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特開2023-181858画像処理装置、放射線撮像システム、画像処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181858
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】画像処理装置、放射線撮像システム、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
A61B6/00 333
A61B6/00 360B
A61B6/00 350P
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095223
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩下 貴司
(72)【発明者】
【氏名】照井 晃介
(72)【発明者】
【氏名】藤本 竜一
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA26
4C093CA06
4C093CA21
4C093EA07
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB17
4C093FD09
4C093FF03
4C093FF09
4C093FF25
4C093FF34
4C093FF35
(57)【要約】
【課題】ノイズが低減された画像を取得すること。
【解決手段】画像処理装置は、被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、ノイズ低減処理と物質分離処理とを行う処理部を備える。処理部は、物質分離処理により得た物質の厚み画像を複数の周波数に分解した周波数成分ごとにフィルタ処理を適用したノイズ低減画像を生成し、ノイズ低減画像を周波数成分ごとに合成したノイズ低減後の厚み画像と、複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像と、を用いた再度の物質分離処理による画像を生成する。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、ノイズ低減処理と物質分離処理とを行う処理手段を備え、
前記処理手段は、
前記物質分離処理により得た物質の厚み画像を複数の周波数に分解した周波数成分ごとにフィルタ処理を適用したノイズ低減画像を生成し、
前記ノイズ低減画像を前記周波数成分ごとに合成したノイズ低減後の厚み画像と、前記複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像と、を用いた再度の物質分離処理による画像を生成する画像処理装置。
【請求項2】
前記フィルタ処理には前記周波数成分ごとに適用する空間フィルタ処理が含まれ、
前記処理手段は、イプシロンフィルタ又はバイラテラルフィルタを用いて前記空間フィルタ処理を行う請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記処理手段は、前記周波数成分に分解した前記蓄積画像を用いて前記フィルタ処理に適用するフィルタの係数を設定する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記フィルタ処理には前記空間フィルタ処理の後に前記周波数成分ごとに適用する時間フィルタ処理が含まれ、
前記処理手段は、リカーシブフィルタを用いて前記時間フィルタ処理を行う請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記処理手段は、前記空間フィルタ処理を適用したノイズ低減画像から前記周波数成分を復元した厚み画像を減算することにより生成した画像に対して前記時間フィルタ処理を行う請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記処理手段は、時間フィルタ処理後の画像と、前記厚み画像における前記周波数成分を復元した周波数復元画像とを加算した周波数合成画像を、前記分解された周波数成分ごとに合成することにより前記ノイズ低減後の厚み画像を生成する請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記処理手段は、前記異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像に対して前記フィルタ処理を適用することによりノイズ低減後の前記複数の画像を取得し、
ノイズ低減後の前記複数の画像を用いた前記物質分離処理により得た物質の厚み画像を複数の周波数に分解した周波数成分ごとに前記フィルタ処理を適用したノイズ低減画像を生成し、
前記ノイズ低減画像を合成したノイズ低減後の厚み画像と、前記複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像と、を用いた前記物質分離処理により前記被写体に含まれる物質を分離した画像を生成する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、ノイズ低減処理と物質分離処理とを行う処理手段を備え、
前記処理手段は、
前記物質分離処理により得た物質の厚み画像に対して、前記複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像の画素値に基づいて係数を設定したフィルタを用いたフィルタ処理によりノイズ低減後の厚み画像を生成し、
前記ノイズ低減後の厚み画像と前記蓄積画像とを用いた再度の物質分離処理による画像を生成する画像処理装置。
【請求項9】
前記処理手段は、
前記蓄積画像における注目画素と周囲の画素との画素値の差分が閾値を超えたか否により前記被写体の構造のエッジ判定の重みを設定し、
前記エッジ判定の重みに基づいて前記フィルタの係数を設定する請求項3または8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記処理手段は、前記蓄積画像における画素値に依存しない閾値、又は、前記蓄積画像における画素値の平方根に比例した閾値を用いて、前記エッジ判定の重みを設定する請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記処理手段は、前記複数の画像の少なくとも一方に係数を乗算して加算することにより前記蓄積画像を生成する請求項1または8に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記処理手段は、前記物質分離処理により得た第1物質の厚み画像と前記第1物質とは異なる第2物質の厚み画像との和により、前記厚み画像を取得し、
前記再度の物質分離処理による画像として前記第1物質の厚み画像を生成する請求項1または8に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記処理手段は、前記物質分離処理により得た第1物質の厚み画像と前記第1物質とは異なる第2物質の厚み画像とを取得し、
前記厚み画像として前記第2物質の厚み画像を入力し、
前記再度の物質分離処理による画像として、ノイズ低減された、前記第1物質の厚み画像と前記第2物質の厚み画像との和による厚み画像を生成する請求項1または8に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記第1物質の厚み画像は骨画像であり、前記第2物質の厚み画像は軟部組織画像である請求項12に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記複数の放射線エネルギーには、第1放射線エネルギーと、前記第1放射線エネルギーよりも低い第2放射線エネルギーとが含まれ、
前記処理手段は、前記第1放射線エネルギーで撮影した第1画像と前記第2放射線エネルギーで撮影した第2画像とを用いて、前記被写体に含まれる第1物質の厚みを示す第1物質分離画像と、前記第1物質とは異なる第2物質の厚みを示す第2物質分離画像とを生成する物質分離処理を行う請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項16】
被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、物質の厚み画像を生成し、前記物質の厚み画像において周波数成分ごとにフィルタ処理を適用することにより、前記周波数成分ごとのノイズ低減画像を生成し、前記ノイズ低減画像を合成することによりノイズ低減後の厚み画像を生成する処理手段を備える画像処理装置。
【請求項17】
請求項1、8、16のうちいずれか1項に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置と通信可能に接続された放射線撮像装置と、
を備える放射線撮像システム。
【請求項18】
被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、ノイズ低減処理と物質分離処理とを行う処理工程を備え、
前記処理工程では、
前記物質分離処理により得た物質の厚み画像を複数の周波数に分解した周波数成分ごとにフィルタ処理を適用したノイズ低減画像を生成し、
前記ノイズ低減画像を前記周波数成分ごとに合成したノイズ低減後の厚み画像と、前記複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像と、を用いた再度の物質分離処理による画像を生成する画像処理方法。
【請求項19】
被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、ノイズ低減処理と物質分離処理とを行う処理工程を備え、
前記処理工程では、
