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特開2023-181910硬化性組成物、該組成物の硬化物、該組成物および該硬化物の製造方法、ならびに半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181910
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】硬化性組成物、該組成物の硬化物、該組成物および該硬化物の製造方法、ならびに半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20231218BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231218BHJP
   C08L 61/34 20060101ALI20231218BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20231218BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20231218BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231218BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C08G59/40
C08L63/00 A
C08L61/34
C08L71/12
C08K5/13
C08K3/013
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095295
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】古俣 歩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 樹生
(72)【発明者】
【氏名】水野 克俊
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J002CC03Z
4J002CC28Y
4J002CD02W
4J002CD07W
4J002CH07X
4J002EJ028
4J002EJ038
4J002EJ048
4J002EK019
4J002EK029
4J002EK039
4J002EK059
4J002EK069
4J002EK089
4J002EU236
4J002FD017
4J002FD148
4J002FD14Z
4J002GQ01
4J002GQ05
4J036AE05
4J036AJ09
4J036DB05
4J036DB06
4J036DC09
4J036DC10
4J036DC17
4J036FB07
4J036FB12
4J036HA12
4J036JA07
4M109AA01
4M109EA03
4M109EA11
4M109EB02
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB12
4M109EC05
4M109EC07
(57)【要約】
【課題】はんだ耐熱性に優れながら、低誘電特性を有する硬化物を得るための硬化性組成物、その硬化物、ならびに該硬化性組成物および該硬化物の製造方法を提供する。また、前記硬化物を封止材として用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】本発明の硬化性組成物は、(A)ベンゾオキサジン化合物と、(B)エポキシ化合物と、(C)ポリフェニレンエーテル化合物とを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ベンゾオキサジン環を少なくとも二つ有する多官能ベンゾオキサジン化合物であって、式(1)の構造単位を有する多官能ベンゾオキサジン化合物、および式(2)の構造で示される多官能ベンゾオキサジン化合物から選択される少なくとも1種の多官能ベンゾオキサジン化合物と、
(B)ノルボルナン構造を少なくとも一つ、およびエポキシ基を少なくとも二つ有するエポキシ化合物と、
(C)ポリフェニレンエーテル化合物と
を含有する、硬化性組成物。
【化1】
[式(1)中、Rは炭素数1~12の鎖状アルキル基、炭素数3~8の環状アルキル基、または炭素数6~14のアリール基を示し、該アリール基は置換基としてハロゲンまたは炭素数1~12の鎖状アルキル基を有していてもよい。Zは、水素、炭素数1~8の炭化水素基および/または連結基を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、かつ、少なくとも一つは連結基であり、該連結基によってベンゾオキサジン環同士が連結している。]
【化2】
[式(2)中、Lは芳香環を1~5個有する2価の有機基または炭素数2~10のアルキレン基であって、該有機基およびアルキレン基は酸素および/または硫黄を含んでいてもよい。]
【請求項2】
前記(B)エポキシ化合物が、脂環式エポキシ化合物である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(C)ポリフェニレンエーテル化合物が、ポリフェニレンエーテル鎖を分子中に有している化合物である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記(C)ポリフェニレンエーテル化合物が、式(3)の繰り返し単位を分子中に有している化合物である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【化3】
[式(3)中、mは、1~50を示す。R~Rは、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、またはアルキニルカルボニル基を示し、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。]
【請求項5】
前記(C)ポリフェニレンエーテル化合物の含有量が、前記硬化性組成物100質量部に対して、5~80質量部である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
(D)硬化剤をさらに含有する、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記(D)硬化剤がフェノール系硬化剤である、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記(A)ベンゾオキサジン化合物のベンゾオキサジン環数と、前記(B)エポキシ化合物のエポキシ基数と、前記(D)フェノール系硬化剤の水酸基数が、下記数式(1)を満たす、請求項7に記載の硬化性組成物。
【数1】
【請求項9】
(E)ラジカル重合開始剤をさらに含有する、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
(F)無機充填剤をさらに含有する、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1または2に記載の硬化性組成物を硬化させてなる、硬化物。
【請求項12】
請求項1または2に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物中に半導体素子が設置されている、半導体装置。
【請求項13】
請求項1に記載の硬化性組成物の製造方法であって、
(A)ベンゾオキサジン化合物と、
(B)エポキシ化合物と
を混合して第一の混合物を得る工程、
第一の混合物と、
(C)ポリフェニレンエーテル化合物と
を混合して第二の混合物を得る工程
を有する、硬化性組成物の製造方法。
【請求項14】
前記第一の混合物を得る工程において、(D)硬化剤、(E)ラジカル重合開始剤、および(F)無機充填剤からなる群から選択される少なくとも一つの成分をさらに混合して混合物を得る、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の方法により製造した前記硬化性組成物を150~300℃にて20秒間~6時間加熱して硬化させる工程
を有する、硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電特性の硬化物を得るための硬化性組成物、およびその硬化物、ならびに該硬化性組成物および該硬化物の製造方法に関する。さらに、前記硬化物を封止材として用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化樹脂は半導体封止材、繊維強化プラスチック等各種用途に使用され、その一原料としてベンゾオキサジン化合物が使用されている。ベンゾオキサジン化合物とは、ベンゼン骨格とオキサジン骨格とを有するベンゾオキサジン環を含む化合物を指し、その硬化物(重合物)であるベンゾオキサジン樹脂は、耐熱性、機械的強度等の物性に優れ、多方面の用途において高性能材料として使用されている。
