(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181785
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】表示パネル、表示装置、および、情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/302 20060101AFI20231218BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231218BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231218BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231218BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231218BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G09F9/302 C
G09F9/30 365
G09F9/00 366Z
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095127
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】杉山 真人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮吏
(72)【発明者】
【氏名】肖 利民
(72)【発明者】
【氏名】土橋 守幸
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107EE03
3K107EE06
3K107EE07
3K107EE61
3K107FF15
3K107HH05
5C094AA02
5C094BA27
5C094CA20
5C094HA08
5G435AA01
5G435BB05
5G435EE49
5G435LL07
5G435LL08
(57)【要約】
【課題】画質の低下を緩和または解消することができる表示パネル、表示装置および情報処理装置を提供する。
【解決手段】基板と複数の画素を備え、前記画素ごとに1個以上の発光素子を備え、前記複数の画素は、前記基板の表面の異なる位置に配置され前記表面の一部である第1領域において、当該第1領域の周囲の領域である第2領域よりも発光素子の占有率が低く、かつ、前記第2領域において、前記第1領域から離れた位置ほど前記占有率が高くなるように前記画素が配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と複数の画素を備え、
前記画素ごとに1個以上の発光素子を備え、
前記複数の画素は、前記基板の表面の異なる位置に配置され、
前記表面の一部である第1領域において、当該第1領域の周囲の領域である第2領域よりも発光素子の占有率が低く、かつ、
前記第2領域において、前記第1領域から離れた位置ほど前記占有率が高くなるように前記画素が配置される
表示パネル。
【請求項2】
前記第2領域において、前記第1領域から離れた位置ほど前記発光素子が大きい
請求項1に記載の表示パネル。
【請求項3】
前記第2領域において、前記第1領域から離れた位置ほど前記画素の密度が高い
請求項1に記載の表示パネル。
【請求項4】
基板と複数の画素を備え、
前記画素ごとに1個以上の発光素子と前記発光素子に電流を供給する駆動素子を備え、
前記複数の画素は、前記基板の表面の異なる位置に配置され、
前記表面の一部である第1領域には、当該第1領域の周囲の領域である第2領域よりも発光素子の占有率が低くなるように前記画素が配置され、
前記第1領域に配置された画素の発光素子に、当該発光素子に対する駆動素子は、前記第2領域に配置された画素の発光素子よりも多くの電流を供給する
表示パネル。
【請求項5】
前記第1領域に配置された画素の発光素子に対する駆動素子の長さに対する幅のアスペクト比が、前記第2領域に配置された画素の発光素子に対する駆動素子の前記アスペクト比よりも大きい
請求項4に記載の表示パネル。
【請求項6】
前記発光素子は、有機発光ダイオードである
請求項1または請求項4に記載の表示パネル。
【請求項7】
請求項1または請求項4に記載の表示パネルと、
前記第1領域の裏面に画像を撮像する撮像部と、を備える
表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置と、
画素ごとの輝度値を示すデータ信号に基づいて当該表示装置に画像を出力させ、
前記撮像部に画像を撮像させる制御部と、を備える
