(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181831
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ガスパージ装置及び紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20231218BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B01J19/12 C
B05C9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095184
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】596099446
【氏名又は名称】シーシーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】大島 提地
【テーマコード(参考)】
4F042
4G075
【Fターム(参考)】
4F042AA22
4F042BA08
4F042BA22
4F042DB41
4F042DB42
4F042DB48
4F042DF23
4G075AA29
4G075AA30
4G075BA04
4G075CA33
4G075CA63
4G075DA02
4G075EB01
4G075EB31
4G075EC01
4G075EC09
4G075ED04
(57)【要約】
【課題】ワークの搬送路上に不活性ガス雰囲気のガスパージ室を形成するガスパージ装置において、装置全体の大型化を招くことなく、ガスパージ室内への空気の流入や不活性ガスの流出を抑制する。
【解決手段】所定の搬送方向に沿って移動するワークに紫外線を照射する紫外線照射装置に用いられ、前記ワークの搬送路上に不活性ガス雰囲気を形成するためのものであって、前記搬送路上に設けられ、不活性ガスが充填されるガスパージ室と、前記ワークを導出又は導入させる開口部と、前記ガスパージ室内に紫外線を取り込む窓部とを形成するケーシングと、前記開口部に設けられ、当該開口部を流れるガスに抵抗を加えるラビリンス構造と、前記ガスパージ室から視て前記ラビリンス構造の外側に設けられ、前記ガスパージ室外のガスを吸入するガス吸込部とを備え、前記ラビリンス構造と前記ガス吸込部とが一体的に設けられているガスパージ装置である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送方向に沿って移動するワークに紫外線を照射する紫外線照射装置に用いられ、前記ワークの搬送路上に不活性ガス雰囲気を形成するためのものであって、
前記搬送路上に設けられ、不活性ガスが充填されるガスパージ室と、前記ワークを導出又は導入させる開口部と、前記ガスパージ室内に紫外線を取り込む窓部とを形成するケーシングと、
前記開口部に設けられ、当該開口部を流れるガスに抵抗を加えるラビリンス構造と、
前記ガスパージ室から視て前記ラビリンス構造の外側に設けられ、前記ガスパージ室外のガスを吸入するガス吸込部とを備え、
前記ラビリンス構造と前記ガス吸込部とが一体的に設けられているガスパージ装置。
【請求項2】
前記ガス吸込部は、前記搬送方向に沿って配置された複数の吸気孔を有する請求項1に記載のガスパージ装置。
【請求項3】
前記ラビリンス構造が、前記ワークの表面に向かって突出し、前記搬送方向に沿って並んで配置された複数の突起部と、当該複数の突起部の間に形成された溝部とにより構成されており、
当該ラビリンス構造における最も外側の突起部から前記搬送方向に沿って更に外側に延び出るように設けた延出部材に前記複数の吸気孔が形成されている請求項2に記載のガスパージ装置。
【請求項4】
前記複数の吸気孔は、前記ワークの表面に対向する前記延出部材の対向面に開口しており、
当該対向面の前記ワークの表面からの高さと、前記ラビリンス構造が有する前記突起部の先端の前記ワークの表面からの高さとが略同一である請求項3に記載のガスパージ装置。
【請求項5】
前記吸気孔が前記搬送方向に直交する方向に延びる長孔形状をなしている請求項2に記載のガスパージ装置。
【請求項6】
