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特開2023-181870運転診断装置、運転診断システム、機械学習装置及び学習済モデルの生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181870
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】運転診断装置、運転診断システム、機械学習装置及び学習済モデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20231218BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20231218BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/09 F
G07C5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095243
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅人
【テーマコード(参考)】
3E138
5H181
【Fターム(参考)】
3E138AA01
3E138MA01
3E138MA06
3E138MB02
3E138MB03
3E138MB08
3E138MB13
3E138MC11
3E138MD02
5H181AA01
5H181AA14
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC27
5H181FF10
(57)【要約】
【課題】車両内の乗客の有無を考慮した運転診断装置、運転診断システム、機械学習装置及び学習済モデルの生成方法を提供すること。
【解決手段】本開示の運転診断装置は、車両の走行状態を示す走行データを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記走行データに基づいて前記運転者の運転操作を評価する運転評価部と、前記車両内の乗客の有無を検出する乗客有無検出部と、前記運転評価部が検出した運転評価結果を運転者に通知する通知部であって、前記乗客有無検出部の検出結果に基づいて前記運転評価結果の通知方法を変更する、前記通知部と、を含むものである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状態を示す走行データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記走行データに基づいて前記車両の運転者の運転操作を評価する運転評価部と、
前記車両内の乗客の有無を検出する乗客有無検出部と、
前記運転評価部が検出した運転評価結果を運転者に通知するものであって、前記乗客有無検出部の検出結果に基づいて前記運転評価結果の通知方法を変更する通知部と、
を備える、運転診断装置。
【請求項2】
前記運転評価部は、前記取得部が取得した前記走行データの、予め設定された運転操作に関連する複数の評価項目の条件に該当した回数に基づいて、前記運転者の運転操作を評価するものであって、前記乗客有無検出部が乗客無と検出した際に用いられる第1の評価項目群と、前記乗客有無検出部が乗客有と検出した際に用いられる、前記第1の評価項目群とは異なる第2の評価項目群と、を用いて前記運転者の運転操作を評価する、
請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項3】
前記通知部は、前記乗客有無検出部が乗客有と検出した際には前記運転評価結果の通知を行わない、
請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項4】
前記乗客有無検出部は、前記走行データから乗客の有無を推定する推論部を備え、
前記推論部は、乗客の有無を推定するための機械学習を行った学習済モデルの入力層に前記走行データを入力することで、前記乗客の有無の推定結果を出力する、
請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項5】
ネットワークを介して互いに通信可能に接続されたサーバと車両に設置される端末装置とを備える運転診断システムであって、
車両の走行状態を示す走行データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記走行データに基づいて前記車両の運転者の運転操作を評価する運転評価部と、
前記車両内の乗客の有無を検出する乗客有無検出部と、
前記端末装置に設けられ、前記運転評価部による運転評価結果を運転者に通知するものであって、前記乗客有無検出部の検出結果に基づいて前記運転評価結果の通知方法を変更する通知部と、
を備える、運転診断システム。
【請求項6】
請求項4に記載の運転診断装置の推論部で用いられる学習済モデルを取得するための機械学習装置であって、
車両の走行状態を示す走行データを含む入力データと、前記車両内の乗客の有無を示すデータを含む出力データとで構成された学習用データセットを複数組取得する学習用データセット取得部と、
前記学習用データセット取得部が取得した前記学習用データセットを複数組用いて、前記入力データと前記出力データとの相関関係を推定する学習モデルの学習を行う学習処理部と、
を備える、機械学習装置。
【請求項7】
請求項4に記載の運転診断装置の推論部で用いられる学習済モデルの生成方法であって、
車両の走行状態を示す走行データを含む入力データと、前記車両内の乗客の有無を示すデータを含む出力データとで構成された学習用データセットを複数組取得する工程と、
前記学習用データセットを複数組用いて、前記入力データと前記出力データとの相関関係を推定する学習モデルの学習を行う工程と、
を備える、学習済モデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は運転診断装置、運転診断システム、機械学習装置及び学習済モデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特定の車両の運転操作が危険な運転や燃費を悪化させる運転に該当するものであるか否かを診断することが行われている。また、その運転診断の結果を車両の運転者に報知することも行われている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、車両の走行状態を示す走行データを取得し、予め定めた診断項目に基づいて取得した走行データを評価し、運転者による運転操作の傾向を求めて運転者に報知することで、運転者に運転操作の傾向を知らせることが可能な装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-231776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示すような運転診断は、運転者の運転の質を向上させるのに一定の効果が期待できる。そして、上述のような運転診断は、自家用車のみならず、タクシーやバス、あるいはライドシェアサービスを提供する車両といった乗客(旅客)を乗せるための旅客運送車両(以下、これらをまとめて「業務車両」あるいは単に「車両」という)にも適用され得る。業務車両の運転診断を行うことにより運転者の運転の質が向上すれば、旅客運送サービスの品質の向上を図ることができる。
【0006】
上述の運転診断の結果は、車両等に搭載されているスピーカやモニタを介して運転者に逐次報知されるのが一般的である。このような報知方法は、業務車両に乗客が乗っていないとき(以下、この状態を「空車」ともいう)は運転者に運転診断結果をタイムリーに且つ確実に伝えることができ好ましい。しかしながら、業務車両に乗客が乗っているとき(以下、この状態を「実車」ともいう)に上述した方法で運転者へ運転診断の結果の報知を行うと、運転診断結果が乗客にも伝わり得る。運転診断結果の情報は乗客にとっては不要な情報のため、当該報知が乗客の居心地(乗り心地)を低下させる可能性がある。また、運転診断結果の内容によっては、運転者の運転技能に不安を抱かせる要因となり、乗客の運転者への信頼を損なわせる可能性もある。
【0007】
