(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181817
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】表面状態判定装置、表面状態判定方法、及び表面状態判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/57 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
G01N21/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095167
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】椛島 治樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 雄貴
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059FF01
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】 測定対象物に照射光を照射する際の照射の位置の設定が容易であり、表面状態の異常の有無を非接触で容易に判定する装置を提供する。
【解決手段】 表面状態判定装置は、測定対象物の表面に照射光を照射する複数の光源を備える光源部と、測定対象物により反射される複数の反射光を撮像する撮像部と、複数の反射光画像を含む画像情報を撮像部から取得する処理部と、を備える表面状態判定装置であって、処理部は、複数の反射光画像のそれぞれの大きさを測定する測定部と、反射光画像の大きさを相互に比較して比較情報を生成する比較部と、比較情報に基づいて測定対象物の表面に生じた表面状態の異常の有無を判定する判定部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の表面に照射光を照射する複数の光源を備える光源部と、
前記測定対象物により反射される複数の反射光を撮像する撮像部と、
前記複数の反射光画像を含む画像情報を前記撮像部から取得する処理部と、
を備える表面状態判定装置であって、
前記処理部は、
前記複数の反射光画像のそれぞれの大きさを測定する測定部と、
前記反射光画像の大きさを相互に比較して比較情報を生成する比較部と、
前記比較情報に基づいて前記測定対象物の表面に生じた表面状態の異常の有無を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする表面状態判定装置。
【請求項2】
前記反射光画像の大きさは、前記反射光画像の面積、前記反射光画像の縦幅寸法、または前記反射光画像の横幅寸法であることを特徴とする請求項1に記載の表面状態判定装置。
【請求項3】
前記比較情報は、前記画像情報に含まれる複数の前記反射光画像の全て若しくは一部の当該反射光画像の前記面積における最大値、最小値、若しくは平均値であり、
前記反射光画像の面積は、前記反射光画像を輝度値の閾値を用いて白黒2値に変換した後の白及び黒のピクセルに上下又は左右の両側が隣接するピクセルを前記反射光画像の輪郭とした場合において、当該輪郭に内包されるピクセルの総数に基づいて算出されることを特徴とする請求項2に記載の表面状態判定装置。
【請求項4】
前記比較情報は、前記画像情報に含まれる複数の前記反射光画像の全て若しくは一部の当該反射光画像の前記縦幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値であり、
前記反射光画像の縦幅寸法は、前記反射光画像を輝度値の閾値を用いて白黒2値に変換した後の白及び黒のピクセルに上下又は左右の両側が隣接するピクセルを前記反射光画像の輪郭とした場合において、前記輪郭の縦軸における最大値と最小値との差に基づいて算出されることを特徴とする請求項2に記載の表面状態判定装置。
【請求項5】
前記比較情報は、前記画像情報に含まれる複数の前記反射光画像の全て若しくは一部の当該反射光画像の前記横幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値であり、
前記反射光画像の横幅寸法は、前記反射光画像を輝度値の閾値を用いて白黒2値に変換した後の白及び黒のピクセルに上下又は左右の両側が隣接するピクセルを前記反射光画像の輪郭とした場合において、前記輪郭の横軸における最大値と最小値との差に基づいて算出されることを特徴とする請求項2に記載の表面状態判定装置。
【請求項6】
前記光源部において、前記複数の光源の個々の光源は格子状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の表面状態判定装置。
【請求項7】
前記光源部を前記測定対象物の形状に合わせて移動させる光源移動部を備え、
