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  • 特開-シート構造およびシート製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181820
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】シート構造およびシート製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20231218BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20231218BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C27/14 C
A47C7/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095170
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田部 剛
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B084JC01
3B087DE09
3B096AA01
3B096AB07
3B096AC11
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】着座センサをシートクッションに容易に着脱できるシート構造を提供する。
【解決手段】シート構造は、その座面12にセンサ用凹部14が形成されたシートクッション10と、前記センサ用凹部14に配置され、人の着座を検知する着座センサ20と、を備え、前記着座センサ20は、サブパッド22と、上側から前記サブパッド22に被さるセンサブラケット24であって、前記シートクッション10と係合する1以上のアンカ部34を有するセンサブラケット24と、前記センサブラケット24に取り付けられ、圧力に応じた電気信号を出力する1以上のセンサ素子26と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面にセンサ用凹部が形成されたシートクッションと、
前記センサ用凹部に配置され、人の着座を検知する着座センサと、
を備え、前記着座センサは、
サブパッドと、
上側から前記サブパッドに被さるセンサブラケットであって、前記シートクッションと係合する1以上のアンカ部を有するセンサブラケットと、
前記センサブラケットに取り付けられ、圧力に応じた電気信号を出力する1以上のセンサ素子と、
を備えることを特徴とするシート構造。
【請求項2】
請求項1に記載のシート構造であって、
前記センサ用凹部の底面には、下方に向かって延びる1以上の組付スリットが形成されており、
前記センサブラケットは、
前記サブパッドの上面に重ねられる主部と、
前記主部の端部から垂れ下がり、前記組付スリットに挿入される複数の脚部であって、それぞれの末端が水平方向外側に突出して前記アンカ部として機能する、複数の脚部と、
を有する、ことを特徴とするシート構造。
【請求項3】
シート製造方法であって、
1以上のセンサ素子が取り付けられたセンサブラケットを、サブパッドの上側に被せて、着座センサを構成するステップと、
前記着座センサの上側にセット治具を被せた状態で、前記セット治具ごと前記着座センサを、シートクッションの座面に形成されたセンサ用凹部に配置した後、前記セット治具のみを上側に持ち上げて離脱させるステップと、
を有し、前記センサ用凹部の底面には、下方に向かって延びる1以上の組付スリットが形成されており、
前記センサブラケットは、
前記サブパッドの上面に重ねられる主部と、
前記主部の端部から垂れ下がり、前記組付スリットに挿入される複数の脚部であって、それぞれの末端が外側に向かって突出した複数の脚部と、
を有し、前記セット治具は、前記主部の上側に重なる上壁と、前記上壁の端部から垂れ下がる複数の垂れ壁と、を有しており、前記着座センサの上側に被せることで前記脚部の外方向への広がりを抑制する、
ことを特徴とするシート製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のシート製造方法であって、
前記サブパッドは、厚みおよび硬度の少なくとも一方が互いに異なる複数種類のサブパッドの候補の中から、要求されるセンサ感度に基づいて択一的に選択される、ことを特徴とするシート製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、人の着座を検知する着座センサが設けられたシートの構造、および、シートの製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シートに、人の着座を検知する着座センサを設けることが提案されている。こうした着座センサは、通常、シートクッションの座面に取り付けられる。
【0003】
