(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181931
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ポリオール組成物、ポリウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/32 20060101AFI20231218BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20231218BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20231218BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
C08G18/32 003
C08G18/00 H
C08G18/65 011
C08G18/00 J
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095340
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】名藤 広晃
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA05
4J034CB03
4J034CB04
4J034CC03
4J034CC08
4J034CD04
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG16
4J034DG23
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB03
4J034KB05
4J034KC02
4J034KC04
4J034KC08
4J034KC13
4J034KC16
4J034KC17
4J034KC18
4J034KC22
4J034KC23
4J034KC35
4J034KD01
4J034KD02
4J034KD07
4J034KD08
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA01
4J034MA02
4J034MA03
4J034MA04
4J034MA11
4J034MA12
4J034MA16
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA06
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB01
4J034QB14
4J034QB17
4J034QC01
4J034QC03
4J034RA03
4J034RA05
4J034RA10
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】発泡倍率の高いポリウレタン発泡体を形成可能で、かつ高温下でも突沸が抑制されるポリオール組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、前記ポリオール組成物が、ポリオール、発泡剤、フィラー、触媒、及び低分子量多価アルコールを含有し、前記発泡剤が、沸点40℃以下のハイドロフルオロオレフィンを含み、前記低分子量多価アルコールの含有量が、前記ポリオール組成物全量基準で6質量%未満である、ポリオール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、
前記ポリオール組成物が、ポリオール、発泡剤、フィラー、触媒、及び炭素数6未満の低分子量多価アルコールを含有し、
前記発泡剤が、沸点40℃以下のハイドロフルオロオレフィンを含み、
前記低分子量多価アルコールの含有量が、前記ポリオール組成物全量基準で6質量%未満である、ポリオール組成物。
【請求項2】
前記低分子量多価アルコールのうち、炭素数が4以下の多価アルコールの含有量が、前記ポリオール組成物全量基準で3.5質量%未満である、請求項1に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
前記低分子量多価アルコールのうち、炭素数が2以下の多価アルコールの含有量が、前記ポリオール組成物全量基準で2質量%未満である、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
前記低分子量多価アルコールのうち、炭素数が2以下の多価アルコールを含有しない、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含有する、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のポリウレタン樹脂組成物を反応かつ発泡させることにより得られる、ポリウレタン発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物、ポリウレタン樹脂組成物、及びポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体は、その優れた断熱性及び接着性から、例えば、マンションなどの集合住宅、戸建住宅、学校の各種施設、商業ビルなどの建築物の断熱材として用いられている。ポリウレタンフォームは、ポリオール組成物とイソシアネートとを混合して発泡させ、スプレー装置などを使用して天井や壁、屋根などの対象物に吹き付けることで得られる。このようなポリウレタンフォームは、建築物に使用されるものである以上、火災が発生した場合において、火が燃え移って延焼をもたらすことを防止するために難燃性が求められる。
【0003】
上記のようなポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物としては、例えば、特許文献1、2に記載されるように、発泡剤、触媒、及び難燃剤を含有するポリオール組成物が知られており、このようなポリオール組成物は、発泡剤としてHFO、難燃剤としてフィラーをそれぞれ含有することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-001971号公報
