脂の流れ方向を示す図であり、(B)は、主弁の断面図において溶融樹脂の流れ方向および一点のゲートの位置を示す図。
図7】(A)は、変形例における主弁の拡大平面図であり、(B)は、変形例における主弁の拡大断面図。
図8】(A)は、冷房運転時の状態を示す冷凍サイクルシステムの概略図であり、(B)は、暖房運転時の状態を示す冷凍サイクルシステムの概略図。
図9】従来の主弁の断面図。
図10】(A)は、従来の主弁の平面図において溶融樹脂の流れ方向を示す図であり、(B)は、従来の主弁の断面図において溶融樹脂の流れ方向および二点のゲートの位置を示す図。
図11】(A)は、従来の主弁の平面図において溶融樹脂の流れ方向を示す図であり、(B)は、従来の主弁の断面図において溶融樹脂の流れ方向および一点のゲートの位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図1~6及び図8に基づいて説明する。なお、図において矢印X、矢印Yは、互いに直交する方向であり、矢印Xを弁本体1および中心軸6の軸線方向とし、「軸線X方向」と記す。また、軸線X方向の一方側を「上側X1」とし、他方側を「下側X2」と記す。また、軸線X方向に交差する方向を矢印Yで示し、「径方向Y」と記す。そして、特に径方向Yにおいて中心軸6のある側を「内側」とし、内側の反対側を「外側」とする。なお、この径方向Yは、後述するゲート痕と第一軸挿入孔3a(中心孔)とを結ぶ方向である。これは、あくまでも説明の便宜のためであり、必ずしもロータリー式切換弁100の実際の使用状態における方向と一致するとは限らず、ロータリー式切換弁100の実際の使用状態における方向を限定するものではない。
【0017】
ロータリー式切換弁100は、弁本体1と、弁座部材2と、主弁3と、副弁4と、駆動部5と、中心軸6と、を備えている。弁本体1は、軸線X方向に延びる筒状の第一円筒部10と、第一円筒部10に連続し第一円筒部10よりも縮径した有底筒状の第二円筒部11と、を備え、主弁3、副弁4、駆動部5、および中心軸6を収容している。第一円筒部10の内部は、弁室10aを構成している。第二円筒部11の内部は、主に駆動部5等を収容する収容部11aを構成している。
【0018】
弁座部材2は、円柱状の弁座部20と、弁座部20の外周に形成されたフランジ部21と、を備えている。弁座部20は、外周面が第一円筒部10の内周面に接するようにして弁本体1に嵌め込まれており、その上面は、径方向Yに延びる弁座面20aを構成している。図8(A)、(B)に示すように、弁座部20には、弁座部20の下端部から弁座面20aまで貫通して弁室10aに開口する4個のポート20D、20S、20C、20Eが設けられている。各ポート20D、20S、20C、20Eは、それぞれ90°離間する位置に開口している。
【0019】
4個のポートは、弁室10aと圧縮機Pの冷媒の吐出側に連通されるDポート20Dと、圧縮機Pの冷媒の吸入側に連通されるSポート20Sと、室外熱交換器60側に連通されるC切換ポート20Cと、室内熱交換器80側に連通されるE切換ポート20Eと、で構成されている。各ポート20D、20S、20C、20Eには、それぞれ継手管8(図1にのみ図示)が接続されて冷媒の流路を構成している。フランジ部21は、上面が第一円筒部10の下端面に接触した状態で、溶接により弁本体1に固定されている。
【0020】
主弁3は、樹脂成形部品であり、弁本体1の内部で中心軸6まわりに回転可能および軸線X方向に変位可能に設けられている。図2(B)に示すように、主弁3は、下側X2(弁座部20側)に開口する椀状の椀部30と、椀部30に連続して上側X1に延びる円柱状のピストン部31と、を備えている。椀部30には、弁座面20aに向かって開口する低圧流路30Lおよび高圧流路30Hと、低圧流路30Lの天井から収容部11aに連通する均圧孔30aと、が形成されている。
【0021】
低圧流路30Lは、上述のポート各ポート20D、20S、20C、20Eのうち隣り合う2個のポートを連通させる弁通路であり、中心軸6を挟んで高圧流路30Hと対向して設けられている。図2(B)に示すように、低圧流路30Lには、その開口端縁から下側X2に向かって突出するリブ32が設けられており、リブ32の下端面は低圧シール面32aを構成している。図1に示すように、低圧シール面32aは、弁座面20aに摺接可能となっており、低圧シール面32aと弁座面20aと、で囲まれて弁室10aと隔てられた空間によって上述の4個のポート20D、20S、20C、20Eのうち2個が連通されるようになっている。