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラが設置された表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置には、カメラを備えるものがある。カメラは、画面の表示領域の一部の領域(本願では、「第1領域」と呼ぶ)の裏面に設置されることがある。第1領域を透過した光は、カメラに入射される。カメラは、入射される光に表れる画像を撮像する。例えば、特許文献1には、OLEDアレイ基板を含む表示パネルについて記載されている。表示パネルは、透光機能と表示機能を実現することができる。表示パネルは、後面にカメラ、光センサ、光送信器の少なくとも1つを含む感光素子が設けられる表示領域を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1領域では、その周囲の領域(本願では、「第2領域」と呼ぶ)よりも画素を間引いて配置されることがある。第1領域の透過率を高め、カメラに入射される光量を増加するためである。他方、第1領域では、画素が間引かれるため第2領域よりも輝度が低くなりがちである。第1領域と第2領域との境界では、輝度が空間的に急激に変化するため、境界線として視認されることがある。この境界線は、ユーザに対して違和感を与え、主観的な画質を低下させる原因となりうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様に係る表示パネルは、基板と複数の画素を備え、前記画素ごとに1個以上の発光素子を備え、前記複数の画素は、前記基板の表面の異なる位置に配置され前記表面の一部である第1領域において、当該第1領域の周囲の領域である第2領域よりも発光素子の占有率が低く、かつ、前記第2領域において、前記第1領域から離れた位置ほど前記占有率が高くなるように前記画素が配置される。
【0006】
上記の表示パネルの前記第2領域において、前記第1領域から離れた位置ほど前記発光素子が大きくてもよい。
【0007】
上記の表示パネルの第2領域において、前記第1領域から離れた位置ほど前記画素の密度が高くてもよい。
【0008】
本発明の第2態様に係る表示パネルは、基板と複数の画素を備え、前記画素ごとに1個以上の発光素子と前記発光素子に電流を供給する駆動素子を備え、前記複数の画素は、前記基板の表面の異なる位置に配置され、前記表面の一部である第1領域には、当該第1領域の周囲の領域である第2領域よりも発光素子の占有率が低くなるように前記画素が配置され、前記第1領域に配置された画素の発光素子に、当該発光素子に対する駆動素子は、前記第2領域に配置された画素の発光素子よりも多くの電流を供給する。
【0009】
上記の表示パネルにおいて、前記第1領域に配置された画素の発光素子に対する駆動素子の長さに対する幅のアスペクト比が、前記第2領域に配置された画素の発光素子に対する駆動素子の前記アスペクト比よりも大きくてもよい。
【0010】
上記の表示パネルにおいて、前記発光素子は、有機発光ダイオードであってもよい。
【0011】
本発明の第3態様に係る表示装置は、上記の表示パネルと、前記第1領域の裏面に画像を撮像する撮像部と、を備える。
【0012】
本発明の第4態様に係る情報処理装置は、上記の表示装置と、画素ごとの輝度値を示すデータ信号に基づいて当該表示装置に画像を出力させ、前記撮像部に画像を撮像させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本実施形態によれば、画質の低下を緩和または解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る表示装置の構成例を示す正面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る表示装置の構成例を示す側面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る画素回路を例示する回路図である。
【
図4】第1の実施形態に係る発光素子駆動用トランジスタの構成例を示す斜視図である。
【
図5】第1の実施形態に係る画素の第1分布例を示す説明図である。
【
図6】第1の実施形態に係る画素の第2分布例を示す説明図である。
【
図7】第2の実施形態に係る表示装置の構成例を示す正面図である。
【
図8】駆動電流の信号電圧依存性の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る表示装置10の構成例を示す正面図である。
図2は、本実施形態に係る表示装置10の構成例を示す側面図である。
表示装置10は、表示パネル12と、ベゼル14、カメラ20、コントローラ30、および、入力インタフェース40を備える。