前記吸気孔が各列において前記ワークの搬送方向に交差する方向に間隔を空けて複数配置されている請求項2に記載のガスパージ装置。
【請求項7】
前記ラビリンス構造と前記ガス吸込部とが共通の部材により構成されて一体構造をなしている請求項1に記載のガスパージ装置。
【請求項8】
前記ケーシングの内壁面における前記窓部に対向する領域には、板状をなす複数の放熱フィンが前記搬送方向に沿って略平行となるように設けられている請求項1に記載のガスパージ装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のガスパージ装置と、
前記窓部を通して前記ガスパージ室内に紫外線を照射する紫外線照射器とを備える紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化処理等に用いられるガスパージ装置及び紫外線照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば樹脂、塗料、インキ又は接着材等の紫外線硬化処理を行う際には、酸素による光ラジカル重合反応の阻害(酸素阻害)を抑制するためガスパージ装置が用いられる。このガスパージ装置は不活性ガスを充填したガスパージ室を形成するものであり、このガスパージ室内にワークを配置して紫外線照射を行うことで、酸素阻害による影響を抑制して硬化品質を向上することができる。
【0003】
この種のガスパージ装置としては、例えば特許文献1に示すように、所定の方向に搬送するフィルム等のワークの搬送路上に設けられ、ガスパージ室に設けた開口部からワークが連続的に導入及び導出されるよう構成されたものがある。このタイプのガスパージ装置は、酸素を含む外部空気が開口部を通じてガスパージ室内へ流入してしまうため、酸素阻害による影響を受けやすいという問題がある。また開口部を通じてガスパージ室内の不活性ガスが外部へ流出してしまい、不活性ガスの大量消費につながる恐れもある。そのため特許文献1では、開口部にラビリンス構造を設けることで、開口部を通じたガスの流出入を低減するようにしている。またこの特許文献1では、ラビリンス構造の外側に排気構造を設け、ガスパージ室から流出した不活性ガスを吸い込んで回収するようにもしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような搬送されるワークに適用されるガスパージ装置では、酸素阻害による紫外線硬化への影響の更なる低減や、不活性ガスの消費量の更なる低減のために、開口部を通じたガスの流出入のより一層の低減が求められる。しかしながら、ガスの流出入を低減するための新たな装置構成を追加すると、ガスパージ装置の大型化を招来してしまう。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、ワークの搬送路上に不活性ガス雰囲気のガスパージ室を形成するガスパージ装置において、装置全体の大型化を招くことなく、ガスパージ室内への空気の流入や不活性ガスの流出を抑制することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るガスパージ装置は、所定の搬送方向に沿って移動するワークに紫外線を照射する紫外線照射装置に用いられ、前記ワークの搬送路上に不活性ガス雰囲気を形成するためのものであって、前記搬送路上に設けられ、不活性ガスが充填されるガスパージ室と、前記ワークを導出又は導入させる開口部と、前記ガスパージ室内に紫外線を取り込む窓部とを形成するケーシングと、前記開口部に設けられ、当該開口部を流れるガスに抵抗を加えるラビリンス構造と、前記ガスパージ室から視て前記ラビリンス構造の外側に設けられ、前記ガスパージ室外のガスを吸入するガス吸込部とを備え、前記ラビリンス構造と前記ガス吸込部とが一体的に設けられていることを特徴とする。
【0008】
また本発明の紫外線照射装置は、前記ガスパージ装置と、前記窓部を通して前記ガスパージ室内に紫外線を照射する紫外線照射器とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように構成した本発明によれば、ワークの搬送路上に不活性ガス雰囲気のガスパージ室を形成するガスパージ装置において、装置全体の大型化を招くことなく、ガスパージ室内への空気の流入や不活性ガスの流出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の紫外線照射装置を含むシステムの全体構成を模式的に示す図。
