(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181839
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20231218BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20231218BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095201
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金野 千明
(72)【発明者】
【氏名】梶川 啓之
(72)【発明者】
【氏名】小野 長平
(72)【発明者】
【氏名】三沢 昭央
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA13
2H199DA15
2H199DA30
2H199DA33
2H199DA44
3D344AA21
3D344AB01
3D344AC25
3D344AD01
(57)【要約】
【課題】
ユーザの前方で立ち上がる映像光反射面で映像光を反射させ、良好な表示を行うことができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。本発明によれば、持続可能な開発目標の「3すべての人に健康と福祉を」に貢献する。
【解決手段】
このヘッドアップディスプレイ装置は、乗り物用のヘッドアップディスプレイ装置とされている。このヘッドアップディスプレイ装置は、映像表示装置と、映像光投射部と、を備えている。映像表示装置は、映像光を生成し、出射光として出射する。映像光投射部は、映像表示装置から出射された出射光を反射させ、乗り物の表示領域に向けて投射する。そして、このヘッドアップディスプレイ装置は、乗り物の運転者よりも前方に配置されており、映像光投射部により反射された出射光が乗り物の前方側に向くように構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物用のヘッドアップディスプレイ装置であって、
映像光を生成して出射する映像表示装置と、
前記映像表示装置から出射された映像光を反射させ、前記乗り物の表示領域に投射する映像光投射部と、を備え、
前記乗り物の運転者よりも前方に配置され、前記映像光投射部により反射された映像光が前記乗り物の前方側に向くように構成されている、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記映像表示装置と前記映像光投射部を収納する筐体の開口部に配置された透過部は前記筐体の内側に凹んでいるように構成される、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記映像表示装置と前記映像光投射部を収納する筐体の開口部に配置された透過部は平面状であり、
前記乗り物のウィンドシールドまたはフロントガラスと、平面状の前記透過部との成す角が、55°以上90°以下に設定される、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記映像光の光路上において、前記表示領域と前記映像表示装置の間で偏向フィルタが配置されない、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記映像光投射部からの出射光を透過する透過部が設けられた第1面を備え、前記出射光が通過する開口部が形成された第2面を備える前記乗り物のダッシュボードの内側に配置され、
前記第1面から離れる曲面を形成する前記第2面の曲率が設定された前記第2面に対して、前記第2面から離れる曲面を形成する前記第1面の曲率が設定されている、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な情報を表示するヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置と記載することがある)が知られている。HUD装置は、映像光反射面(例えば、車両のウィンドシールド)で映像光を反射させることで、ユーザに対して情報の表示を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構造では、ユーザの前方で映像光反射面が立ち上がって設けられる場合に、良好な表示をすることが容易ではないと考えられた。
【0005】
