(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181850
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】シイタケ収穫装置並びにシイタケ収穫方法
(51)【国際特許分類】
A01G 18/70 20180101AFI20231218BHJP
【FI】
A01G18/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095214
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000242024
【氏名又は名称】株式会社北研
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信
(57)【要約】
【課題】培養瓶で栽培されたシイタケ等の茸の収穫に関し、成長した茸を取りこぼすことなく、短時間で収穫可能なシイタケ収穫装置を提供する。
【解決手段】培養瓶内の培養基で培養されたシイタケを収穫する収穫装置であって、上面が開口した箱型のコンテナに、複数の培養瓶が収容されたコンテナユニットを、培養瓶の側面を押さえる瓶押え部と、コンテナの側面の突起部を保持するコンテナ保持部と、で保持するコンテナユニット保持部と、コンテナユニット保持部で保持したコンテナユニットを上下反転させる反転部と、反転したコンテナユニットの一方の端辺から対向する他方の端辺に向けて、培養瓶の開口部に沿って、カッタをスライドさせ、シイタケをカットするカット部と、カット部でカットされたシイタケを回収トレイで受け取る回収部と、からなる手段を採用した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養瓶内の培養基で培養されたシイタケを収穫する収穫装置であって、
上面が開口した箱型のコンテナに、複数の培養瓶が収容されたコンテナユニットを、該培養瓶の側面を押さえる瓶押え部と、該コンテナの側面の突起部を保持するコンテナ保持部とで保持するコンテナユニット保持部と、
コンテナユニット保持部で保持した該コンテナユニットを上下反転させる反転部と、
反転したコンテナユニットの一方の端辺から対向する他方の端辺に向けて、該培養瓶の開口部に沿ってカッタをスライドさせ、該シイタケをカットするカット部と、
該カット部でカットされた該シイタケを回収トレイで受け取る回収部と、
からなることを特徴とするシイタケ収穫装置。
【請求項2】
前記瓶押え部は、複数の棒状体を持ち、各々の該棒状体は、隣り合う前記培養瓶の両方の開口部に近い肩部に接するように配置され、
前記棒状体により、前記コンテナから離れる方向への前記培養瓶の移動を規制することを特徴とする請求項1に記載のシイタケ収穫装置。
【請求項3】
前記カット部におけるカッタの数は、前記コンテナユニットの一方の端辺に並んだ前記培養瓶に対応した数であり、
該カッタの刃の角度は、前記コンテナユニットの一方の端辺に対して、前記コンテナユニットの他方の端辺方向に、8度から15度傾いていることを特徴とする請求項2に記載のシイタケ収穫装置。
【請求項4】
前記カット部において、前記カッタの移動速度は、約5cm/sから15cm/sであることを特徴とする請求項1乃至3に記載のシイタケ収穫装置。
【請求項5】
前記反転部において、上下反転完了時に、前記培養瓶に振動を与えることによって、前記培養瓶に対する培養基が、鉛直方向である前記培養瓶の開口部方向にずれることを特徴とする請求項1に記載のシイタケ収穫装置。
【請求項6】
前記回収部は、前記シイタケをカットする際、回収トレイをカット位置近傍まで持ち上げ、回収トレイに敷かれた中敷きを、回収トレイの底面の隙間から挿入される押上部により押上げ、中敷きの少なくとも一部を、回収トレイから浮かせることを特徴とする請求項1に記載のシイタケ収穫装置。
【請求項7】
培養瓶の培養基で培養されたシイタケを収穫する収穫方法であって、
上面が開口した箱型のコンテナに、複数の培養瓶が収容されたコンテナユニットを、該培養瓶の側面を押さえる瓶押え部と、該コンテナの側面の突起部を保持するコンテナ保持部とで保持する保持工程と、
コンテナユニット保持部で保持した該コンテナユニットを上下反転させる反転工程と、
反転した該コンテナユニットの一方の端辺から他方の端辺に向けて、該培養瓶の開口部に沿って、カッタをスライドさせ、該シイタケをカットするカット工程と、
