(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181835
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】レンタカーサービスの管理方法、管理装置及び管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20231218BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20231218BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20231218BHJP
【FI】
G08G1/00 D
H04N7/18 U
H04N7/18 J
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095191
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 峻
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹田 友弥
(72)【発明者】
【氏名】西山 由華
(72)【発明者】
【氏名】千葉 寛也
(72)【発明者】
【氏名】菅野 達也
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰造
【テーマコード(参考)】
5C054
5H181
5L049
【Fターム(参考)】
5C054DA09
5C054EA07
5C054FC12
5C054GB01
5C054GD09
5C054HA30
5H181AA01
5H181CC04
5H181FF10
5H181MA44
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】レンタカーサービスにおいて、利用者への車両の貸し出し中に発生した各種の不具合の原因を、車両の所有者が推測又は特定することが可能な技術を提供する。
【解決手段】利用者からの貸し出し依頼に応じて車両を貸し出すレンタカーサービスを管理する方法が提供される。前記方法は、前記車両に搭載されたカメラを用いて取得された前記車両の周囲及び室内の少なくとも一方の画像データを取得するステップと、前記車両の前記利用者への貸し出しの終了後、前記車両の所有者の端末から前記少なくとも一方の画像データの確認依頼を受け付けた場合、前記車両の前記利用者への貸し出し中に取得された前記少なくとも一方の画像データを、前記所有者の端末において再生可能に処理するステップと、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者からの貸し出し依頼に応じて車両を貸し出すレンタカーサービスを管理する方法であって、
前記車両に搭載されたカメラを用いて取得された前記車両の周囲及び室内の少なくとも一方の画像データを取得するステップと、
前記車両の前記利用者への貸し出しの終了後、前記車両の所有者の端末から前記少なくとも一方の画像データの確認依頼を受け付けた場合、前記車両の前記利用者への貸し出し中に取得された前記少なくとも一方の画像データを、前記所有者の端末において再生可能に処理するステップと、
を含む
ことを特徴とするレンタカーサービスの管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記少なくとも一方の画像データは前記車両の周囲画像データであり、
前記所有者の端末から前記周囲画像データの確認依頼を受け付けた場合、当該周囲画像データを前記所有者の端末において再生可能に処理する前に、前記車両の前記利用者への貸し出し中に取得された当該周囲画像データに含まれる物標の認識処理を行うステップと、
前記認識処理において前記車両に近づいた動的物標の異常な行動パターンが認識された場合、認識された前記動的物標が含まれる前記周囲画像データに目印データを付与するステップと、
前記所有者の端末における前記周囲画像データの再生時、前記目印データを前記所有者の端末において認識可能に処理するステップと、
を更に含む
ことを特徴とするレンタカーサービスの管理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記少なくとも一方の画像データは前記車両の室内画像データであり、
前記所有者の端末から前記室内画像データの確認依頼を受け付けた場合、当該室内画像データを前記所有者の端末において再生可能に処理する前に、前記車両の前記利用者への貸し出し中に取得された当該室内画像データに含まれる物標の認識処理を行うステップと、