そこで、本発明は、ユーザの前方で立ち上がる映像光反射面で映像光を反射させ、良好な表示を行うことができるHUD装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、下記のHUD装置が提供される。このHUD装置は、乗り物用のHUD装置である。HUD装置は、映像表示装置と、映像光投射部と、を備える。映像表示装置は、映像光を生成し、出射光として出射する。映像光投射部は、映像表示装置から出射された出射光を反射させ、乗り物の表示領域に向けて投射する。そして、HUD装置は、乗り物の運転者よりも前方に配置され、映像光投射部により反射された出射光が乗り物の前方側に向くように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザの前方で立ち上がる映像光反射面で映像光を反射させ、良好な表示を行うことができるHUD装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)を搭載した車両の構成例を示す概略図である。
【
図2】従来構造に係り、HUD装置を構成する映像表示ユニットなどの構成例を示す概略図である。
【
図3】従来構造に係り、
図2の映像表示ユニットのより詳細な構成例を示す概略図である。
【
図4】従来構造に係り、
図3の映像表示ユニットを含んだHUD装置の外観例を示す斜視図である。
【
図5】
図1のHUD装置の制御系の構成例を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図5の車両情報取得部に係わる構成例を示す機能ブロック図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係り、HUD装置を構成する映像表示ユニットなどの構成例を示す概略図である。
【
図8】
図7においてHUD装置の構造を変更した一例を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係り、HUD装置を構成する映像表示ユニットなどの構成例を示す概略図である。
【
図10】
図9においてHUD装置の構造を変更した一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明を省略する。図面において、各構成要素の表現は、発明の理解を容易にするために、実際の位置、大きさ、形状、および範囲等を表していない場合がある。
【0010】
説明上、プログラムによる処理について説明する場合に、プログラムや機能や処理部等を主体として説明する場合があるが、それらについてのハードウェアとしての主体は、プロセッサ、あるいはそのプロセッサ等で構成されるコントローラ、装置、計算機、システム等である。計算機は、プロセッサによって、適宜にメモリや通信インタフェース等の資源を用いながら、メモリ上に読み出されたプログラムに従った処理を実行する。これにより、所定の機能や処理部等が実現される。プロセッサは、例えばCPUやGPU等の半導体デバイス等で構成される。プロセッサは、所定の演算が可能な装置や回路で構成される。処理は、ソフトウェアプログラム処理に限らず、専用回路でも実装可能である。専用回路は、FPGA、ASIC、CPLD等が適用可能である。
【0011】
図1を用いてHUD装置の概要について説明する。また、
図2-
図4を用いて、一般的なHUD構造について説明する。この例では、HUD装置は、光源装置と、表示パネルとを備えて構成される。
【0012】
図3等に示される光源装置100は、光源として例えば半導体光源素子を用いて構成され、所定の光源光を生成してLCDに供給する。光源装置100は、LCDのバックライト光源として機能する。半導体光源素子は、代表的にはLED(Light Emitting Diode)素子が用いられる。本実施形態における光源装置100は、光源(LED基板)、コリメータ、導光体、偏光変換素子、および拡散板を備え、偏光変換素子が、コリメータと導光体との間(言い換えると導光体の前段)ではなく、導光体と拡散板(もしくは表示パネル)との間(言い換えると導光体の後段)に配置されている。光源装置100はほかの構成でもよい。
【0013】
光源装置100は、導光体の後段の偏光変換素子によって、導光体からのランダム偏光の光を、直線偏光の光に変換する。よって、導光体において、残留応力が内在していたとしても、その残留応力の影響、すなわち偏光状態の変化は、偏光変換素子での直線偏光への変換によって対処される。LCDパネル64への入射光は、残留応力の影響、すなわち偏光状態の変化が解消された光となる。言い換えると、光源装置100は、導光体の残留応力による偏光への影響を無くすことができる。
【0014】
特に、偏光変換素子は、LCDパネル64の近く(導光体よりはLCDパネル64寄りの位置)に配置されてもよい。偏光変換素子とLCDパネル64との間には、拡散板などが配置されてもよい。偏光変換素子とLCDパネル64との間には、光学素子として、薄肉レンズまたはフレネルレンズが配置されてもよい。この光学素子(薄肉レンズまたはフレネルレンズ)の機能は、LCDパネル64の後段のレンズ63(
図3)への配光制御(光線入射角度・領域の制御)である。この光学素子は、拡散板に対し前後のいずれに配置されてもよい。この光学素子と拡散板とが一体化された部材でもよい。
【0015】
[HUD装置および車両]
