(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181912
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】電線延線制御方法及び当該制御方法に使用する制御装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20231218BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095302
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】505272618
【氏名又は名称】株式会社タワーライン・ソリューション
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(71)【出願人】
【識別番号】591020412
【氏名又は名称】佐藤建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505312730
【氏名又は名称】株式会社電力機材サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】中野渡 譲
(72)【発明者】
【氏名】吉井 崇
【テーマコード(参考)】
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
5G352AA09
5G352AA10
5G352AA11
5G352AF07
5G367AA01
5G367BB13
(57)【要約】
【課題】電線先端位置及び先端張力をリアルタイムで計測し、金車の傾きや延線装置からワイヤー及び電線の張力を検出して制御する電線延線制御方法及び当該方法に使用する制御装置を提供する。
【解決手段】電線3の延線区間の一端で電線3を延線車2で繰り出し、他端で電線をウインチ6で巻き取る電線等線条体の延線工事において、延線ワイヤー5と電線3とのクランプ部4に位置検出装置及び張力測定装置を設け、これらの位置検出装置の位置データ及び張力測定データを送信する装置を設け、また、前記電線3が通過する各鉄塔1の金車7の傾き度合いを三次元で検出し、当該検出した測定データ又は小型カメラによる映像データを送信する装置を金車7又は鉄塔1に設け、これらの位置データ、測定データ、又は映像データを主制御コンピュータ16で受信し、これらのデータに基づいて当該主制御コンピュータ16で電線3の延線を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線等線条体の延線区間の一端で電線等線条体を繰り出し、他端で電線等線条体を巻き取る電線等線条体の延線工事において、
延線ワイヤーと電線等線条体との継ぎ手に位置検出装置及び張力測定装置を取り付け、これらの位置検出装置の位置データ及び張力測定データを送信する装置を設け、また、前記電線等線条体が通過する各鉄塔の金車の傾き度合いを三次元で検出し、当該検出した測定データ又は小型カメラによる映像データを送信する装置を金車又は鉄塔に設け、これらの位置データ、測定データ、又は映像データを主制御装置で受信し、これらのデータに基づいて当該主制御装置で電線等線条体の延線を制御することを特徴とする、電線延線制御方法。
【請求項2】
前記位置データ、測定データ又は検出データに加え、電線等線条体の繰り出し装置における電線等線条体の張力測定装置による張力データを前記主制御装置に送信し、当該主制御装置においてこのデータに基づいて電線等線条体の延線を制御することを特徴とする、請求項1に記載の電線延線制御方法。
【請求項3】
前記電線等線条体を延線する工事区間に低電力無線による広域ネットワークを構築し、当該広域ネットワークは当該工事区間内の多数の各鉄塔ごとに通信用パソコン及び通信用中継器を設け、前記各通信用パソコン及び通信用中継器は燃料電池を電源とし、各通信用パソコンの制御により前記各通信用中継器を介して低電力無線により前記継ぎ手の位置データ、前記継ぎ手箇所の張力測定データ、前記金車の傾き測定データ又は映像データを前記主制御装置に送ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電線延線制御方法。