前記物質分離処理により得た物質の厚み画像に対して、前記複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像の画素値に基づいて係数を設定したフィルタを用いたフィルタ処理によりノイズ低減後の厚み画像を生成し、
前記ノイズ低減後の厚み画像と前記蓄積画像とを用いた再度の物質分離処理による画像を生成する画像処理方法。
【請求項20】
被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、物質の厚み画像を生成し、前記物質の厚み画像において周波数成分ごとにフィルタ処理を適用することにより、前記周波数成分ごとのノイズ低減画像を生成し、前記ノイズ低減画像を合成することによりノイズ低減後の厚み画像を生成する処理工程を備える画像処理方法。
【請求項21】
コンピュータを、請求項1、8、16のいずれか1項に記載の画像処理装置の処理手段として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、画像処理装置、放射線撮像システム、画像処理方法及びプログラムに関する。より具体的には、医療診断における一般撮影などの静止画撮影や透視撮影などの動画撮影に用いられる画像処理装置、放射線撮像システム、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、X線による医療画像診断や非破壊検査に用いる撮影装置として、半導体材料によって形成された平面検出器(Flat Panel Detector、以下FPDと略す)を用いた放射線撮像装置が普及している。
【0003】
FPDを用いた撮影方法として、エネルギーサブトラクションでは、管電圧の異なるX線を照射して取得した、エネルギーの異なる複数の画像を処理することにより、コントラストを低減した物質分離画像、例えば、骨画像や軟部組織画像を取得することができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-162358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FPDを用いたIVR(Interventional Radiology:画像下治療)では、血管に造影剤が注入され、また、カテーテルやガイドワイヤーなどの医療用デバイスを血管内に挿入し、造影剤や医療用デバイスの位置と形状を確認しながら治療が行われる。エネルギーサブトラクションを用いて、軟部組織や骨のコントラストを低減すると、造影剤や医療用デバイスの視認性は向上するものの画像のノイズが増えてしまうという課題が生じ得る。
【0006】
開示の技術は、ノイズが低減された画像を取得することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の一態様による画像処理装置は、被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、ノイズ低減処理と物質分離処理とを行う処理手段を備え、
前記処理手段は、
前記物質分離処理により得た物質の厚み画像を複数の周波数に分解した周波数成分ごとにフィルタ処理を適用したノイズ低減画像を生成し、
前記ノイズ低減画像を前記周波数成分ごとに合成したノイズ低減後の厚み画像と、前記複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像と、を用いた再度の物質分離処理による画像を生成する。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、ノイズが低減された画像を取得することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態によるX線撮像システムの構成例を示す図。
図2】第1実施形態によるX線撮像装置の画素等価回路図。
図3】第1実施形態によるX線撮像装置のタイミングチャート。
図4】第1実施形態によるX線撮像装置のタイミングチャート。
図5】第1実施形態による補正処理を説明する図。
図6】第1実施形態による信号処理のブロック図。
図7】第1実施形態による画像処理のブロック図。
図8】第1実施形態に係る補正処理のブロック図。
図9】第1実施形態に係る蓄積画像Aと骨画像Bとを例示的に示す図。
図10】第1実施形態に係る放射線撮像システムにおける信号処理のブロック図。
図11】ガウシアンフィルタによるノイズ低減処理を説明する図。
図12】イプシロンフィルタによるノイズ低減処理を説明する図。
図13】蓄積画像によるエッジ判定処理を例示的に説明する図。
図14】第2実施形態に係る周波数分解によるノイズ低減処理を例示的に説明する図。
図15】第2実施形態に係る周波数分解とリカーシブフィルタとによるノイズ低減処理を例示的に説明する図。
図16】第3実施形態に係るイプシロンフィルタを用いたノイズ低減処理において、蓄積画像を用いたエッジ判定を適用する構成例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
なお、開示の技術における放射線には、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギーを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども、含まれるものとする。以下の実施形態では、放射線の一例としてX線を用いた装置を説明する。したがって、以下では、放射線撮像装置、放射線撮像システムとして、それぞれX線撮像装置、X線撮像システムとして説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る、放射線撮像システムの一例としてのX線撮像システムの構成例を示すブロック図である。第1実施形態のX線撮像システムは、X線発生装置101、X線制御装置102、撮像制御装置103、X線撮像装置104(放射線撮像装置)を備える。
【0013】
X線発生装置101は、X線を発生し、被写体にX線を照射する。X線制御装置102は、X線発生装置101におけるX線の発生を制御する。撮像制御装置103は、例えば、1つまたは複数のプロセッサー(CPU)とメモリを有し、プロセッサーがメモリに格納されたプログラムを実行してX線画像の取得及び画像処理を行う。なお、撮像制御装置103による画像処理を含む各処理は、専用のハードウエアにより実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアの協働により実現されてもよい。X線撮像装置104は、X線を可視光に変換する蛍光体105と、可視光を検出する二次元検出器106を有する。二次元検出器は、X線量子を検出する画素20をX列×Y行のアレイ状に配置したセンサであり、画像情報を出力する。
【0014】
撮像制御装置103は、上述したプロセッサーにより放射線画像を処理する画像処理装置として機能する。取得部131、補正部132、信号処理部133、画像処理部134は、画像処理装置としての機能構成例を示している。放射線撮像システムは、撮像制御装置103(画像処理装置)と通信可能に接続されたX線撮像装置104(放射線撮像装置)とを備える。
【0015】
取得部131は、被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いにエネルギーが異なる複数の放射線画像を取得する。取得部131は、複数の放射線画像として、1ショットの放射線の曝射の間に複数回のサンプルホールドを行って得られた放射線画像を取得する。
【0016】
補正部132は、取得部131により取得された複数の放射線画像を補正してエネルギーサブトラクション処理で用いられる複数の画像を生成する。
【0017】
信号処理部133は、被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、ノイズ低減処理とエネルギーサブトラクションによる物質分離処理とを行う。信号処理部133は、物質分離処理により得た物質の厚み画像を複数の周波数に分解した周波数成分ごとにフィルタ処理を適用したノイズ低減画像を生成し、ノイズ低減画像を周波数成分ごとに合成したノイズ低減後の厚み画像と、複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像と、を用いた再度の物質分離処理による画像を生成する。信号処理部133は、被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、物質の厚み画像を生成し、物質の厚み画像において周波数成分ごとにフィルタ処理を適用することにより、周波数成分ごとのノイズ低減画像を生成し、ノイズ低減画像を合成することによりノイズ低減後の厚み画像を生成する。信号処理部133は、補正部132により生成された複数の画像を用いて物質特性画像を生成する。物質特性画像とは、例えば骨と軟部組織というように物質を分離して表す物質分離画像、実効原子番号とその面密度を表す物質識別画像など、エネルギーサブトラクション処理において取得される画像である。
【0018】
複数の放射線エネルギーには、第1放射線エネルギー(高エネルギー)と、第1放射線エネルギーよりも低い第2放射線エネルギー(低エネルギー)とが含まれる。信号処理部133は、第1放射線エネルギー(高エネルギー)で撮影した第1画像(高エネルギー画像H)と第2放射線エネルギー(低エネルギー)で撮影した第2画像(低エネルギー画像L)とを用いて、被写体に含まれる第1物質の厚みを示す第1物質分離画像と、第1物質とは異なる第2物質の厚みを示す第2物質分離画像とを生成する物質分離処理を行う。信号処理部133は、互いに異なる放射線エネルギーで撮影した複数の放射線画像を用いた物質分離処理を行うことにより、第1物質の厚みを示す第1物質分離画像と、第1物質とは異なる第2物質の厚みを示す第2物質分離画像とを生成する。また、信号処理部133は、第1物質の厚みと第2物質の厚みとを合わせた厚み画像を生成する。ここで、第1物質には、少なくとも、カルシウム、ハイドロキシアパタイト、又は骨が含まれ、第2物質には、少なくとも、水、又は脂肪又はカルシウムを含まない軟物質が含まれる。信号処理部133の詳細は後述する。画像処理部134は、信号処理部133による信号処理によって取得された物質特性画像を用いて、表示用画像を生成する。