図1は、ヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)1を搭載した車両2の構成例を示す概略図である。
図1のHUD装置1は、車両2に搭載されている。車両2は、代表的には、自動車であるが、必ずしもこれに限定されず、場合によっては鉄道車両等であってもよい。
図1等では車両2および運転者に対して、水平方向は、左右方向、車両の横方向または車両の幅方向であり、鉛直方向は、車両の上下方向、縦方向であり、車両の横方向に対し直交する水平方向は、車両の前後方向または車両の進行方向である。
【0016】
HUD装置1は、車両2の各部に設置された各種センサなどから車両情報4を取得する。各種センサは、例えば、車両2で生じた各種イベントを検出したり、走行状況に係る各種パラメータの値を定期的に検出したりする。車両情報4には、例えば、車両2の速度情報やギア情報、ハンドル操舵角情報、ランプ点灯情報、外光情報、距離情報、赤外線情報、エンジンON/OFF情報、カメラ映像情報、加速度ジャイロ情報、GPS(Global Positioning System)情報、ナビゲーション情報、車車間通信情報、および路車間通信情報などが含まれる。カメラ映像情報は、車内カメラ映像情報や車外カメラ映像情報がある。GPS情報の中には緯度および経度の他に現在時刻情報なども含まれる。
【0017】
HUD装置1は、このような車両情報4に基づいて、映像表示ユニット12(
図2)を用いて、ウィンドシールド3の表示領域5へ映像を投影する。これによって、HUD装置1は、投影映像がそれに対応する虚像9として重畳された風景を、車両2の運転者(運転者の視点)6に視認させる。本発明のウィンドシールド3またはフロントガラスは、映像光反射面と称する。
【0018】
図2は、
図1の車両2の一部や、HUD装置1を構成する映像表示ユニット12などの構成例を示す概略図である。映像表示ユニット12は、HUD装置1の筐体に収容されている。
図2の映像表示ユニット12は、映像表示装置35と、ミラーM1と、ミラーM2とを有する。ミラーM1は光路上で後段に配置された第1ミラーである。ミラーM1は、例えば、凹面鏡(拡大鏡)であり、ミラーM2と、表示領域5との間の映像光の光路上に設けられる。ミラーM1は、映像表示装置35から出射された映像光を表示領域5に投射することで、投射された映像光を虚像として運転者6等の利用者に視認させる映像光投射部として機能する。ミラーM2は光路上で前段に配置された第2ミラーである。ミラーM2は、例えば、平面鏡であり、映像表示装置35とミラーM1との間の映像光の光路上に設けられる。ミラーM2は、映像表示装置35からの映像光をミラーM1に反射する映像光反射部として機能する。また、映像光の光路を短くする場合、ミラーM1のみは配置されてもよい、つまり、ミラーM2を配置しなくてもよい。また、本発明の映像光の光路上において、表示領域5と映像表示装置35の間で偏向フィルタが配置されない。映像表示装置35から出射された映像光(言い換えると投射光)は、ミラーM2または反射ミラーM2、およびミラーM1または反射ミラーM1を通じて反射されて、筐体の開口部71(
図3)から出射する。映像表示ユニット12から出射した映像光は、車両2のダッシュボードの開口部7を経由して、ウィンドシールド3の表示領域5へ向かう。その映像光は、ウィンドシールド3の表示領域5で反射されて、視点6へ向かう。運転者は、視点6からその映像光を虚像9として視認できる。
【0019】
[映像表示ユニット]
図3は、
図2の映像表示ユニット12より詳細な構成例を示す。
図3の映像表示ユニット12は、映像表示装置35、レンズ63、反射ミラーM2、および反射ミラーM1を備える。また、駆動機構62にて反射ミラーM1の角度を調整することができる。
図3の映像表示装置35、レンズ63、反射ミラーM2、および駆動機構62付きの反射ミラーM1は、筐体61内に収容されている。筐体61には、開口部71が設けられている。
図3の構成例では、映像光を表示領域5に投射するための光学系として、レンズ63、反射ミラーM2および反射ミラーM1を有する。また、レンズ63は補正レンズであり、レンズ63によって、反射ミラーM1への光線の出射方向を調整することで、反射ミラーM1の形状と合わせて歪曲収差の補正を行う。このように、収差補正能力を向上させるために最適設計された光学素子を反射ミラーM1と映像表示装置35との間に設けてもよい。
【0020】
映像表示装置35は、例えば、光源装置100と、表示パネル64とを備える。映像表示装置35は、光源装置100から出射される光(言い換えると、光源光)を用いて、表示パネル64に形成された映像を投射する、プロジェクタ(投射型映像表示装置)である。光源装置100は、代表的には、LED(Light Emitting Diode)光源を含んで構成される。
【0021】
