(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181834
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】1,1’-ビナフチル誘導体のアトロプ異性体、重合性液晶組成物、光学フィルム、画像表示装置及びアイウェア
(51)【国際特許分類】
C08F 20/30 20060101AFI20231218BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20231218BHJP
C09K 19/58 20060101ALI20231218BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231218BHJP
G02C 7/12 20060101ALI20231218BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C08F20/30
C07C69/54 Z
C09K19/58
G02B5/30
G02C7/12
G02C7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095190
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520337477
【氏名又は名称】デジマ テック ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】田中 興一
(72)【発明者】
【氏名】エルドフュイセン,エルヴィン,ウィルヘルムス,ペトルス
【テーマコード(参考)】
2H006
2H149
4H006
4H027
4J100
【Fターム(参考)】
2H006BE05
2H149AA13
2H149AA17
2H149FA12Z
2H149FA24W
2H149FA27W
2H149FA51W
2H149FA58W
2H149FD21
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB64
4H006BJ50
4H006KA06
4H027BA02
4H027BD14
4H027DK06
4J100AL66P
4J100AL66Q
4J100BA15P
4J100BA15Q
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100BC49P
4J100CA01
4J100CA04
4J100FA03
4J100FA18
4J100JA39
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、少量でも高いHTP値を有する1,1’-ビナフチル誘導体のアトロプ異性体を提供することを目的とする。
【解決手段】例えば下記構造式(2.1)で表されるアトロプ異性体であり、該アトロプ異性体と重合性液晶化合物とを含有する重合性液晶組成物、光学フィルム、画像表示装置及びアイウェアを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)及び/又は一般式(2):
【化1】
[式(1)及び式(2)中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して(R-1)から(R-20)のいずれかの構造を表し、且つ、R
1及びR
2の少なくとも一方が(R-1)から(R-5)のいずれかであり、但し、前記構造が(R-1)である場合を除いて、R
1及びR
2は同一ではなく、
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
Aは、C
1-12アルキル基であり、
R
3~R
12は、互いに独立して、-C
nH
2n+1、-OC
nH
2n+1、CN、F、Cl、Br、CF
3、Y-((CH
2)
k1-O)
m-、Y-(CH
2)
k2-OC(O)-、又はY-(CH
2)
k3-COO-を表し、
Yは、H
2C=C(Z
1)COO-、(H
2COCH)-CH
2-、H
2C=CH-CH
2-、又はH
2C=CH-O-を表し、
Z
1は、H又はCH
3を表し、
k1~k3は、互いに独立して、0~12までの整数であり、
mは、0又は1であり、
nは、0~12までの整数であり、
X
1~X
12は、互いに独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-HC=CH-COO-、-(O)CO-CH=CH-、-CH
2-、-O-、-C(O)-、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OC(O)-、-C(CH
3)
2-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-NHCO-又は-OCNH-を表し、
p1~p12は、互いに独立して、0又は1であり、
q1~q20は、互いに独立して、0、1又は2であり、且つ
s1~s10は、互いに独立して、0、1、2又は3である]で表される化合物のアトロプ異性体。
【請求項2】
R1及びR2は、それぞれ独立して(R-1)から(R-10)のいずれかの構造を表し、且つ、R1及びR2の少なくとも一方が(R-1)から(R-4)のいずれかである、請求項1に記載のアトロプ異性体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されるアトロプ異性体と重合性液晶化合物とを含有する重合性液晶組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の重合性液晶組成物の硬化膜を有する光学フィルム。
【請求項5】
選択反射機能を有する請求項4に記載の光学フィルム。
【請求項6】
請求項4に記載の光学フィルムを備える画像表示装置。
【請求項7】