【0003】
さらに、硬化樹脂を高速通信用電子機器向けの材料等に用いる際に、信号の伝送速度を高め、信号伝達時の損失を低減させるために比誘電率や誘電正接といった誘電特性が低いことが求められる。
【0004】
また、欧州連合(EU)においては、電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についての欧州連合による指令(RoHS指令)により、はんだは鉛の使用量を制限されている。そこで、近年鉛フリーはんだが用いられているが、鉛フリーはんだは融点が高いため、各工程を通常のはんだより高温(例えば、200℃後半~300℃前半)下で実施する必要があるため、はんだ耐熱性が求められる。ここで、ガラス転移温度が高くても、熱分解が進みやすいもの(例えば、熱分解温度が低い、または高くても熱分解速度が速いもの)や、その際にガスが発生しやすいもの(揮発分が多いもの)は、応力集中部へのクラックや、フクレ(ブリスターとも呼ばれる)等が発生するため、はんだ耐熱性を有さない。
【0005】
特許文献1には、特定のポリアリーレンエーテル共重合体とベンゾオキサジン化合物を含む熱硬化性化合物とを特定量含有する樹脂組成物が、誘電特性に優れ、その硬化物が耐熱性、寸法安定性および成形性に優れることが記載されている。
【0006】
特許文献2には、ベンゾオキサジン化合物を用いるものではないが、三官能エポキシ樹脂および四官能エポキシ樹脂の中から選択されるエポキシ樹脂、1分子内に少なくとも2個の水酸基を有する硬化剤、1分子内に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物、および無機充填剤を含有するエポキシ樹脂組成物が、難燃性、耐半田クラック性、流動性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-127417号公報
【特許文献2】国際公開第2007/037500号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らは、特許文献1~2には、以下の技術的課題が存在することを見出した。特許文献1に記載の樹脂組成物は、ポリアリーレンエーテルを含むため、はんだ耐熱性が十分ではないという課題があった。特許文献2に記載の樹脂組成物は、誘電特性が不十分であるという課題があった。
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定のベンゾオキサジン化合物、特定のエポキシ化合物およびポリフェニレンエーテルを含有する硬化性組成物を開発し、該硬化性組成物の硬化物がはんだ耐熱性に優れ、低誘電特性を有することを見出した。
【0010】
したがって、本発明は、はんだ耐熱性に優れながら、低誘電特性を有する硬化物を得るための硬化性組成物を提供することを一つの目的とする。また、本発明の別の目的は、上記硬化性組成物を硬化させてなる硬化物、ならびに上記硬化性組成物および該硬化物の製造方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、当該硬化性組成物を封止材として用いた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A)ベンゾオキサジン環を少なくとも二つ有する多官能ベンゾオキサジン化合物であって、式(1)の構造単位を有する多官能ベンゾオキサジン化合物、および式(2)の構造で示される多官能ベンゾオキサジン化合物から選択される少なくとも1種の多官能ベンゾオキサジン化合物と、
(B)ノルボルナン構造を少なくとも一つ、およびエポキシ基を少なくとも二つ有するエポキシ化合物と、
(C)ポリフェニレンエーテル化合物と
を含有する、硬化性組成物。
【化1】
[式(1)中、Rは炭素数1~12の鎖状アルキル基、炭素数3~8の環状アルキル基、または炭素数6~14のアリール基を示し、該アリール基は置換基としてハロゲンまたは炭素数1~12の鎖状アルキル基を有していてもよい。Zは、水素、炭素数1~8の炭化水素基および/または連結基を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、かつ、少なくとも一つは連結基であり、該連結基によってベンゾオキサジン環同士が連結している。]
【化2】
[式(2)中、Lは芳香環を1~5個有する2価の有機基または炭素数2~10のアルキレン基であって、該有機基およびアルキレン基は酸素および/または硫黄を含んでいてもよい。]
[2] 前記(B)エポキシ化合物が、脂環式エポキシ化合物である、[1]に記載の硬化性組成物。
[3] 前記(C)ポリフェニレンエーテル化合物が、ポリフェニレンエーテル鎖を分子中に有している化合物である、[1]または[2]に記載の硬化性組成物。
[4] 前記(C)ポリフェニレンエーテル化合物が、式(3)の繰り返し単位を分子中に有している化合物である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の硬化性組成物。
【化3】
[式(3)中、mは、1~50を示す。R~Rは、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、またはアルキニルカルボニル基を示し、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。]
[5]
前記(C)ポリフェニレンエーテル化合物の含有量が、前記硬化性組成物100質量部に対して、5~80質量部である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の硬化性組成物。
[6] (D)硬化剤をさらに含有する、[1]~[5]のいずれか一つに記載の硬化性組成物。
[7] 前記(D)硬化剤がフェノール系硬化剤である、[6]に記載の硬化性組成物。
[8] 前記(A)ベンゾオキサジン化合物のベンゾオキサジン環数と、前記(B)エポキシ化合物のエポキシ基数と、前記(D)フェノール系硬化剤の水酸基数が、下記数式(1)を満たす、[7]に記載の硬化性組成物。
【数1】
[9] (E)ラジカル重合開始剤をさらに含有する、[1]~[8]のいずれか一つに記載の硬化性組成物。
[10] (F)無機充填剤をさらに含有する、[1]~[9]のいずれか一つに記載の硬化性組成物。
[11] [1]~[10]のいずれか一つに記載の硬化性組成物を硬化させてなる、硬化物。
[12] [1]~[11]のいずれか一つに記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物中に半導体素子が設置されている、半導体装置。
[13] [1]~[10]のいずれか一つに記載の硬化性組成物の製造方法であって、
(A)ベンゾオキサジン化合物と、
(B)エポキシ化合物と
を混合して第一の混合物を得る工程、
第一の混合物と、
(C)ポリフェニレンエーテル化合物と
を混合して第二の混合物を得る工程
を有する、硬化性組成物の製造方法。
[14] 前記第一の混合物を得る工程において、(D)硬化剤、(E)ラジカル重合開始剤、および(F)無機充填剤からなる群から選択される少なくとも一つの成分をさらに混合して混合物を得る、[13]に記載の製造方法。
[15] [13]または[14]に記載の方法により製造した前記硬化性組成物を150~300℃にて20秒間~6時間加熱して硬化させる工程
を有する、硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の硬化性組成物は、成分(A)~(C)を含有し、さらに所望により成分(D)、(E)、(F)を含有する新規な硬化性組成物であり、該硬化性組成物の硬化物ははんだ耐熱性に優れながら、低誘電特性を有するという特徴を有している。したがって、本発明の硬化性組成物は、低誘電特性を要求されながら、はんだ耐熱性を必要とされる用途、例えば、高速通信用電子機器向けの材料(封止材)、プリプレグ、前記プリプレグを用いた金属張積層板、および前記プリプレグを用いて製造されたプリント配線板等の用途に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[硬化性組成物]
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の成分(A)~(E)における「化合物」や「硬化剤」、「ラジカル重合開始剤」とは、単量体だけでなく、該単量体が重合したオリゴマー、例えば、少量重合したオリゴマー、すなわち硬化樹脂を形成する前のプレポリマーも含むものとする。したがって、本発明の硬化性組成物は、硬化性樹脂組成物であってもよい。
【0014】
(成分(A))