【0016】
表示パネル12は、平板の形状を有する。表示パネル12の厚みは、幅または高さよりも十分に小さい。表示パネル12の正面の形状は、ほぼ矩形である。
図1の例では、垂直方向の高さよりも水平方向の幅が大きい。表示パネル12は、複数の画素と基板を備える。基板の表面には、複数の画素が異なる位置に互いに重なり合わないように配置される。個々の画素の輝度の分布により、表示パネル12の正面から視認できるように画像が表示される。表示パネル12は、ベゼル14により支持される。ベゼル14は、表示パネル12の正面の外周を取り囲むように設置される。この配置により、表示パネル12の正面のほぼ全体が露出される。本願では、「画像」とは、視認できる模様、図形、文字、記号、などのいずれか1個、または、いずれか複数個の組み合わせを指す。
【0017】
個々の画素は、1個以上の発光素子を備える。
図5ならびに
図6の例では、個々の画素は、3個の発光素子を備える。3個の発光素子は、赤色、青色、緑色の光を発光する。発光素子間の輝度の組み合わせにより、画素ごとの色と明るさが表現される。発光素子は、例えば、有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)である。基板は、透明かつ絶縁性を有する材料を含んで構成される。発光素子の表面は、透明な材料からなる保護膜を用いて被覆されてもよい。基板および保護膜の材料として、例えば、ガラス、プラスチック、などが用いられる。かかる材料として、絶縁性を有する材料を用いることで、基板および保護膜は、絶縁材としても機能する。
【0018】
表示パネル12の典型的な大きさとして、対角線の長さは、例えば、12~16インチである。表示パネル12の厚みは、例えば、0.3~5mmである。画面アスペクト比は、例えば、16:9~3:2である。表示パネル12に配置される画素の個数、即ち解像度は、例えば、1280×720~3840×2160である。
【0019】
表示パネル12の表面には、第1領域RAと第2領域PAが設けられている。第1領域RAは、表示パネル12の表面の一部を占める。第2領域PAは、表示パネル12の表面のうち第1領域RAを除いた、残りの領域である。通例、第1領域RAの大きさは、第2領域PAの大きさよりも十分に小さい。
図1の例では、第1領域RAは、表示パネル12の表面の中心部よりも長辺の一方(上方)に偏った位置に設けられる。第1領域RAの形状は、ほぼ円形である。第1領域RAの直径は、例えば、表示パネル12の短辺の長さ(高さ)の1/8~1/20となる。以下の説明では、表示パネル12表面の長辺の方向を「水平方向」または「x方向」と呼ぶ。その面の短辺の方向を「垂直方向」または「y方向」と呼ぶ。表示パネル12の厚みの方向を「厚み方向」または「z方向」と呼ぶ。
【0020】
第1領域RAと第2領域PAとでは、個々の画素に備わる発光素子の占有率が異なる。発光素子の占有率は、発光素子の面積の該当領域の面積に対する比に相当する。該当領域は、その発光素子を備える画素が配置される領域に相当する。
図1において、発光素子の占有率が濃淡で表されている。暗い部分ほど発光素子の占有率が高く、明るい部分ほど発光素子の占有率が低いことを示す。第1領域RAにおける発光素子の占有率は、第2領域PAにおける発光素子の占有率よりも低い。第1領域RAでは、発光素子の占有率および画素の密度は、空間的に均一である。本願では、第1領域RAにおける発光素子の占有率を「第1占有率」と呼ぶ。第1占有率は、表示パネル12の表面において最小となる占有率に相当する。
【0021】
第2領域PAでは、発光素子の占有率が位置により異なる。第2領域PAのうち第1領域RAの外周からの距離が大きい位置ほど発光素子の占有率が高くなるように画素が配置される。第1領域RAから十分に離れた位置では、発光素子の占有率は、表示パネル12の表面において最大となる。また、この位置における発光素子の占有率および画素の密度は、空間的に均一である。本願では、第1領域RAから十分に離れた位置における発光素子の占有率を「第2占有率」と呼ぶ。第2占有率は、表示パネル12を代表する標準的な発光素子の占有率に相当する。第2占有率は、第1占有率よりも有意に高い。第2占有率は、例えば、第1占有率の2~10倍程度である。
【0022】
本願では、第2領域PAのうち発光素子の占有率が一定の第2占有率となる領域を「標準領域NA」と呼ぶ。これに対し、第2領域PAのうち発光素子の占有率が第2占有率とならない領域を「遷移領域SA」と呼ぶ。遷移領域SAでは、発光素子の占有率は位置により異なりうる。第1領域RAおよび標準領域NAでは、それぞれ水平方向ならびに垂直方向に対して、一定間隔で画素が配置される。
