(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181825
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】糸加工機
(51)【国際特許分類】
B65H 63/036 20060101AFI20231218BHJP
B65H 49/10 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B65H63/036 Z
B65H49/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095176
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】長井 規浩
【テーマコード(参考)】
3F109
3F115
【Fターム(参考)】
3F109AA05
3F109CA06
3F109CA07
3F109CD01
3F109CD07
3F109CD09
3F115BA03
3F115CA06
3F115CA44
3F115CA46
3F115CB20
3F115CD08
3F115CF12
(57)【要約】
【課題】巻取パッケージに混入する糸接続部分を容易に除去可能とする。
【解決手段】仮撚加工機1の機台制御装置5は、給糸パッケージ切替を示す切替情報が糸検知センサ24によって取得されたと判断したときに以下の処理を行う。機台制御装置5は、給糸パッケージ切替の発生時に形成中の巻取パッケージPw3a(所定巻取パッケージ)への結節部分Kの混入を示す混入情報を記録する混入情報記録処理を巻取装置19に実行させる。情報管理部110は、オートドッファ10(又はカッタ27)を制御して、巻取パッケージPw3aの表層部に結節部分Kを混入させるタイミングで糸Yを切断させることにより、巻取装置19における巻取パッケージPw3aの形成を終了させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸パッケージから解舒された糸を加工して巻取ボビンに巻取可能に構成された糸加工機であって、
前記給糸パッケージとしての第1給糸パッケージと、前記第1給糸パッケージとは別の、前記給糸パッケージとしての第2給糸パッケージと、を保持可能に構成され、且つ、前記第1給糸パッケージに含まれる糸の始端部と前記第2給糸パッケージに含まれる糸の終端部とが接続されることにより糸接続部分が形成されている場合に糸を途切れずに供給可能に構成された給糸パッケージ保持部と、
前記第1給糸パッケージからの糸の解舒が終わり、前記糸接続部分が移動し始めて前記第2給糸パッケージからの糸の解舒が始まる給糸パッケージ切替の発生を示す切替情報を取得可能に構成された情報取得部と、
前記巻取ボビンに糸を巻き取って巻取パッケージを形成可能に構成された巻取装置と、
前記巻取ボビンに巻き取られる前の糸を切断可能に構成された切断部と、
前記巻取パッケージへの前記糸接続部分の混入を示す混入情報を記録する混入情報記録処理を実行可能に構成された記録部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記情報取得部が前記切替情報を取得したと判断したときに、
前記記録部を制御して、前記給糸パッケージ切替の発生時に形成中の前記巻取パッケージである所定巻取パッケージへの前記糸接続部分の混入を示すための前記混入情報記録処理を実行させ、
前記切断部を制御して、前記所定巻取パッケージの表層部に前記糸接続部分を混入させるタイミングで糸を切断させることにより、前記巻取装置における前記所定巻取パッケージの形成を終了させることを特徴とする糸加工機。
【請求項2】
前記記録部は、
前記混入情報を示す目印を前記巻取パッケージに付すマーキング動作を実行可能に構成されたマーキング部を有し、
前記制御部は、
前記情報取得部が前記切替情報を取得したと判断したときに、前記マーキング部を制御して、前記所定巻取パッケージへの前記マーキング動作を行わせることにより、前記混入情報記録処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の糸加工機。
【請求項3】
前記マーキング部は、前記巻取装置を含み、
前記巻取装置は、
前記巻取パッケージの中心軸周りに前記巻取パッケージを回転させることが可能に構成された回転駆動部と、
糸を綾振りするためのトラバースガイドと、前記トラバースガイドを前記巻取パッケージの軸方向に沿って往復駆動可能に構成されたガイド駆動部と、を含むトラバース部と、を有し、
前記制御部は、
前記回転駆動部を制御して前記巻取パッケージを回転させつつ、前記トラバース部を制御して、前記トラバースガイドを前記軸方向における所定の位置に停止させることにより、前記マーキング動作を前記巻取装置に行わせることを特徴とする請求項2に記載の糸加工機。
【請求項4】
前記記録部は、
情報を記憶可能に構成された記憶部を有し、
前記所定巻取パッケージの個体情報と前記混入情報とを関連付けて前記記憶部に記憶させることにより、前記混入情報記録処理を実行することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の糸加工機。
【請求項5】
前記巻取装置において形成終了した前記所定巻取パッケージと、前記巻取ボビンとしての新しい巻取ボビンとを交換可能に構成され、且つ、前記新しい巻取ボビンに糸掛可能に構成されたボビン交換部を備え、
前記制御部は、
前記所定巻取パッケージが形成された後、
前記ボビン交換部を制御して、前記所定巻取パッケージと前記新しい巻取ボビンとを交換させ、且つ、前記新しい巻取ボビンに糸掛けさせ、
前記巻取装置を制御して、前記新しい巻取ボビンに糸を巻き取らせることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の糸加工機。
【請求項6】
前記情報取得部は、
前記第1給糸パッケージ及び前記第2給糸パッケージのうちどちらから糸が解舒されているか検知可能に構成された解舒中パッケージ検知部、を有し、
前記解舒中パッケージ検知部は、前記第1給糸パッケージから糸が解舒されている状態から、前記第2給糸パッケージから糸が解舒されている状態に切り替わったことを示す情報を前記切替情報として取得することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の糸加工機。
【請求項7】
前記情報取得部は、
所定位置に位置している前記糸接続部分を検知可能な糸接続部分検知部、を有し、
前記糸接続部分検知部は、前記糸接続部分が移動し始めたことを示す情報を前記切替情報として取得することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の糸加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、給糸ボビンに糸が巻かれて形成された給糸パッケージ(特許文献1では供給ボビンと記載されている)から解舒された糸を加工して巻取ボビンに巻き取り、巻成体(巻取パッケージ)を形成する装置(糸加工機)が開示されている。糸加工機は、1つの巻取ボビンに対応して2つの給糸パッケージを支持可能に構成されている。このような糸加工機においては、2つの給糸パッケージのうち一方に含まれる糸の終端部と他方に含まれる糸の始端部とが結節されている(接続されている)場合に、上記一方が空になった後に上記他方から糸を途切れずに供給することが可能である。具体的には、上記一方の給糸パッケージからの糸の供給が終了した直後、2本の糸の結節部分(糸接続部分)が引っ張られることにより、上記他方の給糸パッケージから糸が解舒され始める。これにより、糸が途切れることなく供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
糸加工分野では、従来から、生産性の向上及び製品の品質向上等のために様々な改良が図られてきた。本願発明者は、従来にない新たな付加価値を備えた糸加工機を開発すべく、鋭意研究を重ねている。問題の1つとして、ある巻取パッケージに上述した糸接続部分が混入すると、当該巻取パッケージのグレードが低下する。そこで、以下の混入回避処理が対策として考えられる。混入回避処理とは、糸接続部分が巻取パッケージに混入しうるタイミングの情報を何らかの手段で取得し、所定のタイミングで巻取パッケージの形成を終了させることにより、糸接続部分の巻取パッケージへの混入を回避することである。しかし、混入回避処理のタイミングによっては、当該巻取パッケージの次に形成される巻取パッケージの内層部(巻取パッケージに含まれる糸層のうち、径方向において巻取ボビンに近い部分)に糸接続部分が意図せず混入するおそれがある。巻取パッケージの内層部に混入した糸接続部分を除去することは、実質的に不可能である。