前記認識処理において前記車両の室内の動的物標の異常な行動パターンが認識され、又は、前記車両の室内の静的物標の動きが認識された場合、認識された前記動的物標又は前記静的物標が含まれる前記室内画像データに目印データを付与するステップと、
前記所有者の端末における前記室内画像データの再生時、前記目印データを前記所有者の端末において認識可能に処理するステップと、
を更に含む
ことを特徴とするレンタカーサービスの管理方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記車両に搭載されたマイクを用いて取得された前記車両の周囲及び室内の少なくとも一方の音データを取得するステップと、
前記車両の前記利用者への貸し出しの終了後、前記所有者の端末から前記少なくとも一方の音データの確認依頼を受け付けた場合、前記車両の前記利用者への貸し出し中に前記マイクを用いて取得された前記少なくとも一方の音データを、前記所有者の端末において再生可能に処理するステップと、
ことを特徴とするレンタカーサービスの管理方法。
【請求項5】
利用者からの貸し出し依頼に応じて車両を貸し出すレンタカーサービスを管理する装置であって、
プロセッサと、
前記車両に搭載されたカメラを用いて取得された前記車両の周囲及び室内の少なくとも一方の画像データが格納されたメモリと、
を備え、
前記プロセッサが、前記車両の前記利用者への貸し出しの終了後、前記車両の所有者の端末から前記少なくとも一方の画像データの確認依頼を受け付けた場合、前記車両の前記利用者への貸し出し中に取得された前記少なくとも一方の画像データを、前記所有者の端末において再生可能に処理する
ように構成されていることを特徴とするレンタカーサービスの運用装置。
【請求項6】
利用者からの貸し出し依頼に応じて車両を貸し出すレンタカーサービスを管理するプログラムであって、
前記車両に搭載されたカメラを用いて取得された前記車両の周囲及び室内の少なくとも一方の画像データを取得する処理と、
前記車両の前記利用者への貸し出しの終了後、前記車両の所有者の端末から前記少なくとも一方の画像データの確認依頼を受け付けた場合、前記車両の前記利用者への貸し出し中に取得された前記少なくとも一方の画像データを、前記所有者の端末において再生可能にする処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするレンタカーサービスの管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、利用者からの貸し出し依頼に応じて車両を貸し出すレンタカーサービスを管理する方法、装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006-182234号公報は、車両のカメラシステムを開示する。この従来のカメラシステムは、車両のドアミラーに設けられたカメラの撮影範囲を、このドアミラー位置に応じて変更する。具体的に、ドアミラーの位置が通常の使用位置にあるときには車両の周囲を撮影範囲に設定し、ドアミラーの位置が格納位置にあるときには車両の室内を撮影範囲に設定する。従来のカメラシステムによれば、車両の周囲と室内の監視を、一台のカメラで実現することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載カメラを用いて車両の周囲を監視することは、走行中の車両の安全性を確保する観点だけでなく、駐車中の車体を傷つけるといった悪戯を予防する観点からも重要である。また、車載カメラを用いて車両の室内を監視することは、駐車中の車両の室内に残された貴重品、各種機器を盗むといった犯罪を予防する観点から重要である。加えて、車両の乗員の異常状態を早期に検出するといった観点からも重要である。
【0005】
利用者からの貸し出し依頼に応じて車両を貸し出すレンタカーサービスを考える。この場合、車両の所有者は、利用者への車両の貸し出し中に発生した各種の不具合を確認することを希望することが想定される。ただし、貸し出し中に車載カメラを用いて車両の周囲と室内の監視を行うことは、利用者のプライバシーの保護の観点から適切でない。しかしながら、例えば、貸し出し前にはなかった車体の傷又は室内の汚れが貸し出し後に見つかったときに、この原因を推測又は特定することができないのは所有者に不利益である。
【0006】
本開示の1つの目的は、レンタカーサービスにおいて、利用者への車両の貸し出し中に発生した各種の不具合の原因を、車両の所有者が推測又は特定することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の観点は、利用者からの貸し出し依頼に応じて車両を貸し出すレンタカーサービスを管理する方法であり、次の特徴を有する。
前記方法は、