本開示は、上述した課題に鑑み、車両内の乗客の有無を考慮した運転診断装置、運転診断システム、機械学習装置及び学習済モデルの生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の請求項1に係る運転診断装置は、車両の走行状態を示す走行データを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記走行データに基づいて前記車両の運転者の運転操作を評価する運転評価部と、前記車両内の乗客の有無を検出する乗客有無検出部と、前記運転評価部が検出した運転評価結果を運転者に通知するものであって、前記乗客有無検出部の検出結果に基づいて前記運転評価結果の通知方法を変更する通知部と、を含むものである。
【0009】
請求項1に係る運転診断装置では、車両内の乗客の有無に基づいて運転評価結果の通知方法を変更するため、車両内の乗客の有無を考慮した通知方法を採用することができる。
【0010】
本開示の請求項2に係る運転診断装置は、上記請求項1に記載の運転診断装置において、前記運転評価部は、前記取得部が取得した前記走行データの、予め設定された運転操作に関連する複数の評価項目の条件に該当した回数に基づいて、前記運転者の運転操作を評価するものであって、前記乗客有無検出部が乗客無と検出した際に用いられる第1の評価項目群と、前記乗客有無検出部が乗客有と検出した際に用いられる、前記第1の評価項目群とは異なる第2の評価項目群と、を用いて前記運転者の運転操作を評価する。
【0011】
請求項2に係る運転診断装置では、運転操作の評価に際し、乗客の有無に基づいて異なる2つの評価項目群を用いて評価を行うため、運転者の運転操作の評価をより精度よく行うことができるようになる。
【0012】
本開示の請求項3に係る運転診断装置は、上記請求項1又は請求項2に記載の運転診断装置において、前記通知部は、前記乗客有無検出部が乗客有と検出した際には前記運転評価結果の通知を行わない。
【0013】
請求項3に係る運転診断装置では、乗客が乗っている際には運転評価結果の通知を行わないため、運転評価結果が乗客に伝わることがなく、乗客の快適な移動を妨げる、あるいは乗客の運転者に対する信頼を無用に損なわせることがなくなる。
【0014】
本開示の請求項4に係る運転診断装置は、上記請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の運転診断装置において、前記乗客有無検出部は、前記走行データから乗客の有無を推定する推論部を含み、前記推論部は、乗客の有無を推定するための機械学習を行った学習済モデルの入力層に前記走行データを入力することで、前記乗客の有無の推定結果を出力する。
【0015】
請求項4に係る運転診断装置では、乗客の有無を推論部によって推定することができるため、乗客の有無を検出するための各種の設備や設置作業等が必要なくなる。
【0016】
本開示の請求項5に係る運転診断システムは、ネットワークを介して互いに通信可能に接続されたサーバと車両に設置される端末装置とを備える運転診断システムであって、車両の走行状態を示す走行データを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記走行データに基づいて前記車両の運転者の運転操作を評価する運転評価部と、前記車両内の乗客の有無を検出する乗客有無検出部と、前記端末装置に設けられ、前記運転評価部による運転評価結果を運転者に通知するものであって、前記乗客有無検出部の検出結果に基づいて前記運転評価結果の通知方法を変更する通知部と、を含むものである。
【0017】
請求項5に係る運転診断システムでは、車両内の乗客の有無に基づいて運転評価結果の通知方法を変更するため、車両内の乗客の有無を考慮した通知方法を採用することができる。
【0018】
本開示の請求項6に係る機械学習装置は、請求項4に記載の運転診断装置の推論部で用いられる学習済モデルを取得するための機械学習装置であって、車両の走行状態を示す走行データを含む入力データと、前記車両内の乗客の有無を示すデータを含む出力データとで構成された学習用データセットを複数組取得する学習用データセット取得部と、前記学習用データセット取得部が取得した前記学習用データセットを複数組用いて、前記入力データと前記出力データとの相関関係を推定する学習モデルの学習を行う学習処理部と、を含むものである。
【0019】
請求項6に係る機械学習装置では、車両の走行データから車両内の乗客の有無を推定可能な学習済モデルを得ることができる。
【0020】
本開示の請求項7に係る学習済モデルの生成方法は、請求項4に記載の運転診断装置の推論部で用いられる学習済モデルの生成方法であって、車両の走行状態を示す走行データを含む入力データと、前記車両内の乗客の有無を示すデータを含む出力データとで構成された学習用データセットを複数組取得する工程と、前記学習用データセットを複数組用いて、前記入力データと前記出力データとの相関関係を推定する学習モデルの学習を行う工程と、を含むものである。
【0021】
請求項7に係る学習済モデルの生成方法では、車両の走行データから車両内の乗客の有無を推定可能な学習済モデルを生成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、車両内の乗客の有無を考慮した運転診断装置、運転診断システム、機械学習装置及び学習済モデルの生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施形態に係る運転診断システムの一例の全体構成を示す概略図である。
図2】第1の実施形態に係る運転診断装置の一例のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る運転診断装置の一例の機能構成を示すブロック図である。
図4図3に示す運転評価部の第1の評価項目群の一例を示した図である。
図5図3に示す運転評価部の第2の評価項目群の一例を示した図である。
図6】本開示の第1の実施形態に係る運転診断装置による運転診断処理の一例を示したフローチャートである。
図7】第2の実施形態に係る運転診断装置の一例のハードウェア構成を示すブロック図である。
図8】第2の実施形態に係る運転診断装置の一例の機能構成を示すブロック図である。
図9】第2の実施形態に係る機械学習装置の一例の機能構成を示すブロック図である。
図10】第2の実施形態に係る学習済モデルの生成方法の一例を示したフローチャートである。
図11】第2の実施形態に係る運転診断装置による運転診断処理の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本開示を実施するための実施形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0025】
<第1の実施形態>
図1は、本開示の第1の実施形態に係る運転診断システムの一例の全体構成を示す概略図である。第1の実施形態に係る運転診断システム1は、図1に示すように、サーバ2と、車両(業務車両)Vに設置される端末装置3とを少なくとも含む。また、サーバ2と端末装置3とは、ネットワークNWを介して互いに通信可能に接続されている。図1には、車両Vとして、タクシーV1とライドシェアサービス提供車両V2とがそれぞれ1台ずつ例示されているが、車両Vはこれらに限定されるものではなく、バス等の他の旅客運送車両であってもよい。
【0026】
サーバ2は、車両Vの管理者が保有するサーバコンピュータで構成することができる。このサーバ2は、具体的には、複数のタクシーV1を管理するタクシー会社が保有するサーバや、ライドシェアサービス提供車両V2に設置された端末装置3に含まれるライドシェアサービスを提供する会社が保有するサーバであってよい。
【0027】
このサーバ2には、周知のコンピュータを採用することができる。周知のコンピュータとは、少なくともプロセッサ、メモリ及び通信インタフェースを含むものであってよい。このサーバ2は、例えば車両Vの運行管理を行うことができるものであってよい。加えて、このサーバ2は、車両Vの各種情報、例えば位置情報や乗客の有無に関する情報を端末装置3から受信し、各端末装置3へ配車指示等を送信することが可能なものであってよい。さらには、このサーバ2は、後述する運転診断処理の一部の処理を実施可能なものであってもよい。
【0028】
