(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181854
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】車載システム、車載装置、情報処理方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 7/04 20060101AFI20231218BHJP
H04L 7/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H04L7/04
H04L7/00 990
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095218
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 和之
(72)【発明者】
【氏名】松本 真
(72)【発明者】
【氏名】河野 仁志
(72)【発明者】
【氏名】北川 和樹
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA18
5K047BB14
5K047HH01
5K047MM36
(57)【要約】
【課題】車載システム、車載装置、情報処理方法及びコンピュータプログラムの提供。
【解決手段】時刻同期された複数の第1車載装置により構成されるドメインと、ドメイン内の一の第1車載装置を介してドメインの外部に接続される第2車載装置とを含む、車載システムであって、一の第1車載装置は、第2車載装置から、ドメイン内の複数の宛先装置にて同期して実行すべきイベントに係るフレーム単位のデータを受信した場合、受信したデータと共に、イベントの同期を指定する同期フレームを複数の宛先装置へ送信する処理を行う処理部を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻同期された複数の第1車載装置により構成されるドメインと、該ドメイン内の一の第1車載装置を介して前記ドメインの外部に接続される第2車載装置とを含む、車載システムであって、
前記一の第1車載装置は、
前記第2車載装置から、前記ドメイン内の複数の宛先装置にて同期して実行すべきイベントに係るフレーム単位のデータを受信した場合、受信したデータと共に、前記イベントの同期を指定する同期フレームを前記複数の宛先装置へ送信する処理を行う処理部
を備える、車載システム。
【請求項2】
前記処理部は、前記データと共に、前記同期フレームを前記第2車載装置から受信する
請求項1に記載の車載システム。
【請求項3】
前記処理部は、前記データを受信した場合、前記同期フレームを生成する
請求項1に記載の車載システム。
【請求項4】
前記一の第1車載装置から前記複数の宛先装置に至る他の1又は複数の第1車載装置は、前記ドメイン内で固定化された遅延時間に従って、前記データ及び前記同期フレームの送信時間を遅延させる
請求項1から請求項3の何れか1つに記載の車載システム。
【請求項5】
前記処理部は、前記一の第1車載装置から前記複数の宛先装置に至るまでのホップ数と、前記遅延時間とに基づき、前記データ及び前記同期フレームの送信時間を遅延させる
請求項4に記載の車載システム。
【請求項6】
時刻同期されたドメインを構成する車載装置であって、
ドメイン外の車載装置を接続する接続部と、
該接続部に接続された前記ドメイン外の車載装置から、前記ドメイン内の複数の宛先装置にて同期して実行すべきイベントに係るフレーム単位のデータを受信した場合、受信したデータと共に、前記イベントの同期を指定する同期フレームを前記複数の宛先装置へ送信する処理を行う処理部と
を備える、車載装置。
【請求項7】
時刻同期されたドメインの外部に接続された車載装置から、前記ドメイン内の複数の宛先装置にて同期して実行すべきイベントに係るフレーム単位のデータを受信し、
受信したデータと共に、前記イベントの同期を指定する同期フレームを前記複数の宛先装置へ送信する
処理をコンピュータにより実行する情報処理方法。
【請求項8】
時刻同期されたドメインの外部に接続された車載装置から、前記ドメイン内の複数の宛先装置にて同期して実行すべきイベントに係るフレーム単位のデータを受信し、