前記車両に搭載されたカメラを用いて取得された前記車両の周囲及び室内の少なくとも一方の画像データを取得するステップと、
前記車両の前記利用者への貸し出しの終了後、前記車両の所有者の端末から前記少なくとも一方の画像データの確認依頼を受け付けた場合、前記車両の前記利用者への貸し出し中に取得された前記少なくとも一方の画像データを、前記所有者の端末において再生可能に処理するステップと、
を含む。
【0008】
本開示の第2の観点は、利用者からの貸し出し依頼に応じて車両を貸し出すレンタカーサービスを管理する装置であり、次の特徴を有する。
前記装置は、プロセッサと、メモリとを備える。前記メモリには、前記車両に搭載されたカメラを用いて取得された前記車両の周囲及び室内の少なくとも一方の画像データが格納される。
前記プロセッサは、前記車両の前記利用者への貸し出しの終了後、前記車両の所有者の端末から前記少なくとも一方の画像データの確認依頼を受け付けた場合、前記車両の前記利用者への貸し出し中に取得された前記少なくとも一方の画像データを、前記所有者の端末において再生可能に処理するように構成されている。
【0009】
本開示の第3の観点は、利用者からの貸し出し依頼に応じて車両を貸し出すレンタカーサービスを管理するプログラムであり、次の特徴を有する。
前記プログラムは、
前記車両に搭載されたカメラを用いて取得された前記車両の周囲及び室内の少なくとも一方の画像データを取得する処理と、
前記車両の前記利用者への貸し出しの終了後、前記車両の所有者の端末から前記少なくとも一方の画像データの確認依頼を受け付けた場合、前記車両の前記利用者への貸し出し中に取得された前記少なくとも一方の画像データを、前記所有者の端末において再生可能にする処理と、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、車両の所有者からの確認依頼に応じて、当該車両の利用者への貸し出し中に取得された当該車両の周囲及び室内の少なくとも一方の画像データが当該所有者の端末において再生可能となる。従って、利用者への車両の貸し出し中に発生した各種の不具合の原因を、当該車両の所有者が推測又は特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】レンタカーサービスの概要を説明する図である。
【
図2】レンタカーサービスのシステムの構成例を説明するブロック図である。
【
図3】車両の端末(プロセッサ)による処理のうち、実施形態に特に関連する処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図4】管理サーバ(プロセッサ)による処理のうち、実施形態に特に関連する処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態に係るレンタカーサービスの管理方法、管理装置及び管理プログラムについて説明する。尚、各図において、同一又は相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化し又は省略する。
【0013】
1.実施形態の概要
1-1.レンタカーサービス
図1は、レンタカーサービスの概要を説明する図である。レンタカーサービスは、車両の一時的な利用を希望する利用者USに、個人又は法人である所有者OWの車両VHを貸し出すサービスである。利用者USが希望する利用条件と、所有者OWが希望する貸し出し条件とが一致する場合、所有者OWの車両VHの貸し出しが行われる。利用条件としては、利用者USが車両VHの一時的な利用を希望する日及び時間帯、車両VHの利用を開始及び終了する位置、利用を希望する車両VHの諸元(例えば、車格、乗車定員、最大積載量)、利用中の車両VHの主たる用途などが例示される。貸し出し条件としては、所有者OWが車両VHを貸し出すことのできる日及び時間帯、貸し出し中の車両VHの主たる用途などが例示される。
【0014】
図1に示される管理サーバ1は、レンタカーサービスを管理する。レンタカーサービスの管理としては、利用者USと所有者OW(車両VH)のマッチングが例示される。レンタカーサービスの管理には、また、利用者US、所有者OW及び車両VHのデータの管理も含まれる。このような管理を行うため、管理サーバ1は、車両VHの端末2、所有者OWの端末3及び利用者USの端末4と、ネットワーク5を介してそれぞれ通信する。以下、説明の便宜上、車両VHの端末2を「車両端末2」とも称し、所有者OWの端末3を「所有者端末3」とも称し、利用者USの端末4を「利用者端末4」とも称す。
【0015】