【0005】
本発明の目的は、巻取パッケージに混入する糸接続部分を巻取パッケージから容易に除去可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の糸加工機は、給糸パッケージから解舒された糸を加工して巻取ボビンに巻取可能に構成された糸加工機であって、前記給糸パッケージとしての第1給糸パッケージと、前記第1給糸パッケージとは別の、前記給糸パッケージとしての第2給糸パッケージと、を保持可能に構成され、且つ、前記第1給糸パッケージに含まれる糸の始端部と前記第2給糸パッケージに含まれる糸の終端部とが接続されることにより糸接続部分が形成されている場合に糸を途切れずに供給可能に構成された給糸パッケージ保持部と、前記第1給糸パッケージからの糸の解舒が終わり、前記糸接続部分が移動し始めて前記第2給糸パッケージからの糸の解舒が始まる給糸パッケージ切替の発生を示す切替情報を取得可能に構成された情報取得部と、前記巻取ボビンに糸を巻き取って巻取パッケージを形成可能に構成された巻取装置と、前記巻取ボビンに巻き取られる前の糸を切断可能に構成された切断部と、前記巻取パッケージへの前記糸接続部分の混入を示す混入情報を記録する混入情報記録処理を実行可能に構成された記録部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記情報取得部が前記切替情報を取得したと判断したときに、前記記録部を制御して、前記給糸パッケージ切替の発生時に形成中の前記巻取パッケージである所定巻取パッケージへの前記糸接続部分の混入を示すための前記混入情報記録処理を実行させ、前記切断部を制御して、前記所定巻取パッケージの表層部に前記糸接続部分を混入させるタイミングで糸を切断させることにより、前記巻取装置における前記所定巻取パッケージの形成を終了させることを特徴とする。
【0007】
表層部とは、所定巻取パッケージから容易に除去されることが可能な、所定巻取パッケージの径方向において所定巻取パッケージの外周面との距離が短い部分を意味する。本発明では、所定巻取パッケージの表層部に糸接続部分を意図的に混入させることができる。これにより、形成された所定巻取パッケージの表層部に含まれた少しの糸をほどくだけで、表層部に意図的に混入させられた糸接続部分を見つけて抜き取ることができる。また、記録された混入情報を確認することにより、所定巻取パッケージと他の巻取パッケージとを確実に区別できる。したがって、巻取パッケージに混入する糸接続部分を巻取パッケージから容易に除去できる。
【0008】
第2の発明の糸加工機は、前記第1の発明において、前記記録部は、前記混入情報を示す目印を前記巻取パッケージに付すマーキング動作を実行可能に構成されたマーキング部を有し、前記制御部は、前記情報取得部が前記切替情報を取得したと判断したときに、前記マーキング部を制御して、前記所定巻取パッケージへの前記マーキング動作を行わせることにより、前記混入情報記録処理を実行することを特徴とする。
【0009】
本発明では、所定巻取パッケージと、目印が付されていない巻取パッケージとを外観で容易に区別できる。
【0010】
第3の発明の糸加工機は、前記第2の発明において、前記マーキング部は、前記巻取装置を含み、前記巻取装置は、前記巻取パッケージの中心軸周りに前記巻取パッケージを回転させることが可能に構成された回転駆動部と、糸を綾振りするためのトラバースガイドと、前記トラバースガイドを前記巻取パッケージの軸方向に沿って往復駆動可能に構成されたガイド駆動部と、を含むトラバース部と、を有し、前記制御部は、前記回転駆動部を制御して前記巻取パッケージを回転させつつ、前記トラバース部を制御して、前記トラバースガイドを前記軸方向における所定の位置に停止させることにより、前記マーキング動作を前記巻取装置に行わせることを特徴とする。
【0011】
本発明では、所定巻取パッケージに対して、いわゆる棒巻きを施すことができる。したがって、簡易的な手段でマーキング動作を行うことができる。
【0012】
第4の発明の糸加工機は、前記第1~第3のいずれかの発明において、前記記録部は、情報を記憶可能に構成された記憶部を有し、前記所定巻取パッケージの個体情報と前記混入情報とを関連付けて前記記憶部に記憶させることにより、前記混入情報記録処理を実行することを特徴とする。
【0013】
本発明では、記憶部に記憶された情報を確認することにより、所定巻取パッケージを他の巻取パッケージと区別できる。
【0014】
第5の発明の糸加工機は、前記第1~第4のいずれかの発明において、前記巻取装置において形成終了した前記所定巻取パッケージと、前記巻取ボビンとしての新しい巻取ボビンとを交換可能に構成され、且つ、前記新しい巻取ボビンに糸掛可能に構成されたボビン交換部を備え、前記制御部は、前記所定巻取パッケージが形成された後、前記ボビン交換部を制御して、前記所定巻取パッケージと前記新しい巻取ボビンとを交換させ、且つ、前記新しい巻取ボビンに糸掛けさせ、前記巻取装置を制御して、前記新しい巻取ボビンに糸を巻き取らせることを特徴とする。
【0015】
本発明では、切断部によって糸が切断された後も、糸加工機の稼働を停止させることなく、巻取パッケージを連続的に形成できる。
【0016】
第6の発明の糸加工機は、前記第1~第5のいずれかの発明において、前記情報取得部は、前記第1給糸パッケージ及び前記第2給糸パッケージのうちどちらから糸が解舒されているか検知可能に構成された解舒中パッケージ検知部、を有し、前記解舒中パッケージ検知部は、前記第1給糸パッケージから糸が解舒されている状態から、前記第2給糸パッケージから糸が解舒されている状態に切り替わったことを示す情報を前記切替情報として取得することを特徴とする。
【0017】
本発明では、解舒中パッケージ検知部によって給糸パッケージ切替を直接検知できるため、形成終了処理の実行タイミングの精度を高くすることができる。
【0018】
第7の発明の糸加工機は、前記第1~第5のいずれかの発明において、前記情報取得部は、所定位置に位置している前記糸接続部分を検知可能な糸接続部分検知部、を有し、前記糸接続部分検知部は、前記糸接続部分が移動し始めたことを示す情報を前記切替情報として取得することを特徴とする。
【0019】
本発明では、糸接続部分検知部によって糸接続部分の移動を直接検知できるため、形成終了処理の実行タイミングの精度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る仮撚加工機を含む糸加工設備の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】糸の経路に沿って仮撚加工機を展開した模式図である。
【
図4】仮撚加工機の処理モードの選択画面を示す説明図である。
【
図5】(a)~(c)は、従来の処理モードにおける糸量と時刻との関係を示すグラフである。
【
図6】給糸パッケージ切替が発生したときの巻取ボビンの交換手順を示すフローチャートである。
【
図7】(a)~(c)は、結節部混入パッケージ形成用の処理モードにおける糸量と時刻との関係を示すグラフである。
【
図8】(a)は、巻取パッケージを示す模式図であり、(b)は、巻取パッケージのランクに関する情報を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(糸加工設備の概略)
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態に係る仮撚加工機1(後述)を含む糸加工設備100の概略について、
図1のブロック図を参照しつつ説明する。
図1に示すように、糸加工設備100は、複数の仮撚加工機1(本発明の糸加工機)と、管理装置101とを有する。複数の仮撚加工機1は、例えば、所定の機台長手方向(
図2等参照)に沿って配列されている。各仮撚加工機1は、例えばポリエステル、ナイロン(ポリアミド系繊維)等の合成繊維からなる糸Y(
図2等参照)を仮撚加工可能に構成されている。糸Yは、例えば複数のフィラメント(不図示)からなるマルチフィラメント糸である。各仮撚加工機1は、後述するように、給糸部2から供給された糸Yを加工部3によって加工し、巻取部4に装着された巻取ボビンBwに巻き取って巻取パッケージPwを形成するように構成されている。各仮撚加工機1は、各仮撚加工機1に設けられたコンピュータ装置である機台制御装置5によって制御される。
【0022】