表示パネル64は、代表的には、液晶パネル(Liquid Crystal Display:LCD)である。表示パネル64は、制御装置から指示され入力された映像データに基づいて、映像を作成し、当該表示パネル64の表示画面に表示する。表示パネル64は、映像データに応じて、光源装置100からの光の透過率を画素毎に変調することで、表示領域5へ投影するための映像を形成し、映像光(言い換えると投射光)として出射する。
図3の構成例では、映像表示装置35からの映像光の出射の方向は鉛直方向(Z方向)である。一点鎖線矢印は映像光の光軸を示している。
【0022】
また、表示パネル64は液晶パネルに限らず拡散機能を有するスクリーン板としてもよい。拡散機能を有するスクリーン板に映像を投影する手段として、DMD(Digital Micromirror Device)または液晶パネルの像を投写レンズと組み合わせて投影する手段や、微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems)を用いる手段でもよい。
【0023】
映像表示装置35の表示パネル64と、反射ミラーM2との間には、レンズとして集光レンズ63が設置されている。この集光レンズ63は、虚像9の形成のために必要な光学距離を調整するためのレンズであり、表示パネル64からの投射光を拡大して第2ミラーM2に入射させる機能を有する。
【0024】
反射ミラーM1および反射ミラーM2は、例えば、自由曲面ミラーや、光軸非対称の形状を有するミラーである。反射ミラーM2は、映像表示装置35から出射された映像光を、レンズ63を通じて反射ミラーM1へ向けて反射する。反射ミラーM1は、例えば、凹面鏡(言い換えると拡大鏡)である。反射ミラーM1は、反射ミラーM2で反射された映像光を、駆動機構62で設定された角度で、開口部71を介してウィンドシールド3へ向けて反射および拡大し、表示領域5へ投影する。
【0025】
これにより、運転者6(
図2)は、表示領域5に投射された映像を、透明のウィンドシールド3の先の虚像9として、車外の風景(例えば道路や建物、人など)に重畳される形で視認する。投影映像である虚像9は、例えば、道路標識や、自車の現速度や、風景上の対象物に付加される各種情報など、様々なものがある。これにより、風景上の対象物に各種情報を付加して表示するような拡張現実(AR)機能などが実現される。
【0026】
なお、
図2、
図3の映像表示ユニット12の構成例では、駆動機構62により反射ミラーM1の設置角度を調整することで、ウィンドシールド3上の表示領域5および虚像9の位置を調整可能となっている。反射ミラーM1には、反射ミラーM1の設置角度を変更するための駆動機構62が取り付けられている。駆動機構62は、ステッピングモータ等を含む機構である。駆動機構62は、制御装置からの制御に基づいて、反射ミラーM1の設置角度を変更する。また、ユーザの手動操作に基づいて、反射ミラーM1の設置角度も変更できる。これにより、運転者6が表示領域5に視認する虚像9の位置を例えば上下方向に調整可能となっている。
【0027】
また、例えば、反射ミラーM1の面積をより大きくすること等により、表示領域5の面積を拡大でき、より多くの情報を表示領域5へ投影可能になる。
【0028】
図4は、
図3の映像表示ユニット12を含んだHUD装置1の実装例の外観を示す斜視図である。筐体61には、開口部71が形成されている。開口部71には、グレアトラップ(眩惑防止)等と呼ばれる透明色のカバー部材71aが設置されている。筐体61内には、反射ミラーM2からの光を開口部71のカバー部材71aに向けて反射するように反射ミラーM1が設置されている。
【0029】
[HUD装置の制御系]
図5は、
図1のHUD装置1における制御系の主要部の構成例を示す機能ブロック図である。また、
図6は、
図5の車両情報4の取得に関わる箇所である車両情報取得部15に係わる構成例を示す機能ブロック図である。
【0030】
図5のHUD装置1は、制御装置10と、映像表示ユニット12と、スピーカ11と、日射センサ66とを備える。制御装置10は、例えば電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)で構成されている。映像表示ユニット12は、
図2や
図3、後で説明する
図7-
図10の構成を有する。なお、制御装置10は、筐体61内での実装に限らず、筐体61外に実装されてもよい。
【0031】
制御装置10は、HUD装置1の全体および各部を制御するコントローラに相当し、主に、HUD装置1における投影映像(虚像9)の表示の制御や、音声出力の制御などを行う。制御装置10は、例えば、配線基板などによって構成されている。この配線基板は、例えば、
図3や
図4の筐体61内に搭載されている。制御装置10は、この配線基板上に実装されている、車両情報取得部15、マイクロコントローラ(MCU)16、不揮発性メモリ17、揮発性メモリ18、音声用ドライバ19、表示用ドライバ20、および通信部21等を備える。
【0032】