レンタカーサービスの管理には、更に、利用者USへの貸し出し中に車両VHのカメラにより取得された画像データの管理も含まれる。カメラとしては、車両VHの周囲(前方、側方及び後方)を撮像するカメラ、車両VHの室内を撮像するカメラが例示される。以下、説明の便宜上、車両VHの周囲を撮像するカメラにより取得された画像データは、「周囲画像データIMS」とも称される。また、車両VHの室内を撮像するカメラにより取得された画像データは、「室内画像データIMR」とも称される。周囲画像データIMS及び室内画像データIMRは、典型的には、動画データである。
【0016】
周囲画像データIMS及び室内画像データIMRは、車両VHの稼働中だけでなく車両VHの非稼働中も取得される。これらの画像データは、また、車両VHが有する所定の記憶装置に記録される。ただし、利用者USへの貸し出し中に取得されたこれらの画像データは、利用者USのプライバシーを保護する観点から、所有者OWが自由に閲覧することができないように記録される。これらの画像データは、また、ネットワーク5を通じて管理サーバ1に送信され、管理サーバ1が有する所定の記憶装置に記録される。尚、車両VHが有する記憶装置に記録されたこれらの画像データは、管理サーバ1への送信後にここから削除されることが望ましい。
【0017】
1-2.実施形態の特徴
実施形態では、利用者US(利用者端末4)からの貸し出し依頼を管理サーバ1が受け付けた場合、利用者USが希望する利用条件と、所有者OWが希望する貸し出し条件とが一致する車両VHが選び出される。選び出された車両VHのデータは、管理サーバ1から利用者端末4に送信される。車両VHの利用を開始する場合、利用者USは、例えば、近距離通信などを利用してこの車両VHと認証を行う。これにより、利用者USは車両VHの利用が可能になる。車両VHの利用を終了する場合も、利用者USは、この車両VHと認証を行う。
【0018】
車両VHによる利用者USの認証が有効である間、即ち、利用者USによるこの車両VHの利用中(つまり、車両VHの貸し出し中)、周囲画像データIMS及び室内画像データIMRが取得される。利用者USによる車両VHの利用中に取得されたこれらの画像データは、車両VH(車両端末2)から管理サーバ1に送信される。車両VHから管理サーバ1への画像データの送信は、例えば、通信条件が満たされるときに行われる。画像データの送信は、常時行われてもよいし、定期的に行われてもよい。
【0019】
管理サーバ1が受信した周囲画像データIMS及び室内画像データIMRは、利用者USによる車両VHの利用後(つまり、車両VHの貸し出し後)、所定の期間に亘って管理サーバ1が有する記憶装置に保存される。これらの画像データの少なくとも一方に対する所有者OW(所有者端末3)からの確認依頼を管理サーバ1が受け付けた場合、管理サーバ1は、管理サーバ1が有する記憶装置に保存されている確認依頼の対象の画像データを所有者端末3において再生可能に処理する。以下、説明の便宜上、確認依頼の対象の画像データは、「確認対象データIMC」とも称される。
【0020】
所有者端末3において確認対象データIMCを再生可能にする処理としては、確認対象データIMCの所有者端末3への送信処理が例示される。送信された確認対象データIMCを所有者端末3において再生すれば、確認対象データIMCを所有者OWが確認することができる。別の例としては、所有者端末3においてこの画像データの再生がダウンロードと同時に行われるストリーミング用の処理が挙げられる。ストリーミング用の処理によれば、確認対象データIMCが所有者端末3の一時フォルダにアクセス可能に記録されることがない。そのため、利用者USのプライバシーの保護を図りつつ、所有者OW(又は所有者OWの代理人)からの確認依頼に応じることが可能となる。
【0021】
所有者OW(又は所有者OWの代理人)からの確認依頼があるということは、車両VHの貸し出し前にはなかった車体の傷又は室内の汚れを貸し出し後に見つけた所有者OW(又は代理人)が、これに関する問い合わせを管理サーバ1にしている状況が考えられる。この点、実施形態によれば、確認対象データIMCが所有者端末3において再生可能となるので、車体の傷又は室内の汚れを見つけた所有者OW(又は代理人)が、この原因を推測又は特定することが可能となる。
【0022】
実施形態において、管理サーバ1は、所有者端末3による確認対象データIMCを再生可能に処理する前に、この画像データに含まれる物標の認識処理を行うことが望ましい。
【0023】
確認対象データIMCが周囲画像データIMSの場合は、例えば次のような処理が行われることが望ましい。周囲画像データIMSに対する認識処理では、車両VHに近づいた動的物標(例えば、人、自転車、自動車、飛来物)の異常な行動パターンが認識されるか否かが判定されることが望ましい。そして、動的物標の異常な行動パターンが認識された場合、この動的物標が含まれる周囲画像データIMSに目印データを付与することが望ましい。動的物標の異常な行動パターンとしては、動的物標による車両VHへの接触、車両VHの周囲を周回する人間の動作、及び、車両VHの室内を何度も覗き込む人間の動作が例示される。