【特許文献2】特開2016-074886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記ポリオール組成物には、発泡倍率の高いポリウレタン発泡体を得る観点から、発泡剤としてHFOを含有させることに加え、低分子量多価アルコールを含有させることが検討されている。一方で、フィラーを含有するポリオール組成物は、溶液として保管した場合にフィラーが沈殿したり凝集したりすることがあるため、発泡させる前に攪拌する必要がある。しかしながら、HFO、及び低分子量多価アルコールは、いずれも低沸点であるため、これらの物質を含有したポリオール組成物の溶液が夏場で高温になった場合には、該溶液を攪拌することで溶液が沸き上がり、安全性の観点から問題がある。
そこで、本発明は、発泡倍率の高いポリウレタン発泡体を形成可能で、かつ高温下でも突沸が抑制されるポリオール組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、ポリオール、発泡剤、フィラー、触媒、及び低分子量多価アルコールを含有するポリオール組成物において、炭素数の小さい低分子量多価アルコールの含有量を削減したことで、上記課題の解決を見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の[1]~[6]を提供するものである。
【0007】
[1]ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、前記ポリオール組成物が、ポリオール、発泡剤、フィラー、触媒、及び炭素数6未満の低分子量多価アルコールを含有し、前記発泡剤が、沸点40℃以下のハイドロフルオロオレフィンを含み、前記低分子量多価アルコールの含有量が、前記ポリオール組成物全量基準で6質量%未満である、ポリオール組成物。
[2]前記低分子量多価アルコールのうち、炭素数が4以下の多価アルコールの含有量が、前記ポリオール組成物全量基準で3.5質量%未満である、[1]に記載のポリオール組成物。
[3]前記低分子量多価アルコールのうち、炭素数が2以下の多価アルコールの含有量が、前記ポリオール組成物全量基準で2質量%未満である、[1]又は[2]に記載のポリオール組成物。
[4]前記低分子量多価アルコールのうち、炭素数が2以下の多価アルコールを含有しない、[1]又は[2]に記載のポリオール組成物。
[5][1]又は[2]に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含有する、ポリウレタン樹脂組成物。
[6][5]に記載のポリウレタン樹脂組成物を反応かつ発泡させることにより得られる、ポリウレタン発泡体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発泡倍率の高いポリウレタン発泡体を形成可能で、かつ高温下でも突沸が抑制されるポリオール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ポリオール組成物]
本発明のポリオール組成物は、ポリオール、発泡剤、フィラー、触媒、及び低分子量多価アルコールを含有する。
【0010】
<低分子量多価アルコール>
本発明のポリオール組成物は低分子量多価アルコールを含有するが、ポリオール組成物中に含有される低分子量アルコールの含有量が、ポリオール組成物全量基準で6質量%未満である。低分子量多価アルコールの含有量が、ポリオール組成物全量基準で6質量%以上である場合、ポリオール組成物を高温下で攪拌した場合に突沸を抑制できなくなる。こうした観点を踏まえると、低分子量多価アルコールの中でも、炭素数4以下の多価アルコールの含有量は、ポリオール組成物全量基準で5質量%以下であることが好ましく、3.5質量%未満であることがより好ましい。ポリオール組成物の突沸をより有効に抑制しやすくする観点からは、低分子量多価アルコールの中でも、炭素数2以下の多価アルコールの含有量を削減することが好ましく、具体的には、ポリオール組成物全量基準で3質量%未満であることが好ましく、2質量%未満であることがより好ましい。
【0011】
本発明のポリオール組成物は、突沸抑制の観点から、炭素数2以下の多価アルコールを含有しないことが好ましい。なお、「含有しない」とは、ポリオール組成物全量基準で0質量%であることを意味する。
一方で、本発明のポリオール組成物は、炭素数4以下の多価アルコールを一定以上含有することにより、発泡倍率の高いポリウレタン発泡体を形成することができる。こうした観点を踏まえると、炭素数4以下の多価アルコールの含有量は、ポリオール組成物全量基準で1.0質量%以上であってもよく、2.0質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以上であることがより好ましく、3.0質量%以上であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、「低分子量多価アルコール」とは、炭素数6未満かつ2価以上のアルコールをいう。本発明のポリオール組成物に含有する低分子量多価アルコールとしては、本発明の効果を阻害しない程度であれば、炭素数4以下の多価アルコールに加え、炭素数5の低分子量多価アルコールを含有していてもよい。
低分子量多価アルコールは、2価以上であれば特に限定されないが、例えば2~4価、好ましくは2~3価、より好ましくは2価のアルコールである。
【0012】
本発明のポリオール組成物に含有できる低分子量多価アルコールのうち、水酸基以外からなる構造(以下、「構造A」ともいう)としては、炭化水素基からなるものでもよいし、炭化水素基とエーテル結合の組み合わせでもよいが、炭化水素基とエーテル結合の組み合わせであることが好ましい。なお、炭化水素基は、脂肪族基であることが好ましい。炭化水素基が脂肪族基である場合、飽和脂肪族基でもよいし、不飽和脂肪族基でもよい。これら脂肪族基の構造は、直鎖状構造でもよいし、分枝状構造でもよいし、環状構造でもよいし、直鎖状構造、分枝状構造、及び環状構造から選択される2種以上が組み合わさったものでもよい。