前記処理部は前記光源移動部の移動を制御する移動制御部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の表面状態判定装置。
【請求項8】
前記複数の光源はLEDであることを特徴とする請求項1に記載の表面状態判定装置。
【請求項9】
前記光源部は前記光源の前記照射光を集光する集光レンズを備えることを特徴とする請求項1に記載の表面状態判定装置。
【請求項10】
測定対象物の表面に照射光を照射する複数の光源を備える光源部と、
前記測定対象物により反射される複数の反射光を撮像する撮像部と、
前記複数の反射光画像を含む画像情報を前記撮像部から取得する処理部と、
を備える表面状態判定装置における表面状態判定方法であって、
前記処理部が、
前記複数の反射光画像のそれぞれの大きさを測定する測定ステップと、
前記反射光画像の大きさを相互に比較して比較情報を生成する比較ステップと、
前記比較情報に基づいて前記測定対象物の表面に生じた表面状態の異常の有無を判定する判定ステップと、
を実施することを特徴とする表面状態判定方法。
【請求項11】
測定対象物の表面に照射光を照射する複数の光源を備える光源部と、
前記測定対象物により反射される複数の反射光を撮像する撮像部と、
前記複数の反射光画像を含む画像情報を前記撮像部から取得する処理部と、
を備える表面状態判定装置によって実行される表面状態判定プログラムであって、
前記処理部に、
前記複数の反射光画像のそれぞれの大きさを測定する測定機能と、
前記反射光画像の大きさを相互に比較して比較情報を生成する比較機能と、
前記比較情報に基づいて前記測定対象物の表面に生じた表面状態の異常の有無を判定する判定機能と、
を実現させることを特徴とする表面状態判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の表面状態の異常の有無を判定する表面状態判定装置、表面状態判定方法、及び表面状態判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から金属表面の光沢等は装飾に用いられてきた。例えば、車両の窓枠に取り付けられるSUSモールと呼ばれるステンレス鋼製の外装部材である。SUSモールは、成形の行程において曲げ加工が多く、表面に金属表面荒れが生じ白化と呼ばれる不具合が生じる虞がある。SUSモールの表面状態の品質判定は、現状、人による目視によって行われており、目視する人によって品質判定の結果に差がでないように品質判定の判定基準について目視する人同士の間で調整する必要があり、多くの工数を必要とする場合があった。
【0003】
そこで本件の発明者らは、特許文献1に開示の技術をSUSモールの表面状態の品質判定に利用することを試みた。特許文献1に開示の技術では、光周波数コムを測定対象物に照射し、当該測定対象物の表面からの反射光を撮像することで、表面構造の大きさ、深さ、形状を非接触で正確に測定できるとしている。
【0004】
しかし、特許文献1に開示の技術では、測定対象物が曲面である場合などには照射光を当てる位置の微小なズレによってその反射光が、当該曲面の位置に影響されるために、測定結果が大きく変化するなどの不具合が生じ、照射光を対象物に照射する際の照射の位置の設定が困難で、測定対象物の表面状態の品質判定を正しく行うことができない虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、測定対象物に照射光を照射する際の照射の位置の設定が容易であり、表面状態の異常の有無を非接触で容易に判定することができる表面状態判定装置、表面状態判定方法、及び表面状態判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、第1の態様に係る表面状態判定装置は、測定対象物の表面に照射光を照射する複数の光源を備える光源部と、測定対象物により反射される複数の反射光を撮像する撮像部と、複数の反射光画像を含む画像情報を撮像部から取得する処理部と、を備える表面状態判定装置であって、処理部は、複数の反射光画像のそれぞれの大きさを測定する測定部と、反射光画像の大きさを相互に比較して比較情報を生成する比較部と、比較情報に基づいて測定対象物の表面に生じた表面状態の異常の有無を判定する判定部と、を備える。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る表面状態判定装置において、反射光画像の大きさは、反射光画像の面積、反射光画像の縦幅寸法、または反射光画像の横幅寸法であることとしてもよい。
【0009】
第3の態様は、第2の態様に係る表面状態判定装置において、比較情報は、画像情報に含まれる複数の反射光画像の全て若しくは一部の当該反射光画像の面積における最大値、最小値、若しくは平均値であり、反射光画像の面積は、反射光画像を輝度値の閾値を用いて白黒2値に変換した後の白及び黒のピクセルに上下又は左右の両側が隣接するピクセルを反射光画像の輪郭とした場合において、当該輪郭に内包されるピクセルの総数に基づいて算出されることとしてもよい。