【請求項4】
前記主制御装置において収集した継ぎ手の位置データ、張力測定データ、金車の傾き検出データ又は映像データ、電線等線条体の繰り出し装置の張力データのうちの複数のデータを蓄積し、蓄積された各データから延線作業の特性に応じた最適値を算出するアルゴリズムを構築し、延線を制御する際はフィードバックして制御データを繰り出し装置及び巻き取装置に送って電線等線条体の延線を制御することを特徴とする、請求項3に記載の電線延線制御方法。
【請求項5】
前記金車の傾きを三次元で検出する装置は、金車にジャイロセンサーを取り付け当該金車のピッチ、ロール及びヨーをリアルタイムで計測して金車の傾きを三次元で検出し、当該検出データ送信する構成としたことを特徴とする、請求項1に記載の電線延線制御方法。
【請求項6】
電線等線条体の延線区間の一端で電線等線条体を繰り出し、他端で電線等線条体を巻き取る延線工事の装置において、
延線ワイヤーと電線等線条体との継ぎ手に位置検出装置及び張力測定装置が収納され、これらの位置検出装置の位置データ及び張力測定データを送信する装置が設けられ、また、前記電線等線条体が通過する各鉄塔の金車の傾きを検出し、当該検出データを送信する装置が金車又は鉄塔に設けられ、これらの位置データ、測定データ又は検出データを受信し、これらのデータに基づいて電線等線条体の延線を制御する主制御装置が設けられたことを特徴とする、電線延線制御装置。
【請求項7】
電線等線条体の繰り出し装置における張力測定装置が設けられ、この電線等線条体の測定張力データを前記主制御装置に送信し、前記主制御装置において受信したこれらの測定張力データに基づいて電線等線条体の延線を制御する構成としたことを特徴とする、請求項6に記載の電線延線制御装置。
【請求項8】
前記電線等線条体を延線する工事区間に低電力無線による広域ネットワークが構築され、当該広域ネットワークは当該工事区間内の多数の各鉄塔ごとに通信用パソコン及び通信用中継器が設けられ、前記各通信用パソコン及び通信用中継器は燃料電池を電源とし、各通信用パソコンの制御により前記各通信用中継器を介して低電力無線により前記継ぎ手の位置データ、測定データ又は検出データを前記主制御装置に送る構成としたことを特徴とする、請求項6又は7に記載の電線延線制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、架空送電線を多数の鉄塔間にわたして長距離延線するための制御方法及び当該制御方法に使用する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架線延線工事における電線の巻取り、送り出し作業は目視或いは経験による判断で行われているのが現状である。また、山間部における見通しのない場所では中継地に監視要員を配置して無線機、仮設電話により連絡をするため、これらの作業員を必要としている。また、各鉄塔における電線の金車通過時の速度調整等は作業員の目視により行われ、作業員の音声連絡によって調整を行っている。また、延線中の電線先端の位置及び延線張力は正確に把握できておらず、中間監視要員が目視により確認しているのが現状である。
【0003】
特許文献1のものは電線延線制御方法及び制御装置に関するもので、経験豊富な熟練運転者を必要としない延線システムが可能になり、また、これまでは金車抵抗や直線剛体であるクランププロテクタ等の通過に伴う過渡的挙動により、電線に種々のストレスが加わっていたが、自己駆動型金車を遠隔制御することにより金車抵抗の低減や全体の電線張力と径間毎の電線張力の制御による過渡的挙動の抑制により電線へのストレスが激減することを目的に開発されたものである。
【0004】
