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特開2023-181903遠隔操船システム、船舶運航管理システム、遠隔操船プログラムおよび船舶運航管理プログラム
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  • 特開-遠隔操船システム、船舶運航管理システム、遠隔操船プログラムおよび船舶運航管理プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181903
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】遠隔操船システム、船舶運航管理システム、遠隔操船プログラムおよび船舶運航管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/00 20060101AFI20231218BHJP
   B63H 21/22 20060101ALI20231218BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G08G3/00 A
B63H21/22 B
H04N7/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095287
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 圭一
(72)【発明者】
【氏名】小原 利之
(72)【発明者】
【氏名】村田 修久
(72)【発明者】
【氏名】榎戸 達也
【テーマコード(参考)】
5C054
5H181
【Fターム(参考)】
5C054CC02
5C054DA07
5C054EA01
5C054EA03
5C054EA05
5C054FC12
5C054FC13
5C054FC15
5C054FE05
5C054FE18
5C054FE22
5C054FE23
5C054FE28
5C054FF03
5C054HA26
5H181AA25
5H181BB04
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF17
5H181FF22
5H181FF33
5H181FF35
5H181FF40
(57)【要約】
【課題】異なる船舶を遠隔操船することが可能な遠隔操船システム、船舶運航管理システム、遠隔操船プログラムおよび船舶運航管理プログラムを提供する。
【解決手段】運航管理装置3は、運航管理者Oの管理者端末5および遠隔操船者Rc1~Rc3の遠隔操船装置2A~2CにVR運航管理センターを表示し、このVR運航管理センターに船舶S1~S3の船舶情報を表示する。運航管理装置3は、船舶S1~S3に対する遠隔操船者Rc1~Rc3の割り当てを行なう。船舶が割り当てられた遠隔操船者Rc1~Rc3の遠隔操船装置2A~2Cには、VR操舵室が表示され、遠隔操船者Rc1~Rc3は、VR操舵室を利用して船舶S1~S3の遠隔操船を行なう。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操船が可能な複数の船舶を遠隔操船するための遠隔操船システムであって、
少なくとも1隻の前記船舶に関する船舶情報を選択可能に表示する船舶情報表示手段と、
選択された前記船舶情報に対応する前記船舶の操舵室の仮想現実空間であるVR操舵室を表示するVR操舵室表示手段と、
を備えることを特徴とする遠隔操船システム。
【請求項2】
遠隔操船が可能な複数の船舶の運航を管理するための船舶運航管理システムであって、
前記船舶の運航管理者によって操作される管理者端末と、
前記船舶の遠隔操船者によって操作される少なくとも1台の遠隔操船装置と、
前記管理者用端末の操作に応じて、前記船舶の運航を管理する運航管理装置と、
を備え、
前記運航管理装置は、
前記船舶に前記遠隔操船者を割り当てる船舶割当手段と、
前記船舶の運航管理を行なうための仮想現実空間であるVR運航管理センターを、前記管理者端末および前記遠隔操船装置に表示するVR運航管理センター表示手段と、
を備え、
前記VR運航管理センターには、少なくとも1隻の前記船舶に関する船舶情報と、前記船舶と前記遠隔操船者との割当状況を示す割当情報と、が表示される、
ことを特徴とする船舶運航管理システム。
【請求項3】
前記割当情報は、前記遠隔操船者のアバタと、前記アバタの近傍に表示されるステータス情報とを含み、前記ステータス情報は、前記遠隔操船者の操船状況および割り当てられた前記船舶の識別情報を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の船舶運航管理システム。
【請求項4】
前記船舶割当手段は、前記船舶に対する前記遠隔操船者の割り当てを変更する機能を備える、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の船舶運航管理システム。
【請求項5】
前記運航管理装置は、
前記船舶の運航状況に関する運航情報に基づいて、前記船舶に対する前記遠隔操船者の割り当てが必要な優先度を判定して報知する優先度判定手段を備える、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の船舶運航管理システム。
【請求項6】
前記VR運航管理センター表示手段は、前記アバタの表示状態を変化させることにより、前記遠隔操船者の操船状態を報知する機能を備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の船舶運航管理システム。
【請求項7】
前記船舶割当手段は、前記船舶が割り当てられた前記遠隔操船者の前記遠隔操船装置に前記船舶情報を送信し、
前記遠隔操船装置は、前記船舶割当手段から受信した前記船舶情報に基づいて、前記船舶の操舵室の仮想現実空間であるVR操舵室を表示する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の船舶運航管理システム。
【請求項8】
前記遠隔操船装置は、前記運航管理装置から、他の船舶の撮影装置によって撮影された前記他の船舶の周囲画像を取得し、前記VR操舵室に表示する、