【0010】
第4の態様は、第2の態様に係る表面状態判定装置において、比較情報は、画像情報に含まれる複数の反射光画像の全て若しくは一部の当該反射光画像の縦幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値であり、反射光画像の縦幅寸法は、反射光画像を輝度値の閾値を用いて白黒2値に変換した後の白及び黒のピクセルに上下又は左右の両側が隣接するピクセルを反射光画像の輪郭とした場合において、輪郭の縦軸における最大値と最小値との差に基づいて算出されることとしてもよい。
【0011】
第5の態様は、第2の態様に係る表面状態判定装置において、比較情報は、画像情報に含まれる複数の反射光画像の全て若しくは一部の当該反射光画像の横幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値であり、反射光画像の横幅寸法は、反射光画像を輝度値の閾値を用いて白黒2値に変換した後の白及び黒のピクセルに上下又は左右の両側が隣接するピクセルを反射光画像の輪郭とした場合において、輪郭の横軸における最大値と最小値との差に基づいて算出されることとしてもよい。
【0012】
第6の態様は、第1の態様に係る表面状態判定装置において、光源部において、複数の光源の個々の光源は格子状に配置されていることとしてもよい。
【0013】
第7の態様は、第1の態様に係る表面状態判定装置において、光源部を測定対象物の形状に合わせて移動させる光源移動部を備え、処理部は光源移動部の移動を制御する移動制御部を備えることとしてもよい。
【0014】
第8の態様は、第1の態様に係る表面状態判定装置において、複数の光源はLEDであることとしてもよい。
【0015】
第9の態様は、第1の態様に係る表面状態判定装置において、光源部は光源の照射光を集光する集光レンズを備えることとしてもよい。
【0016】
第10の態様に係る表面状態判定方法は、測定対象物の表面に照射光を照射する複数の光源を備える光源部と、測定対象物により反射される複数の反射光を撮像する撮像部と、複数の反射光画像を含む画像情報を撮像部から取得する処理部と、を備える表面状態判定装置における表面状態判定方法であって、処理部が、複数の反射光画像のそれぞれの大きさを測定する測定ステップと、反射光画像の大きさを相互に比較して比較情報を生成する比較ステップと、比較情報に基づいて測定対象物の表面に生じた表面状態の異常の有無を判定する判定ステップと、を実施する。
【0017】
第11の態様に係る表面状態判定プログラムは、測定対象物の表面に照射光を照射する複数の光源を備える光源部と、測定対象物により反射される複数の反射光を撮像する撮像部と、複数の反射光画像を含む画像情報を撮像部から取得する処理部と、を備える表面状態判定装置によって実行される表面状態判定プログラムであって、処理部に、複数の反射光画像のそれぞれの大きさを測定する測定機能と、反射光画像の大きさを相互に比較して比較情報を生成する比較機能と、比較情報に基づいて測定対象物の表面に生じた表面状態の異常の有無を判定する判定機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0018】
本開示に係る表面状態判定装置等は、測定対象物の表面に照射光を照射する複数の光源を備える光源部と、測定対象物により反射される複数の反射光を撮像する撮像部と、複数の反射光画像を含む画像情報を撮像部から取得する処理部と、を備える表面状態判定装置であって、処理部は、複数の反射光画像のそれぞれの大きさを測定する測定部と、反射光画像の大きさを相互に比較して比較情報を生成する比較部と、比較情報に基づいて測定対象物の表面に生じた表面状態の異常の有無を判定する判定部と、を備えるので、測定対象物が曲面である場合でも表面状態の異常の有無を非接触で容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る表面状態判定装置が用いる原理について説明するための図である。
【
図2】本実施形態に係る表面状態判定装置が用いる原理について説明するための図である。
【
図3】本実施形態に係る表面状態判定装置の構成の概要を示した図である。
【
図4】本実施形態に係る表面状態判定装置の構成を機能ブロックによって示した図である。
【
図6】本実施形態に係る反射光画像(白黒2値)について説明するための図である。
【
図7】本実施形態に係る表面状態判定装置に係る第1の実証実験を説明するための図である。
【
図8】本実施形態に係る表面状態判定装置に係る第2の実証実験を説明するための図である。
【
図9】本実施形態に係る表面状態判定装置に係る第2の実証実験を説明するための図である。
【
図10】本実施形態に係る表面状態判定装置に係る第2の実証実験を説明するための図である。
【
図11】本実施形態に係る表面状態判定装置に係る第3の実証実験を説明するための図である。
【