具体的な構成は、電線等線条体の延線作業において、電線等線条体の張力をリアルタイムで検出するセンサーを備えた巻取り装置と、同じく電線等線条体の張力をリアルタイムで検出するセンサーを備えた巻き出し装置と、巻取り装置と巻き出し装置と総合制御装置との間を通信回線で信号を送受信して連係させ、運転者の操作により予めプログラムされた最適な張力で電線等線条体を延線するために前記巻取り装置と前記巻き出し装置のセンサーで検出した張力をフィールドバックさせ、前記巻取り装置と前記巻き出し装置の張力を制御するもので、前記巻取り装置又は巻き出し装置及び金車に、電線等線条体の張力に加え、通過条長、通過速度、通過状況をリアルタイムで検出するセンサーを1種類以上備え、電線の挙動を予測しながら前記巻取り装置と前記巻き出し装置の張力を制御する電線延線制御方法としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のものは、電線等線条体の張力を巻取り装置と、巻き出し装置とでリアルタイムで検出するセンサーを備え、これらの測定した張力に基づいて線条体の延線を制御しているが、延線する電線等の線条体の先端の張力は検出しておらず、ましてや先端電線の位置は検出していない。従って、電線先端の金車等への接近が感知できず、金車をスムーズに通過できない恐れがある。
【0007】
そこでこの発明は、上記の点に着目し、電線先端位置及び先端張力をリアルタイムで計測し、金車の傾きや延線装置からワイヤー又は電線の張力を検出して制御する電線延線制御方法及び当該方法に使用する制御装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、電線等線条体の延線区間の一端で電線等線条体を繰り出し、他端で電線等線条体を巻き取る電線等線条体の延線工事において、延線ワイヤーと電線等線条体との継ぎ手に位置検出装置及び張力測定装置を取り付け、これらの位置検出装置の位置データ及び張力測定データを送信する装置を設け、また、前記電線等線条体が通過する各鉄塔の金車の傾き度合いを三次元で検出し、当該検出した測定データ又は小型カメラによる映像データを送信する装置を金車又は鉄塔に設け、これらの位置データ、測定データ、又は映像データを主制御装置で受信し、これらのデータに基づいて当該主制御装置で電線等線条体の延線を制御する、電線延線制御方法とした。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記位置データ、張力及び傾き度合い測定データ又は映像データに加え、電線等線条体の繰り出し装置における電線等線条体の張力測定装置による張力データを前記主制御装置に送信し、当該主制御装置においてこれらのデータに基づいて電線等線条体の延線を制御する、請求項1に記載の電線延線制御方法とした。
【0010】
また、請求項3の発明は、前記電線等線条体を延線する工事区間に低電力無線による広域ネットワークを構築し、当該広域ネットワークは当該工事区間内の多数の各鉄塔ごとに通信用パソコン及び通信用中継器を設け、前記各通信用パソコン及び通信用中継器は燃料電池を電源とし、各通信用パソコンの制御により前記各通信用中継器を介して低電力無線により前記継ぎ手の位置データ、前記継ぎ手箇所の張力測定データ、前記金車の傾き測定データ又は映像データを前記主制御装置に送る、請求項1又は2に記載の電線延線制御方法とした。
【0011】
また、請求項4の発明は、前記主制御装置において収集した継ぎ手の位置データ、張力測定データ、金車の傾き検出データ又は映像データ、電線等線条体の繰り出し装置の張力データのうちの複数のデータを蓄積し、蓄積された各データから延線作業の特性に応じた最適値を算出するアルゴリズムを構築し、延線を制御する際はフィードバックして制御データを繰り出し装置及び巻き取装置に送って電線等線条体の延線を制御する、請求項3に記載の電線延線制御方法とした。
【0012】
また、請求項5の発明は、前記金車の傾き度合いを三次元で検出する装置は、金車にジャイロセンサーを取り付け当該金車のピッチ、ロール及びヨーをリアルタイムで計測して金車の傾きを三次元で検出し、当該検出データ送信する構成とした、請求項1に記載の電線延線制御方法とした。
【0013】
また、請求項6の発明は、電線等線条体の延線区間の一端で電線等線条体を繰り出し、他端で電線等線条体を巻き取る延線工事の装置において、延線ワイヤーと電線等線条体との継ぎ手に位置検出装置及び張力測定装置が収納され、これらの位置検出装置の位置データ及び張力測定データを送信する装置が設けられ、また、前記電線等線条体が通過する各鉄塔の金車の傾きを検出し、当該検出データを送信する装置が金車又は鉄塔に設けられ、これらの位置データ、測定データ又は検出データを受信し、これらのデータに基づいて電線等線条体の延線を制御する主制御装置が設けられた、電線延線制御装置とした。