管理装置101は、複数の機台制御装置5によって取得された情報を統括的に管理するためのホストコンピュータである。管理装置101は、管理入力部101a(例えばキーボード)と、管理出力部101b(例えばディスプレイ)と、管理記憶部101c(例えばハードディスク)とを有する。管理装置101と複数の機台制御装置5とを合わせたものが、本実施形態の情報管理部110である。
【0023】
(仮撚加工機の全体構成)
次に、仮撚加工機1の全体構成について、
図2及び
図3を参照しつつ説明する。
図2は、仮撚加工機1の側面図である。
図3は、糸Yの経路(糸道)に沿って仮撚加工機1を展開した模式図である。
図2の紙面垂直方向を上述した機台長手方向とし、紙面左右方向を機台幅方向とする。機台長手方向及び機台幅方向の両方と直交する方向を、重力の作用する上下方向(鉛直方向)とする。糸Yが走行する方向を糸走行方向とする。仮撚加工機1は、複数の糸Yを供給するための給糸部2と、給糸部2から供給された複数の糸Yを加工する(仮撚加工する)加工部3と、加工部3によって加工された複数の糸Yを巻取ボビンBwに巻き取る巻取部4と、機台制御装置5(本発明の制御部)と、を備える。
【0024】
給糸部2は、複数の給糸パッケージPsを保持するクリールスタンド6を有し、加工部3に複数の糸Yを供給する。加工部3は、給糸部2から複数の糸Yを解舒して加工するように構成されている。加工部3は、糸走行方向における上流側から順に、第1フィードローラ11、撚止ガイド12、第1加熱装置13、冷却装置14、仮撚装置15、第2フィードローラ16、第2加熱装置17、第3フィードローラ18が配置された構成となっている。加工部3におけるこれらの構成要素は、例えば、後述する複数の錘9(
図3参照)のそれぞれに設けられている。巻取部4は、複数の巻取装置19を有する。各巻取装置19は、加工部3で仮撚加工された糸Yを巻取ボビンBwに巻き取って巻取パッケージPwを形成する。また、巻取部4には、複数の巻取装置19にそれぞれに対応して、形成された巻取パッケージPwと新たな空の巻取ボビンBwとの交換作業を行う複数のオートドッファ10が設けられている。
【0025】
機台制御装置5は、給糸部2、加工部3及び巻取部4の各構成要素を制御可能に構成されている。機台制御装置5は、例えば一般的なコンピュータ装置である。機台制御装置5は、機台入力部5aと、機台出力部5bと、機台記憶部5c(本発明の記憶部)とを有する(
図1参照)。機台入力部5aは、例えば、不図示のタッチパネル及び/又はキーボード等であり、オペレータによって操作されることが可能に構成されている。機台出力部5bは、例えば不図示のディスプレイを有し、情報を出力可能に構成されている。機台記憶部5cは、給糸部2、加工部3及び巻取部4の構成要素を制御するための各種情報を記憶するように構成されている。機台制御装置5は、各種情報に基づき、給糸部2、加工部3及び巻取部4の構成要素を制御する。或いは、機台制御装置5は、給糸部2、加工部3及び巻取部4の各構成要素を制御するための各種制御装置(不図示)を介して、これらの構成要素を間接的に制御しても良い。機台制御装置5には、ホストコンピュータである管理装置101が電気的に接続されている。
【0026】
仮撚加工機1は、機台幅方向に間隔を置いて配置された主機台7及び巻取台8を有する。主機台7及び巻取台8は、機台長手方向に略同じ長さに延びるように設けられている。主機台7及び巻取台8は、機台幅方向において互いに対向するように配置されている。仮撚加工機1は、1組の主機台7及び巻取台8を含む、スパンと呼ばれる単位ユニットを有する。1つのスパンにおいては、機台長手方向に並んだ状態で走行する複数の糸Yに対して、同時に仮撚加工を施すことができるように各装置が配置されている。仮撚加工機1は、このスパンが、主機台7の機台幅方向の中心線Cを対称軸として、紙面左右対称に配置されている(主機台7は、左右のスパンで共通のものとなっている)。また、複数のスパンが、機台長手方向に配列されている。
【0027】
また、1本の糸Yが給糸部2から供給されて巻取部4に到達するまでに通る構成要素のグループは、「錘」と呼ばれる。仮撚加工機1は、巻取装置19の数と同じ数の錘9(
図3参照)を有する。複数の錘9は、大まかに言えば、機台長手方向に沿って並べて配置されている。包含関係として、仮撚加工機1は複数のスパンを有し、各スパンは複数の錘9を有する。仮撚加工機1は、糸Yが掛けられた錘9において、糸Yを仮撚加工可能である。
【0028】
(給糸部)
給糸部2の構成について、
図2及び
図3を参照しつつ説明する。給糸部2のクリールスタンド6は、複数の錘9にそれぞれ対応して設けられた複数の給糸パッケージ保持部20(
図3参照)を有する。複数の給糸パッケージ保持部20の各々は、2つの給糸パッケージPsが着脱されるように構成されている。すなわち、給糸パッケージ保持部20は、2つのパッケージ装着部21を有する。説明の便宜上、2つのパッケージ装着部21の一方を第1装着部22と呼び、他方を第2装着部23と呼ぶ。第1装着部22及び第2装着部23は、それぞれ、1つの給糸パッケージPsが着脱されることが可能に構成されている。パッケージ装着部21への給糸パッケージPsの着脱は、例えばオペレータによって行われる。
【0029】
給糸部2の各給糸パッケージ保持部20は、以下のようにして、糸Yを途切れずに供給可能に構成されている。例えば、
図3に示すように、複数の給糸パッケージPsの任意の1つである給糸パッケージPs1が、第1装着部22に装着されている。また、給糸パッケージPs1とは別の給糸パッケージPs2が、第2装着部23に装着されている。給糸パッケージPs1から糸Yが解舒されている。また、給糸パッケージPs1に含まれる糸Yの終端部と、給糸パッケージPs2に含まれる糸Yの始端部とが結節されている(接続されている)。これにより、2本の糸Yの間に結節部分K(糸接続部分)が形成されている。このような場合、給糸パッケージPs1が空になった後に、給糸パッケージPs2から糸Yを途切れずに供給可能である。具体的には、給糸パッケージPs1からの糸Yの供給が終了して給糸パッケージPs1が空になった直後、結節部分Kが糸走行方向下流側(巻取装置19側)へ引っ張られることにより、給糸パッケージPs2から糸Yが解舒される。つまり、一方のパッケージ装着部21に装着された給糸パッケージPsから糸Yが解舒され終わった後、他方のパッケージ装着部21に装着された次の給糸パッケージPsから糸Yが解舒され始める。以下、説明の便宜上、このような事象を給糸パッケージ切替と呼ぶ。これにより、糸Yが途切れることなく供給される。その後、空になった給糸パッケージPs(給糸ボビンBs)は、例えばオペレータによって新しい給糸パッケージPsと交換される。さらに、給糸パッケージPs2の始端部と、新しい給糸パッケージPsの終端部とが、例えばオペレータによって結節される。このような手順を繰り返すことによって、給糸部2から糸Yを途切れさせずに供給できる。
【0030】
各給糸パッケージ保持部20の糸走行方向下流側には、糸検知センサ24(本発明の解舒中パッケージ検知部及び情報取得部)が配置されている。糸検知センサ24は、第1装着部22及び第2装着部23のうちどちらから糸Yが供給されているか検知可能に構成されている。
図3に示すように、糸検知センサ24は、第1検知部25と、第2検知部26とを有する。第1検知部25は、第1装着部22から糸Yが供給されているか否か検知可能に構成されている。第2検知部26は、第2装着部23から糸Yが供給されているか否か検知可能に構成されている。第1検知部25及び第2検知部26は、例えば、それぞれが糸Yを光学的に検知する光学センサである。糸検知センサ24のより詳細については、例えば特許第5873105号公報を参照されたい。或いは、第1検知部25及び第2検知部26は、例えば、接触式のセンサであっても良い。
【0031】
また、糸走行方向において、各給糸パッケージ保持部20よりも下流側且つ第1フィードローラ11よりも上流側には、走行中の糸Yを切断可能に構成されたカッタ27が設けられている。カッタ27は、機台制御装置5と電気的に接続されている。
【0032】
(加工部)
加工部3の構成について、
図2及び
図3を参照しつつ説明する。以下では、説明の便宜上、加工部3のうち1つの錘9に対応する部分のみ説明する。
【0033】
第1フィードローラ11は、給糸部2に装着された給糸パッケージPsから糸Yを解舒して第1加熱装置13へ送るように構成されている。第1フィードローラ11は、撚止ガイド12の糸走行方向上流側に配置されている。第1フィードローラ11による糸Yの搬送速度は、給糸パッケージPsから糸Yが解舒される解舒速度V(