【0024】
確認対象データIMCが室内画像データIMRの場合は、例えば次のような処理が行われることが望ましい。室内画像データIMRに対する認識処理では、室内の動的物標(例えば、人、動物)の異常な行動パターン、又は、室内の静的物標(例えば、荷物)の動きが認識されるか否かが判定されることが望ましい。そして、動的物標の異常な行動パターン又は静的物標の動きが認識された場合、この動的物標又は静的物標が含まれる室内画像データIMRに目印データを付与することが望ましい。動的物標の異常な行動パターンとしては、車両VHの操作装置を強く押す、強く叩くといった乗員の動作が例示される。
【0025】
確認対象データIMCに目印データが付与された場合、管理サーバ1は、確認対象データIMCの再生時にこの目印データを所有者端末3において認識可能に処理することが望ましい。目印データを認識可能に処理する例としては、上述したストリーミング用の処理において、目印を示す画像を画像データに重畳する処理が挙げられる。目印データが所有者端末3において認識可能に処理されることで、所有者OWによる画像データの確認に要する時間を短縮することが可能となる。所有者OWによる車体の傷又は室内の汚れの原因の推測又は特定を助けることも可能となる。
【0026】
2.システムの構成例
図2は、レンタカーサービスのシステムの構成例を説明するブロック図である。
図2に示される構成例は、管理サーバ1と、車両端末2と、所有者端末3と、利用者端末4とを含んでいる。尚、
図1の説明で述べたように、管理サーバ1は、車両端末2、所有者端末3及び利用者端末4とそれぞれ通信する。
【0027】
図2に示される例では、管理サーバ1は、データ処理装置11と、所有者DB(データベース)12と、利用者DB13と、ログDB14と、を含んでいる。尚、これらのデータベースと、データ処理装置11とは所定のネットワークで接続されている。
【0028】
データ処理装置11は、少なくとも1つのプロセッサ15と、少なくとも1つのメモリ16と、を備えている。プロセッサ15は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。メモリ16は、DDRメモリなどの揮発性のメモリであり、プロセッサ15が使用する各種プログラムの展開及び各種データの一時保存を行う。プロセッサ15が使用する各種プログラムには、実施形態に係る管理プログラムが含まれる。プロセッサ15が使用する各種データには、所有者DB12などのデータベースに格納されたデータが含まれる。
【0029】
所有者DB12には、レンタカーサービスに車両VHを提供する所有者OWのデータ(以下、「所有者データOWN」とも称す。)が格納されている。所有者データOWNとしては、識別データが例示される。識別データは、所有者OWを識別するためのデータである。識別データは、例えば、レンタカーサービスに車両VHを登録する際に、所有者OWによって登録される。識別データとしては、所有者OWの氏名、年齢、性別、住所、連絡先といった一般的なデータが例示される。識別データには、所有者OWが所有する車両VHの識別データ(例えば、車両登録番号、車体識別番号)も含まれる。
【0030】
所有者データOWNには、車両VHの貸し出し条件データが例示される。貸し出し条件としては、所有者OWが車両VHを貸し出すことのできる日及び時間帯、貸し出し中の車両VHの主たる用途が例示される。貸し出し条件には、所有者OWが別途希望する条件(例えば、室内禁煙、ペット禁止)が追加されてもよい。
【0031】
利用者DB13には、車両VHの一時的な利用を希望する利用者USのデータ(以下、「利用者データUSR」とも称す。)が格納されている。利用者データUSRとしては、識別データが例示される。識別データは、利用者USを識別するためのデータである。識別データは、例えば、レンタカーサービスの利用の際に、利用者USによって登録される。識別データとしては、利用者USの氏名、年齢、性別、住所、連絡先といった一般的なデータが例示される。識別データには、所有者OWが所有する運転資格の区分(例えば、大型、中型、準中型及び普通)のデータも含まれる。
【0032】
利用者DB13には、車両VHの利用条件データが例示される。利用条件としては、利用者USが車両VHの一時的な利用を希望する日及び時間帯、車両VHの利用を開始及び終了する位置、利用を希望する車両VHの諸元、及び、利用中の車両VHの主たる用途が例示される。利用条件には、利用者USが別途希望する条件(例えば、室内喫煙、ペット同乗)が追加されてもよい。
【0033】