特許文献1には、こうしたシートが開示されている。具体的には、特許文献1には、センサ本体に、発泡体からなるサブパッドを接着し、その後、サブパッドを、シートクッションの座面に接着する技術が開示されている。このように、シートクッションとセンサ本体との間に、サブパッドを介在させることで、着座センサを設けた場合でも、適切なクッション性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-157620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、着座センサを、シートクッション10に接着している。そのため、特許文献1の技術では、一度装着したセンサ本体およびサブパッドを、シートクッションから容易に取り外すことができない。その結果、特許文献1の技術では、故障等に起因して着座センサを交換したい場合には、シートクッションごと交換する必要があり、無駄が多かった。また、シートを廃棄する際には、素材ごとに分別する必要があるが、特許文献1では、着座センサとシートクッションとを容易に分離できなかった。
【0006】
そこで、本明細書では、着座センサをシートクッションに容易に着脱できるシート構造、および、シートの製造方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示するシート構造は、座面にセンサ用凹部が形成されたシートクッションと、前記センサ用凹部に配置され、人の着座を検知する着座センサと、を備え、前記着座センサは、サブパッドと、上側から前記サブパッドに被さるセンサブラケットであって、前記シートクッションと係合する1以上のアンカ部を有するセンサブラケットと、前記センサブラケットに取り付けられ、圧力に応じた電気信号を出力する1以上のセンサ素子と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この場合、前記センサ用凹部の底面には、下方に向かって延びる1以上の組付スリットが形成されており、前記センサブラケットは、前記サブパッドの上面に重ねられる主部と、前記主部の端部から垂れ下がり、前記組付スリットに挿入される複数の脚部であって、それぞれの末端が水平方向外側に突出して前記アンカ部として機能する、複数の脚部と、を有してもよい。
【0009】
また、本明細書で開示するシートの製造方法は、1以上のセンサ素子が取り付けられたセンサブラケットを、サブパッドの上側に被せて、着座センサを構成するステップと、前記着座センサの上側にセット治具を被せた状態で、前記セット治具ごと前記着座センサを、シートクッションの座面に形成されたセンサ用凹部に配置した後、前記セット治具のみを上側に持ち上げて離脱させるステップと、を有し、前記センサ用凹部の底面には、下方に向かって延びる1以上の組付スリットが形成されており、前記センサブラケットは、前記サブパッドの上面に重ねられる主部と、前記主部の端部から垂れ下がり、前記組付スリットに挿入される複数の脚部であって、それぞれの末端が外側に向かって突出した複数の脚部と、を有し、前記セット治具は、前記主部の上側に重なる上壁と、前記上壁の端部から垂れ下がる複数の垂れ壁と、を有しており、前記着座センサの上側に被せることで前記脚部の外方向への広がりを抑制する、ことを特徴とする。
【0010】
この場合、前記サブパッドは、厚みおよび硬度の少なくとも一方が互いに異なる複数種類のサブパッドの候補の中から、要求されるセンサ感度に基づいて択一的に選択されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本明細書で開示する記述によれば、着座センサは、シートクッションに接着されることなく、シートクッションに係合している。そのため、着座センサをシートクッションに容易に組み付けることができ、また、一度組み付けた着座センサを、シートクッションを破壊することなく容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】シートクッションおよび着座センサの分解斜視図である。
図2】着座センサ周辺の平面図である。
図3】センサブラケットの斜視図である。
図4図2のA-A断面図である。
図5図2のB-B断面図である。
図6】セット治具の斜視図である。
図7】着座センサの組み付けの様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照してシートの構造について説明する。図1は、シートクッション10および着座センサ20の分解斜視図である。また、図2は、着座センサ20周辺の平面図である。なお、以下の説明における「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」は、いずれも、シートに着座した着座者から見た方向を示している。また、各図面における「Fr」、「Up」、「Rh」は、それぞれ、着座者から見た前方、上方、右側方を示している。
【0014】