受信したデータと共に、前記イベントの同期を指定する同期フレームを前記複数の宛先装置へ送信する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載システム、車載装置、情報処理方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時刻同期された複数の車載装置により構成されるドメイン内部では、時刻同期を前提とした通信を用いることにより、複数の機器においてイベントデータを同期させることが可能である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、時刻同期されていないドメイン外部の車載装置からのイベントデータを同期させることはできない。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、時刻同期されていないドメイン外部の車載装置からのイベントデータを同期させることができる車載システム、車載装置、情報処理方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車載システムは、時刻同期された複数の第1車載装置により構成されるドメインと、該ドメイン内の一の第1車載装置を介して前記ドメインの外部に接続される第2車載装置とを含む、車載システムであって、前記一の第1車載装置は、前記第2車載装置から、前記ドメイン内の複数の宛先装置にて同期して実行すべきイベントに係るフレーム単位のデータを受信した場合、受信したデータと共に、前記イベントの同期を指定する同期フレームを前記複数の宛先装置へ送信する処理を行う処理部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、時刻同期されていないドメイン外部の車載装置からのイベントデータを同期させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係る車載システムの構成例を説明する説明図である。
【
図2】送信ECUの内部構成を示すブロック図である。
【
図3】スイッチ装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】受信ECUの内部構成を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態1における同期手順の概要を説明する説明図である。
【
図6】実施の形態1における通信手順を示すシーケンス図である。
【
図7】同期すべきイベントが連続する場合の送信データのフォーマット例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0010】
(1)本開示の一態様に係る車載システムは、時刻同期された複数の第1車載装置により構成されるドメインと、該ドメイン内の一の第1車載装置を介して前記ドメインの外部に接続される第2車載装置とを含む、車載システムであって、前記一の第1車載装置は、前記第2車載装置から、前記ドメイン内の複数の宛先装置にて同期して実行すべきイベントに係るフレーム単位のデータを受信した場合、受信したデータと共に、前記イベントの同期を指定する同期フレームを前記複数の宛先装置へ送信する処理を行う処理部を備える、車載システム。
【0011】
本態様にあっては、ドメイン外の第2車載装置からデータを受信した場合、受信したデータと共にイベントの同期を指定する同期フレームを複数の宛先装置へ送信するので、第2車載装置が時刻同期されていない場合であっても、同期フレームを基準に複数の宛先装置にイベントの実行を同期させることができる。
【0012】
(2)本開示の一態様に係る車載システムは、前記処理部は、前記データと共に、前記同期フレームを前記第2車載装置から受信する。
【0013】
本態様にあっては、ドメイン外の第2車載装置において、イベントの同期を指定することができる。一の第1車載装置は、第2車載装置から受信したデータが同期すべきイベントであるか否かを判断する必要がなくなる。
【0014】
(3)本開示の一態様に係る車載システムは、前記処理部は、前記データを受信した場合、前記同期フレームを生成する。
【0015】
本態様にあっては、一の第1車載装置において同期フレームを生成し、複数の宛先装置へ送信する。第2の車載装置から同期フレームが送信されない場合であっても、同期して実行すべきイベントのデータを受信した場合、一の第1車載装置において同期フレームを生成して送信することにより、イベントの同期を指定することができる。
【0016】
(4)本開示の一態様に係る車載システムは、前記一の第1車載装置から各宛先装置に至る他の1又は複数の第1車載装置は、前記ドメイン内で固定化された遅延時間に従って、前記データ及び前記同期フレームの送信時間を遅延させる。