【0022】
図1に示すように、低圧流路30Lには、その径方向Yの内側の壁から径方向Y外側の壁に亘って補強部材7が設置されている(図2~7では省略)。補強部材7は、主弁3内外の圧力差による応力により、低圧流路30Lが変形することを防止するための部材であり、金属材料や、樹脂等の材料で棒状に形成され、圧入等によって低圧流路30L内に固定されている。
【0023】
高圧流路30Hは、各ポート20D、20S、20C、20Eのうち、隣り合う2個のポートを連通させる弁通路である。図1に示すように、高圧流路30Hの径方向Y外側の壁には、図における断面視で径方向Y内側に向かって切欠き部30H1が形成されている。これにより、高圧流路30Hは、弁室10aと隔てられない常時開放した空間となっている。
【0024】
椀部30の底面には、下側X2に突出する一対の摺動リブ30bが形成されている。摺動リブ30bは、図8(A)、(B)に示すように、椀部30の底面において高圧流路30Hが形成される側の半円部に、周方向に間隔をあけて形成されている。
【0025】
ピストン部31は、その周囲にピストンリングRを嵌め込むように形成されており、ピストンリングRは、主弁3が軸線X方向に変位する際に第二円筒部11の内周面に摺接するようになっている。ピストン部31の中心部(内側)には、上側X1に開口する円筒状の凹部が形成されており、この凹部は、副弁4を収容する副弁収容室33(副弁室)を構成している。
【0026】
副弁収容室33の内周面には、図2(A)、(B)に示すように、径方向Y内方に突出し軸線X方向に延びる柱状の副弁ストッパ34が、中心軸6まわり(軸線Xまわり)の周上で周方向に間隔をあけて2個形成されている。副弁ストッパ34は、後述する副弁4の拡径部40aに当接して副弁4の回転を停止させる部分である。
【0027】
副弁収容室33の底面37には、主弁側クラッチ部35が形成されている。主弁側クラッチ部35は、上側X1に凸となり中心軸6まわりの周上で周方向に等しい間隔をあけて3個形成された主弁凸部35aにより構成されている。図3に示すように、各主弁凸部35aは、中心軸6まわりの断面形状が台形状であり、中心軸6まわりの左右両端部からそれぞれ上側X1に向かうほど互いに近づく方向に傾斜するテーパ部tと、テーパ部tに連続するR部rと、R部rに連続して上面を構成する副弁弁座シートシート面35a1(副弁シート面)と、を有している。副弁弁座シート面35a1は、後述する副弁凸部42aの下端面であるシール面42a1に接することで、副弁4を回転摺動可能に支持している。3個の主弁凸部35aのうち、1個には、上述の均圧孔30aの上側X1の端部が開口している。すなわち、副弁収容室33と低圧流路30Lは均圧孔30aによって連通している。副弁収容室33の底面37において、主弁側クラッチ部35の径方向Y内側には、上側X1に向かって開口する肉抜き部36が形成されている。肉抜き部36の詳細については、後述する。
【0028】
副弁収容室33の底面37中央部は、後述する肉抜き部36の内径側面36bの上端面38を構成しており、この上端面38は、中心軸6の軸受部分となっている。上端面38の中心には、軸線X方向に沿って椀部30の下端部まで貫通する第一軸挿入孔3a(中心孔)が形成されている。第一軸挿入孔3aには、中心軸6の後述する下側部分6bが挿入されており、これによって、後述する主弁ストッパ9に当接する第一切換位置(切換位置、図8(A)が示す位置)と、第二切換位置(切換位置、図8(B)が示す位置)と、の間で、主弁3が中心軸6まわりに回転可能および軸線X方向に変位可能に支持されている。
【0029】
なお、このように構成された主弁3を成形する際には、金型を用意し、図5(B)、図6(B)に示すように、径方向Y外側の両方または一方のゲート位置Gから溶融樹脂を射出して成形することとなるので、成形された主弁3の外面のゲート位置Gに当たる部分には、不図示のゲート痕が形成されている。
【0030】
