(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181907
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】羽根駆動装置及びこれを備えた撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 9/36 20210101AFI20231218BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20231218BHJP
【FI】
G03B9/36 A
G03B17/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095291
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】河上 健太
【テーマコード(参考)】
2H081
2H104
【Fターム(参考)】
2H081AA19
2H081DD00
2H104CC06
(57)【要約】
【課題】隣接して配置される撮像素子を簡単な構造で効果的に冷却することができる羽根駆動装置を提供する。
【解決手段】羽根駆動装置1は、開口S1が形成された地板10と、開口S1を開閉するように開閉方向に移動可能な羽根31~34とを備える。羽根31~34は、金属又は樹脂から形成される羽根本体310,320,330,340と、羽根本体310,320,330,340よりも高い熱伝導率を有し、羽根本体310,320,330,340の-Z方向側の面に貼付される熱伝導性テープ311,321,331,341とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が形成された地板と、
前記開口を開閉するように開閉方向に移動可能な第1の羽根と
を備え、
前記第1の羽根は、
金属又は樹脂から形成される第1の羽根本体と、
前記第1の羽根本体よりも高い熱伝導率を有し、前記第1の羽根本体の前記地板とは反対側の面に貼付される第1の熱伝導性テープと
を含む、
羽根駆動装置。
【請求項2】
前記第1の羽根と前記地板との間に配置され、前記開口を開閉するように前記開閉方向に移動可能な少なくとも1つの第2の羽根をさらに備え、
前記少なくとも1つの第2の羽根は、
金属又は樹脂から形成される第2の羽根本体と、
前記第2の羽根本体よりも高い熱伝導率を有し、前記第2の羽根本体の前記地板とは反対側の面に貼付される第2の熱伝導性テープと
を含む、
請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記第1の羽根は、前記開閉方向の縁部に位置し、前記地板と反対側に折れ曲がる折曲部を有する、請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記折曲部の先端が接触可能な位置に配置されたカバー板をさらに備える、請求項3に記載の羽根駆動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の羽根駆動装置と、
前記羽根駆動装置の前記地板に形成された開口部を透過した光が結像する面に配置された撮像素子と
を備える、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根駆動装置及びこれを備えた撮像装置に係り、特に露光開口を開閉可能な羽根を駆動するための羽根駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどにおいては、羽根(シャッタ)を移動させることによって露光開口を開閉し、撮像素子による撮影を可能にしている。最近では、露光開口が開いているときにすべての撮像素子を同時に一括して露光して画像を取得する方式(グローバルシャッタ)を採用するカメラも多くなってきている(例えば、特許文献1参照)。このようなグローバルシャッタ方式を採用すると、撮像素子が発する熱量が非常に多くなるため、撮像素子が高温になり、撮影される画像に不良が生じることが考えられる。特許文献1に開示されているカメラは、撮像素子を冷却する構造を備えていないため、高温になった撮像素子を冷却するためには複雑な冷却構造を付加しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、隣接して配置される撮像素子を簡単な構造で効果的に冷却することができる羽根駆動装置を提供することを第1の目的とする。
【0005】