【0017】
本態様にあっては、各第1車載装置において、固定化された遅延時間に従って送信時間を遅延させるので、一の第1車載装置から複数の宛先装置までのトポロジー(ホップ数)が分かれば、同期フレームが各宛先装置に到達するサイクルの差を特定することができる。
【0018】
(5)本開示の一態様に係る車載システムは、前記処理部は、前記一の第1車載装置から各宛先装置に至るまでのホップ数と、前記遅延時間とに基づき、前記データ及び前記同期フレームの送信時間を遅延させる。
【0019】
本態様にあっては、一の第1車載装置から複数の宛先装置までのトポロジー(ホップ数)に応じて、一の第1車載装置でデータ及び同期フレームの送信時間を遅延させるので、複数の宛先装置は、例えば、同期フレームを受信したサイクルの終期でイベントを実行することにより、複数の宛先装置間でイベントの実行を同期させることができる。
【0020】
(6)本開示の一態様に係る車載装置は、時刻同期されたドメインを構成する車載装置であって、ドメイン外の車載装置を接続する接続部と、該接続部に接続された前記ドメイン外の車載装置から、前記ドメイン内の複数の宛先装置にて同期して実行すべきイベントに係るフレーム単位のデータを受信した場合、受信したデータと共に、前記イベントの同期を指定する同期フレームを前記複数の宛先装置へ送信する処理を行う処理部とを備える。
【0021】
本態様にあっては、ドメイン外の第2車載装置からデータを受信した場合、受信したデータと共にイベントの同期を指定する同期フレームを複数の宛先装置へ送信するので、第2車載装置が時刻同期されていない場合であっても、同期フレームを基準に複数の宛先装置にイベントの実行を同期させることができる。
【0022】
(7)本開示の一態様に係る情報処理方法は、時刻同期されたドメインの外部に接続された車載装置から、前記ドメイン内の複数の宛先装置にて同期して実行すべきイベントに係るフレーム単位のデータを受信し、受信したデータと共に、前記イベントの同期を指定する同期フレームを前記複数の宛先装置へ送信する処理をコンピュータにより実行する。
【0023】
本態様にあっては、ドメイン外の第2車載装置からデータを受信した場合、受信したデータと共にイベントの同期を指定する同期フレームを複数の宛先装置へ送信するので、第2車載装置が時刻同期されていない場合であっても、同期フレームを基準に複数の宛先装置にイベントの実行を同期させることができる。
【0024】
(8)本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、時刻同期されたドメインの外部に接続された車載装置から、前記ドメイン内の複数の宛先装置にて同期して実行すべきイベントに係るフレーム単位のデータを受信し、受信したデータと共に、前記イベントの同期を指定する同期フレームを前記複数の宛先装置へ送信する処理をコンピュータに実行させる。
【0025】
本態様にあっては、ドメイン外の第2車載装置からデータを受信した場合、受信したデータと共にイベントの同期を指定する同期フレームを複数の宛先装置へ送信するので、第2車載装置が時刻同期されていない場合であっても、同期フレームを基準に複数の宛先装置にイベントの実行を同期させることができる。
【0026】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態に係る車載システムの構成例を説明する説明図である。本実施の形態に係る車載システムは、送信ECU10(ECU : Electronic Control Unit)、複数のスイッチ装置ESW1~ESW6、及び2台の受信ECU20,30を含む。スイッチ装置ESW1~ESW6及び受信ECU20,30は、時刻同期されたドメインDを構成する車載装置(第1車載装置)の一例である。スイッチ装置ESW1~ESW6及び受信ECU20,30は、互いに時刻同期されており、AVTP(Audio Video Transport Protocol)などの時刻同期を前提とした通信を利用して、例えばイベントの開始時刻等を指定することにより、イベントの実行タイミングを同期させることができる。一方、送信ECU10は、ドメインDの外部に接続される車載装置(第2車載装置)の一例である。送信ECU10は、ドメインDの内部のスイッチ装置ESW1~ESW6及び受信ECU20,30とは時刻同期されておらず、時刻を指定してイベントを同期させることはできない。
【0027】