硬化性組成物を構成する成分(A)は、ベンゾオキサジン化合物であり、好ましくは、式(1)の構造単位を有する多官能ベンゾオキサジン化合物、および式(2)の構造で示される多官能ベンゾオキサジン化合物から選択される少なくとも1種の、ベンゾオキサジン環を少なくとも二つ有する多官能ベンゾオキサジン化合物である。なお、上記式(1)のZは、水素、置換基および/または連結基(スペーサー)を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、かつ、少なくとも一つは連結基であり、該連結基によってベンゾオキサジン環同士が連結されている。なお、ここで連結基とは、二つのベンゾオキサジン環が他の基を介さずに直接結合しているものも含むものとする。また、上記置換基とは、例えば、炭素数1~8の炭化水素基が挙げられる。
したがって、上記式(1)は、成分(A)の選択肢の内、ベンゼン環部分で二つ以上のベンゾオキサジン環が連結されている化合物についてその構造単位を表したものである。
【0015】
式(1)の多官能ベンゾオキサジン化合物を、より具体的に表すと、式(1a)に示す構造として表すことができる。
【化4】
[式(1a)中、Rは炭素数1~12の鎖状アルキル基、炭素数3~8の環状アルキル基、または炭素数6~14のアリール基を示し、該アリール基は置換基としてハロゲンまたは炭素数1~12の鎖状アルキル基を有していてもよい。Rは各々同一であっても異なっていてもよい。Xは、水素または炭素数1~8の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていてもよい。Yは、炭素数1~6のアルキレン基、酸素、硫黄、SO基、またはカルボニル基である。mは0または1である。nは1~10の整数である。]
【0016】
式(1)および(1a)のRの具体例としては、以下の基を例示できる。
炭素数1~12の鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基が挙げられる。
炭素数3~8の環状アルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
炭素数6~14のアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニル基が挙げられる。
炭素数6~14のアリール基は置換されていてもよく、その置換基としては炭素数1~12の鎖状アルキル基またはハロゲンが挙げられる。炭素数1~12の鎖状アルキル基もしくはハロゲンで置換された、炭素数6~14のアリール基としては、例えば、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基、o-エチルフェニル基、m-エチルフェニル基、p-エチルフェニル基、o-t-ブチルフェニル基、m-t-ブチルフェニル基、p-t-ブチルフェニル基、o-クロロフェニル基、o-ブロモフェニル基が挙げられる。
取り扱い性が良好な点において、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、およびp-トリル基から選択されることが好ましい。
さらに、成分(A)は、各々Rが異なる複数種の式(1)または(1a)に示す化合物の混合物であってもよい。
【0017】
式(1)および(1a)のXにおける炭素数1~8の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、好ましくは、アリール基である。
【0018】
式(1)または(1a)で示される多官能ベンゾオキサジン化合物としては、下記式(1X)で表される化合物、および該化合物が少量重合したオリゴマーを例示できる。
【化5】
【0019】
成分(A)の他の選択肢である式(2)の多官能ベンゾオキサジン化合物は、二つのベンゾオキサジン環の窒素原子(N原子)同士が連結基Lを介して結合している化合物である。
【化6】
[式(2)中、Lは芳香環を1~5個有する2価の有機基または炭素数2~10のアルキレン基であって、該有機基およびアルキレン基は酸素および/または硫黄を含んでいてもよい。]
本発明の組成物は、式(2)で示されLが異なる複数種の多官能ベンゾオキサジン化合物を成分(A)として含有していてもよい。
【0020】
式(2)のLが芳香環を有する基である場合、芳香環の数は1~5個であり、例えば、単環化合物、多環化合物、および縮合環化合物が挙げられる。また、L中に酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。
具体例として、下記式(2a)に示す基を挙げることができる。
【化7】
【0021】
式(2)のLがアルキレン基である場合、その炭素数は1~10が挙げられ、好ましくは1~6である。上記アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基等が挙げられ、好ましくは、メチレン基である。
【0022】
式(2)の多官能ベンゾオキサジン化合物としては、下記式(2X)で表される化合物、および該化合物が重合したオリゴマー、例えば、少量重合したオリゴマー、を例示できる。
【化8】
【0023】
成分(A)の多官能ベンゾオキサジン化合物としては、好ましくは、ビスフェノールF-アニリン(F-a)型ベンゾオキサジン、フェノール-ジアミノジフェニルメタン(P-d)型ベンゾオキサジン、3-[4-[4-(2,4-ジヒドロ-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェノキシ]フェニル]-2,4-ジヒドロ-1,3-ベンゾオキサジン(3-[4-[4-(2,4-dihydro-1,3-benzoxazin-3-yl)phenoxy]phenyl]-2,4-dihydro-1,3-benzoxazine)、3-[3-[4-(2H-1,3-ベンゾオキサジン-3(4H)-イル)フェノキシ]フェニル]-3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン(3-[3-[4-(2H-1,3-benzoxazin-3(4H)-yl)phenoxy]phenyl]-3,4-dihydro-2H-1,3-Benzoxazine)(以下、3,4'-APE-BOZともいう)であり、より好ましくは、フェノール-ジアミノジフェニルメタン(P-d)型ベンゾオキサジン、3,4'-APE-BOZである。ここで、3,4'-APE-BOZは特開2018-184533号公報の合成例1の記載に基づいて製造できる。
【0024】
成分(A)の多官能ベンゾオキサジン化合物としては市販品を使用することもできる。市販品としては、ビスフェノールF-アニリン(F-a)型ベンゾオキサジン、フェノール-ジアミノジフェニルメタン(P-d)型ベンゾオキサジン(いずれも四国化成株式会社製)等を例示できる。
【0025】
成分(A)ベンゾオキサジン化合物のベンゾオキサジン当量は、反応性良化の観点から、好ましくは135g/eq以上600g/eq以下であり、より好ましくは140g/eq以上400g/eq以下である。ここで、成分(A)ベンゾオキサジン化合物のベンゾオキサジン当量とは、成分(A)ベンゾオキサジン化合物におけるベンゾオキサジン環を1官能とした場合の当量をいう。
【0026】
成分(A)ベンゾオキサジン化合物のベンゾオキサジン環数(mol)は、成分(A)ベンゾオキサジン化合物のベンゾオキサジン当量から算出される。なお、本発明の組成物が成分(A)として複数種のベンゾオキサジン化合物を含有する場合、上記ベンゾオキサジン環数はこれら化合物のベンゾオキサジン当量から計算した環数の合計とする。
【0027】
(成分(B))
硬化性組成物を構成する成分(B)は、ノルボルナン構造を少なくとも一つ、およびエポキシ基を少なくとも二つ有するエポキシ化合物である(以下、単に「多官能エポキシ化合物」ともいう)。本発明の組成物は成分(B)として複数種の多官能エポキシ化合物を含有していてもよい。
【0028】
本発明の一つの実施態様によれば、多官能エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【0029】
本発明の好ましい実施態様によれば、多官能エポキシ化合物はグリシジル基を有する。グリシジル基を有する脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物が挙げられ、市販品を使用することもできる。例えば、エピクロン(登録商標)HP-7200、DIC株式会社製、エポキシ当量254~264g/eq;エピクロン(登録商標)HP7200L、DIC株式会社製、エポキシ当量242~252g/eq;エピクロン(登録商標)HP7200H、DIC株式会社製、エポキシ当量272~284g/eq;XD-1000、日本化薬株式会社製、エポキシ当量254g/eq;XD-1000-L、日本化薬株式会社製、エポキシ当量240~255g/eq;XD-1000-2L、日本化薬株式会社製、エポキシ当量235~250g/eq、Tactix558、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製が挙げられる。
【0030】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、多官能エポキシ化合物はグリシジル基を有さない。
