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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181872
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】耐震壁
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20231218BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20231218BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
E04H9/02 321B
E04B2/56 605L
E04B2/56 643A
F16F15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095246
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 雄太
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】小野 喜信
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 澄
(72)【発明者】
【氏名】岡田 純一
(72)【発明者】
【氏名】金子 侑樹
(72)【発明者】
【氏名】花井 厚周
【テーマコード(参考)】
2E002
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E002FB07
2E002FB08
2E002FB24
2E002MA12
2E139AA01
2E139AC19
2E139BA06
2E139BD22
3J048AB02
3J048BC08
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】波形鋼板のせん断変形に伴って、波形鋼板の横長孔の周辺部が破損することを抑制することを目的とする。
【解決手段】耐震壁20は、架構10に取り付けられる波形鋼板30と、波形鋼板30と対向する木質面材80Yと、波形鋼板30の上下方向の中央部に形成された丸孔60に挿入され、波形鋼板30と木質面材80Yとを接合する接合ボルト62と、波形鋼板30の上部及び下部にそれぞれ形成された横長孔50に挿入され、波形鋼板30と木質面材80Yとを波形鋼板30の横幅方向に相対移動可能に連結する複数の連結ボルト52と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架構に取り付けられる波形鋼板と、
前記波形鋼板と対向する補剛面材と、
前記波形鋼板の上下方向の中央部に形成された丸孔に挿入され、前記波形鋼板と前記補剛面材とを接合する中央接合部材と、
前記波形鋼板の上部及び下部にそれぞれ形成された横長孔に挿入され、前記波形鋼板と前記補剛面材とを前記波形鋼板の横幅方向に相対移動可能に連結する複数の連結部材と、
を備える耐震壁。
【請求項2】
前記波形鋼板における前記横長孔の周辺部に設けられる補強部材を備える、
請求項1に記載の耐震壁。
【請求項3】
前記補剛面材は、木質面材である、
請求項1又は請求項2に記載の耐震壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震壁に関する。
【背景技術】
【0002】
架構に取り付けられる波形鋼板と、波形鋼板と対向して配置され、波形鋼板とボルト接合される仕上げ材とを備える耐震壁が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された耐震壁では、波形鋼板に形成された横長孔にボルトが挿入されている。これにより、地震時における波形鋼板のせん断変形に、仕上げ材が追従して破損等することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-249917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、波形鋼板に横長孔を形成すると、波形鋼板のせん断変形に伴って、波形鋼板の横長孔の周辺部が破損する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、波形鋼板のせん断変形に伴って、波形鋼板の横長孔の周辺部が破損することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の耐震壁は、架構に取り付けられる波形鋼板と、前記波形鋼板と対向する補剛面材と、前記波形鋼板の上下方向の中央部に形成された丸孔に挿入され、前記波形鋼板と前記補剛面材とを接合する中央接合部材と、前記波形鋼板の上部及び下部にそれぞれ形成された横長孔に挿入され、前記波形鋼板と前記補剛面材とを前記波形鋼板の横幅方向に相対移動可能に連結する複数の連結部材と、を備える。