図1において、遷移領域SAは、第1領域RAの周囲を取り囲む領域である。標準領域NAは、遷移領域SAの周囲を取り囲む領域である。遷移領域SAでは、第1領域RAとの境界から標準領域NAとの境界にかけて、第1領域RAとの境界からの距離が大きくなるほど発光素子の占有率が第1占有率から第2占有率に漸近する。
【0023】
例えば、遷移領域SAでは、発光素子の占有率が第1占有率から第2占有率まで第1領域RAとの境界からの距離に対して線形に変化するように画素が配置されてもよい。発光素子の占有率は、第1領域RAとの境界からの距離に対して非線形に変化するように画素が配置されてもよい。その場合、第1領域RAとの境界と標準領域NAとの境界のそれぞれにおいて、第1領域RAとの境界からの距離に対する発光素子の占有率の変化率がゼロとなってもよい。これにより、第1領域RAと標準領域NAとの輝度の空間変化が緩和される。なお、画素の分布例については、後述する。
【0024】
カメラ20は、表示パネル12の裏面に設置される。カメラ20は、表示パネル12の第1領域RAを透過した光を受光し、受光した光に現れる像を画像として撮像する。カメラ20は、撮像した画像を示す撮像画像信号を外部機器に出力する。カメラ20は、撮像素子と対物レンズを備える。撮像素子は、自器の撮像面に配置され、撮像面に入射される光に現れる画像を撮像し、撮像した画像を表す撮像画像信号を生成する。対物レンズは、第1領域RAの裏面に対向した位置に配置され、第1領域RAを透過した光を撮像面に収束する。
【0025】
コントローラ30は、表示パネル12に対して、入力インタフェース40から入力されるデータ信号で指示される画像を表示させる。コントローラ30は、演算回路を備えるマイクロコンピュータであってもよい。演算回路は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの、いずれであってもよい。コントローラ30は、データ信号が指示する画素の発光素子ごとの輝度値に対応する電力を供給し、輝度値で指示される輝度で該当する画素の発光素子を発光させる。
【0026】
データ信号は、例えば、画素ごとにRGB表色系に基づく色信号値を有する。RGB表色系に基づく色信号値は、赤色、青色、緑色のそれぞれに対する輝度値を有する。動画を表すデータ信号は、動画を構成する各フレームについて、画素ごとに輝度値を示す。コントローラ30は、データ信号と同期して、各フレームについて個々の画素に対応する時刻において、その画素への電力の供給を指示し、それ以外の画素への電力供給を停止するためのゲート信号を生成する。コントローラ30は、データ信号で指示されるフレームレートと表示パネル12における画素の位置に応じて、画素ごとに発光させる時刻を定めることができる。コントローラ30は、データ信号とゲート信号を画素ごとに出力する。個々の画素において、発光素子は、コントローラ30から入力されたゲート信号で指示される時刻において、データ信号で指示される輝度値で指示される輝度で発光する。
【0027】
入力インタフェース40には、表示パネル12とは別個の外部機器からデータ信号が入力され、入力されたデータ信号をコントローラ30に出力する。入力インタフェース40は、外部機器と有線または無線で各種の信号を入出力できるように接続する。入力インタフェース40には、例えば、DisplayPort(登録商標)、Miracast(登録商標)など、いずれの規格に規定された伝送方式が採用されてもよい。
【0028】
次に、本実施形態に係る画素回路の例について説明する。
図3は、本実施形態に係る画素回路50を例示する回路図である。
図3の例では、発光素子58が有機発光ダイオード(OLED:Organic Light-Emitting Diode)素子である。表示パネル12(
図1)は、発光素子58ごとに画素回路50を備える。画素回路50は、コントローラ30(
図1)から入力されるゲート信号とデータ信号に基づいて発光素子58を発光させる。データ信号により発光素子58ごとの輝度値が指示される。ゲート信号により画素ごとに発光の要否が指示される。
【0029】
画素回路50は、信号書込用トランジスタ52と、容量素子54と、発光素子駆動用トランジスタ56と、発光素子58とを備える。
信号書込用トランジスタ52は、ゲート信号で指示される時刻において、データ信号で指示される輝度値に対応する電力を発光素子駆動用トランジスタ56に供給させる。信号書込用トランジスタ52は、例えば、薄膜トランジスタである。信号書込用トランジスタ52のソース電極、ゲート電極には、それぞれデータ信号、ゲート信号が入力される。データ信号は、輝度値に対応する信号電圧Vsigを有する多値の電気信号である。ゲート信号は、高電圧と低電圧のいずれかを有する2値の電気信号である。電圧が高電圧か低電圧かにより、発光の要否が指示される。信号書込用トランジスタ52は、ゲート信号に印加される電圧が高電圧であるとき、ソース電極に入力されるデータ信号をドレイン電極に導通し、ゲート信号に印加される電圧が低電圧であるとき、ソース電極に入力されるデータ信号を遮断する。