請求項4に記載の光学フィルムを備えるアイウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1’-ビナフチル誘導体のアトロプ異性体、並びにそれを用いた重合性液晶組成物、光学フィルム、画像表示装置及びアイウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶ディスプレイ等の画像表示装置や偏光サングラス等のアイウェアに使用される光学補償板としての光学フィルムには、円偏光分離機能を有するコレステリック液晶が広く使用されている。コレステリック液晶における液晶分子は、螺旋状にねじれた配向を有しており、その螺旋のピッチに対応する、左右円偏光成分の一方を選択反射する性質がある。このようなコレステリック液晶は、重合性官能基を有するネマチック液晶等の液晶性化合物と、同様に重合性官能基を有するドーパント剤とを含む重合性液晶組成物を重合することによって得ることができる。
【0003】
コレステリック液晶が円偏光分離機能を得るためには、ピッチの短い螺旋構造を必要とするため、液晶中の螺旋ねじれ力の強いドーパント剤を含む液晶組成物を使用することが望ましい。ドーパント剤は、液晶中の螺旋ねじれを誘発又は増強するドーパントとして使用することができ、ドーパント剤の螺旋配向能力を示す指標として、HTP(Helical Twisting Power)が一般的に用いられている。
【0004】
ピッチの短い螺旋構造は、大量のドーパント剤を用いるか、又は高いHTP値を有するドーパント剤を用いることによって得ることができる。従来公知のドーパント剤はしばしば低いHTP値を示すため、所望の短いピッチを有する螺旋構造を得るためには、大量のドーパント剤を用いる必要があった。しかしながら、ドーパント剤を大量に使用すると、例えば、誘電異方性、粘度、駆動電圧等の液晶の性質に悪影響を及ぼすことが懸念される。そのため、液晶の性質に有害に作用しないドーパント剤の開発が求められている。
【0005】
特許文献1には、所定の構造式を示す重合性キラル化合物が高いHTP値を有することが開示されている。しかしながら、実際に試験をして得られた重合性キラル化合物のHTP値は最大でも65程度であり、より高いHTP値を有する重合性キラル化合物については記載されていない。また、液晶の性質への悪影響も考慮すると、液晶化合物に対するドーパント剤の濃度はできる限り少ないことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、少量でも高いHTP値を有する1,1’-ビナフチル誘導体のアトロプ異性体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係るアトロプ異性体は、以下の一般式(1)及び/又は一般式(2):
【化1】
[式(1)及び式(2)中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して(R-1)から(R-20)のいずれかの構造を表し、且つ、R
1及びR
2の少なくとも一方が(R-1)から(R-5)のいずれかであり、但し、前記構造が(R-1)である場合を除いて、R
1及びR
2は同一ではなく、
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
Aは、C
1-12アルキル基であり、
R
3~R
12は、互いに独立して、-C
nH
2n+1、-OC
nH
2n+1、CN、F、Cl、Br、CF
3、Y-((CH
2)
k1-O)
m-、Y-(CH
2)
k2-OC(O)-、又はY-(CH
2)
k3-COO-を表し、
Yは、H
2C=C(Z
1)COO-、(H
2COCH)-CH
2-、H
2C=CH-CH
2-、又はH
2C=CH-O-を表し、
Z
1は、H又はCH
3を表し、
k1~k3は、互いに独立して、0~12までの整数であり、
mは、0又は1であり、
nは、0~12までの整数であり、
X
1~X
12は、互いに独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-HC=CH-COO-、-(O)CO-CH=CH-、-CH
2-、-O-、-C(O)-、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OC(O)-、-C(CH
3)
2-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-NHCO-又は-OCNH-を表し、
p1~p12は、互いに独立して、0又は1であり、
q1~q20は、互いに独立して、0、1又は2であり、且つ
s1~s10は、互いに独立して、0、1、2又は3である]で表される化合物である。
【0009】
本発明の一実施形態において、R1及びR2は、それぞれ独立して(R-1)から(R-10)のいずれかの構造を表し、且つ、R1及びR2の少なくとも一方が(R-1)から(R-4)のいずれかである。
【0010】
本発明の実施形態に係る重合性液晶組成物は、上述のアトロプ異性体と重合性液晶化合物とを含有する。
【0011】
本発明の実施形態に係る光学フィルムは、上述の重合性液晶組成物の硬化膜を有する。
【0012】
本発明の一実施形態において、上述の光学フィルムは選択反射機能を有する。
【0013】
本発明の実施形態に係る画像表示装置は、上述の光学フィルムを備える。
【0014】
本発明の実施形態に係るアイウェアは、上述の光学フィルムを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、少量でも高いHTP値を有する1,1’-ビナフチル誘導体のアトロプ異性体を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態に係るアトロプ異性体、並びにそれを用いた重合性液晶組成物、光学フィルム、画像表示装置及びアイウェアについて詳細に説明する。
【0017】
<アトロプ異性体>
本実施形態に係るアトロプ異性体は、以下の一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物である。これらの化合物は1,1’-ビナフチル誘導体のアトロプ異性体であり、一般式(1)で表される化合物がR体、一般式(2)で表される化合物がS体である。アトロプ異性体は一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物のいずれかであってもよく、両方を含んでいてもよい。
【0018】
【0019】
