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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181869
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】熱エネルギー供給システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20231218BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20231218BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20231218BHJP
   F23N 1/02 20060101ALI20231218BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20231218BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B15/08 302
F23N1/02 101
C01B3/02 H
C01B13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095241
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 充里
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 慶
(72)【発明者】
【氏名】今成 岳人
(72)【発明者】
【氏名】中村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 俊之輔
(72)【発明者】
【氏名】内 尚泰
【テーマコード(参考)】
3K003
4G042
4K021
【Fターム(参考)】
3K003AA01
3K003AB03
3K003AB06
3K003BA05
3K003CA03
3K003CA05
3K003DA03
4G042BA10
4G042BA11
4G042BB04
4G042BC06
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA08
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の排出を抑制すると共に、簡易な構成で熱エネルギーを供給する。
【解決手段】熱エネルギー供給システム10は、水を電解して水素と酸素を生成する水電解装置20と、水電解装置20で生成された水素と二酸化炭素によりメタンと水を生成するメタネーション装置30と、メタネーション装置30で生成されたメタンを水電解装置20で生成された酸素により燃焼させて燃焼熱を熱需要部へ供給すると共に、燃焼により生成される二酸化炭素をメタネーション装置30へ供給する燃焼装置40と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電解して水素と酸素を生成する水電解装置と、
前記水電解装置で生成された水素と二酸化炭素によりメタンと水を生成するメタネーション装置と、
前記メタネーション装置で生成されたメタンを前記水電解装置で生成された酸素により燃焼させて燃焼熱を発生させると共に、前記燃焼により生成される二酸化炭素を前記メタネーション装置へ供給する燃焼装置と、
を備えた熱エネルギー供給システム。
【請求項2】
前記メタネーション装置で生成される水を前記水電解装置へ供給する、
請求項1に記載の熱エネルギー供給システム。
【請求項3】
前記燃焼装置で生成される水を前記水電解装置へ供給する、
請求項1に記載の熱エネルギー供給システム。
【請求項4】
前記メタネーション装置で生成されたメタンを貯留するメタン貯留部と、
前記水電解装置で生成された酸素を貯留する酸素貯留部と、
前記燃焼装置における必要熱量に応じて、前記メタン貯留部から前記燃焼装置へ供給するメタンの流量と、前記酸素貯留部から前記燃焼装置へ供給する酸素の流量を調整する調整部と、