端末装置3は、車両Vに設置される装置で構成することができる。具体的には、車両V(例えばタクシーV1)に搭載される車載器3Aや、運転者が保有し運転時に車両V(例えばライドシェアサービス提供車両V2)に設置される携帯通信端末3Bで構成することができる。携帯通信端末3Bとしては、スマートフォンやタブレット端末、モバイル型のパーソナルコンピュータといった通信機能を有する情報端末を採用することができる。本実施形態においては、この端末装置3が運転診断装置10として機能するものを例示する。
【0029】
図2は、本開示の第1の実施形態に係る運転診断装置の一例のハードウェア構成を示すブロック図である。この図2では、運転診断装置10がタクシーV1に搭載された車載器3Aによって実現されたものを例示している。本実施形態に係る運転診断装置10は、図2に示すように、コンピュータによって実現することができる。詳しくは、運転診断装置10は、プロセッサの一例としてのCPU(Central Processing Unit)20と、メモリの一例としてのROM(Read Only Memory)22及びRAM(Random Access Memory)24と、ストレージ26と、通信インタフェース28と、入出力インタフェース30とを含んでいてよい。またこれらの構成は、内部バス32を介して相互に通信可能に接続されていてよい。
【0030】
CPU20は、中央演算処理ユニットであって、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりすることができるものであってよい。具体的にいえば、このCPU20は、ROM22又はストレージ26に格納されている種々のプログラムを読み出し、RAM24を作業領域として当該プログラムを実行することができるものであってよい。CPU20は、プログラムに従って運転診断装置10を構成する各構成要素の制御や各種の演算処理を行うことができるものであってよい。
【0031】
ROM22は、各種プログラム及び各種データを格納することができるものであってよい。また、RAM24は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶することができるものであってよい。
【0032】
ストレージ26は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)といった記録媒体で構成することができ、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや、運転診断装置10を動作させるために必要な各種データが格納されたものであってよい。本実施形態においては、ROM22又はストレージ26には、運転診断処理を行うためのプログラムや各種データが格納され得る。
【0033】
通信インタフェース28は、運転診断装置10がサーバ2や他の機器とネットワークNWを介して通信するための、無線通信が可能なインタフェースであってよい。この通信インタフェース28では、CAN(Controller Area Network)、イーサネット(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)あるいはWi-Fi(登録商標)といった通信規格が用いられ得る。
【0034】
入出力インタフェース30は、運転診断処理を実施するために必要な、車両Vあるいは端末装置3に搭載等された各種構成要素との間でデータ等の送受信を行うためのインタフェースであってよい。入出力インタフェース30に電気的に接続される構成要素は、運転診断の内容等に応じて適宜選択され得る。本実施形態では、入出力インタフェース30として、図2に示すように、車両Vに設けられたいくつかの構成要素、具体的には、カメラ40と、GPS(Global Positioning System)42と、入力スイッチ44と、加速度センサ46と、舵角センサ48と、車速センサ50と、モニタ52と、スピーカ54とが電気的に接続されているものを例示している。なお、入出力インタフェース30と上述した各種の構成要素とは、直接接続されていてもよいし各構成要素を制御するECU(Electronic Control Unit)を介して接続されていてもよい。
【0035】
カメラ40は、車両Vの外部や車室内を撮像可能な撮像手段で構成することができる。このカメラ40には、CCD(Charge Coupled Device)あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサといった周知のイメージセンサを用いることができる。このカメラ40は、車両Vの外部に設置され、車両Vの周囲、例えば車両前方を撮像することが可能な1乃至複数の外部カメラと、車両Vの車室内に設置され、運転者あるいは後部座席に向けられることで、車室内の状況を撮像することが可能な1乃至複数の内部カメラとを含んでいてよい。外部カメラは、車両の前方を走行する先行車両との車間距離や車線及び信号機を認識するために用いることができる。また、内部カメラは、運転者の視線方向や乗客の有無を検知するために用いることができる。
【0036】
GPS42は、車両Vに搭載されて車両Vの現在位置を測定することが可能な装置であってよい。このGPS42は、GPS衛星からの信号を受信する図示しないアンテナを含んでいてよい。
【0037】
入力スイッチ44は、運転者が操作可能な位置、例えばインストルメントパネル、センタコンソール及びステアリングホイール等に設けられ、運転診断装置10に関連する各種の操作を実現するためのものであってよい。このスイッチ44は、押しボタンスイッチやタッチパネル等で構成することができる。この入力スイッチ44には、車両Vの運転操作に関連するスイッチ、例えばウインカーやハザードランプを点灯させるためのスイッチや警笛(クラクション)を動作させるためのスイッチ、あるいは、タクシーV1の業務に関連するスイッチ、例えば運転者が車両Vの実車/空車を切り替えるためのスイッチや後部ドアの開閉レバー等が含まれ得る。また、運転診断装置10が携帯通信端末3Bに適用される場合には、携帯通信端末3B上でアプリケーション(例えばライドシェアサービスに関連するアプリケーション)等を操作するためのタッチパネル等も含まれ得る。
【0038】
加速度センサ46は、車両Vの任意の方向、例えば前後、左右及び上下の3方向の加速度を検出可能なセンサであってよい。また、舵角センサ48は、車両Vの舵角、より具体的には、車両Vのステアリングホイールの操舵角を検出可能なセンサであってよい。さらに、車速センサ50は、車両Vの車速を検出可能なセンサであってよい。これら3つのセンサについては、周知の構造のセンサを採用することができるため、その具体的な構成については説明を省略する。
【0039】
加速度センサ46で検知された加速度のデータは、例えば、車両Vの急な加減速(具体的に急加速や急ブレーキ)の有無を判定するために用いることができる。また、舵角センサ48で検知された操舵角のデータは、例えば、急操舵やUターンの有無を判定するために用いることができる。さらに、車速センサ50で検知された車速のデータは、例えば、車両Vの急な加減速や法定速度あるいは制限速度の超過の有無を判定するために用いることができる。
【0040】
モニタ52は、インストルメントパネルやメータパネルといった車室の前部の運転者から見える位置に設けられ、種々の情報が表示可能なディスプレイで構成されたものであってよい。このモニタ52としては、液晶パネルや有機ELパネル等を採用することができる。また、インストルメントパネルに設けられるモニタ52の一例としてのセンターディスプレイには、タッチパネル機能を有するディスプレイを採用するとよい。
【0041】
スピーカ54は、車室の適所、例えばダッシュボードや前方ドア等に設けることができ、運転者に対して音声を出力することが可能なものであってよい。このスピーカ54及び上述したモニタ52は、運転診断装置10の診断結果を運転者に通知する通知部66(図3参照)として機能し得る。
【0042】
図3は、本開示の第1の実施形態に係る運転診断装置の一例の機能構成を示すブロック図である。本実施形態に係る運転診断装置10は、上記したハードウェア資源を用いることにより、各種の機能を実現することができる。詳しくは、運転診断装置10は、図3に示すように、車両Vの走行状態を示す走行データを取得する取得部60と、運転者の運転操作を評価する運転評価部62と、車両V内の乗客の有無を検出する乗客有無検出部64と、運転評価部62による運転評価結果を運転者に通知する通知部66と、を少なくとも含む。