【0014】
また、請求項7の発明は、電線等線条体の繰り出し装置における張力測定装置が設けられ、この電線等線条体の測定張力データを前記主制御装置に送信し、前記主制御装置において受信した測定張力データに基づいて電線等線条体の延線を制御する構成とした、請求項6に記載の電線延線制御装置とした。
【0015】
また、請求項8の発明は、前記電線等線条体を延線する工事区間に低電力無線による広域ネットワークが構築され、当該広域ネットワークは当該工事区間内の多数の各鉄塔ごとに通信用パソコン及び通信用中継器が設けられ、前記各通信用パソコン及び通信用中継器は燃料電池を電源とし、各通信用パソコンの制御により前記各通信用中継器を介して低電力無線により前記継ぎ手の位置データ、測定データ又は検出データを前記主制御装置に送る構成とした、請求項6又は7に記載の電線延線制御装置とした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1又は6の発明によれば、従来延線中の電線等線条体の先端位置、即ち、延線ワイヤーとの継ぎ手位置が正確に把握できておらず、中間監視要員が目視により確認し、金車通過時の負荷軽減のための延線速度の調整を経験により制御していたが、電線等線条体の先端にGNSS等の位置検出装置及び無線装置を設けたことにより先端位置、速度を正確に検出でき、これを主制御装置に送信するため、電線等線条体の先端の金車接近が感知でき、延線の制御が的確に行える。
【0017】
また、従来延線中の電線等線条体の先端の延線張力は現状では測定しておらず、正確に把握できていない。しかしながら、この発明では電線等線条体の先端位置に張力計と無線装置を設けたため、当該箇所の測定張力データを主制御装置に送信し、電線等線条体の先端の金車通過時の張力を検知して、異常張力が測定された場合に速やかに延線作業を止めて安全確認することができ、また、電線に優しい延線が可能となる。
【0018】
また、延線中の各金車の傾き具合を三次元で検出し、このデータを主制御装置に送りため、より的確なデータに基づいて延線制御が行える。特に、電線等線条体の先端の金車通過時の当該金車の傾斜度合いに従って、延線速度を調整する等の制御が可能である。
【0019】
また、請求項2及び7の発明によれば、電線等線条体の先端の位置データ、張力測定データ及び金車の傾斜検出データに加え、電線等線条体の繰り出し装置における張力を検出して、これらのデータを主制御装置に送るため、主制御装置ではより的確な延線制御が可能である。
【0020】
また、請求項3及び8の発明によれば、延線工事区間を低電力無線による広域ネットワークを構築しているため、前記電線等線条体の先端位置データ、張力測定データ、金車の傾斜検出データ等の測定データ、検出データの送信が主制御装置へ確実に送ることが出来る。また、作業員相互の通信も容易にできる。さらに、電源の取れない山間部においてもパソコンや中継器の電源を燃料電池としているため、電源確保が容易である。
【0021】
また、請求項4の発明によれば、各種のデータの蓄積により、これまで経験値の継承しかなかった熟練者による多くの作業工程を記録、分析、学習することが可能となり、例えば、電線等線条体の金車等の通過時の挙動制御を予測でき、電線等線条体の繰り出し装置での延線速度の調整等、柔軟な制御が可能となる。また、前記学習を重ねることにより作業品質や作業時間の差を少なくし、延線自動化、作業品質、安全性の向上が可能となる。
【0022】
また、請求項5の発明によれば、各金車にジャイロセンサーを取り付け当該金車のピッチ、ロール及びヨーをリアルタイムで計測して金車の傾きを三次元で検出できるため、金車の傾きを正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の実施の形態例1の電線延線制御装置の使用状態における概略構成図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の電線延線制御装置の長距離大容量通信網の構成を示す構成図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の電線延線制御装置の継ぎ手部分を示す側面図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の電線延線制御装置の金車の斜視図である。