を備えた、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の熱エネルギー供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、熱エネルギー供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水素化芳香族化合物の脱水素反応により得られた水素と、発電機における燃焼反応で得られた二酸化炭素を用いて、メタネーションを行うエネルギー供給システムが開示されている。特許文献1では、発電機における化石燃料の燃焼により生じた二酸化炭素をメタネーションでメタンを生成し再利用することにより、二酸化炭素排出量が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-51901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、発電機における燃焼反応に空気が用いられており、燃焼排ガスに二酸化炭素以外の窒素やその他の成分が混入するため、燃焼排ガスから二酸化炭素を分離するための分離装置が必要となる。工場等において、熱エネルギーを供給するための、簡易な構成の熱エネルギー供給システムが求められる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、二酸化炭素の排出を抑制すると共に、簡易な構成で熱エネルギーを供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る熱エネルギー供給システムは、水を電解して水素と酸素を生成する水電解装置と、前記水電解装置で生成された水素と二酸化炭素によりメタンと水を生成するメタネーション装置と、前記メタネーション装置で生成されたメタンを前記水電解装置で生成された酸素により燃焼させて燃焼熱を発生させると共に、前記燃焼により生成される二酸化炭素を前記メタネーション装置へ供給する燃焼装置と、を備えている。
【0007】
第1の態様に係る熱エネルギー供給装置は、水電解装置、メタネーション装置、燃焼装置を備えている。水電解装置は、水を電解して水素と酸素を生成し、水素をメタネーション装置へ供給する。メタネーション装置は、水電解装置から供給された水素と二酸化炭素によりメタンと水を生成し、メタンを燃焼装置へ供給する。燃焼装置は、メタネーション装置で生成されたメタンを水電解装置で生成された酸素により燃焼させ、燃焼熱を発生させる。そして、燃焼装置での燃焼により生成された二酸化炭素をメタネーション装置へ供給する。
【0008】
このように、水電解とメタネーションにより、燃焼用のメタンと酸素を得ると共に、燃焼により生じた二酸化炭素をメタネーションに用いることにより、二酸化炭素の排出を抑制すると共に、二酸化炭素分離装置が不要の簡易な構成で熱エネルギーを供給することができる。
【0009】
第2の態様に係る熱エネルギー供給システムは、前記メタネーション装置で生成される水を前記水電解装置へ供給する。
【0010】
このように、メタネーション装置で生成される水を水電解装置へ供給することにより、外部からの水の供給量を少なくすることができる。
【0011】
第3の態様に係る熱エネルギー供給装置は、前記燃焼装置で生成される水を前記水電解装置へ供給する。
【0012】
このように、燃焼装置で生成される水を水電解装置へ供給することにより、外部からの水の供給量を少なくすることができる。
【0013】
第4の態様に係る熱エネルギー供給システムは、前記メタネーション装置で生成されたメタンを貯留するメタン貯留部と、前記水電解装置で生成された酸素を貯留する酸素貯留部と、前記燃焼装置における必要熱量に応じて、前記メタン貯留部から前記燃焼装置へ供給するメタンの流量と、前記酸素貯留部から前記燃焼装置へ供給する酸素の流量を調整する調整部と、を備えている。
【0014】
第4の態様に係る熱エネルギー供給システムでは、調整部により、メタン貯留部から燃焼装置へ供給するメタンの流量と、酸素貯留部から燃焼装置へ供給する酸素の流量を調整することにより、燃焼装置での熱エネルギー需要に応じたメタン、酸素の供給を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る熱エネルギー供給システムによれば、二酸化炭素の排出を抑制すると共に、簡易な構成で熱エネルギーを供給することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態のエネルギー供給システムを示す構成図である。
図2】本実施形態のメタネーション装置を示す構成図である。
図3】本実施形態の燃焼装置を示す構成図である。
図4】本実施形態の制御系の構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態の温度調整処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0018】
図1には、本実施形態の熱エネルギー供給システム10が示されている。熱エネルギー供給システム10は、水電解装置20、メタネーション装置30、及び、燃焼装置40を備えている。
【0019】
