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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181873
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】柱梁接合構造、及び屋根架構
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20231218BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20231218BHJP
   E04B 7/02 20060101ALI20231218BHJP
   E04B 5/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/58 507P
E04B7/02 501Z
E04B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095247
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西牧 誠
(72)【発明者】
【氏名】中根 一臣
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB01
2E125AC01
2E125AC15
2E125AG03
2E125AG04
2E125BB01
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との間で引張力を伝達可能にしつつ、断面積が小さい鉄筋コンクリート柱に適用可能な柱梁接合構造を提供することを目的とする。
【解決手段】柱梁接合構造は、複数の柱主筋32と、複数の柱主筋32を取り囲む複数のせん断補強筋34と、を有する鉄筋コンクリート柱30と、鉄筋コンクリート柱30の上面に設けられるベースプレート52と、ベースプレート52に接合される屋根梁70と、上端部がベースプレート52の下面に接合されるとともに、下面からせん断補強筋34の内側へ延出し、柱主筋32と重ね継手される定着鉄筋60と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の柱主筋と、複数の前記柱主筋を取り囲む複数のせん断補強筋と、を有する鉄筋コンクリート柱と、
前記鉄筋コンクリート柱の上面に設けられるベースプレートと、
前記ベースプレートに接合される鉄骨梁と、
上端部が前記ベースプレートの下面に接合されるとともに、該下面から前記せん断補強筋の内側へ延出し、前記柱主筋と重ね継手される定着鉄筋と、
を備える柱梁接合構造。
【請求項2】
前記定着鉄筋は、前記柱主筋に対して前記鉄筋コンクリート柱の中心軸側に配置され、該柱主筋とあき重ね継手される、
請求項1に記載の柱梁接合構造。
【請求項3】
複数の柱主筋と、複数の前記柱主筋を取り囲む複数のせん断補強筋と、を有する鉄筋コンクリート柱と、
前記鉄筋コンクリート柱の上面に設けられるベースプレートと、
前記ベースプレートに接合される鉄骨梁と、
を備え、
前記柱主筋の上端部は、前記ベースプレートの下面に接合される、
柱梁接合構造。
【請求項4】
前記鉄骨梁は、一端側が前記鉄筋コンクリート柱から跳ね出し、該鉄筋コンクリート柱に片持ち支持される屋根梁とされる、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の柱梁接合構造。
【請求項5】
所定方向に配列されるとともに、請求項4に記載の柱梁接合構造が適用された複数の前記鉄筋コンクリート柱及び複数の前記屋根梁と、
前記屋根梁の他端側を支持する支持体と、
を備える屋根架構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁接合構造、及び屋根架構に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁との柱梁接合構造が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、片持ちの屋根梁を備える屋根架構が知られている(例えば、特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-046704号公報
【特許文献2】特開2007-023495号公報
【特許文献3】特開2020-007800号公報
【特許文献4】特開2010-116754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された柱梁接合構造では、鉄筋コンクリート柱の上面に固定されたベースプレートに、鉄骨梁の下端部が接合されている。ベースプレートの下面には、複数のスタッドが設けられている。これらのスタッドを鉄筋コンクリート柱の柱頭部に埋設することにより、ベースプレートが、鉄筋コンクリート柱の上面に固定されている。