【0008】
請求項1に係る耐震壁によれば、架構には、波形鋼板が取り付けられる。この波形鋼板には、補剛面材が対向される。また、波形鋼板の上下方向の中央部には、丸孔が形成される。この丸孔に挿入された中央接合部材によって、波形鋼板と補剛面材とが接合される。
【0009】
また、波形鋼板の上部及び下部には、横長孔がそれぞれ形成される。これらの横長孔にそれぞれ挿入された複数の連結部材によって、波形鋼板と補剛面材とが波形鋼板の横幅方向に相対移動可能に連結される。この補剛面材によって波形鋼板の面外方向の変形が制限されるため、地震時における波形鋼板の座屈が抑制される。
【0010】
ここで、地震時に、波形鋼板がせん断変形すると、波形鋼板の上部及び下部にそれぞれ形成された横長孔に沿って連結部材が移動する。これにより、連結部材と横長孔の周辺部との干渉が抑制されるため、補剛面材の破損が抑制される。
【0011】
一方、中央接合部材は、波形鋼板の上下方向の中央部に形成された丸孔に挿入される。これにより、波形鋼板のせん断変形に伴って、波形鋼板の上下方向の中央部が横幅方向へ移動すると、中央接合部材と共に補剛面材が波形鋼板の横幅方向へ移動する。
【0012】
この結果、波形鋼板の上部及び下部と補剛面材との横幅方向の相対移動量が小さくなるため、波形鋼板の上部及び下部にそれぞれ形成する横長孔の必要長さを短くすることができる。
【0013】
請求項2に記載の耐震壁は、請求項1に記載の耐震壁において、前記波形鋼板における前記横長孔の周辺部に設けられる補強部材を備える。
【0014】
請求項2に係る耐震壁によれば、波形鋼板における横長孔の周辺部には、補強部材が設けられる。これにより、波形鋼板のせん断変形に伴って、波形鋼板の横長孔の周辺部の破損が抑制される。
【0015】
請求項3に記載の耐震壁は、請求項1又は請求項2に記載の耐震壁において、前記補剛面材は、木質面材である。
【0016】
請求項3に係る耐震壁によれば、補剛面材は、木質面材とされる。この木質面材によって波形鋼板の表面を覆うことにより、耐震壁の意匠性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、波形鋼板のせん断変形に伴って、波形鋼板の横長孔の周辺部が破損することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る耐震壁が設けられた架構を示す立面図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3図1に示される耐震壁から一対の木質面材を取り外した状態を示す立面図である。
図4図2の一部拡大断面図である。
図5図4に示される波形鋼板及び一対の木質面材の分割断面図である。
図6図3の一部拡大立面図である。
図7】(A)は、本実施形態に係る耐震壁のせん断変形状態を示す模式図であり、(B)は、比較例に係る耐震壁のせん断変形状態を示す模式図である。
図8】一実施形態に係る耐震壁の変形例を示す図4に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る耐震壁について説明する。
【0020】
図1には、本実施形態に係る耐震壁20が示されている。耐震壁20は、波形鋼板30と、一対の木質面材80X,80Yとを有している。波形鋼板30は、架構10に取り付けられている。
【0021】
なお、各図に示される矢印Hは、耐震壁20の上下方向(高さ方向)を示し、矢印Wは、耐震壁20の横幅方向を示している。また、矢印Tは、耐震壁20(波形鋼板30)の面外方向を示している。
【0022】
(架構)
架構10は、一対の柱12と、一対の柱12に架設された上下の梁14とを有するラーメン架構とされている。一対の柱12は、角形鋼管によって形成された鉄骨柱とされており、間隔を空けて立てられている。また、上下の梁14は、H形鋼によって形成された鉄骨梁とされており、上下方向に間隔を空けた状態で一対の柱12に架設されている。
【0023】