副弁4は、主弁3と同様に、中心軸6まわりに回転可能および軸線X方向に変位可能に設けられている。図1に示すように、副弁4は、副弁収容室33に収容される略円板状のフランジ部40と、フランジ部40の中央に形成され軸線X方向に延びるボス部41と、を備えている。フランジ部40の周方向略半分の部分には、他の部分よりも径方向Y外側に突出した拡径部40aが形成されており、拡径部40aの周方向一端部は、上述の副弁ストッパ34のうちの一方に当接し、拡径部40aの周方向他端部は、副弁ストッパ34のうち他方に当接するように構成されている。
【0031】
具体的には、拡径部40aの周方向一端部または周方向他端部は、上述の主弁3が第一切換位置または第二切換位置で主弁ストッパ9に当接し回転を規制された状態で、副弁4が中心軸6まわりに回転した際に、上述の副弁ストッパ34に当接するようになっている。そして、この当接によって副弁4の中心軸6まわりの回転が規制されるようになっている。
【0032】
フランジ部40の下面には、副弁側クラッチ部42が形成されている。副弁側クラッチ部42は、主弁凸部35aと同一円周上で下側X2に凸となり、中心軸6まわりの周上で周方向に等しい間隔をあけて3個形成された副弁凸部42aにより構成されている。一の副弁凸部42aと、他の副弁凸部42aと、の間には、上述の主弁凸部35aの1個が位置することができるようになっており、これによって、上述の主弁側クラッチ部35と副弁側クラッチ部42とが互いに噛み合うようになっている。副弁凸部42aは、中心軸6まわりの断面形状が台形状であり、中心軸6まわりの左右両端部がそれぞれ、下側X2に向かうほど互いに近づく方向に傾斜するテーパ部となっている。
【0033】
副弁凸部42a下端面は、副弁弁座シート面35a1に接するシール面42a1を構成している。シール面42a1は、副弁4の回転に合わせて副弁弁座シート面35a1に摺接しながら均圧孔30aを開閉するように構成されており、副弁弁座シート面35a1に対して平行に接する平行状態で均圧孔30aを閉じて、この均圧孔30aを閉状態とするように構成されている。
【0034】
フランジ部40の下面において、一の副弁凸部42aと、他の副弁凸部42aと、の間には、均圧孔30aと連通可能な、不図示の均圧流路が形成されている。このため、副弁凸部42aのシール面42a1が均圧孔30aを閉じた状態では、高圧の弁室10aと低圧の低圧流路30L内と、が区画されることとなるが、均圧流路と均圧孔30aが連通した状態では、主弁3の外部の上側X1の流体の圧力が低圧流路30L内(低圧側)へ逃げることで、主弁3の上側X1と、低圧流路30Lと、の圧力が均一となる。
【0035】
ボス部41の中心には、上側X1に開口する角孔41aが形成されている。角孔41aは、副弁4と、後述するウォームホイール50と、が互いに中心軸6まわりの回転力を伝達可能な部分であり、図1に示すように、ウォームホイール50のカム部50aを嵌め込み可能に形成されている。角孔41aの底部の中心には、軸線X方向に沿ってフランジ部40の下端まで貫通する第二軸挿入孔4aが形成されている。第二軸挿入孔4aには、中心軸6の後述する上側部分6aが挿入されており、これによって副弁4が中心軸6まわりに回転可能および軸線X方向に変位可能に支持されている。
【0036】
駆動部5は、副弁4を回転駆動する部分であり、図1に示すように、中心軸6に回転可能に配置されたウォームホイール50と、ウォームホイール50に噛み合って配置されたウォーム51と、ウォーム51を回転駆動する駆動軸を有する不図示のステッピングモータ(電動モータ)と、ウォームホイール50と副弁4との間に配置され、副弁4を下側X2に付勢するコイルばね52と、を有している。ウォームホイール50は、ウォーム51に噛み合って回転可能な部分であり、下側X2に突出するカム部50aを有し、カム部50aによって中心軸6に回転可能に配置されている。カム部50aは、副弁4の角孔41aに嵌合されている。
【0037】
すなわち、ウォームホイール50と副弁4とは、角孔41aおよびカム部50aによって接続されている。これにより副弁4とウォームホイール50とは、一体となり、共に協働して中心軸6まわりに回転する。ウォーム51は、上述のステッピングモータの駆動軸に固定されている。ウォーム51は、ウォームホイール50と噛み合って、駆動軸の回転に伴って回転し、その回転力をウォームホイール50に伝達する部分である。
【0038】