【0030】
容量素子54は、電気容量Csを有し、一端が電源に接続され、他端が信号書込用トランジスタ52のドレイン電極ならびに発光素子駆動用トランジスタ56のゲート電極に接続される。容量素子54は、例えば、画素回路内の層間絶縁膜で形成される。容量素子54の他端には、信号電圧Vsigが印加される。そのため、電源電圧Vccと信号電圧Vsigとの電位差Vcc-Vsigが保持される。
【0031】
発光素子駆動用トランジスタ56は、そのソース電極に電源が接続され、そのゲート電極に信号書込用トランジスタのドレイン電極が接続され、そのドレイン電極に発光素子58が接続される。発光素子駆動用トランジスタ56は、例えば、薄膜トランジスタである。発光素子駆動用トランジスタ56は、ゲート電極に信号書込用トランジスタ52から信号電圧Vsigが印加されるとき、電位差Vcc-Vsigに対応する電流Ielを発光素子に供給する。よって、データ信号で指示される輝度値が発光素子に供給される電流Ielに変換される。
【0032】
発光素子58は、その一端、他端にそれぞれ陽極、陰極を備える。発光素子58は、一端から他端に流れる電流に応じた輝度で発光する(電流駆動)。発光素子58の陽極には、発光素子駆動用トランジスタ56のドレイン電極が接続される。発光素子58の陰極は接地されている。発光素子58は、発光素子駆動用トランジスタ56からの電流Ielで供給される電力を消費する。よって、発光素子58は、データ信号で指示される輝度値に対応する輝度で発光する。
【0033】
次に、本実施形態に係る発光素子駆動用トランジスタ56の構成例について説明する。
図4は、本実施形態に係る発光素子駆動用トランジスタ56の構成例を示す斜視図である。発光素子駆動用トランジスタ56は、ガラス基板56b、ソース領域56s、LDD(
Light Doped Drain)領域56o1、チャネル領域56c、LDD領域56o2、ドレイン領域56d、ゲート絶縁膜56m、および、ゲート電極56gを備える。ソース領域56s、LDD領域56o1、チャネル領域56c、LDD領域56o2、および、ドレイン領域56dは、ガラス基板56bの表面に同じ厚みで形成されている。ソース領域56s、LDD領域56o1、チャネル領域56c、LDD領域56o2、および、ドレイン領域56dは、それぞれ一辺の長さが他辺の長さよりも長い直方体の形状を有し、それらの幅方向にその順に配列されている。
【0034】
以下の説明では、ソース領域56s、LDD領域56o1、チャネル領域56c、LDD領域56o2、および、ドレイン領域56d、それぞれの長手方向をx方向と呼び、それらが配列されている方向をy方向と呼び、それらがガラス基板56b上に積み重なる方向をz方向と呼ぶ。また、y方向の逆方向を、逆y方向と呼ぶ。なお、発光素子駆動用トランジスタ56は、さらにソース電極とドレイン電極を有する。ソース電極とドレイン電極は、それぞれソース領域56sとドレイン領域56dに接続されている(図示せず)。
【0035】
ガラス基板56bの表面にはポリシリコン膜が形成されている。ソース領域56sおよびドレイン領域56dは、それぞれポリシリコン膜に対して不純物を高濃度にドープした領域である。LDD領域56o1および56o2は、それぞれポリシリコン膜に対して不純物を低濃度にドープした領域である。チャネル領域56cは、不純物をドープしていないポリシリコン膜の領域である。
【0036】
ゲート電極56gは、チャネル領域56cの表面においてゲート絶縁膜56mを挟んでz方向に積み重ねて設置される。ゲート絶縁膜56mは、ソース領域56s、LDD領域56o1、チャネル領域56c、LDD領域56o2、および、ドレイン領域56dの表面の全体を覆う。LDD領域56o1、56o2を設けることで、ソース/ドレイン端の電界集中を緩和し、TFTのホットキャリア劣化を防止するとともにオフ電流を低減させる。但し、LDD領域56o1、56o2は、必須ではなく省略されてもよい。
【0037】
かかる構成のもとでは、ゲート電極56gに印加される信号電圧V
sigが一定の値を超えるとソース電極からドレイン電極に導通し始める。信号電圧V
sigが高くなるほど、ソース電極からドレイン電極への伝導性が高くなる。
図8の例では、ソース電極とドレイン電極の間の電位差が一定値である電源電圧V
ccに設定される場合、信号電圧V
sigが0VからV
cc-V
thまでは、発光素子58には電流I
elが流れない。V
thは、発光素子駆動用トランジスタ56の閾値電圧を示す。電源電圧V
ccは、閾値電圧V