本例のシートは、車両に搭載される1人用のシートである。シートは、着座者の臀部を支持するシートクッション10と、着座者の背部を支持するシートバック(図示せず)と、を有する。シートクッション10の座面12には、人の着座の有無を検知する着座センサ20が装着される。シートクッション10の座面12のうち左右方向略中央かつ後端近傍位置には、着座センサ20を収容するためのセンサ用凹部14が形成されている。センサ用凹部14は、平面視で、前後方向に長い略長方形である。センサ用凹部14の底面は、凹凸のない平坦面である。センサ用凹部14の底面には、当該底面の左右両端縁および前端縁に沿って、下方に延びる組付スリット16が形成されている。図1における太線は、この組付スリット16の形成箇所を示している。組付スリット16は、後述するセンサブラケット24を装着するために利用されるが、これについては後述する。センサ用凹部14の後側には、後述する信号ケーブル28を収容するケーブル溝29が延びている。このケーブル溝29の末端は、シートクッション10を上下方向に貫通する貫通孔18に接続されている。
【0015】
着座センサ20は、センサブラケット24と、サブパッド22と、に大別できる。サブパッド22は、適度なクッション性を有する素材、例えば、ウレタンフォーム等の発泡体からなる平板状部材である。このサブパッド22は、その全体がセンサ用凹部14に収まる程度の大きさとなっている。本例では、このサブパッド22の厚みおよび硬度の少なくとも一方を調整することで、着座センサ20のセンサ感度を調整しているが、これについては後述する。
【0016】
センサブラケット24は、サブパッド22の上側に被せられる板金部材である。図3は、センサブラケット24の斜視図である。図3に示す通り、センサブラケット24の上面には、複数(図示例では四つ)のセンサ素子26が取り付けられている。複数のセンサ素子26は、前後方向に間隔を開けて一列に並んでいる。センサ素子26は、圧力を受けた場合に、当該圧力に応じた電気信号を出力する。かかるセンサ素子26は、例えば、ピエゾ素子等の感圧素子を有する。
【0017】
センサブラケット24は、サブパッド22の上に重なる主部30と、主部30の端部から下方に垂れ下がる複数の脚部32と、を有する。本例において、主部30は、前後方向に延びる中心板30aと、当該中心板30aと交差して左右方向に延びる四つの横板30bと、を有しており、全体としては魚の骨のような形状をしている。センサ素子26は、中心板30aの上面に固着されている。なお、ここで挙げた主部30の形状は一例であり、サブパッド22全体をカバーできる大きさであれば、他の形状(例えば、平面視で長方形の平板状等)でもよい。
【0018】
脚部32は、横板30bの端部から延びる複数の横脚部32sと、中心板30aの前端から延びる一つの前脚部32fと、を含む。各脚部32は、主部30の端部から下方に延びている。ただし、脚部32は、外力を受けない無負荷状態では、真下ではなく、下方に進むにつれて水平方向外側に進むような斜め下方向に延びている。換言すれば、無負荷状態において、主部30と脚部32とが成す角度αは、90度より大きい。かかる脚部32は、適度な弾性を有しており、水平方向内向きの力を受けた場合、脚部32は、その根元(すなわち主部30との接続部)を中心として揺動し、主部30と成す角度αを縮める。
【0019】
脚部32の上下方向寸法は、サブパッド22の厚みよりも大きい。そのため、センサブラケット24を、サブパッド22の上に被せた際、脚部32の下部は、サブパッド22の底面より下側に突出する。脚部32の末端は、水平方向外側に向かって略L字状に屈曲している。この屈曲部分は、シートクッション10の一部と係合するアンカ部34として機能する。また、前脚部32fの屈曲部分には、貫通孔18である位置決め孔38が形成されている。この位置決め孔38は、セット治具40の位置決めに利用されるが、これについては後述する。
【0020】
主部30の後端には、フラットケーブルなどの信号ケーブル28が接続されている。かかる信号ケーブル28は、ケーブル溝29に沿って配置された後、最終的には貫通孔18に通され、シートクッション10の下側から引き出される。
【0021】
以上のような着座センサ20は、繰り返し述べる通り、センサ用凹部14に収容される。図4図5は、着座センサ20がセンサ用凹部14に収容された状態を示す断面図であり、図4は、図2のA-A断面図であり、図5は、図2のB-B断面図である。
【0022】
図4図5から明らかな通り、本例によれば、センサ素子26とシートクッション10との間に、サブパッド22が介在する。本例では、このサブパッド22の厚みおよび硬度の少なくとも一方を調整して、着座センサ20のセンサ感度を調整する。
【0023】
すなわち、着座センサ20で求められるセンサ感度は、シートの種類によって異なる。シートごとに異なるセンサ感度に対応するために、センサ素子26そのものを調整することも考えられるが、この場合、多種類のセンサ素子26、ひいては、多種類のセンサブラケット24を用意する必要があり、部品種類数の増加、ひいてはシートの製造コストの増加を招く。そこで、本例では、センサ素子26そのものは変更せず、センサ素子26とシートクッション10との間に介在するサブパッド22の種類を変更して、センサ感度を変更する。具体的には、予め、厚みおよび高度の少なくとも一方が互いに異なる複数種類のサブパッド22(以下「サブパッド候補」と呼ぶ)を用意しておく。そして、作業者は、複数種類のサブパッド候補の中から、求められるセンサ感度に適したサブパッド22を選択し、これをセンサブラケット24と組み合わせる。なお、センサ感度を高めたい場合は、サブパッド22の厚みを大きくする、または、サブパッド22を硬くすればよい。