カット工程でカットされたシイタケを回収トレイで受け取る回収工程と、
からなることを特徴とするシイタケ収穫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シイタケ収穫装置並びにシイタケ収穫方法に関し、詳しくは、培養瓶で培養されたシイタケを効率よく、高品質で回収する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シイタケ等の茸の栽培は様々な方法で行われている。培養瓶を用いた栽培方法は、他の方法に比べ管理しやすいことから、近年、広く行われている。
培養瓶を用いた方法は、培養瓶に茸用培地を充填し、種菌を植えて茸を育成させ、瓶から成長した茸をカットして収穫する方法である。
育成中は、培養瓶単位で管理できるので、管理しやすい。しかし、収穫する際、培養瓶ごとに、茸をカットしなければならず、迂遠であった。また、機械でカットしようとすると、茎の曲がったような茸がカットしきれず、回収漏れとなる場合があった。
そこで、機械での収穫であっても、茸の取り残しを少なくする技術が求められていた。
【0003】
この分野の技術について、従来からも様々な提案されている。例えば、培養瓶にて人工栽培した茸を瓶口近くから切断して収穫する方法(特許文献1参照)が提案され、公知技術となっている。
より詳しくは、複数個の培養瓶を瓶押さえ機構で押さえ、斜めに傾け、カッタ及び回収用シュートを左右に往復移動しながら斜めに上昇させていき、茸を下部から上部順次、且つ、瓶口近くにて切断する茸収穫方法が記載されている。
しかしながら、茸の状態によっては、瓶の周囲の茸が瓶口から垂れ下がる場合もあり、取り残しが出る可能性があることから、本課題を解決していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、培養瓶で育成された茸を効率よく収穫できないという問題点に鑑み、培養瓶で栽培されたシイタケ等の茸の収穫に関し、成長した茸を取りこぼすことなく、短時間で収穫可能なシイタケ収穫装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、培養瓶内の培養基で培養されたシイタケを収穫する収穫装置であって、上面が開口した箱型のコンテナに、複数の培養瓶が収容されたコンテナユニットを、培養瓶の側面を押さえる瓶押え部と、コンテナの側面の突起部を保持するコンテナ保持部と、で保持するコンテナユニット保持部と、コンテナユニット保持部で保持したコンテナユニットを上下反転させる反転部と、反転したコンテナユニットの一方の端辺から対向する他方の端辺に向けて、培養瓶の開口部に沿って、カッタをスライドさせ、シイタケをカットするカット部と、カット部でカットされたシイタケを回収トレイで受け取る回収部と、からなる手段を採る。
【0007】
また、本発明は、前記瓶押え部が、複数の棒状体を持ち、各々の棒状体は、隣り合う培養瓶の両方の開口部に近い肩部に接するように配置され、棒状体により、コンテナから離れる方向への培養瓶の移動を規制する手段を採る。
【0008】
さらに、本発明は、前記カット部におけるカッタの数が、前記コンテナユニットの一方の端辺に並んだ培養瓶に対応した数であり、カッタの刃の角度は、前記コンテナユニットの一方の端辺に対して、前記コンテナユニットの他方の端辺方向に、8度から15度傾いている手段を採る。
【0009】
またさらに、本発明は、前記カット部において、カッタの移動速度は、約5cm/sから15cm/sである手段を採る。
【0010】
さらにまた、本発明は、前記反転部において、上下反転完了時に、培養瓶に振動を与えることによって、培養瓶に対する培養基が、鉛直方向である培養瓶の口方向にずれることを手段とする。
【0011】
そしてまた、本発明は、前記回収部が、シイタケをカットする際、回収トレイをカット位置近傍まで持ち上げ、回収トレイに敷かれた中敷きを、回収トレイの底面の隙間から挿入される押上部により押上げ、中敷きの少なくとも一部を、回収トレイから浮かせる手段を採る。
【0012】