【0006】
ここで、特許文献1に開示された柱梁接合構造において、鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との間で引張力を伝達する場合、スタッドの必要本数が多くなるため、断面積が小さい鉄筋コンクリート柱に適用し難い点で、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との間で引張力を伝達可能にしつつ、断面積が小さい鉄筋コンクリート柱に適用可能な柱梁接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の柱梁接合構造は、複数の柱主筋と、複数の前記柱主筋を取り囲む複数のせん断補強筋と、を有する鉄筋コンクリート柱と、前記鉄筋コンクリート柱の上面に設けられるベースプレートと、前記ベースプレートに接合される鉄骨梁と、上端部が前記ベースプレートの下面に接合されるとともに、該下面から前記せん断補強筋の内側へ延出し、前記柱主筋と重ね継手される定着鉄筋と、を備える。
【0009】
請求項1に係る柱梁接合構造によれば、鉄筋コンクリート柱は、複数の柱主筋と、複数の柱主筋を取り囲む複数のせん断補強筋とを有する。鉄筋コンクリート柱の上面には、ベースプレートが設けられる。ベースプレートには、鉄骨梁が接合される。
【0010】
ベースプレートの下面には、定着鉄筋の上端部が接合される。定着鉄筋は、ベースプレートの下面からせん断補強筋の内側へ延出し、柱主筋と重ね継手される。これにより、鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との接合部に作用する引張力が、ベースプレートから定着鉄筋を介して鉄筋コンクリート柱の柱主筋に伝達される。したがって、本発明では、ベースプレートの下面に設けられたスタッドを鉄筋コンクリート柱の柱頭部に埋設する構成と比較して、定着鉄筋の必要本数が低減される。
【0011】
このように本発明に係る柱梁接合構造は、鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との間で引張力を伝達可能にしつつ、断面積が小さい鉄筋コンクリート柱に適用することができる。
【0012】
請求項2に記載の柱梁接合構造は、請求項1に記載の柱梁接合構造において、前記定着鉄筋は、前記柱主筋に対して前記鉄筋コンクリート柱の中心軸側に配置され、該柱主筋とあき重ね継手される。
【0013】
請求項2に係る柱梁接合構造によれば、定着鉄筋は、柱主筋に対して鉄筋コンクリート柱の中心軸側に配置され、柱主筋とあき重ね継手される。これにより、定着鉄筋の配筋時に、定着鉄筋がせん断補強筋及び柱主筋と干渉し難くなるため、定着鉄筋の施工性が向上する。
【0014】
このように本発明では、鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との間で引張力を伝達可能にしつつ、定着鉄筋の施工性を向上することができる。
【0015】
請求項3に記載の柱梁接合構造は、複数の柱主筋と、複数の前記柱主筋を取り囲む複数のせん断補強筋と、を有する鉄筋コンクリート柱と、前記鉄筋コンクリート柱の上面に設けられるベースプレートと、前記ベースプレートに接合される鉄骨梁と、を備え、前記柱主筋の上端部は、前記ベースプレートの下面に接合される。
【0016】
請求項3に係る柱梁接合構造によれば、鉄筋コンクリート柱は、複数の柱主筋と、複数の柱主筋を取り囲む複数のせん断補強筋とを有する。鉄筋コンクリート柱の上面には、ベースプレートが設けられる。ベースプレートには、鉄骨梁が接合される。
【0017】
ベースプレートの下面には、柱主筋の上端部が接合される。これにより、鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との接合部に作用する引張力が、ベースプレートから鉄筋コンクリート柱の柱主筋に伝達される。したがって、本発明は、例えば、ベースプレートの下面に設けられたスタッドを鉄筋コンクリート柱の柱頭部に埋設する必要がないため、断面積が小さい鉄筋コンクリート柱に適用することができる。
【0018】
このように本発明に係る柱梁接合構造は、鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との間で引張力を伝達可能にしつつ、断面積が小さい鉄筋コンクリート柱に適用することができる。
【0019】
請求項4に記載の柱梁接合構造は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の柱梁接合構造において、前記鉄骨梁は、一端側が前記鉄筋コンクリート柱から跳ね出し、該鉄筋コンクリート柱に片持ち支持される屋根梁とされる。