【0031】
本発明の一つの実施態様によれば、多官能エポキシ化合物としては、下記式(4)に示す、5員環、6員環またはノルボルナン環に結合したエポキシ構造を有することがより好ましい。
【化9】
【0032】
グリシジル基を有さない脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、下記式(5)で表される化合物を例示することができる。
【化10】
【0033】
成分(B)の脂環式エポキシ化合物のうち、上記式(5)で表される化合物は国際公開第2020/218457号に記載の方法に準じて製造できる。
【0034】
成分(B)ノルボルナン構造を少なくとも一つ、およびエポキシ基を少なくとも二つ有するエポキシ化合物のエポキシ当量は、反応性良化の観点から、好ましくは50g/eq以上400g/eq以下であり、より好ましくは80g/eq以上300g/eq以下である。
【0035】
成分(B)のエポキシ化合物のエポキシ基数(mol)は、エポキシ当量から算出される。なお、本発明の組成物が成分(B)として複数種のエポキシ化合物を含有する場合、上記エポキシ基数はこれら化合物のエポキシ基数の合計とする。
【0036】
成分(A)ベンゾオキサジン化合物と成分(B)エポキシ化合物との配合割合は、成分(A)100質量部に対して、成分(B)が5~300質量部が好ましく、10~200質量部がより好ましく、50~100質量部がさらに好ましい。成分(A)と(B)との配合割合が上記範囲内にあると、より優れた耐熱性を得ることができる。
ここで、本発明の組成物が成分(A)として複数種のベンゾオキサジン化合物を含有する場合、これら化合物の配合量の合計を100質量部とみなす。本発明の組成物が成分(B)として複数種のエポキシ化合物を含有する場合、上記成分(B)の配合量は複数種の化合物の配合量の合計を意味する。
【0037】
成分(B)エポキシ化合物の配合割合は、成分(A)ベンゾオキサジン化合物と成分(B)エポキシ化合物と成分(C)ポリフェニレンエーテル化合物との合計100質量部に対して、5~60質量部が好ましく、10~50質量部がより好ましい。成分(B)エポキシ化合物の配合割合が上記範囲内にあると、より優れた耐熱性やより優れた重量減少率の傾きを示すことができる。
【0038】
本発明の別の実施態様によれば、成分(B)エポキシ化合物の配合割合は、成分(A)ベンゾオキサジン化合物と成分(B)エポキシ化合物と成分(D)硬化剤との合計100質量部に対して、20~80質量部が好ましく、30~70質量部がより好ましく、35~60質量部がさらに好ましい。成分(B)エポキシ化合物の配合割合が上記範囲内にあると、より優れた耐熱性やより優れた重量減少率の傾きを示すことができる。
【0039】
ここで、本発明の組成物が成分(A)として複数種のベンゾオキサジン化合物を含有する場合、上記成分(A)の配合量は複数種の化合物の配合量の合計を意味する。また、成分(B)として複数種のエポキシ化合物を含有する場合は、上記と同様である。
【0040】
本発明の一つの実施態様によれば、硬化性組成物中の成分(A)ベンゾオキサジン化合物のベンゾオキサジン環数と成分(B)エポキシ化合物のエポキシ基数との比(成分(A)のベンゾオキサジン環数:成分(B)のエポキシ基数)(当量比)は、1:1~3が好ましく、1:1.2~2.5がより好ましい。上記比率が上記範囲内にあると、より優れた耐熱性を得ることができる。
【0041】
(成分(C))
硬化性組成物を構成する成分(C)はポリフェニレンエーテル化合物である。成分(C)としては、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンエーテル鎖を分子中に有している化合物である。
【0042】
本発明の一つの実施態様によれば、(C)ポリフェニレンエーテル化合物としては、下記の式(3)の繰り返し単位を分子中に有している化合物が好ましい。
【化11】
[式(3)中、mは、1~50を示す。R~Rは、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、またはアルキニルカルボニル基を示し、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。]
【0043】
また、式(3)において、mは、1~50を示す。また、R~Rは、それぞれ独立している。すなわち、R~Rは、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R~Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、またはアルキニルカルボニル基を示す。この中でも、水素原子またはアルキル基が好ましい。
【0044】
~Rにおいて、挙げられた各官能基としては、具体的には、以下のようなものが挙げられる。
【0045】
アルキル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、およびデシル基が挙げられる。
【0046】
また、アルケニル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルケニル基が好ましく、炭素数2~10のアルケニル基がより好ましい。具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、および3-ブテニル基が挙げられる。
【0047】
また、アルキニル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキニル基がより好ましい。具体的には、例えば、エチニル基、およびプロパ-2-イン-1-イル基(プロパルギル基)が挙げられる。
【0048】
また、アルキルカルボニル基は、アルキル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキルカルボニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、およびシクロヘキシルカルボニル基が挙げられる。
【0049】
また、アルケニルカルボニル基は、アルケニル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルケニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルケニルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、およびクロトノイル基が挙げられる。
【0050】
また、アルキニルカルボニル基は、アルキニル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルキニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルキニルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、プロピオロイル基が挙げられる。
【0051】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明において用いられるポリフェニレンエーテル化合物の末端は変性していても変性していなくてもよい。末端変性していない場合、末端は水素原子(好ましくは水酸基)が挙げられ、末端変性している場合、下記式(6)で表される基を末端に有するポリフェニレンエーテル化合物が挙げられる。
【0052】
【化12】
【0053】
式(6)中、Rは、水素原子またはアルキル基を示す。また、前記アルキル基は、特に限定されず、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、およびデシル基が挙げられる。
【0054】
また、前記式(6)で表される基としては、例えば、アクリレート基、およびメタクリレート基が挙げられる。
【0055】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のポリフェニレンエーテル化合物としては、下記式(7)~(10)で表されるポリフェニレンエーテル化合物が例示できる。
【0056】
【化13】
【0057】
【化14】
【0058】
【化15】
【0059】
【化16】
【0060】
式(7)~(10)中、s,tは、例えば、sとtとの合計値が、1~30となるものであることが好ましい。また、sが、0~20であることが好ましく、tが、0~20であることが好ましい。すなわち、sは、0~20を示し、tは、0~20を示し、sとtとの合計は、1~30を示すことが好ましい。また、Yは、炭素数1~3のアルキレン基または直接結合を示し、また、このアルキレン基としては、例えば、ジメチルメチレン基等が挙げられる。また、式(7)~(10)中、Rは、上記式(6)のRと同様であり、水素原子またはアルキル基を示す。また、前記アルキル基は、特に限定されず、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、およびデシル基が挙げられ、好ましくはメチル基である。