上記一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物において、R1及びR2は、それぞれ独立して以下の(R-1)から(R-20)のいずれかの構造を表し、且つ、R1及びR2の少なくとも一方が(R-1)から(R-5)のいずれかである。但し、前記構造が(R-1)である場合を除いて、R1及びR2は同一ではない、すなわち、R1及びR2の両方がそれぞれ(R-1)である場合を除き、R1及びR2は互いに異なる構造を有する。また、R1及びR2の少なくとも一方にH2C=C(CH3)-C(O)O-で示される重合性基を有するため、一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物は重合性を示し、同じ液晶成分である重合性液晶化合物のドーパント剤として機能する。
【0020】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0021】
上記(R-6)の構造において、AはC1-12アルキル基であり、C3-6アルキル基であることが好ましい。C1-12アルキル基は直鎖状であっても分岐していてもよい。このようなC1-12アルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、ter-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられ、n-プロピル基またはペンチル基であることが好ましい。
【0022】
上記(R-11)~(R-20)の構造において、R3~R12は、互いに独立して、-CnH2n+1、-OCnH2n+1、CN、F、Cl、Br、CF3、Y-((CH2)k1-O)m-、Y-(CH2)k2-OC(O)-、又はY-(CH2)k3-COO-を表し、
Yは、H2C=C(Z1)COO-、(H2COCH)-CH2-、H2C=CH-CH2-、又はH2C=CH-O-を表し、H2C=C(Z1)COO-であることが好ましく、
Z1は、H又はCH3を表し、CH3であることが好ましく、
k1~k3は、互いに独立して、0~12までの整数であり、0であることが好ましく、mは、0又は1であり、0であることが好ましく、
nは、0~12までの整数であり、1、3、4、5または6であることが好ましく、(R-19)および(R-20)の構造において、n=1であることが特に好ましく、
X1~X12は、互いに独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-HC=CH-COO-、-(O)CO-CH=CH-、-CH2-、-O-、-C(O)-、-CH2CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OC(O)-、-C(CH3)2-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-NHCO-又は-OCNH-を表し、-COO-であることが好ましく、
p1~p12は、互いに独立して、0又は1であり、0であることが好ましく、
q1~q20は、互いに独立して、0、1又は2であり、1であることが好ましく、但し、(R-15)および(R-16)の構造において、q7およびq10はそれぞれ0であることが特に好ましく、且つ
s1~s10は、互いに独立して、0、1、2又は3であり、1であることが好ましく、但し、(R-19)および(R-20)の構造において、s9およびs10はそれぞれ0であることが特に好ましい。
【0023】
また、R1及びR2は、それぞれ独立して(R-1)から(R-10)のいずれかの構造を表し、且つ、R1及びR2の少なくとも一方が(R-1)から(R-4)のいずれかであることが好ましい。また、R1及びR2の一方が(R-11)~(R-20)の構造を表す場合、(R-11)、(R-13)、(R-15)、(R-17)または(R-19)であることが好ましい。
【0024】
本実施形態に係るアトロプ異性体は、一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物においてR1及びR2の両方がそれぞれ(R-1)である場合を除き、R1及びR2は互いに非対称であり、また、R1及びR2が互いに一緒になって1つの骨格構造が形成されるものでもない。一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物がこのような特定の構造を有するため、少量でも高いHTP値を示すアトロプ異性体を得ることができる。また、このような特性を有するアトロプ異性体をドーパント剤として含む重合性液晶組成物を用いて得られた光学フィルムは、アトロプ異性体の含有量に応じて広帯域で中心反射波長を示すことができ、特に、可視光領域での反射帯域を広げることができる。
【0025】
<アトロプ異性体の製造方法>
本実施形態に係るアトロプ異性体は、例えば、以下に記載する合成方法により製造することができる。
【0026】
<製造例1:R1及びR2が対称な一般式(2)で表される化合物の製造>
(S)-1,1'-ビ-2-ナフトール(S-Binol)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)及び4-({6-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ]ナフタレン-2-カルボニル}オキシ)安息香酸(Ma-NP-BA)を反応容器に加え、ジクロロメタン(DCM)中で撹拌する。得られた懸濁液に、1-(3-ジメチルアミノプロピル)
-3-エチルカルボジイミド塩酸(EDC)を少量ずつ一定の間隔で加えることにより、S-BinolがMa-NP-BAによりジエステル化された化合物、すなわち、R1及びR2がそれぞれ構造(R-1)である下記の一般式(2.1)で表される化合物を得ることができる。
【0027】
【0028】
<製造例2:R1及びR2が非対称な一般式(2)で表される化合物の製造>
(工程1)
S-Binol、DMAP及び4-(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)安息香酸(5PCA)を反応容器に加え、DCM中で撹拌する。得られた懸濁液にEDCを少量ずつ一定の間隔で加えることにより、S-Binolが5PCAによりモノエステル化された化合物(5PCAのS-Binolモノエステル)を合成する。
【0029】
(工程2)