図3参照)と略等しい。第1フィードローラ11による糸Yの搬送速度の設定値の情報は、例えば機台制御装置5に予め記憶されている。第1フィードローラ11の糸走行方向における上流側には、上述したカッタ27が設けられている。断糸が発生したとき、カッタ27が糸Yを切断することにより、糸Yが第1フィードローラ11等の回転駆動される部材に巻き付くことを防止できる。
【0034】
撚止ガイド12は、仮撚装置15で糸Yに付与された撚りが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側に伝播しないように構成されている。撚止ガイド12は、第1フィードローラ11の糸走行方向下流側、且つ、第1加熱装置13の糸走行方向上流側に配置されている。
【0035】
第1加熱装置13は、第1フィードローラ11から送られてきた糸Yを加熱するように構成されている。第1加熱装置13は、撚止ガイド12の糸走行方向下流側、且つ、冷却装置14の糸走行方向上流側に配置されている。本実施形態においては、説明の簡略化のため、第1加熱装置13は1本の糸Yを加熱するように構成されているものとするが、これには限られない。第1加熱装置13は、複数の糸Yを同時に加熱可能に構成されていても良い。
【0036】
冷却装置14は、第1加熱装置13で加熱された糸Yを冷却するように構成されている。冷却装置14は、第1加熱装置13の糸走行方向下流側、且つ、仮撚装置15の糸走行方向上流側に配置されている。本実施形態においては、説明の簡略化のため、冷却装置14は1本の糸Yを冷却するように構成されているものとするが、これに限られない。冷却装置14は、複数の糸Yを同時に冷却可能に構成されていても良い。
【0037】
仮撚装置15は、糸Yに撚りを付与するように構成されている。仮撚装置15は、例えば、いわゆるディスクフリクション方式の仮撚装置であるが、これには限られない。仮撚装置15は、冷却装置14の糸走行方向下流側、且つ、第2フィードローラ16の糸走行方向上流側に配置されている。
【0038】
第2フィードローラ16は、仮撚装置15で処理された糸Yを第2加熱装置17へ送るように構成されている。第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度は、第1フィードローラ11による糸Yの搬送速度よりも速い。これにより、糸Yは、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸される。第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度の設定値の情報は、例えば機台制御装置5に予め記憶されている。
【0039】
第2加熱装置17は、第2フィードローラ16から送られてきた糸Yを加熱するように構成されている。第2加熱装置17は、鉛直方向に沿って延びている。説明の簡略化のため、第2加熱装置17は1本の糸Yを加熱するように構成されているものとするが、これには限られない。第2加熱装置17は、複数の糸Yを同時に加熱可能に構成されていても良い。
【0040】
第3フィードローラ18は、第2加熱装置17によって加熱された糸Yを巻取装置19へ送るように構成されている。第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度は、第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度よりも遅い。糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩される。第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度の設定値の情報は、例えば機台制御装置5に予め記憶されている。
【0041】
以上のように構成された加工部3では、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸された糸Yが、仮撚装置15によって撚られる。仮撚装置15により形成される撚りは、撚止ガイド12までは伝播するが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側には伝播しない。延伸されつつ撚りが付与された糸Yは、第1加熱装置13で加熱されて熱固定された後、冷却装置14で冷却される。仮撚装置15から下流では糸Yは解撚されるが、上記の熱固定によって各フィラメントが波状に仮撚りされた状態が維持される。さらに、仮撚装置15によって仮撚りが施された糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩されながら、第2加熱装置17で熱処理された後、糸走行方向における下流側へ案内される。最後に、第3フィードローラ18から送られた糸Yは、巻取装置19によって巻取ボビンBwに巻き取られる。これにより、巻取パッケージPwが形成される。
【0042】
(巻取部)
巻取部4の構成について、
図2及び
図3を参照しつつ説明する。巻取部4は、複数の巻取装置19(本発明のマーキング部)と、各巻取装置19に対応して設けられた複数のオートドッファ10(
図2参照。本発明のボビン交換部)とを有する。複数の巻取装置19は、複数の錘9に1つずつ属している(
図3参照)。各巻取装置19は、糸Yを巻取ボビンBwに巻き取るように構成されている。各巻取装置19は、例えば、支点ガイド31と、トラバース装置32(本発明のトラバース部)と、クレードル33と、巻取ローラ34とを有する。支点ガイド31は、糸Yがトラバースされる際の支点となるガイドである。トラバース装置32は、例えば、モータ36(本発明のガイド駆動部)により往復駆動される無端ベルトに取り付けられたトラバースガイド35によって糸Yを綾振りするように構成されている。すなわち、トラバース装置32は、巻取ボビンBwの軸方向(言い換えると、巻取パッケージPwの軸方向)に沿ってトラバースガイド35を往復移動させるように構成されている。クレードル33は、巻取ボビンBw(巻取パッケージPw)を巻取パッケージPwの中心軸周りに回転自在に支持可能に構成されている。巻取ローラ34は、巻取パッケージPwを上記中心軸周りに回転させ、且つ、巻取パッケージPwの表面(外周面)に接圧を付与するように構成されている。巻取ローラ34は、例えば、巻取パッケージPwの表面に接触した状態で、モータ37(本発明の回転駆動部)によって回転駆動される。これにより、巻取パッケージPwが摩擦力により従動回転するとともに、巻取パッケージPwの表面に接圧が付与されて巻取パッケージPwの形状が整えられる。なお、巻取ローラ34が回転駆動される代わりに、巻取パッケージPwが不図示のモータによって直接回転駆動されても良い。
【0043】
オートドッファ10は、巻取パッケージPwを巻取装置19から取り外し、空の巻取ボビンBwを巻取装置19に装着するように構成されている。言い換えれば、オートドッファ10は、巻取部4において、形成終了後の巻取パッケージPwと空の巻取ボビンBwとを交換可能に構成されている。また、オートドッファ10は、巻取パッケージPwの近傍において糸Yを切断可能な不図示のカッタを有する。走行中の糸Yがカッタによって切断されることにより、巻取パッケージPwの形成が終了する。ここで、カッタによる糸切断後にも、糸Yは、巻取ボビンBwに巻き取られるときと略等しい速度で給糸パッケージPsから解舒され、巻取装置19側へ供給され続ける。オートドッファ10は、ある巻取パッケージPwの形成終了後、次の巻取ボビンBwへの糸Yの巻取開始までの間、巻取装置19に供給されてくる走行中の糸Yを吸引捕捉して保持可能な不図示のサクションを有する。次に糸Yが巻き取られる巻取ボビンBwに糸Yが掛けられるまでの間、糸Yのうちサクションによって吸引された部分は吸引除去される。さらに、オートドッファ10は、巻取装置19に装着された空の巻取ボビンBwに糸Yを掛けるように構成されている。オートドッファ10は、本発明の切断部を含む。オートドッファ10は、本発明のボビン交換部に相当する。オートドッファ10の構造等のより詳細については、例えば特開平6-212521号公報を参照されたい。
【0044】
以上のように構成された巻取部4では、上述した第3フィードローラ18から送られた糸Yが各巻取装置19によって巻取ボビンBwに巻き取られ、巻取パッケージPwが形成される(巻取処理)。オートドッファ10のカッタによって糸Yが切断されることにより、巻取ボビンBwへの糸Yの巻取処理が終了する。それとほぼ同時に、巻取装置19へ供給されてくる糸Yがサクションによって吸引保持され、形成された巻取パッケージPwがオートドッファ10によってクレードル33から取り外される。その直後、オートドッファ10によって新しい空の巻取ボビンBwがクレードル33に装着され、新しい巻取ボビンBwに糸Yが掛けられる。これにより、新しい巻取ボビンBwに糸Yを巻き取り始めることが可能である。