そこで、本実施の形態では、IEEE802.Qchなどの遅延固定化技術を利用し、Syncフレーム(同期フレーム)を送信することにより、受信ECU20,30でのイベントの実行を同期させることを行う。具体的な処理内容については後に詳述する。
【0028】
なお、
図1に示した車載システムの構成は一例に過ぎない。例えば、送信ECUや受信ECUの数は、
図1の例に限定されない。また、送信ECUと受信ECUとの間に接続されるスイッチ装置の数やトポロジーについても、
図1の例に限定されない。送信ECU、受信ECU、及びスイッチ装置の数やトポロジーについては適宜設計され得る。
【0029】
また、本実施の形態では、イベントデータの送信方向を明示するために、イベントデータの送信元を便宜的に送信ECU10と表記し、イベントデータの宛先装置を便宜的に受信ECU20,30と表記したが、送信ECU10は送信専用のECUである必要はなく、受信ECU20は受信専用のECUである必要はない。送信ECU10及び受信ECU20,30は、各種データを送受信できるECUであればよい。
【0030】
図2は送信ECU10の内部構成を示すブロック図である。送信ECU10は、処理部11、記憶部12、通信部13、通信ポート14などを備える。処理部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える。処理部11内のCPUは、ROMに格納された制御プログラムを実行することにより、上記ハードウェアの動作を制御し、装置全体を本願の第2車載装置として機能させる。処理部11内のRAMには、制御プログラムの実行中に生成される各種データが記憶される。
【0031】
処理部11は、上記の構成に限定されるものではなく、MCU(Micro Controller Unit)、揮発性又は不揮発性のメモリ等を含む1又は複数の処理回路であればよい。また、処理部11は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能を備えていてもよい。
【0032】
記憶部12は、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性メモリにより構成されており、各種データを記憶する。記憶部12に記憶されるデータは、イベントデータや通信相手のアドレスのデータなどを含む。イベントデータは、例えば、受信ECU20,30にて音を同時に発生させるためのオーディオデータである。
【0033】
通信部13は、通信ポート14を介して接続された通信相手と通信するための処理を行う。本実施の形態では、例えばイーサネットケーブルを介して、ドメインDを構成する一の第1車載装置であるスイッチ装置ESW1が通信ポート14に接続される。通信部13は、受信ECU20,30を宛先装置として、イベントデータ(フレーム単位のデータ)を通信ポート14よりスイッチ装置ESW1へ送信する。
【0034】
図3はスイッチ装置ESW1の内部構成を示すブロック図である。スイッチ装置ESW1は、処理部51、記憶部52、中継部53、第1通信ポート54、第2通信ポート55、第3通信ポート56などを備える。処理部51は、例えば、CPU、ROM、RAMなどを備える。処理部51内のCPUは、ROMに格納された制御プログラムや記憶部52に記憶されたプログラムPGを実行することにより、上記ハードウェアの動作を制御し、装置全体を本願の第1車載装置の1つとして機能させる。処理部51内のRAMには、各種プログラムの実行中に生成される各種データが記憶される。
【0035】
処理部51は、上記の構成に限定されるものではなく、MCU、揮発性又は不揮発性のメモリ等を含む1又は複数の処理回路であればよい。また、処理部51は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能を備えていてもよい。
【0036】
記憶部52は、EEPROMなどの不揮発性メモリにより構成されており、各種データやプログラムPGを記憶する。記憶部52に記憶されるデータは、ドメインD内の時刻同期に係るデータや第1通信ポート54~第3通信ポート56に接続される通信相手のアドレス等のデータを含む。記憶部52に記憶されるプログラムPGは、処理部51によって読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよい。また、記憶部52に記憶されるプログラムPGは、図示しない外部サーバからプログラムPG(プログラム製品)をダウンロードしたものであってもよい。
【0037】