5PCAのS-Binolモノエステルを含む溶液に、4'-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ][1,1'-ビフェニル]-4-カルボン酸(Ma-BPh-A)及びEDCを加えることにより、S-Binolが5PCAとMa-BPh-Aによりジエステル化された化合物、すなわち、R1及びR2の一方が構造(R-6)、他方が構造(R-4)である一般式(2.2)で表される化合物を得ることができる。
【0030】
【0031】
<重合性液晶組成物>
本実施形態に係る重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物と、ドーパント剤として上述のアトロプ異性体とを含む。また、重合性液晶組成物には、これらを重合させて重合性液晶組成物の硬化を促す重合開始剤、これらを溶解させる溶剤、さらには任意に各種添加剤が含まれている。このような重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物及び上述のアトロプ異性体の液晶成分を溶剤に溶解させ、得られた溶液に、重合開始剤、及び任意に添加剤を添加することにより作製することができる。重合性液晶化合物に上述のアトロプ異性体を添加すると、重合性液晶化合物がコレステリック液晶状態となり、液晶分子が螺旋状に配向する。液晶分子が螺旋状に配向することにより、重合性液晶組成物を用いて作製した各光学素子において、その螺旋ピッチに応じた光の波長の円偏光成分を選択的に反射する選択反射機能が付与される。
【0032】
重合性液晶化合物は、所定の温度範囲や濃度範囲で液晶性を示し、紫外線や熱により配向状態を維持したまま重合し、その配向状態を固定化できる化合物である。このような重合性液晶化合物は、分子内に重合性基を有する重合性液晶モノマーであることが好ましい。重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、カルコン基、シンナモイル基及びエポキシ基等が挙げられる。また、液晶性を示すためには分子内にメソゲン基があることが好ましく、メソゲン基は、例えばビフェニル基、ターフェニル基、(ポリ)安息香酸フェニルエステル基、(ポリ)エーテル基、ベンジリデンアニリン基、又はアセナフトキノキサリン基等のロッド状、板状、或いはトリフェニレン基、フタロシアニン基、又はアザクラウン基等の円盤状の置換基、すなわち、液晶相挙動を誘導する能力を有する基を意味する。ロッド状又は板状の置換基を有する液晶化合物はカラミティック液晶として当技術分野で既知である。このような重合性液晶モノマーとしては、具体的には特開2003-315556号公報、特開2004-29824号公報および特許第5463666号に記載の重合性液晶化合物、PALIOCOLORシリーズ(BASF社製)、RMMシリーズ(Merck社製)等の重合性ネマチック液晶モノマーが挙げられる。重合性液晶化合物は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
ドーパント剤として機能する上述のアトロプ異性体は、上述の重合性液晶化合物を右巻き又は左巻きにねじれ配向させることができるため、コレステリック液晶相を示す重合性液晶組成物を得ることができる。上述の重合性液晶化合物と上述のアトロプ異性体との重
合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーが形成される。重合性液晶組成物中に含まれるアトロプ異性体の含有量は、併用される重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは1.0質量部以上5.0質量部以下である。液晶組成物中に重合性アトロプ異性体の含有量が少ないほど液晶性への影響を低減させることができる。
【0034】
重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物と反応可能であって、液晶性を有しない重合性化合物を含んでいてもよい。このような重合性化合物としては、例えば、紫外線硬化型樹脂等が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としては、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと1,6-ヘキサメチレン-ジ-イソシアネートとの反応生成物、イソシアヌル環を有するトリイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとの反応生成物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロン-ジ-イソシアネートとの反応生成物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタアクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、トリグリセロール-ジ-(メタ)アクリレート、プロピレングリコール-ジ-グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ポリプロピレングリコール-ジ-(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール-ジ-(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ジ-(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール-ジ-(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール-ジ-(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール-ジ-(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール-ジ-グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、1,6-ヘキサンジオール-ジ-(メタ)アクリレート、グリセロール-ジ-(メタ)アクリレート、エチレングリコール-ジ-グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ジエチレングリコール-ジ-グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(メタアクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビスフェノールA-ジ-グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-シアノエチル(メタ)アクリレート、ブチルグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独または複数混合して用いることができる。これらの液晶性を有さない紫外線硬化型樹脂は、重合性液晶組成物が液晶性を失わない程度に液晶組成物中に添加されていればよく、重合性液晶化合物100質量部に対して好ましくは0.1質量部以