【0043】
取得部60は、車両Vの走行状態を示す走行データを取得するためのものである。この取得部60は、主に上述した入出力インタフェース30によって実現できる。取得部60が取得する走行データには、走行時の車両Vの各種データが含まれ得る。具体的には、この走行データには、例えば、カメラ40が撮像した撮像データ、GPS42が取得した位置情報データ、入力スイッチ44の操作データ、各種センサ(加速度センサ46、舵角センサ48及び車速センサ50)の出力信号データの少なくとも一部が含まれ得る。
【0044】
運転評価部62は、取得部60が取得した走行データに基づいて、運転者の運転操作を評価するためのものである。この運転評価部62は、主に上述したCPU20によって実現することができる。運転操作の評価とは、特に、運転者が危険な運転や燃費を悪化させる運転を行っているかどうか、あるいはそのような運転の恐れがあるかどうかを評価するものであってよい。具体的には、取得部60が取得した走行データの、予め設定された運転操作に関連する複数の評価項目(以下、「評価項目群」ともいう)の条件に該当したことを検出し、且つその検出した回数に基づいて、運転者の運転操作を評価するものであってよい。
【0045】
図4は、図3に示す運転評価部で用いられる評価項目群(第1の評価項目群)の一例を示した図である。本実施形態に係る運転評価部62で用いられるいくつかの評価項目(評価項目群)は、いずれも入出力インタフェース30を介して取得可能なデータに基づいて特定することができる。換言すれば、運転評価部62で用いられる評価項目群は、入出力インタフェース30を介して取得可能なデータによって評価が可能な項目の中で適宜設定されるものである。評価項目群を構成する評価項目の一例としては、例えば図4に示すように、急加速、急ブレーキ、急操舵、車線はみ出し、わき見運転、車間距離不足及びウインカー操作不備(具体的には、ウインカー操作遅れあるいはウインカー操作なしの右左折)を挙げることができる。なお、前述の評価項目はあくまで一例であって、これら以外の評価項目が含まれていても、これらの評価項目の一部が採用されなくてもよい。ちなみに、上述の評価項目以外の評価項目としては、例えば法定速度や制限速度の超過や停止線はみ出し、一時停止違反等が挙げられる。
【0046】
上述した評価項目群を構成する各評価項目を評価する際は、以下のように評価すればよい。すなわち、急加速及び急ブレーキは、加速度センサ46あるいは車速センサ50からの信号に基づいて評価することができる。急操舵は、舵角センサ48からの信号に基づいて評価することができる。車線はみ出し及び車間距離不足は、カメラ40の特に外部カメラで撮像された車両前方の画像に基づいて評価することができる。わき見運転は、カメラ40の特に運転者に向けられた内部カメラで撮像された画像に基づいて評価することができる。そして、ウインカー操作不備は、入力スイッチ44の特にウインカーを動作させるスイッチと、GPS42からの位置情報あるいは舵角センサ48からの信号とに基づいて評価することができる。
【0047】
加えて、上述した評価項目の評価は、例えば任意のしきい値を用いて実施することができる。具体的には、例えば急加速及び急ブレーキに関する評価は、加速度センサ46において予め設定したしきい値以上の加速あるいは減速がなされたことを示す信号が検出された回数に基づいて評価することができる。そして、本実施形態においては、加速度センサ46において当該しきい値以上の加速あるいは減速がなされたことを示す信号が検出された回数が、規定の回数(以下、「警告回数」ともいう)を超過したことを検出した際に、通知部66を介して運転者に警告を行うものとする。前述の警告回数は、評価項目毎に設定可能であってよく、例えば図4に示すように、評価項目の内容に応じて調整され得る。また、運転評価部62による評価の結果は、通信インタフェース28を介してサーバ2に送信されるようにしてもよい。サーバ2に送信された評価結果は、運転者の運行管理等に利用することができる。
【0048】
乗客有無検出部64は、車両V内の乗客の有無を検出するためのものである。乗客の有無を検出するための具体的な方法は特に限定されないが、本実施形態においては、入出力インタフェース30を介して入力される情報のうち、直接的に乗客の有無が検出可能な情報を利用して検出する場合を例示する。より具体的には、例えば運転者による入力スイッチ44(具体的にはタクシーV1業務のための実車/空車を切り替えるスイッチ)の入力動作に基づいて乗客の有無を検出するものとすることができる。なお、本実施形態に係る乗客の有無の検出方法としては、上述した入力スイッチ44によるもの以外にも、例えばカメラ40のうちの後部座席を撮像可能な内部カメラの撮像結果に基づいて、あるいは後部座席のシートに予め設けられた図示しない圧力センサの検出結果に基づいて乗客の有無を検出する方法が挙げられる。
【0049】
通知部66は、運転評価部62による運転評価結果を運転者に通知するためのものである。この通知部66は、主に上述したモニタ52及びスピーカ54の少なくとも一方によって実現することができる。通知部66による運転評価結果の通知方法は、種々の方法が採用され得る。例えば、モニタ52に運転操作の総合評価を点数やメッセージで表示する、あるいは評価結果に関連するアドバイスや警告メッセージを表示するようにしてもよいし、スピーカ54から運転評価結果に対応するメッセージや、警告音等を音声出力するようにしてもよい。
【0050】
ここで、通知部66により運転者へ運転評価結果を通知する際は、上述したようにスピーカ54による音声出力やモニタ52へのメッセージ表示等を用いることができるが、車両Vに乗客が乗っている際に当該通知を行うことは、乗客に不要な情報が伝わることとなり、乗客の快適な移動を妨げる可能性がある。特に、上述した運転評価部62で評価する評価項目が規定の警告回数に到達した場合に実施される通知(以下、「警告通知」という)が乗客に伝わることは、運転者の運転操作に不安を抱かせ、運転者に対する信頼度を無用に低下させる恐れがある。
【0051】
本実施形態に係る通知部66では、上述の点を考慮し、運転評価結果を運転者へ通知するに際し、乗客有無検出部64の検出結果に基づいてその通知方法を変更している。そして、当該通知方法を変更することにより、車内の状況を考慮した運転診断を実施しようとするものである。より具体的には、通知方法を変更して乗客に運転診断結果の内容が伝わらないようにすることで、乗客の快適な移動を妨げることなく、運転診断を実施しようとするものである。
【0052】
本実施形態においては、乗客が乗っていないときの通知部66による運転評価結果の通知方法は、その通知内容が明確に理解できるような方法とするとよい。具体的には、例えば上述したスピーカ54による音声出力やモニタ52へのメッセージ表示を単独であるいは組み合わせて採用すればよい。他方、乗客が乗っていないときの通知部66による運転評価結果の通知方法は、その通知内容がそれ単独では理解できないような方法、あるいは、通知部66による運転者への通知を乗客が乗っているときには行わないようにするとよい。
【0053】
通知部66による運転評価結果の通知方法として、その通知内容がそれ単独では理解できないような方法とは、例えばモニタ52へのアイコン表示あるいは簡易なシンボルマーク(例えばエクスクラメーションマーク)表示等のみを実施することが挙げられる。また、通知部66による運転者への通知を行わない場合には、通知部66により通知すべきであった警告通知は、ストレージ26やサーバ2の記憶領域に少なくとも一時的に格納し、乗客が乗っていないタイミングで通知をし直すようにする、あるいは任意のタイミングで閲覧可能な状態としておくとよい。なお、乗客の有無を考慮した通知部66による運転評価結果の通知方法は、上述したものに限定されるものではなく、その目的を達成できる範囲内で適宜変更することができる。
【0054】