【0024】
このように、センサブラケット24とシートクッション10の間にサブパッド22配置することで、センサ素子26の種類を増やすことなく、着座センサ20の感度を調整できる。なお、本例の場合、複数種類のサブパッド22を用意する必要があるが、サブパッド22は、センサ素子26に比べて安価に用意できるため、本例によれば、複数種類のセンサ素子26を用意する場合よりも、コストを大幅に低減できる。また、シートの試作の段階では、センサ感度を変更しながら評価する必要がある。本例によれば、サブパッド22を変更することでセンサ感度を変更できる。換言すれば、センサ感度を変更するに当たって、電気的構成を変更する必要がないため、シートの試作の評価に要する手間を軽減できる。結果として、シートの試作に要する手間やコストを軽減できる。また、本例によれば、シートクッション10のクッション材の硬度の違いがセンサ感度に与える影響を、サブパッド22で吸収できる。そのため、シートクッション10を、着座センサ20とは無関係に設計することができ、シートクッション10の設計の自由度が向上する。
【0025】
こうした着座センサ20は、アンカ部34がシートクッション10に食い込むことで、シートクッション10からの離脱が防止されている。すなわち、図4図5に示す通り、センサ用凹部14の底面の隅には、下方に向かって延びる組付スリット16が形成されている。着座センサ20は、サブパッド22の上にセンサブラケット24を被せた状態で、センサ用凹部14に配置される。このとき、センサブラケット24の脚部32の下部は、サブパッド22の底面より下側に突出し、組付スリット16に挿し込まれる。そして、脚部32の末端に設けられたアンカ部34は、組付スリット16の内部において、シートクッション10に食い込み係合される。このアンカ部34の食い込みにより、センサブラケット24、ひいては、サブパッド22のセンサ用凹部14からの離脱が防止される。
【0026】
こうした着座センサ20の組み付け作業を容易にするために、本例では、セット治具40を利用する。図6は、セット治具40の斜視図である。セット治具40は、主部30の上に重なる上壁42と、上壁42の端部から下方に垂れ下がる複数の垂れ壁44と、を有している。垂れ壁44は、上壁42の左右両端から下方に延びる一対の横垂れ壁44sと、上壁42の前端から下方に延びる一つの前垂れ壁44fと、を含む。したがって、セット治具40は、底面と後端面が開口され、上面と左右側面と前端面が壁44s,44fで覆われた板金部材である。
【0027】
上壁42は、センサブラケット24の主部30とほぼ同じか僅かに大きいサイズを有している。垂れ壁44は、上壁42の端部から真下に延びており、各垂れ壁44と上壁42とが成す角度はほぼ90度である。この垂れ壁44は、センサブラケット24の脚部32とほぼ同じ高さを有している。また、垂れ壁44は、脚部32よりも高剛性であり、垂れ壁44と接触しても変形することなく、その姿勢を維持する。そのため、セット治具40を、センサブラケット24の上に被せた際、垂れ壁44は真下に向かう姿勢を維持し、脚部32は、垂れ壁44によって姿勢が矯正される。具体的には、脚部32は、垂れ壁44に沿うように、その末端(すなわちアンカ部34)が水平方向内側に移動する。
【0028】
前垂れ壁44fの下端中央には、下方に向かって突出した位置決め突起46がある。この位置決め突起46は、セット治具40を着座センサ20の上に被せた際、前脚部32fの位置決め孔38に挿し込まれる部位である。位置決め突起46が位置決め孔38に挿し込まれることで、セット治具40の着座センサ20に対する位置が規定される。
【0029】
着座センサ20をシートクッション10に組み付ける際、作業者は、まず、複数種類のサブパッド候補の中から、要求されるセンサ感度に適したサブパッド22を選択する。続いて、作業者は、選択されたサブパッド22の上にセンサブラケット24を被せる。このとき、センサブラケット24は、サブパッド22と重ねられるだけでもよいし、接着剤や両面テープなどを用いてサブパッド22に仮接着されてもよい。センサブラケット24をサブパッド22に仮接着した場合、組み付け作業の際、両者22,24が、意に反して分離することが防止されるため、組み付け作業が容易になる。また、両者22,24を容易に分離できる程度の弱い力で仮接着することで、着座センサ20の廃棄時における分別作業、すなわちセンサブラケット24とサブパッド22との分離作業が容易となる。
【0030】