中継部53は、第1通信ポート54~第3通信ポート56を介して接続された複数の車載装置間の通信を中継するための処理を行う。本実施の形態では、例えばイーサネットケーブルを介して、第1通信ポート54には送信ECU10が接続され、第2通信ポート55にはスイッチ装置ESW2が接続され、第3通信ポート56にはスイッチ装置ESW4が接続される。中継部53は、第1通信ポート54を通じて受信したフレーム単位のイベントデータを、第2通信ポート55及び第3通信ポート56を通じて複数のスイッチ装置ESW2,ESW4にマルチキャストする機能を有する。
【0038】
図3では、スイッチ装置ESW1の内部構成について説明したが、スイッチ装置ESW2~ESW6の内部構成の構成についても、スイッチ装置ESW1と同様である。なお、
図1の構成例では、送信ECU10はスイッチ装置ESW1にのみ接続されているので、スイッチ装置ESW2~ESW6の第1通信ポート54には、送信ECU10は接続されている必要はない。
【0039】
図4は受信ECU20の内部構成を示すブロック図である。受信ECU20は、処理部21、記憶部22、通信部23、通信ポート24などを備える。処理部21は、例えば、CPU、ROM、RAMなどを備える。処理部21内のCPUは、ROMに格納された制御プログラムを実行することにより、上記ハードウェアの動作を制御し、装置全体を本願の第1車載装置の1つとして機能させる。処理部21内のRAMには、制御プログラムの実行中に生成される各種データが記憶される。
【0040】
処理部21は、上記の構成に限定されるものではなく、MCU、揮発性又は不揮発性のメモリ等を含む1又は複数の処理回路であればよい。また、処理部21は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能を備えていてもよい。
【0041】
記憶部22は、EEPROMなどの不揮発性メモリにより構成されており、各種データを記憶する。記憶部22に記憶されるデータは、ドメインD内の時刻同期に係るデータや通信相手のアドレスのデータなどを含む。
【0042】
通信部23は、通信ポート24を介して接続された通信相手と通信するための処理を行う。本実施の形態では、例えばイーサネットケーブルを介して、スイッチ装置ESW3が通信ポート24に接続される。通信部23は、送信ECU10から送信されてくるイベントデータ(フレーム単位のデータ)を通信ポート24を介して受信する。通信部23にて受信したイベントデータは処理部21へ送出される。処理部21は、通信部23より取得したイベントデータに基づき、音を出力するなどの適宜の処理を実行する。
【0043】
図4では、受信ECU20の内部構成について説明したが、受信ECU30の内部構成についても受信ECU20の内部構成と全く同様である。
【0044】
図5は実施の形態1における同期手順の概要を説明する説明図である。
図5の上段は、送信ECU10から受信ECU20への通信経路を示している。送信ECU10から受信ECU20に至る通信経路上には3台のスイッチ装置ESW1~ESW3が含まれている。すなわち、
図5の上段は、最初のスイッチ装置ESW1から受信ECU20に至るまでのホップ数が3のケースを示している。
【0045】
一方、
図5の下段は、送信ECU10から受信ECU30への通信経路を示している。送信ECU10から受信ECU30に至る通信経路上には4台のスイッチ装置ESW1,ESW4~ESW6が含まれている。すなわち、
図5の下段は、最初のスイッチ装置ESW1から受信ECU30に至るまでのホップ数が4のケースを示している。
【0046】
各スイッチ装置ESW1~ESW6は、ドメインD内で固定化された遅延時間に従って、データを後段の車載装置へ転送する。すなわち、各スイッチ装置ESW1~ESW6は、送信開始(0msec)~Tmsecのサイクルに受信したフレームをTmsecのタイミングで転送し、Tmsec~2Tmsecのサイクルに受信したフレームを2Tmsecのタイミングで転送し、2Tmsec~3Tmsecのサイクルに受信したフレームを3Tmsecのタイミングで転送するといったように、到着時間に応じて固定化されたタイミングでフレームを転送する。このような遅延時間の制御は、IEEE802.Qchなどの遅延固定化技術を用いることによって実現される。なお、1サイクルの周期(=T)はフレームの伝送時間等を考慮して適宜設計されるとよい。
【0047】