なお、一対の柱12及び上下の梁14は、鉄骨造に限らず、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造等でも良い。
【0024】
(波形鋼板)
図2に示されるように、波形鋼板30の断面(縦断面)形状は、波形形状とされている。また、図3に示されるように、波形鋼板30は、その折り筋を横にした状態で、架構10内に配置されている。この波形鋼板30の外周部には、一対の縦フランジ32及び一対の横フランジ34が設けられている。一対の縦フランジ32及び一対の横フランジ34は、枠状に接合されており、波形鋼板30を取り囲んでいる。
【0025】
一対の縦フランジ32は、波形鋼板30の左右の端部に沿って設けられており、当該端部に溶接等によって接合されている。この一対の縦フランジ32は、一対の柱12に溶接や図示しないボルト等によってそれぞれ接合されている。
【0026】
一対の横フランジ34は、波形鋼板30の上下の端部に沿って設けられており、当該端部に溶接等によって接合されている。この一対の横フランジ34には、接合プレート36がそれぞれ設けられている。接合プレート36は、上下の梁14に設けられた接合プレート38にボルトや溶接等によって接合されている。
【0027】
(木質面材)
図2に示されるように、一対の木質面材80X,80Yは、波形鋼板30の面外方向(矢印T方向)の両側に配置されている。また、一対の木質面材80X,80Yは、スペーサ16を介して、波形鋼板30の下側の横フランジ34の上に載置されている。なお、スペーサ16は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0028】
一対の木質面材80X,80Yは、CLT(Cross Laminated Timber)によって形成されており、波形鋼板30を挟んで互いに対向している。各木質面材80X,80Yは、面外方向から見て、矩形状に形成されるとともに、波形鋼板30よりも若干小さいサイズとされている。なお、波形鋼板30の大きさは、適宜変更可能である。
【0029】
なお、一対の木質面材80X,80Yは、CLTに限らず、例えば、LVL(Laminated Veneer Lumber)や、集成材、合板等によって形成されても良い。また、木質面材80X,80Yは、補剛面材の一例である。
【0030】
図4に示されるように、一対の木質面材80X,80Yは、波形鋼板30の両側の表面に重ねられ、複数の連結ボルト52によって連結されている。この一対の木質面材80X,80Yの上部と波形鋼板30の上部とは、波形鋼板30の横幅方向に相対移動可能に連結されている。また、一対の木質面材80X,80Yの下部と波形鋼板30の下部とは、波形鋼板30の横幅方向に相対移動可能に連結されている。
【0031】
なお、波形鋼板30の上部は、後述する波形鋼板30の上下方向の中央部(中央谷部42M)よりも上側の部位を意味し、波形鋼板30の下部は、当該中央部(中央谷部42M)よりも下側の部位を意味する。
【0032】
また、波形鋼板30及び一対の木質面材80X,80Yの上部同士の連結構造は、波形鋼板30及び一対の木質面材80X,80Yの下部同士の連結構造と同様である。そのため、以下では、波形鋼板30及び一対の木質面材80X,80Yの上部同士の連結構造について説明し、波形鋼板30及び一対の木質面材80X,80Yの下部同士の連結構造について説明を省略する。
【0033】
図4に示されるように、波形鋼板30は、縦断面視にて、複数の山部40と谷部42とが交互に繰り返す波形形状とされている。複数の山部40は、上下方向に延びる頂面部40Aを有している。これらの頂面部40Aには、一方の木質面材80Xの内面80Sが重ねられている。
【0034】
複数の谷部42は、上下方向に延びる底面部42Aを有している。これらの底面部42Aには、他方の木質面材80Yの内面80Sが重ねられている。また、隣り合う頂面部40A及び底面部42Aは、斜面部44を介して接続されている。斜面部44は、頂面部40A及び底面部42Aに対して傾斜している。なお、隣り合う山部40及び谷部42は、斜面部44を共有している。
【0035】
波形鋼板30及び一方の木質面材80Xの上部同士は、次のように連結されている。図3及び図6に示されるように、波形鋼板30の上部において、各山部40の頂面部40Aには、2つの横長孔50が形成されている。2つの横長孔50は、波形鋼板30の横幅方向の間隔を空けて配置されている。各横長孔50は、頂面部40Aを厚み方向に貫通する貫通孔とされている。
【0036】
なお、横長孔50の数や配置は、適宜変更可能である。
【0037】