さらにまた、本発明は、培養瓶の培養基で培養されたシイタケを収穫する収穫方法であって、上面が開口した箱型のコンテナに、複数の培養瓶が収容されたコンテナユニットを、培養瓶の側面を押さえる瓶押え部と、コンテナの側面の突起部を保持するコンテナ保持部とで保持する保持工程と、コンテナユニット保持部で保持したコンテナユニットを上下反転させる反転工程と、反転したコンテナユニットの一方の端辺から他方の端辺に向けて、培養瓶の開口部に沿って、カッタをスライドさせ、シイタケをカットするカット工程と、カット工程でカットされたシイタケを回収トレイで受け取る回収工程と、からなる手段を採る。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るシイタケ収穫装置並びにシイタケ収穫方法によれば、シイタケ等の茸を培養瓶で栽培する際、成長した茸を取りこぼすことなく、短時間で収穫できるので、収穫の効率化を図ることができ、使用者の利益に供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るシイタケ収穫装置の実施形態を示す全体上面図である。
【
図2】本発明に係るシイタケ収穫装置のコンテナユニット保持部とコンテナユニットの関係を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係るシイタケ収穫装置を用いた収穫工程の概要を示す説明図である。
【
図4】本発明に係るシイタケ収穫装置の作用効果を示す説明図である。
【
図5】本発明に係るシイタケ収穫装置のカット部の動作を示す説明図である。
【
図6】本発明に係るシイタケ収穫装置の回収部の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るシイタケ収穫装置は、培養瓶で育成された茸を効率よく収穫すべく、上下反転させてカットすることを最大の特徴とする。
以下、本発明に係るシイタケ収穫装置並びにシイタケ収穫方法の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
なお、本発明に係るシイタケ収穫装置並びにシイタケ収穫方法の全体概要及び各部概要は、下記に述べる実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、即ち、同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、構造等の範囲内で適宜変更することができるものである。
【0017】
図1から
図6に従って、本発明を説明する。
図1は、本発明に係るシイタケ収穫装置の実施形態を示す全体上面図である。
図2は、シイタケ収穫装置のコンテナユニット保持部とコンテナユニットの関係を示す斜視図であり、(a)はコンテナユニット保持部でコンテナユニットを保持する前を示し、(b)はコンテナユニット保持部でコンテナユニットを保持した状態を示している。
図3は、シイタケ収穫装置を用いた収穫工程の概要を示す説明図である。
図4は、シイタケ収穫装置の作用効果を示す説明図であり、(a)から(d)にかけて、培養瓶で育成されたシイタケが反転され、振動を与えられ、カッタによって収穫される工程を示している。
図5は、シイタケ収穫装置のカット部の動作を示す説明図であり、(a)から(d)にかけて、シイタケがカットされる工程を示している。
図6は、シイタケ収穫装置の回収部の動作を示す説明図であり、(a)から
図6(c)にかけて、コンテナユニットが反転され、回収トレイが持ち上げられ、さらに、中敷きが押し上げられ、シイタケを回収する工程を示している。
【0018】
シイタケ収穫装置1は、培養瓶20を上下反転させた状態で、育成されたシイタケ等の茸をカットし、収穫する装置である。
シイタケ収穫装置1は、コンテナユニット保持部30、引込部40、反転部50、カット部60、回収部70、供給側コンベア80及び取上側コンベア81から構成されており、コンテナユニット10のシイタケ24を収穫するものである。
コンテナユニット10は、コンテナ11と培養瓶20とから成る。培養瓶20には、培養基21が充填され、植え付けられたシイタケ24の菌が生育し、開口部22より生育したシイタケ24が突出する(
図4(a))。培養瓶20の開口部22付近は、培養瓶20全体の太さよりも若干細くなった肩部23があり、突起部12の上部から肩部23を押さえることで、培養瓶20の上方向への移動を規制することが出来る。
コンテナ11は、複数の培養瓶20をまとめるためのケースである。皿状で、底、側面に複数の開口部がある。コンテナ11の周方向には、均一の幅の突起部12が形成されている。(
図2)。
本実施形態では、コンテナ11に対して、縦、横各4列の16個の培養瓶20がまとめられている。
【0019】