スイッチ装置ESW1から受信ECU20までのホップ数は3であるので、0msecからTmsecのサイクルにスイッチ装置ESW1が受信したフレームは、3Tmsecから4Tmsecのサイクルに受信ECU20に到達する。一方、スイッチ装置ESW1から受信ECU30までのホップ数は4であるので、0msecからTmsecのサイクルに受信したフレームは、4Tmsecから5Tmsecのサイクルに受信ECU30に到達する。
【0048】
そこで、受信ECU20については、フレームを受信したサイクルの終期(=4Tmsec)ではなく、1サイクル待機した後の終期(=5Tmsec)でイベントを実行し、受信ECU30については、フレームを受信したサイクルの終期(=5Tmsec)でイベントを実行することによって、イベントの実行を同期させることができる。待機するサイクル数は、ドメインDのトポロジー(具体的には、スイッチ装置ESW1から各受信ECU20,30までのホップ数)によって一意に定めることができる。このため、受信ECU20,30の夫々に対し、待機するサイクル数を事前に定めておき、待機するサイクル数の情報を夫々の記憶部22に記憶させておくことによって、各受信ECU20,30におけるイベントの実行タイミングを制御することが可能となる。
【0049】
なお、イベントデータが複数のフレームに分割され、それらのフレームがサイクルを跨ぐと時刻の同期を担保することができない。そこで、イベントデータを構成する複数のフレームと共に、同期用のSyncフレーム(1フレーム)を送信し、Syncフレームに従ってイベントの実行を同期させるとよい。このSyncフレームは、送信ECU10がイベントデータを送信する際に、送信ECU10によって生成され、イベントデータと共に受信ECU20,30へ送信される。代替的に、Syncフレームは、イベントデータを受信したスイッチ装置ESW1によって生成され、イベントデータと共に受信ECU20,30へ送信されてもよい。
【0050】
図6は実施の形態1における通信手順を示すシーケンス図である。送信ECU10とスイッチ装置ESW1とがイーサネットケーブル等により接続された場合、送信ECU10の処理部11は、スイッチ装置ESW1に対して、接続通知を行うと共に、サービス設定を要求する(ステップS101)。
【0051】
スイッチ装置ESW1は、新たに接続された送信ECU10から接続通知及びサービス設定の要求を受信した場合、受信ECU20,30との間でサービス設定を行う(ステップS102)。具体的には、スイッチ装置ESW1の処理部51は、スイッチ装置ESW1から各受信ECU20,30までのホップ数を計算し、計算したホップ数に基づいて定めたサイクル待機時間を各受信ECU20,30に通知する処理を行う。
【0052】
各受信ECU20,30は、スイッチ装置ESW1によるサービス設定を受付けた場合、要求されるサービス設定の可否を判断する。サービス設定の可否は、例えば、送信ECU10が要求するイベントの内容に基づき判断される。サービス設定を可と判断した場合、各受信ECU20,30の処理部21は、それぞれに設定されるサイクル待機時間を記憶部22に記憶させると共に(ステップS103)、サービス設定を許可する旨の許可通知を返信する(ステップS104)。また、サービス設定の際、各スイッチ装置ESW1~ESW6は、IEEE802.Qchに従い、サイクルの設定(遅延時間の固定化)を行ってもよい。
【0053】
スイッチ装置ESW1は、各受信ECU20,30から許可通知を受信した場合、受信した許可通知を送信ECU10へ転送する(ステップS105)。
【0054】
送信ECU10は、同期して実行すべきイベントを検出した場合、フレーム単位のイベントデータと共に、Syncフレームを受信ECU20,30へ送信する(ステップS106)。
【0055】
スイッチ装置ESW1は、送信ECU10からのイベントデータ(複数フレーム)及びSyncフレーム(1フレーム)を受信した場合、受信したサイクルの終期のタイミングで、受信ECU20,30へイベントデータ及びSyncフレームをマルチキャストする(ステップS107)。
【0056】
マルチキャストされたイベントデータ及びSyncフレームは、スイッチ装置ESW2~ESW3を介して受信ECU20へ送信され、スイッチ装置ESW4~ESW6を介して受信ECU30へ送信される。各スイッチ装置ESW2~ESW6は、各フレームを受信したサイクルの終期のタイミングで、それぞれ後段のスイッチ装置ESW3~ESW6、又は、受信ECU20,30へイベントデータ及びSyncフレームを転送すればよい。
【0057】