【0019】
図2は、第1実施形態に係る画素20の等価回路図である。画素20は、光電変換素子201と、出力回路部202とを含む。光電変換素子201は、典型的にはフォトダイオードでありうる。出力回路部202は、増幅回路部204、クランプ回路部206、サンプルホールド回路207、選択回路部208を含む。
【0020】
光電変換素子201は、電荷蓄積部を含み、該電荷蓄積部は、増幅回路部204のMOSトランジスタ204aのゲートに接続されている。MOSトランジスタ204aのソースは、MOSトランジスタ204bを介して電流源204cに接続されている。MOSトランジスタ204aと電流源204cとによってソースフォロア回路が構成されている。MOSトランジスタ204bは、そのゲートに供給されるイネーブル信号ENがアクティブレベルになるとオンしてソースフォロア回路を動作状態にするイネーブルスイッチである。
【0021】
図2に示す例では、光電変換素子201の電荷蓄積部およびMOSトランジスタ204aのゲートが共通のノードを構成していて、このノードは、電荷蓄積部に蓄積された電荷を電圧に変換する電荷電圧変換部として機能する。即ち、電荷電圧変換部には、電荷蓄積部に蓄積された電荷Qと電荷電圧変換部が有する容量値Cとによって定まる電圧V(=Q/C)が現れる。電荷電圧変換部は、リセットスイッチ203を介してリセット電位Vresに接続されている。リセット信号PRESがアクティブレベルになると、リセットスイッチ203がオンして、電荷電圧変換部の電位がリセット電位Vresにリセットされる。
【0022】
クランプ回路部206は、リセットした電荷電圧変換部の電位に応じて増幅回路部204によって出力されるノイズをクランプ容量206aによってクランプする。つまり、クランプ回路部206は、光電変換素子201で光電変換により発生した電荷に応じてソースフォロア回路から出力された信号から、このノイズをキャンセルするための回路である。このノイズはリセット時のkTCノイズを含む。クランプは、クランプ信号PCLをアクティブレベルにしてMOSトランジスタ206bをオン状態にした後に、クランプ信号PCLを非アクティブレベルにしてMOSトランジスタ206bをオフ状態にすることによってなされる。クランプ容量206aの出力側は、MOSトランジスタ206cのゲートに接続されている。MOSトランジスタ206cのソースは、MOSトランジスタ206dを介して電流源206eに接続されている。MOSトランジスタ206cと電流源206eとによってソースフォロア回路が構成されている。MOSトランジスタ206dは、そのゲートに供給されるイネーブル信号EN0がアクティブレベルになるとオンしてソースフォロア回路を動作状態にするイネーブルスイッチである。
【0023】
光電変換素子201で光電変換により発生した電荷に応じてクランプ回路部206から出力される信号は、光信号として、光信号サンプリング信号TSがアクティブレベルになることによってスイッチ207Saを介して容量207Sbに書き込まれる。電荷電圧変換部の電位をリセットした直後にMOSトランジスタ206bをオン状態とした際にクランプ回路部206から出力される信号は、クランプ電圧である。ノイズ信号は、ノイズサンプリング信号TNがアクティブレベルになることによってスイッチ207Naを介して容量207Nbに書き込まれる。このノイズ信号には、クランプ回路部206のオフセット成分が含まれる。スイッチ207Saと容量207Sbによって信号サンプルホールド回路207Sが構成され、スイッチ207Naと容量207Nbによってノイズサンプルホールド回路207Nが構成される。サンプルホールド回路部207は、信号サンプルホールド回路207Sとノイズサンプルホールド回路207Nとを含む。
【0024】
駆動回路部が行選択信号をアクティブレベルに駆動すると、容量207Sbに保持された信号(光信号)がMOSトランジスタ208Saおよび行選択スイッチ208Sbを介して信号線21Sに出力される。また、同時に、容量207Nbに保持された信号(ノイズ)がMOSトランジスタ208Naおよび行選択スイッチ208Nbを介して信号線21Nに出力される。MOSトランジスタ208Saは、信号線21Sに設けられた不図示の定電流源とソースフォロア回路を構成する。同様に、MOSトランジスタ208Naは、信号線21Nに設けられた不図示の定電流源とソースフォロア回路を構成する。MOSトランジスタ208Saと行選択スイッチ208Sbによって信号用選択回路部208Sが構成され、MOSトランジスタ208Naと行選択スイッチ208Nbによってノイズ用選択回路部208Nが構成される。選択回路部208は、信号用選択回路部208Sとノイズ用選択回路部208Nとを含む。
【0025】
画素20は、隣接する複数の画素20の光信号を加算する加算スイッチ209Sを有してもよい。加算モード時には、加算モード信号ADDがアクティブレベルになり、加算スイッチ209Sがオン状態になる。これにより、隣接する画素20の容量207Sbが加算スイッチ209Sによって相互に接続されて、光信号が平均化される。同様に、画素20は、隣接する複数の画素20のノイズを加算する加算スイッチ209Nを有してもよい。加算スイッチ209Nがオン状態になると、隣接する画素20の容量207Nbが加算スイッチ209Nによって相互に接続されて、ノイズが平均化される。加算部209は、加算スイッチ209Sと加算スイッチ209Nを含む。
【0026】
また、画素20は、感度を変更するための感度変更部205を有してもよい。画素20は、例えば、第1感度変更スイッチ205aおよび第2感度変更スイッチ205'a、並びにそれらに付随する回路素子を含みうる。第1変更信号WIDEがアクティブレベルになると、第1感度変更スイッチ205aがオンして、電荷電圧変換部の容量値に第1付加容量205bの容量値が追加される。これによって画素20の感度が低下する。第2変更信号WIDE2がアクティブレベルになると、第2感度変更スイッチ205'aがオンして、電荷電圧変換部の容量値に第2付加容量205'bの容量値が追加される。これによって画素20の感度が更に低下する。このように画素20の感度を低下させる機能を追加することによって、より大きな光量を受光することが可能となり、ダイナミックレンジを広げることができる。第1変更信号WIDEがアクティブレベルになる場合には、イネーブル信号ENwをアクティブレベルにして、MOSトランジスタ204aに変えてMOSトランジスタ204'aをソースフォロア動作させてもよい。
【0027】
X線撮像装置104は、二次元検出器106から以上のような画素回路の出力を読み出し、不図示のAD変換器でデジタル値に変換した後、撮像制御装置103に画像を転送する。
【0028】
次に、上述した構成を備えた第1実施形態のX線撮像システムの動作について説明する。図3は、第1実施形態に係るX線撮像システムにおいてエネルギーサブトラクションを行った場合のX線撮像装置104の駆動タイミングを示す。図3における波形は横軸を時間として、X線の曝射、同期信号、光電変換素子201のリセット、サンプルホールド回路207、信号線21からの画像の読み出しのタイミングを示している。
【0029】
リセット信号により光電変換素子201のリセットが行われてからX線が曝射される。X線の管電圧は理想的には矩形波となるが、管電圧の立ち上がりと立下りには有限の時間がかかる。特に、パルスX線で曝射時間が短い場合は、管電圧はもはや矩形波とはみなせず、X線301~303に示すような波形となる。立ち上がり期のX線301、安定期のX線302、立下り期のX線303ではそれぞれX線のエネルギーが異なる。したがって、サンプルホールドによって区切られる期間の放射線に対応したX線画像を得ることにより、互いにエネルギーが異なる複数種類のX線画像が得られる。
【0030】
X線撮像装置104は、立ち上がり期のX線301が曝射された後に、ノイズサンプルホールド回路207Nでサンプリングを行い、さらに安定期のX線302が曝射された後に信号サンプルホールド回路207Sでサンプリングを行う。その後、X線撮像装置104は、信号線21Nと信号線21Sの差分を画像として読み出す。このとき、ノイズサンプルホールド回路207Nには立ち上がり期のX線301の信号(R)が保持され、信号サンプルホールド回路207Sには立ち上がり期のX線301の信号と安定期のX線302の信号(B)の和(R+B)が保持されている。従って、安定期のX線302の信号に対応した画像304が読み出される。
【0031】
次に、X線撮像装置104は、立下り期のX線303の曝射と、画像304の読み出しとが完了してから、再び信号サンプルホールド回路207Sでサンプリングを行う。その後、X線撮像装置104は、光電変換素子201のリセットを行い、再びノイズサンプルホールド回路207Nでサンプリングを行い、信号線21Nと信号線21Sの差分を画像として読み出す。このとき、ノイズサンプルホールド回路207NにはX線が曝射されていない状態の信号が保持され、信号サンプルホールド回路207Sには立ち上がり期のX線301の信号と安定期のX線302と立下り期のX線303の信号(R)の和(R+B+R)が保持されている。従って、立ち上がり期のX線301の信号と安定期のX線302の信号と立下り期のX線303の信号に対応した画像306が読み出される。その後、画像306と画像304の差分を計算することで、立ち上がり期のX線301と立下り期のX線303の和に対応した画像305が得られる。この計算は、X線撮像装置104で行われてもよいし、撮像制御装置103で行われてもよい。