ことを特徴とする請求項7に記載の船舶運航管理システム。
【請求項9】
前記運航管理装置は、前記遠隔操船装置から前記VR操舵室の画像を取得し、前記管理者端末に表示するVR操舵室取得・表示手段を備える、
ことを特徴とする請求項7に記載の船舶運航管理システム。
【請求項10】
遠隔操船が可能な複数の船舶を遠隔操船するための遠隔操船プログラムであって、
コンピュータを、
少なくとも1隻の前記船舶に関する船舶情報を選択可能に表示する船舶情報表示手段と、
選択された前記船舶情報に対応する前記船舶の操舵室の仮想現実空間であるVR操舵室を表示するVR操舵室表示手段と、
として機能させることを特徴とする遠隔操船プログラム。
【請求項11】
遠隔操船が可能な複数の船舶の運航を管理するための船舶運航管理プログラムであって、
コンピュータを、
前記船舶の運航管理者によって操作される管理者端末、
前記船舶の遠隔操船者によって操作される少なくとも1台の遠隔操船装置、
前記管理者用端末の操作に応じて、前記船舶の運航を管理する運航管理装置、
として機能させ、
前記運航管理装置は、
前記船舶に前記遠隔操船者を割り当てる船舶割当手段、
前記船舶の運航管理を行なうための仮想現実空間であるVR運航管理センターを、前記管理者端末および前記遠隔操船装置に表示するVR運航管理センター表示手段、
として機能し、
前記VR運航管理センターには、少なくとも1隻の前記船舶に関する船舶情報と、前記船舶と前記遠隔操船者との割当状況を示す割当情報と、が表示される、
ことを特徴とする船舶運航管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操船が可能な船舶を遠隔操船するための遠隔操船システムおよび遠隔操船プログラムと、遠隔操船が可能な船舶の運航を管理するための船舶運航管理システムおよび船舶運航管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に乗船せずに離れた地点から遠隔操船を行なうことができる遠隔制御システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-35433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の船舶の遠隔制御システムでは、1隻の船舶に対応して1台の遠隔操船装置が設けられているため、遠隔操船装置によって他の船舶を操船することはできない。
【0005】
そこで本発明は、異なる船舶を遠隔操船することが可能な遠隔操船システム、船舶運航管理システム、遠隔操船プログラムおよび船舶運航管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、遠隔操船が可能な複数の船舶を遠隔操船するための遠隔操船システムであって、少なくとも1隻の前記船舶に関する船舶情報を選択可能に表示する船舶情報表示手段と、選択された前記船舶情報に対応する前記船舶の操舵室の仮想現実空間であるVR操舵室を表示するVR操舵室表示手段と、を備えることを特徴とする遠隔操船システムである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、遠隔操船が可能な複数の船舶の運航を管理するための船舶運航管理システムであって、前記船舶の運航管理者によって操作される管理者端末と、前記船舶の遠隔操船者によって操作される少なくとも1台の遠隔操船装置と、前記管理者用端末の操作に応じて、前記船舶の運航を管理する運航管理装置と、を備え、前記運航管理装置は、前記船舶に前記遠隔操船者を割り当てる船舶割当手段と、前記船舶の運航管理を行なうための仮想現実空間であるVR運航管理センターを、前記管理者端末および前記遠隔操船装置に表示するVR運航管理センター表示手段と、を備え、前記VR運航管理センターには、少なくとも1隻の前記船舶に関する船舶情報と、前記船舶と前記遠隔操船者との割当状況を示す割当情報と、が表示される、ことを特徴とする船舶運航管理システムである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の船舶運航管理システムにおいて、前記割当情報は、前記遠隔操船者のアバタと、前記アバタの近傍に表示されるステータス情報とを含み、前記ステータス情報は、前記遠隔操船者の操船状況および割り当てられた前記船舶の識別情報を含む、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の船舶運航管理システムにおいて、前記船舶割当手段は、前記船舶に対する前記遠隔操船者の割り当てを変更する機能を備える、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2または3に記載の船舶運航管理システムにおいて、前記運航管理装置は、前記船舶の運航状況に関する運航情報に基づいて、前記船舶に対する前記遠隔操船者の割り当てが必要な優先度を判定して報知する優先度判定手段を備える、ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の船舶運航管理システムにおいて、前記VR運航管理センター表示手段は、前記アバタの表示状態を変化させることにより、前記遠隔操船者の操船状態を報知する機能を備える、ことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項2または3に記載の船舶運航管理システムにおいて、前記船舶割当手段は、前記船舶が割り当てられた前記遠隔操船者の前記遠隔操船装置に前記船舶情報を送信し、前記遠隔操船装置は、前記船舶割当手段から受信した前記船舶情報に基づいて、前記船舶の操舵室の仮想現実空間であるVR操舵室を表示する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の船舶運航管理システムにおいて、前記遠隔操船装置は、前記運航管理装置から、他の船舶の撮影装置によって撮影された前記他の船舶の周囲画像を取得し、前記VR操舵室に表示する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の船舶運航管理システムにおいて、前記運航管理装置は、前記遠隔操船装置から前記VR操舵室の画像を取得し、前記管理者端末に表示するVR操舵室取得・表示手段を備える、ことを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、遠隔操船が可能な複数の船舶を遠隔操船するための遠隔操船プログラムであって、コンピュータを、少なくとも1隻の前記船舶に関する船舶情報を選択可能に表示する船舶情報表示手段と、選択された前記船舶情報に対応する前記船舶の操舵室の仮想現実空間であるVR操舵室を表示するVR操舵室表示手段と、