シイタケ収穫装置1は、全体としては、コンベアによる流れ作業によって、複数のコンテナユニット10から、シイタケ24をスムーズに収穫する装置である。コンベアは、コンテナユニット10を流す供給側コンベア80と回収トレイ90を流す取上側コンベア81から成る。いずれもコンベアローラ82が等間隔に配置されているので、スムーズにコンテナユニット10を流すことが出来る。
供給側コンベア80は、流れの中間で分断され、上流側を供給入口側コンベア、下流側を供給出口側コンベアともいう。両コンベアの間に引込部40が設けられている。
取上側コンベア81は、流れの中間で分断され、上流側を取上入口側コンベア、下流側を取上出口側コンベアともいう。両コンベアの間に、カット部60と回収部70が設けられている。引込部40とカット部60とを橋渡しする位置に反転部50が設けられている。
【0020】
コンテナユニット保持部30は、コンテナユニット10を保持するものであり、反転部50の回転腕部52に固定されている。本実施形態では、培養瓶20を上下反転させるので、コンテナユニット10から培養瓶20が落下しないように、コンテナ11及び、培養瓶20を保持する必要がある。
コンテナユニット保持部30は、瓶押え部31とコンテナ保持部35とから成る。瓶押え部31は、コンテナ11の幅程度の直方体と、直方体の側面から伸びるように設置された複数の棒状体32から成る(
図2)。棒状体32同士の間隔は、概ね、培養瓶20の太さと同じである。各々の棒状体32は、隣り合う培養瓶20の開口部22に近い側面である肩部23に接するように配置され、棒状体32により、コンテナ11から離れる方向への培養瓶20の移動を規制するものである(
図2)。言い換えれば、培養瓶20を棒状体32で串刺しにして固定するものである。
コンテナユニット保持部30の瓶押え部31の両端に、コンテナ保持部35が設けられている。コンテナ保持部35は、コンテナ11の突起部12を支える部分で、コンテナユニット保持部30の回転に連動してコンテナ11を回転させる際の支持部として設けられている。コンテナ保持部35は、少なくともコンテナ11の突起部12の下端に掛渡される構造を有し、コンテナユニット保持部30の回転に際し、コンテナ11を上方へ持ち上げ、あるいは、下方へ降下させる。
尚、本実施形態では、コンテナ保持部35の具体的形態として、コンテナ11の突起部12を咥えるようなコの字構造とした場合について示しており(
図2)、コンテナ11に対して、側面方向から咥えさせることによって、コンテナ11の上下方向への移動を規制することが可能な態様としているが、突起部12の下端を支持可能な形態であれば、コの字構造に限定するものではなく、例えば突起部12の上端を支持する部分の無いL字構造であったり、単に下端のみを支持する棒状体であったりしてもよい。
【0021】
図2(a)に示すように、コンテナユニット10を横方向に、コンテナユニット保持部30方向にスライドさせる。
棒状体32の先端部33は、細くなっている。そのため、コンテナユニット保持部30を、培養瓶20の肩部23付近にスムーズに通すことが出来る。また、コンテナ保持部35の突起用溝36には、突起部12をスムーズに挿入するためのガイド部37が設けられている。ガイド部37の端部には傾斜部38が設けられており、コンテナユニット保持部30とコンテナユニット10との位置にずれがあったとしても、コンテナ保持部35を突起部12に沿って固定することができる。
【0022】
図2(b)に示すように、コンテナユニット10を、コンテナユニット保持部30で保持し、瓶押え部31によって、コンテナ11に対する培養瓶20の移動を規制するので、コンテナユニット10を移動、反転した場合も、コンテナ11及び培養瓶20が落下することなく、保持することが出来る。
【0023】
引込部40は、引込みプッシャー部とも言われ、供給側コンベア80を流れてきたコンテナユニット10を反転部50に引き込んだり、収穫の完了したコンテナユニット10を反転部50から受け取ったりする部分である。
引込部40は、主に引込台41で構成されている。引込台41には回転制御可能な引込台ローラ42が配置され、コンテナユニット10が引込台41に対して適切な位置に来た時点で、回転を一時停止する。
引込台41は、コンテナユニット10を供給側コンベア80の流れ方向と直交する方向である反転部50及びコンテナユニット保持部30の方向にコンテナユニット10を移動させる。移動した結果、コンテナユニット10は、コンテナユニット保持部30に挟み込まれ、保持される。