また、本発明は、簡単な構造で撮像素子を効果的に冷却することができる撮像装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、隣接して配置される撮像素子を簡単な構造で効果的に冷却することができる羽根駆動装置が提供される。この羽根駆動装置は、開口が形成された地板と、前記開口を開閉するように開閉方向に移動可能な第1の羽根とを備える。上記第1の羽根は、金属又は樹脂から形成される第1の羽根本体と、上記第1の羽根本体よりも高い熱伝導率を有し、上記第1の羽根本体の上記地板とは反対側の面に貼付される第1の熱伝導性テープとを含む。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、簡単な構造で撮像素子を効果的に冷却することができる撮像装置が提供される。この撮像装置は、上記羽根駆動装置と、上記羽根駆動装置の上記地板に形成された開口部を透過した光が結像する面に配置された撮像素子とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における羽根駆動装置の主要な構成要素を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す羽根駆動装置の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る羽根駆動装置の実施形態について
図1及び
図2を参照して詳細に説明する。
図1及び
図2において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1及び
図2においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態における羽根駆動装置1の主要な構成要素を模式的に示す平面図、
図2は、
図1に示す羽根駆動装置の部分縦断面図である。本実施形態における羽根駆動装置1は、カメラなどの光学機器に組み込まれるシャッタであるものとして説明するが、これは例示に過ぎず、本発明に係る羽根駆動装置はこのようなシャッタの用途に限られるものではない。
【0011】
図1及び
図2に示すように、本実施形態における羽根駆動装置1は、矩形状の開口S1が形成された地板10と、地板10の開口と略同一の形状の開口S2が形成されたカバー板20と、地板10とカバー板20との間に形成される空間に収容される4枚の羽根31~34とを含んでいる。理解を容易にするために、
図1では、カバー板20の図示を省略している。地板10の開口S1とカバー板20の開口S2により露光開口が形成されている。この羽根駆動装置1は、CCDやCMOSセンサなどの撮像素子90を備えた撮像装置に組み込まれるものであり、撮像素子90はカバー板20に隣接して配置される。被写体からの光は、地板10の開口S1及びカバー板20の開口S2を通過して、この撮像素子90に入射するようになっている。
【0012】
図1に示すように、羽根31~34のそれぞれは、全体としてX方向に延びる薄板状の部材であり、羽根31~34は、+Z方向に順番に重ねられている。羽根駆動装置1は、羽根31~34に連結される羽根アーム41,42を有している。羽根31は、連結部51,52によりそれぞれ羽根アーム41,42と連結され、羽根32は、連結部53,54によりそれぞれ羽根アーム41,42と連結され、羽根33は、連結部55,56によりそれぞれ羽根アーム41,42と連結され、羽根34は、連結部57,58によりそれぞれ羽根アーム41,42と連結されている。これらの連結部51~58は、例えば比較的軟質の鋼材からなるリベットにより構成される。これらの連結部51~58は、羽根31~34と羽根アーム41,42とを互いに回転可能に連結している。これにより、それぞれの羽根31~34と羽根アーム41,42とによってリンク機構が構成されている。
【0013】
羽根アーム41は地板10に形成された駆動軸71を中心として回転可能に構成されており、羽根アーム42は地板10に形成された支軸72を中心として回転可能に構成されている。また、羽根アーム41には円形のレバー連結孔43が形成されており、このレバー連結孔43には、図示しない駆動レバーに形成された駆動ピン73が隙間なく嵌合している。この駆動レバーは地板10の+Z方向側に配置されており、駆動ピン73は、駆動軸71を中心とする円弧に沿って延びる地板10の円弧溝13を通って羽根アーム41のレバー連結孔43に嵌合している。
【0014】
地板10の+Z方向側には、当該技術分野において知られている駆動機構(図示せず)が設けられており、この駆動機構を用いて駆動レバーを駆動軸71周りに回転させることによって、羽根アーム41が駆動軸71を中心として回転するようになっている。羽根アーム41が駆動軸71を中心として回転すると、上述したリンク機構によって、羽根アーム42も支軸72を中心として回転し、羽根31~34が互いに重なる領域を変化させつつ、XY平面上を主としてY方向(開閉方向)に移動して露光開口を開閉するようになっている。
【0015】
ここで、
図2に示すように、最も-Z方向側に位置する羽根31(第1の羽根)は、金属又は樹脂から形成される羽根本体310(第1の羽根本体)と、羽根本体310の-Z方向側の面に貼付される熱伝導性テープ311(第1の熱伝導性テープ)とを有している。この羽根31の+Z方向側に位置する羽根32~34(第2の羽根)も同様に、金属又は樹脂から形成される羽根本体320,330,340(第2の羽根本体)と、羽根本体320,330,340の-Z方向側の面に貼付される熱伝導性テープ321,331,341(第2の熱伝導性テープ)とを有している。これらの熱伝導性テープ311,321,331,341は、羽根本体310,320,330,340よりも高い熱伝導率を有するものであり、このような熱伝導性テープ311,321,331,341としては、例えばスリーエム社製の熱伝導性転写テープVHR0601-03などを用いることができる。