として機能させることを特徴とする遠隔操船プログラムである。
【0016】
請求項11に記載の発明は、遠隔操船が可能な複数の船舶の運航を管理するための船舶運航管理プログラムであって、コンピュータを、前記船舶の運航管理者によって操作される管理者端末、前記船舶の遠隔操船者によって操作される少なくとも1台の遠隔操船装置、前記管理者用端末の操作に応じて、前記船舶の運航を管理する運航管理装置、として機能させ、前記運航管理装置は、前記船舶に前記遠隔操船者を割り当てる船舶割当手段、前記船舶の運航管理を行なうための仮想現実空間であるVR運航管理センターを、前記管理者端末および前記遠隔操船装置に表示するVR運航管理センター表示手段、として機能し、前記VR運航管理センターには、少なくとも1隻の前記船舶に関する船舶情報と、前記船舶と前記遠隔操船者との割当状況を示す割当情報と、が表示される、ことを特徴とする船舶運航管理プログラムである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および10に記載の発明によれば、選択された船舶情報に対応する船舶のVR操舵室を表示することができるので、異なる船舶を選択して遠隔操船することが可能である。また、遠隔操船には、船舶の操舵室の仮想現実空間であるVR操舵室を用いるので、実際に船舶に乗船しているような状態で遠隔操船を行なうことが可能である。
【0018】
請求項2および11に記載の発明によれば、管理者端末および遠隔操船装置にVR運航管理センターを表示することができるので、遠隔地にいる運航管理者および遠隔操船者にVR運航管理センターを提供し、船舶の運航を管理、確認させることができる。また、船舶に遠隔操船者を割り当てることができるので、遠隔操船者の操船能力などに応じて船舶を割り当てて遠隔操船させることが可能である。さらに、VR運航管理センター内に、少なくとも1隻の船舶情報を表示するので、船舶の運航状況などを確認して適切な運航管理を行なうことが可能である。また、VR運航管理センター内に、割り当てられた船舶と遠隔操船者との対応関係を示す割当情報を表示するので、どの船舶が誰によって遠隔操船されているのかを容易に把握することができ、適切な運航管理を行なうことが可能である。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、割当情報として、遠隔操船者のアバタと、アバタの近傍に表示されるステータス情報とを表示し、ステータス情報には、遠隔操船者の操船状況および割り当てられた船舶の識別情報を表示するので、どの船舶が誰によって遠隔操船されているのかを容易に把握することが可能である。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、船舶に対する遠隔操船者の割り当てを変更することができるので、船舶の種類や運航状況などに応じて、より適切な遠隔操船者を船舶に割り当てることができ、適切な運航管理を行なうことが可能である。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、船舶の運航情報に基づいて、船舶に対する遠隔操船者の割り当てが必要な優先度を判定して報知するので、優先度が高い船舶に対して優先的に遠隔操船者を割り当てることができ、適切な運航管理を行なうことが可能である。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、アバタの表示状態を変化させることにより、遠隔操船者の操船状況を報知することができるので、アバタの表示状態から遠隔操船者の操船状況を把握し、遠隔操船者の変更や追加などの措置を迅速に行なうことができ、適切な運航管理を行なうことが可能である。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、遠隔操船装置において、割り当てられた船舶のVR操舵室を表示することができるので、実際に船舶に乗船しているような状態で遠隔操船を行なうことが可能である。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、他の船舶で撮影された船舶の周囲画像を取得してVR操舵室に表示することができるので、例えば、近くにいる他船の周囲画像を参照して、自船の動きなどを客観的に把握することができ、より安全で適切な遠隔操船を行なうことが可能となる。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、遠隔操船装置からVR操舵室の画像を取得して管理者端末に表示することができるので、運航管理者は、遠隔操船者の操船状態を監督することが可能である。これにより、適切な運航管理を行なうことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の実施の形態に係る船舶運航管理システムの概略構成図である。
図2】運航管理装置の機能的構成を示す機能ブロック図である。
図3】管理者端末および遠隔操船装置に表示されるVR運航管理センターの構成を示す図である。
図4】遠隔操船装置によって表示されるVR操舵室の構成を示す図である。
図5】VR操舵室に他船の周囲画像画像を表示した状態を示す図である。
図6】VR運航管理センターの表示から遠隔操船までの手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0028】
図1は、この発明の実施の形態に係る船舶運航管理システム1と、この船舶運航管理システム1によって運航の管理および遠隔操船が行なわれる複数の船舶S1、S2およびS3とを示す概略構成図である。なお、船舶運航管理システム1には、本発明の遠隔操船システムが含まれている。