【0061】
本発明において用いられる(C)ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。具体的には、500~5000であることが好ましく、800~4000であることがより好ましく、1000~3000であることがさらに好ましい。なお、ここで、重量平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値等が挙げられる。また、(C)ポリフェニレンエーテル化合物が、式(3)で表される繰り返し単位を分子中に有している場合、mは、(C)ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量がこのような範囲内になるような数値であることが好ましい。具体的には、mは、1~50であることが好ましい。(C)ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量がこのような範囲内であると、より優れた誘電特性を有し、より優れた耐熱性を有する硬化物を得ることができる。
【0062】
また、本発明において用いられる(C)ポリフェニレンエーテル化合物における、ポリフェニレンエーテル1分子当たりの、分子末端に有する、前記式(6)で表される基または末端の水素原子の平均個数(末端官能基数)は、特に限定されない。具体的には、1~5個であることが好ましく、1~3個であることがより好ましく、1.5~3個であることがさらに好ましい。
【0063】
成分(C)の配合割合としては、硬化性組成物100質量部に対して、成分(C)を5~80質量部の範囲とすることが好ましく、10~75質量部がより好ましい。本発明の別の実施態様によれば、硬化性組成物が(F)無機充填剤を含有する場合、硬化性組成物100質量部に対して、成分(C)を5~20質量部の範囲とすることが好ましく、5~10質量部がより好ましい。成分(C)をこの範囲で含有することにより、より優れた誘電特性を有する硬化物を得ることができる。
【0064】
本発明の別の実施態様によれば、成分(C)の配合割合としては、成分(A)ベンゾオキサジン化合物と成分(B)エポキシ化合物と成分(C)ポリフェニレンエーテル化合物との合計100質量部に対して、成分(C)を20~80質量部の範囲とすることが好ましく、30~75質量部がより好ましい。成分(C)をこの範囲で含有することにより、より優れた誘電特性を有する硬化物を得ることができる。
【0065】
なお、成分(C)の配合割合において、本発明の組成物が成分(A)として複数種のベンゾオキサジン化合物を含有する場合および/または成分(B)として複数種のエポキシ化合物を含有する場合、それら配合量は上記と同様、複数種の化合物の配合量の合計を意味する。
【0066】
(成分(D))
本発明の一つの実施態様によれば、本発明の硬化性組成物は所望により成分(D)として硬化剤を含んでいても良い。成分(D)としては、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に限定されないが、例えば、フェノール系硬化剤、過酸化物系硬化剤、硫黄系(チオール系)硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤が挙げられ、好ましくは、フェノール系硬化剤である。フェノール系硬化剤としては、例えば、単官能フェノール、多官能フェノール化合物(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールスルフィド(例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド等)、ポリフェノール化合物(例えば、ピロガロール等)等)、フェノールノボラック樹脂(例えば、アリル基を有するフェノールノボラック樹脂)、フェノールアラルキル樹脂(例えば、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂)等が挙げられ、好ましくは、ビスフェノールF、フェノールノボラック樹脂である。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0067】
成分(D)のフェノール系硬化剤としては市販品を使用することもできる。例えば、ビスフェノールF(本州化学工業株式会社製、水酸基当量100.115g/eq)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド(TDP、東京化成工業株式会社製、水酸基当量109g/eq)、2,7-ジヒドロキシナフタレン(東京化成工業株式会社製、水酸基当量80g/eq)、ピロガロール(東京化成工業株式会社製、水酸基当量42g/eq)、フェノールノボラック樹脂(例えば、MEH-8000H、明和化成株式会社;MEH-8005、明和化成株式会社;フェノライトTD-2131、DIC株式会社、水酸基当量104g/eq;フェノライトTD-2106、DIC株式会社、水酸基当量104g/eq;フェノライトTD-2090、DIC株式会社、水酸基当量105g/eq)、フェノールアラルキル樹脂(例えば、MEHC-7851SS、水酸基当量203g/eq、明和化成株式会社製;MEH-7800-4S、水酸基当量169g/eq、明和化成株式会社製)、アルキルフェノール樹脂(例えば、ELPC75、水酸基当量206g/eq、群栄化学工業株式会社製;ELP83H、水酸基当量223g/eq群栄化学工業株式会社製)等が挙げられる。これらを1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0068】
成分(D)の配合割合としては、成分(A)および(B)の合計100質量部に対して、成分(D)を5~30質量部の範囲とすることが好ましく、7~20質量部がより好ましい。成分(D)をこの範囲で含有することにより、より優れた高耐熱性の硬化物を得ることができる。
なお、本発明の組成物が成分(A)として複数種のベンゾオキサジン化合物を含有する場合および/または成分(B)として複数種のエポキシ化合物を含有する場合、それら配合量は上記と同様である。
【0069】
成分(D)フェノール系硬化剤の水酸基当量は、反応性良化の観点から、好ましくは80g/eq以上400g/eq以下であり、より好ましくは90g/eq以上250g/eq以下である。
【0070】
成分(D)のフェノール系硬化剤の水酸基数(mol)は、水酸基当量から算出される。なお、本発明の組成物が成分(D)として複数種のフェノール系硬化剤を含有する場合、上記水酸基数はこれら硬化剤の水酸基数の合計とする。
【0071】
本発明の一つの実施態様によれば、硬化性組成物中の成分(B)エポキシ化合物のエポキシ基数、成分(A)ベンゾオキサジン化合物のベンゾオキサジン環数、および成分(D)フェノール系硬化剤の水酸基数の官能基数の比が下記数式(1)を満たすことが好ましい。
【数2】
上記数式(1)における官能基数の比は、より好ましくは0.9~4であり、さらに好ましくは0.95~3.5であり、さらに好ましくは1~3である。数式(1)の各成分の官能基数の比が当該範囲内にあると、より低い誘電特性を有し、より優れたはんだ耐熱性を有する硬化物を得ることができる。
【0072】
本発明の一つの実施態様によれば、硬化性組成物中の成分(A)ベンゾオキサジン化合物のベンゾオキサジン環数と成分(D)フェノール系硬化剤の水酸基数の官能基数の比との比(成分(A)のベンゾオキサジン環数:成分(D)の水酸基数)(当量比)は、1:0.1~2が好ましく、1:0.2~1.5がより好ましい。上記比率が上記範囲内にあると、より優れた耐熱性を得ることができる。
【0073】
(成分(E))
本発明の一実施態様によれば、本発明の硬化性組成物は、所望により(E)ラジカル重合開始剤をさらに含有してもよい。特に、成分(C)ポリフェニレンエーテル化合物がビニル基を有する場合、(E)ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。
【0074】
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、好適な例としては、熱ラジカル重合開始剤または光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0075】
本発明の一実施態様によれば、硬化性組成物に含有できる熱ラジカル重合開始剤としては、過酸化物類、アゾ系化合物類等の熱ラジカル重合開始剤が好ましい。また、上記硬化性組成物は、2種以上の熱ラジカル重合開始剤を含んでいてもよい。
【0076】