水電解装置20には、補水部12から水が供給され、電力供給部14から水電解に必要な電力が供給される。水電解装置20は、以下の式(1)に示す水電解反応により、水を水素と酸素とに分解する。なお、後述するように、水電解装置20へは、メタネーション装置30、燃焼装置40で生成された水を戻すため、最初の水供給を除き、補水部12からの水供給は、水が不足した場合に必要に応じて行われる。
【0020】
O→H+(1/2)O (1)
【0021】
この水電解反応は、吸熱反応であり、不図示の加熱装置により熱が加えられるようになっている。
【0022】
水電解装置20で生成された水素は、水素貯留部22へ送出される。また、水電解装置20で生成された酸素は、酸素貯留部42へ送出される。水素貯留部22は、水素を貯留し、貯留した水素を、水素流量調整部24を介してメタネーション装置30へ送出する。水素流量調整部24は、後述する制御部50と接続されており、制御部50からの制御信号に基づいて、水素貯留部22からメタネーション装置30へ送出する水素の流量を調整する。水素流量調整部24としては、流量調整バルブ等を用いることができる。
【0023】
酸素貯留部42は、酸素を貯留し、貯留した酸素を、酸素流量調整部44を介して燃焼装置40へ送出する。酸素流量調整部44は、後述する制御部50と接続されており、制御部50からの制御信号に基づいて、酸素貯留部42から燃焼装置40へ送出する酸素の流量を調整する。酸素流量調整部44としては、流量調整バルブ等を用いることができる。
【0024】
図2に示されるように、メタネーション装置30は、反応炉30A、凝縮器30Bを有している。反応炉30Aは、内部に触媒を有しており、以下の式(2)に示すようにメタン合成反応により、メタンと水とが生成される。
【0025】
4H+CO→CH+2HO (2)
【0026】
このメタン合成反応は発熱反応であり、得られる熱エネルギーの一部又は全部を水電解装置20に作用させて、水電解反応に用いてもよい。
【0027】
反応炉30Aで生成されたメタンと水の混合物は、凝縮器30Bに送られる。凝縮器30Bで、水が凝縮により液化されて分離される。液化された水は、水電解装置20へ供給される。水が分離された混合物(メタン)は、メタン貯留部32へ送出される。メタン貯留部32は、メタンを貯留し、貯留したメタンを、メタン流量調整部34を介して燃焼装置40へ送出する。メタン流量調整部34は、後述する制御部50と接続されており、制御部50からの制御信号に基づいて、メタン貯留部32から燃焼装置40へ送出するメタンの流量を調整する。メタン流量調整部34としては、流量調整バルブ等を用いることができる。
【0028】
燃焼装置40は、図3に示されるように、燃焼炉40A、凝縮器40B、及び温度センサ40Cを有している。燃焼炉40Aは、以下の式(3)に示す燃焼反応によりメタンを燃焼させ、熱エネルギーを発生させる。当該燃焼反応により、二酸化炭素と水が生成される。熱エネルギーは、需要に応じて供給される。温度センサ40Cは、燃焼炉40A内の温度を検知する。温度センサ40Cは、後述する制御部50と接続されており、検知した温度を制御部50へ送る。なお、一例として、燃焼炉40Aを工場における高温炉として用いることができる。本実施形態では、燃焼炉40Aを直接的に熱エネルギー供給用に用いている。燃焼炉40Aにおける燃焼により生成された熱エネルギーは、このように燃焼装置40内で何らかの用途に供されてもよいし、外部へ供給されてもよい。
【0029】
CH+2O→CO+2HO (3)
【0030】
燃焼炉40Aで生成された二酸化炭素と水の混合物は、凝縮器40Bに送られる。凝縮器40Bで、水が凝縮により液化されて分離される。液化された水は、水電解装置20へ供給される。水が分離された混合物(二酸化炭素)は、二酸化炭素貯留部46へ送出される。二酸化炭素貯留部46は、二酸化炭素を貯留し、貯留した二酸化炭素を、二酸化炭素流量調整部48を介してメタネーション装置30へ送出する。二酸化炭素流量調整部48は、後述する制御部50と接続されており、制御部50からの制御信号に基づいて、二酸化炭素貯留部46からメタネーション装置30へ送出する二酸化炭素の流量を調整する。二酸化炭素流量調整部48としては、流量調整バルブ等を用いることができる。
【0031】
図4に示されるように、熱エネルギー供給システム10は、制御部50を備えている。制御部50は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、記憶部54、入出力インターフェース(I/F)55、を有する。各構成は、バス56を介して相互に通信可能に接続されている。
【0032】
CPU51は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU51は、ROM52または記憶部54からプログラム等を読み出し、RAM53を作業領域としてプログラムを実行する。
【0033】