【0029】
船舶S1~S3は、それぞれ自律操船装置S1a、S2aおよびS3aが搭載された無人運航船である。自律操船装置S1a~S3aは、船舶S1~S3の主機、舵などを自律制御し、設定された航路およびスケジュールにしたがって船舶S1~S3を自律運航する。自律操船装置S1a~S3aは、通信機能を備えており、衛星通信などを利用した通信網NWを介して船舶運航管理システム1と通信可能に接続されている。
【0030】
自律操船装置S1a~S3aは、主機、舵などを自律制御して自律操船を行なう自律操船モードと、離れた場所からの遠隔操船に応じて主機、舵などを制御する遠隔操船モードとを備えている。船舶S1~S3は、通常時は自律操船装置S1a~S3aにより自律運航し、その運航状況は、船舶運航管理システム1によって監視されている。そして、荒天時や走錨時、通航量の多い海域を航行する場合などの緊急時には、自律操船装置S1a~S3aは、船舶運航管理システム1により自律操船モードから遠隔操船モードに切り替えられ、遠隔操船される。なお、船舶運航管理システム1により運航管理などが行なわれる船舶は、船舶S1~S3に限定されず、1隻あるいは2隻以上の複数の船舶について同時に運航管理することが可能である。
【0031】
船舶運航管理システム1は、船舶S1~S3の運航管理について指示、操作を行なう運航管理者Oと、船舶S1~S3の遠隔操船を行なう複数の遠隔操船者Rc1、Rc2およびRc3とに対し、船舶の運航管理が行なわれる運航管理センターを仮想現実空間(以下、VR空間ともいう)によって表現したVR運航管理センターを提供する。VR運航管理センターには、船舶S1~S3に関する多種にわたった船舶情報が統合的に表示される。また、VR運航管理センターでは、上述した船舶S1~S3の緊急時に、遠隔操船者Rc1~Rc3に対し船舶S1~S3が割り当てられ、遠隔操船が行なわれる。VR運航管理センターには、船舶S1~S3に対する遠隔操船者Rc1~Rc3の割当状況を示す割当情報が表示される。これにより、運航管理者Oは、実際の運航管理センターと同様に、VR運航管理センターにおいて、船舶情報に基づいて船舶S1~S3の運行状況を監視し、遠隔操船者Rc1~Rc3による遠隔操船を管理、監督することができる。
【0032】
船舶運航管理システム1は、船舶S1~S3が割り当てられた遠隔操船者Rc1~Rc3に対し、船舶S1~S3の操舵室をVR空間によって表現したVR操舵室を提供する。遠隔操船者Rc1~Rc3は、VR操舵室内で操船を行なうことにより、実際に船舶S1~S3に乗船しているような状態で遠隔操船を行なうことができる。
【0033】
船舶運航管理システム1は、船舶S1~S3の運航を管理するために運航管理者Oによって操作される管理者端末5と、船舶S1~S3を遠隔操船するために遠隔操船者Rc1、Rc2およびRc3によって操作される遠隔操船装置2A、2Bおよび2Cと、管理者端末5の操作に応じて船舶S1~S3の運航を管理する運航管理装置3と、を備えている。
【0034】
運航管理装置3は、詳しくは図示しないが、CPUなどの中央演算処理部と、プログラムや各種データを記憶する記憶部と、中央演算処理部により各種処理を実行する際に生成される情報・データを一時的に記憶などするためのメモリと、各種の入出力インターフェースと、通信部などを備えたコンピュータ装置である。運航管理装置3は、図示しない船舶運航管理プログラムに基づいて中央演算処理部が動作することにより、図2に示すように、VR運航管理センター表示部(VR運航管理センター表示手段)31、船舶割当部(船舶割当手段)32、優先度判定部(優先度判定手段)33、および操船状態判定部34、およびVR操舵室取得・表示部(VR操舵室取得・表示手段)35として機能する。
【0035】
VR運航管理センター表示部31は、管理者端末5および遠隔操船装置2A~2CにVR運航管理センター表示情報を送信し、VR運航管理センターを表示させることにより、運航管理者Oおよび遠隔操船者Rc1~Rc3にVR運航管理センターを提供する。なお、VR運航管理センター表示情報は、コンピュータグラフィックスによって生成されたVR運航管理センターの画像(映像)情報である。
【0036】
図3は、管理者端末5および遠隔操船装置2A~2Cによって表示されるVR運航管理センター6の一例を示している。VR運航管理センター6には、情報表示部65と、遠隔操船者Rc1~Rc3のアバタ61、62および63と、運航管理者Oのアバタ64とが表示される。アバタ61~63は、遠隔操船者Rc1~Rc3による遠隔操船装置2A~2Cの操作に応じて、VR運航管理センター6内で動かすことができる。また、アバタ64は、運航管理者Oによる管理者端末5の操作に応じて、VR運航管理センター6内で動かすことができる。なお、遠隔操船者Rc1~Rc3および運航管理者Oに対しては、自身のアバタを含むVR運航管理センター6全体の画像を提供してもよいし、より臨場感を与えるため、各人のアバタ61~64によって見える範囲の画像を提供してもよい。
【0037】
情報表示部65は、複数の表示エリア65a、65bなどを備えている。これらの表示エリア65a、65bには、船舶S1~S3に関する船舶情報と、遠隔操船者Rc1~Rc3に関する操船者情報などが表示される。なお、情報表示部65の表示エリアの数は、表示する情報量などに応じて任意に増減することが可能である。
【0038】
船舶情報には、例えば、船舶基本情報、運航情報などが含まれる。船舶基本情報は、船舶S1~S3の各種諸元に関する情報であり、例えば、船名、船籍、船舶の種類、全長、全幅、総トン数および載貨重量トン数などが含まれる。また、運航情報は、船舶S1~S3の運航状況に関する情報であり、例えば、船舶状態、航路、運航スケジュール、積荷、現在位置、進行方位、速度、航路図、レーダ情報、気象情報、操船モード、および周囲画像などが含まれる。船舶状態には、船舶S1~S3の現在の状態、例えば、停泊、出港、航行、入港、走錨などが含まれる。また、操船モードには、船舶S1~S3が自律操船モードあるいは遠隔操船モードのいずれであるのかが含まれる。船舶S1~S3が遠隔操船モードである場合には、操船を担当している遠隔操船者に関する情報などが含まれる。周囲画像は、船舶S1~S3に搭載されている撮影装置によって撮影された船舶S1~S3の周囲の画像である。