【0032】
サンプルホールド回路207及び光電変換素子201のリセットを行うタイミングは、X線発生装置101からX線の曝射が開始されたことを示す同期信号307を用いて決定される。X線の曝射開始を検出する方法としては、X線発生装置101の管電流を測定し、電流値が予め設定された閾値を上回るか否かを判定する構成を用いることができるがこれに限られるものではない。例えば、光電変換素子201のリセットが完了した後、画素20を繰り返して読み出し、画素値が予め設定された閾値を上回るか否かを判定することによりX線の曝射開始を検出する構成が用いられてもよい。
【0033】
あるいは、例えば、X線撮像装置104に二次元検出器106とは異なるX線検出器を内蔵し、その測定値が予め設定された閾値を上回るか否かを判定することによりX線の曝射開始を検出する構成が用いられてもよい。いずれの方式の場合も、X線の曝射開始を示す同期信号307の入力から予め指定した時間が経過した後に、信号サンプルホールド回路207Sのサンプリング、ノイズサンプルホールド回路207Nのサンプリング、光電変換素子201のリセットが行われる。
【0034】
以上のようにして、パルスX線の安定期に対応した画像304と、立ち上がり期と立下り期の和に対応した画像305が得られる。これら二枚のX線画像を形成する際に曝射されたX線のエネルギーは互いに異なるため、これらX線画像間で演算を行うことでエネルギーサブトラクション処理を行うことができる。
【0035】
図4は、第1実施形態に係るX線撮像システムにおいてエネルギーサブトラクションを行った場合のX線撮像装置104の駆動タイミングを示す。図4に示す駆動タイミングは、X線発生装置101の管電圧を能動的に切り替えている点で図3の駆動タイミングとは異なる。
【0036】
まず、光電変換素子201のリセットが行われた後、X線発生装置101は低エネルギーのX線401の曝射を行う。この状態で、X線撮像装置104は、ノイズサンプルホールド回路207Nによりサンプリングを行う。その後、X線発生装置101は、管電圧を切り替えて高エネルギーのX線402の曝射を行う。この状態で、X線撮像装置104は、信号サンプルホールド回路207Sによりサンプリングを行う。その後、X線発生装置101は、管電圧を切り替えて低エネルギーのX線403の曝射を行う。X線撮像装置104は、信号線21Nと信号線21Sの差分を画像として読み出す。このとき、ノイズサンプルホールド回路207Nには低エネルギーのX線401の信号(R)が保持され、信号サンプルホールド回路207Sには低エネルギーのX線401の信号と高エネルギーのX線402の信号(B)の和(R+B)が保持されている。従って、高エネルギーのX線402の信号に対応した画像404が読み出される。
【0037】
次に、X線撮像装置104は、低エネルギーのX線403の曝射と、画像404の読み出しとが完了してから、再び信号サンプルホールド回路207Sでサンプリングを行う。その後、X線撮像装置104は、光電変換素子201のリセットを行い、再びノイズサンプルホールド回路207Nでサンプリングを行い、信号線21Nと信号線21Sの差分を画像として読み出す。このとき、ノイズサンプルホールド回路207NにはX線が曝射されていない状態の信号が保持され、信号サンプルホールド回路207Sには低エネルギーのX線401の信号と高エネルギーのX線402と低エネルギーのX線403の信号(R)の和(R+B+R)が保持されている。従って、低エネルギーのX線401の信号と高エネルギーのX線402の信号と低エネルギーのX線403の信号に対応した画像406が読み出される。
【0038】
その後、画像406と画像404の差分を計算することで、低エネルギーのX線401と低エネルギーのX線403の和に対応した画像405が得られる。この計算は、X線撮像装置104で行われてもよいし、撮像制御装置103で行われてもよい。同期信号407については、図3と同様である。このように、管電圧を能動的に切り替えながら画像を取得することで、図3の方法に比べて低エネルギーと高エネルギーの放射線画像の間のエネルギー差をより大きくすることが出来る。
【0039】
次に、撮像制御装置103によるエネルギーサブトラクション処理について説明する。第1実施形態におけるエネルギーサブトラクション処理は、補正部132による補正処理、信号処理部133による信号処理、画像処理部134による画像処理の3段階に分かれている。以下、それぞれの処理について説明する。
【0040】
補正処理は、X線撮像装置104から取得された複数の放射線画像を処理してエネルギーサブトラクション処理における後述の信号処理で用いられる複数の画像を生成する処理である。図5に、第1実施形態に係るエネルギーサブトラクション処理のための補正処理のブロック図を示す。まず、取得部131は、X線撮像装置104にX線を曝射しない状態での撮像を行わせ、図3または図4に示した駆動で画像を取得する。この駆動により2枚の画像が読み出される。以下、1枚目の画像(画像304または画像404)をF_ODD、2枚目の画像(画像306または画像406)をF_EVENとする。F_ODDとF_EVENは、X線撮像装置104の固定パターンノイズ(FPN:Fixed Pattern Noise)に対応する画像である。
【0041】
次に、取得部131は、被写体がない状態でX線撮像装置104にX線を曝射して撮像を行わせ、図3又は図4に示した駆動によりX線撮像装置104から出力されるゲイン補正用の画像を取得する。この駆動により、上記と同様に2枚の画像が読み出される。以下、1枚目のゲイン補正用の画像(画像304または画像404)をW_ODD、2枚目のゲイン補正用の画像(画像306または画像406)をW_EVENとする。W_ODDとW_EVENは、X線撮像装置104のFPNとX線による信号の和に対応する画像である。補正部132は、W_ODDからF_ODDを、W_EVENからF_EVENを減算することで、X線撮像装置104のFPNが除去された画像WF_ODDとWF_EVENを得る。これをオフセット補正と呼ぶ。
【0042】
WF_ODDは安定期のX線302に対応する画像であり、WF_EVENは立ち上がり期のX線301、安定期のX線302、立下り期のX線303の和に対応する画像である。従って、補正部132は、WF_EVENからWF_ODDを減算することで、立ち上がり期のX線301と立下り期のX線303の和に対応する画像を得る。このように、複数枚の画像の減算により、サンプルホールドによって区切られる特定の期間のX線に対応した画像を得る処理を色補正と呼ぶ。立ち上がり期のX線301と立下り期のX線303のエネルギーは、安定期のX線302のエネルギーに比べて低い。従って、色補正により、WF_EVENからWF_ODDを減算することで、被写体がない場合の低エネルギー画像W_Lowが得られる。また、WF_ODDから、被写体がない場合の高エネルギー画像W_Highが得られる。
【0043】
次に、取得部131は、被写体がある状態でX線撮像装置104にX線を曝射して撮像を行わせ、図3または図4に示した駆動によりX線撮像装置104から出力される画像を取得する。このとき2枚の画像が読み出される。以下、1枚目の画像(画像304または画像404)をX_ODD、2枚目の画像(画像306または画像406)をX_EVENとする。補正部132は、被写体がない場合と同様のオフセット補正および色補正を行うことで、被写体がある場合の低エネルギー画像X_Lowと、被写体がある場合の高エネルギー画像X_Highを得る。
【0044】
ここで、被写体の厚みをd、被写体の線減弱係数をμ、被写体がない場合の画素20の出力をI、被写体がある場合の画素20の出力をIとすると、以下の[数1]式が成り立つ。
【0045】
【数1】
【0046】
[数1]式を変形すると、以下の[数2]式が得られる。[数2]式の右辺は被写体の減弱率を示す。被写体の減弱率は0~1の間の実数である。
【0047】
【数2】
【0048】
従って、補正部132は、被写体がある場合の低エネルギー画像X_Lowを、被写体がない場合の低エネルギー画像W_Lowで除算することで、低エネルギーにおける減弱率の画像L(以下、「低エネルギー画像L」ともいう)を得る。同様に、補正部132は、被写体がある場合の高エネルギー画像X_Highを、被写体がない場合の高エネルギー画像W_Highで除算することで、高エネルギーにおける減弱率の画像Hを得る(以下、「高エネルギー画像H」ともいう)。このように、被写体ありの状態で得られた放射線画像に基づいて得られた画像を被写体なしの状態で得られた放射線画像に基づいて得られた画像で除算することにより、低エネルギーにおける減弱率又は高エネルギーにおける減弱率の画像(L,H)を取得する処理をゲイン補正と呼ぶ。
【0049】
図6に、第1実施形態に係るエネルギーサブトラクション処理の信号処理のブロック図を示す。信号処理部133は、補正部132から得られる複数の画像を用いて物質特性画像を生成する。以下では、骨の厚みの画像B(以下、骨画像Bともいう)と軟部組織の厚みの画像S(以下、軟部組織画像Sともいう)からなる物質分離画像の生成処理を説明する。信号処理部133は、以下の処理により図5に示した補正によって得られた低エネルギーにおける減弱率の画像Lと高エネルギーにおける減弱率の画像Hから、骨の厚みの画像Bと軟部組織の厚みの画像Sを求める。
【0050】
まず、X線フォトンのエネルギーをE、エネルギーEにおけるフォトン数をN(E)、骨の厚み画像における厚みをB、軟部組織の厚み画像における厚みをS、エネルギーEにおける骨の線減弱係数をμ(E)、エネルギーEにおける軟部組織の線減弱係数をμ(E)、減弱率をI/Iとすると、以下の[数3]式が成り立つ。
【0051】
【数3】
【0052】