過酸化物類としては、例えば、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド;メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルシクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド;1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール;p-メンタンヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド;オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド;ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル等が挙げられ、好ましくは、t-ブチルクミルパーオキシドである。
【0077】
アゾ系化合物類としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2’-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
【0078】
本発明の一実施態様によれば、硬化性組成物におけるラジカル重合開始剤の配合割合としては、例えば、成分(A)、(B)および(C)の合計100質量部に対して、成分(E)を通常0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.1~1質量部とすることができる。
【0079】
(成分(F))
本発明の硬化性組成物は、所望により(F)無機充填剤をさらに含有してもよい。例えば、半導体素子等の封止材用途に本発明の硬化性組成物を使用する場合は、成分(F)を含有することが好ましい。本発明で用いる無機充填剤は特に限定されず、硬化性組成物あるいはその硬化物の用途あるいは付与したい性状を考慮して選択することができる。以下、この無機充填剤を成分(F)と称する。
成分(F)の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム等の炭酸塩;硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素、窒化マンガン等の窒化物;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ素化合物;ホウ酸アルミニウム等のホウ素化合物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等のジルコニウム化合物;リン酸ジルコニウム、リン酸マグネシウム等のリン化合物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等のチタン化合物;マイカ、タルク、カオリン、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、コーディエライト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノトライト、ゼオライト、ハイドロタルサイト、水和石膏、ミョウバン、ケイ藻土、ベーマイト等の鉱物類;フライアッシュ、脱水汚泥、ガラスビーズ、ガラスファイバー、ケイ砂、マグネシウムオキシサルフェイト、シリコン酸化物、シリコンカーバイド等;銅、鉄、コバルト、ニッケル等の金属あるいはそのいずれかを含む合金;センダスト、アルニコ磁石、フェライト等の磁性材料;黒鉛、コークス等が挙げられる。成分(F)は、好ましくはシリカまたはアルミナである。シリカの例としては、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、無定形シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられ、好ましくは、溶融シリカである。成分(F)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
成分(F)は粒状であってもよく、その場合の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上150μm以下が挙げられ、好ましくは、0.1μm以上120μm以下、より好ましくは、0.5μm以上75μm以下である。この範囲であれば、例えば、本発明の組成物を半導体素子の封止材用途に使用する場合、金型キャビティへの充填性がより良好となる。成分(F)の平均粒径はレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填剤の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填剤を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製「LA-500」、「LA-750」、「LA-950」、「LA-960」等を使用することができる。
【0081】
成分(F)の配合割合としては、硬化性組成物の高耐熱性の硬化物が得られる限り、特に限定されず、用途に応じて適宜設定できる。例えば、組成物を半導体封止用途、銅張積層板用プリプレグに使用する場合は以下に示す配合割合が好ましい。
成分(F)の配合割合の下限値は、硬化性組成物100質量部に対して、例えば30質量部以上(すなわち、30質量%以上)が挙げられ、35質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましい。また、成分(F)の配合割合の上限値は、硬化性組成物100質量部に対して、例えば、95質量部以下が挙げられ、90質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましい。成分(F)の配合割合の下限値が30質量部以上であれば、硬化性組成物の硬化に伴う吸湿量の増加や強度の低下をより抑制でき、したがってより良好な耐半田クラック性を有する硬化物を得ることができる。また、成分(F)の配合割合の上限値が95質量部以下であれば、硬化物がより良好な封止性能を発揮できる。
【0082】
(その他の成分)
本発明の一実施態様によれば、本発明の硬化性組成物には、その性能を損なわない範囲で、例えば、ナノカーボン、難燃剤、離型剤、低応力添加剤、金属水酸化物、硬化促進剤、密着性付与剤等を配合することができる。
ナノカーボンとしては、例えば、カーボンナノチューブ、フラーレンまたはそれぞれの誘導体が挙げられる。
難燃剤としては、例えば、赤燐、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート等のリン酸エステルや、ホウ酸エステル、フォスファゼン等が挙げられる。
離型剤としては、例えば、ステアリン酸エステル、カルナバワックス等の天然ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸等の高級脂肪酸またはそのエステル、ステアリン酸亜鉛等の金属塩類、パラフィン、およびシリコーンオイル等が挙げられる。
低応力添加剤としては、シリコーンオイル、およびシリコーンゴム等が挙げられる。
金属水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、および水酸化マグネシウム等の水酸化物が挙げられる。
硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート等の有機リン化合物等が挙げられる。
密着性付与剤としては、チアゾール系密着性付与剤、トリアゾール系密着性付与剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0083】
その他の成分の配合割合としては、成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部に対して、その他の成分を0.01質量部~10質量部の範囲とすることが好ましく、0.1質量部~7質量部の範囲とすることがより好ましい。
【0084】
(硬化性組成物の特性)
本発明の一実施態様によれば、本発明の硬化性組成物が(F)無機充填剤を含有せず、FRP用プリプレグ用途等に使用する場合、硬化性組成物の100℃における粘度は、硬化性組成物の流動性やハンドリングの観点、または、該組成物に無機充填剤をより多く含有させることができるという観点から、例えば、1000Pa・s以下が挙げられ、好ましくは800Pa・s以下、より好ましくは650Pa・s以下とされる(低溶融粘度性ともいう)。下限は特に限定されないが、0.1Pa・s以上が好ましい。
本発明の別の実施態様によれば、本発明の硬化性組成物が(F)無機充填剤を含有する場合、硬化性組成物の100℃における粘度は、成型性の維持の観点から、例えば、45,000Pa・s以下が挙げられ、好ましくは40,000Pa・s以下、より好ましくは3,000Pa・s以下、さらに好ましくは1,000Pa・s以下とされる。下限は特に限定されないが、10Pa・s以上が好ましい。
上記硬化性組成物の粘度は、コーンプレート粘度計により測定することができる。このような測定は、市販のコーンプレート粘度計(例えばブルックフィールド社製)を用いることにより、簡便に行うことができる。