【0020】
請求項4に係る柱梁接合構造によれば、鉄骨梁は、一端側が鉄筋コンクリート柱から跳ね出し、鉄筋コンクリート柱に片持ち支持される屋根梁とされる。
【0021】
ここで、屋根梁の一端側には、風の吹き上げ荷重や地震荷重等が作用する。この吹き上げ荷重等によって、屋根梁と鉄筋コンクリート柱との接合部に引張力が作用する。この引張力は、ベースプレートから定着鉄筋を介して柱主筋に伝達され、又はベースプレートから柱主筋に直接伝達される。
【0022】
このように本発明は、一端側に風の吹き上げ荷重等が作用する屋根梁を支持するとともに、断面積が小さい鉄筋コンクリート柱に適用することができる。
【0023】
請求項5に記載の屋根架構は、所定方向に配列されるとともに、請求項4に記載の柱梁接合構造が適用された複数の前記鉄筋コンクリート柱及び複数の前記屋根梁と、前記屋根梁の他端側を支持する支持体と、を備える。
【0024】
請求項5に係る柱梁接合構造によれば、請求項4に記載の柱梁接合構造が適用された複数の鉄筋コンクリート柱及び複数の屋根梁を備える。これらの鉄筋コンクリート柱及び複数の屋根梁は、所定方向に配列される。
【0025】
ここで、屋根梁の他端側は、支持体によって支持される。これにより、屋根梁の一端側に作用する吹き上げ荷重や、吹き下げ荷重、地震荷重等に対して、支持体が抵抗する。したがって、屋根梁の風揺れ等が低減される。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、鉄骨梁と鉄筋コンクリート柱との間で引張力を伝達可能にしつつ、断面積が小さい鉄筋コンクリート柱に適用可能な柱梁接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態に係る柱梁接合構造が適用された屋根架構を示す立面図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3図2の3-3線断面図である。
図4図1に示される鉄筋コンクリート壁を示す縦断面図である。
図5図4の5-5線断面図である。
図6図1の6-6線断面図である。
図7図6の7-7線断面図である。
図8】一実施形態に係る柱梁接合構造の変形例を示す図3に対応する断面図である。
図9】一実施形態に係る柱梁接合構造の変形例を示す図7に対応する断面図である。
図10】一実施形態に係る柱梁接合構造の変形例を示す図7に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、一実施形態について説明する。
【0029】
(屋根架構)
図1には、本実施形態に係る柱梁接合構造が適用された屋根架構20が示されている。屋根架構20は、例えば、屋根付き通路10を構成している。具体的には、屋根架構20は、通路(屋根)12の長手方向(図1の紙面と直交する方向)に間隔を空けて複数設けられ、当該通路12を覆う図示しない屋根材を支持している。
【0030】
屋根架構20は、複数の鉄筋コンクリート柱30と、鉄筋コンクリート壁40と、複数の屋根梁70とを備えている。この鉄筋コンクリート柱30及び屋根梁70に、本実施形態に係る柱梁接合構造が適用されている。
【0031】
なお、鉄筋コンクリート壁40は、支持体の一例である。また、屋根梁70は、鉄骨梁の一例である。
【0032】
(鉄筋コンクリート柱)
鉄筋コンクリート柱30は、通路(屋根)12の幅方向の中央寄りに立てられている。また、鉄筋コンクリート柱30は、通路(屋根)12の長手方向に間隔を空けて配列されている。この鉄筋コンクリート柱30は、例えば、柱幅が200~250[mm]のように、断面積が小さい細柱とされている。
【0033】
図2に示されるように、鉄筋コンクリート柱30の断面形状は、例えば、八角形状とされている。また、図2及び図3に示されるように、鉄筋コンクリート柱30は、鉄筋コンクリート造とされている。この鉄筋コンクリート柱30の内部には、複数の柱主筋32と、複数のせん断補強筋34が埋設されている。
【0034】
なお、鉄筋コンクリート柱30の断面形状は、八角形状に限らず、例えば、矩形状や円形状でも良い。また、鉄筋コンクリート柱30は、プレキャストコンクリート造でも良いし、現場打ちコンクリート造でも良い。
【0035】
図3に示されるように、複数の柱主筋32は、鉄筋コンクリート柱30の材軸方向に沿って配置されており、鉄筋コンクリート柱30の柱脚部から柱頭部に渡っている。また、複数の柱主筋32は、鉄筋コンクリート柱30の外周部に、当該鉄筋コンクリート柱30の周方向に間隔を空けて配置されている。これらの柱主筋32の周囲には、複数のせん断補強筋34が配置されている。
【0036】