【0039】
操船者情報は、例えば、遠隔操船者Rc1~Rc3の氏名、年齢、海技士免許の種類、操船履歴(操船した船名、種類、操船時間、操船距離など)、現在の操船状況(待機中、遠隔操船中など)が含まれる。これらの船舶情報および操船者情報は、運航管理装置3の記憶部に記憶されている他、各船舶S1~S3、遠隔操船装置2A~2Cおよび管理者端末5などから適宜に取得・収集される。
【0040】
VR運航管理センター表示部31は、運航管理者Oによる管理者端末5の操作に応じて、各種情報を選択的にまたは一覧できるように情報表示部65に表示する。図3に示す例では、表示エリア65aに対し、船舶S1~S3に関する主要な船舶情報(例えば、船名、航路など)を一覧できるようにリスト表示している。また、表示エリア65bでは、選択された船舶、例えば船舶S1の航路図などを含む詳細な船舶情報を統合的に表示している。また、操船者情報についても同様に、リスト表示および詳細表示を行なうことができる。これにより、運航管理者Oは、VR運航管理センター6において、実際の運航管理センターにいる場合と同様に、各船舶S1~S3の運航状況を確認することができる。
【0041】
遠隔操船者Rc1~Rc3のアバタ61~63の近傍には、遠隔操船者Rc1~Rc3の操船状況を含むステータス情報61a~63aが表示されている。すなわち、アバタ61~63およびステータス情報61a~63aは、船舶S1~S3に対する遠隔操船者Rc1~Rc3の割当状況を示す割当情報に相当する。ステータス情報61a~63aには、遠隔操船者Rc1~Rc3が遠隔操船中である場合には、「操船中」と表示され、さらに操船している船舶の船名(識別情報)が表示される。また、遠隔操船者Rc1~Rc3がスタンバイ中である場合には、ステータス情報61a~63aには、「待機中」と表示される。これにより、運航管理者Oは、どの遠隔操船者が操船中であるのか否かを容易に確認することができ、さらに、遠隔操船者が操船中である場合には、どの船舶を操船しているのかを迅速に確認することができる。
【0042】
船舶割当部32は、運航管理者Oによる管理者端末5の操作にしたがって、船舶S1~S3に対し遠隔操船者Rc1~Rc3を割り当てる。例えば、運航管理者Oが管理者端末5を操作して遠隔操船者の割当開始を指示すると、船舶割当部32は、船舶S1~S3の船舶情報を選択できるようにリスト表示する。運航管理者Oがいずれかの船舶S1~S3を選択すると、船舶割当部32は、次に遠隔操船者Rc1~Rc3の操船者情報を選択できるようにリスト表示する。運航管理者Oは、操船者情報を確認し、船舶S1~S3の操船に適した遠隔操船者Rc1~Rc3を選択することができる。
【0043】
運航管理者Oがいずれかの遠隔操船者Rc1~Rc3を選択すると、船舶割当部32は、選択された遠隔操船者Rc1~Rc3の遠隔操船装置2A~2Cへ遠隔操船要請情報を送信する。遠隔操船者Rc1~Rc3が遠隔操船要請情報を確認し、遠隔操船装置2A~2Cから運航管理装置3へ受諾情報を送信すると、船舶割当部32は、遠隔操船装置2A~2Cへ船舶情報を送信する。遠隔操船装置2A~2Cは、受信した船舶情報に基づいてVR操舵室を表示し、遠隔操船者Rc1~Rc3による操船操作を受け付ける。これにより、遠隔操船者Rc1~Rc3は、遠隔操船装置2A~2Cにより船舶を遠隔操船することができる。
【0044】
船舶割当部32は、船舶に対する遠隔操船者の割り当てが完了すると、船舶S1~S3に対する遠隔操船者Rc1~Rc3の割当状況を示す割当情報を更新する。割当情報は、記憶部などに記憶されている。VR運航管理センター表示部31は、記憶された割当情報に基づいて、VR運航管理センター6内のステータス情報61a~63aの表示を更新する。
【0045】
なお、船舶割当部32は、運航管理者Oの指示に応じて、船舶S1~S3に割り当てられている遠隔操船者Rc1~Rc3を変更することが可能である。この場合には、船舶割当部32は、船舶S1~S3に対する遠隔操船者Rc1~Rc3の割り当てを解除した上で、運航管理者Oが新たな遠隔操船者Rc1~Rc3を選択できるように、操船者情報をリスト表示する。遠隔操船者Rc1~Rc3が変更された場合には、割当情報およびステータス情報61a~63aを更新する。これにより、より最適な遠隔操船者Rc1~Rc3を船舶S1~S3に割り当てて遠隔操船させることが可能となる。また、船舶割当部32は、運航管理者Oの指示に応じて、1隻の船舶に複数人の遠隔操船者Rc1~Rc3を割り当てることができる。さらに、遠隔操船者Rc1~Rc3を後から追加することも可能である。これにより、遠隔操船が難しい状況が発生している場合に、複数の遠隔操船者によって相補的に操船を行なうことができる。また、経験の少ない遠隔操船者を、ベテランの遠隔操船者が補助するように運用することもできる。
【0046】
優先度判定部33は、船舶の運航情報に基づいて、遠隔操船者Rc1~Rc3を割り当てて遠隔操船すべき優先度(以下、割当優先度ともいう)を判定し、その判定結果を表示する。すなわち、優先度判定部33は、運航管理者Oに対し、船舶に遠隔操船者の割り当てを行なうべきである状況を報知することができる。
【0047】
優先度判定部33は、例えば、運航情報の船舶状態、現在位置、気象情報などに基づいて、船舶が走錨中である場合、船舶の現在位置が通航量の多い海域である場合、船舶の海域の気象条件が悪化している場合などに、割当優先度が高いと判定する。VR運航管理センター表示部31は、割当優先度が高いと判定された船舶について、船舶情報の表示状態を変化させるなどして運航管理者Oへ報知する。図3に示す例では、表示エリア65aに表示されている船舶情報、あるいは船舶情報の表示枠などの表示色を変化させ、あるいは表示を点滅させるなどして報知している。
【0048】