上述のように、通知部66による運転診断結果の通知の方法を、乗客の有無に応じて変更すれば、乗客の有無を考慮した通知の方法を採用することができる。特に、乗客が乗っている際の通知方法として、例えばその通知内容が乗客に伝わらないような方法を採用すれば、車両Vに乗車している乗客が運転診断結果の通知を認識することが実質的になくなり、当該通知が乗客の快適な移動を妨げることがなくなる。また、運転診断自体は乗客の有無に関わらず実施できるため、運転者は運転診断結果に基づいて運転技術の向上、及び旅客運送サービスの品質向上を図ることができる。
【0055】
ところで、業務車両においては、実車中に乗客の要求に応じた運転を行う場合がしばしばある。例えば乗客が急いでいる場合には、運転者は車速や加速度を通常よりも上げた運転を行うことがあり、また乗客の道案内に沿って運転を行う場合には、乗客の案内が遅れることに起因して急な車線変更や右左折が発生することが想定される。また、業務車両の運転者は、実車時にはコンフォートな運転を行う傾向があり、反対に空車時には実車時に比べて漫然運転となる傾向があることが知られている。したがって、業務車両における運転操作は、実車状態であるか空車状態であるかによって大きく変化し得る。
【0056】
上記の点を考慮して、本実施形態に係る運転診断装置10では、通知部66による通知方法を乗客の有無に基づいて変更することに加えて、運転評価部62の評価手法を乗客の有無に基づいて変更するようにしてもよい。具体的には、以下に説明するように、例えば運転評価部62において評価を行う評価項目を、乗客の有無に基づいて変更することで、実車/空車状態に合わせた運転評価を実現するものとしてもよい。
【0057】
図5は、図3に示す運転評価部の第2の評価項目群の一例を示した図である。本実施形態に係る運転評価部62は、乗客が乗っていないときに評価する評価項目群(以下、「第1の評価項目群」という)と、乗客が乗っているときに評価する評価項目群(以下、「第2の評価項目群」という)とを異ならせることで、乗客の有無を考慮した運転評価を実施するものであってよい。なお、以下の説明では、上で図4を参照して説明した評価項目群を第1の評価項目群の一例とする。
【0058】
第1の評価項目群と第2の評価項目群とは、図4及び図5に示すように、その評価項目の種類や数が異なっていてよい。具体例としては、第1の評価項目群は、急加速、急ブレーキ、急操舵、車線はみ出し、わき見運転、車間距離不足及びウインカー操作不備の7項目で構成されているのに対し、第2の評価項目群は、急ブレーキ、急操舵、車線はみ出し及びわき見運転の4項目で構成されていてよい。上述の例において、第2の評価項目群に、急加速、車間距離不足及びウインカー操作不備の3つの評価項目が含まれていないのは、これらの評価項目は乗客が急いでいるときや、乗客から急な右左折指示があったときには運転者が敢えてこれらの動作を行う場合が想定できるためである。
【0059】
上述した通り、運転評価部62において2つの評価項目群を切り替えて評価することにより、乗客の指示に起因する故意の急加速やウインカー操作不備等が運転診断結果に反映されることがなくなり、運転者自身の運転傾向に沿った運転診断結果が得られるようになる。なお、上述した第1及び第2の評価項目群を構成する評価項目の内容はあくまで一例であって、各評価項目群を構成する評価項目は適宜変更することができる。また、本実施形態においては、乗客の有無に基づいて評価項目を変更したものを例示しているが、評価項目を変えることに代えてあるいは評価項目を変えることに加えて、設定されている警告回数を可変してもよい。
【0060】
上述した実施形態においては、運転診断装置10を構成する端末装置3が、以下に説明する運転診断処理を実現するために必要な各構成要素を含む場合を例示したが、これらの構成要素の一部をサーバ2が含むことにより、運転診断システム1全体として運転診断処理を実現するようにしてもよい、具体的には、運転評価部62、乗客有無検出部64あるいは取得部60は、その少なくとも一部がサーバ2に設けられていてもよい。例えば運転評価部62がサーバ2に設けられた場合には、取得部60で取得した各種の走行データは通信インタフェース28を介して逐次サーバ2に送信され、サーバ2内の運転評価部62が、端末装置3から送信された走行データに基づいて車両Vの運転評価を実施し、その結果を任意のタイミングで端末装置3に返信すればよい。
【0061】
次に、上述した一連の構成を含む運転診断装置10による運転診断処理の一例について簡単に説明する。以下に説明する運転診断処理は、CPU20がROM22あるいはストレージ26に格納されたプログラムを実行することで実施されるものであってよい。
【0062】
図6は、本開示の第1の実施形態に係る運転診断装置による運転診断処理の一例を示したフローチャートである。本実施形態に係る運転診断装置10による運転診断処理は、概ね図6に示す工程を実施することで実現できる。具体的には、先ず、イグニションスイッチの操作等によって車両V、具体的にはタクシーV1の操業が開始されると、走行データの取得が開始される(工程S11)。走行データの取得は、図2に示したように、車両Vに搭載された各種センサ等からの信号を入出力インタフェース30を介して取得することで実現することができる。
【0063】
上述の工程S11の後、あるいは工程S11と同様のタイミングで、乗客有無検出部64による乗客の有無の検出を開始する(工程S12)と共に、運転評価部62による運転評価も開始される(工程S13)。乗客有無検出部64としては、入力スイッチ44からの入力信号の有無に基づいて乗客の有無を判断するものが採用されてよい。また、運転評価部62は、予め設定された複数の評価項目においてそれぞれ設定されたしきい値を超えた回数を計数し、その回数が規定の警告回数を超過したか否かに基づいて運転評価をするものが採用されてよい。加えて、運転評価部62においては、乗客有無検出部64の検出結果に基づいて、上述した第1及び第2の評価項目群を切り替えて評価するものであってもよい。なお、上述の工程S11乃至S13の相対的な開始タイミングは上述のタイミングに限定されるものではない。
【0064】
タクシーV1の運行が開始されると、取得部60による走行データの取得が継続的に実行され、合わせて取得された走行データに基づく運転評価が実施される。また、これに並行して乗客の有無が継続的に検出される。そして、運転評価の結果として運転者に通知すべき事象(以下、これを「通知事象」という)が生じた際には(工程S14でYes)、通知部66による通知事象の通知方法の特定が行われる。通知事象には、上述した図4あるいは図5に示された評価項目毎に設定された警告回数を超過した際に実施される警告通知等が含まれ得る。
【0065】
工程S14において、通知事象の発生を検知すると、乗客有無検出部64による検出結果が乗客有であるか否かを確認する(工程S15)。そして、確認の結果、乗客が乗っていないことが検出された場合には、通知部66は、発生した通知事象の内容が明確に理解できる方法で、運転者への通知を実施する(工程S16)。具体的には、通知部66は、モニタ52へのメッセージ表示とスピーカ54からの音声出力の両方を用いて運転者への通知を実施するとよい。なお、この場合のメッセージ表示としては、例えば「急加速を控えましょう」といったメッセージを採用することができる。音声出力としては、例えば前述のメッセージを音声にて出力すればよい。このような通知を実施することで、運転者は自身の運転の診断結果をタイムリーに認識できる。
【0066】
工程S15における確認の結果、乗客が乗っていることが検出された場合には、通知部66は、発生した通知事象が乗客へ伝わることを避けるために、運転者への通知を行わない(工程S17)。ここで、運転者への通知が行われなかった通知事象は、ストレージ26に少なくとも一時的に格納するとよい。一時的に格納された通知事象は、乗客が乗っていないとき等適当なタイミングで、運転者がその内容を閲覧できるようにする、あるいは再度通知を行うようにするとよい。工程S16及びS17が完了すると、運転診断装置10は、工程S14に戻って新たな通知事象の発生を引き続き監視する。
【0067】
以上の通り、本実施形態に係る運転診断装置10あるいは運転診断システム1によれば、乗客の有無に応じて運転診断結果の通知方法を変更することにより、車内の状況に応じた運転診断の通知を行うことができる。また、上述したように乗客が乗っていないときには運転診断結果が乗客に伝わらないようにすれば、旅客運送サービスの品質低下を抑制しつつ、運転者の運転操作の向上を図ることができる。したがって、乗客の乗り心地の向上と事故の抑制の両方の効果が期待できる。