また、収穫の完了したコンテナユニット10を、コンテナユニット保持部30から分離させ、供給側コンベア80の下流方向に移動させる動きも行う。
【0024】
反転部50は、コンテナユニット保持部30で固定されたコンテナユニット10を上下反転する部分である。モータ、ギアに接続された回転軸51の周方向の回転腕部52にコンテナユニット保持部30が固定されている(
図1、
図3)。
反転部50の回転軸51、回転腕部52は、180度単位で、正転、反転を行う。
コンテナユニット10は、コンテナユニット保持部30に保持されているので、回転軸51、回転腕部52の回転に応じて、コンテナユニット10も回転する。
回転軸51、回転腕部52は、コンテナユニット10を正立状態から倒立状態にする際に、コンベアの下流から見て、半時計回りに180度回転する(
図3(b)、
図3(c))。
回転軸51、回転腕部52は、コンテナユニット10を倒立状態から正立状態にする際には、コンベアの下流から見て、時計回りに180度回転する(
図3(d)、
図3(e))。
また、コンテナユニット10を倒立状態とする際、急激に停止する等によって、コンテナユニット10の培養瓶20に振動を与えることが出来る。
あるいは、コンテナユニット10の倒立状態への回転に際し、回転終盤に回転速度を減速させることで、減速時に発生する落下方向への力と重力によって、培養基21を培養瓶20の開口部22の方向へずれさせる態様も可能である。
【0025】
カット部60は、培養瓶20のシイタケ24を茎25の根本付近からカットする部分である。カット部60は、カッタ61、カッタ保持部62、スライドレール63から成る。
複数のカッタ61がカッタ保持部62によって保持されている。カッタ保持部62は、スライドレール63によって、コンテナユニット10を横切るように、倒立状態のコンテナユニット10の培養瓶20の開口部からぶら下がるシイタケ24を、切断する構造である。
言い換えれば、反転したコンテナユニット10の一方の端辺から対向する他方の端辺に向けて、培養瓶20の口に沿って、カッタ61をスライドさせることで、シイタケ24をカットするものである。
【0026】
図5は、装置及びコンテナユニット10を下から見た模式図である。
図5(b)に示すように、カット部60は、コンテナユニット10の一方の端辺付近に配置され、
図5(c)、
図5(d)に示すように、対向する他方の端辺に向けてスライドし、シイタケ24をカットする。
カッタ61の数は、コンテナユニット10の一方の端辺に並んだ培養瓶20に対応した数である。本実施形態では、1列に4本の培養瓶20が並んでいるので、対応する数として、4枚のカッタ61を用いている。対応した数とは、培養瓶20をいくつかのグループに分けた場合のグループの数である。1グループの培養瓶20の数は、1本でも2本でも良い。培養瓶20の数に対応したカッタ61の数としないと、1つの培養瓶20から生育しているシイタケ24を2つのカッタ61で切断することとなり、切断面にずれが生じるからである。
【0027】
カッタ61の刃の角度は、コンテナユニット10の一方の端辺に対して、コンテナユニット10の他方の端辺方向に、8度から15度傾けると好適である。本実施形態では、10度としている(
図5(a))。
8度未満であると、カッタ61の切れ味が悪く、シイタケ24を押し倒してしまうし、切断面が斜めになり、商品の質が低下してしまう。
15度よりも大きくすると、1つのカッタ61の長さが長くする必要がある。長さを長くすると、一般的な刃の長さを超えてしまい、調達が困難になってしまう。
よって、8度から15度とすることで、シイタケ24の茎25に対して、カッタ61が適度に斜めから接触することになり、茎25の切断をよりスムーズにすることが出来る。10度とすると、より好適である。
【0028】
カッタ61の移動速度は、約5cm/sから15cm/sであると好適である。また、10ms/sとすると、より好適である。
5cm/s未満であると、シイタケ24の茎25は切れるが、切断面にカッタ61が往復した波状の痕跡が多数残ってしまい、商品の質を低下させてしまう。また、5cm/sよりも大幅に速度を下げると、途中まで切れたシイタケ24が斜めにぶら下がり揺れてしまい傘部などを傷つけてしまう。
15cm/sよりも速度を上げてしまうと、シイタケ24の茎25が切れる前にシイタケ24を押し倒してしまうからである。
【0029】