図12】本実施形態に係る表面状態判定プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(表面状態判定装置の構成について)
図1乃至
図5を参照して本実施形態に係る表面状態判定装置10の構成について説明する。表面状態判定装置10の測定の対象となる測定対象物14は、ステンレス鋼製などの金属製の外装部材であり、構造物などの装飾に用いられ、金属表面に特有の光沢などの質感を構造物の表面に与える。外装部材の金属としては、ステンレス鋼の他に、金、銀、銅、アルミニウムなども含まれる。
【0021】
本実施形態では、測定対象物14の例として自動車のガラス窓の周囲に設けられるSUSモールを採用する。SUSモールは、ガラス窓を保護するとともにガラス窓に生じる隙間を埋める機能を有し、装飾の機能も求められる。
【0022】
表面状態判定装置10は、
図1に示す様に、測定対象物14の表面に光源16aの照射光18を照射し、後述の撮像部17を用いて照射光18の測定対象物14からの反射光25(
図2参照)を撮像する。表面状態判定装置10は、反射光25の画像を分析することで測定対象物14の表面状態の白化などの異常の有無を判定する。
【0023】
表面状態判定装置10は測定対象物14の表面状態の異常の有無の判定に用いる原理について
図2を参照して説明する。
照射光18が測定対象物14の表面(反射面)に当たり反射される。当該反射には概ね2種類あり、正反射と拡散反射とがある。照射光18の反射面における反射光25は正反射の特性と拡散反射の特性との両方を含む。正反射は反射光の指向角の拡がりが抑制されて殆ど拡がらない特性を持ち、拡散反射は反射光の指向角に拡がりを有する特性を持つ。
【0024】
反射面の状態によって、反射光25に含まれる正反射の特性と拡散反射の特性との割合が異なることが分かっている。鏡の様な光沢及び艶のある反射面の反射光25は正反射の特性の割合が拡散反射の特性に対して大きく、指向角の広がりは抑制される(
図2(a)参照)。測定対象物14の表面(反射面)が粗いもの、又は、光沢及び艶のない反射面の反射光25は拡散反射の特性の割合が正反射の特性に対して大きく、指向角に広がりを有する(
図2(b)参照)。
【0025】
表面状態判定装置10は、反射光画像26の大きさと反射面の状態との相関関係を明らかにして、反射光画像26を分析することで測定対象物14の表面(反射面)状態の異常の有無を判定するものである。反射光画像26とは、測定対象物14の表面(反射面)に写る反射光25を後述の撮像部17で撮像して得た像のことである。
【0026】
表面状態判定装置10は、いわゆる情報処理装置であり、例えばパーソナルコンピュータ(以下、PCと言う)、ノート型PC、タブレット型PCなどの汎用品を用いることができ、また、表面状態判定の機能に特化した情報処理装置の専用品としてもよい。表面状態判定装置10は、
図3に示す様に、入力装置としてのキーボード11、マウス13を備え、出力装置としてのディスプレイ12を備える。
【0027】
表面状態判定装置10は、
図3に示す様に、有線若しくは無線によるデータ通信により光源移動部15、光源部16、及び撮像部17と接続されている。光源移動部15の先端部15aには、光源部16及び撮像部17が取り付けられている。
光源移動部15は、光源部16を測定対象物14の形状に合わせて移動させる。
【0028】
光源移動部15は、アーム型ロボットであり、先端部15aを測定対象物14の形状に沿って移動させることで、先端部15aに取り付けられた光源部16の照射光18を測定対象物14の表面状態の判定の対象となる領域の全域にわたって照射する。光源部16とともに先端部15aに取り付けられた撮像部17は、照射光18の測定対象物14からの反射光25を撮像する。光源移動部15は、処理部20に構成される後述の移動制御部30によって制御される。
【0029】
表面状態判定装置10は、
図4に示す様に、処理部20、Read Only Memory(ROM)21、Random Access Memory(RAM)22、記憶部23、入出力インターフェース24等を備えて構成されている。また、処理部20、ROM21、RAM22、記憶部23、入出力インターフェース24等は、バス19によって相互に接続され、データの双方向の伝送を可能にしている。
【0030】
処理部20は、Central Processing Unit(CPU)などで構成され、後述の表面状態判定プログラムを実行することで、内蔵する構成部位の機能を制御し、構成部位のそれぞれの機能を実現させる。
【0031】
ROM21及び記憶部23は、記憶装置として利用でき、表面状態判定プログラム、及び表面状態判定プログラムを利用するための各種データ並びにアプリケーションなどが記憶される。
【0032】
表面状態判定装置10は、表面状態判定プログラムをROM21若しくは記憶部23に保存し、RAM22などで構成されるメインメモリに表面状態判定プログラムを取り込む。そして、処理部20は、表面状態判定プログラムを取り込んだメインメモリにアクセスして、表面状態判定プログラムを実行する。