【0045】
(残量算出)
また、機台制御装置5は、所定の基準時刻において糸Yが解舒されている給糸パッケージPs(以下、解舒中パッケージ)に含まれる糸Yの残量の算出(以下、残量算出)を実行可能に構成されている。本実施形態では、基準時刻は、残量算出が実行される現在時刻を意味する。機台制御装置5は、後述する初期量情報と、解舒単位量情報と、積算時間情報とを利用して、基準時刻において解舒中パッケージに含まれている糸Yの残量を算出可能に構成されている。以下、説明の便宜上、初期量情報、解舒単位量情報及び積算時間情報をまとめて基本情報とも呼ぶ。
【0046】
初期量情報は、糸Yが解舒され始める前の給糸パッケージPsに含まれる糸Yの初期量(初期重量又は初期長)に関する情報である。初期量情報は、例えば、1つの仮撚加工機1の全ての錘9の全ての給糸パッケージPsに係る共通の情報として、機台制御装置5において予め設定されている。より具体的な情報として、本実施形態では、上述した初期重量WFの情報と、糸Yの繊度(単位長さあたりの重量)の情報が、初期量情報として機台制御装置5に記憶されている。給糸パッケージPsの重量の単位は、例えばkgである。また、糸Yの繊度をFとする。繊度の単位は、例えばdtexである。デシテックスは、10000メートルあたりの糸Yの重量(g)である。
【0047】
解舒単位量情報は、給糸パッケージPsから単位時間あたり解舒される糸Yの量に関する情報である。解舒単位量情報は、例えば、上述した解舒速度Vの情報である。本実施形態では、説明の便宜上、巻取処理中の解舒速度Vが略一定であるものとする。解舒速度の単位は、例えばm/minである。解舒単位量情報は、例えば、1つの仮撚加工機1の全ての錘9における共通の情報として、機台制御装置5において予め設定されている。機台制御装置5は、例えば、第1フィードローラ11の回転数の設定値の情報に基づいて、解舒速度Vの情報を取得する。
【0048】
積算時間情報は、給糸パッケージPsから糸Yが解舒された時間の積算値(積算時間)に関する情報である。説明の便宜上、糸Yが解舒されている給糸パッケージPsに係る積算時間をtinと呼ぶ。積算時間情報は以下のようにして取得される。まず、例えば上述した給糸パッケージPs1(
図3参照)から糸Yが解舒され始めたとき、第1装着部22における糸Yの解舒開始が糸検知センサ24によって検知される。このとき、機台制御装置5は、tinを所定の初期時間にする(リセット処理)。初期時間は、例えばゼロである。その後、機台制御装置5は、給糸パッケージPsから糸Yが解舒されているときに、時間の経過に応じてtinを増加させる(tinを更新する)。また、例えば給糸パッケージPsからの糸Yの解舒が糸切れ等の理由により一時停止された(言い換えると、停止時間が発生した)とき、機台制御装置5は、tinの更新を一時停止させる。このようにして、機台制御装置5は、給糸パッケージPsから糸Yが解舒されたことが糸検知センサ24によって検知された時間(検知時間)のみを、積算時間(tin)として取得する。機台制御装置5は、任意の給糸パッケージPsから糸Yが解舒されているときに、当該給糸パッケージPsに関する積算時間情報を取得できる。
【0049】
また、巻取処理中に、機台制御装置5は、糸検知センサ24による検知結果に基づき、糸Yを供給している給糸パッケージPsが切り替わる給糸パッケージ切替が起こったかどうか判断する。例えば、
図3を参照したとき、給糸パッケージPs1からの糸Yが解舒され終わり(解舒終了)、且つ、給糸パッケージPs2から糸Yが最初に解舒される事象が、給糸パッケージ切替である。糸検知センサ24の状態が、第1検知部25及び第2検知部26の一方によって糸Yを検知している状態から、第1検知部25及び第2検知部26の他方によって糸Yを検知している状態に切り替わったとき、機台制御装置5は、給糸パッケージ切替が起こったと判断する。言い換えると、糸検知センサ24は、給糸パッケージ切替の発生を示す情報(以下、切替情報)を取得する。機台制御装置5は、給糸パッケージ切替が起こったと判断したとき、上述したリセット処理を行い、tinを所定の初期時間にする。
【0050】
以上のようにして、機台制御装置5によって、初期量情報、解舒単位量情報及び積算時間情報が、基本情報として、演算によって生成される(言い換えれば、取得される)。
【0051】
基準時刻において解舒中パッケージに含まれる糸Yの残量をWRとしたとき、機台制御装置5は、基本情報を利用して、以下の数式に基づいて残量算出を行う。なお、数式中の「1000」及び「10000」は、両辺の数値の単位を「kg」に統一するための係数である。
【0052】
WR=WF-(V×F/10000)×tin/1000
【0053】
また、解舒中パッケージに含まれる糸Yの残量の、初期量に対する割合(以下、残量割合)をRとしたとき、機台制御装置5は、以下の数式に基づいて残量割合を算出可能である。機台制御装置5は、残量割合をWRのWFに対するパーセンテージ(残量パーセンテージ)として算出しても良い。
【0054】
R=WR/WF
【0055】
或いは、機台制御装置5は、WRを利用せずに基本情報のみを利用して残量割合を算出しても良い。
【0056】
また、解舒中パッケージから糸Yを供給可能な残時間をtRとしたとき、機台制御装置5は、tRを例えば以下の数式に基づいて推定しても良い。tRの単位は「min」である。
【0057】
tR=WF×1000/(V×F/10000)-tin
【0058】
ここで、糸加工分野では、従来から、生産性の向上及び製品の品質向上等のために様々な改良が図られてきた。本願発明者は、従来にない新たな付加価値を備えた糸加工設備及び糸加工機を開発すべく、鋭意研究を重ねている。問題の1つとして、ある巻取パッケージPwに上述した結節部分Kが混入すると、当該巻取パッケージPwのグレードが低下する。そこで、以下の混入回避処理が対策として考えられる。混入回避処理とは、結節部分Kが巻取パッケージPwに混入しうるタイミングの情報を何らかの手段で取得し、所定のタイミングで巻取パッケージPwの形成を終了させることにより、結節部分Kの巻取パッケージへの混入を回避することである。しかし、混入回避処理のタイミングによっては、当該巻取パッケージPwの次に形成される巻取パッケージPwの内層部(巻取パッケージPwに含まれる糸層のうち、径方向において巻取ボビンBwに近い部分)に結節部分Kが意図せず混入するおそれがある。巻取パッケージPwの内層部に混入した結節部分Kを除去することは、実質的に不可能である。
【0059】
そこで、本実施形態では、巻取パッケージPwに混入する結節部分Kを容易に除去可能とするため、機台制御装置5は、後述のような制御及び情報処理を行う。なお、以下では、特に断らない限り、複数の錘9のうち、1つの所定の錘9に限定して説明を進める。
【0060】
(切替発生時処理のための構成)
機台制御装置5は、給糸パッケージ切替が発生したときの処理(以下、切替発生時処理)の内容を予め設定可能に構成されている。なお、切替発生時処理の詳細については後述する。切替発生時処理のための構成について、
図4を参照しつつ説明する。
図4は、仮撚加工機1の処理モードの選択画面を示す説明図である。説明の便宜上、機台出力部5bとしてディスプレイが設けられ、機台入力部5aとしてディスプレイと重なるように配置されたタッチパネルが設けられているものとする(
図4参照)。しかし、機台入力部5a及び機台出力部5bの構成はこれに限られるものではない。
【0061】
機台制御装置5は、切替発生時処理の複数の選択肢の情報を機台記憶部5cに記憶している。機台制御装置5は、例えば、切替発生時処理の選択肢を機台出力部5bに表示させることが可能に構成されている(
図4の画面S1を参照)。機台制御装置5は、オペレータによる機台入力部5aへの入力に応じて、切替発生時処理の内容を予め設定可能に構成されている。例えば、画面S1の画面上側部分に、選択肢として「無し」、「巻取ボビン交換」及び「糸カット」と表示されている。「無し」は、給糸パッケージ切替が発生しても特別な処理を実行しないことを意味する。「巻取ボビン交換」は、給糸パッケージ切替が発生したときに、後述の手順で巻取ボビンBwの交換を実行することを意味する。「糸カット」は、給糸パッケージ切替が発生したときに、後述の手順でカッタ27によって走行中の糸Yを切断させることを意味する。なお、後述する説明の便宜上、選択肢をこの順番で並べたが、選択肢の順番はこれに限られない。
【0062】
(切替発生時処理が行われない場合)
後の説明を理解するための参考のため、切替発生時処理が行われない場合(上述した「無し」が選択された場合)における各給糸パッケージPsからの糸Yの解舒及び各巻取パッケージPwの形成について、