【0068】
<第2の実施形態>
上述した第1の実施形態のもののように、運転診断装置10をタクシーV1に搭載された車載器3Aで実現する場合、車載器3Aはその構造上車両Vに設けられている各種のセンサの信号を取得するのが比較的容易であるため、乗客の有無等を簡単且つ高精度に検出することができる。一方で、運転診断装置の実施の態様によっては、上述した運転診断に必要な各種データを取得することが容易でない場合がある。例えば運転診断装置を携帯通信端末3B内のアプリケーションの態様で実現した場合、乗客の有無を検出するために、携帯通信端末3Bで車両Vに設けられているカメラ40(特に内部カメラ)の撮像データを取得したり、ライドシェアサービスのアプリケーション中で運転者により操作等される実車/空車に関する情報を取得したりすることは、装置の取り付けやアプリケーション間のデータ交換を可能とするための設定にかなりの手間を要し得る。また、運転診断のためだけに運転者に実車/空車に関する情報を入力させることは運送業務の妨げとなるため、そのような操作を要求することは現実的でない。したがって、車両Vに搭載された各種構成要素や他のアプリケーションの操作情報を利用することなく、且つ運転者に入力操作を要求することなく、運転診断装置単体で乗客の有無の検出を含めた一連の処理を実現できれば、装置の取付作業や設定作業が簡略化でき好ましい。
【0069】
そこで、以下には本開示の第2の実施形態として、乗客の有無の検出を、当該検出専用に取得されたデータを参酌することなく、高精度に検出することが可能な運転診断装置10Aについて説明を行う。以下には、運転診断装置10Aが、図1に示す運転診断システム1のうち、ライドシェアサービス提供車両V2に設置された携帯通信端末3Bにて実現する場合を例に説明する。ただし、携帯通信端末3Bは、上述した第1の実施形態に係る運転診断装置10を適応することも可能な端末装置であることは既に述べたとおりであり、以下に説明する態様に何ら限定されるものではない。同様に、本実施形態に係る運転診断装置10Aは、タクシーV1に搭載された車載器3Aで実現することもできる。
【0070】
本実施形態に係る運転診断装置10Aは、上述した第1の実施形態に係る運転診断装置10と大部分が同様の構成を有していてよい。したがって、以下には上述した第1の実施形態に係る運転診断装置10とは異なる構成を中心に説明し、上述した第1の実施形態に係る運転診断装置10と同様の構造については同一の符号を付してその説明を省略する。また、以下に説明する運転診断装置10Aは、第1の実施の形態に係る運転診断装置10と同様に、その一部の構成要素をサーバ2が含むことにより、運転診断システムとして運転診断処理を実現するようにしてもよい、
【0071】
図7は、本開示の第2の実施形態に係る運転診断装置の一例のハードウェア構成を示すブロック図である。本実施形態に係る運転診断装置10Aは、例えば図1に示すライドシェアサービス提供車両V2に設けられた携帯通信端末3Bに適用することができる。また、この運転診断装置10Aのハードウェア構成としては、図7に示すように、上述した第1の実施形態に係る運転診断装置10と同様に、プロセッサの一例としてのCPU20と、メモリの一例としてのROM22及びRAM24と、ストレージ26と、通信インタフェース28と、入出力インタフェース30Aとを含んでいてよい。
【0072】
本実施形態の入出力インタフェース30Aは、運転診断処理を実施するために必要な、携帯通信端末3B内の各種構成要素との間でデータ等の送受信を行うためのインタフェースであってよい。すなわち、本実施形態の入出力インタフェース30Aは、車両Vには電気的に接続されていなくてもよい。この入出力インタフェース30Aに電気的に接続される構成要素としては、例えば図7に示すように、GPS42と、入力スイッチ44と、加速度センサ46と、モニタ52と、スピーカ54とが電気的に接続されていてよい。
【0073】
図8は、本開示の第2の実施形態に係る運転診断装置の一例の機能構成を示すブロック図である。本実施形態に係る運転診断装置10Aは、上記したハードウェア資源を用いることにより、各種の機能を実現することができる。詳しくは、運転診断装置10Aは、図8に示すように、車両Vの走行状態を示す走行データを取得する取得部60と、運転者の運転操作を評価する運転評価部62と、車両V内の乗客の有無を検出する乗客有無検出部64Aと、運転評価部による運転評価結果を運転者に通知する通知部66と、を含む。
【0074】
上述した取得部60、運転評価部62及び通知部66は、第1の実施形態に係る運転診断装置10のものと概ね同様の機能を奏するものであってよい。他方、本実施形態に係る運転診断装置10Aの乗客有無検出部64Aは、取得部60が取得した走行データから車両V内の乗客の有無を推定する推論部68をさらに含むことができる。すなわち、本実施形態に係る運転診断装置10Aの乗客有無検出部64Aは、乗客の有無を、乗客の存在を直接的に示す信号等を参照するのではなく、推論部68を用いて推定することで特定しようとするものである。
【0075】
推論部68は、機械学習を利用して得られた学習済モデルを利用して、乗客の有無を推定するものであってよい。ここでいう学習済モデルは、走行データから乗客の有無を推定できるように機械学習がなされたモデルで構成することでき、例えばニューラルネットワークモデル、決定木モデル、サポートベクタマシンといった種々の機械学習手法を用いて学習された推論モデルを採用することができる。そして、この学習モデルの入力層に、取得部60が取得した走行データを入力すると、乗客の有無の推定結果が得られるものであってよい。
【0076】
この推論部68で用いられる学習済モデルは、機械学習装置70を利用することで取得することができる。そこで以下には、前述の学習済モデルを取得するための機械学習装置70と、学習済モデルの生成方法について説明を行う。
【0077】
図9は、本開示の第2の実施形態に係る機械学習装置の一例の機能構成を示すブロック図である。本実施形態に係る機械学習装置70は、サーバ2によって実現されていてよい。この機械学習装置70は、図9に示すように、学習用データセット取得部74と、学習用データセット格納部76と、学習処理部78と、学習済モデル格納部80とを含むものであってよい。なお、本実施形態においては機械学習装置70をサーバ2が実現しているもの例示するが、この機械学習装置70は端末装置3で実現することもできる。その場合には、端末装置3単体で学習済モデルの生成とそれを用いた乗客の有無の推定を実現することができる。
【0078】
学習用データセット取得部74は、例えばネットワークNWを介して運転診断装置10Aに接続可能なものであって、端末装置3から送信される、学習(トレーニング)用データセットを構成する複数のデータを、サーバ2の通信インタフェースを介して取得するものである。学習用データセットは、車両Vの走行状態を示す走行データを含む入力データ(「説明変数」呼ばれることもある)と、車両V内の乗客の有無を示すデータを含む出力データ(「目的変数」と呼ばれることもある)とで構成されたデータセットとすることができる。したがって、この学習用データセット取得部74が取得するデータは、運転診断装置10Aの取得部60が取得した任意の期間の走行データと、そのときの乗客の有無を示すデータとの2つを少なくとも含んでいてよい。走行データとしては、運転診断装置10Aの取得部60が取得したデータ、具体的には、任意の期間における、加速度センサ46の出力信号やGPS42が測位した位置情報とすることができるが、取得部60が取得可能な車両Vの走行に関連するデータであればこれらに限定されない。また、一の学習用データセットを構成する乗客の有無を示すデータは、1つの値(すなわち「有」又は「無」のいずれかに対応する値)であるとよい。
【0079】
この学習用データセット取得部74が取得する走行データ及び乗客の有無を示すデータは、事前にあるいは学習用データセット取得部74が取得した後に、一の学習用データセットとして互いに関連付けられるとよい。これらのデータは、車両V毎、あるいは運転者毎に複数組生成されるとよい。
【0080】