【
図2】同実施形態の紫外線照射装置の全体構成を模式的に示す図。
【
図3】同実施形態の紫外線照射装置の導入側開口部近傍の構成を示す図。
【
図4】同実施形態の紫外線照射装置のシール部材の構成を示す図。
【
図5】他の実施形態の紫外線照射装置を含むシステムの全体構成を模式的に示す図。
【
図6】他の実施形態の紫外線照射装置の全体構成を模式的に示す図。
【
図7】他の実施形態の紫外線照射装置のシール部材の構成を示す図。
【
図8】他の実施形態の紫外線照射装置の導入側開口部近傍の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の一実施形態に係るガスパージ装置100を備える紫外線照射装置300について図面を参照して説明する。
【0012】
本実施形態の紫外線照射装置300は、搬送機構Cにより所定の方向に搬送されるフィルム状のワークWに紫外線の照射を行うためのものである。
図1に示すようにこの搬送機構Cは、巻出しローラや巻取りローラ等の複数の搬送ローラRを備える所謂ロール・ツー・ロール方式のものであり、紫外線照射装置300は2つの搬送ローラR間における搬送路上に配置されて使用される。なおワークWは、例えば紙、フィルム等の基材上に塗料、接着剤、インキ等を塗布してなるものである。なお以下においては、ワークWが搬送される方向を搬送方向、ワークWの被照射面に直交する方向を高さ方向、搬送方向及び高さ方向に直交する方向を幅方向ともいう。
【0013】
具体的にこの紫外線照射装置300は、
図2に示すように、ワークWの搬送路上に不活性ガス雰囲気のガスパージ室1sを形成するガスパージ装置100と、ガスパージ室1s内に紫外線を照射する紫外線照射器200とを備えている。
【0014】
具体的にこのガスパージ装置100は、ガスパージ室1sと開口部1aと窓部1wとを形成するケーシング1と、ケーシング1内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構2と、ケーシング1の開口部1aに設けられたラビリンス構造3と、ガスパージ室1sから視てラビリンス構造3の外側に設けられた排気機構4とを備えている。
【0015】
ケーシング1は、一対の搬送ローラR間における搬送路上に設けられ、ワークWを高さ方向の両側(被照射面側、裏面側)から覆うように構成されたものである。このケーシング1は箱状をなすものであり、その内側にガスパージ室1sが形成されている。本実施形態のケーシング1は、ワークWの被照射面側を覆う上部ケーシング11と、ワークWの裏面側を覆う下部ケーシング12とを備えている。この上部ケーシング11と下部ケーシング12とは、互いの開口が向かい合うように配置されており、向かい合う互いの内壁面によってガスパージ室1sが形成されている。なおガスパージ室1sの幅方向に沿った両端は図示しないケーシング1の側板により閉じられている。
【0016】
搬送方向に沿ったガスパージ室1sの両端には、ワークWを導出入させるための一対の開口部1a(導入側開口部1a1、導出側開口部1a2)が形成されている。この開口部1aは、搬送方向に沿った一方の端部がガスパージ室1sに開口し、他方の端部がガスパージ室1s外(すなわち空気雰囲気)に開口している。上流側から連続的に搬送されてくるワークWは、導入側開口部1a1からガスパージ室1s内に導入され、ガスパージ室1s内を通って導出側開口部1a2から導出されて下流側に搬送される。
【0017】
ガスパージ室1sを形成するケーシング1の上壁11aには、ガスパージ室1s内に紫外線を取り込むための窓部1wが形成されている。この窓部1wは、上壁11aに形成された平面視において矩形状をなす開口と、この開口に蓋をする板部材とを含んで構成される。この板部材は、例えば石英ガラス等、紫外線を透過させる材料からなるものである。
【0018】