エネルギーEにおけるフォトン数N(E)は、X線のスペクトルである。X線のスペクトルは、シミュレーション又は実測により得られる。また、エネルギーEおける骨の線減弱係数μ(E)とエネルギーEおける軟部組織の線減弱係数μ(E)は、それぞれNIST(National Institute of Standards and Technology)などのデータベースから得られる。したがって、[数3]式によれば、任意の骨の厚み画像における厚みB、軟部組織の厚み画像における厚みS、X線のスペクトルN(E)における減弱率I/Iを計算することが可能である。
【0053】
ここで、低エネルギーのX線におけるスペクトルをN(E)、高エネルギーのX線におけるスペクトルをN(E)とすると、画像Lにおける減弱率、及び、画像Hの減弱率について、以下の[数4]式の各式が成り立つ。なお、以下の説明では、[数4]式に示す画像Lにおける減弱率を単に低エネルギーの減弱率Lともいい、画像Hにおける減弱率を単に高エネルギーの減弱率Hともいう。
【0054】
【数4】
【0055】
[数4]式の非線形連立方程式を解くことで、骨の厚み画像における厚みBと軟部組織の厚み画像における厚みSが求まる。非線形連立方程式を解く代表的な方法として、ここではニュートンラフソン法を用いた場合について説明する。まず、ニュートンラフソン法の反復回数をm、m回目の反復後の骨の厚みをB、m回目の反復後の軟部組織の厚みをSとしたとき、m回目の反復後の高エネルギーの減弱率H、m回目の反復後の低エネルギーの減弱率Lは以下の[数5]式で表される。
【0056】
【数5】
【0057】
また、厚みが微小に変化したときの減弱率の変化率を、以下の[数6]式で表す。
【0058】
【数6】
【0059】
このとき、m+1回目の反復後の骨の厚みBm+1と軟部組織の厚みSm+1を、高エネルギーの減弱率Hと低エネルギーの減弱率Lを用いて、以下の[数7]式で表す。
【0060】
【数7】
【0061】
2x2の行列の逆行列は、行列式をdetとすると、クラメルの公式より以下の[数8]式で表される。
【0062】
【数8】
【0063】
従って、[数7]式に[数8]式を代入すると、以下の[数9]式が求まる。
【0064】
【数9】
【0065】
以上のような計算を繰り返すことで、m回目の反復後の高エネルギーの減弱率Hと実測した高エネルギーの減弱率Hの差分が限りなく0に近づいていく。低エネルギーの減弱率Lについても同様である。これによって、m回目の反復後の骨の厚みBが骨の厚みBに収束し、m回目の軟部組織の厚みSが軟部組織の厚みSに収束する。以上のようにして、[数4]式に示した非線形連立方程式を解くことができる。従って、全ての画素について[数4]式を計算することで、低エネルギーにおける減弱率の画像Lと高エネルギーにおける減弱率の画像Hから、骨の厚みの画像B、軟部組織の厚みの画像Sを取得することができる。
【0066】
なお、第1実施形態では、骨の厚みの画像Bと軟部組織の厚みの画像Sを算出していたが、開示の技術はこのような形態に限定されない。例えば、水の厚みWと造影剤の厚みIを算出してもよい。すなわち、任意の二種類の物質の厚みに分解してもよい。また、図5に示した補正によって得られた低エネルギーにおける減弱率の画像Lと高エネルギーにおける減弱率の画像Hから、実効原子番号Zの画像と面密度Dの画像を求めてもよい。実効原子番号Zとは混合物の等価的な原子番号のことであり、面密度Dとは被写体の密度[g/cm]と被写体の厚み[cm]の積である。
【0067】
また、第1実施形態では、ニュートンラフソン法を用いて非線形連立方程式を解いていた。しかしながら開示の技術はこのような形態に限定されない。例えば、最小二乗法や二分法などの反復解法を用いてもよい。また、第1実施形態では非線形連立方程式を反復解法で解いていたが、開示の技術はこのような形態に限定されない。様々な組み合わせの高エネルギーの減弱率Hと低エネルギーの減弱率Lに対する骨の厚みBや軟部組織の厚みSを事前に求めてテーブルを生成し、このテーブルを参照することで骨の厚みBや軟部組織の厚みSを高速に求める構成を用いても良い。
【0068】
図7に、第1実施形態に係るエネルギーサブトラクション処理の画像処理のブロック図を示す。第1実施形態の画像処理部134は、図6に示した信号処理によって得られた骨の厚みの画像Bに対して後処理を行うなどして、表示用画像を生成する。後処理として、画像処理部134は、対数変換やダイナミックレンジ圧縮などを用いることが可能である。後処理の種類や強度をパラメータとして入力することで、画像処理部134は、処理の内容を切り替えることとが可能である。
【0069】
図8に、第1実施形態に係る補正処理のブロック図を示す。図7における表示用画像としては、エネルギー分解能を持たない画像、すなわち既存の放射線撮像システムで撮影した画像と互換性のある画像である、蓄積画像Aを用いることが可能である。信号処理部133は、以下の処理により蓄積画像Aを生成することができる。例えば、蓄積画像Aは、図8で示すように、被写体がある場合のX線の立ち上がり期301、安定期302、立下り期303の和に対応する画像XF_EVENを、被写体がない場合のX線の立ち上がり期301、安定期302、立下り期303の和に対応する画像WF_EVENで除算するなどして生成することができる。あるいは、異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像の加算に基づいて取得してもよい。例えば、蓄積画像Aは、高エネルギーにおける減弱率の画像Hと低エネルギーにおける減弱率の画像Lとに係数を乗算して加算するなどして生成してもよい。例えば、蓄積画像Aの算出において、一方の係数を0、他方の係数を1としてもよく、画像Hまたは画像Lそのものが蓄積画像Aとして用いられ得る。また、複数の画像の少なくとも一方に係数を乗算して加算することにより蓄積画像を生成してもよい。エネルギーサブトラクション処理の対象となる画像と撮影タイミングが実質的に同じであって、エネルギーサブトラクション処理が適用されていない画像が蓄積画像Aとして用いられ得る。
【0070】
[数10]
A=XF_EVEN/WF_EVEN
=X_High/WF_EVEN+X_Low/WF_EVEN
=H*(W_High/WF_EVEN)+L*(W_Low/WF_EVEN)
図9は、第1実施形態に係る蓄積画像Aと骨画像Bとを例示的に示す図である。通常の人体は、軟部組織と骨のみで構成されている。しかしながら、図1に示した放射線撮像システムを用いて、IVR(画像下治療)を行うときは、血管に造影剤が注入される。また、カテーテルやガイドワイヤーを血管内に挿入し、ステントやコイルを留置するなどの処置が行われる。IVRは、造影剤や医療用デバイスの位置と形状を確認しながら行われる。従って、造影剤や医療用デバイスのみを分離する、又は、軟部組織や骨などの背景を除去することで、視認性が向上する可能性がある。
【0071】
図9に示すように、通常の放射線撮像システムと互換性のある画像、すなわち蓄積画像Aでは、造影剤、ステント、骨の他、軟部組織が表示されてしまう。一方、第1実施形態に係る放射線撮像システムにおける骨画像Bでは、軟部組織のコントラストを低減することができる。
【0072】
一方、造影剤の主成分はヨウ素であり、医療用デバイスの主成分はステンレス等の金属である。いずれも、骨の主成分であるカルシウムよりも原子番号が大きいため、骨画像Bには、骨と造影剤と医療用デバイスとが表示される。
【0073】
本願発明者が検討を行ったところ、高エネルギー画像Hと低エネルギー画像Lとに基づいて、例えば、水画像Wと造影剤画像Iに分離するなどしても、造影剤画像Iに骨と造影剤と医療用デバイスとが表示されていた。また、低エネルギーのX線と高エネルギーX線との管電圧やフィルタを変えても同様である。いずれの場合にも、骨画像Bには、骨と造影剤と医療用デバイスが表示される。すなわち、造影剤や医療用デバイスを、骨画像Bから分離することはできなかった。
【0074】
すなわち、胸部のIVRを行うときの肺野部分などのように、軟部組織のコントラストが視認性を低下させている場合は、本実施形態に係る放射線撮像システムにおける骨画像Bを表示することで、造影剤や医療用デバイスの視認性が向上する可能性がある。しかしながら、骨画像Bは蓄積画像Aよりもノイズが大きくなり、画質が低減するという課題が生じ得る。そこで、本実施形態に係る放射線撮像システムでは骨画像Bにおけるノイズ低減処理を行う。
【0075】
図10に、第1実施形態に係る放射線撮像システムにおける信号処理のブロック図を示す。まず、信号処理部133は、ブロックMD1において、物質分離処理を行う。ここで、物質分離処理とは、信号処理部133が、図6と同様の手順で、高エネルギー画像Hと低エネルギー画像Lとから、骨画像Bと軟部組織画像Sとを取得(生成)する処理である。
【0076】
信号処理部133は、ブロックC2において、骨画像Bと軟部組織画像Sを加算した厚み画像Tを生成する。そして、信号処理部133は、ブロックF1において、厚み画像Tに対してフィルタ処理を施し、ノイズ低減された厚み画像T'を生成する。フィルタ処理の詳細については、図11以降で説明する。
【0077】
また、信号処理部133は、ブロックC1において、図8の説明で示したように、例えば、高エネルギーにおける減弱率の画像Hと低エネルギーにおける減弱率の画像Lに係数をかけて加算することで、蓄積画像Aを生成する。
【0078】
次に、信号処理部133は、ブロックMD2において、再度の物質分離処理を行う。ブロックMD2における再度の物質分離処理を以下、再分離(または再分離処理)ともいう。ここで、再分離処理とは、信号処理部133が、例えば、フィルタ処理後の厚み画像T'と蓄積画像Aとから、ノイズ低減された骨画像B'を取得(生成)する処理である。
【0079】
低エネルギーのX線と高エネルギーのX線との和の画像、すなわち蓄積画像AにおけるX線のスペクトルをN(E)、軟部組織の厚みをS、骨の厚みをBとすると、以下の式[11]が成り立つ。