【
図5】この発明の実施の形態例1の電線延線制御装置の鉄塔の腕部に設けた金車及び小型カメラの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態例1)
この発明の実施の形態例1の電線延線制御装置を
図1~
図5に基づいて説明する。
【0025】
図1に示すように、複数の鉄塔1、1、1(図では3基だが、実際は多数)の一端に延線車2を配置し、当該延線車2から繰り出される電線3の先端に継ぎ手4を介して延線ワイヤー5を接続し、当該延線ワイヤー5を、複数の鉄塔1、1、1の他端付近に設けたウインチ6で引っ張る。各鉄塔1では金車7を吊るし、前記延線ワイヤー5及びこれに続く電線3を当該各金車7で支持して通過させる構成となっている。また、鉄塔1、1、1は上部に接地線8が設けられており、当該接地線8に前記電線3及び沿線ワイヤー5は吊り下げられている。
【0026】
また、前記複数の鉄塔1、1、1の間は、各鉄塔1毎に通信用パソコン9及びその他のネットワーク機器を設けてWiFi無線等の長距離大容量通信網10を設けている。また、前記各通信用パソコン9は燃料電池11を電源としている。
【0027】
前記延線車2には張力計を設けて、常時電線3のバックテンションを検出し、当該測定データを前記通信用パソコン9に送信する。また、前記継ぎ手4には、張力計を設け、延線ワイヤー5の張力を検出し、継ぎ手4に設けた子機12から低電力無線で親機13に送信する。また、当該継ぎ手4内にはさらにGNSS計測装置を取り付け、電線先端位置データを前記子機12から低電力無線で親機13に送信する構成となっている。
【0028】
また、各鉄塔1の金車7には金車の傾きを計測する傾き計測装置が設けられ、当該計測データを低電力無線で前記親機13に送信する。また、各鉄塔1には小型カメラ14が設けられ、各鉄塔1の金車7を撮影し、映像データを前記長距離大容量通信網10に送信する構成となっている。また前記金車7には傾き測定装置を設けており、当該傾き測定装置の測定データを金車子機15から前記親機13に低電力無線で送信する構成となっている。
【0029】
前記各通信用パソコン9は前記長距離大容量通信網10を通して主制御コンピュータ16にデータを送る。当該主制御コンピュータ16では、前記受信した各データにより計算した制御データを延線車2に送る。また、制御モードでは各装置からのデータを受信のつど予測計算し制御データを延線車2に送る。
【0030】
また、主制御コンピュータ16が学習モードの際は取得データを記録し、別途設けた学習コンピュータ17へ送信する。学習コンピュータ17では主制御コンピュータ16から集めたデータを蓄積し、機会学習を行い、最新の計算アルゴリズム及び制御モデルを生成し、主制御コンピュータ16に送信する。
【0031】
前記長距離大容量通信網10は、
図2に示すように、各鉄塔1毎に長距離WiFi用ブリッジを使用し、1Kmから6Kmの広域用WiFiデータ通信システムを構築する。具体的には各鉄塔1箇所に第1ルータ20を中継器として設け、隣接する鉄塔1間を第1ルータ20によりブリッジにして無線領域を伸ばし、各鉄塔1の付近は第2ルータ21を設けて、その付近のWiFi電波を飛ばしている。これらの第1ルータ20及び第2ルータ21は前記燃料電池11から電源を取ったハブ22から電源供給される。
【0032】
これによりネットワーク(長距離大容量通信網10)内全ての地点でデータ取得が可能であり、WiFiインカム23によりネットワーク内の全ての対象者が双方向で会話できる。無電源地点ではメタノール燃料電池11を電源として使用する。
【0033】
次に、前記継ぎ手4は前述のように、張力計が設けられている。その詳細を
図3に示す。当該継ぎ手4はクランプ24と引張荷重計から成る張力計25及びこれらを接続する接続治具26から構成されている。この張力計25の先端(
図3では左側端)には延線ワイヤー5が接続されクランプ24の後端(