操船状態判定部34は、遠隔操船者Rc1~Rc3の操船情報に基づいて、操船状態(余裕をもって操船をしているか、あるいは操船に苦労しているかなど)を判定し、操船状態が悪化(操船に余裕がない状態、操船に苦労している状態などをいう)していると判定した場合に、その判定結果を報知する。なお、遠隔操船者Rc1~Rc3の操船情報とは、遠隔操船者Rc1~Rc3が遠隔操船装置2A~2Cを操作して船舶S1~S3を遠隔操船する際に、遠隔操船装置2A~2Cから運航管理装置3を介して自律操船装置S1a~S3aに送信される情報である。自律操船装置S1a~S3aは、この操船情報に基づいて主機および舵などを制御し、船舶S1~S3を遠隔操船する。操船状態判定部34は、例えば、所定時間内における遠隔操船装置2A~2Cの操作数に基づいて操船状態を判定し、操作数が所定値以上である場合に、操船状態が悪化していると判定する。すなわち、操船状態判定部34は、船舶S1~S3の操舵ハンドルやスロットルレバーなどが頻繁に遠隔操作されている場合に、操船状態が悪化していると判定する。
【0049】
VR運航管理センター表示部31は、操船状態が悪化していると判定した場合、遠隔操船者Rc1~Rc3のアバタ61~63の表示状態を変化させるなどして運航管理者Oへ報知する。図3に示す例では、遠隔操船者Rc2のアバタ62の表示色を変化させ、あるいは表示を点滅させるなどして報知している。
【0050】
VR操舵室取得・表示部35は、運航管理者Oによる管理者端末5の操作に応じて、遠隔操船装置2A~2Cから、遠隔操船中のVR操舵室4(図5および図6参照)の画像を取得し、管理者端末5に表示させる。取得したVR操舵室4の画像は、VR運航管理センター6の代わりに管理者端末5に表示してもよいし、VR運航管理センター6内にVR操舵室4を表示させてもよい。これにより、運航管理者Oは、遠隔操船者Rc1~Rc3の遠隔操船状況を確認し、監督することが可能である。
【0051】
次に、運航管理者Oおよび管理者端末5について説明する。運航管理者Oは、例えば、実際の運航管理センターにおいて、船舶の運航管理の経験を有する者である。運航管理者Oは、管理者端末5を介して運航管理装置3を操作することにより、船舶S1~S3の運航管理と、遠隔操船者Rc1~Rc3による遠隔操船の監督とを行なう。運航管理者Oは、管理者端末5が通信網NWに接続できる場所であれば、国内あるいは海外であっても、船舶S1~S3を遠隔で運航管理し、遠隔操船者Rc1~Rc3による遠隔操船を遠隔で監督することができる。なお、運航管理者は、1人に限定されず、複数人の運航管理者が協同で運航管理を行なってもよい。
【0052】
管理者端末5は、通信網NWを介して運航管理装置3に通信可能に接続されたVR制御ユニット5aと、運航管理者Oの頭部に装着されるVRゴーグル5bと、運航管理者Oの両手でそれぞれ保持される2つのVRコントローラ5cとを備えている。VR制御ユニット5aと、VRゴーグル5bおよびVRコントローラ5cとは、有線または無線によって接続されている。
【0053】
VR制御ユニット5aは、詳しくは図示しないが、CPUなどの中央演算処理部と、プログラムや各種データを記憶する記憶部と、中央演算処理部により各種処理を実行する際に生成される情報・データを一時的に記憶などするためのメモリと、各種の入出力インターフェースと、通信部などを備えたコンピュータ装置である。VR制御ユニット5aは、図示しない遠隔管理プログラムに基づいて中央演算処理部が動作することにより、管理者端末5として機能する。
【0054】
VR制御ユニット5aは、運航管理装置3から送信されたVR運航管理センター表示情報に基づいて、VRゴーグル5bにVR運航管理センター6を表示させる。また、VR制御ユニット5aは、VR運航管理センター6内で行なわれた運航管理者Oによる運航管理操作をVRコントローラ5cによって検出し、検出結果に基づいて生成された管理操作情報を運航管理装置3に送信する。運航管理装置3は、管理操作情報に基づいて運航管理を行なう。
【0055】
VRゴーグル5bは、いわゆるHMD(Head Mounted Display)であり、視差を有する右目用画像および左目用画像を表示することにより、立体感のあるVR運航管理センター6を表示する。また、VRゴーグル5bは、運航管理者Oの頭部の動きを検出するヘッドトラッキング機能と、運航管理者Oの位置や姿勢の変化を検出するポジショントラッキング機能と、運航管理者Oの視線の動きを検出するアイトラッキング機能などを備えている。さらに、VRゴーグル5bは、マイクおよびスピーカを備えている。運航管理者Oは、マイクおよびスピーカを利用して、遠隔操船者Rc1~Rc3や船舶S1~S3の船員などと通話をすることができる。
【0056】
VRコントローラ5cは、運航管理者Oの右手および左手の動きをそれぞれ検出するモーショントラッキング機能と、各種操作スイッチ(操作ボタン、操作レバー、操作ダイヤル)などを備えている。各種操作スイッチは、VR運航管理センター内の仮想的な物体(VRオブジェクト)を掴んだり、離したりする際に操作される。運航管理者Oは、VRコントローラ5cを操作することにより、VR運航管理センター6内で各種情報の表示および表示の切り替え、船舶および遠隔操船者の割り当て、変更および追加などを行なう。
【0057】
遠隔操船者Rc~Rcは、海技士免許を有する船舶の操船経験者である。遠隔操船者Rc1~Rc3は、遠隔操船装置2A~2Cを操作することによって自律操船装置S1a~S3aを制御し、船舶S1~S3を遠隔操船する。遠隔操船者Rc1~Rc3は、遠隔操船装置2A~2Cが通信網NWに接続できる場所であれば、国内あるいは海外であっても船舶S1~S3を遠隔操船することができる。なお、遠隔操船者および遠隔操船装置は、遠隔操船者Rc1~Rc3および遠隔操船装置2A~2Cに限定されず、1人あるいは2人以上の複数の遠隔操船者と、1台あるいは2台以上の複数の遠隔操船装置について、管理、運用することが可能である。
【0058】
遠隔操船装置2Aは、通信網NWを介して運航管理装置3に通信可能に接続されたVR制御ユニット2A1と、遠隔操船者Rc1の頭部に装着されるVRゴーグル2A2と、遠隔操船者Rc1の両手でそれぞれ保持される2つのVRコントローラ2A3とを備えている。VR制御ユニット2A1と、VRゴーグル2A2およびVRコントローラ2A3とは、有線または無線によって接続されている。
【0059】