中心軸6は、軸線X方向に延びる主軸である。図1に示すように、中心軸6は、ウォームホイール50の中心部および副弁4の第二軸挿入孔4aに挿通される上側部分6aと、上側部分6aよりも小径に形成され、主弁3の第一軸挿入孔3aに挿通される下側部分6bと、を備えている。上側部分6aの上端部には、円環状のリムをかしめることによりボール6cが固定されており、このボール6cを介して上側部分6aが、弁本体1の第二円筒部11の天井壁の中心に設けられた軸受溝に支持されている。下側部分6bの下端部は、弁座部材2の弁座部20の中心に設けられた軸受溝に支持されている。上側部分6aと下側部分6bとの連続部分には、ワッシャ61が嵌め込まれており、このワッシャ61を介して主弁3が上側X1に上昇する際の力が中心軸6に伝達されるようになっている。
【0039】
次に、主弁3と副弁4による流路の切り換え動作について説明する。まず、図8(A)に示すように、主弁3の低圧流路30LがE切換ポート20EとSポート20Sとを連通させ、高圧流路30HがDポート20DとC切換ポート20Cとを連通させた第一切換位置から、駆動部5が作動する。そうすると、ウォーム51とウォームホイール50の駆動力が、カム部50aを介して副弁4に伝達され、副弁4が軸線Xまわり(左回り)に回転する。
【0040】
なお、このときは、副弁凸部42aのシール面42a1と主弁凸部35aの上面が図1に示すように当接しているため、主弁凸部35aに開口する均圧孔30aがシール面42a1によって閉じられている。このため、主弁3は、内外の圧力差により弁座部20に押しつけられた状態であり、副弁4が回転しても主弁3は弁座部20との摩擦力により回転できず、副弁4だけが回転する。
【0041】
副弁4が回転すると、副弁凸部42aが主弁凸部35a上をスライドして、均圧孔30aが、副弁4のフランジ部40下面において2個の副弁凸部42a間に形成された不図示の均圧流路により開かれる。これにより、主弁3の外部の上側X1の流体の圧力が低圧流路30L内(低圧側)へ逃げる。そして、一の副弁凸部42aと、他の副弁凸部42aと、の間に主弁凸部35aの1個が位置するようになり、これによって、主弁側クラッチ部35と副弁側クラッチ部42とが互いに噛み合う。この状態では、主弁3の上側X1と低圧流路30L内は均圧となるため、上述のように主弁3を弁座部20に押し付ける力は小さくなり、主弁3と、弁座部20と、の摩擦力が、主弁凸部35aと2個の副弁凸部42aとが噛み合う力よりも小さくなる。
【0042】
このため、副弁4を軸線Xまわりに回転させることで、主弁凸部35aと、副弁凸部42aと、が当接しながら一体となって軸線Xまわりに回転する。これにより、図8(B)に示すように、主弁3は、低圧流路30LがC切換ポート20CとSポート20Sとを連通させ、高圧流路30HがDポート20DとE切換ポート20Eとを連通させる第二切換位置に移動する。この際、高圧流路30Hの壁が主弁ストッパ9に当接することで、主弁3はそれ以上軸線Xまわりに回転することが規制される。
【0043】
この状態でさらに副弁4を軸線Xまわりに回転させると、回転を規制されていない副弁4のみが、上述の副弁ストッパ34に当接するまで軸線Xまわりに回転する。これにより、副弁凸部42aが主弁凸部35aに乗り上がり、シール面42a1により均圧孔30aが閉じられる。したがって、高圧の流体は、均圧孔30aから低圧流路30Lに逃げることができないため、主弁3の外部の上側X1が高圧となり、主弁3の上側X1と低圧流路30Lとの圧力差によって主弁3が弁座部20に押し付けられる。
【0044】
次に、ロータリー式切換弁100を流路切換弁に用いた冷凍サイクルシステムについて説明する。図8は実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図であり、空気調和機の冷凍サイクルシステムの例である。空気調和機は、圧縮機P、室外熱交換器60(凝縮器または蒸発器)、膨張弁70、室内熱交換器80(凝縮器または蒸発器)、流路切換弁としてのロータリー式切換弁100を有しており、これらの各要素は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルシステムを構成している。
【0045】