不活性ガス供給機構2は、例えばN2ガス等の不活性ガスをガスパージ室1s内に供給するものである。この不活性ガス供給機構2は、ガスパージ室1s外に設けられた図示しないガス供給源と、当該ガス供給源に接続され、ガスパージ室1s内に設けられた1つ又は複数の不活性ガス供給口2aを通じてガスパージ室1s内に不活性ガスを供給するガス供給管21とを備えている。ガス供給管21は、その一部がガスパージ室1s内において幅方向に沿って延びる直管部分を有しており、この直管部分の管壁を貫通する貫通孔により不活性ガス供給口2aが形成されている。この実施形態では、不活性ガス供給口2aは、ガスパージ室1s内の開口部1aの近傍において、ワークWの被照射面側(すなわち、ワークWと上壁11aとの間)に不活性ガスを供給するように設けられている。不活性ガス供給口2aから不活性ガスを供給されることで、ガスパージ室1s内は陽圧の不活性ガス雰囲気となる。
【0019】
ラビリンス構造3は、開口部1aを流れる(通過する)ガスに抵抗を加えることで、ガスパージ室1s内からの不活性ガスの流出や、ガスパージ室1s内への空気の流入を抑制するものである。このラビリンス構造3は、ケーシング1の導入側開口部1a1と導出側開口部1a2のそれぞれに設けられている。また本実施形態のガスパージ装置100では、各開口部1aにおいて、ワークWの被照射面側と裏面側の両方にラビリンス構造3が設けられている。
【0020】
具体的にこのラビリンス構造3は、
図3及び
図4に示すように、搬送方向に沿って交互に並んだ複数の突出部31と複数の溝32からなるものである。突出部31は、開口部1aにおいてガスの流路を狭める絞り部として機能するものであり、高さ方向に沿ってワークWの表面に向かって突出して凸状をなしている。この複数の突出部31は、搬送方向に沿って並んで配置されている。溝32は、開口部1aにおいてガスの流路を広げる膨張室として機能するものであり、高さ方向に沿ってワークWの表面から遠ざかる凹状をなすようにして、突出部31間に形成されている。突出部31と溝32は、いずれも幅方向に沿って延びるように形成された長尺状をなすものである。そしてラビリンス構造3を構成する各突出部31は、ワークWの表面からの先端面の高さが互いに揃う(略同一となる)ように形成されている。
【0021】
より具体的にこのラビリンス構造3は、開口部1aにおいてワークWの表面と隙間を開けて配置された、例えば金属材料から成るブロック状のシール部材3mに形成されている。このシール部材3mは、ワークWの表面に対向する対向面を有しており、この対向面に複数の突出部31と溝32とが形成されている。本実施形態のシール部材3mは、高さ方向に沿って位置を可変できるように構成されており、これによりワークWの表面とラビリンス構造3との間の隙間寸法を調整できる。
【0022】
排気機構4は、開口部1aに流入するガスパージ室1s外の空気や、開口部1aから外部に流出する不活性ガスを吸い込んで排気するものである。具体的にこの排気機構4は、ラビリンス構造3の外側に隣り合うようにして設けられたガス吸込部41と、ガス吸込部41が吸込んだガスを排気する排気ダクト42とを備えている。なお本実施形態のガス吸込部41は、ケーシング1の各開口部1aに設けられた複数のラビリンス構造3のそれぞれに対応して設けられている。また排気ダクト42は、下流側に設けられた図示しない排気ファンに接続されている。
【0023】
図3及び
図4に示すように、ガス吸込部41はラビリンス構造3と一体的に設けられている。具体的にこのガス吸込部41は、ラビリンス構造3における最も外側の突出部(外側突出部という)311から、搬送方向に沿って更に外側に延び出るように設けられた板状の延出部材411と、延出部材411を厚み方向に貫通する複数の吸気孔41hとを有している。この延出部材411は、外側突出部311を含むシール部材3mと一体の部品により形成されており、これによりガス吸込部41とラビリンス構造3とは共通の部材から構成された一体構造を成している。
【0024】
吸気孔41hは、ワークWの表面に対向する延出部材411の対向面411sに開口しており、当該開口がガスを吸込むための吸込口として機能する。この延出部材411の対向面411sは、そのワークWの表面からの高さが、ラビリンス構造3が有する突出部31の先端のワークWの表面からの高さと揃う(略同一となる)ように形成されている。言い換えれば、吸気孔41hのワークW側の開口端の高さは、ラビリンス構造3が有する突出部31の先端の高さと略同一である。