図5(a)~(c)を参照しつつ説明する。
図5(a)~(c)は、切替発生時処理が行われない従来の処理モードにおける糸量と時刻との関係を示すグラフである。より詳細には、
図5(a)は、第1装着部22に装着された給糸パッケージPs(具体的には給糸パッケージPs1、Ps3)に含まれる糸Yの残量(縦軸)と時刻(横軸)との関係を示すグラフである。
図5(b)は、第2装着部23に装着された給糸パッケージPs(具体的には給糸パッケージPs2)に含まれる糸Yの残量(縦軸)と時刻(横軸)との関係を示すグラフである。
図5(c)は、巻取ボビンBw(具体的には巻取ボビンBw1、Bw2、Bw3、Bw4、Bw5)への糸Yの巻取量(縦軸)と時刻(横軸)との関係を示すグラフである。
図5(a)~(c)のいずれのグラフにおいても、給糸パッケージPs1から糸Yが初めて解舒される時刻t0が原点である。また、本実施形態においては、各給糸パッケージPsから糸Yが一度も解舒されていない状態(すなわち、満巻の状態)における各給糸パッケージPsの重量(初期重量)は、いずれもWFである。
【0063】
まず、時刻t0よりも前に、第1装着部22に満巻の給糸パッケージPs1が装着される。給糸パッケージPs1に含まれる糸Yの初期重量はWFである。また、時刻t0よりも前に、第2装着部23には、同じく満巻の給糸パッケージPs2が装着される。給糸パッケージPs1に含まれる糸Yの終端部と、給糸パッケージPs2に含まれる糸Yの始端部とが結節されており、結節部分Kが形成されている。また、時刻t0において、所定の錘9の各部への糸掛けが開始される。それとともに、時刻t0において、満巻の給糸パッケージPs1から糸Yが解舒され始める。その後、時刻t0の直後の時刻ts1において、巻取装置19に装着された巻取ボビンBw1への糸掛けが完了し、巻取ボビンBw1に糸Yが巻き取られ始める。なお、給糸パッケージPs1から糸Yが解舒され始めてから巻取ボビンBw1への糸掛けが完了するまでの間、オートドッファ10のサクションによって糸Yが吸引捕捉される。本実施形態では、糸掛けが行われているときの糸Yの解舒速度は、巻取ボビンBwに糸Yが巻き取られているときの解舒速度(上述したV)と略等しい。
【0064】
時間が経つにつれて、給糸パッケージPs1に含まれる糸Yの残量(残重量)が減り、巻取ボビンBw1に巻き取られた糸Yの巻取量(巻取重量)が増える。時刻te1において、オートドッファ10のカッタによって糸Yが切断されることにより、巻取ボビンBw1への糸Yの巻取処理が終了する。つまり、時刻te1は、巻取ボビンBw1に糸Yが巻き取られ終わった(巻取パッケージPw1の形成が終了した)巻取終了時刻である。巻取ボビンBw1には、給糸パッケージPs1から供給された糸Yのみが巻き取られている。カッタによる糸Yの切断、サクションによる糸Yの吸引捕捉(すなわち、糸Yの吸引除去の開始)及び巻取ボビンBw1(巻取パッケージPw1)のクレードル33からの取外しが、ほぼ同時に行われる。次に、時刻te1の直後の時刻ts2において、オートドッファ10による巻取ボビンBw2のクレードル33への装着が完了し、巻取ボビンBw2への糸Yの巻取処理が開始される(巻取ボビン交換作業が完了する)。巻取ボビンBw1に係る巻取終了時刻(時刻te1)と、巻取ボビンBw1の次に糸Yが巻き取られる巻取ボビンBw2に係る巻取開始時刻(時刻ts2)との間には、わずかなタイムラグtL(
図5(c)参照)がある。上述したように、糸Yは、巻取ボビンBwの交換が行われているときにも、巻取ボビンBwに巻き取られているときと略等しい速度で給糸パッケージPsから解舒される。さらに、時刻te2において巻取ボビンBw2への糸Yの巻取処理(巻取パッケージPw2の形成)が終了し、時刻ts3において巻取ボビンBw3への糸Yの巻取処理が開始される。
【0065】
時刻ts3よりも後の時刻ta1(
図5(a)参照)において、第1装着部22に装着された給糸パッケージPs1が空になる。つまり、時刻ta1は、給糸パッケージPs1から糸Yが解舒され終わった解舒終了時刻である。給糸パッケージPs1が空になるのと同時に、時刻tb1(=時刻ta1)において、給糸パッケージPs1に含まれる糸Yと給糸パッケージPs2に含まれる糸Yとが結節されて形成された結節部分Kが巻取装置19側へ引っ張られる。これにより、第2装着部23に装着された給糸パッケージPs2から糸Yが解舒され始める。つまり、時刻tb1は、給糸パッケージPs2から最初に糸Yが解舒された(糸Yが解舒され始めた)解舒開始時刻である。その後、時刻te3において巻取ボビンBw3への糸Yの巻取処理(巻取パッケージPw3の形成)が終了する。巻取ボビンBw3には、給糸パッケージPs1から解舒された糸Y及び給糸パッケージPs2から解舒された糸Yの両方が巻き取られている。また、巻取パッケージPw3には、結節部分Kが含まれている。その後、時刻ts4において、巻取ボビンBw4への糸Yの巻取処理が開始される。時刻te4において巻取ボビンBw4への糸Yの巻取処理(巻取パッケージPw4の形成)が終了する。巻取ボビンBw4には、給糸パッケージPs2から解舒された糸Yのみが巻き取られている。
【0066】
また、時刻ta1よりも後、且つ、給糸パッケージPs2が空になる前に(例えば時刻ta2に)、オペレータによって、空の給糸パッケージPs1が第1装着部22から取り外され、新しい満巻の給糸パッケージPs3が第1装着部22に装着される(給糸パッケージ交換作業)。この時の給糸パッケージPs3の残重量はWFである。その後、適切なタイミングで、オペレータによって、給糸パッケージPs2に含まれる糸Yの終端部と、給糸パッケージPs3に含まれる糸Yの始端部とが結節され(接続され)、結節部分K(
図3参照)が形成される。オペレータは、手で結節の作業(接続作業)を行っても良い。或いは、オペレータは、例えば持ち運び可能な不図示の結節装置を操作することによって結節の作業を行っても良い。
【0067】
その後、時刻ts5から時刻te5まで巻取ボビンBw5に糸Yが巻き取られる(巻取パッケージPw5が形成される)。時刻ts5と時刻te5との間の時刻tb2において、第2装着部23に装着された給糸パッケージPs2が空になる。給糸パッケージPs2が空になるのと同時に、時刻ta3(=時刻tb2)において、第1装着部22に装着された給糸パッケージPs3から糸Yが解舒され始める。
【0068】
切替発生時処理が行われない場合には、以上のように各給糸パッケージPsから糸Yが解舒され、各巻取パッケージPwが形成される。
【0069】
(切替発生時の巻取ボビン交換の手順)
次に、切替発生時処理のモードとして「巻取ボビン交換」が選択されているときの巻取ボビンBwの交換の手順について、
図6~
図8(b)を参照しつつ説明する。
図6は、給糸パッケージ切替が発生したときの巻取ボビンBwの交換手順を示すフローチャートである。
図7(a)~(c)は、巻取ボビン交換の処理モードにおける糸量と時刻との関係を示すグラフである。
図7(a)は、
図5(a)と同様、第1装着部22に装着された給糸パッケージPsに含まれる糸Yの残量(縦軸)と時刻(横軸)との関係を示すグラフである。
図7(b)は、
図5(b)と同様、第2装着部23に装着された給糸パッケージPsに含まれる糸Yの残量(縦軸)と時刻(横軸)との関係を示すグラフである。
図7(c)は、
図5(c)と同様、巻取ボビンBwへの糸Yの巻取量(縦軸)と時刻(横軸)との関係を示すグラフである。
図8(a)は、巻取パッケージPwを示す模式図である。
図8(b)は、巻取パッケージPwのランクに関する情報を示す説明図である。
図8(b)には、例えば、機台出力部5bに表示された、巻取パッケージPwの情報に関する画面S2が示されている。
【0070】
初期状態として、上述した「切替発生時処理が行われない場合」と同様、例えば第1装着部22に給糸パッケージPs1が装着され、第2装着部23に給糸パッケージPs2が装着されている。さらに、給糸パッケージPs1から解舒された糸Yが加工部3によって加工され、巻取ボビンBw1に糸が巻き取られている。給糸パッケージPs1が本発明の第1給糸パッケージに相当する。給糸パッケージPs2が本発明の第2給糸パッケージに相当する。
【0071】
機台制御装置5は、巻取処理中に、給糸パッケージ切替の発生を示す情報(つまり、切替情報)が糸検知センサ24によって検知されたか(取得されたか)判断する。これにより、機台制御装置5は、給糸パッケージ切替の発生の有無を判断する(S101)。給糸パッケージ切替が発生していない場合(S101:No)、機台制御装置5は、巻取パッケージPwの形成を継続する。この例では、巻取パッケージPw1及びPw2が、切替発生時処理が行われない場合と同様に、順番に形成される。機台制御装置5は、巻取パッケージPw1及びPw2を高いランク(例えば、