【0033】
表面状態判定装置10は、入出力インターフェース24を介してキーボード11、ディスプレイ12、マウス13、光源移動部15、光源部16、撮像部17などに接続される。
【0034】
光源移動部15は、本実施形態ではアーム型ロボットを採用するがこれに限定されるものではなく、パラレルリンクロボット、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボット(スカラロボット)、及び直交ロボットを含む各種産業用ロボットを用いてもよい。
【0035】
光源部16は、測定対象物14の表面に照射光18を照射する複数の光源16aを備える。
図5も参照して光源部16について説明する。
図5は本実施形態に係る光源部16の拡大図である。光源部16は、例えば、光源16aとなるLEDを6行×7列の格子状に計42個搭載したLEDモジュールである。本実施形態の光源部16の外形寸法は縦30mm横40mmである。光源16aは、チップLEDと呼ばれる表面実装型LEDであり、白色光1個で全光束20ルーメンの明るさである。
【0036】
光源16aは、それぞれに図示しない集光レンズを備える。集光レンズは、光源16aの照射光18を集光する。照射光18は、集光レンズを通過することで照射光18の指向角の広がりを抑制することができ、反射光25の輪郭を明確にすることができる。
【0037】
撮像部17は、測定対象物14により反射される複数の反射光25を撮像する。
本実施形態では、撮像部17はラズベリーパイ(登録商標)カメラモジュールを採用した。撮像部17は、測定対象物14に向けられて、測定対象物14の表面における照射光18の照射部分を撮像することで反射光25の画像を取得する。
【0038】
処理部20は、複数の反射光画像26を含む画像情報を撮像部17から取得する。
反射光画像26とは、測定対象物14の表面に写る反射光25を撮像部17で撮像して得た像のことである。
画像情報とは、撮像部17が撮像する度に得る画像データのことであり、当該画像データの中に測定対象物14の表面及び当該表面に写る複数の反射光画像26が含まれる。
【0039】
表面状態判定装置10は、表面状態判定プログラムを実行することで、移動制御部30、測定部31、比較部32、判定部33などを処理部20に備える。
【0040】
移動制御部30は、光源移動部15の移動を制御する。
移動制御部30は、光源移動部15の先端部15aに取り付けられた光源部16の照射光18が表面状態の測定対象となる全ての範囲に照射されるように光源移動部15の移動を制御する。
【0041】
測定部31は、複数の反射光画像26のそれぞれの大きさを測定する。
反射光画像26の大きさは、反射光画像26の面積、反射光画像26の縦幅寸法、または反射光画像26の横幅寸法である。
測定部31は、反射光画像26の面積、縦幅寸法、または横幅寸法を反射光画像26の大きさとして用いる。
【0042】
比較部32は、反射光画像26の大きさを相互に比較して比較情報を生成する。
比較部32は、複数の反射光の画像のそれぞれの面積、縦幅寸法、または横幅寸法を相互に比較して比較情報を生成する。
【0043】
比較情報は、画像情報に含まれる複数の反射光画像26の全て若しくは一部の反射光画像26の面積における最大値、最小値、若しくは平均値であり、反射光画像26の面積は、反射光画像26を輝度値の閾値を用いて白黒2値に変換した後の白及び黒のピクセルに上下又は左右の両側が隣接するピクセルを反射光画像27の輪郭とした場合において、当該輪郭に内包されるピクセルの総数に基づいて算出される。
【0044】
或いは、比較情報は、画像情報に含まれる複数の反射光画像26の全て若しくは一部の当該反射光画像26の縦幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値であり、反射光画像26の縦幅寸法は、反射光画像26を輝度値の閾値を用いて白黒2値に変換した後の白及び黒のピクセルに上下又は左右の両側が隣接するピクセルを反射光画像27の輪郭とした場合において、輪郭の縦軸における最大値と最小値との差に基づいて算出される。
【0045】
或いは、比較情報は、画像情報に含まれる複数の反射光画像26の全て若しくは一部の当該反射光画像26の横幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値であり、反射光画像26の横幅寸法は、反射光画像26を輝度値の閾値を用いて白黒2値に変換した後の白及び黒のピクセルに上下又は左右の両側が隣接するピクセルを反射光画像27の輪郭とした場合において、輪郭の横軸における最大値と最小値との差に基づいて算出される。
【0046】
従って、反射光画像26の大きさを当該反射光画像27の面積を用いて表す場合、比較情報とは、画像情報に含まれる複数の反射光画像26の全て若しくは一部の反射光画像26の面積における最大値、最小値、若しくは平均値のことである。