VR制御ユニット2A1は、詳しくは図示しないが、CPUなどの中央演算処理部と、プログラムや各種データを記憶する記憶部と、中央演算処理部により各種処理を実行する際に生成される情報・データを一時的に記憶などするためのメモリと、各種の入出力インターフェースと、通信部などを備えたコンピュータ装置である。VR制御ユニット2A1は、図示しない遠隔操船プログラムに基づいて中央演算処理部が動作することにより、遠隔操船装置として機能する。なお、VRゴーグル2A2およびVRコントローラ2A3は、上述した管理者端末5のVRゴーグル5bおよびVRコントローラ5cと同様な構成および機能を有するものであるため、詳しい説明は省略する。
【0060】
VR制御ユニット2A1は、VR運航管理センター表示情報に基づいて、VRゴーグル2A2にVR運航管理センター6を表示させる。また、VR制御ユニット2A1は、船舶S1~S3のVR操舵室を表示するためのVR操舵室表示情報を予め記憶部などに記憶している。VR制御ユニット2A1は、運航管理装置3から船舶S1~S3に関する船舶情報が送信されると、この船舶情報と、VR操舵室表示情報とに基づいて、VRゴーグル2A2にVR操舵室を表示させる。
【0061】
VRゴーグル2A2は、VR制御ユニット2A1から出力されたVR操舵室の右目用画像および左目用画像に基づいてVR操舵室を表示する。図4に示すように、VR操舵室4には、操舵ハンドル41aやスロットルレバー41bなどが設けられた操船パネル41と、レーダ画像、船速計および舵角計などが設けられた計器パネル42と、船舶に搭載した撮影装置により撮影された船舶の周囲画像43とが表示される。操舵ハンドル41aおよびスロットルレバー41bなどは、VRコントローラ2A3により操作することが可能なVRオブジェクトとして、VR操舵室4に表示される。
【0062】
操船パネル41および計器パネル42には、コンピュータグラフィックスにより生成されたCG画像が用いられる。また、周囲画像43には、実際の操舵室の窓から見える景色を撮影した周囲画像が表示されている。なお、船舶に複数の撮影装置が搭載され、各撮影装置で船舶の異なる周囲方向を撮影している場合には、各撮影装置の画像を切り替えて、あるいは並べて表示してもよい。また、なお、操船パネル41および計器パネル42には、実際の操舵室内を撮影装置により撮影した画像を用いてもよい。
【0063】
さらに、他船の撮影装置によって撮影された周囲画像を、運航管理装置3を介して取得し、VR操舵室4に表示してもよい。図5に示すように、例えば、近い位置にいる他船から、自船が映っている周囲画像44を取得してVR操舵室4に表示することにより、自船の航行状態を客観的に判断することができる。また、入港予定地にいる他船の周囲画像を取得してVR操舵室4に表示することにより、入港予定地の状況を確認して入港準備をすることが可能である。
【0064】
VRゴーグル2A2は、遠隔操船者Rc1の頭部の動き、位置や姿勢の変化、および視線の動きを検出し、その検出結果をVR制御ユニット2A1へ送信する。VR制御ユニット2A1は、遠隔操船者Rc1の頭部の動き、位置や姿勢の変化、および視線の動きに応じて、VRゴーグル2A2に表示されているVR操舵室4を変化させる。すなわち、遠隔操船者Rc1が見ている方向がVRゴーグル2A2に表示されるようにVR操舵室4の画像を変化させる。
【0065】
VRコントローラ2A3は、遠隔操船者Rc1によるVR操舵室4内での操船操作、例えば、操舵ハンドル41aやスロットルレバー41bなどの操作を検出し、その操作方向および操作量をVR制御ユニット2A1へ送信する。VR制御ユニット2A1は、VRコントローラ2A3の検出結果に応じて、VRゴーグル2A2に表示されているVR操舵室4を変化させる。また、VR制御ユニット2A1は、VRコントローラ2A3の検出結果に基づいて操船情報を生成し、生成した操船情報を運航管理装置3へ送信する。自律操船装置S1a~S3aは、受信した操船情報に基づいて主機および舵などを制御し、船舶S1~S3を遠隔操船する。なお、遠隔操船装置2B、2Cは、遠隔操船装置2Aと同様の構成および機能を備えているため、詳しい説明は省略する。
【0066】
図6は、VR運航管理センター6の表示から、船舶S1~S3が遠隔操船されるまでの流れを示している。運航管理装置3のVR運航管理センター表示部31は、管理者端末5および遠隔操船装置2A~2CにVR管理センター表示情報を送信する(ステップS1)。管理者端末5は、VRゴーグル5bにVR運航管理センター6を表示する(ステップS2)。また、遠隔操船装置2A~2Cは、VRゴーグル2A2~2C3にVR運航管理センター6を表示する(ステップS3)。運航管理者Oは、VR運航管理センター6内で船舶S1~3の船舶情報などを情報表示部65に表示させ、運航管理を行なう。また、運航管理者Oは、遠隔操船者Rc1~Rc3のアバタ61~63およびステータス情報61a~63aを確認し、遠隔操船の状況を確認、監督する。
【0067】
運航管理者Oは、優先度判定部33によって遠隔操船が必要な船舶が報知された場合に、遠隔操船者Rc1~Rc3に対する船舶S1~S3の割り当て操作を行なう(ステップS4)。運航管理装置3の船舶割当部32は、管理者端末5に表示されているVR運航管理センター6内に船舶情報および操船者情報を表示させ、運航管理者Oの操作に応じて、遠隔操船者Rc1~Rc3に対する船舶S1~S3の割り当てを行なう(ステップS5)。
【0068】
運航管理装置3の船舶割当部32は、船舶S1~S3に対する遠隔操船者Rc1~Rc3の割り当てが完了すると、その割当結果に基づいて、割当情報を更新するとともに、VR運航管理センター6内のステータス情報61a~63aの表示を更新する(ステップS6)。また、船舶割当部32は、遠隔操船装置2A~2Cに対し、割り当てられた船舶S1~S3の船舶情報を送信する(ステップS7)。
【0069】
遠隔操船装置2A~2Cは、受信した船舶情報と、予め記憶しているVR操舵室表示情報とに基づいて、遠隔操船者Rc1~Rc3のVRゴーグル2A2~2C2にVR操舵室4を表示する(ステップS8)。VR操舵室4内で遠隔操船が行なわれると(ステップS9)、遠隔操船装置2A~2Cから運航管理装置3へ操船情報が送信される(ステップS10)。また、操船情報は、運航管理装置3を介して船舶S1~S3の自律操船装置S1a~S3aにも送信される(ステップS11)。