図8(b)に記載の「A」を参照)の巻取パッケージPwとして評価し、これらの巻取パッケージPwの個体情報(
図8(b)の「ID」を参照)とランクとをそれぞれ関連付けて記憶する。
【0072】
給糸パッケージ切替が発生したと判断したとき(S101:Yes)、機台制御装置5は、巻取装置19を制御して、形成中の巻取パッケージPwに対する以下のマーキング動作を行わせる(S102)。例として、給糸パッケージ切替が発生したとき、巻取ボビンBw3に糸Yが巻き取られており、巻取パッケージPw3aが形成されている(
図7(c)参照)。給糸パッケージ切替の発生時に巻取装置19によって形成中の巻取パッケージPw3aが、本発明の所定巻取パッケージに相当する。機台制御装置5は、給糸パッケージ切替が発生したと判断したとき、モータ37(
図3参照)を制御して巻取パッケージPw3aを従動回転させつつ、モータ36を制御して、巻取パッケージPw3aの軸方向においてトラバースガイド35を所定の位置で停止させる。これにより、巻取パッケージPw3aにいわゆる棒巻きが施され、巻取パッケージPw3aに目印M1(
図8(a)参照)が形成される。目印M1は、巻取パッケージPw3aへの結節部分Kの混入を示すマークである。以上のようにして、巻取パッケージPwに目印M1を付す(すなわち、巻取パッケージPwへのマーキングを行う)ための巻取装置19の動作(マーキング動作)が行われる。
【0073】
このように、巻取装置19は、巻取パッケージPw3a(所定巻取パッケージ)への結節部分Kの混入を示す混入情報の記録の処理(混入情報記録処理)を実行可能に構成されている。巻取装置19は、本発明の記録部に含まれる。目印M1は、本発明の混入情報に含まれる。マーキング動作は、本発明の混入情報記録処理に含まれる。
【0074】
さらに、機台制御装置5は、結節部分Kを巻取パッケージPw3aの表層部に混入させる所定のタイミングで、オートドッファ10を制御して走行中の糸Yを切断し、巻取パッケージPw3aの形成を終了させる(形成終了処理。S103)。この場合、オートドッファ10は、本発明の切断部にも相当する。表層部とは、巻取パッケージPw3aから容易に除去されることが可能な、巻取パッケージPw3aの径方向において巻取パッケージPw3aの外周面との距離が短い部分を意味する。例えば、巻取パッケージPw3aの径方向において、巻取パッケージPw3aの外周面から2mm以内の部分が表層部である。また、目印M1を形成している部分も表層部に含まれる。所定のタイミングとは、例えば、給糸パッケージ切替が発生したと機台制御装置5が判断するのと略同時であっても良い。或いは、所定のタイミングとは、給糸パッケージ切替が発生したと機台制御装置5が判断してから所定の時間が経過したときであっても良い。この場合、機台制御装置5は、当該所定の時間の設定値を予め記憶していても良い。機台制御装置5は、当該所定の時間の設定値をオペレータによって入力可能に構成されていても良い。或いは、機台制御装置5は、予め糸道の長さの設定値を記憶可能に構成され、糸道の長さ及び解舒速度等の情報に基づいて所定の時間を算出しても良い。
【0075】
その後、機台制御装置5は、オートドッファ10を制御して、巻取パッケージPw3aと新しい巻取ボビンBw4とを交換させる(S104)。さらに、機台制御装置5は、オートドッファ10を制御して、新しい巻取ボビンBw4への糸掛けを行わせる。さらに、機台制御装置5は、巻取パッケージPw3aを例えば巻取パッケージPw1及びPw2と比べて低いランク(例えば、
図8(b)に記載の「B」を参照)の巻取パッケージPwとして評価し、巻取パッケージPw3aの個体情報とランクとを関連付けて記憶する。また、機台制御装置5は、巻取パッケージPw3aの個体情報と、巻取パッケージPw3aの表層部に結節部分Kを意図的に混入させたことを示す情報(例えば、
図8(b)に記載の「表層に結節部混入」を参照)と、を関連付けて機台記憶部5cに記憶させる。当該情報は、本発明の混入情報に含まれる。当該情報を記憶する処理(記録処理)は、本発明の混入情報記録処理に含まれる。このとき、機台制御装置5は、本発明の記録部として機能する。
【0076】
その後、機台制御装置5は、巻取装置19を制御して巻取ボビンBw4に糸Yを巻き取らせ始める。これにより、巻取ボビンBw4に糸Yが巻き取られ、巻取パッケージPw4が形成される。巻取パッケージPw4は、巻取パッケージPw1及びPw2と同様、ランクの高い巻取パッケージPwとして形成される(
図8(b)参照)。さらに後の処理については説明を省略する。
【0077】
(糸カットについて)
次に、切替発生時処理のモードとして上記の「糸カット」が選択されているときの処理について説明する。この場合、機台制御装置5は、上述した巻取パッケージPw3aの形成中に給糸パッケージ切替が発生したと判断したとき、上述したマーキング動作を巻取装置19に行わせる。その後、機台制御装置5は、結節部分Kを巻取パッケージPw3aの表層部に混入させる所定のタイミングで、カッタ27を制御して走行中の糸Yを切断し、巻取パッケージPw3aの形成を終了させる(形成終了処理)。これとともに、機台制御装置5は、当該錘9の各部を制御して、当該錘9の稼働を停止させる。機台制御装置5は、さらに、巻取パッケージPw3aの個体情報と混入情報とを関連付けて機台記憶部5cに記憶させても良い。なお、当該錘9を再び稼働させるためには、当該錘9の各部への糸掛けが必要である。切替発生時処理のモードとして「糸カット」が選択されているとき、カッタ27が本発明の切断部に相当する。
【0078】
以上のように、巻取パッケージPw3a(所定巻取パッケージ)の表層部に結節部分Kを意図的に混入させることができる。これにより、形成された巻取パッケージPw3aの表層部に含まれた少しの糸Yをほどくだけで、表層部に意図的に混入させられた結節部分Kを見つけて抜き取ることができる。また、記録部(本実施形態では、巻取装置19及び/又は機台制御装置5)による記録の処理の結果(つまり、混入情報)を確認することにより、巻取パッケージPw3aと他の巻取パッケージPwとを確実に区別できる。したがって、巻取パッケージPw3aに混入する結節部分Kを巻取パッケージPw3aから容易に除去できる。
【0079】
また、機台制御装置5は、巻取装置19を制御して所定巻取パッケージに対するマーキング動作を行わせる。これにより、所定巻取パッケージと、目印が付されていない巻取パッケージPwとを外観で容易に区別できる。
【0080】
また、機台制御装置5は、巻取装置19にマーキング動作を行わせる。これにより、巻取パッケージPw3aに棒巻きを施すことができる。したがって、簡易的な手段でマーキング動作を行うことができる。
【0081】
また、機台制御装置5は、所定巻取パッケージの個体情報と混入情報とを関連付けて記憶可能に構成された機台記憶部5cを有する。機台記憶部5cに記憶された情報を確認することにより、所定巻取パッケージを他の巻取パッケージPwと区別できる。
【0082】
また、オートドッファ10が本発明の切断部として機能する場合、さらに以下の効果が得られる。すなわち、機台制御装置5は、給糸パッケージ切替が発生したときに、オートドッファ10を制御して、巻取パッケージPw3aと新しい巻取ボビンBw4とを交換し、巻取装置19を制御して巻取ボビンBw4に糸Yを巻き取らせ始める。これにより、オートドッファ10によって糸Yが切断された後も、当該錘9の稼働を停止させることなく、巻取パッケージPwを連続的に形成することができる。
【0083】
また、糸検知センサ24が切替情報を取得する。これにより、給糸パッケージ切替を直接検知できるため、形成終了処理の実行タイミングの精度を高くすることができる。
【0084】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0085】
(1)前記実施形態において、機台制御装置5は、切替発生時処理の選択肢として、「無し」、「巻取ボビン交換」及び「糸カット」の情報を記憶しているものとした。しかしながら、これには限られない。機台制御装置5は、「巻取ボビン交換」及び「糸カット」の情報のうち、一方のみを選択肢の情報として記憶していても良い。或いは、機台制御装置5は、切替発生時処理の制御モードとして「巻取ボビン交換」又は「糸カット」の処理モードのみを実行可能に構成されていても良い。
【0086】