【0047】
或いは、反射光画像26の大きさを当該反射光画像27の縦幅寸法を用いて表す場合、比較情報とは、画像情報に含まれる複数の反射光画像26の全て若しくは一部の反射光画像26の縦幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値のことである。
【0048】
或いは、反射光画像26の大きさを当該反射光画像27の横幅寸法を用いて表す場合、比較情報とは、画像情報に含まれる複数の反射光画像26の全て若しくは一部の反射光画像27の横幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値のことである。
【0049】
図6を参照して実施形態に係る反射光画像(白黒2値)27について説明する。
図6は本実施形態に係る反射光画像(白黒2値)27について説明するための図である。本実施形態では、撮像部17によって取得された画像情報はカラー画像であり、当該カラー画像を8ビットのグレースケール画像に変換した後、さらに白黒2値の画像(
図6参照)に変換する。8ビットのグレースケール画像は輝度値0が黒、輝度値255が白となる。
【0050】
本実施形態に係るグレースケール画像は、輝度値の閾値を用いて白黒2値の画像に変換される。例えば、輝度値の閾値を200とした場合、グレースケール画像において、輝度値0から輝度値199のピクセルは黒のピクセル(
図6の符号27a)に変換され、輝度値200から輝度値255のピクセルは白のピクセル(
図6の符号27b)に変換される。
【0051】
反射光画像(白黒2値)27は、白(
図6の符号27b)及び黒(
図6の符号27a)のピクセルに上下又は左右の両側が隣接するピクセル(
図6の符号27cのハッチング部分)を輪郭とする。
【0052】
本実施形態における反射光画像27の面積は、輪郭27cに内包されるピクセルの総数に基づいて算出され、単位をピクセルで表す。
【0053】
また、本実施形態における反射光画像27の縦幅寸法は、輪郭27cの縦軸における最大値と最小値との差に基づいて算出され、単位をピクセルで表す。
【0054】
また、本実施形態における反射光画像27の横幅寸法は、輪郭27cの横軸における最大値と最小値との差に基づいて算出され、単位をピクセルで表す。
【0055】
反射光画像26の大きさが反射光画像27の面積とした場合、比較情報は、画像情報に含まれる複数の反射光画像27の全ての当該反射光画像27の面積における最大値、最小値、若しくは平均値とすることができる。
【0056】
また、反射光画像26の大きさが反射光画像27の面積とした場合、比較情報は、画像情報に含まれる複数の反射光画像27の一部の当該反射光画像27の面積における最大値、最小値、若しくは平均値とすることができる。例えば、反射光画像27の一部とは、画像情報に含まれる複数の反射光画像27のうち所定の列又は行にある複数の反射光画像27の面積における最大値、最小値、若しくは平均値とすることができる。
【0057】
反射光画像26の大きさが反射光画像27の縦幅寸法とした場合、比較情報は、画像情報に含まれる複数の反射光画像27の全ての当該反射光画像27の縦幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値とすることができる。
【0058】
また、反射光画像26の大きさが反射光画像27の縦幅寸法とした場合、比較情報は、画像情報に含まれる複数の反射光画像27の一部の当該反射光画像27の縦幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値とすることができる。例えば、反射光画像27の一部とは、画像情報に含まれる複数の反射光画像27のうち所定の列又は行にある複数の反射光画像27の縦幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値とすることができる。
【0059】
反射光画像26の大きさが反射光画像27の横幅寸法とした場合、比較情報は、画像情報に含まれる複数の反射光画像27の全ての当該反射光画像27の横幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値とすることができる。
【0060】
また、反射光画像26の大きさが反射光画像27の横幅寸法とした場合、比較情報は、画像情報に含まれる複数の反射光画像27の一部の当該反射光画像27の横幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値とすることができる。例えば、反射光画像27の一部とは、画像情報に含まれる複数の反射光画像27のうち所定の列又は行にある複数の反射光画像27の横幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値とすることができる。
【0061】
判定部33は、比較情報に基づいて測定対象物14の表面に生じた表面状態の異常の有無を判定する。