複数のせん断補強筋34は、平面視にて枠状に形成されており、複数の柱主筋32を取り囲んでいる。これらのせん断補強筋34は、鉄筋コンクリート柱30の柱脚部から柱頭部に亘って、鉄筋コンクリート柱30の材軸方向に間隔を空けて配置されている。図1に示されるように、鉄筋コンクリート柱30の柱頭部には、本実施形態に係る柱梁接合構造が適用されており、後述するブラケット50を介して屋根梁70が接合されている。
【0037】
(鉄筋コンクリート壁)
鉄筋コンクリート壁40は、通路(屋根)12の幅方向の一端側に配置されている。また、鉄筋コンクリート壁40は、通路12の長手方向に沿って配置されており、複数の鉄筋コンクリート柱30と対向している。
【0038】
図4及び図5に示されるように、鉄筋コンクリート壁40は、鉄筋コンクリート造とされている。この鉄筋コンクリート壁40における厚み方向の両側には、格子状に組み立てられた複数の縦壁筋及び複数の横壁筋44が埋設されている。
【0039】
複数の縦壁筋42は、鉄筋コンクリート壁40の高さ方向(上下方向)に沿って配置されており、鉄筋コンクリート壁40の下端部から上端部に亘っている。また、複数の縦壁筋42は、鉄筋コンクリート壁40の幅方向に間隔を空けて配置されている。
【0040】
一方、複数の横壁筋44は、鉄筋コンクリート壁40の幅方向に沿って配置されており、鉄筋コンクリート壁40の幅方向の一端側から他端側に亘っている。また、複数の縦壁筋42は、鉄筋コンクリート壁40の高さ方向の間隔を空けて配置されている。図1に示されるように、鉄筋コンクリート壁40の上端部には、ブラケット50を介して屋根梁70が接合されている。
【0041】
なお、鉄筋コンクリート壁40は、プレキャストコンクリート造でも良いし、現場打ちコンクリート造でも良い。
【0042】
(柱梁接合構造)
ブラケット50は、鉄筋コンクリート柱30の柱頭部、及び鉄筋コンクリート壁40の上端部にそれぞれ設けられている。
【0043】
なお、鉄筋コンクリート柱30に設けられたブラケット50と、鉄筋コンクリート壁40に設けられたブラケット50は、同様の構成とされている。そのため、以下では、鉄筋コンクリート柱30の柱頭部に設けられたブラケット50の構成について説明し、鉄筋コンクリート壁40に設けられたブラケット50の構成の説明は、適宜省略する。
【0044】
図6及び図7に示されるように、ブラケット50は、ベースプレート52、接合プレート54、及びリブプレート56を有している。ベースプレート52は、例えば、平面視にて、矩形状の鋼板等によって形成されている。このベースプレート52は、鉄筋コンクリート柱30の上面に重ねられた状態で、鉄筋コンクリート柱30に固定されている。
【0045】
具体的には、図3に示されるように、ベースプレート52の下面には、複数の定着鉄筋60が取り付けられている。複数の定着鉄筋60は、鉄筋コンクリート柱30の材軸方向に沿って配置されている。また、複数の定着鉄筋60の上端部は、ベースプレート52の下面に溶接等によって接合されている。これらの定着鉄筋60は、ベースプレート52から複数のせん断補強筋34の内側に延出し、複数の柱主筋32とあき重ね継手によって接続されている。
【0046】
定着鉄筋60は、柱主筋32に沿って配置されている。これにより、所定の継手長さLが確保されている。また、図2に示されるように、定着鉄筋60は、柱主筋32に対して鉄筋コンクリート柱30の中心軸C側に、所定の間隔(あき)Gを空けて配置されている。なお、継手長さL、及び間隔Gは、適宜設定される。
【0047】
なお、図4及び図5に示されるように、鉄筋コンクリート壁40では、定着鉄筋60は、ベースプレート52の下面から、鉄筋コンクリート壁40の厚み方向の両側に埋設された横壁筋44の間に延出し、縦壁筋42とあき重ね継手によって接続される。
【0048】
図7に示されるように、ベースプレート52の上面には、接合プレート54及びリブプレート56が設けられている。接合プレート54及びリブプレート56は、鋼板等によって形成されており、平面視にてT字形状に接合されている。また、接合プレート54及びリブプレート56の下端部は、ベースプレート52の上面に突き当てられた状態で溶接等によって接合されている。
【0049】
接合プレート54及びリブプレート56は、ベースプレート52の中央部から上方へ延出している。この接合プレート54には、屋根梁70が接合されている。
【0050】
(屋根梁)
図1に示されるように、屋根梁70は、通路(屋根)12の長手方向から見て、山形状(への字状)に形成されている。この屋根梁70は、切妻屋根の垂木を構成する一対の傾斜梁部72を有している。一対の傾斜梁部72は、屋根の頂部(棟木)において一端部同士が接合されている。また、一対の傾斜梁部72は、屋根の頂部から斜め下方へ延出している。
【0051】
一対の傾斜梁部72は、H形鋼によって形成されている。各傾斜梁部72は、上下方向に互いに対向する上側フランジ74及び下側フランジ76と、上側フランジ74及び下側フランジ76を接続するウェブ78とを有している。