上25質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下の添加量である。
【0035】
重合性液晶組成物を重合反応により硬化させるため、重合性液晶組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合性液晶組成物は、一般に紫外線照射により硬化反応を進行させるため、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤については、特に限定されるものではなく、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 907」)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM Resins B.V.社製、「Omnirad 184」)、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 2959」)、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(メルク社製「Darocur 953」)、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(メルク社製「Darocur 1116」)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 1173」)、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン化合物;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 651」)等のベンゾイン化合物;
ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン(日本化薬社製「KAYACURE MBP」)等のベンゾフェノン化合物;
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製「Omnirad TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製「Omnirad 819)等のホスフィンオキサイド化合物;及び
チオキサントン、2-クロロチオキサントン(日本化薬社製「KAYACURE CTX」)、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン(日本化薬社製「KAYACURE RTX」)、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン(日本化薬社製「KAYACURE CTX」)、2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「KAYACURE DETX」)、2,4-ジイソプロピルチオキサントン(日本化薬社製「KAYACURE DITX」)等のチオキサントン化合物等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
光重合開始剤として、ベンゾフェノン化合物又はチオキサントン化合物を用いる場合、光重合反応を促進させるために、反応助剤を併用することが好ましい。反応助剤としては特に限定されず、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n-ブチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ミヒラーケトン、4,4’-ジエチルアミノフェノン、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-(ジメチルアミノ)安息香酸2-ブトキシエチル、4-(ジメチルアミノ)安息香酸イソアミル等のアミン化合物が挙げられる。
【0037】
光重合開始剤及び反応助剤の添加量は、重合性液晶組成物の液晶性に影響を与えない範囲であることが好ましく、重合性液晶組成物中の紫外線で硬化する化合物100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。また、助剤の添加量は光重合開始剤に対して、質量基準で2倍以
上であることが好ましい。
【0038】
重合性液晶組成物には、さらに溶剤が含まれる。このような溶剤は、使用する重合性液晶化合物、ドーパント剤等を溶解できれば、特に限定されるものではなく、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、アセトン、キシレン、アニソールな等が挙げられる。また、これらの溶剤は任意の割合で加えることができ、1種類のみを加えてもよく、複数の溶剤を併用してもよい。これら溶剤は、オーブン、フィルムコーターライン等の乾燥ゾーンにて乾燥除去される。
【0039】