判定部33は、測定対象物14の所定数の良品、即ち異常の無い表面状態に基づいて表面状態の異常の有無の判定に用いる閾値を導き出し、当該比較情報と当該閾値とを比較して、測定対象物14の表面状態の異常の有無を判定する。
【0062】
比較情報が画像情報に含まれる複数の反射光画像27の全て若しくは一部の当該反射光画像27の面積における最大値、最小値、若しくは平均値である場合は、この比較情報に対応する上記閾値を測定対象物14の所定数の良品の反射光画像27の面積から導き出す。
【0063】
また、比較情報が画像情報に含まれる複数の反射光画像27の全て若しくは一部の当該反射光画像27の縦幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値である場合は、この比較情報に対応する上記閾値を測定対象物14の所定数の良品の反射光画像27の縦幅寸法から導き出す。
【0064】
また、比較情報が画像情報に含まれる複数の反射光画像27の全て若しくは一部の当該反射光画像27の横幅寸法における最大値、最小値、若しくは平均値である場合は、この比較情報に対応する上記閾値を測定対象物14の所定数の良品の反射光画像27の横幅寸法から導き出す。
【0065】
図7乃至
図11を参照して表面状態判定装置10に係る実証実験について説明する。
図7は本実施形態の表面状態判定装置10に係る第1の実証実験を説明するための図であり、
図8乃至
図10は本実施形態の表面状態判定装置10に係る第2の実証実験を説明するための図であり、
図11は本実施形態の表面状態判定装置10に係る第3の実証実験を説明するための図である。
【0066】
図7を参照して表面状態判定装置10に係る第1の実証実験について説明する。
第1の実証実験では、粗さの異なる反射面の反射光25の反射光画像(白黒2値)27及び反射面の光沢度を比較した。
図7上段は反射面の粗さの違いを示し、
図7中段は反射光画像(白黒2値)27の反射光形状(拡散光の範囲)の違いを示し、
図7下段は反射面の光沢度の違いを棒グラフに示した。
【0067】
反射面の粗さについては、粗さの手番の異なるヤスリ(サンドペーパー)を用いて鏡面を加工することで差異を施した。
【0068】
図7上段において、(a)はヤスリによる加工を施していない鏡面のままの反射面とし、(b)は手番#5000のヤスリを用いて鏡面を加工した反射面を用い、(c)は手番#2000のヤスリを用いて鏡面を加工した反射面を用い、(d)は手番#1000のヤスリを用いて鏡面を加工した反射面を用いた。
【0069】
図7中段の画像情報の中に示されている白の破線で描かれた円は反射光画像(白黒2値)27の輪郭を示し、当該輪郭の縦幅寸法を拡散光の範囲29として示している。
図7の(e)から(h)に行くに従って、
図7中段から拡散光の範囲29となる反射光画像(白黒2値)27の縦幅寸法が大きくなることが分かり、更に反射面の光沢度が低くなることが分かる(
図7の(i)から(l)参照)。従って、
図7より、反射面の光沢度が低くなるにつれて反射光画像(白黒2値)27の縦幅寸法が大きくなり、反射面の光沢度と反射光画像(白黒2値)27の縦幅寸法との間に相関関係があることが示された。
【0070】
次に
図8乃至
図10を参照して表面状態判定装置10に係る第2の実証実験について説明する。
第2の実証実験では、既に白化判定が行われ判定結果を得ているSUSモールを測定対象物14に使用して、白化判定の2種類の不良品と1種類の良品とを比較した。
【0071】
図8は、測定対象物14における反射光25の(a)測定位置1、(b)測定位置2、及び(c)測定位置3を示し、測定位置1は測定対象物14の左端部分、測定位置2は中央部分、測定位置3は右端部分である。
図8上段に白化判定の第1の不良品であるTP1(×)を表示し、
図8中段に白化判定の第2の不良品であるTP2(×)を表示し、
図8下段に白化判定の良品であるTP3(○)を表示した。
【0072】
図9は、TP1~3のそれぞれの測定位置1~3における反射光画像(白黒2値)27を示した。
図9の(a)に測定位置1の反射光画像(白黒2値)を示し、(b)に測定位置2の反射光画像(白黒2値)を示し、(c)に測定位置3の反射光画像(白黒2値)を示した。
図10は、
図9に示した反射光画像(白黒2値)27の面積を棒グラフにして示した。
図10の(a)に測定位置1の反射光画像(白黒2値)の面積を示し、(b)に測定位置2の反射光画像(白黒2値)の面積を示し、(c)に測定位置3の反射光画像(白黒2値)の面積を示した。
【0073】
図10から分かるように、2種類の不良品(TP1及びTP2)の反射光画像(白黒2値)27の面積は、測定位置1~3の何れにおいても良品(TP3)の反射光画像(白黒2値)27の面積より大きい。従って、白化判定において、不良品の反射光画像(白黒2値)27の面積は良品の反射光画像(白黒2値)27の面積より大きくなることが分かり、反射面の白化の有無と反射光画像(白黒2値)27の面積との間に相関関係があることが示された。