【0025】
各吸気孔41hは、幅方向に沿って延びる長孔形状をなしている。そしてこの複数の吸気孔41hは、その幅方向に沿って間隔を空けて複数配置されるとともに、搬送方向に沿って間隔を空けて複数列(ここでは3列)配置されている。この複数の吸気孔41hは、高さ方向から視て、搬送方向に沿って互い違いとなる千鳥状を成すように形成されてもよく、搬送方向に沿って揃う格子状を成すように形成されていてもよい。
【0026】
またガスパージ装置100は、ガスパージ室1s内の酸素濃度を測定するための図示しない酸素濃度測定機構を備えている。この酸素濃度測定機構は、ガスパージ室1s外に設けられた酸素濃度計と、酸素濃度計に下流端が接続され、ガスパージ室1s内に設けられた1つ又は複数の測定用ガス吸込口からガスを吸込むガス吸込管とを備えている。
【0027】
さらにガスパージ装置100は、ケーシング1に取付けられたヒートシンク6をさらに備えている。このヒートシンク6は、紫外線を照射されることで昇温するケーシング1からの放熱を促進するものである。ヒートシンク6は、ケーシング1の内壁面における窓部1wと対向する領域に設けられている。具体的にこのヒートシンク6は、平板状をなす複数の放熱フィン61を含んで構成されている。この複数の放熱フィン61は、ケーシング1の内壁面から直角に起立するとともに、表面積が大きい主放熱面が搬送方向に沿って略平行となるように設けられている。
【0028】
紫外線照射器200は、UV-LED等の紫外線光源を用いて構成されるものであり、例えば矩形状を成す発光面から紫外光を発する面型照射器である。この紫外線照射器200は、その発光面がガスパージ装置100の窓部1wを望むようにして、ガスパージ装置100のケーシング1に設けられた取付部に取付けられる。
【0029】
このように構成された本実施形態のガスパージ装置100及びこれを用いた紫外線照射装置300によれば、開口部1aの外側に設けられたガス吸込部41がラビリンス構造3と一体的に設けられているので、このガス吸込部41自体を、あたかもラビリンス構造3の外側に延長するように設けた第2のラビリンス構造のように機能させることができる。つまりガス吸込部41の吸込口をガスの流路を広げる膨張室として機能させることができ、これにより、ガスパージ室1s内への空気の流入や不活性ガスの流出を抑制することができる。しかも、新たな装置構成を追加するのではなく、既存のガス吸込部41の構造を利用するようにできるので、装置全体の大型化も抑えることができる。
【0030】
しかも、ガス吸込部41が備える吸気孔41hは、搬送方向に沿って間隔を空けて複数配置されているので、搬送方向に沿って、流路が広がる領域と狭まる領域とが交互に並ぶようになり、ガス吸込部41によるラビリンス効果をより一層高めることができる。
【0031】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0032】
例えば、前記実施形態の紫外線照射装置300及びガスパージ装置100は、搬送機構Cが備える2つの搬送ローラR間に設けて使用されるものであったが、これに限らない。他の実施形態の紫外線照射装置300及びガスパージ装置100は、
図5~
図7に示すように、搬送ローラRに取付けるようにして使用され、搬送ローラRの周面に巻き取られている(又は巻き出されている)ワークWの表面に紫外線を照射するものであってもよい。
【0033】
この実施形態のケーシング1は、
図6に示すように、搬送ローラRの周面に対向する底面が開口した形状をなしており、その内壁面が搬送ローラRの周面の一部を覆うようにして配置されている。そしてこのケーシング1の内壁面と、これに覆われる搬送路ローラの周面とによって、ガスパージ室1sが形成されている。なおガスパージ室1sの幅方向に沿った両端は図示しないケーシング1の側板により閉じられている。
【0034】
そしてこの実施形態では、シール部材3mの対向面は搬送ローラRの周面に沿った曲面形状をなしており、当該対向面に搬送方向(ローラの回転方向)に沿って交互に形成された複数の突出部31と複数の溝32とによってラビリンス構造3が構成されている。延出部材411の対向面411sもまた搬送ローラRの周面に沿った曲面形状を成しており、この対向面411sに開口するようにして複数の吸気孔41hが形成されている。そしてこの実施形態でも、