MCU16は、広く知られているように、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサや、メモリに加え、各種周辺機能を備えている。したがって、この制御装置10内のMCU16を除く各ブロックは、適宜、MCU16内に搭載されてもよい。また、制御装置10は、MCU16を用いた実装に限定されず、ECUや他の半導体デバイスを用いた実装でもよい。
【0033】
車両情報取得部15は、例えば、CAN(Controller Area Network)インタフェースやLIN(Local Interconnect Network)インタフェースなどに対応した通信プロトコルに基づいて、車両情報4を取得する。
【0034】
図6のように、車両情報4は、車両情報取得部15に接続される各種センサなどの情報取得デバイスによって生成される。
図6には、各種情報取得デバイスの一例を示している。なお、
図6の各種情報取得デバイスに関しては、適宜、削除や、他の種類のデバイスの追加や、他の種類のデバイスへの置換が可能である。
【0035】
例えば、車速センサ41は、
図1の車両2の速度を検出し、検出結果となる速度情報を生成する。シフトポジションセンサ42は、現在のギアを検出し、検出結果となるギア情報を生成する。ハンドル操舵角センサ43は、現在のハンドル操舵角を検出し、検出結果となるハンドル操舵角情報を生成する。ヘッドライトセンサ44は、ヘッドライトのON/OFFを検出し、検出結果となるランプ点灯情報を生成する。
【0036】
照度センサ45および色度センサ46は、外光を検出し、検出結果となる外光情報を生成する。測距センサ47は、車両2と外部の物体との間の距離を検出し、検出結果となる距離情報を生成する。赤外線センサ48は、車両2の近距離における物体の有無や距離などを検出し、検出結果となる赤外線情報を生成する。エンジン始動センサ49は、エンジンのON/OFFを検出し、検出結果となるON/OFF情報を生成する。
【0037】
加速度センサ50およびジャイロセンサ51は、車両2の加速度および角速度を検出し、検出結果として、車両2の姿勢や挙動を表す加速度ジャイロ情報を生成する。温度センサ52は、車内外の温度を検出し、検出結果となる温度情報を生成する。例えば、温度センサ52によって、HUD装置1の周囲温度を検出可能である。HUD装置1内に、別途、温度センサを搭載してもよい。
【0038】
路車間通信用無線送受信機53は、車両2と、道路、標識、信号等との間の路車間通信によって、路車間通信情報を生成する。車車間通信用無線送受信機54は、車両2と周辺の他の車両との間の車車間通信によって、車車間通信情報を生成する。車内用カメラ55および車外用カメラ56は、車内および車外を撮影することで、車内のカメラ映像情報および車外のカメラ映像情報を生成する。具体的には、車内用カメラ55は、例えば、
図2の運転者6の姿勢や、眼の位置、動きなどを撮影するDMS(Driver Monitoring System)用のカメラなどである。この場合、撮像された映像を解析することで、運転者6の疲労状況や視線の位置などが把握できる。
【0039】
一方、車外用カメラ56は、例えば、車両2の前方や後方などの周囲の状況を撮影する。この場合、撮像された映像を解析することで、周辺に存在する他の車両や人などの障害物の有無、建物や地形、雨や積雪、凍結、凹凸などといった路面状況、および道路標識などを把握可能になる。また、車外用カメラ56には、例えば、走行中の状況を映像で記録するドライブレコーダなども含まれる。
【0040】
GPS受信機57は、GPS衛星からGPS信号を受信することで得られるGPS情報を生成する。例えば、GPS受信機57によって、現在時刻、緯度および経度を取得可能である。VICS(Vehicle Information and Communication System、登録商標)受信機58は、VICS信号を受信することで得られるVICS情報を生成する。GPS受信機57やVICS受信機58は、ナビゲーションシステムの一部として設けられてもよい。
【0041】
図5において、MCU16は、このような車両情報4を、車両情報取得部15を介して受信する。MCU16は、車両情報4などに基づいて、スピーカ11に向けた音声データや、映像表示装置35に向けた映像データなどを生成する。MCU16は、音声データ生成部27と、映像データ生成部28と、歪み補正部29と、光源調整部30と、ミラー調整部31と、保護処理部75とを備える。これらの各部は、主に、不揮発性メモリ17または揮発性メモリ18に格納されるプログラムをMCU16のCPUが読み出して実行することで実現される。
【0042】
音声データ生成部27は、必要に応じて、車両情報4などに基づいた音声データを生成する。音声データは、例えば、ナビゲーションシステムの音声案内を行う場合や、AR機能によって運転者6に警告を発する場合などに生成される。音声用ドライバ19は、音声データに基づいてスピーカ11を駆動し、スピーカ11に音声を出力させる。
【0043】
映像データ生成部28は、車両情報4などに基づいて、