冷凍サイクルシステムの流路は、ロータリー式切換弁100の主弁3を上記説明のように回転させることで、冷房運転および暖房運転の2通りの流路に切換えられるようになっている。図8(A)の冷房運転時には、ロータリー式切換弁100において主弁3の低圧流路30LによりSポート20SがE切換ポート20Eに接続され、高圧流路30HによりDポート20DがC切換ポート20Cに接続される。そして、図に矢印で示すように、圧縮機Pで圧縮された流体としての冷媒がロータリー式切換弁100のDポート20Dに流入してC切換ポート20Cから室外熱交換器60に流入し、室外熱交換器60から流出する冷媒が、膨張弁70に流入する。そして、この膨張弁70で冷媒が膨張され、室内熱交換器80に供給される。室内熱交換器80から流出する冷媒は、ロータリー式切換弁100でE切換ポート20EからSポート20Sに流れ、Sポート20Sから圧縮機Pへ循環される。
【0046】
図8(B)の暖房運転時には、ロータリー式切換弁100において主弁3の低圧流路30LによりSポート20SがC切換ポート20Cに接続され、高圧流路30HによりDポート20DがE切換ポート20Eに接続される。そして、図に矢印で示すように、圧縮機Pで圧縮された冷媒がロータリー式切換弁100のDポート20Dに流入してE切換ポート20Eから室内熱交換器80に流入し、室内熱交換器80から流出する冷媒が、膨張弁70に流入する。そして、この膨張弁70で冷媒が膨張され、室外熱交換器60に供給される。室外熱交換器60から流出する冷媒は、ロータリー式切換弁100でC切換ポート20CからSポート20Sに流れ、Sポート20Sから圧縮機Pへ循環される。
【0047】
次に、主弁3における肉抜き部36の詳細について説明する。肉抜き部36は、副弁収容室33の底面37において、主弁側クラッチ部35の径方向Y内側に形成され、軸線X方向に深さを有し、上側X1に開口する溝である。なお、肉抜き部36の説明では、図3(A)、図4(A)、図5(A)および図6(A)に示す平面視での平面と同一平面上で径方向Yと交差する方向を交差方向とし、交差方向の中でも特に径方向Yと直交する方向を直交方向Aとする。図3(A)に示すように、肉抜き部36は、第一軸挿入孔3a(中心軸6)を中心として径方向Yに対向するように1対形成されている。肉抜き部36は、それぞれ、直交方向A(交差方向)に延びつつ中心軸6まわりに湾曲して延びる円弧状に形成されている。すなわち、肉抜き部36は、ゲート痕と第一軸挿入孔3aと間に、それらを結ぶ線分と交差して設けられている。
【0048】
肉抜き部36の径方向Y外側の側面である外径側面36aは、一の主弁凸部35aの径方向Y内側の縁部から他の主弁凸部35aの径方向Y内側の縁部に沿って周方向に延びており、その上端部が副弁弁座シート面35a1と同じ高さに位置している。これによって、肉抜き部36は、副弁弁座シート面35a1に開口していることとなる。一方、肉抜き部36の径方向Y内側の側面(中心軸6側の面)である内径側面36bは、外径側面36aよりも、中心軸6まわりの周方向の寸法が小さく設定されており、その上端面38が副弁収容室33の底面37と同じ高さに位置しているが、上端面38は、底面37と同じ高さにしなくてもよい。ただし、内径側面36bの上端面38は、外径側面36aの上端部である副弁弁座シート35a1よりも下側X2に位置していることが好ましく、具体的には、図1に示すように、副弁弁座シート35a1よりもワッシャ61の板厚分以上、下側X2に位置していると、ワッシャ61が副弁弁座シート35a1より上側X1に出っ張って副弁4に干渉してしまうことがないため、より好ましい。肉抜き部36の周方向両端部は、周方向に向かって互いに離れる方向に湾曲して形成されている。
【0049】
図4(A)に示すように、肉抜き部36の直交方向A(交差方向)の寸法である第一寸法S1は、第一軸挿入孔3aの内径寸法S2以上に設定することが好ましい。さらに、本実施形態のように肉抜き部36が円弧状に形成されている場合、第一寸法S1は、内径側面36bと中心軸6の軸線Xとの距離D1の2倍以上であることがさらに好適である。また、肉抜き部36が円弧状に形成されている場合、肉抜き部36の周方向の一端から他端までにおける中心軸6まわりの角度θは、100°以上に設定することがさらに好適である。また、図4(A)、(B)に示すように、肉抜き部36における軸線X方向に沿った寸法である深さ寸法S3は、肉抜き部36の内径側面36bと中心軸6の軸線Xとの距離D1以上であることがさらに好適である。
【0050】