【0080】
【数11】
【0081】
ここで厚みをTとすると、T=B+Sより、式[11]を変形して以下の式[12]が成り立つ。
【0082】
【数12】
【0083】
式[12]に、ある画素における蓄積画像の画素値Aと厚みTを代入して非線形方程式を解くことで、ある画素における骨の厚みBを求めることが可能である。このとき、厚みTの代わりに、フィルタ処理後の厚みT'を代入して式[12]を解くと、骨の厚みB'が得られる。厚み画像Tは蓄積画像Aと比較して連続性が高いため、高周波成分が含まれない。従って、フィルタ処理を行ってノイズを除去しても、信号成分が失われにくい。このようにしてノイズ低減された厚み画像T'と、元々ノイズが少ない蓄積画像Aを用いることで、ノイズ低減された骨画像B'を取得することができる。同様に、ノイズ低減された軟部組織画像S'を得ることも可能である。
【0084】
本実施形態では、図10に示す信号処理のブロック図において、ブロックF1に対して厚み画像Tを入力し、ブロックMD2からノイズ低減された骨画像B'又はノイズ低減された軟部組織画像S'を取得する構成について説明した。しかしながら、本実施形態は、この例に限定されず、例えば、ブロックF1に対して軟部組織画像Sを入力し、ブロックMD2からノイズ低減された骨画像B'又はノイズ低減された厚み画像T'を取得する構成等についても同様に適用することができる。また、ブロックF1に対して骨画像Bを入力し、ブロックMD2からノイズ低減された軟部組織画像S'又はノイズ低減された厚み画像T'を取得する構成等についても同様に適用することができる。
【0085】
すなわち、本実施形態では、ブロックF1に物質の厚み画像を入力し、ブロックMD2からノイズ低減後の物質の厚み画像を得るものである。
【0086】
また、本実施形態では、図10に示す信号処理のブロック図において、ブロックMD1及びブロックC1に対して、低エネルギー画像Lと高エネルギー画像Hとを入力する構成について説明した。しかしながら、本実施形態は、この例に限定されず、例えば、低エネルギー画像Lと高エネルギー画像Hとにそれぞれノイズ低減処理を行い、ノイズ低減後の低エネルギー画像L'とノイズ低減後の高エネルギー画像H'とを生成してから、ブロックMD1及びブロックC1に入力する構成についても同様に適用することができる。
【0087】
また、ブロックF1におけるフィルタ処理には、空間方向のフィルタを用いた空間フィルタ処理と、時間方向のフィルタを用いた時間フィルタ処理とが含まれる。空間フィルタ処理では、例えば、ガウシアンフィルタやバイラテラルフィルタ、イプシロンフィルタ等の空間方向のフィルタ等が用い得る。また、時間フィルタ処理では、例えば、リカーシブフィルタ等が用い得る。なお、フィルタ処理に用い得るフィルタは例示的なものであり、実施形態の構成はこの例に限定されるものではない。
【0088】
図11は、第1実施形態に係るガウシアンフィルタによるノイズ低減処理を例示的に説明する図である。図10に示す信号処理のブロック図のブロックF1において、信号処理部133は、ガウス分布の関数を用いて、フィルタの中心からの距離に応じた重みを計算し、ガウシアンフィルタのカーネルを生成する。さらに、信号処理部133は、ガウシアンフィルタのカーネルの全ての重みを足したときに1となるように正規化する。そして、信号処理部133は、厚み画像Tに対してガウシアンフィルタのカーネルを適用して、ノイズ低減後の厚み画像T'を生成する。このようにして、厚み画像Tに含まれる高周波のノイズ成分を除去することができる。しかしながら、ブロックF1でガウシアンフィルタを用いると、ノイズ成分と同時に被写体の構造も低減(除去)されてしまう場合も生じ得る。その結果、ブロックMD2における物質分離(再分離)により、ノイズ低減後の骨画像B'を生成したときに、軟部組織Sの構造が骨画像B'に現れてしまうという場合も生じ得る。
【0089】
図12は、第1実施形態に係るイプシロンフィルタによるノイズ低減処理を例示的に説明する図である。図10に示す信号処理のブロック図のブロックF1において、信号処理部133は、ガウス分布の関数を用いて、中央からの距離に応じた重みを計算し、ガウシアンフィルタのカーネルを生成する。また、信号処理部133は、フィルタを適用する画素(注目画素)を選択し、厚み画像Tにおける注目画素とその周囲の画素の差分dを計算する。差分dが予め定めた閾値εを超えた場合、信号処理部133は、被写体の構造があると判定し、エッジ判定のカーネルの重みを0に設定する。差分dが予め定めた閾値εを下回る場合、信号処理部133は、被写体の構造がないと判定し、エッジ判定のカーネルの重みを1に設定する。
【0090】
次に、信号処理部133は、ガウシアンフィルタのカーネルとエッジ判定のカーネルとをフィルタの要素ごとに乗算することで、イプシロンフィルタのカーネルを生成する。さらに、信号処理部133は、イプシロンフィルタカーネルの全ての重みを足したときに1となるように正規化する。そして、信号処理部133は、厚み画像Tに対してイプシロンフィルタのカーネルを適用して、ノイズ低減後の厚み画像T'を生成する。このようにして、被写体の構造を低減(除去)することなく、厚み画像Tに含まれる高周波のノイズ成分を低減(除去)することができる。これにより、ノイズ低減後の骨画像B'に軟部組織の構造が現れることを抑制することができる。
【0091】
図13は、第1実施形態に係る蓄積画像Aによるエッジ判定処理を例示的に説明する図である。本願発明者が検討を行ったところ、図12で示したブロックF1の構成では、例えば、厚み画像Tに含まれるノイズが大きくなった場合、エッジ判定の精度が低減し、アーチファクトが発生し得る場合があることが判明した。そこで、厚み画像Tの代わりに、蓄積画像Aを用いてエッジ判定を行う構成を以下に説明する。
【0092】
図10に示す信号処理のブロック図のブロックF1において、信号処理部133は、ガウス分布の関数を用いて、中央からの距離に応じた重みを計算し、ガウシアンフィルタのカーネルを生成する。また、信号処理部133は、フィルタを適用する画素(注目画素)を選択し、蓄積画像Aにおける注目画素とその周囲の画素の差分dを計算する。差分dが予め定めた閾値εを超えた場合、信号処理部133は、被写体の構造があると判定し、エッジ判定のカーネルの重みを0とする。差分dが予め定めた閾値εを下回る場合、信号処理部133は、被写体の構造がないと判定し、エッジ判定のカーネルの重みを1とする。
【0093】
次に、信号処理部133は、ガウシアンフィルタのカーネルとエッジ判定のカーネルとをフィルタの要素ごとに乗算することで、イプシロンフィルタのカーネルを生成する。さらに、信号処理部133は、イプシロンフィルタカーネルの全ての重みを足したときに1となるように正規化する。そして、信号処理部133は、厚み画像Tに対して、蓄積画像Aを用いて生成したイプシロンフィルタのカーネルを適用して、ノイズ低減後の厚み画像T'を生成する。蓄積画像Aは、厚み画像Tと比較してノイズが小さいため、例えば、厚み画像Tに含まれるノイズが大きくなった場合でも、エッジ判定の精度を保つことができる。その結果、アーチファクトの発生を抑制することができる。
【0094】
エッジ判定の閾値εは、蓄積画像Aの画素値に含まれ得るノイズの標準偏差をσとしたとき、例えば、ε>4σにすることが好ましい。画素値に含まれうるノイズがガウス分布に従う場合、ノイズによって4σ以上の値となる確率は、1/15787と非常に低いものとなる。
【0095】
画素値に含まれうるノイズには、例えば、電気的なノイズ(システムノイズ)の成分と、量子ノイズの成分とが含まれ得る。システムノイズが支配的な場合は、ノイズの標準偏差σは画素値に依存せず一定値となり得る。従って、閾値εとして一定値を用いる構成が好適に用いられる。一方、量子ノイズが支配的な場合は、ノイズの標準偏差σは画素値の平方根に比例した値となり得る。従って、閾値εとして画素値の平方根に比例した値を用いる構成が好適に用いられる。本実施形態の構成によれば、ノイズが低減された物質分離画像を取得することが可能になる。
【0096】
(第2実施形態)
第2実施形態では、ノイズ低減後の画像B'に含まれる低周波ノイズや疑似輪郭などのアーチファクトを除去する構成について説明する。第2実施形態では、図10等で説明した信号処理のブロック図は、第1実施形態と同様であるが、ブロックF1にけるフィルタ処理の内容が異なる。
【0097】
図14は、第2実施形態に係る周波数分解によるノイズ低減処理を例示的に説明する図である。本願発明者が検討を行ったところ、図13で示したブロックF1の構成では、ノイズ低減後の画像T'において、低周波ノイズが生じ得る場合があることが判明した。この低周波ノイズは、例えば、静止画では目立ちにくいが、動画における視認性を低減させる場合が生じ得る。そこで、本実施形態では、周波数分解により低周波ノイズを低減する構成を説明する。
【0098】
図14における信号処理のブロックF1は、P[1]~P[n]のサブブロックから構成される。
【0099】
まず、サブブロックP[1]に厚み画像T[1]を入力し、信号処理部133は、デシメーションフィルタFD[1]によりダウンサンプリングして、解像度が低下した厚み画像T[2]を生成する。さらに、サブブロックP[2]に厚み画像T[2]を入力し、信号処理部133は、デシメーションフィルタFD[2]によりダウンサンプリングして、解像度が低下した厚み画像T[3]を生成する。これをサブブロックP[n]まで繰り返すことで、信号処理部133は、周波数分解された厚み画像T[1]~T[n+1]を生成する。
【0100】