学習用データセット格納部76は、学習用データセット取得部74で取得した各種のデータを、車両V毎あるいは運転者毎に、学習用データセット単位で格納するためのデータベース等の記録媒体であってよい。なお、この学習用データセット格納部76は省略することができる。その場合は、学習用データセット取得部74で取得した学習用データセットは、順次学習処理部78に送られるようにすればよい。
【0081】
学習処理部78は、学習用データセット格納部76に格納された複数組の学習用データセットを用いて学習モデルを学習させて、学習済モデルを生成するためのものである。本実施形態においては、以下に説示するように、機械学習の具体的な手法としてニューラルネットワークを用いた教師あり学習を採用している。なお、上述した通り、機械学習の具体的な手法については、これに限定されるものではなく、入出力の相関関係を学習用データセットから学習することができるものであれば他の学習手法を採用することが可能である。
【0082】
学習処理部78において学習されるニューラルネットワークモデルは、図9に示すように、入力データが入力される入力層を構成する1乃至複数のニューロンと、出力層を構成する1乃至複数のニューロンと、入力層と出力層との間に設けられる中間層を構成する複数のニューロンと、各ニューロンを接続するノードとを含むものであってよい。入力層及び出力層を構成するニューロンの数は、入力データ及び出力データのデータ数に合わせて調整され得る。また、中間層(「隠れ層」と呼ばれることもある)の層数は、図9に例示したように1つでもよいが、2以上に設定されているとよい。また、各層を構成するニューロン間に張られたノードには、任意の重み値が対応づけられていてよい。学習処理部78は、前述の構成を有するニューラルネットワークモデルを学習用データセットを用いて学習させることで、学習済モデルを生成することができる。なお、学習済モデルの具体的な生成方法については後述する。
【0083】
学習済モデル格納部80は、学習処理部78で生成された学習済モデルを格納するためのデータベースであってよい。この学習済モデル格納部80に格納された学習済モデルは、車両Vの管理者からの要求等に応じて、実システム、すなわち任意の運転診断装置10Aへ適用される。なお、図9では、説明の都合上、学習用データセット格納部76と学習済モデル格納部80とは別々の記憶手段として図示しているが、これらは単一の記録媒体(データベース)によって構成されていてもよい。また、この学習済モデル格納部80も、学習用データセット格納部76と同様に省略することができる。その場合は、学習処理部78で学習され生成された学習済モデルは、順次対応する運転診断装置10Aに送信されるようにすればよい。
【0084】
次に、本実施形態に係る乗客有無検出部64Aで用いられる学習済モデルを生成する方法について説明する。以下の説明においては、上述した機械学習装置70を用い、学習用データセット(教師データと呼ばれることもある)を用いた教師あり学習を実行することで、学習済モデルを生成する方法を例示する。これに関連して、以下に示す効果等の説明は、本実施形態に係る機械学習装置70の効果の説明を兼ねている。なお、本開示の学習済モデルの生成方法は、任意のコンピュータによって実施されるものであればよく、機械学習装置70によるものに限定されない。また、本実施の形態に係る学習モデルの生成方法は、コンピュータのプロセッサに所定の動作を実行させるプログラムの態様で、あるいは当該プログラムを格納した非揮発性のコンピュータ読取可能媒体の態様で提供され得る。
【0085】
図10は、本開示の第2の実施形態に係る学習済モデルの生成方法の一例を示したフローチャートである。学習済モデルの生成に際しては、はじめに、学習用データセット取得部74において、学習に用いる学習用データセットを複数組取得する(工程S21)。ここで取得される学習用データセットは、上述した通り、任意の車両V(例えば図1に示すライドシェアサービス提供車両V2)の走行状態を示す走行データで構成された入力データと、その車両V内の乗客の有無を示すデータで構成された出力データとからなるものであってよい。また、工程S21で取得される学習用データセットの数は、例えば所望の精度の推論結果を得ることが可能な学習済モデルを生成するのに必要と想定される数に基づいて、決定するとよい。なお、ここで取得された学習用データセットは、学習用データセット格納部76に格納しておくと良い。
【0086】
次に、学習を行うための学習モデルを準備する(工程S22)。ここで準備される学習モデルは、学習が行われる前のモデル、例えば各ノードに設定された重み値が任意の初期値に設定されたニューラルネットワークモデルとすることができる。
【0087】
学習に用いる学習用データセットの取得及び学習を行う学習モデルの準備が完了すると、次に、学習処理部78による学習が実行される。ここで行われる処理は、工程S21において取得された学習用データセットを複数組用いて、車両Vの走行状態を示す走行データ(説明変数)と車両V内の乗客の有無(目的変数)との相関関係を推定する学習モデルの学習を行う処理であってよい。学習の具体的な手法としては、例えば以下の工程S23乃至S26で示した処理を実行する方法を採用することができる。
【0088】
学習モデルの学習が開始されると、先ず、学習用データセット取得部74が取得した複数組の学習用データセットから、学習に用いる一の学習用データセットが選定される(工程S23)。次いで、この選定された一の学習用データセット内の入力データ、すなわち走行データを、工程S21で準備された学習モデルの入力層のニューロンに入力する(工程S24)。入力層のニューロンに走行データが入力されると、学習モデルの出力層のニューロンに任意の値が出力される。この出力は、一般的なニューラルネットワークの出力値の算出方法で、つまり、出力側のニューロンの値を、当該ニューロンに接続される入力側のニューロンの値と、出力側のニューロンと入力側のニューロンとを接続するノードに対応づけられた重み値との乗算値の数列の和として算出することを、入力層にあるニューロン以外の全てのニューロンに対して行う方法を用いることで、算出されたものであってよい。
【0089】
上述した工程S24において、学習用データセットの入力データを入力層のニューロンに入力するに際し、当該入力データをどのような形式で入力層のニューロンに入力するかは、生成される学習済モデルの精度等を考慮して適宜設定するとよい。例えば、入力データとしての走行データを、学習用データセット取得部74で取得したデータ(具体的には加速度センサ46の出力信号及びGPS42が測位した位置情報等)のまま、説明変数として入力してもよいし、上述した加速度センサ46の出力信号及びGPS42が測位した位置情報から急加速、急ブレーキ、急操舵等の評価項目に関する情報を特定し(このような処理を「前処理」ということがある)、この情報を説明変数として入力層のニューロンに入力してもよい。
【0090】
工程S24で学習モデルの出力層のニューロンに任意の値が出力されると、次に工程S23で選定された一の学習用データセット内の出力データ、すなわち乗客の有無に関するデータを用いて学習モデルの学習を実行する(工程S25)。ここでいう学習には、例えば工程S24で学習モデルの出力層のニューロンに出力された値と、上述した一の学習用データセットの出力データを構成する同じく乗客の有無に関する情報とを比較して誤差を求め、求められた誤差が小さくなるように、各ノードに対応づけられた重み値を誤差逆伝搬法(Backpropagation、バックプロパゲーション)を用いて調整する方法が採用できる。
【0091】
工程S25において学習モデルの重み値が調整されると、機械学習が終了できるか否かが判定され、学習を継続する場合(工程S26でNo)は、工程S23に戻り、新たな一の学習用データセットを選定して上述した一連の工程を繰り返せばよい。
【0092】
工程S23乃至S26に示す一連の工程を所定回数反復実施したとき、あるいは前記誤差が予め設定された許容値より小さくなったときといった、所定の条件が満たされた場合には、工程S26において機械学習が終了できると判断される(工程S26でYes)。この場合は、一連の学習後に得られた学習モデルを学習済モデルとして、学習済モデル格納部80に格納し(工程S27)、一連の学習モデルの生成方法を完了する。
【0093】