横長孔50は、波形鋼板30の横幅方向に延びる長孔(スロット孔)とされている。また、横長孔50の周辺部には、補強プレート70が設けられている。補強プレート70は、鋼板等によって形成されており、頂面部40Aの裏面(木質面材80Xと反対側の面)に取り付けられている。
【0038】
補強プレート70には、横長孔72が形成されている。横長孔72は、横長孔50と同様の形状及び大きさとされている。この補強プレート70は、横長孔72及び横長孔50が一致するように、山部40の頂面部40Aの裏面に重ねられた状態で、溶接等によって接合されている。
【0039】
図4及び図5に示されるように、頂面部40A及び補強プレート70の横長孔50,72には、他方の木質面材80Y側から座金54を介して連結ボルト52をそれぞれ挿入されている。図6に示されるように、連結ボルト52は、横長孔50,72に沿って波形鋼板30の横幅方向に移動可能とされている。
【0040】
なお、連結ボルト52は、連結部材の一例である。
【0041】
図4及び図5に示されるように、頂面部40A及び補強プレート70の横長孔50,72に挿入された連結ボルト52は、一方の木質面材80Xの上部に設けられたラグスクリューボルト82の一端側に捻じ込まれている。ラグスクリューボルト82は、一方の木質面材80Xの内面80Sに形成された図示しない下穴に捻じ込まれている。
【0042】
ラグスクリューボルト82は、その一端部が一方の木質面材80Xの内面80Sから突出しないように、当該木質面材80Xに捻じ込まれている。また、ラグスクリューボルト82の一端部には、図示しないボルト孔が形成されている。このボルト孔に、山部40の頂面部40Aに形成された横長孔50を介して連結ボルト52を捻じ込まれている。
【0043】
これにより、一方の木質面材80Xの内面80Sが、山部40の頂面部40Aの表面に重ねられた状態(接触した状態)で、一方の木質面材80X及び波形鋼板30の上部同士が、波形鋼板30の横幅方向に相対移動可能に連結されている。
【0044】
なお、補強プレート70は、山部40の頂面部40Aの裏面に限らず、山部40の頂面部40Aの表面に取り付けても良い。この場合、一方の木質面材80Xの内面80Sは、補強プレート70を介して、山部40の頂面部40Aの表面に重ねられる。また、補強プレート70は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0045】
次に、他方の木質面材80Y及び波形鋼板30の上部同士は、次のように連結されている。図3及び図6に示されるように、波形鋼板30の上部において、各谷部42の底面部42Aには、2つの横長孔50が形成されている。なお、横長孔50の数や配置は、適宜変更可能である。
【0046】
また、横長孔50の周辺部には、補強プレート70が設けられている。補強プレート70は、横長孔72及び横長孔50が一致するように、谷部42の底面部42Aの裏面(木質面材80Yと反対側の面)に重ねられた状態で溶接等によって接合されている。
【0047】
図4及び図5に示されるように、底面部42A及び補強プレート70の横長孔50,72には、一方の木質面材80X側から連結ボルト52がそれぞれ挿入されている。連結ボルト52は、図6に示されるように、横長孔50,72に沿って波形鋼板30の横幅方向に移動可能とされている。
【0048】
なお、一方の木質面材80Xにおいて、谷部42の横長孔50と対向する部位には、作業孔84がそれぞれ形成されている。これらの作業孔84から、底面部42Aの横長孔50に連結ボルト52が挿入可能とされている。また、作業孔84は、例えば、木栓86によって塞がれる。なお、木栓86は、省略可能である。また、作業孔84は、円形状に限らず、横長孔でも良い。
【0049】
図4及び図5に示されるように、底面部42A及び補強プレート70の横長孔50,72に挿入された連結ボルト52は、他方の木質面材80Yの上部に設けられたラグスクリューボルト82の一端側に捻じ込まれている。これにより、他方の木質面材80Yの内面80Sが、谷部42の底面部42Aの表面に重ねられた状態(接触した状態)で、他方の木質面材80Y及び波形鋼板30の上部同士が、波形鋼板30の横幅方向に相対移動可能に連結されている。
【0050】
なお、補強プレート70は、谷部42の底面部42Aの裏面に限らず、谷部42の底面部42Aの表面に取り付けても良い。この場合、他方の木質面材80Yの内面80Sは、補強プレート70を介して、谷部42の底面部42Aの表面に重ねられる。また、この場合、後述する中央谷部42Mの底面部42Aの表面にも、補強プレート70と同様の厚みのスペーサを設けても良い。また、補強プレート70は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0051】