さらに、サブブロックP[1]において、信号処理部133は、厚み画像T[2]をインターポーレーションフィルタFI[1]によりアップサンプリングして、分解した周波数成分(解像度)を復元した復元後の厚み画像I[1]を生成する。また、信号処理部133は、厚み画像T[1]をイプシロンフィルタFE[1]によりノイズ低減して、ノイズ低減後の厚み画像E[1]を生成する。イプシロンフィルタFE[1]としては、例えば、図12で説明したイプシロンフィルタを用いることが可能である。さらに、信号処理部133は、ノイズ低減後の厚み画像E[1]から、復元後の厚み画像I[1]を減算して、ラプラシアン画像D[1]を生成する。サブブロックP[1]における以上の処理と同様の処理をサブブロックP[2]~サブブロックP[n]まで繰り返すことで、信号処理部133は、周波数分解されたラプラシアン画像D[1]~D[n]を生成する。
【0101】
その後、サブブロックP[n]において、信号処理部133は、周波数合成画像S[n+1]をインターポーレーションフィルタFC[n]によりアップサンプリングして、復元後の周波数復元画像C[n]を生成する。また、信号処理部133は、ラプラシアン画像D[n]に復元後の周波数復元画像C[n]を加算することで、周波数合成画像S[n]を生成する。サブブロックP[n]における以上の処理と同様の処理をサブブロックP[n-1]からサブブロックP[1]まで繰り返すことで、信号処理部133は、周波数合成画像S[n]~S[1]を生成する。
【0102】
なお、図14において、サブブロックP[n]における周波数合成画像S[n+1]として、周波数分解された厚み画像T[n+1]が入力されるものとする。また、サブブロックP[1]における周波数分解された厚み画像T[1]として、厚み画像Tが入力されるものとし、ノイズ低減後の厚み画像T'として周波数合成画像S[1]を出力するものとする。
【0103】
以上の構成により、信号処理部133は、入力された厚み画像Tを周波数分解して、周波数ごとにイプシロンフィルタ(FE[1]~FE[n])によるノイズ低減処理を行った後、周波数分解された全ての周波数を合成した周波数合成画像を生成する。この結果、厚み画像Tに含まれる高周波ノイズから低周波ノイズまでが低減された厚み画像T'(周波数合成画像S[1])を取得することができる。
【0104】
図15は、第2実施形態に係る周波数分解とリカーシブフィルタとによるノイズ低減処理を例示的に説明する図である。本願発明者が検討を行ったところ、図14で示したブロックF1の構成では、例えば、ノイズ低減後の画像T'の被写体の厚みが急激に変化している部分で、年輪のような模様が見える場合が生じ得ることが判明した。このようなアーチファクトを、疑似輪郭と呼ぶ。疑似輪郭は、例えば、静止画では目立ちにくいが、動画における視認性を低減させる場合が生じ得る。そこで、本実施形態では、周波数分解とリカーシブフィルタとにより、低周波ノイズと同時に疑似輪郭を低減する構成を説明する。
【0105】
図15における信号処理のブロックF1も、図14と同様に、サブブロックP[1]~P[n]から構成される。周波数分解された厚み画像T[1]~T[n+1]を生成してから、周波波数分解されたラプラシアン画像D[1]~D[n]を生成する部分までは、図14における信号処理と同様である。
【0106】
図15の信号処理ブロックF1では、サブブロックP[1]において、信号処理部133は、tフレーム目(tは1以上の整数)のラプラシアン画像D[1][t]とt-1フレーム目のリカーシブフィルタ処理後のラプラシアン画像R[1][t-1]とをリカーシブフィルタFR[1]に入力して、tフレーム目のリカーシブフィルタ処理後(時間フィルタ処理後)のラプラシアン画像R[1]を得る。
【0107】
サブブロックP[1]における以上の処理と同様の処理をサブブロックP[2]~サブブロックP[n]まで繰り返すことで、信号処理部133は、リカーシブフィルタ処理後(時間フィルタ処理後)のラプラシアン画像R[1]~R[n]を生成する。
【0108】
その後、サブブロックP[n]において、信号処理部133は、周波数合成画像S[n+1]をインターポーレーションフィルタFC[n]によりアップサンプリングして、復元後の周波数復元画像C[n]を生成する。また、信号処理部133は、リカーシブフィルタ処理後のラプラシアン画像R[n]に復元後の周波数復元画像C[n]を加算することで、周波数合成画像S[n]を生成する。サブブロックP[n]における以上の処理と同様の処理をサブブロックP[n-1]からサブブロックP[1]まで繰り返すことで、信号処理部133は、周波数合成画像S[n]~S[1]を生成する。
【0109】
なお、図15においても図14と同様に、サブブロックP[n]における周波数合成画像S[n+1]として、周波数分解された厚み画像T[n+1]が入力されるものとする。また、サブブロックP[1]における周波数分解された厚み画像T[1]として厚み画像Tが入力されるものとし、ノイズ低減後の厚み画像T'として周波数合成画像S[1]を出力するものとする。
【0110】
以上の構成により、信号処理部133は、入力された厚み画像Tを周波数分解して、周波数ごとにイプシロンフィルタ(FE[1]~FE[n])によるノイズ低減処理を行い、さらにリカーシブフィルタ(FR[1]~FR[n])による疑似輪郭の低減処理を行った後、周波数分解された全ての周波数を合成した周波数合成画像を生成する。この結果、厚み画像Tに含まれる高周波ノイズから低周波ノイズまでを低減し、さらに疑似輪郭を低減した厚み画像T'(周波数合成画像S[1])を取得することができる。そして、信号処理部133は、ノイズ低減後の厚み画像T'と蓄積画像Aとを用いた再度の物質分離処理による画像を生成する。本実施形態の構成によれば、ノイズが低減された物質分離画像を取得することが可能になる。
【0111】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第2実施形態におけるイプシロンフィルタを用いたノイズ低減処理において、蓄積画像Aを用いたエッジ判定を適用する構成を説明する。第3実施形態では、図10等で説明した信号処理のブロック図は、第1実施形態と同様である。また、図15の周波数分解とリカーシブフィルタのブロック図の構成は、第2実施形態と同様である。ただし、イプシロンフィルタFE[1]~FE[n]の構成が異なる。
【0112】
図16は、第3実施形態に係るイプシロンフィルタを用いたノイズ低減処理において、蓄積画像Aを用いたエッジ判定を適用する構成例を説明する図である。図15においては、イプシロンフィルタFEには、例えば、図12で説明したように厚み画像Tを用いる構成のものが用いられていた。しかしながら図13で説明した通り、蓄積画像Aによるエッジ判定処理を行う構成のほうが望ましい場合も生じ得る。
【0113】
そこで、本実施形態では、信号処理部133は、物質分離処理により得た物質の厚み画像に対して、複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像Aの画素値に基づいて係数を設定したフィルタを用いたフィルタ処理によりノイズ低減後の厚み画像を生成する。信号処理部133は、蓄積画像A[1]をデシメーションフィルタFA[1]によりダウンサンプリングして、周波数分解されて解像度が低下した蓄積画像A[2]を生成する。さらに、信号処理部133は、蓄積画像A[2]をデシメーションフィルタFA[2]によりダウンサンプリングして、周波数分解されて解像度が低下した蓄積画像A[3]を生成する。これを繰り返すことで、信号処理部133は、周波数分解された蓄積画像A[1]~T[n]を生成する。なお、図16において、周波数分解された蓄積画像A[1]として蓄積画像Aが入力されるものとする。
【0114】
サブブロックP[1]において、信号処理部133は、イプシロンフィルタFE[1]に周波数分解された蓄積画像A[1]と周波数分解された厚み画像T[1]とを入力して、ノイズ低減後の厚み画像E[1]を生成する。第3実施形態におけるイプシロンフィルタFE[1]としては、図13で示した、蓄積画像によるエッジ判定を行うことにより生成されたイプシロンフィルタを用いるものとする。サブブロックP[1]における以上の処理と同様の処理をサブブロックP[2]からサブブロックP[n]まで繰り返すことで、信号処理部133は、ノイズ低減後の厚み画像E[1]~E[n]を生成する。それ以外の処理は、先に説明した第2実施形態と同様である。
【0115】
以上の構成により、信号処理部133は、信号処理部133は、入力された厚み画像Tを周波数分解して、周波数ごとにイプシロンフィルタによるノイズ低減処理を行い、さらにリカーシブフィルタによる疑似輪郭の低減処理を行った後、周波数分解された全ての周波数を合成した周波数合成画像を生成する。蓄積画像Aを周波数分解してイプシロンフィルタに入力することで、エッジ判定の精度が高まり、よりアーチファクトの少ない厚み画像T'を取得することができる。そして、信号処理部133は、ノイズ低減後の厚み画像T'と蓄積画像Aとを用いた再度の物質分離処理による画像を生成する。本実施形態の構成によれば、ノイズが低減された物質分離画像を取得することが可能になる。
【0116】
なお、第1実施形態~第3実施形態では、X線撮像装置104は蛍光体を用いた間接型のX線センサとした。しかしながら開示の技術はこのような形態に限定されない。例えばCdTe等の直接変換材料を用いた直接型のX線センサを用いてもよい。
【0117】
また、第1実施形態~第3実施形態では、X線発生装置101の管電圧を変化させていた。しかしながら開示の技術はこのような形態に限定されない。X線発生装置101のフィルタを時間的に切り替えるなどして、X線撮像装置104に曝射されるX線のエネルギーを変化させてもよい。
【0118】
また、第1実施形態~第3実施形態では、X線のエネルギーを変化させることで、異なるエネルギーの画像を得ていた。しかしながら開示の技術はこのような形態に限定されない。複数の蛍光体105および二次元検出器106を重ねる積層型とすることで、X線の入射方向に対して前面の二次元検出器と背面の二次元検出器から、異なるエネルギーの画像を得る構成としてもよい。二次元検出器106は医療用に限定されるものではなく、工業用の二次元検出器であってもよい。