重合性液晶組成物は、必要に応じて、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、可塑剤、流動調整剤等の添加剤を任意の割合で更に含んでいてもよい。レベリング剤としてはフッ素系化合物、シリコーン系化合物、アクリル系化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられ、光安定化剤としてはヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられ、酸化防止剤としてはフェノール系化合物等が挙げられる。重合禁止剤としては、メトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン等が挙げられ、架橋剤としては、ポリイソシアネート類、メラミン化合物等が挙げられる。可塑剤としてはジメチルフタレートやジエチルフタレートのようなフタル酸エステル、トリス(2-エチルヘキシル)トリメリテートのようなトリメリト酸エステル、ジメチルアジペートやジブチルアジペートのような脂肪族二塩基酸エステル、トリブチルホスフェートやトリフェニルホスフェートのような正燐酸エステル、グリセルトリアセテートや2-エチルヘキシルアセテートのような酢酸エステルが挙げられる。流動調整剤としては、「TEGO(登録商標)Rad 2100」(エボニック社製)等が挙げられる。
【0040】
<光学フィルム>
本実施形態に係る重合性液晶組成物は、光反射フィルム、位相差フィルム、偏光フィルム等の光学フィルムの原料として利用することができる。このような光学フィルムは基材として使用される所定のフィルム上に重合性液晶組成物の塗布膜を形成し、その塗布膜を硬化させることにより作製することができる。例えば、重合性液晶組成物を用いて光反射フィルムを作製する場合、上述の各成分を含む重合性液晶組成物を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の基材上に厚みができるだけ均一になるように塗布し、加熱にて溶剤を除去させながら、一定時間放置することにより基材上に塗布膜を形成する。加熱条件は、基材上で重合性液晶化合物がコレステリック液晶状態となって所望の螺旋ピッチで配向するような温度条件であれば特に限定されるものはないが、好ましくは40~90℃である。このとき、基材の表面を重合性液晶組成物の塗布前にラビング、延伸等の配向処理をしておくことで、コレステリック液晶の配向をより均一にすることができ、光学フィルムとしてのヘーズ値を低減することが可能となる。次いで、この配向状態を保持したまま、高圧水銀灯等で紫外線を照射し、コレステリック液晶の配向を固定化させることにより、重合性液晶組成物の硬化膜を有する光学フィルム(光反射フィルム)が作製される。ここで、右巻き螺旋配向を示すアトロプ異性体を使用した場合、右円偏光を選択的に反射する光学フィルムが得られ、一方、左巻き螺旋配向を示すアトロプ異性体を使用した場合、左円偏光を選択的に反射する光学フィルムが得られる。この特定の円偏光を選択的に反射する現象を選択反射といい、選択反射機能を有する光学フィルムを得ることができる。
【0041】
本実施形態に係る光学フィルムは、選択反射機能を示すため、入射光量や眩しさの低減、特定の波長帯域の光の反射が可能であり、例えば、眼鏡、サングラス、ゴーグル等のアイウェア、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置への適用に有効である。
【実施例0042】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。また、特に言及されない限り、以下の「%」及び「部」はそれぞれ質量基準であり、室温は20℃±5℃の範囲とする。
【0043】
<実施例1>
1.43gの(S)-1,1'-ビ-2-ナフトール(5mmol:S-Binol)、61mgのジメチルアミノピリジン(DMAP)及び4.33gの4-({6-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ]ナフタレン-2-カルボニル}オキシ)安息香酸(11.5mmol:Ma-NP-BA)を50mlのジクロロメタン(DCM)を含む反応容器中に加え、室温で撹拌した。得られた懸濁液に、2.22gの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸(11.5mmol:EDC)を1.11gずつ2回に分けて1時間間隔で加え、20時間撹拌した。その後、薄層クロマトグラフィー(TLC)により分析すると、S-Binolのジエステルへの完全な変換を示した。後処理として、この溶液を10%塩化ナトリウム溶液で洗浄し、EDC-尿素副生成物を除去し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。次いで、DCMを含む溶液を約30%(化合物2.1の最大収率に基づく)に濃縮し、250mlのメタノールで沈殿させた。沈殿物を濾過した後、メタノールで2回洗浄し、乾燥させることにより、4.49gの下記の一般式(2.1)で表される化合物(収率90%)を得た。
【0044】
【0045】
上記一般式(2.1)で表される化合物(化合物2.1)をさらに精製することなく、1.9%の光重合開始剤(Omnirad TPO)と0.1%の流動調整剤(TEGO(登録商標)Rad 2100)を含む重合性液晶化合物(LC242:RM257=1:1)中に加えて、重合性液晶化合物に対する化合物2.1の含有量を3.5%に調整し、得られた重合性液晶化合物と化合物2.1との混合物をm-キシレン(溶剤)に溶解させて、3.5%の化合物2.1を35%含む重合性液晶組成物を作製した。この重合性液晶組成物をナイロン布で予めラビング処理された東洋紡社製のPETフィルム(厚さ100μm)上にスピンコーティング(回転数:750rpm)により塗布した。得られた塗膜を80℃にて5分間乾燥させ、液晶を配向させた後、窒素ガスをパージしながら塗膜に365nmの波長の光を発するLED(100mW/cm2)を照射し、塗膜を80℃で30秒間硬化させ、PETフィルム上にコレステリック液晶層が形成された光学フィルムを作製した。この光学フィルムの中心反射波長は494nmであり、化合物2.1のHTP値は92.5μm-1であった。
あった。
【0046】
<実施例2>
(工程1)
2.86gのS-Binol(10mmol)、0.12gのDMAP及び2.81gの4-(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)安息香酸(10.25mmol:5PCA)を60mlのDCMを含む反応容器に加え、室温で撹拌した。得られた懸濁液に、2.12gのEDC(11mmol)を1.06gずつ2回に分けて1時間間隔で加え、20時間撹拌した。その後、薄層クロマトグラフィー(TLC)により分析すると、S-Binolのモノエステル、微量のS-Binol、及び微量のS-Binolのジエステル(「副生成物」)の形成を示した。