ログDB14は、管理サーバ1が有する所定の記憶装置の一例である。ログDB14には、車両VHの貸し出し中に記録されたログデータLOGが格納されている。ログデータLOGは、車両VHの識別データに対応する形で格納されている。ログデータLOGには、利用者USによる車両VHの利用中に取得された周囲画像データIMS及び室内画像データIMRが含まれる。ログデータLOGは、車両VHの識別データに加えて、車両VHを利用した利用者USの識別データに対応して格納されていてもよい。
【0034】
ログデータLOGには、周囲画像データIMS及び室内画像データIMR以外のデータが含まれていてもよい。これらの画像データ以外のデータとしては、利用者USによる車両VHの利用中に取得された周囲音データ及び室内音データが例示される。周囲音データは、車両VHの周囲音を記録するマイクにより取得された音データである。室内音データは、車両VHの室内音を記録するマイクにより取得された音データである。これらのデータは、車体の傷又は室内の汚れを見つけた所有者OWが、この原因を推測又は特定するのに役立つことが期待される。
【0035】
車両端末2は、車両VHに搭載される端末である。車両端末2は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのメモリとを備える。車両端末2の基本的な構成は、データ処理装置11のそれと同じである。
図2に示される例では、車両端末2に記憶装置21及び22が接続されている。記憶装置21及び22は、周囲画像データIMS及び室内画像データIMRを記録するための装置である。記憶装置21及び22は、車両VHが有する所定の記憶装置の一例である。記憶装置21には、例えば、車両VHの貸し出し中に記録されたこれらの画像データが格納される。記憶装置22には、車両VHの非貸し出し中(例えば、所有者OWによる車両VHの利用中)に記録されたこれらの画像データが格納される。
【0036】
周囲音データ及び室内音データが取得される場合、これらの音データが記憶装置21及び22に記録されてもよい。この場合、記憶装置21には、例えば、車両VHの貸し出し中に記録されたこれらの音データが格納される。記憶装置22には、車両VHの非貸し出し中に記録されたこれらの音データが格納される。
【0037】
所有者端末3は、所有者OWが管理サーバ1と通信するための端末である。利用者端末4は、利用者USが管理サーバ1と通信するための端末である。所有者端末3及び利用者端末4は、例えば、タブレット、スマートフォンなどの携帯型端末である。所有者端末3及び利用者端末4の基本的な構成は、データ処理装置11のそれと同じである。
【0038】
3.データ処理例
3-1.車両端末における処理例
図3は、車両端末2のプロセッサによる処理のうち、実施形態に特に関連する処理の流れを説明するフローチャートである。
図3に示されるフローチャートは、例えば、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0039】
図3に示されるルーチンでは、まず、イグニッションスイッチ(IG)が作動状態であるか否かが判定される(ステップS11)。イグニッションスイッチは、車両VHの電源回路を作動させるためのスイッチであり、車両VHの乗員(例えば、所有者OW)、利用者USによって操作される。車両VHが遠隔から操作可能に構成されている場合、車両VHのオペレータによりイグニッションスイッチが遠隔操作されてもよい。
【0040】
ステップS11の判定結果が肯定的な場合、車両VHが貸し出し中であるか否かが判定される(ステップS12)。車両VHが貸し出し中であるか否かは、例えば、利用者USが車両VHの利用を開始し、又は、利用者USが車両VHの利用を終了するときに行われる認証に基づいて判定することができる。別の例では、利用者USによる車両VHの利用日及び時間帯のデータに基づいて、車両VHが貸し出し中であるか否かが判定される。尚、この別の例の場合、利用者USによる利用日及び時間帯のデータを車両端末2が管理サーバ1から事前に受信していることが前提となる。
【0041】
ステップS12の判定結果が否定的な場合、周囲画像データIMS及び室内画像データIMRが記憶装置22に格納される(ステップS13)。周囲音データ及び室内音データが取得される場合、記憶装置22には、車両VHの非貸し出し中に記録されたこれらの音データが格納されてもよい。ステップS12の判定結果が肯定的な場合、周囲画像データIMS及び室内画像データIMRが記憶装置21に格納される(ステップS14)。周囲音データ及び室内音データが取得される場合、記憶装置21には、車両VHの貸し出し中に記録されたこれらの音データが格納されてもよい。
【0042】