以上説明した通り、本実施形態に係る機械学習装置70及び学習済モデルの生成方法によれば、車両Vの走行データと、車両V内の乗客の有無との相関関係を学習した学習済モデルを得ることができる。ここで得られた学習済モデルは、車両Vの運転診断装置10Aにおける乗客有無検出部64A内の推論部68に用いられることにより、運転診断装置10A単体での乗客の有無の検出を実現することができる。
【0094】
次に、上述した学習済モデルを利用する推論部68を含む運転診断装置10Aによる運転診断処理の一例について簡単に説明する。以下に説明する運転診断処理も、第1の実施形態に係る運転診断装置10におけるものと同様に、CPU20がROM22あるいはストレージ26に格納されたプログラムを実行することで実施されるものであってよい。
【0095】
図11は、本開示の第2の実施形態に係る運転診断装置による運転診断処理の一例を示したフローチャートである。本実施形態に係る運転診断装置10Aによる運転診断処理は、図11に示した通り、乗客の有無を乗客有無検出部64A内の推論部68による推定結果に基づいて特定している点以外は、図6に示した工程と同様とすることができる。したがって、以下に説明する処理工程の詳細については、第1の実施の形態において述べたものを適宜援用するものとし、その説明を省略する。
【0096】
具体的には、先ず、運転診断装置10の起動等によってライドシェアサービス提供車両V2によるライドシェアサービスの操業が開始されると、走行データの取得が開始され(工程S11)、その後、あるいはそれと同様のタイミングで、乗客有無検出部64Aによる乗客の有無の推定の開始(工程S12A)と共に、運転評価部62による運転評価の開始(工程S13)がなされる。乗客有無検出部64Aによる乗客の有無の推定は、取得部60で取得される走行データを推論部68内の学習済モデルの入力層に入力することにより実施することができる。
【0097】
ところで、一般に、乗客の車両Vへの乗り降りは、車両Vが一定期間停車状態あるときに行われる。したがって、一定期間の停車状態が生じない限り、車両Vにおける乗客の有無の検出結果は変わらないと考えられる。そこで、乗客有無検出部64Aによる乗客の有無の推定は、一定期間の停車を検出する度に実施するとよい。このように乗客の有無の推定タイミングを設定することにより、推定の際に学習済モデルに入力される走行データとして、ある程度長い期間の走行データを確保することができるようになり、その推定精度を向上させることができる。
【0098】
ライドシェアサービス提供車両V2の運行が開始されると、取得部60による走行データの取得が継続的に実行され、合わせて取得された走行データに基づく運転評価が実施される。そして、通知事象が生じた際には(工程S14でYes)、通知部66による通知事象の通知方法の特定が行われる。具体的には、乗客有無検出部64Aによる推定結果が乗客有であるか否かを確認する(工程S15)。その結果、乗客が乗っていないと推定された場合には、通知部66は、発生した通知事象の内容が明確に理解できる方法で、運転者への通知を実施する(工程S16)。反対に、乗客が乗っていると推定された場合には、通知部66は、発生した通知事象が乗客へ伝わることを避けるために、運転者への通知を行わない(工程S17)。工程S16及びS17が完了すると、運転診断装置10は、工程S14に戻って新たな通知事象の発生を引き続き監視する。
【0099】
以上説明した通り、本実施の形態に係る運転診断装置10Aにおいては、乗客の有無に応じて運転診断結果の通知方法を変更することにより、車内の状況に応じた運転診断の通知を行うことができる。また、上述したように乗客が乗っていないときには運転診断結果が乗客に伝わらないようにすれば、旅客運送サービスの品質低下を抑制しつつ、運転者の運転操作の向上を図ることができる。さらに、推論部68を用いることで乗客の有無を推定することができるため、車両Vに搭載された乗客の有無を直接検出可能な構成要素からの信号や他のアプリケーションの操作情報を利用することなく、且つ運転者に入力操作を要求することなく、運転診断装置単体で一連の運転診断処理を実現できる。これにより、運転診断装置10Aの取付作業や設定作業が簡略化できる。
【0100】
なお、上記実施形態で説明した学習済モデルは、機械学習装置70におけるバッチ学習により学習を行うことで生成される方法を説示しているが、学習のタイミングはこれに限定されない。例えば、上述したバッチ学習を経て生成された学習済モデルに対して、さらにオンライン学習を行うことで、更なる推定精度向上を図ってもよい。その場合には、学習済モデルが実装された運転診断装置の取得部60で取得された走行データと、当該走行データが取得されたときの乗客の有無を示すデータとを一組のオンライン学習用データセットとしてストレージ26等に一時的に格納しておき、任意のタイミングで、推論部68で用いられている学習済モデルの、当該オンライン学習用データセットを用いた機械学習処理を実行すれば良い。なお、オンライン学習用データセットを構成する乗客の有無を示すデータは、運転者による端末装置3に入力、又はサーバ2で収集された運行データに基づいて特定されたデータであってよい。
【0101】
以上、本開示の実施形態に係る運転診断システム1、運転診断装置10、10A、機械学習装置70及び学習済モデルの生成方法について説明したが、これらは、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、加速度センサ46あるいは車速センサ50からの信号に基づいて急加速及び急ブレーキを検知したものを例示したが、これに限定されない。例えば、アクセルペダル及びブレーキペダルから入力された電気信号を取得し、この信号に基づいて急加速及び急ブレーキを検知してもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、評価項目として設定された事象が所定の警告回数に到達した際に通知を行う構成としたが、これに限定されない。例えば、警告回数よりも少ない事前通知回数を別途設定しておき、当該事前通知回数に到達した際には、警告回数に到達した場合とは異なる通知方法(例えばモニタ52への注意喚起表示)で運転者へ通知を行うようにしてもよい。
【0103】
さらに、上記実施形態においては、CPU20がROM22あるいはストレージ26に格納されたプログラムを読み込んで実行した通知処理を、CPU20以外の各種のプロセッサが実行するようにしてもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等を挙げることができる。また、運転評価処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせで実行してもよく、例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア構成は、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路であり得る。
【0104】
さらにまた、上記実施形態では、CPU20により実行される運転診断のためのプログラムが端末装置3内のROM22あるいはストレージ26に予め格納されたものを例示したが、これに限定されない。例えば、端末装置3とは別体の記録メディア、具体的には磁気ディスク(例えばHDD)、光学ディスク(例えばCD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)あるいはフラッシュメモリ(例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ)といった非一時的なコンピュータ読取可能媒体に、運転診断に用いられるプログラムを含む種々のデータを格納しておき、これらを端末装置3に電気的に接続することで当該プログラムが実行可能となるものであってもよい。同様に、運転診断に用いられるプログラムは、アプリケーションの形態でサーバ等からネットワークNWを介して提供されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 運転診断システム
2 サーバ
3 端末装置
10、10A 運転診断装置
60 取得部
62 運転評価部
64、64A 乗客有無検出部
66 通知部
68 推論部
70 機械学習装置
74 学習用データセット取得部
78 学習処理部
V 車両
図1
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図11