サブパッド22とセンサブラケット24を組み合わせて着座センサ20を構成できれば、続いて作業者は、着座センサ20の上に、セット治具40を被せる。セット治具40を被せる過程で、セット治具40の垂れ壁44は、センサブラケット24の脚部32に当接し、当該脚部32を水平方向内側に押圧する。この押圧を受けて、脚部32は、その末端が水平方向内側に向かうように揺動する。そして、最終的には、脚部32は、垂れ壁44と同様、真下方向に伸びる姿勢に矯正される。
【0031】
この状態になれば、作業者は、セット治具40ごと着座センサ20を、センサ用凹部14に配置する。このとき、脚部32および垂れ壁44を、組付スリット16に射し込む。図7は、この組み付け作業の様子を示す断面図である。図7に示す通り、脚部32は、垂れ壁44により、水平方向外側への広がりが抑えられた状態で、組付スリット16に挿し込まれる。そして、最終的に、サブパッド22が、センサ用凹部14の底面に接地すれば、作業者は、セット治具40のみを持ち上げ、セット治具40をセンサ用凹部14から離脱させる。
【0032】
セット治具40が離脱すると、脚部32は、弾性復元力により、その末端(アンカ部34)が水平方向外側に向かうように揺動する。この揺動により、脚部32のアンカ部34が、シートクッション10を構成するクッション材に食い込み、係合する。そして、これにより、着座センサ20の組み付けが完了となる。着座センサ20を組み付けた後、シートクッション10は、布や皮革からなるシートカバー(図示せず)で覆われる。
【0033】
以上の説明で明らかな通り、本例では、着座センサ20をシートクッション10に係合させる一方で、着座センサ20をシートクッション10に接着させない。そのため、本例によれば、一度組み付けた着座センサ20を、シートクッション10を破壊することなく、シートクッション10から離脱させることができる。そして、これにより、着座センサ20の交換に要する費用を低減でき、また、廃棄時における分別作業を簡易化できる。
【0034】
例えば、着座センサ20が故障し、着座センサ20の交換が必要な場合を考える。着座センサ20がシートクッション10に接着されている場合、シートクッション10を破壊することなく着座センサ20のみを取り出すことができない。そのため、この場合には、シートクッション10ごと着座センサ20を交換する必要があり、着座センサ20の交換に要する費用が非常に高くなる。
【0035】
一方、本例のように着座センサ20をシートクッション10に接着しない構成の場合、シートクッション10を破壊することなく、着座センサ20を取り出すことができる。具体的には、着座センサ20を取り外したい場合、作業者は、シートクッション10に組み付けられた着座センサ20の上から、セット治具40を被せる。セット治具40が被せられることで、脚部32の広がりが抑制され、アンカ部34のシートクッション10への食い込みが緩和される。この状態になれば、作業者は、セット治具40ごとセンサブラケット24を上方に持ち上げる。このとき、アンカ部34の食い込みは緩和されているため、シートクッション10に大きな負荷を掛けることなく、センサブラケット24を上方に持ち上げることができる。そして、結果としてシートクッション10を破壊することなく、着座センサ20のみを取り出すことができ、着座センサ20の交換に要する費用を大幅に低減できる。また、本例では、着座センサ20をシートクッション10に接着していないため、シートクッション10を廃棄する際、シートクッション10と着座センサ20を容易に分離でき、分別作業を簡易化できる。
【0036】
なお、こうしたシートの構造は、一例であり、着座センサ20が、センサブラケット24とサブパッド22を有し、センサブラケット24が、シートクッション10に係合するアンカ部34を有するのであれば、その他の構成は変更されてもよい。例えば、本例では、サブパッド22を、一枚のパッド部材で構成しているが、サブパッド22は、2以上のパッド部材を積層して構成されてもよい。また、センサブラケット24の形状も適宜変更されてもよい。例えば、脚部32の数や形状は、変更されてもよい。また、本例では、脚部32の末端を屈曲させてアンカ部34を形成しているが、アンカ部34は、シートクッション10に係合できるのであれば、他の形状でもよい。例えば、アンカ部34は、脚部32の末端において、水平方向外側に突出した逆三角形状の突起でもよい。また、サブパッド22およびセンサブラケット24の上面は、着座者の臀部の形状に合わせて、緩やかに湾曲する曲面でもよい。また、本例では1人用の車載シートを例に挙げて説明したが、本明細書で開示した技術は、他の種類のシート、例えば、複数人が同時に着座できるベンチシート等に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 シートクッション、12 座面、14 センサ用凹部、16 組付スリット、18 貫通孔、20 着座センサ、22 サブパッド、24 センサブラケット、26 センサ素子、28 信号ケーブル、29 ケーブル溝、30 主部、30a 中心板、30b 横板、32 脚部、34 アンカ部、38 位置決め孔、40 セット治具、42 上壁、44 垂れ壁、46 位置決め突起。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7