【0085】
[硬化性組成物の製造方法]
次に、本発明の硬化性組成物の製造方法について説明する。
成分(A)~(C)、さらに、所望により成分(D)、(E)、(F)、その他の成分、および溶剤を適宜追加して混練または混合することにより、本発明の硬化性組成物を製造することができる。
【0086】
本発明の一実施態様によれば、本発明の硬化性組成物の製造方法は、(A)ベンゾオキサジン化合物と(B)エポキシ化合物とを混合して第一の混合物を得る工程、および、第一の混合物と(C)ポリフェニレンエーテル化合物とを混合して第二の混合物を得る工程
を有する。
【0087】
前記第一の混合物を得る工程において、(D)硬化剤、(E)ラジカル重合開始剤、および(F)無機充填剤からなる群から選択される少なくとも一つの成分をさらに混合して第一の混合物を得てもよい。
【0088】
前記第二の混合物を得る工程で用いられる(C)ポリフェニレンエーテル化合物は、(C)ポリフェニレンエーテル化合物と溶剤との組成物(例えば、分散物)(以下、成分(C)含有組成物ともいう)として用いることが好ましい。上記溶剤としては、成分(C)ポリフェニレンエーテル化合物が分散または溶解できれば特に限定されないが、例えば、2-ブタノン、トルエンが挙げられ、好ましくは、2-ブタノンである。
【0089】
混練または混合方法は、特に限定されず、例えば、プラネタリーミキサー、ディスパー、ボールミル、2軸押出機、熱ロール、ニーダーまたはミックスローター等の混合装置または混練機等を用いて混合することができる。第一の混合物を得る工程での混合方法はプラネタリーミキサーが好ましく、第二の混合物を得る工程での混合方法はボールミルまたはミックスローターが好ましい。
【0090】
本発明の一実施態様によれば、上記の第二の混合物を得る工程で得られた第二の混合物を真空脱泡することにより本発明の硬化性組成物を得ることができる。
【0091】
[硬化物]
(硬化物の特性)
本発明の硬化物のはんだ耐熱性は、硬化物のガラス転移温度および硬化物の重量減少率の傾きにより評価できる。
【0092】
本発明の一実施態様によれば、硬化物の耐熱性は、ガラス転移温度を測定することにより評価できる。ガラス転移温度は、好ましくは145℃以上とされる。上限は特に限定されないが、400℃以下が好ましい。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。このような測定は、市販の示差走査熱量分析装置(例えば株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いることにより、簡便に行うことができる。
【0093】
本発明の一実施態様によれば、硬化物の重量減少率の傾きの絶対値は、例えば、0.08以下が挙げられ、好ましくは0.06以下、より好ましくは0.04以下とされる。下限は特に限定されないが、0.01以上が好ましい。重量減少率の傾きは、1%重量減少温度(Td1)と5%重量減少温度(Td5)を測定し、その2点を結んだ直線の傾き(=(95-99)/(Td1-Td5))(%/℃)である。上記重量減少率は、熱重量示差熱分析装置により測定することができる。このような測定は、市販の熱重量示差熱分析装置(例えば株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いることにより、簡便に行うことができる。
【0094】
本発明の一実施態様によれば、硬化物の誘電特性は、比誘電率および誘電正接(tanδ)から選択される少なくとも一つを測定することにより評価できる。かかる比誘電率および誘電正接は、伝達損失低減の観点から低いことが好ましい。本発明の硬化物の1GHzにおける比誘電率の値は、4.5以下が挙げられ、好ましくは3.5未満、より好ましくは3.1未満である。比誘電率の下限は特に限定されないが、2.0以上が好ましい。本発明の硬化物の1GHzにおける誘電正接の値は、0.024以下が挙げられ、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.01以下である。誘電正接の下限は特に限定されないが、0.002以上が好ましい。硬化物の比誘電率および誘電正接の測定は、空洞共振器摂動法により測定することができる。このような測定は、市販の測定共振器(例えば、TMR-1A、キーコム株式会社製)、アナライザ(例えば、AgilentTechnologies社製 ベクトルネットワークアナライザ 型番「PNA E8361A」(10MHz-67GHz))を用いることにより、簡便に行うことができる。
【0095】
[硬化物の製造方法]
本発明の硬化物は、公知のベンゾオキサジン化合物および/またはエポキシ化合物と同様の硬化条件にて、開環重合を行い硬化することにより製造することができる。例えば、以下の方法を挙げることができる。
まず、本発明の硬化性組成物を上記方法によって製造する。続いて、得られた硬化性組成物を、温度として例えば150~300℃、好ましくは160~200℃、硬化時間として例えば20秒間~5時間、好ましくは20秒間~1時間加熱することで、硬化物を得ることができる。硬化物の製造において、より高い強度を得るために後硬化としてさらに5分間~6時間程度加熱することが好ましい。後硬化の温度は200~300℃が好ましい。
【0096】
硬化物としてフィルム状成形物を得る場合には、さらに溶剤を配合して、薄膜形成に好適な溶液粘度を有する組成物とすることもできる。成分(A)~(E)を溶解できる溶剤であれば特に限定されず、例えば、炭化水素類、エーテル類、エステル類、含ハロゲン類等が挙げられる。
このように、溶媒に溶解した溶液状の硬化性組成物の場合は、該溶液状の硬化性組成物を基材等に塗布後、溶媒を揮発させたのち、熱硬化を行うことで硬化物を得ることができる。
【0097】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、成分(A)~(C)、所望により(D)、(E)、(F)、その他の成分を含有する本発明の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物中に半導体素子が設置されている半導体装置である。ここで、通常、半導体素子は金属素材の薄板であるリードフレームにより支持固定されている。「硬化物中に半導体素子が設置されている」とは、半導体素子が上記硬化性組成物の硬化物で封止されていることを意味し、半導体素子が該硬化物で被覆されている状態を表す。この場合、半導体素子全体が被覆されていてもよく、基板上に設置された半導体素子の表面が被覆されていてもよい。
【0098】
本発明の硬化物を用いて、半導体素子等の各種の電子部品を封止し、半導体装置を製造する場合は、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、あるいはインジェクションモールド等の従来からの成形方法により封止工程を実施することによって、半導体装置を製造することができる。本発明の硬化物は、高速通信用電子機器向けの半導体装置に有利に使用できる。
【実施例0099】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
<成分(A):多官能ベンゾオキサジン化合物>
成分(A)として、下記式に示すフェノール-ジアミノジフェニルメタン(P-d)型ベンゾオキサジン(四国化成株式会社製)(ベンゾオキサジン当量(g/eq):217)を使用した。
【化17】
【0101】
<成分(B):エポキシ化合物>
成分(B)として下記(B1)および(B2)を使用した。
【0102】
(B1)エポキシ化合物1:式(2-1)の化合物
国際公開第2020/218457号の実施例に記載の方法に準じて、下記式(2-1)に示す化合物(エポキシ当量:109g/eq)を得た。
具体的には、反応容器に、クロロホルム23.5kgおよび下記式に示す化合物(a)1.6kgを投入し、0℃で攪拌しながらメタクロロ過安息香酸4.5kgを滴下した。室温まで昇温し、12時間反応を行った。
【化18】
次に、ろ過により副生したメタクロロ安息香酸を除去した後、ろ液を1N水酸化ナトリウム水溶液で3回洗浄後、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過により硫酸マグネシウムを除去してろ液を濃縮し、粗体を得た。
粗体にトルエン2kgを加え、室温で溶解した。これにヘプタン6kgを滴下して晶析し、5℃で1時間熟成した。晶析物をろ取してヘキサンにより洗浄した。35℃下、24時間減圧乾燥することによって、下記式(2-1)に示す化合物を白色固体として1.4kg得た。
【化19】
【0103】
(B2)エポキシ化合物2:下記式(11)に示すエポキシ化合物(HP-7200、エポキシ当量(g/eq):254~264、DIC株式会社製)
【化20】
(式(11)中、nは平均値であり、1.41である。)
【0104】
<成分(C):ポリフェニレンエーテル化合物>
成分(C)として下記(C1)および(C2)を使用した。