ステップS14の処理に続いて、通信条件が満たされるか否かが判定される(ステップS15)。通信条件は、例えば、車両端末2の通信レベルが閾値以上であることが例示される。通信レベルは、例えば、車両端末2が現在接続しているネットワーク5上の基地局からのデータの受信速度、データの受信遅延時間、受信遅延時間の揺らぎ(ジッタ)等に基づいて計算することができる。ステップS15の処理は、肯定的な判定結果が得られるまで繰り返し行われる。
【0043】
ステップS15の判定結果が肯定的な場合、記憶装置21に格納されている周囲画像データIMS及び室内画像データIMRが管理サーバ1に送信される(ステップS16)。周囲音データ及び室内音データが記憶装置21に格納されている場合、これらの音データが管理サーバ1に送信されてもよい。
【0044】
3-2.管理サーバにおける処理例
図4は、管理サーバ1のプロセッサによる処理のうち、実施形態に特に関連する処理の流れを説明するフローチャートである。
図4に示されるフローチャートは、例えば、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0045】
図4に示されるルーチンでは、まず、所有者端末3から確認依頼を受け付けたか否かが判定される(ステップS21)。確認依頼は、例えば、所有者OWの識別データと、所有者OWが確認を希望する日及び時間帯のデータと、確認対象データIMCの種類(つまり、周囲画像データIMS及び室内画像データIMRの少なくとも一方の画像データ)とを含んでいる。確認対象データIMCの種類は、確認を要する車体の位置(例えば、前方、側方、後方)、確認を要する室内の位置(例えば、運転席、運転席以外の乗員席)といった詳細データを含んでいてもよい。
【0046】
ステップS21の判定結果が肯定的な場合、確認対象データIMCに対する認識処理が行われる(ステップS22)。尚、ステップS22の処理をスキップしてステップS23の処理が行われてもよい。ステップS22における認識処理の対象は、ステップS21の処理において取得された確認依頼に含まれる確認対象データIMCである。認識処理においては、例えば、機械学習モデルを用いて確認対象データIMCに含まれる物標が認識される。尚、機械学習モデルを用いた物標の認識には公知の手法を適用することができる。
【0047】
周囲画像データIMSに対する認識処理において、車両VHに近づいた動的物標(例えば、人、自転車、自動車、飛来物)の異常な行動パターンが認識された場合、この動的物標が含まれる周囲画像データIMSに目印データが付与される。室内画像データIMRに対する認識処理において、室内の動的物標(例えば、人、動物)の異常な行動パターン、又は、室内の静的物標(例えば、荷物)の動きが認識された場合、この動的物標又は静的物標が含まれる室内画像データIMRに目印データが付与される。
【0048】
ステップS22の処理に続いて、確認対象データIMCが再生可能に処理される(ステップS23)。再生可能にする処理としては、確認対象データIMCの所有者端末3への送信処理が例示される。別の例としては、所有者端末3において確認対象データIMCの再生がダウンロードと同時に行われるストリーミング用の処理が挙げられる。
【0049】
ステップS22の処理において目印データが付与された場合は、この目印データを所有者端末3において認識可能に処理される。認識可能にする処理としては、目印データの所有者端末3への送信処理が例示される。別の例としては、ストリーミング用の処理において、目印を示す画像を画像データに重畳する処理が挙げられる。
【0050】
周囲音データ及び室内音データが記憶装置21に格納されている場合、ステップS23の処理では、確認対象データIMCに対応する音データ(つまり、周囲音データ及び室内音データの少なくとも一方の音データ)が、確認対象データIMCと同時に再生可能に処理されてもよい。音データを再生可能にする処理としては、確認対象データIMCを再生可能にする処理の例と同じ例が例示される。音データを再生可能にする処理が行われることで、所有者OWによる車体の傷又は室内の汚れの原因の推測又は特定を助けることが可能となる。
【0051】
4.効果
以上説明した実施形態によれば、所有者OW(又は代理人)からの確認依頼に応じて確認対象データIMCが所有者端末3において再生可能となる。従って、車体の傷又は室内の汚れを見つけた所有者OW(又は代理人)が、この原因を推測又は特定することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1 管理サーバ
2 車両の端末
3 車両の所有者の端末
4 車両の利用者の端末
5 ネットワーク
11 データ処理装置
12 所有者DB
13 利用者DB
14 ログDB
15 プロセッサ
16 メモリ
21、22 記憶装置
OW 所有者
US 利用者
VH 車両
IMR 室内画像データ
IMS 周囲画像データ
IMC 確認対象データ