図2等の表示領域5に投影される投影映像の表示内容を定める映像データを生成する。歪み補正部29は、映像データ生成部28からの映像データに対して歪み補正を加えた補正後の映像データを生成する。具体的には、歪み補正部29は、
図2に示したように、映像表示装置35からの映像を表示領域5に投影した場合にウィンドシールド3の曲率によって生じる映像の歪みを補正する。
【0044】
表示用ドライバ20は、歪み補正部29からの補正後の映像データに基づいて、映像表示装置35内の表示パネル64に含まれる各表示素子(画素)を駆動する。これによって、映像表示装置35は、補正後の映像データに基づいて、表示領域5へ投影するための映像を作成、表示する。
【0045】
光源調整部30は、映像表示装置35内の光源(後述のLED素子)の輝度などを制御する。ミラー調整部31は、ウィンドシールド3における表示領域5の位置を調整する必要がある場合に、
図3の映像表示ユニット12内の駆動機構62の駆動を介して反射ミラーM1の設置角度を変更する。
【0046】
不揮発性メモリ17は、主に、MCU16内のCPUで実行されるプログラムや、MCU16内の各部の処理で使用する設定パラメータや、規定の音声データおよび映像データなどを予め記憶する。
【0047】
揮発性メモリ18は、主に、取得された車両情報4や、MCU16内の各部の処理過程で使用される各種データを適宜記憶する。通信部21は、通信インタフェースが実装された装置であり、HUD装置1の外部との間で、CANやLINなどに従った通信プロトコルに基づいて通信を行う。通信部21は、車両情報取得部15と一体であってもよい。なお、
図5の制御装置10内の各部は、適宜、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの専用回路によって実装されてもよい。
【0048】
次に、
図7-
図10を用いて、HUD装置1の構造の一例について説明する。なお、上記で説明した同様の内容については省略することがある。
図7-
図10に示すHUD装置1の場合では、車両2の運転者の視点の前方で立ち上がる映像光反射面(ウィンドシールド3)に向けて映像表示ユニット12からの映像光(出射光)が出射される点が、上記の説明と異なっている。
【0049】
先ず、
図7および
図8を参照しながら、第1実施形態について説明する。
図7は、HUD装置を構成する映像表示ユニットなどの構成例を示す概略図である。
図8は、
図7においてHUD装置の構成を変更した一例を示す図である。
【0050】
<第1実施形態>
図7の例では、HUD装置1は、運転者の前方であり、開口部が形成されたダッシュボード11の内側に配置される。運転者の前方とは、具体的に運転者の視点より前方、あるいは、ハンドルにある側である。また、映像表示装置35で生成され、ダッシュボード11の開口部を通過する出射光または映像光10が車両の前方または車両の進行方向(または走行方向)に出射されるように、表示領域へ向けて出射光10を反射する反射ミラー(ミラー)M1の反射面が、車両の前方側または車両の進行方向に向けて形成されている。そして、上記の説明と同様に、映像表示装置35から出射した出射光または映像光10は、ダッシュボード11の開口部を経由して、ウィンドシールド3へ出射する。その出射光または映像光10は、ウィンドシールド3で反射されて、運転者の視点6へ向かう。そして、運転者は、出射した出射光または映像光10に基づく虚像9を視認できる。また、
図7に示すように、ミラーM2は配置されていないため、映像光の光路を短くすることができる。これにより、HUD装置の容積をより小さくして小型化することができる。
【0051】
次に、
図8を用いて
図7の構成を変更した例について説明する。
図8の例では、
図7の場合と比較して反射ミラーの枚数が増えている。HUD装置1は、出射光10の進行方向における後段の反射ミラーM1に出射光10を案内(反射)するミラーM2を備える。
図8に示すように、ウィンドシールド3に向けて出射光10を反射する反射ミラーM1は、映像表示装置35の上方に配置され、つまり、映像表示装置35とウィンドシールド3との間に配置されている。また、反射ミラーM1の反射面が、車両の前方側または車両の走行方向に向けて形成されている。このようなレイアウトにすることで、映像表示装置35からの出射光10を映像表示装置35より上方に案内することができる。また、
図8の映像光の光路の長さと
図7の映像光の光路の長さが同じである場合、ミラーM2を配置することで車両の前後方向におけるHUD装置1の寸法の低減を図ることが可能となる。
【0052】
なお、この例では、2枚のミラーを用いたレイアウトが示されたが、この例に限定されない。映像表示装置35から出射光10を、後段の反射ミラーM1で車両の前方または車両の進行方向に向けて反射させることであれば、光学的なレイアウトは適宜に変更してもよい。
【0053】
図7および
図8で示すように、運転者の前方でウィンドシールドまたはフロントガラスが立ち上がる場合、