thよりも高くなるように予め設定しておく。信号電圧V
sigがV
cc-V
thを超え、かつ、信号電圧V
sigが高くなるほど、発光素子58には電流I
elが多くなる。
【0038】
具体的には、電流Ielは、式(1)に示すように電源電圧Vccから信号電圧Vsigおよび閾値電圧Vthの差分(Vcc-Vsig)-Vthの二乗に比例する。式(1)において、μは、発光素子駆動用トランジスタ56の移動度、COXは、ゲート絶縁膜56mの単位容量、Lは、ゲート電極56gの長さ、および、Wは、ゲート電極56gの幅を示す。長さLは、電流Ielの方向であるy方向への発光素子駆動用トランジスタ56の素子サイズに相当する。幅Wは、電流Ielの方向に直交するx方向への発光素子駆動用トランジスタ56の素子サイズに相当する。電流Ielは、長さLに反比例し、幅Wに比例する。
【0039】
【0040】
次に、本実施形態に係る画素の分布例について説明する。
図5は、本実施形態に係る画素の第1分布例を示す説明図である。
図5は、第1分布例として、第1領域RAから遷移領域SAを経て標準領域NAに分布する画素pxを左右方向に例示する。個々の画素pxには、3個の発光素子sr、sg、sbを含んで構成される。発光素子sr、sg、sbは、それぞれ赤色、緑色、青色の光を発光する。第1分布例では、遷移領域SAにおいて第1領域RAから離れた位置の画素ほど、その画素に備わる発光素子が大きくなるように配置される。第1領域RAにおける画素pxの発光素子sr、sg、sbの大きさは、それぞれ第2領域PAにおける画素pxの発光素子sr、sg、sbの大きさよりも有意に小さい。遷移領域SAでは、個々の画素pxにおける発光素子sr、sg、sbの大きさは、第1領域RAから位置が離れた画素ほど大きくなる。
【0041】
よって、第1分布例では、発光素子sr、sg、sbの大きさに基づいて第1領域RAから離れた位置ほど発光素子の占有率が高くなるように画素が配置される。但し、第1分布例では、第1領域RA、遷移領域SA、および、標準領域NAのいずれに配置されるかに関わらず、画素の密度は一定である。画素を一定間隔で規則的に配置させておくことで、コントローラ30は、個々の画素の発光素子を発光させる時刻を簡便に定めることができる。
【0042】
図6は、本実施形態に係る画素の第2分布例を示す説明図である。
図6は、第2分布例として、第1領域RAから遷移領域SAを経て標準領域NAに分布する画素pxを左右方向に例示する。第2分布例では、遷移領域SAにおいて第1領域RAから離れた位置ほど、密度が高くなるように個々の画素が配置される。第1領域RAにおける画素の密度は、第2領域PAにおける画素の密度よりも有意に小さい。
【0043】
よって、第2分布例では、画素の密度に基づいて第1領域RAから離れた位置ほど発光素子の占有率が高くなるように画素が配置される。第2分布例では、第1領域RA、遷移領域SA、および、標準領域NAのいずれに配置されるかに関わらず、個々の画素に備わる発光素子sr、sg、sbの大きさは一定である。そのため、表示パネル12の生産段階において、発光素子の大きさが異なる画素を予め準備することも、個々の画素の配置を発光素子の大きさに基づいて定めることも要しない。
【0044】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。以下の説明では、上記の実施形態との差異点を主とし、特に断らない限り、上記の実施形態と共通の事項については、共通の符号を付して、その説明を援用する。
【0045】
図7は、本実施形態に係る表示装置10の構成例を示す正面図である。
表示パネル12の表面には、第1領域RAと第2領域PAが設けられている。第1領域RAにおける発光素子の占有率は第1占有率であり、第2領域PAにおける発光素子の占有率は第2占有率である。但し、第2領域PAは標準領域NAを有し、遷移領域SAを有しない。第1領域RAでの発光素子の占有率は、第2領域PAでの発光素子の占有率よりも有意に低い。従って、第1領域RAと第2領域PAとの境界を跨いで、発光素子の占有率が急激に変化する。
【0046】
本実施形態では、第1領域RAに配置された画素の発光素子に対する発光素子駆動用トランジスタ56は、当該発光素子に対し、ある一定の輝度値について第2領域PAに配置された画素の発光素子58に供給される電流よりも多くの電流を供給する。一定の輝度値のもとでは、第1領域RAに配置された画素の発光素子58は、第2領域PAに配置された画素の発光素子58よりも高い輝度で発光する。そのため、第1領域RAと第2領域PAとの発光素子58の占有率の差により生ずる輝度差が低減または解消される。例えば、ある輝度値に対し、第1領域RAにおける発光素子58の占有率と輝度の積が、第2領域PAにおける発光素子58の占有率と輝度の積が等しくなるように、個々の発光素子駆動用トランジスタ56から対応する発光素子58に供給する電流を供給できるように発光素子駆動用トランジスタ56のパラメータが設定されればよい。