【0047】
(工程2)
工程1で得られた5PCAのS-Binolモノエステルを含む溶液に、3.17gの4'-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ][1,1'-ビフェニル]-4-カルボン酸(11.25mmol:Ma-BPh-A)及び2.30gのEDC(12mmol)を1.15gずつ2回に分けて1時間間隔で加え、20時間撹拌した。その後、薄層クロマトグラフィー(TLC)により分析すると、S-Binolのジエステルへの完全な変換を示した。後処理として、この溶液を10%塩化ナトリウム溶液で洗浄し、EDC-尿素副生成物を除去し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。次いで、DCMを含む溶液を約30%(化合物2.2の最大収率に基づく)に濃縮し、300mlのメタノールで沈殿させた。沈殿物を濾過した後、メタノールで2回洗浄し、乾燥させることにより、6.68gの下記一般式(2.2)で表される化合物(収率83%)を得た。
【0048】
【0049】
得られた一般式(2.2)で表される化合物(化合物2.2)をさらに精製することなく、重合性液晶化合物に対する化合物2.2の含有量を5.0%に調整した以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。このフィルムの中心反射波長は416nmであり、化合物2.2のHTP値は76.9μm-1であった。
あった。
【0050】
以下の実施例3~9で作製された化合物は、実施例2に記載された製法と同じ2段階の工程により合成した。
【0051】
<実施例3>
【0052】
2.86gのS-Binol(10mmol)を使用して、工程1で4-(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)安息香酸の代わりに4-[(4-メトキシベンゾイル)オキシ]安息香酸(MBBA)と反応させ、工程2で同様に4'-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ][1,1'-ビフェニル]-4-カルボン酸(Ma-BPh-A)を使用した。後処理後、7.8gの下記一般式(2.3)で表される化合物(収率97%)を得た。得られた一般式(2.3)で表される化合物(化合物2.3)をさらに精製することなく、重合性液晶化合物に対する化合物2.3の含有量を4.0%に調整した以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。このフィルムの中心反射波長は493nmであり、化合物2.3のHTP値は81.1μm-1であった。
【0053】
【0054】
<実施例4>
2.86gのS-Binol(10mmol)を使用して、工程1で4-(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)安息香酸の代わりに上記(R-7)で表される化合物に相当する安息香酸(5PCA-BA)と反応させ、工程2で同様に4'-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ][1,1'-ビフェニル]-4-カルボン酸(Ma-BPh-A)を使用した。後処理後、4.1gの下記一般式(2.4)で表される化合物(収率97%)を得た。得られた一般式(2.4)で表される化合物(化合物2.4)をさらに精製することなく、重合性液晶化合物に対する化合物2.4の含有量を3.5%に調整した以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。このフィルムの中心反射波長は545nmであり、化合物2.4のHTP値は83.9μm-1であった。
【0055】
【0056】
<実施例5>
2.86gのS-Binol(10mmol)を使用して、工程1で4-(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)安息香酸の代わりに上記(R-7)で表される化合物に相当する安息香酸(5PCA-BA)と反応させ、工程2で4'-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ][1,1'-ビフェニル]-4-カルボン酸の代わりに上記(R-3)で表される化合物に相当する安息香酸(Ma-BPh-BA)を使用した。後処理後、10.1gの下記一般式(2.5)で表される化合物(収率97%)を得た。得られた一般式(2.5)で表される化合物(化合物2.5)をさらに精製することなく、重合性液晶化合物に対する化合物2.5の含有量を3.0%に調整した以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。このフィルムの中心反射波長は548nmであり、化合物2.5のHTP値は97.3μm-1であった。
【0057】
【0058】
<実施例6>
2.86gのS-Binol(10mmol)を使用して、工程1で4-(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)安息香酸(5PCA)と反応させ、工程2で4'-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ][1,1'-ビフェニル]-4-カルボン酸の代わりに上記(R-3)で表される化合物に相当する安息香酸(Ma-BPh-BA)を使用した。後処理後、7.3gの下記一般式(2.6)で表される化合物(収率78%)を得た。得られた一般式(2.6)で表される化合物(化合物2.6)をさらに精製することなく、重合性液晶化合物に対する化合物2.6の含有量を3.5%に調整した以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。このフィルムの中心反射波長は546nmであり、化合物2.6のHTP値は83.7μm-1であった。
【0059】
【0060】
<実施例7>