次に、肉抜き部36を有する主弁3の成形について、図5(A)、(B)により説明する。主弁3は、樹脂成形部品であり、例えば、射出成形等を用いて成形される。主弁3を成形する際には、まず、金型を型締めし、ゲート位置Gから加熱溶融させた溶融樹脂を射出し、冷却し、その後に型開きして取り出す、という工程を行う。なお、金型を型締めする際には、第一軸挿入孔3aを成形する位置に、ピンP1を設置するとともに、ピンP1の上端に、肉抜き部36を成形するための肉抜成形壁Wを設置する。肉抜成形壁Wは、上述した肉抜き部36の形状と略同形状、略同寸法に形成されており、外径側面36a、内径側面36b、に対応する外径壁部Wa、内径壁部Wbを備えて構成されている。
【0051】
溶融樹脂を射出する際には、図5(A)、(B)に示すように、径方向Y外側の両側にゲート位置Gを配置する二点のゲートを用いた方法で行ってもよいし、図6(A)、(B)に示すように、径方向Y外側の一方にゲート位置Gを配置する一点のゲートを用いた方法で行ってもよい。図5(A)の矢印で示すように、二点のゲート位置Gから射出された溶融樹脂は、下側X2、上側X1、および径方向Y内側に向かってそれぞれ流れるようになっている。そして、径方向Y内側に向かって流れた溶融樹脂は、図5(A)に示すように、中心軸6に向かって集まってくる。
【0052】
しかしながら、これらの溶融樹脂は、肉抜成形壁Wの外径壁部Waに衝突した後、当該外径壁部Waの曲面に沿って滑らかに流れ、その流れ方向を直交方向Aもしくは下側X2に変えることとなる。そして、直交方向Aに流れ方向を変えた溶融樹脂は、第一軸挿入孔3aから直交方向A一方側と他端側とに離れた位置でそれぞれ合流することとなっている。図5(A)に示すように、溶融樹脂が合流する位置には、ウェルドラインLが形成されるようになっている。一方、肉抜成形壁Wの外径壁部Waに衝突し、当該外径壁部Waに沿って下側X2に流れた溶融樹脂は、図5(B)に示すように、ピンP1の外周面と内径壁部Wbとの間を上側X1に向かってせり上がるように上昇し、主弁3における中心軸6まわりの壁を成形することとなっている。
【0053】
一方、図6(A)、(B)に示すように、一点のゲート位置Gから射出された溶融樹脂は、下側X2、上側X1、および径方向Y内側に向かって流れる。そして、径方向Y内側に向かって流れた溶融樹脂は、図6(A)に示すように、中心軸6に向かって集まってくる途中で、肉抜成形壁Wの外径壁部Waに衝突し、当該外径壁部Waの曲面に沿って滑らかに流れ、その流れ方向を直交方向Aもしくは下側X2に変えることとなる。そして、直交方向Aに流れ方向を変えた溶融樹脂は、ゲート位置Gの径方向Y反対側の位置で合流することとなっている。図6(A)に示すように、溶融樹脂が合流する位置には、ウェルドラインLが形成されるようになっているが、ウェルドラインLが形成される位置と第一軸挿入孔3aとの間には、肉抜成形壁Wがあることから、ウェルドラインLが第一軸挿入孔3aの位置まで形成されることが抑制されている。一方、肉抜成形壁Wの外径壁部Waに衝突し、当該外径壁部Waに沿って下側X2に流れた溶融樹脂は、図6(B)に示すように、ピンP1の外周面と内径壁部Wbとの間を上側X1に向かってせり上がるように上昇し、主弁3における中心軸6まわりの壁を成形することとなっている。
【0054】
このような本実施形態の主弁3に対し、図9に示す、従来の主弁300では、副弁収容室301に肉抜き部36が形成されていない。すなわち、主弁300を成形する際には、肉抜成形壁Wが存在しないこととなる。このため、図10(A)、(B)に示すように、二点のゲート位置Gから射出された溶融樹脂のうち、径方向Y内側に向かって流れた溶融樹脂は、流れ方向を変えることなくピンP1に向かって集まってくる。そして、この溶融樹脂は、ピンP1に衝突した後、周方向一方と他方とに分かれ、ピンP1に沿って周方向に流れ、その後、径方向Yに向かって衝突する。これにより、第一軸挿入孔302から直交方向Aに向かって広範囲にウェルドラインLが形成されることとなる。すなわち、ウェルドラインLが第一軸挿入孔302(中心軸6)まで到達してしまい、中心軸6付近にウェルドラインLが形成されることとなる。また、この構成では、肉抜き部36がないことで、中心軸6まわりの肉厚が大きくなってしまう。
【0055】
これは、ゲート位置Gを一点にした場合も同様であり、図11(A)、(B)に示すように、一点のゲート位置Gから射出された溶融樹脂のうち、径方向Y内側に向かって流れた溶融樹脂は、流れ方向を変えることなくピンP1に向かって集まってくる。そして、この溶融樹脂は、ピンP1に衝突した後、周方向一方と他方とに分かれ、ピンP1に沿って周方向に流れ、その後、直交方向Aに向かって衝突する。これにより、第一軸挿入孔302から径方向Yに向かって広範囲にウェルドラインLが形成されることとなる。