図7に示すように、複数の吸気孔41hは、幅方向に沿って間隔を空けて複数配置されるとともに、搬送方向に沿って間隔を空けて複数列(ここでは3列)配置されている。
【0035】
このように構成した
図5~
図7に示すガスパージ装置100であっても前記した本発明の効果を奏することができる。
【0036】
また、前記各実施形態ではガス吸込部41とラビリンス構造3とが、共通の部材から構成される一体構造をなしていたがこれに限らない。他の実施形態では、ガス吸込部41とラビリンス構造3とが近接して一体的に設けられていれば、互いに独立した部材から構成される別体構造をなしてもよい。
【0037】
また前記各実施形態では、延出部材411の対向面411sは、ラビリンス構造3の突出部31の先端と高さが揃うように形成されていたがこれに限らない。例えば、
図8に示すように、延出部材411の対向面411sは、高さ方向において、ラビリンス構造3の突出部31の先端よりも奥まった位置に形成されていてもよい。この場合、搬送方向に沿った延出部材411の外側端部には、高さ方向に沿ってワークWの表面に向かって突出する第2の突出部412が設けられていてもよい。この第2の突出部は、幅方向に沿って伸びる長尺板状の部材であり、その先端の高さが外側リブ311の先端の高さと揃うように構成されている。
【0038】
前記各実施形態において吸気孔41hは長孔形状をなしていたがこれに限らない。他の実施形態の吸気孔41hは、丸孔形状や角孔形状等の任意の形状であってもよい。
【0039】
また、前記各実施形態では吸気孔41hは幅方向に沿って複数設けられていたがこれに限らない。吸気孔41hが幅方向に沿って延びる形状をなしていれば、幅方向に沿って複数設けられていなくてもよい。さらに他の実施形態では、吸気孔41hは、搬送方向に沿って複数配置されていなくてもよい。
【0040】
また前記実施形態では、不活性ガス供給口2aは、ガスパージ室1s内の開口部1aの近傍において、ワークWの被照射面側にのみ不活性ガスを供給するように設けられていたがこれに限らない。他の実施形態では、不活性ガス供給口2aは、ガスパージ室1s内の開口部1aの近傍において、ワークWの裏面側にも不活性ガスを供給するように設けられていてもよい。
【0041】
また他の実施形態の窓部1wは、上壁11aに形成された開口に蓋をする板部材を備えておらず、当該開口のみにより構成されてよい。この場合、窓部1wを構成する開口を紫外線照射器200の発光面等で気密に塞ぐように構成するのが好ましい。
【0042】
さらに他の実施形態のワークWは、フィルム状ではなく、例えばシート状や板状等の任意の形状をなすものでもよい。
【0043】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【0044】
<本明細書が含むガスパージ装置及び紫外線照射装置の態様>
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0045】
(態様1)所定の搬送方向に沿って移動するワークに紫外線を照射する紫外線照射装置に用いられ、前記ワークの搬送路上に不活性ガス雰囲気を形成するためのものであって、前記搬送路上に設けられ、不活性ガスが充填されるガスパージ室と、前記ワークを導出又は導入させる開口部と、前記ガスパージ室内に紫外線を取り込む窓部とを形成するケーシングと、前記開口部に設けられ、当該開口部を流れるガスに抵抗を加えるラビリンス構造と、前記ガスパージ室から視て前記ラビリンス構造の外側に設けられ、前記ガスパージ室外のガスを吸入するガス吸込部とを備え、前記ラビリンス構造と前記ガス吸込部とが一体的に設けられているガスパージ装置。
【0046】
このようなものであれば、開口部の外側に設けられたガス吸込部がラビリンス構造と一体的に設けられているので、このガス吸込部自体をラビリンス構造の外側に延長するように設けた第2のラビリンス構造として機能させることができる。つまりガス吸込部をガスの流路を広げる膨張室として機能させることができ、これによりガスパージ室内への空気の流入や不活性ガスの流出を抑制することができる。しかも、新たな装置構成を追加するのではなく、既存のガス吸込部の構造を利用するようにできるので、装置全体の大型化も抑えることができる。