【0119】
また、第1~第3実施形態では、放射線撮像システムの撮像制御装置103を用いてエネルギーサブトラクション処理を行っていた。しながら開示の技術はこのような形態に限定されない。撮像制御装置103で取得した画像を別のコンピュータに転送して、エネルギーサブトラクション処理を行ってもよい。例えば、取得した画像を医療用のPACSを介して別のパソコン(画像ビューア)に転送し、エネルギーサブトラクション処理を行ってから表示する構成が好適に用いられる。
【0120】
本明細書の開示は、以下の画像処理装置、放射線撮像システム、画像処理方法及びプログラムを含む。
【0121】
(項目1) 被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、ノイズ低減処理と物質分離処理とを行う処理手段を備え、
前記処理手段は、
前記物質分離処理により得た物質の厚み画像を複数の周波数に分解した周波数成分ごとにフィルタ処理を適用したノイズ低減画像を生成し、
前記ノイズ低減画像を前記周波数成分ごとに合成したノイズ低減後の厚み画像と、前記複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像と、を用いた再度の物質分離処理による画像を生成する画像処理装置。
【0122】
(項目2) 前記フィルタ処理には前記周波数成分ごとに適用する空間フィルタ処理が含まれ、
前記処理手段は、イプシロンフィルタ又はバイラテラルフィルタを用いて前記空間フィルタ処理を行う項目1に記載の画像処理装置。
【0123】
(項目3) 前記処理手段は、前記周波数成分に分解した前記蓄積画像を用いて前記フィルタ処理に適用するフィルタの係数を設定する項目1または2に記載の画像処理装置。
【0124】
(項目4) 前記フィルタ処理には前記空間フィルタ処理の後に前記周波数成分ごとに適用する時間フィルタ処理が含まれ、
前記処理手段は、リカーシブフィルタを用いて前記時間フィルタ処理を行う項目2に記載の画像処理装置。
【0125】
(項目5) 前記処理手段は、前記空間フィルタ処理を適用したノイズ低減画像から前記周波数成分を復元した厚み画像を減算することにより生成した画像に対して前記時間フィルタ処理を行う項目4に記載の画像処理装置。
【0126】
(項目6) 前記処理手段は、時間フィルタ処理後の画像と、前記厚み画像における前記周波数成分を復元した周波数復元画像とを加算した周波数合成画像を、前記分解された周波数成分ごとに合成することにより前記ノイズ低減後の厚み画像を生成する項目5に記載の画像処理装置。
【0127】
(項目7) 前記処理手段は、前記異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像に対して前記フィルタ処理を適用することによりノイズ低減後の前記複数の画像を取得し、
ノイズ低減後の前記複数の画像を用いた前記物質分離処理により得た物質の厚み画像を複数の周波数に分解した周波数成分ごとに前記フィルタ処理を適用したノイズ低減画像を生成し、
前記ノイズ低減画像を合成したノイズ低減後の厚み画像と、前記複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像と、を用いた前記物質分離処理により前記被写体に含まれる物質を分離した画像を生成する項目1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0128】
(項目8) 被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、ノイズ低減処理と物質分離処理とを行う処理手段を備え、
前記処理手段は、
前記物質分離処理により得た物質の厚み画像に対して、前記複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像の画素値に基づいて係数を設定したフィルタを用いたフィルタ処理によりノイズ低減後の厚み画像を生成し、
前記ノイズ低減後の厚み画像と前記蓄積画像とを用いた再度の物質分離処理による画像を生成する画像処理装置。
【0129】
(項目9) 前記処理手段は、
前記蓄積画像における注目画素と周囲の画素との画素値の差分が閾値を超えたか否により前記被写体の構造のエッジ判定の重みを設定し、
前記エッジ判定の重みに基づいて前記フィルタの係数を設定する項目3または8に記載の画像処理装置。
【0130】
(項目10) 前記処理手段は、前記蓄積画像における画素値に依存しない閾値、又は、前記蓄積画像における画素値の平方根に比例した閾値を用いて、前記エッジ判定の重みを設定する項目9に記載の画像処理装置。
【0131】
(項目11) 前記処理手段は、前記複数の画像の少なくとも一方に係数を乗算して加算することにより前記蓄積画像を生成する項目1乃至10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0132】
(項目12) 前記処理手段は、前記物質分離処理により得た第1物質の厚み画像と前記第1物質とは異なる第2物質の厚み画像との和により、前記厚み画像を取得し、
前記再度の物質分離処理による画像として前記第1物質の厚み画像を生成する項目1乃至11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0133】
(項目13) 前記処理手段は、前記物質分離処理により得た第1物質の厚み画像と前記第1物質とは異なる第2物質の厚み画像とを取得し、
前記厚み画像として前記第2物質の厚み画像を入力し、
前記再度の物質分離処理による画像として、ノイズ低減された、前記第1物質の厚み画像と前記第2物質の厚み画像との和による厚み画像を生成する項目1乃至11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0134】
(項目14) 前記第1物質の厚み画像は骨画像であり、前記第2物質の厚み画像は軟部組織画像である項目12または13に記載の画像処理装置。
【0135】
(項目15) 前記複数の放射線エネルギーには、第1放射線エネルギーと、前記第1放射線エネルギーよりも低い第2放射線エネルギーとが含まれ、
前記処理手段は、前記第1放射線エネルギーで撮影した第1画像と前記第2放射線エネルギーで撮影した第2画像とを用いて、前記被写体に含まれる第1物質の厚みを示す第1物質分離画像と、前記第1物質とは異なる第2物質の厚みを示す第2物質分離画像とを生成する物質分離処理を行う項目1乃至14のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0136】
(項目16) 被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、物質の厚み画像を生成し、前記物質の厚み画像において周波数成分ごとにフィルタ処理を適用することにより、前記周波数成分ごとのノイズ低減画像を生成し、前記ノイズ低減画像を合成することによりノイズ低減後の厚み画像を生成する処理手段を備える画像処理装置。
【0137】
(項目17) 項目1乃至16のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置と通信可能に接続された放射線撮像装置と、を備える放射線撮像システム。
【0138】
(項目18) 被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、ノイズ低減処理と物質分離処理とを行う処理工程を備え、
前記処理工程では、
前記物質分離処理により得た物質の厚み画像を複数の周波数に分解した周波数成分ごとにフィルタ処理を適用したノイズ低減画像を生成し、
前記ノイズ低減画像を前記周波数成分ごとに合成したノイズ低減後の厚み画像と、前記複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像と、を用いた再度の物質分離処理による画像を生成する画像処理方法。
【0139】
(項目19) 被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、ノイズ低減処理と物質分離処理とを行う処理工程を備え、
前記処理工程では、
前記物質分離処理により得た物質の厚み画像に対して、前記複数の画像の加算に基づいて取得した蓄積画像の画素値に基づいて係数を設定したフィルタを用いたフィルタ処理によりノイズ低減後の厚み画像を生成し、
前記ノイズ低減後の厚み画像と前記蓄積画像とを用いた再度の物質分離処理による画像を生成する画像処理方法。
【0140】
(項目20) 被写体に放射線を照射して撮影を行うことで得られた互いに異なる複数の放射線エネルギーに対応した複数の画像を用いて、物質の厚み画像を生成し、前記物質の厚み画像において周波数成分ごとにフィルタ処理を適用することにより、前記周波数成分ごとのノイズ低減画像を生成し、前記ノイズ低減画像を合成することによりノイズ低減後の厚み画像を生成する処理工程を備える画像処理。
【0141】
(項目21) コンピュータを、項目1乃至16のいずれか1項に記載の画像処理装置の処理手段として機能させるプログラム。
【0142】
[その他の実施形態]
開示の技術は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0143】
開示の技術は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0144】
101:X線発生装置、102:X線制御装置、103:撮像制御装置(画像処理装置)、104:X線撮像装置(放射線撮像装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16