(C1)ポリフェニレンエーテル化合物1:ポリフェニレンエーテルの末端が水酸基であるポリフェニレンエーテル化合物(上記式(7)で表され、式(7)中のYがジメチルメチレン基であるポリフェニレンエーテル化合物、Noryl(商標)SA90、SABICイノベーティブプラスチックス社製、重量平均分子量Mw1700、末端官能基数2個。)
【0105】
(C2)ポリフェニレンエーテル化合物2:ポリフェニレンエーテルの末端水酸基をメタクリル基で変性したポリフェニレンエーテル化合物(上記式(9)で表され、式(9)中、Rがメチル基であり、Yがジメチルメチレン基であるポリフェニレンエーテル化合物、Noryl(商標)SA9000、SABICイノベーティブプラスチックス社製、重量平均分子量Mw2000、末端官能基数2個。)
【0106】
<成分(D):硬化剤>
成分(D)として、下記式(12)に示すビスフェノールF(水酸基当量100.115、本州化学工業株式会社製)を使用した。
【化21】
【0107】
<成分(E):ラジカル重合開始剤>
成分(E)として、t-ブチルクミルパーオキシド(日油株式会社製、商品名:パーブチルC)を使用した。
【0108】
<成分(F):無機充填剤>
成分(F)として、シリカフィラー(50SQ―E23、平均粒径:6.0μm、株式会社アドマテックス製)を使用した。
【0109】
(実施例1)
硬化性組成物(以後、単に「組成物」と称する)および硬化物を以下のようにして調製し、誘電特性(誘電率および誘電正接)、重量減少率の傾き、ガラス転移温度(Tg)、および粘度を測定した。
【0110】
硬化性組成物および硬化物を以下のように調整した。成分(A)ベンゾオキサジン化合物、(B)エポキシ化合物、および(D)硬化剤、を、表1に示す配合割合でプラネタリーミキサー(型式「2P-1」、PRIMIX社製)に投入し、50℃、真空下で1時間混合して、第一の混合物(R1)を調製した。本実施例において「真空下」とは、真空ポンプにより減圧し、減圧度を-0.8MPa(ゲージ圧)以下とした雰囲気を意味する。
成分(C)ポリフェニレンエーテル化合物は予め溶剤(2-ブタノン)へ固形分濃度が20%になるように調整した(以下、成分(C)含有組成物という)。その後、R1と成分(C)含有組成物とを常温・大気圧下で、ミックスローター(型式「MR-3」、アズワン社製)により攪拌混合して第二の混合物を得た後、70℃、50hPa以下で真空脱泡を30分間行い、硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物を175℃で30分間加熱し、更に220℃で3時間加熱硬化させ、硬化物を得た。得られた硬化物をクラッシャー(型式「MS-09」、ラボネクスト株式会社製)を用いて粒径が300μm以下になるように粉砕し、下に示す方法により評価を行った。
【0111】
<誘電特性(比誘電率および誘電正接)>
以下の条件で得られた硬化物の比誘電率、誘電正接の測定を行った。測定結果を表1にまとめた。
・試験方法:空洞共振器摂動法(JIS C2565規格準拠)
・測定項目:比誘電率、誘電正接
・試験片形状:0.3mm以下の粉体
・測定条件:周波数;1GHz
・測定環境条件:温度24℃、相対湿度40%
・測定数:n=3(同一硬化物の試験片を3枚作製し、各試験片の測定値を平均)
・測定装置:
測定共振器:TMR-1A、キーコム株式会社製
アナライザ:ベクトルネットワークアナライザ(型番「PNA E8361A」(10MHz-67GHz)、AgilentTechnologies社製)
得られた比誘電率のうち、2.8以上3.1未満をA、3.1以上3.5未満をB、3.5以上4.5以下をCとした。A~Cが好ましく、AおよびBがより好ましい。
得られた誘電正接のうち、0.01以下をA、0.01より大きく0.02以下をB、0.02より大きい場合をCとした。AおよびBが好ましい。
【0112】
<はんだ耐熱性(重量減少率の傾き)>
得られた硬化物をアルミニウム製試料用パンに10mg程度はかりとり、示差熱熱重量同時測定装置(型番「STA7200RV」、日立ハイテクサイエンス社製)にて、昇温速度10℃/分の条件で40℃から500℃まで昇温し、1%重量減少温度(Td1)と5%重量減少温度(Td5)を測定し、その2点を結んだ直線の傾き(=(95-99)/(Td1-Td5))(%/℃)を算出した。結果を表1に示した。傾きが緩やかであるほど熱分解反応が進行しにくい。得られた重量減少率の傾きのうち、-0.04以上の場合をA、-0.06以上-0.04未満の場合をB、-0.08以上-0.06未満の場合をC、-0.08未満の場合をDとした。A~Cが好ましい。
【0113】
<ガラス転移温度(Tg)>
得られた硬化物をアルミニウム製試料用パンに10mg程度はかりとり、示差走査熱量計(型番「X-DSC7000」、日立ハイテクサイエンス社製)にて、昇温速度20℃/分の条件で40℃から330℃まで昇温し、ベースラインシフトが見られた温度をガラス転移点(Tg)とした。
【0114】
<粘度>
上記で得られた硬化性組成物の100℃における粘度をコーンプレート粘度計(型式「CAP2000+H」、コーン角度3°、回転数100rpm、ブルックフィールド社製)を用いて測定した。結果を表1に示した。
【0115】
(実施例2~7)
各成分の配合割合を表1に示した通りとした以外は実施例1と同様にして、各実施例の組成物を調製した。なお、成分(E)ラジカル重合開始剤を添加する場合、成分(E)は成分(A)、(B)、(D)と共に混合した。各々の組成物およびそれらの硬化物について実施例1と同様にして、誘電特性、重量減少率の傾き、ガラス転移温度、および粘度を測定した。誘電特性、重量減少率の傾き、および粘度の結果を表1に示す。
【0116】
(比較例1)
各成分の配合割合を表1に示した通りとした以外は実施例1と同様にして、各比較例の組成物を調製した。各々の組成物およびそれらの硬化物について実施例1と同様にして、誘電特性、重量減少率の傾き、ガラス転移温度、および粘度を測定した。誘電特性、重量減少率の傾き、および粘度の結果を表1に示す。
【0117】
(実施例8)
硬化性組成物および硬化物を以下のように調整した。成分(A)ベンゾオキサジン化合物、(B)エポキシ化合物、(D)硬化剤、(E)ラジカル重合開始剤、および(F)無機充填剤を、表2に示す配合割合でプラネタリーミキサー(型式「2P-1」、PRIMIX社製)に投入し、50℃、真空下で1時間混合して、第一の混合物(R2)を調製した。本実施例において「真空下」とは、真空ポンプにより減圧し、減圧度を-0.8MPa(ゲージ圧)以下とした雰囲気を意味する。
成分(C)ポリフェニレンエーテル化合物は予め溶剤(2-ブタノン)へ固形分濃度が20%になるように調整した(以下、成分(C)含有組成物という)。その後、R2と成分(C)含有組成物とを常温・大気圧下で、ミックスローター(型式「MR-3」、アズワン社製)により攪拌混合して第二の混合物を得た後、70℃、50hPa以下で真空脱泡を30分間行い、硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物を175℃で30分間加熱し、更に220℃で3時間加熱硬化させ、硬化物を得た。得られた硬化物をクラッシャー(型式「RT-02A」、ラボネクスト株式会社製)を用いて粒径が300μm以下になるように粉砕した。各々の組成物およびそれらの硬化物について実施例1と同様にして、誘電特性、重量減少率の傾き、ガラス転移温度、および粘度を測定した。誘電特性、重量減少率の傾き、および粘度の結果を表2に示す。
【0118】
(実施例9~11)
各成分の配合割合を表2に示した通りとした以外は実施例8と同様にして、各実施例の組成物を調製した。各々の組成物およびそれらの硬化物について実施例1と同様にして、誘電特性、重量減少率の傾き、ガラス転移温度、および粘度を測定した。誘電特性、重量減少率の傾き、および粘度の結果を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0119】
各実施例の硬化物の重量減少率の傾きは、-0.08以上であり、傾きが緩やかであるため、はんだ耐熱性は高い。なお、各実施例の1%重量減少温度は240℃以上であり、各実施例の5%重量減少温度は350℃以上であり実用可能な温度であった。実施例1~7の硬化性組成物の粘度は1000Pa・s以下であるため、該組成物の粘度は低い。また、実施例1~11および比較例1の硬化物のTgは145℃以上であり、実用可能な温度であった。さらに、実施例1~7の硬化物の比誘電率は3.5未満であり、該硬化物の比誘電率は低い。また、各実施例の硬化物の誘電正接は0.02以下であるため、該硬化物の誘電正接は低い。一方、比較例1の硬化物の重量減少率の傾きは-0.10であり、傾きが急であるため、はんだ耐熱性に劣る。また、比較例1の硬化物の誘電性正接は0.0246であり、実施例の硬化物に比べて誘電性正接が高くなっている。
以上の結果から、本発明の実施形態である硬化性組成物の硬化物は、はんだ耐熱性に優れ、低誘電特性を有することが分かる。