受信ECU20,30は、イベントデータ及びSyncフレームを受信した場合、Syncフレームを受信したサイクルの終期から、それぞれに設定されたサイクル待機時間を待機した後、イベントを実行する(ステップS108)。
【0058】
以上のように、時刻同期されたドメインDの外部に接続された車載装置(送信ECU10)からイベントデータを送信する場合であっても、送信元において時刻を指定することなく、複数の宛先装置(受信ECU20,30)にイベントの実行を同期させることができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、ホップ数に基づき定めたサイクル待機時間を受信ECU20,30が待機する構成としたが、スイッチ装置ESW1にてサイクル待機時間を待機する構成としてもよい。例えば、
図5に示すケースでは、スイッチ装置ESW1は、イベントデータ及びSyncフレームを受信した場合、1サイクル待機した後、イベントデータ及びSyncフレームを受信ECU20へ送信し、サイクル待機を行わずに、イベントデータ及びSyncフレームを受信ECU30へ送信すればよい。
【0060】
本実施の形態では、IEEE802.Qchの遅延固定化技術を用いて、Syncフレームを送信することにより、イベントを同期させる構成としたが、IEEE802.Qbv及びIEEE802.Qciを併用し、同様の手順にて、Syncフレームを送信してもよい。
【0061】
また、IEEE802.Qbvを単独で使用して、Syncフレームを送信してもよい。この場合、各スイッチ装置ESW1~ESW6は、n×Tmsec~(n+1/2)×Tmsec(nは自然数)の時間範囲で各フレームを送信するように構成されるとよい。IEEE802.Qbvのみで適用可能である場合、実装に必要なキュークラス数が少ないという利点を有する。
【0062】
(実施の形態2)
実施の形態2では、同期すべきイベントが連続する場合について説明する。
車載システムの構成、及び各装置の構成については、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0063】
図7は同期すべきイベントが連続する場合の送信データのフォーマット例を説明する説明図である。
図7に示すイベントフォーマットの例は、時刻0:00にイベント1を実行する(サウンドAを鳴らす)、時刻0:01にイベント2を実行する(サウンドBを鳴らす)、時刻0:02にイベント3を実行する(サウンドCを鳴らす)、時刻0:03にイベント4を実行する(サウンドDを鳴らす)、…、といったように同期すべきイベントが時間的に連続している場合のフォーマットを示している。
【0064】
このように、イベントが連続である場合、イベント毎にSyncフレームを送信して同期させるのは困難となるため、例えば、最初のイベント(イベント1)についてSyncフレームを送信し、他のイベント(イベント2,イベント3,…)については、最初のイベントからの差分時刻情報を基に同期させてもよい。
【0065】
すなわち、送信データには、イベントのデータに加え、Syncフレームとの差分時間、及び対応するイベントの情報が含まれていればよい。
図7の例では、Syncフレームとの差分時間が+0のイベントは、イベント1(サウンドAを鳴らす)を表し、Syncフレームとの差分時間が+1のイベントは、イベント2(サウンドBを鳴らす)を表し、Syncフレームとの差分時間が+2のイベントは、イベント3(サウンドCを鳴らす)を表し、Syncフレームとの差分時間が+3のイベントは、イベント4(サウンドDを鳴らす)を表している。
【0066】
宛先装置(受信ECU20,30)は、Syncフレームをイベント1の開始時間合わせに使用し、送信データに含まれるSyncフレームとの差分時間及びイベント情報を参照して各イベントを実行していくことで、イベントが時間的に連続する場合であっても宛先装置(受信ECU20,30)間で各イベントの実行を同期させることができる。
【0067】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0068】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 送信ECU
11 処理部
12 記憶部
13 通信部
14 通信ポート
20,30 受信ECU
21 処理部
22 記憶部
23 通信部
24 通信ポート
ESW1~ESW6 スイッチ装置
51 処理部
52 記憶部
53 通信部
54 第1通信ポート
55 第2通信ポート
56 第3通信ポート