【0056】
本実施形態では、肉抜き部36を設けていることで、これらの広範囲なウェルドラインLが形成されるのを防止するとともに、主弁3における中心軸6まわりの肉厚が大きくなることを防止している。
【0057】
以上、本実施形態によれば、主弁3の外面には、樹脂成形の際のゲート位置Gに形成されたゲート痕が設けられ、ゲート痕と第一軸挿入孔3a(中心孔)との間には、それらを結ぶ線分と交差して肉抜き部36が設けられている。したがって、このような主弁3を成形する金型には、ゲート位置Gと、第一軸挿入孔3aを成形するためのピンP1と、の間に、肉抜き部36を成形するための壁である肉抜成形壁Wが存在することとなる。このため、主弁3を射出成形する際には、ゲート位置Gから流入した溶融樹脂がピンP1に到達する前に、その溶融樹脂の流れ方向を肉抜成形壁Wによって変えることができる。これにより、ピンP1の径方向Yに向かう溶融樹脂を少なくすることができるので、ピンP1に衝突して周方向一方と他方とに分かれ、ピンに沿って流れた後で合流する溶融樹脂を少なくすることができ、第一軸挿入孔3a近傍にウェルドラインLを生じ難くさせることができる。また、ゲート痕と第一軸挿入孔3aの間に肉抜き部36を設けたことで、第一軸挿入孔3a付近の肉厚を低減することができ、溶融樹脂が膨張収縮した場合の応力が第一軸挿入孔3a付近に集中することを抑制することができる。したがって、第一軸挿入孔3a近傍にウェルドラインLを生じ難くさせ、熱応力割れを抑制するロータリー式切換弁100を得ることができる。
【0058】
また、肉抜き部36は直交方向A(交差方向)に延び、副弁弁座シート面35a1(副弁シート面)に開口する溝とした。したがって、このような主弁3を成形する金型の肉抜成形壁Wは、ゲート位置Gと、ピンP1と、の間で直交方向A(交差方向)に延びることとなる。このため、主弁3を射出成形する際には、ゲート位置Gから流入しピンP1に向かって径方向に流れる溶融樹脂がピンP1に到達する前に、その溶融樹脂の流れ方向を肉抜成形壁Wによって直交方向Aに変えることができる。これにより、ピンP1の径方向Yに向かう溶融樹脂を少なくすることができ、第一軸挿入孔3a近傍にウェルドラインLを生じ難くさせることができる。
【0059】
また、肉抜き部36の第一寸法S1は、第一軸挿入孔3aの内径寸法S2以上とすることで、主弁3を成形する金型の肉抜成形壁Wの交差方向の寸法は、第一軸挿入孔3aの内径寸法S2以上に設定されることとなる。したがって、ゲート位置Gから流入しピンP1に向かって径方向Yに流れる溶融樹脂を、内径寸法S2以上に延びる交差方向の壁で遮ることができる。これにより、ピンP1の径方向Yに向かう溶融樹脂を少なくすることができ、第一軸挿入孔3a近傍にウェルドラインLを生じ難くさせることができる。
【0060】
また、肉抜き部36における軸線X方向に沿った寸法である深さ寸法S3を、肉抜き部36の中心軸6側の面である内径側面36bと中心軸6の軸線Xとの距離D1以上とすることで、肉抜成形壁Wの軸線X方向の寸法は、距離D1以上に設定されることとなる。したがって、ゲート位置Gから流入しピンP1に向かって径方向Yに流れる溶融樹脂を、内径側面36bと中心軸6の軸線Xとの距離D1以上に延びる軸線X方向の壁で遮ることができる。これにより、ピンP1の径方向Yに向かう溶融樹脂を少なくすることができ、第一軸挿入孔3a近傍にウェルドラインLを生じ難くさせることができる。
【0061】
また、肉抜き部36を、中心軸6まわりに延びる円弧状に形成することで、肉抜成形壁Wは、中心軸6が配置されることになる位置に配置されるピンP1を軸線Xまわりに円弧状に囲むこととなる。したがって、ゲート位置Gから流入しピンP1に向かって径方向Yに流れる溶融樹脂を、ピンP1の軸線Xまわりの所定範囲(円弧状の範囲)に亘って肉抜成形壁Wで遮ることができる。これにより、ピンP1の径方向Yに向かう溶融樹脂を少なくすることができ、第一軸挿入孔3a近傍にウェルドラインLを生じ難くさせることができる。
【0062】