ROM52は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM53は、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。記憶部54は、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。本実施形態では、ROM52または記憶部54には、後述する温度調整処理等を実行するためのプログラムや、各種のデータ等が格納されている。
【0034】
入出力I/F55は、信号線を介して、水素流量調整部24、メタン流量調整部34、酸素流量調整部44、二酸化炭素流量調整部48、入力部58、及び温度センサ40Cと接続されている。制御部50により、水素流量調整部24、メタン流量調整部34、酸素流量調整部44、二酸化炭素流量調整部48を通過する気体の流量が制御される。入力部58からは、燃焼炉40Aの温度設定等、各種の指示が入力される。
【0035】
次に、本実施形態の熱エネルギー供給システム10での温度制御について説明する。
【0036】
燃焼装置40において燃焼炉40Aが運転開始されると、制御部50では、図5に示される温度調整処理が実行される。
【0037】
ステップS10で、入力部58からの入力により設定された燃焼炉40Aの温度T1を読み出し、ステップS12で、温度センサ40Cにより検知された燃焼炉40Aの温度T2を取得する。ステップS14で、温度T1と温度T2の差が許容範囲内であるかどうかを判断する。許容範囲内については、予め温度差ΔTとして定めておくことができる。
【0038】
ステップS14での判断が否定された場合には、ステップS16で、メタン流量調整部34、酸素流量調整部44へ信号を送信し、燃焼装置40へ供給されるメタン、酸素の流量を調整する。燃焼炉40A内の温度T2が設定温度T1よりも高い場合には、メタン、酸素の流量を減少させ、燃焼炉40A内の温度T2が設定温度T1よりも低い場合には、メタン、酸素の流量を増加させる。増減させる流量は、予め設定しておく。
【0039】
ステップS14での判断が肯定された場合、及び、ステップS16の後、ステップS18へ進み、燃焼炉40Aの運転終了が指示されているかどうかを判断する。判断が否定された場合には、ステップS10へ戻り、上記の処理を繰り返す。判断が肯定された場合には、本処理を終了する。
【0040】
本実施形態の熱エネルギー供給システム10は、水電解装置20での水電解とメタネーション装置30によるメタネーション(メタン生成)により、酸素と燃焼用のメタンを得て、燃焼装置40における燃焼に供して熱エネルギーとする。燃焼により生じた二酸化炭素は、メタネーション装置30へメタン生成の原料として供給するので、二酸化炭素の排出を抑制することができる。
【0041】
また、燃焼には、空気ではなく酸素を用いているので、燃焼反応による生成物に二酸化炭素と水以外の窒素等の不純物が混入しにくい。したがって、燃焼反応による生成物から凝縮により水を分離した後、二酸化炭素を窒素等から分離する必要がなく、簡易に二酸化炭素をメタネーション装置30へ供給することができる。
【0042】
また、燃焼には、空気ではなく酸素を用いているので、燃焼反応に用いられない窒素等を昇温する顕熱の消費がなく、効率的に熱エネルギーを生成することができる。
【0043】
また、本実施形態では、水電解装置20で生成された水素を燃焼させるのではなく、メタネーション装置30で生成されたメタンを燃焼させるので、燃焼炉等について、既存の設備を使用することができる。
【0044】
また、本実施形態では、メタネーション装置30、燃焼装置40で生成された水を水電解装置20へ水電解の原料として供給するので、水の再利用を図ることができ、外部からの水供給量を少なくすることができる。
【0045】
また、本実施形態では、メタン貯留部32、酸素貯留部42に、生成されたメタン、酸素を各々貯留し、メタン流量調整部34、酸素流量調整部44で、燃焼装置40へ供給するメタン、酸素の流量を調整することができる。したがって、当該流量調整により、燃焼装置40における熱エネルギーの需要熱量に応じた供給を行うことができる。
【0046】
なお、本実施形態では、二酸化炭素貯留部46、二酸化炭素流量調整部48、水素貯留部22、水素流量調整部24を設けて二酸化炭素、水素を貯留し、メタネーション装置30へ送出する流量を調整可能としたが、これらは、省略することもできる。
【符号の説明】
【0047】
10 熱エネルギー供給システム
20 水電解装置
30 メタネーション装置
32 メタン貯留部
34 メタン流量調整部(調整部)
40 燃焼装置
42 酸素貯留部
44 酸素流量調整部(調整部)
50 制御部(調整部)
図1
図2
図3
図4
図5