回収部70は、切り落とされたシイタケ24を回収する部分である。
カッタ61でカットされたシイタケ24は、回収トレイ90までの距離が長いと落下速度が大きくなり、落下時の衝撃や、落下するシイタケ24同士の接触によって、品質が低下してしまう。そこで、回収トレイ90を持ち上げる動作と中敷き91を突き上げる動作の二段構えによって、シイタケ24の落下によるダメージを軽減するものである。
主に、回収トレイ90を載置する回収トレイ用台座71と、押上棒75とから成る。
回収トレイ90は、ガイド部37によって、カットされ、落下するシイタケ24を、受け取り、回収する皿状体である。回収トレイ90は、全体として浅い皿状であり。底面は、シイタケ24が通過しない程度の荒い網目状である。材質は樹脂等である。皿状の上面は、薄いシートである中敷き91で覆われている。
尚、本実施形態では、中敷き91について薄いシートのみで構成されている場合を示しているが(
図6(b),(c))、後述する押上棒75により中敷き91を突き上げる際に、薄いシートのみであると形状が安定せず、波打ったり縒れたりすることが考えられ、その場合に収穫したシイタケ24が中敷き91から転落し、かえってシイタケ24にダメージを与えてしまうことも想定される。そこで、中敷き91として、プラスチックダンボール等の少し硬めの板材の上面に柔らかいウレタンシートを敷設するなどして構成する態様も好適であり、押上棒75で突き上げても縒れることなく、シイタケ24へのダメージの軽減に資する。
回収トレイ用台座71は、取上側コンベア81から流れてくる回収トレイ90を適当な位置で移動、停止する回収部ローラ74が設けられている。
回収部70の直上には、上下反転したコンテナユニット10が、コンテナユニット保持部30によって保持され、配置されている(
図6(a))。
【0030】
回収トレイ用台座71は、シャフト73によって、上下移動可能に、配置されている。シイタケ24を回収するための動作として、台座用シリンダ72によって、回収トレイ用台座71を所定の高さまで移動させる。上方向に移動することによって、回収トレイ90と切断され落下するシイタケ24との距離を短くすることが出来、シイタケ24の落下時のダメージを軽減することが出来る(
図6(b))。
【0031】
押上棒75は、中敷き91を回収トレイ90から持ち上げる部分である。押上棒75は、押上棒用シリンダ 76によって、上方に突き上げられ、回収トレイ90の底面の網状の隙間から、中敷き91を突き上げ、中敷き91を回収トレイ90から浮かした状態とすることが出来る。この状態とすることによって、切断され落下するシイタケ24を、浮かされた中敷き91で受けとめることとなり、シイタケ24へのダメージをさらに軽減することが出来る(
図6(c))。
このように、回収トレイ90を持ち上げる動作と中敷き91を突き上げる動作の二段構えによって、シイタケ24の落下によるダメージを軽減することが出来る。
【0032】
図1、
図3に沿って、装置全体の流れを説明する。大きくは、2つのコンベアのラインから成る。各ラインは、コンベアローラ82によって、スムーズに、コンテナユニット10や回収トレイ90を移動することが出来る。
供給側コンベア80のラインと取上側コンベア81のラインは、上流、下流の2つのコンベアに分かれており、上流と下流の間に、さまざまなシイタケ24を収穫する部分を配置している。
供給側コンベア80の上流から流されるコンテナユニット10は、引込部40で適切な位置で移動停止される。コンテナユニット10が引込台41に載置された状態を
図3(a)に示す。
【0033】
そのあと、コンテナユニット10を乗せた引込台41は、コンテナユニット保持部30方向に移動する。コンテナユニット10は、コンテナユニット保持部30によって、上下左右とも固定され、上下反転可能な状態となる(
図3(b),保持工程)。
コンテナユニット保持部30は、反転部50によって、回転軸51を軸として、180度回転する。結果的に、取出側コンベア81の上方にコンテナユニット10を、上下逆さまの所謂倒立状態に配置する(
図3(c),反転工程)。
【0034】
ここで、取上側コンベア81側を見ると、上流から流される回収トレイ90が回収部70の適切な位置に移動停止される。回収部70は、回収トレイ90をコンテナユニット10の直下で、上方に移動させ、押上棒75で中敷き91を浮き上がらせる。回収部70の上方には、カット部60があり、カッタ61をスライドさせ、シイタケ24を培養瓶20の開口部22に沿ってカットする(カット工程)。シイタケ24は、回収トレイ90に落下し、回収される(