図3では右側端)には電線3が接続される。
【0034】
前記クランプ24内には、前記張力計25からの測定データが通信線27を介して導入され、クランプ24内に設けたアンプ及びA/D変換器を有する無線機から成る前記子機12を経て低電力無線により前記親機13に測定データが送信される。
【0035】
また、当該クランプ24内には前記GNSS計測装置28が設けられており、当該クランプ24の位置情報が前記子機12から前記親機13に送信される。これらの子機12及びGNSS計測装置28等の電源29がクランプ24に収容されている。そして、これらの張力測定データ及び位置データは親機13から前記長距離大容量通信網10を通して主制御コンピュータ16に送信される。
【0036】
図4は前記鉄塔1の腕部に吊るされた金車7を示すもので、金車7の支持枠体30の一側に傾き計測装置31及び前記金車子機15が設けられている。この傾き計測装置31はジャイロが搭載され、金車7のロール、ピッチ、ヨーが計測され、これらの測定データが金車子機15から低電力無線で前記親機13に送信され、当該親機13から前記長距離大容量通信網10を通して主制御コンピュータ16に送信される。そして当該測定データにより主制御コンピュータ16で延線車2の電線3の繰り出し速度等をコントロールすることができる。
【0037】
図5は前記各金車7を撮影する小型カメラ14が鉄塔1に設けられた状態を示す。この小型カメラ14により各鉄塔1の金車7の状態を撮影し、映像データを前記長距離大容量通信網10に送信し、主制御コンピュータ16で受信してモニターに映す構成となっている。これにより、電線3の先端の継ぎ手4が金車7を通過する際などにおいて、金車7が大きく傾斜する状態を監視し、主制御コンピュータ16で延線車2の電線3の繰り出し速度等をコントロールすることができる。
【0038】
この様に、前記延線ワイヤー5と電線3の継ぎ手4の位置データ及び張力測定データ、また、前記電線3の先端の継ぎ手4が通過する各鉄塔1の金車7の傾き度合いを三次元で検出した測定データ又は小型カメラ14による映像データ、また、延線車2における電線3の繰り出し張力データを、前記長距離大容量通信網10を通して主制御コンピュータ16で送受信して、これらのデータに基づいて延線車2及びウインチ6の運転をコントロールし、電線3をスムーズ、かつ、安全に延線することができる。
【0039】
また、主制御コンピュータ16が学習モードの際は前記測定データを記録し、前記学習コンピュータ17へ送信する。学習コンピュータ17では主制御コンピュータ16から集めたデータを蓄積し、機会学習を行い、最新の計算アルゴリズム及び制御モデルを生成し、主制御コンピュータ16にフィールドバックするので、主制御コンピュータ16では電線延線のより最適な制御運転が実現できる。
【0040】
なお、上記実施の形態例1では主制御コンピュータ16としたが、主制御装置としてもよい。また、長距離大容量通信網10としたが、広域ネットワーク全般としてもよい。また、上記実施の形態例1では金車7に傾き計測装置31を設け、さらに鉄塔1に、当該金車7の状態を撮影する小型カメラ14を設けているが、前記傾き生息装置31及び小型カメラ14のどちらか一方を設けたものでもよい。
【0041】
また、上記実施の形態例1では延線する対象物を電線3としたが、電線3に限らず他の線条体にも適用できるため電線等線条体としてもよい。また、上記実施の形態例1では延線車2としたが、これは電線繰り出し装置としてもよく、また、ウインチ6としたが、電線巻取装置としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 鉄塔 1a 腕部
2 延線車 3 電線
4 クランプ部 5 延線ワイヤー
6 ウインチ 7 金車
8 接地線 9 通信用パソコン
10 長距離大容量通信網 11 燃料電池
12 子機 13 親機
14 小型カメラ 15 金車子機
16 主制御コンピュータ 17 学習用コンピュータ
20 第1ルータ 21 第2ルータ
22 ハブ 23 WiFiインカム
24 継手 25 張力計
26 接続治具 27 通信線
28 GNSS計測装置 30 支持枠体
31 傾き計測装置