【0047】
式(1)に示すように、発光素子58を流れる電流I
elは、一定の信号電圧V
sigかのもとで、発光素子駆動用トランジスタ56のパラメータとして、移動度μ、単位容量C
OX、幅Wおよび長さLに依存する。これらのパラメータのうち、幅Wと長さLは比較的容易に調整することができる。幅Wと長さLは、発光素子駆動用トランジスタ56の素子サイズを特徴づける。
図8の例では、幅WをW
0から2W
0と2倍に拡大することで、電流I
elを2倍に増加することができる。また、長さLを短縮することでも、電流I
elを増加することもできる。
【0048】
本実施形態では、例えば、アスペクト比W/Lが異なる発光素子駆動用トランジスタ56が、第1領域RAに配置された画素の発光素子と、第2領域PAに配置された画素の発光素子との間で使い分けられてもよい。ここで、第1領域RAでのアスペクト比W/Lが、第2領域PAでのアスペクト比W/Lよりも大きくなるように設定しておく。
【0049】
本実施形態でも、発光素子の占有率は、個々の画素における発光素子の大きさと画素の密度のいずれを用いて設定されてもよい。即ち、第1領域RAにおける画素ごとの発光素子の大きさは、第2領域PAにおける画素ごとの発光素子の大きさよりも小さくてもよい。第1領域RAにおける画素の密度は、第2領域PAにおける画素の密度よりも低くてもよい。
【0050】
<変形例>
次に、上記の実施形態の変形例について説明する。各実施形態の特徴は組み合わされてもよいし、一部が省略または変形されてもよい。例えば、第2の実施形態に係る表示パネル12の第2領域PAにおいて、第1の実施形態と同様に遷移領域SAが設けられてもよい。遷移領域SAにおいて、第1領域RAの外周からの距離が大きい位置ほど発光素子の占有率が高くなるように画素が配置されるとともに、その画素の発光素子に対して供給される電流が少なくなるように個々の発光素子に対する発光素子駆動用トランジスタのパラメータを設定させておく。そして、第1領域RAでの発光素子の占有率は、標準領域NAでの発光素子の占有率よりも有意に低く、かつ、第1領域RAでの発光素子に対して供給される電流が、標準領域NAでの発光素子に対して供給される電流よりも有意に多くなるように個々の発光素子に対する発光素子駆動用トランジスタのパラメータを設定させておく。ここで、ある輝度値に対し、第1領域RAと第2領域PAの全領域において、発光素子58の占有率と輝度の積が等しくなるように、個々の発光素子に対する発光素子駆動用トランジスタ56のパラメータが設定されてもよい。
【0051】
上記の実施形態において、表示装置10は、撮像部の例としてカメラ20に代え、撮像素子を備えてもよい。撮像素子は、第1領域RAの裏面に配置され、第1領域RAを透過した光に現れる画像を撮像する。撮像素子は、撮像した画像を示すデータ信号を生成し、生成したデータ信号を外部機器に出力する。
撮像部は、生成した撮像画像信号を外部機器に代えて、コントローラ30に出力してもよい。コントローラ30は、撮像部から入力される撮像画像信号をデータ信号として表示パネル12に出力し、撮像された画像を表示させてもよい。
【0052】
表示パネル12の基板として、例えば、ポリカーボネートフィルムなどの柔軟な材料が用いられてもよい。ベゼル14を省略することで、表示パネル12は、折り曲げが可能となる。また、ベゼル14の省略は、表示パネル12または表示装置10の小型化または軽量化にも寄与する。
上記の説明では、個々の画素が3個の発光素子を用いる場合を主としたが、これには限られない。個々の画素の発光素子の数は、1個、2個、または、4個以上であってもよい。例えば、個々の画素は、輝度を表現し、色度を表現しないモノクロの画素であってもよい。その場合には、個々の画素の発光素子の数は、1個で足りる。
【0053】
また、表示装置10は、情報処理装置の一部として設置されてもよい。情報処理装置は、表示装置10の他、制御部を備える。制御部は、例えば、演算処理装置を備える。演算処理装置は、例えば、CPUである。制御部は、自部が取得したデータ信号を表示装置10に出力し、データ信号に基づく画像を表示パネル12に表示させてもよい。制御部は、そのデータ信号を生成することも、外部機器から取得することもある。制御部は、撮像部に画像を撮像させ、撮像した画像を示す撮像画像信号を取得してもよい。制御部は、ユーザの操作に応じて入力デバイスから入力される操作信号に応じて撮像部に画像を撮像させてもよい。制御部は、所定のプログラムに記述される指令を実行して、表示パネル12への画像の表示、撮像部に対する画像の撮像、表示または撮像対象の画像の生成、受信、読み出し、などの処理を制御してもよい。情報処理装置は、パーソナルコンピュータ、多機能携帯電話機(いわゆる、スマートフォンを含む)、タブレット端末装置、などのいずれの形態で実現されてもよい。