2.86gのS-Binol(10mmol)と61mgのDMAPを使用して、工程1で4-(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)安息香酸の代わりに4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)安息香酸(3PCA)と反応させ、工程2で4'-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ][1,1'-ビフェニル]-4-カルボン酸の代わりに4-({6-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ]ナフタレン-2-カルボニル}オキシ)安息香酸(Ma-NP-BA)を使用した。後処理後、7.4gの下記一般式(2.7)で表される化合物(収率85%)を得た。得られた一般式(2.7)で表される化合物(化合物2.7)をさらに精製することなく、重合性液晶化合物に対する化合物2.7の含有量を3.5%に調整した以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。このフィルムの中心反射波長は572nmであり、化合物2.7のHTP値は79.9μm-1であった。
【0061】
【0062】
<実施例8>
2.86gの(R)-1,1'-ビ-2-ナフトール(10mmol:R-Binol)を使用して、工程1で4-(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)安息香酸の代わりに上記(R-7)で表される化合物に相当する安息香酸(5PCA-BA)と反応させ、工程2で4'-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ][1,1'-ビフェニル]-4-カルボン酸の代わりに4-({6-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ]ナフタレン-2-カルボニル}オキシ)安息香酸(Ma-NP-BA)を使用した。後処理後、10.0gの下記一般式(2.8)で表される化合物(収率98%)を得た。得られた一般式(2.8)で表される化合物(化合物2.8)をさらに精製することなく、重合性液晶化合物に対する化合物2.8の含有量を3.5%に調整した以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。このフィルムの中心反射波長は495nmであり、化合物2.8のHTP値は92.4μm-1であった。
【0063】
【0064】
<実施例9>
21.45gのS-Binol(75mmol)と0.46gのDMAPを使用して、工程1で4-(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)安息香酸の代わりに4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)安息香酸(3PCA)と反応させ、工程2で4'-[(2-メチルプロパ-2-エノイル)オキシ][1,1'-ビフェニル]-4-カルボン酸を使用した。後処理後、53.1gの下記一般式(2.9)で表される化合物(収率91%)を得た。得られた一般式(2.9)で表される化合物(化合物2.9)をさらに精製することなく、重合性液晶化合物に対する化合物2.9の含有量を3.5%に調整した以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。このフィルムの中心反射波長は570nmであり、化合物2.9のHTP値は80.2μm-1であった。
【0065】
【0066】
<比較例1>
本発明のアトロプ異性体の代わりに、比較化合物として市販品である「Lumogen(登録商標)S750」(BASF社製)を使用した。また、重合性液晶化合物に対する比較化合物の含有量を5.0%に調整した以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。このフィルムの中心反射波長は509nmであり、比較化合物のHTP値は62.9μm-1であった。
【0067】
実施例1~9で作製したアトロプ異性体および比較例1で使用した比較化合物並びに各光学フィルムについて、重合性液晶化合物に対するアトロプ異性体の含有量(以下、「濃度」ともいう)を変更しながら、HTP値及び中心反射波長を以下のように測定した。その結果を表1に示す。
【0068】
<HTP値及び中心反射波長>
化合物2.1~2.9及び比較化合物(ドーパント剤)を重合性液晶化合物(LC242:RM257=1:1)中にそれぞれ加えて、重合性液晶化合物に対するドーパント剤の濃度を調整し、下記の式(A)に基づき、HTP値の絶対値を算出した。式(A)中、Pはらせんピッチ長(μm)、Cは重合性液晶化合物に対するドーパント剤の濃度(%)を表す。また、Pは、光学フィルムの反射帯域における中心反射波長(λr)を測定し、下記の式(B)に基づき算出した。ここで、重合性液晶化合物の平均屈折率(n)は1.6であると仮定して計算した。また、中心反射波長(λr)は、分光光度計を用いて光学フィルムの反射スペクトルを測定し、その反射スペクトルの最大高さの半分に相当する波長(λminとλmax)を割り出し、(λmin+λmax)/2を計算することで特定した。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
表1に示すように、実施例1~9で作製したアトロプ異性体は、3~5%の範囲で添加
量を変更しても、HTP値がいずれも75を超えおり、少量でも高いHTP値を示した。特に実施例1、5で作製したアトロプ異性体は3%の少ない添加量においても90を超える非常に高いHTP値を示した。また、実施例1~6で作製した光学フィルムは、少量の添加量でもその添加量に応じて中心反射波長を変えることができるため、液晶の性質に影響を及ぼすことなく、可視光領域での反射帯域が拡大された光学フィルムを得ることができた。
【0073】
一方、比較例1で使用した比較化合物は、実施例1~9で作製したアトロプ異性体が有するHTP値よりも低く、また、比較例1で作製した光学フィルムの中心反射波長は5.0%、4.0%の添加量でそれぞれ509nm、630nmであったため、より少ない濃度において可視光領域での反射帯域に制限があった。