ここで、波形鋼板30の上下方向の中央部と、他方の木質面材80Yの上下方向の中央部とは、複数の接合ボルト62によって接合(固定)されている。具体的には、図3及び図6に示されるように、波形鋼板30の上下方向の中央部に位置する谷部(以下、「中央谷部42M」という)の底面部42Aには、2つの丸孔60が形成されている。2つの丸孔60は、波形鋼板30の横幅方向の間隔を空けて配置されている。
【0052】
なお、波形鋼板30の上下方向の中央部とは、例えば、波形鋼板30を上下方向に5等分した場合の中央部分を意味する。この波形鋼板30の上下方向の中央部は、山部40でも良いし、谷部42Mでも良い。また、丸孔60の数や配置は、適宜変更可能である。
【0053】
各丸孔60は、中央谷部42Mの底面部42Aを厚み方向の貫通する円形状の貫通孔とされている。また、各丸孔60は、波形鋼板30の上下方向の中央に位置している。図4及び図5に示されるように、丸孔60には、一方の木質面材80X側から、座金64を介して接合ボルト62が挿入されている。なお、接合ボルト62は、中央接合部材の一例である。
【0054】
丸孔60に挿入された接合ボルト62は、他方の木質面材80Yの上下方向の中央部に設けられたラグスクリューボルト82の一端側に捻じ込まれている。これにより、他方の木質面材80Yの内面80Sが、中央谷部42Mの底面部42Aに重ねられた状態(接触した状態)で、他方の木質面材80Y及び波形鋼板30の上下方向の中央部同士が接合(固定)されている。
【0055】
なお、一方の木質面材80Xにおいて、中央谷部42Mの丸孔60と対向する部位には、作業孔84がそれぞれ形成されている。これらの作業孔84から、中央谷部42Mの丸孔60に接合ボルト62が挿入可能とされている。
【0056】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0057】
図2に示されるように、本実施形態によれば、架構10には、波形鋼板30が取り付けられている。波形鋼板30の面外方向の両側には、一対の木質面材80X,80Yが配置されている。一対の木質面材80X,80Yは、波形鋼板30と対向して配置されている。
【0058】
図4に示されるように、波形鋼板30の上下方向の中央部には、丸孔60が形成されている。具体的には、波形鋼板30の中央部に位置する中央谷部42Mの底面部42Aに、丸孔60が形成されている。この丸孔60に挿入された接合ボルト62によって、波形鋼板30及び他方の木質面材80Yの中央部同士が接合(固定)されている。
【0059】
また、波形鋼板30の上部には、複数の横長孔50が形成されている。具体的には、波形鋼板30の上部において、山部40の頂面部40A及び谷部42の底面部42Aには、横長孔50がそれぞれ形成されている。これらの横長孔50にそれぞれ挿入された連結ボルト52を一対の木質面材80X,80Yに設けられたラグスクリューボルト82に捻じ込むことにより、波形鋼板30及び一対の木質面材80X,80Yの上部同士が、波形鋼板30の横幅方向に相対移動可能に連結される。
【0060】
これと同様に、波形鋼板30の下部には、複数の横長孔50が形成されている。具体的には、波形鋼板30の下部において、山部40の頂面部40A及び谷部42の底面部42Aには、横長孔50がそれぞれ形成されている。これらの横長孔50にそれぞれ挿入された連結ボルト52を一対の木質面材80X,80Yに設けられたラグスクリューボルト82に捻じ込むことにより、波形鋼板30及び一対の木質面材80X,80Yの下部同士が、波形鋼板30の横幅方向に相対移動可能に連結される。
【0061】
このように一対の木質面材80X,80Yを波形鋼板30に取り付けることにより、波形鋼板30の面外方向の変形が制限される。したがって、地震時における波形鋼板30の座屈が抑制される。
【0062】
また、地震時に、波形鋼板30がせん断変形すると、波形鋼板30の上部及び下部にそれぞれ形成された横長孔50に沿って連結ボルト52が移動する。これにより、連結ボルト52と横長孔50の周辺部との干渉が抑制されるため、一対の木質面材80X,80Yの破損が抑制される。
【0063】