【0016】
また、最も-Z方向側に位置する羽根31は、-Y方向側の縁部に位置し、-Z方向側に折れ曲がる折曲部315(
図1における網掛け部分)を有している。本実施形態では、この折曲部315の-Z方向側の先端がカバー板20に接触可能となっている。
【0017】
このように、本実施形態によれば、羽根駆動装置1に隣接して配置される撮像素子90で発生した熱を羽根31~34の熱伝導性テープ311,321,331,341に伝達させ、この熱を羽根31~34の開閉方向の移動によって周囲に放射することができる。このため、撮像素子90を効果的に冷却することができる。本実施形態では、いずれの羽根31~34も熱伝導性テープ311,321,331,341を有しており、効果的に撮像素子90を冷却することができる。羽根31~34のうち最も-Z方向側に位置する羽根31が熱伝導性テープ311を有していることが特に重要であり、他の羽根32~34は熱伝導性テープ321,331,341を有していなくてもよい。
【0018】
また、本実施形態では、羽根31が―Z方向側に折れ曲がる折曲部315を有しているので、羽根31がY方向に移動する際に、折曲部315によって周囲の空気に流れ(風)を生じる。このような空気の流れによって撮像素子90をより効果的に冷却することができる。さらに、この折曲部315の先端がカバー板20に接触可能に構成されているので、撮像素子90から羽根31に伝達された熱を折曲部315を介してさらにカバー板20に伝達することができる。これにより、撮像素子90の冷却効果がさらに高まる。
【0019】
以上述べたように、本発明の第1の態様によれば、隣接して配置される撮像素子を簡単な構造で効果的に冷却することができる羽根駆動装置が提供される。具体的には、本発明に係る羽根駆動装置は、以下のような構成を採用することができる。
【0020】
(構成1)
羽根駆動装置は、開口が形成された地板と、前記開口を開閉するように開閉方向に移動可能な第1の羽根とを備える。上記第1の羽根は、金属又は樹脂から形成される第1の羽根本体と、上記第1の羽根本体よりも高い熱伝導率を有し、上記第1の羽根本体の上記地板とは反対側の面に貼付される第1の熱伝導性テープとを含む。
【0021】
このような構成によれば、羽根駆動装置に隣接して配置される撮像素子で発生した熱を第1の羽根の第1の熱伝導性テープに伝達させ、この熱を第1の羽根の開閉方向の移動によって周囲に放射することができる。このため、羽根駆動装置に隣接して配置される撮像素子を効果的に冷却することができる。
【0022】
(構成2)
上記構成1において、上記羽根駆動装置は、上記第1の羽根と上記地板との間に配置され、上記開口を開閉するように上記開閉方向に移動可能な少なくとも1つの第2の羽根をさらに備えていてもよい。上記少なくとも1つの第2の羽根は、金属又は樹脂から形成される第2の羽根本体と、上記第2の羽根本体よりも高い熱伝導率を有し、上記第2の羽根本体の上記地板とは反対側の面に貼付される第2の熱伝導性テープとを含み得る。このように、上記第1の羽根に加えて、第1の羽根と地板との間に、第1の羽根と同様の構成の第2の羽根を配置することにより、羽根駆動装置に隣接して配置される撮像素子で発生した熱を第1の羽根だけではなく第2の羽根も使って放射することができるので、撮像素子をより効果的に冷却することができる。
【0023】
(構成3)
上記構成1又は2において、上記第1の羽根は、上記開閉方向の縁部に位置し、上記地板と反対側に折れ曲がる折曲部を有していてもよい。このような折曲部によって、第1の羽根が開閉方向に移動する際に周囲の空気に流れを生じさせることができるので、撮像素子の冷却効果が高まる。
【0024】
(構成4)
上記構成3において、上記羽根駆動装置は、上記折曲部の先端が接触可能な位置に配置されたカバー板をさらに備えていてもよい。このように折曲部の先端をカバー板に接触可能とすることで、撮像素子から第1の羽根に伝達された熱をこのような折曲部を介してさらにカバー板に伝達することができるので、撮像素子の冷却効果がさらに高まる。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、簡単な構造で撮像素子を効果的に冷却することができる撮像装置が提供される。この撮像装置は、上記構成1から4のいずれかにおける羽根駆動装置と、上記羽根駆動装置の上記地板に形成された開口部を透過した光が結像する面に配置された撮像素子とを備える。このような構成によれば、上述のように、羽根駆動装置に隣接して配置される撮像素子を効果的に冷却することができる。
【0026】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0027】
1 羽根駆動装置
10 地板
13 円弧溝
17 駆動軸
20 カバー板
31 (第1の)羽根
32~34 (第2の)羽根
41,42 羽根アーム
43 レバー連結孔
51~58 連結部
90 撮像素子
310 (第1の)羽根本体
311 (第1の)熱伝導性テープ
315 折曲部
320,330,340 (第2の)羽根本体
321,331,341 (第2の)熱伝導性テープ
S1,S2 開口