【0074】
次に
図11を参照して表面状態判定装置10に係る第3の実証実験について説明する。
図11は、本実施形態に係る光源部16が搭載する42個の光源16aの照射光18の反射光25を撮像した反射光画像26であり、
図11(a)は白化判定の良品の反射光画像26を表示し、
図11(b)は白化判定の不良品の反射光画像26を表示する。
【0075】
図11から分かるように、反射光画像26の縦幅寸法及び面積は、良品より不良品の方が大きいことが分かり、反射面の白化の有無と反射光画像26の縦幅寸法及び面積との間に相関関係があることが示された。
【0076】
上記した第1から第3の実証実験によれば、反射面の異常(白化)の有無と反射光画像26、27の大きさとの間に相関関係が有ることが確認でき、表面状態判定装置10を用いて反射光画像(白黒2値)27の大きさを分析することで測定対象物の表面状態の異常の有無を判定できることを確認できた。
【0077】
次に
図12を参照して、本実施形態の表面状態判定装置10における表面状態判定方法について、表面状態判定装置10によって実行される表面状態判定プログラムとともに説明する。
図12は本実施形態に係る表面状態判定プログラムのフローチャートである。
【0078】
図12に示す様に、表面状態判定プログラムは、移動制御ステップS30、測定ステップS31、比較ステップS32、及び判定ステップS33などを含む。
表面状態プログラムは、RAM22などで構成されるメインメモリに取り込まれて、当該メインメモリにアクセスする処理部20によって実行される。表面状態判定プログラムは、処理部20に対して、移動制御機能、測定機能、比較機能、及び判定機能など実現させる。
【0079】
これらの機能は
図12に示す順序で処理を行う場合を例示したが、これに限らず、これらの順番を適宜入れ替えて表面状態判定プログラムを実行しても良い。なお、上記した各機能は、前述の表面状態判定装置10の移動制御部30、測定部31、比較部32、及び判定部33の説明と重複するため、その詳細な説明は省略する。
【0080】
移動制御機能は、光源移動部15の移動を制御する。(S30:移動制御ステップ)。
測定機能は、複数の反射光画像のそれぞれの大きさを測定する(S31:測定ステップ)。
【0081】
比較機能は、反射光画像の大きさを相互に比較して比較情報を生成する(S32:比較ステップ)。
【0082】
判定機能は、比較情報に基づいて測定対象物14の表面に生じた表面状態の異常の有無を判定する(S33:判定ステップ)。
【0083】
上記した本実施形態に係る表面状態判定装置10によれば、光源部16及び撮像部17は光源移動部15であるアーム型ロボットの先端部15aに取り付けられるので、測定対象物14の形状に合わせて光源部16及び撮像部17を移動させることができる。
【0084】
また、上記した本実施形態に係る表面状態判定装置10によれば、光源部16に市販品のLEDモジュールを採用し、撮像部17に市販品のカメラモジュールを採用したので、光源部16及び撮像部17の装置構成を容易にすることができる。
【0085】
また、上記した本実施形態に係る表面状態判定装置10によれば、光源部16に集光レンズを備えたので、照射光18が集光レンズを通過することで照射光18の指向角の広がりを抑制することができ、反射光25の輪郭を明確にすることができる。
【0086】
また、上記した本実施形態に係る表面状態判定装置10によれば、光源部16に複数の光源16aを備え、複数の反射光25に基づいて反射面の表面状態を判定する。従って、照射光18を照射する位置の微小なズレによって判定結果が大きく変化することは無いため、測定対象物14に照射光18を照射する際の位置の設定が容易である。
【0087】
また、上記した本実施形態に係る表面状態判定装置10によれば、測定対象物14に照射光18を照射し、その反射光25を分析することで反射面の表面状態を判定するので、測定対象物14に接触すること無く反射面の表面状態を判定することができる。
【0088】
本開示は上記した実施形態に係る表面状態判定装置10、表面状態判定方法、及び表面状態判定プログラムに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、若しくは応用例により実施可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 表面状態判定装置
11 キーボード
12 ディスプレイ
13 マウス
14 測定対象物
15 光源移動部(アーム型ロボット)
15a 先端部
16 光源部
16a 光源(LED)
17 撮像部
18 照射光
19 バス
20 処理部
21 ROM
22 RAM
23 記憶部
24 入出力インターフェース
25 反射光
26 反射光画像
27 反射光画像(白黒2値)
27a 黒
27b 白
27c 輪郭
28 画像情報
29 拡散光の範囲
30 移動制御部
31 測定部
32 比較部
33 判定部