【0054】
以上に説明したように、上記の実施形態に係る表示パネル12は、基板と複数の画素(例えば、画素px)を備え、画素ごとに1個以上の発光素子(例えば、発光素子sr、sg、sb)を備える。複数の画素は、基板の表面の異なる位置に配置される。基板の表面の一部である第1領域RAにおいて、第1領域RAの周囲の領域である第2領域PAよりも発光素子の占有率が低く、かつ、第2領域PAにおいて、第1領域RAから離れた位置ほど発光素子の占有率が高くなるように画素が配置される。
一般に、一定の面積当たりの輝度のもとで、発光素子の占有率が高いほど画面の輝度が高くなる。この構成によれば、第1領域RAから離れた位置ほど画面の輝度が高くなるので、第1領域RAと第2領域PAとの境界における輝度の急激な変化が緩和される。そのため、輝度の変化による画質の低下が緩和または解消することができる。
【0055】
また、第2領域PAにおいて、第1領域RAから離れた位置ほど発光素子が大きくてもよい。この構成により、第1領域RAと第2領域PAで画素の密度が共通であっても、第1領域RAから離れた位置ほど画面の輝度を高くすることができる。画素を一定間隔で配置させておくことで、画素ごとの発光タイミングをその画素の位置に応じて容易に定めることができる。
【0056】
また、第2領域PAにおいて、第1領域RAから離れた位置ほど画素の密度が高くてもよい。
この構成により、第1領域RAと第2領域PAで発光素子の大きさが共通であっても、第1領域RAから離れた位置ほど画面の輝度を高くすることができる。そのため、発光素子の大きさが異なる画素を用いずに済む。
【0057】
上記の実施形態に係る表示パネル12は、基板と複数の画素を備え、画素ごとに1個以上の発光素子と発光素子に電流を供給する駆動素子を備る。複数の画素は記基板の表面の異なる位置に配置される。基板の表面の一部である第1領域RAには、第1領域RAの周囲の領域である第2領域PAよりも発光素子の占有率が低くなるように画素が配置される。また、第1領域RAに配置された画素の発光素子に対する駆動素子(例えば、発光素子駆動用トランジスタ56)は、第2領域PAに配置された画素の発光素子よりも多くの電流を供給する。
一般に発光素子は、自器を流れる電流が大きいほど高い輝度で発光する。この構成により、一定の輝度値のもとで、第1領域RAに配置された画素の発光素子は、第2領域PAに配置された画素の発光素子よりも高い輝度で発光する。そのため、第1領域RAにおける発光素子の密度が、第2領域PAにおける発光素子の密度が低くても、第1領域RAにおける輝度の低下が緩和または解消される。
【0058】
また、第1領域RAに配置された画素の発光素子に対する駆動素子の長さLに対する幅Wのアスペクト比W/Lが、第2領域PAに配置された画素の発光素子に対する駆動素子のアスペクト比W/Lよりも大きくてもよい。
この構成により、一定の輝度値に対応する信号電圧Vsigに対して、第1領域RAに配置された画素の発光素子に対して、第2領域PAに配置された画素の発光素子よりも多くの電流を流すことができる。第1領域RAに配置された画素の発光素子を、第2領域PAに配置された画素の発光素子よりも高い輝度で発光させるができるため、第1領域RAにおける発光素子の密度が、第2領域PAにおける発光素子の密度が低くても、第1領域RAにおける輝度の低下が緩和または解消される。
【0059】
上記の発光素子は、有機発光ダイオード(OLED)であってもよい。
自器を流れる電流に応じて広範な輝度を実現し、高いコントラストで画像を表現することができる。発光のためにバックライトを要しないため、薄く、かつ、柔軟に構成することができる。
【0060】
上記の表示パネル12は、第1領域RAの裏面に、さらに撮像部(例えば、カメラ20)を備え、表示装置10として構成されてもよい。
また、情報処理装置(図示せず、例えば、PC、スマートフォン、タブレット端末装置など)は、表示装置10を備え、画素ごとの輝度値を示すデータ信号を表示パネル12に出力する制御部(例えば、CPU)を備えてもよい。制御部は、カメラ20に対して撮影の要否を制御することができる。
【0061】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0062】
10…表示装置、12…表示パネル、14…ベゼル、20…カメラ、30…コントローラ、40…入力インタフェース、50…画素回路、58(sr、sg、sb)…発光素子、RA…第1領域、PA…第2領域、SA…遷移領域、NA…標準領域、px…画素