図2-
図4で示すような配置では、HUD装置をダッシュボード内に収容した状態で出射光10をウィンドシールドまたはフロントガラスで反射させ、表示領域で良好な表示を行うことは容易ではない。一例として、
図7および
図8に示す構造とすることで、良好な表示を行うことができる。
【0054】
また、グレアトラップ13は、透過部であり、筐体の開口部に配置され、映像光10が表示領域へ向けて透過する部分であり、曲面の透明部材を用いてもよいし、平面の透明部材を用いてもよい。
図7と
図8は、曲面の透明部材を用いる例である。第1実施形態では、ダッシュボード11の外側から見たとき、グレアトラップ13(透過部)が映像表示装置35側に凹んでおり、あるいは、筐体の内側に凹んでおり、凹面形状になっている。グレアトラップ13の凹面に対して、ダッシュボード11の開口部に仮に透明部材を配置するとウィンドシールドまたはフロントガラス側に突出しており、凸面とされている。また、グレアトラップ13が配置された面(第1面)の曲率とダッシュボード11の開口部が形成された面(第2面)の曲率が、下記の関係を有するように設定されている。すなわち、第2面から離れる曲面を形成する第1面の曲率が設定され、且つ、第1面から離れる曲面を形成する第2面の曲率が設定される。すなわち、第1面から離れる曲面を形成する第2面の曲率が設定された第2面に対して、第2面から離れる曲面を形成する第1面の曲率が設定されている。このような曲率を設定することで、表示領域への出射光10がより良好に出射でき、良好な表示を行うことができる。
【0055】
次に、
図9および
図10を参照しながら、第2実施形態について説明する。
図9は、HUD装置を構成する映像表示ユニットなどの構成例を示す概略図である。
図10は、
図9においてHUD装置の構成を変更した一例を示す図である。
【0056】
<第2実施形態>
図9の例では、
図7の例の構成と同様であるが、グレアトラップの形状が異なり、
図9のグレアトラップ14(透過部)が平面状とされている。そして、ウィンドシールドまたはフロントガラスと、平面状のグレアトラップ14との成す角が、55°以上90°以下の範囲となるように構成されている。この関係を有する構成とすることで、表示領域への出射光10がより良好に出射でき、良好な表示を行うことができる。
【0057】
次に、
図10を用いて
図9の構造を変更した例について説明する。
図10の例では、
図9の場合と比較して反射ミラーの枚数が増えており、HUD装置1は、
図8の場合と同様に、出射光10の進行方向における後段の反射ミラーM1に出射光10を案内するミラーM2を備える構成となっている。
図10に示すHUD装置1においても、
図8の場合と同様に、映像表示装置35からの出射光10を映像表示装置35より上方に案内することができる。また、
図10の映像光の光路の長さと
図9の映像光の光路の長さが同じである場合、ミラーM2を配置することで車両の前後方向におけるHUD装置寸法の低減を図ることが可能となる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。実施の形態の構成要素について、必須構成要素を除き、追加、削除、置換などが可能である。各構成要素について、特に限定しない場合、単数としても複数としてもよい。各種の構成例を組み合わせた形態も可能である。
【0059】
第1実施形態および第2実施形態において、前方側に出射光10を出射し、該出射光10を表示領域に投射することができればよく、レイアウト(例えば、ミラーの配置や枚数)は適宜に変更してもよい。また、第1実施形態および第2実施形態において、映像光反射面(詳細には、ウィンドシールド3の表示領域)は、一例として、水平面に対して50°以上90°以下となるように設定することができる。また、
図5および
図6で説明した制御系の構成とすることで、HUD装置1は同様の表示を行うことができる。
【0060】
出射光10を前方に向けて出射するHUD装置1では、太陽光の侵入が抑制される。従って、HUD装置1は、出射光10の光路上において、表示領域と映像表示装置の間で太陽光対策に用いる偏向フィルタが配置されない構造としてもよく、部品点数を削減してもよい。
【0061】
本実施の形態に係る技術によれば、フロントガラスが立っている場合、フロントガラス等に投射された行き先や速度などのナビゲーション情報表示の他に、対向車や歩行者を検知した際のアラート情報表示などの走行に必要な情報の映像を視認でき、安全運転の支援に寄与する情報表示装置(ヘッドアップディスプレイ装置)を提供することにより交通事故を防止することが可能となる。これにより、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「3すべての人に健康と福祉を」に貢献する。
【符号の説明】
【0062】
1 HUD装置
3 ウィンドシールド
11 ダッシュボード
13 グレアトラップ
14 グレアトラップ