図3(d),回収工程)。
回収後、回収トレイ用台座71は、下方向のコンベアの高さまで戻り、収穫したシイタケ24を取上側コンベア81の下流に流す。
【0035】
シイタケ24をカットした後のコンテナユニット10は、反転部50によって、前回と逆方向に180度回転し、コンテナユニット10を正常な姿勢に戻す(
図3(e))。
引込台41により、コンテナユニット10は供給側コンベア80の位置に戻される(
図3(f))。
シイタケ24をカットした後のコンテナユニット10は、供給側コンベア80によって、下流に流される。
このような一連の動作によって、シイタケ24を効率よく収穫することが出来る。
【0036】
図4に沿って、本実施形態の動作と効果について説明する。
図4(a)は、正立状態の培養瓶20である。培養瓶20内の培養基21により、シイタケ24が生育し、シイタケ24の傘、茎25が、開口部22より露出している。しかし、シイタケ24の生育の過程で、
図4(a)にあるように、一部のシイタケ24は、曲がってしまい、開口部22から垂れ下がる場合もある。
そうすると、この状態で、機械的に開口部22に沿ってカットすると、一部のシイタケ24について、傘をカットしてしまったり、茎25を斜めにカットしてしまったりする場合もあり、収穫物の品質的に問題である。
【0037】
図4(b)は、培養瓶20を倒立状態にした場合を示す。培養瓶20を倒立されることによって、シイタケ24は、傘を下にして垂れ下がる形となるので、正立状態の場合に比べて、不適当なカットが行われる可能性が低くなる。そのため、倒立状態でカットすることは有効である。
【0038】
図4(c)は、培養瓶20を倒立状態にする際に、培養瓶20に振動または衝撃を加えた場合若しくは回転終盤の回転速度を減速させた場合を示している。振動としては、振動を発生させるバイブレータを用いることが考えられる。衝撃としては、反転部50でコンテナユニット10を反転させる際に、ストッパ等に強く当て、回転を急激に停止させることで、反動として、衝撃を与えることが考えられる。
倒立状態で、培養瓶20に振動や衝撃を加えたり、回転終盤の回転速度を減速させたりすると、培養基21は、反動や重力で、培養瓶20の開口部22方向に若干移動する。そうすると、シイタケ24の根本部分である石突部分が開口部22に近づくことになり、シイタケ24の根本に近い部分からカットできる。
図4(d)は、培養基21が培養瓶20の開口部22方向にずれた状態でカットした場合の収穫図である。このように、培養瓶20に振動または衝撃を加えたり、回転終盤の回転速度を減速させたりすることによって、収穫量を増やすことが出来る。
【0039】
このように、本発明によれば、シイタケ等の茸を培養瓶で栽培する際、成長した茸を取りこぼすことなく、短時間で収穫できるので、収穫の効率化を図ることができ、使用者の利益に供するものである。
【0040】
また、本発明によれば、シイタケ24を回収する際、人の手を介さないでの、シイタケ24を手で持つことによるダメージを回避できる。
【0041】
さらに、本発明によれば、収穫速度は、手作業で人一人一時間当たり12Kg程度に対して、本装置で一時間当たり150Kg前後と、大幅に向上させることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係るシイタケ収穫装置は、培養瓶で育成された茸を効率的に収穫する技術として、シイタケ以外の茸の収穫にも応用することが可能であり、産業上の利用可能性は大きいと思料する。
【符号の説明】
【0043】
1 シイタケ収穫装置
10 コンテナユニット
11 コンテナ
12 突起部
20 培養瓶
21 培養基
22 開口部
23 肩部
24 シイタケ
25 茎
30 コンテナユニット保持部
31 瓶押え部
32 棒状体
33 先端部
35 コンテナ保持部
36 突起用溝
37 ガイド部
38 傾斜部
40 引込部
41 引込台
42 引込台ローラ
50 反転部
51 回転軸
52 回転腕部
60 カット部
61 カッタ
62 カッタ保持部
63 スライドレール
70 回収部
71 回収トレイ用台座
72 台座用シリンダ
73 シャフト
74 回収部ローラ
75 押上棒
76 押上棒用シリンダ
80 供給側コンベア
81 取上側コンベア
82 コンベアローラ
90 回収トレイ
91 中敷き