【0052】
屋根梁70は、その一端70E1側が鉄筋コンクリート柱30から跳ね出し、鉄筋コンクリート柱30に片持ちで支持される片持ち屋根梁とされている。具体的には、屋根梁70は、一端70E1が自由端とされており、他方の傾斜梁部72において、鉄筋コンクリート柱30及び鉄筋コンクリート壁40に支持されている。
【0053】
複数の鉄筋コンクリート柱30は、他方の傾斜梁部72における屋根の頂部寄りに配置されている。また、複数の鉄筋コンクリート柱30は、他方の傾斜梁部72の下に配置されている。この鉄筋コンクリート柱30の柱頭部は、ブラケット50を介して他方の傾斜梁部72に接合されている。
【0054】
具体的には、図7に示されるように、他方の傾斜梁部72のウェブ78には、ブラケット50の接合プレート54が重ねられている。また、接合プレート54及びウェブ78には、貫通孔がそれぞれ形成されている。これらの貫通孔に挿入されたボルト80及びナット82によって、ウェブ78及び接合プレート54が接合(ボルト接合)されている。
【0055】
なお、他方の傾斜梁部72の下側フランジ76には、接合プレート54が配置される切欠き76A(図6参照)が形成されている。また、ウェブ78及び接合プレート54は、ボルト接合に限らず、例えば、溶接接合でも良い。
【0056】
図1に示されるように、鉄筋コンクリート壁40は、複数の鉄筋コンクリート柱30に対して、屋根梁70の他端70E2側に配置されている。また、鉄筋コンクリート壁40は、複数の屋根梁70の他端70E2側の下に配置されており、平面視にて、複数の屋根梁70の他端70E2側と交差している。この鉄筋コンクリート壁40の上端部は、ブラケット50を複数の屋根梁70の他端70E2側と接合されている。
【0057】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0058】
図7に示されるように、本実施形態によれば、鉄筋コンクリート柱30は、複数の柱主筋32と、複数の柱主筋32を取り囲む複数のせん断補強筋34とを有している。鉄筋コンクリート柱30の上面には、ブラケット50のベースプレート52が設けられている。このブラケット50の接合プレート54には、屋根梁70が接合されている。
【0059】
ベースプレート52の下面には、定着鉄筋60の上端部が接合されている。定着鉄筋60は、ベースプレート52の下面からせん断補強筋34の内側へ延出し、柱主筋32とあき重ね継手によって接続されている。
【0060】
ここで、図1に示されるように、屋根梁70は、一端70E1側が鉄筋コンクリート柱30から跳ね出し、鉄筋コンクリート柱30及び鉄筋コンクリート壁40に片持ち支持されている。この場合、例えば、屋根梁70の一端70E1側に風の吹き上げ荷重F1が作用すると、屋根梁70と鉄筋コンクリート柱30との接合部に引張力Sが作用する。
【0061】
この引張力Sは、ベースプレート52から定着鉄筋60を介して柱主筋32に伝達される。したがって、本実施形態では、ベースプレート52の下面に設けられたスタッドを鉄筋コンクリート柱30の柱頭部に埋設する構成と比較して、定着鉄筋60の必要本数が低減される。
【0062】
このように本実施形態は、屋根梁70と鉄筋コンクリート柱30との間で引張力(引張力S)を伝達可能にしつつ、断面積が小さい鉄筋コンクリート柱30に適用することができる。
【0063】
また、屋根梁70の他端70E2側は、鉄筋コンクリート壁40によって支持されている。これにより、屋根梁70の一端70E1側に作用する吹き上げ荷重F1や、吹き下げ荷重F2、地震荷重等に対して鉄筋コンクリート壁40が抵抗する。したがって、屋根梁70の風揺れ等が低減される。
【0064】
また、図2に示されるように、定着鉄筋60は、柱主筋32に対して鉄筋コンクリート柱30の中心軸C側に配置され、柱主筋32とあき重ね継手されている。これにより、着鉄筋の配筋時に、定着鉄筋60がせん断補強筋34及び柱主筋32と干渉し難くなるため、定着鉄筋60の施工性が向上する。
【0065】
このように本実施形態では、屋根梁70に発生する応力(引張力S)を、ベースプレート52から定着鉄筋60を介して鉄筋コンクリート柱30の柱主筋32に伝達可能にしつつ、定着鉄筋60の施工性を向上することができる。
【0066】
ここで、比較例として、鉄筋コンクリート柱30に埋設されたアンカーボルトに、ベースプレート52をナットで接合することが考えられる。しかしながら、この場合、ベースプレート52上に、ナットの設置スペース、及びナットの締め込みスペースが必要になるため、鉄筋コンクリート柱30と屋根梁70との上下方向の間隔が広くなる。さらに、鉄筋コンクリート柱30と屋根梁70との接合部に、アンカーボルトの上端部やナットが露出する。そのため、鉄筋コンクリート柱30と屋根梁70との接合部の意匠性が低下する可能性がある。
【0067】