また、肉抜き部36を円弧状とし、肉抜き部36の周方向の一端から他端までにおける中心軸6まわりの角度を100°以上とすることで、肉抜成形壁Wは、ピンP1まわりの角度が100°となるように湾曲することとなる。したがって、ゲート位置Gから流入しピンP1に向かって流れる溶融樹脂は、この肉抜成形壁Wに沿って滑らかに流れることとなる。このため、肉抜成形壁Wに遮られた溶融樹脂の流れが止まることを抑制しつつ、ピンP1の径方向Yに向かう溶融樹脂を少なくすることができ、第一軸挿入孔3a近傍にウェルドラインLを生じ難くさせることができる。
【0063】
また、交差方向を直交方向Aとし、肉抜き部36を円弧状とし、第一寸法S1を、内径側面36bと中心軸6の軸線Xとの距離D1の2倍以上とすることで、肉抜成形壁Wの直交方向Aの寸法は、内径側面36bと中心軸6の軸線Xとの距離D1の2倍以上に設定されることとなる。したがって、ゲート位置Gから流入しピンP1に向かって径方向Yに流れる溶融樹脂を、内径側面36bと中心軸6の軸線Xとの距離D1の2倍以上に延びる直交方向Aの壁で遮ることができる。これにより、ピンP1の径方向Yに向かう溶融樹脂を少なくすることができ、第一軸挿入孔3a近傍にウェルドラインLを生じ難くさせることができる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0065】
図7(A)は、変形例における主弁3の拡大平面図であり、図7(B)は、変形例における主弁3の拡大断面図である。変形例における主弁3では、肉抜き部36が、中心軸6まわりに延びる円環状に形成されている点が、本実施形態と異なっている。このため、肉抜き部36を成形するための肉抜成形壁Wも、この形状に合わせて円環状に形成されることとなる。この構成によれば、主弁3を成形する際には、ゲート位置Gから流入しピンP1に向かって径方向Yに流れる溶融樹脂を、ピンP1の軸線Xまわりの全範囲(円環状の範囲)に亘って肉抜成形壁Wで遮ることができる。これにより、ピンP1の径方向Yに向かう溶融樹脂を少なくすることができ、第一軸挿入孔3a近傍にウェルドラインLを生じ難くさせることができる。
【0066】
また、本実施形態では、肉抜き部36は、交差方向のうち直交方向Aに延びる構成としたが、肉抜き部36の延びる方向は、直交方向Aに限らない。すなわち、肉抜き部36は、直交方向A以外の交差方向に延ばしてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、図5(B)に示すように、ゲート位置Gに対して径方向Yに最も近い主弁凸部35aに均圧孔30aが開口するように構成した。この場合、主弁3を射出成形する際には、上述の第一軸挿入孔3aを形成するためのピンP1と同様に、均圧孔30aを形成するための不図示の第二ピンを設置することとなる。この場合、第二ピンがあることで、ゲート位置Gから射出され、径方向Yに流れる溶融樹脂をこの第二ピンに衝突させ、その流れ方向を上側X1と下側X2とに均等に分けることができるので好適である。しかしながら、均圧孔30aは、必ずしもこの位置に形成する必要はなく、例えば、本実施形態とは、中心軸6まわりに90°回転した位置にある主弁凸部35aに開口するように形成してもよい。
【0068】
また、本実施形態の各図面においては、副弁収容室33の底面37は、軸線X方向と直交する面(径方向Yの副弁弁座シート面35a1)に平行な平面とした図面であったが、底面37は、軸線X方向と直交する面に平行な平面に限定されず、軸線X方向と直交する面に対し、傾きをもった平面や曲面であってもよい。また、この底面37は、椀部30の肉厚を均一にするため、高圧流路30Hと低圧流路30Lの内R形状に沿ったR形状面等であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
G ゲート位置
X 軸線
1 弁本体
3 主弁
3a 第一軸挿入孔(中心孔)
4 副弁
5 駆動部
6 中心軸
10a 弁室
20 弁座部
20E E切換ポート(複数のポート)
20C C切換ポート(複数のポート)
20D Dポート(複数のポート)
20S Sポート(複数のポート)
30a 均圧孔
30H 高圧流路
30L 低圧流路
31 ピストン部
33 副弁収容室(副弁室)
35a1 副弁弁座シート面(副弁シート面)
36 肉抜き部
100 ロータリー式切換弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11