【0070】
遠隔操船装置2A~2Cは、VR操舵室4内での操船操作に基づいて、VR操舵室4の表示を変化させる(ステップS12)。また、自律操船装置S1a~S3aは、操船情報に基づいて主機、舵などを制御し、船舶S1~S3を遠隔操船する(ステップS13)。以下、ステップS7~S13を繰り返すことにより、船舶S1~S3を遠隔操船することができる。
【0071】
以上で説明したように、本実施の形態に係る船舶運航管理システム1によれば、選択された船舶情報に対応する船舶S1~S3のVR操舵室4を表示することができるので、異なる船舶S1~S3を選択して遠隔操船することが可能である。また、遠隔操船には、船舶S1~S3の操舵室の仮想現実空間であるVR操舵室4を用いるので、実際に船舶S1~S3に乗船しているような状態で遠隔操船を行なうことが可能である。
【0072】
また、本実施の形態に係る船舶運航管理システム1によれば、管理者端末5および遠隔操船装置2A~2CにVR運航管理センター6を表示することができるので、遠隔地にいる運航管理者Oおよび遠隔操船者Rc1~Rc3にVR運航管理センター6を提供し、船舶S1~S3の運航を管理、確認させることができる。また、船舶S1~S3に遠隔操船者を割り当てることができるので、遠隔操船者Rc1~Rc3の操船能力などに応じて船舶S1~S3を割り当てて遠隔操船させることが可能である。さらに、VR運航管理センター6内に、少なくとも1隻の船舶情報を表示するので、船舶S1~S3の運航状況などを確認して適切な運航管理を行なうことが可能である。また、VR運航管理センター6内に、割り当てられた船舶S1~S3と、遠隔操船者Rc1~Rc3との対応関係を示す割当情報を表示するので、どの船舶が誰によって遠隔操船されているのかを容易に把握することができ、適切な運航管理を行なうことが可能である。
【0073】
さらに、本実施の形態に係る船舶運航管理システム1によれば、割当情報として、遠隔操船者Rc1~Rc3のアバタ61~63と、アバタ61~63の近傍に表示されるステータス情報61a~63aとを表示し、ステータス情報61a~63aには、遠隔操船者Rc1~Rc3の操船状況および割り当てられた船舶S1~S3の識別情報を表示するので、どの船舶が誰によって遠隔操船されているのかを容易に把握することが可能である。
【0074】
また、本実施の形態に係る船舶運航管理システム1によれば、船舶S1~S3に対する遠隔操船者Rc1~Rc3の割り当てを変更することができるので、船舶S1~S3の種類や運航状況などに応じて、より適切な遠隔操船者Rc1~Rc3を船舶S1~S3に割り当てることができ、適切な運航管理を行なうことが可能である。
【0075】
さらに、本実施の形態に係る船舶運航管理システム1によれば、船舶S1~S3の運航情報に基づいて、遠隔操船者Rc1~Rc3の割り当てが必要な優先度を判定して報知するので、優先度が高い船舶S1~S3に対して優先的に遠隔操船者Rc1~Rc3を割り当てることができ、適切な運航管理を行なうことが可能である。
【0076】
また、本実施の形態に係る船舶運航管理システム1によれば、アバタ72a~74aの表示状態を変化させることにより、遠隔操船者Rc1~Rc3の操船状況を報知することができるので、遠隔操船者Rc1~Rc3の操船状況を把握し、遠隔操船者Rc1~Rc3の変更や追加などの措置を迅速に行なうことができ、適切な運航管理を行なうことが可能である。
【0077】
さらに、本実施の形態に係る船舶運航管理システム1によれば、遠隔操船装置2A~2Cにおいて、割り当てられた船舶S1~S3のVR操舵室4を表示することができるので、実際に船舶S1~S3に乗船しているような状態で遠隔操船を行なうことが可能である。
【0078】
また、本実施の形態に係る船舶運航管理システム1によれば、他の船舶で撮影された船舶の周囲画像を取得してVR操舵室4に表示することができるので、例えば、近くにいる他船の周囲画像を参照して、自船の動きなどを客観的に把握することができ、より安全で適切な遠隔操船を行なうことが可能となる。
【0079】
さらに、本実施の形態に係る船舶運航管理システム1によれば、遠隔操船装置2A~2CからVR操舵室4の画像を取得して管理者端末5に表示することができるので、運航管理者Oは、遠隔操船者Rc1~Rc3の操船状態を監督することが可能である。これにより、適切な運航管理を行なうことが可能である。
【0080】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0081】
上記の実施の形態では、運航管理者Oの指示に応じて船舶S1~S3に遠隔操船者Rc1~Rc3を割り当てているが、例えば、船舶S1~S3の船舶情報と、遠隔操船者Rc1~Rc3の操船者情報と、過去の割当実績とに基づいて機械学習を行い、機械学習により生成された学習済みモデルを利用して遠隔操船者Rc1~Rc3の割り当てを最適化してもよい。
【0082】
また、上記の実施の形態では、遠隔操船者Rc1~Rc3の操船状況に応じてアバタ61~63の表示状態を変化させたが、遠隔操船者Rc1~Rc3が操船を代わってもらいたい場合、あるいは操船を補助してもらいたい場合に、遠隔操船者Rc1~Rc3の申告に基づいてアバタ61~63の表示状態を変化させてもよい。
【0083】
さらに、上記の実施の形態では、運航管理者Oの操作に応じて管理者端末5にVR操舵室4を表示するようにしたが、各遠隔操船装置2のVR操舵室4を定期的に順次に管理者端末5に表示させ、運航管理者Oが各遠隔操船者Rc1~Rc3の操船状態を巡視できるようにしてもよい。
【0084】
1 船舶運航管理システム(船舶遠隔操船システム)
2A~2C 遠隔操船装置
3 運航管理装置
31 VR運航管理センター表示部(VR運航管理センター表示手段)
32 船舶割当部(船舶割当手段)
33 優先度判定部(優先度判定手段)
34 操船状態判定部
35 VR操舵室取得・表示部(VR操舵室取得・表示手段)
4 VR操舵室
5 管理者端末
6 VR運航管理センター
61 情報表示部
62~64 アバタ
65 情報表示部
S1~S3 船舶
S1a~S3a 自律操船装置
Rc1 ~Rc3 遠隔操船者
図1
図2
図3
図4
図5
図6