【0047】
(態様2)前記ガス吸込部は、前記搬送方向に沿って配置された複数の吸気孔を有する態様1に記載のガスパージ装置。
このようなものであれば、ガス吸込部が備える吸気孔が、搬送方向に沿って間隔を空けて複数配置されているので、流路が広がる領域と狭まる領域とが搬送方向に沿って交互に並ぶようになり、ガス吸込部によるラビリンス効果をより一層高めることができる。
【0048】
(態様3)前記ラビリンス構造が、前記ワークの表面に向かって突出し、前記搬送方向に沿って並んで配置された複数の突起部と、当該複数の突起部の間に形成された溝部とにより構成されており、当該ラビリンス構造における最も外側の突起部から前記搬送方向に沿って更に外側に延び出るように設けた延出部材に前記複数の吸気孔が形成されている態様2に記載のガスパージ装置。
このような構成であれば、複数の吸気孔を有するガス吸込部をラビリンス構造と一体的に設けることができる。
【0049】
(態様4)前記複数の吸気孔は、前記ワークの表面に対向する前記延出部材の対向面に開口しており、当該対向面の前記ワークの表面からの高さと、前記ラビリンス構造が有する前記突起部の先端の前記ワークの表面からの高さとが略同一である態様3に記載のガスパージ装置。
このような構成であれば、延出部材の対向面とワーク表面との間の隙間を小さくでき、開口部への空気の流入や不活性ガスの流出をより一層低減できる。
【0050】
(態様5)前記吸気孔が前記搬送方向に直交する方向に延びる長孔形状をなしている態様2~4のいずれかに記載のガスパージ装置。
このようにすれば、吸気孔を幅方向に長い形状とすることで、ラビリンス効果を幅方向にわたって奏することができる。
【0051】
(態様6)前記吸気孔が各列において前記ワークの搬送方向に交差する方向に間隔を空けて複数配置されている態様2~5のいずれかに記載のガスパージ装置。
このようにすれば、流路が広がる領域と流路が狭まる領域をさらに増やすことができ、ガス吸込部においてラビリンス効果をより強く発揮できる。
【0052】
(態様7)前記ラビリンス構造と前記ガス吸込部とが共通の部材により構成されて一体構造をなしている態様1~6のいずれかに記載のガスパージ装置。
このようにすれば、ラビリンス構造とガス吸込部とを一体構造にすることでより一層省スペース化することができ、装置構成をよりコンパクトにすることができる。
【0053】
(態様8)前記ケーシングの内壁面における前記窓部に対向する領域には、板状をなす複数の放熱フィンが前記搬送方向に沿って略平行となるように設けられている態様1~7のいずれかに記載のガスパージ装置。
このようにすれば、窓部に対向する領域に板状の放熱フィンが複数設けられているので、ケーシングの内壁面に照射され、当該内壁面で吸収されることなく(すなわち熱エネルギーに変換されることなく)反射した紫外線を、放熱フィンの表面に照射させて吸収することができる。これにより、ケーシングの内壁面で反射してワークの裏面に照射される不要な紫外線を低減できる。さらに、ガスパージ室内に紫外線を照射した際に最も熱くなりやすい領域に放熱フィンを設けることで、ケーシングを効果的に冷却することができる。しかも、複数の放熱フィンを搬送方向に沿って略並行となるように設けることで、複数の放熱フィンの間をガスが効率よく流れることができ、効率よく放熱をすることができる。
【0054】
(態様9)態様1~8のいずれかに記載のガスパージ装置と、前記窓部を通して前記ガスパージ室内に紫外線を照射する紫外線照射器とを備える紫外線照射装置。
このような紫外線照射装置であれば、前記したガスパージ装置と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0055】
300・・・紫外線照射装置
100・・・ガスパージ装置
1 ・・・ケーシング
1s ・・・ガスパージ室
1a ・・・開口部
1w ・・・窓部
3 ・・・ラビリンス構造
4 ・・・排気機構
41 ・・・ガス吸込部
41h・・・吸気孔
200・・・紫外線照射器
W ・・・ワーク
C ・・・搬送装置
R ・・・搬送ローラ