(2)前記までの実施形態において、機台制御装置5は、巻取装置19にマーキング動作を行わせるものとした。しかしながら、これには限られない。巻取装置19の代わりにマーキング動作を実行可能な、不図示のマーキング装置(マーキング部)が設けられていても良い。マーキング装置は、例えば、回転中の巻取ボビンBwに巻き取られる直前の糸Yに着色を施すことが可能に構成されていても良い。マーキング装置は、例えば、インクなどの液体を糸Yに向けて吐出又は噴霧可能に構成されていても良い。
【0087】
(3)前記までの実施形態において、機台制御装置5は、各巻取パッケージPwの個体情報と、各巻取パッケージPwについて行われた判断に関する情報とを関連付けて記憶するものとした。しかしながら、これには限られない。機台制御装置5は、各巻取パッケージPwについて行われた判断に関する情報を機台記憶部5cに記憶させなくても良い。この場合、マーキング部によるマーキング動作が必須である。
【0088】
(4)前記までの実施形態において、機台制御装置5は、巻取装置19にマーキング動作を行わせるものとした。しかしながら、これには限られない。機台制御装置5が所定巻取パッケージの個体情報と混入情報とを関連付けて機台記憶部5cに記憶させる場合、巻取装置19によるマーキング動作は行われなくても良い。
【0089】
(5)前記までの実施形態において、初期量情報は、仮撚加工機1の全ての錘9において共通の値として機台制御装置5に記憶されているものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、複数の錘9が複数のグループに分けられていても良い。機台制御装置5は、当該複数のグループの各々に関する初期量情報が設定されることが可能に構成されていても良い。或いは、機台制御装置5は、錘9ごとに初期量情報が設定されることが可能に構成されていても良い。この場合、機台制御装置5は、さらに、複数の給糸パッケージPsの各々に対応する初期量情報(又は残時間の初期値の情報)を取得可能に構成されていても良い。より具体的には、給糸パッケージ保持部20に新しい給糸パッケージPsが装着される度に、新しい給糸パッケージPsに係る初期量情報等を個別に取得可能に構成されていても良い。
【0090】
(6)前記までの実施形態において、オペレータが給糸パッケージの交換の作業を行うものとした。しかしながら、これには限られない。給糸パッケージの交換の作業は、例えば、不図示のクリールロボットによって行われても良い。糸加工設備100は、形成された巻取パッケージPwを回収して搬送する不図示の巻取パッケージ搬送装置を備えていても良い。
【0091】
(7)前記までの実施形態において、第1検知部25と、第2検知部26とを有する糸検知センサ24によって給糸パッケージPsからの糸Yの解舒開始及び解舒終了が検知されるものとした。しかしながら、これには限られない。例えば
図9に示すように、仮撚加工機1aの給糸部2aは、各錘9aにおいて、糸検知センサ24とは異なる構成を有する検知部41を有していても良い。検知部41は、例えば、供給センサ42と、結節部分センサ43(本発明の糸接続部分検知部、情報取得部)とを有していても良い。供給センサ42は、第1装着部22から糸Yが供給されているか否か(解舒開始)を検知可能に構成されている。結節部分センサ43は、所定位置に静止するように配置された結節部分Kを検知可能に構成されている。このような構成においては、結節部分Kが所定位置から移動して、結節部分Kが結節部分センサ43によって検知されなくなったとき、給糸パッケージ切替(解舒終了)が起こったと判断できる。言い換えれば、この変形例では、結節部分センサ43が切替情報を取得する。これにより、結節部分Kの移動を直接検知できるため、形成終了処理の実行タイミングの精度を高くすることができる。また、給糸パッケージ切替時に第1装着部22及び第2装着部23のいずれから糸Yが供給されているかについては、供給センサ42による検知結果に基づいて知ることができる。このように、結節部分Kの検知結果を用いた場合でも、第1装着部22及び第2装着部23のうちどちらから糸Yが供給されているか確実に知ることができる。なお、結節部分センサ43は、移動している結節部分Kを検知可能に構成されていても良い。
【0092】
(8)前記までの実施形態において、機台制御装置5は、糸検知センサ24又は結節部分センサ43による検知結果に基づいて給糸パッケージ切替の発生の有無を判断するものとした。つまり、上記検知結果の信号が本発明の切替情報に相当するものとした。しかしながら、これには限られない。機台制御装置5は、解舒中パッケージに含まれる糸Yの残量の算出結果を利用して、給糸パッケージ切替の発生の有無を判断しても良い。機台制御装置5は、例えば、算出された上記残量がゼロになったときに給糸パッケージ切替が発生したと判断しても良い。この場合、解舒中パッケージに含まれる糸Yの残量の情報が、本発明の切替情報に相当する。機台制御装置5が、本発明の情報取得部に相当する。
【0093】
(9)前記までの実施形態において、機台制御装置5は、第1フィードローラ11の回転数の情報に基づいて解舒速度Vの情報を取得するものとした。しかしながら、これには限られない。他の例として、機台制御装置5には、第2フィードローラ16の回転数の情報と、第1フィードローラ11の回転数と第2フィードローラ16の回転数との比率の情報と、が記憶されていても良い。機台制御装置5は、これらの情報に基づいて解舒速度の情報を取得しても良い。或いは、機台制御装置5は、解舒単位量情報として、解舒速度の情報の代わりに、給糸パッケージPsから単位時間あたり糸Yが解舒される重量の情報を取得しても良い。このような情報は、例えばオペレータによって予め機台制御装置5に入力されていても良い。
【0094】
(10)前記までの実施形態において、機台制御装置5は、所定巻取パッケージを他の巻取パッケージPwと確実に区別するために、混入情報の記録の処理を実行するものとした。しかしながら、これには限られない。機台制御装置5は、混入情報の記録の処理を行わなくても良い。機台制御装置5は、例えば、所定巻取パッケージが形成されたことを示す情報を機台出力部5bのディスプレイに表示させる等して、所定巻取パッケージが形成されたことをオペレータに報知しても良い。この場合、当該情報は記録されなくても良い。
【0095】
(11)前記までの実施形態において、機台制御装置5が仮撚加工機1の各部を制御するものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、管理装置101が仮撚加工機1の各部の制御を行っても良い。この場合、管理装置101が本発明の制御部に含まれる。
【0096】
(12)前記までの実施形態において、情報管理部110は、複数の機台制御装置5及び管理装置101を有するものとした。しかしながら、これには限られない。すなわち、情報管理部110は、機台制御装置5及び管理装置101以外のコンピュータ装置(不図示)を含んでいても良い。或いは、情報管理部110は、機台制御装置5又は管理装置101のみを有していても良い。
【0097】
(13)各給糸パッケージ保持部20は、3つ以上の給糸パッケージPsを保持可能に構成されていても良い。この場合、3つ以上の給糸パッケージPsに含まれる糸Yの端部同士が適切に接続されていても良い。
【0098】
(14)前記までの実施形態において、糸加工設備100は、複数の仮撚加工機1を備えるものとした。しかしながら、これには限られない。糸加工設備100は、1つの仮撚加工機1のみを備えていても良い。また、管理装置101が設けられていなくても良い。また、仮撚加工機1は複数の錘9を有するものとしたが、これには限られない。すなわち、仮撚加工機1が有する錘9の数は1つでも良い。言い換えると、給糸部2が有する給糸パッケージ保持部20の数は1つでも良い。
【0099】
(15)本発明は、仮撚加工機1の代わりに、別の糸加工機に適用されても良い。例えば、特開2002-088605号公報に記載されたエア加工機(糸加工機)に対して本発明が適用されても良い。
【符号の説明】
【0100】
1 仮撚加工機(糸加工機)
5 機台制御装置(制御部、記録部、情報取得部)
5c 機台記憶部(記憶部)
10 オートドッファ(切断部、ボビン交換部)
19 巻取装置(マーキング部、記録部)
20 給糸パッケージ保持部
24 糸検知センサ(解舒中パッケージ検知部、情報取得部)
27 カッタ(切断部)
32 トラバース装置(トラバース部)
35 トラバースガイド
36 モータ(ガイド駆動部)
37 モータ(回転駆動部)
43 結節部分センサ(糸接続部分検知部、情報取得部)
Bw 巻取ボビン
Bw4 巻取ボビン(新しい巻取ボビン)
K 結節部分(糸接続部分)
Ps 給糸パッケージ
Ps1 給糸パッケージ(第1給糸パッケージ)
Ps2 給糸パッケージ(第2給糸パッケージ)
Pw 巻取パッケージ
Pw3a 巻取パッケージ(所定巻取パッケージ)
Y 糸