ここで、図7(B)には、比較例に係る耐震壁100が示されている。比較例に係る耐震壁100では、波形鋼板30及び他方の木質面材80Yの中央部同士が接合されていない。この場合、波形鋼板30のせん断変形に他方の木質面材80Yが追従せず、波形鋼板30及び他方の木質面材80Yの上部同士の相対移動量D1が大きくなる。したがって、波形鋼板30の上部に形成する横長孔50(図6参照)の必要長さが長くなるため、当該波形鋼板30のせん断耐力が低下する。
【0064】
これに対して本実施形態では、接合ボルト62によって、波形鋼板30及び他方の木質面材80Yの中央部同士が接合されている。これにより、図7(A)に示されるように、波形鋼板30のせん断変形に伴って、波形鋼板30の中央部が横幅方向へ移動すると、二点鎖線で示されるように、接合ボルト62と共に他方の木質面材80Yが波形鋼板30の横幅方向へ移動する。
【0065】
この結果、波形鋼板30及び他方の木質面材80Yの上部同士の横幅方向の相対移動量D2が小さくなるため(D2<D1)、波形鋼板30の上部に形成する横長孔50(図6参照)の必要長さを短くすることができる。これと同様に、波形鋼板30及び他方の木質面材80Yの下部同士の横幅方向の相対移動量D2が小さくなるため(D2<D1)、波形鋼板30の上部に形成する横長孔50(図6参照)の必要長さを短くすることができる。
【0066】
したがって、波形鋼板30のせん断変形に伴って、波形鋼板30のせん断耐力の低下を抑制することができる。
【0067】
また、波形鋼板30の横長孔50の周辺部には、補強プレート70が設けられている。これにより、波形鋼板30のせん断変形に伴って、波形鋼板30の横長孔50の周辺部の破損が抑制される。
【0068】
さらに、一対の木質面材80X,80Yによって波形鋼板30の両側の表面を覆うことにより、耐震壁20の意匠性が向上する。
【0069】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0070】
上記実施形態では、波形鋼板30及び他方の木質面材80Yの上下方向の中央部同士が、接合ボルト62によって接合(固定)されている。しかし、波形鋼板30及び他方の木質面材80Yの上下方向の中央部同士だけでなく、波形鋼板30及び一対の木質面材80X,80Yの上下方向の中央部同士を接合(固定)しても良い。
【0071】
また、上記実施形態では、波形鋼板30に一対の木質面材80X,80Yが取り付けられている。しかし、例えば、図8に示される変形例のように、波形鋼板30の片側にのみ木質面材80Yを取り付けても良い。この場合、例えば、波形鋼板30に対する木質面材80Yと反対側には、補剛部材90を取り付けても良い。
【0072】
補剛部材90は、例えば、L形鋼等によって形成されている。また、補剛部材90は、上下方向に沿って配置されており、波形鋼板30の表面に突き当てられた状態で、溶接や図示しないボルト等に接合されている。この補剛部材90によっても、波形鋼板30の座屈を抑制することができる。なお、補剛部材90は、適宜省略可能である。
【0073】
また、上記実施形態では、連結部材が、連結ボルト52とされている。しかし、連結部材は、連結ボルト52に限らず、例えば、スタッドボルト及びナットや、ビス等でも良い。
【0074】
これと同様に、上記実施形態では、中央接合部材が、接合ボルト62とされている。しかし、中央接合部材は、接合ボルト62に限らず、例えば、スタッドボルト及びナットや、ビス等でも良い。
【0075】
また、上記実施形態では、一対の木質面材80X,80Yに、接合ボルト62又は連結ボルト52が捻じ込まれるラグスクリューボルト82が設けられている。しかし、一対の木質面材80X,80Yの接合部又は連結部の構成は、ラグスクリューボルト82に限らず、中央接合部材及び連結部材の構成に応じて、適宜変更可能である。
【0076】
また、上記実施形態では、補剛面材が木質面材80X,80Yとされている。しかし、補剛面材は、木質面材80X,80Yに限らず、例えば、耐火ボード(耐火面材)等でも良い。また、補剛面材としては、例えば、コンクリート板や、鋼繊維補強コンクリート(SFRC)板、ガラス繊維補強コンクリート(GRC)板、石膏ボード、ALCパネル等が挙がられる。
【0077】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
10 架構
20 耐震壁
30 波形鋼板
50 横長孔
52 連結ボルト(連結部材)
60 丸孔
62 接合ボルト(中央接合部材)
70 補強プレート(補強部材)
80X 木質面材(補剛面材)
80Y 木質面材(補剛面材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8