これに対して本実施形態では、定着鉄筋60の上端部が、ベースプレート52の下面に溶接等によって接合されている。これにより、本実施形態では、例えば、ベースプレート52にナットで接合する構成と比較して、鉄筋コンクリート柱30と屋根梁70との上下方向の間隔を狭くすることができる。さらに、本実施形態では、鉄筋コンクリート柱30と屋根梁70との接合部に、アンカーボルトの上端部やナットが露出しない。したがって、鉄筋コンクリート柱30と屋根梁70との接合部の意匠性を高めることができる。
【0068】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0069】
上記実施形態では、鉄筋コンクリート柱30の柱主筋32に対して、定着鉄筋60が鉄筋コンクリート柱30の中心軸C側に配置されている。しかし、定着鉄筋60は、せん断補強筋34の内側で、かつ、柱主筋32と重ね継手可能な位置に配置すれば良く、例えば、鉄筋コンクリート柱30の周方向に隣り合う柱主筋32の間に配置しても良い。
【0070】
また、上記実施形態では、鉄筋コンクリート柱30の柱主筋32に対して、定着鉄筋60があき重ね継手されている。しかし、定着鉄筋60は、あき重ね継手に限らず、柱主筋32と重ね継手されても良い。
【0071】
また、図8に示される変形例のように、定着鉄筋60を省略し、ベースプレート52の下面に柱主筋32の上端部を溶接等によって接合することも可能である。この場合、屋根梁70と鉄筋コンクリート柱30との接合部に作用する引張力Sは、ベースプレート52から柱主筋32に直接伝達される。
【0072】
したがって、本変形例では、ベースプレート52の下面に設けられたスタッドを鉄筋コンクリート柱30の柱頭部に埋設する必要がないため、断面積が小さい鉄筋コンクリート柱30に適用することができる。
【0073】
このように本変形例は、上記実施形態と同様に、屋根梁70と鉄筋コンクリート柱30との間で引張力を伝達可能にしつつ、断面積が小さい鉄筋コンクリート柱30に適用することができる。
【0074】
また、屋根梁70とブラケット50との接合構造は、上記したものに限らない。例えば、図9に示される変形例では、屋根梁70の下側フランジ76の下面に、当該下面から下方へ延出する接合プレート90が設けられている。この接合プレート90に、ブラケット50の接合プレート54が重ねられた状態で、ボルト80及びナット82によって接合(ボルト接合)されている。なお、ブラケット50のリブプレート56(図6参照)は、省略されている。
【0075】
また、図10に示される変形例では、ブラケット50のベースプレート52に束柱92が設けられている。束柱92は、例えば、H形鋼によって形成されており、軸方向を上下方向として配置されている。この束柱92の両側には、屋根梁94が溶接等によって接合されている。また、束柱92には、屋根梁94の上側フランジ96及び下側フランジ98とそれぞれ連続する一対のダイアフラム93が設けられている。
【0076】
このように屋根梁70,94とブラケット50との接合構造は、適宜変更可能である。
【0077】
また、上記実施形態では、屋根梁70が、ブラケット50を介して鉄筋コンクリート壁40に接合されている。しかし、屋根梁70と鉄筋コンクリート壁40の接合構造は、ブラケット50に限らず、例えば、スタッド等を介して接合しても良い。
【0078】
また、上記実施形態では、支持体が、鉄筋コンクリート壁40とされている。しかし、支持体は、鉄筋コンクリート壁40に限らず、例えば、鉄筋コンクリート造の壁柱や柱等でも良い。また、支持体は、鉄筋コンクリート造に限らず、例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄骨造等でも良い。また、支持体は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0079】
また、上記実施形態では、屋根梁70が、切妻屋根を構成している。しかし、屋根梁70は、切妻屋根に限らず、例えば、片流れ屋根等を構成しても良い。
【0080】
また、上記実施形態では、鉄骨梁が、屋根架構20を構成する屋根梁70とされている。しかし、鉄骨梁は、屋根梁70に限らず、床等を支持するラーメン架構等の梁等でも良い。
【0081】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0082】
20 屋根架構
30 鉄筋コンクリート柱
32 柱主筋
34 せん断補強筋
C 中心軸(鉄筋コンクリート柱の中心軸)
40 鉄筋コンクリート壁(支持体)
52 ベースプレート
60 定着鉄筋
70 屋根梁(鉄骨梁)
70E1 一端(鉄骨梁の一端側)
70E2 他端(鉄骨梁の他端側)
94 屋根梁(鉄骨梁)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10