本発明において、低分子量多価アルコールを構成する炭化水素基は、ポリオール組成物に対する発泡剤の相溶性を高め、ポリオール組成物の突沸を有効に抑制する観点から、飽和脂肪族基であることがより好ましく、直鎖状飽和脂肪族基であることがさらに好ましい。
また、低分子量多価アルコールにおける水酸基の位置も特に限定されないが、構造Aの両末端に位置することが好ましい。
【0013】
炭素数4以下の低分子量多価アルコールとしては、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセリン、エチレングリコール、メタンジオールなどを使用することができる。これらの中では、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコールが好ましく、中でも、炭素数が2以下の低分子量多価アルコールの含有量を削減する観点から、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコールがより好ましい。
炭素数5の低分子量多価アルコールとしては、例えば、ペンタンジオール、イソプレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
低分子量多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。より具体的には、ポリオール組成物は、炭素数4以下の低分子量多価アルコール又は炭素数5の低分子量多価アルコールのいずれかを含有してもよいし、炭素数4以下の低分子量多価アルコール及び炭素数5の低分子量多価アルコールを、それぞれ1種以上含有してもよい。
【0014】
本発明のポリオール組成物における低分子量多価アルコールの含有量(炭素数4以下の低分子量多価アルコール及び炭素数5の低分子量多価アルコールの含有量の合計)は、ポリオール組成物全量基準で6質量%未満であるが、5質量%未満であることが好ましく、4.2質量%以下がより好ましく、3.8質量%以下であることがさらに好ましい。低分子量多価アルコールの含有量が上記上限値以下であることにより、ポリオール組成物を攪拌した際に、該組成物の突沸を抑制することができる。また、低分子量多価アルコールの含有量は、ポリオール組成物全量基準で1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、2.5質量%以上であることがさらに好ましく、3.2質量%以上であることがよりさらに好ましい。低分子量多価アルコールの合計含有量が上記下限値以下であることにより、発泡倍率の高いポリウレタン発泡体を形成することができる。
【0015】
<発泡剤>
本発明で使用する発泡剤は、発泡性の観点から、沸点が40℃以下のハイドロフルオロオレフィン(以下「HFO」ともいう)を含む。発泡剤は、本発明のポリオール組成物をポリイソシアネートと混合してポリウレタン発泡体を製造する際、発泡を促進する。低分子量多価アルコールに加え、このような低沸点の発泡剤をポリオール組成物中に含有すると、高温下での攪拌時に、ポリオール組成物の突沸が発生しやすくなるが、本発明のポリオール組成物は、このような低沸点の発泡剤を含有していても、低分子量多価アルコールの含有量を削減することにより、高温下での攪拌時でも突沸を抑制できる。本発明で使用するHFOの沸点は、40℃を超えると発泡性が低下して、適切な密度の発泡体を得にくくなる。HFOの沸点は、より発泡性を良好にする観点から、30℃以下であることが好ましく、25℃以下であることがより好ましく、20℃以下であることがさらに好ましい。発泡剤の中でもHFOは、発泡剤としての安定性が高く、かつ触媒活性が低下しにくくなり、さらに、環境負荷も低いため、好適に使用することができる。なお、HFOの沸点の下限は、特に限定されないが、実用性の観点から、例えば10℃以上、好ましくは15℃以上である。
【0016】
HFOとしては、炭素数が3~6個程度であるフルオロアルケン等を挙げることができる。また、HFOは塩素原子を有するハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよく、したがって、炭素数が3~6個程度であるクロロフルオロアルケン等であってもよい。
HFOとしては、例えば、トリフルオロプロペン、HFO-1234等のテトラフルオロプロペン、HFO-1225等のペンタフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、HFO-1233等のクロロトリフルオロプロペン、及びクロロテトラフルオロプロペン等が挙げられる。
より具体的には、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf、沸点:-18℃)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E)、沸点:-19℃)、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z)、沸点:10℃)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf、沸点:-29℃)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン(沸点:4℃)、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E)、沸点:-10℃)、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペ(HFO-1225ye(Z)、沸点:-19℃)、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc、沸点:-21℃)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc、沸点:2℃)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E)、沸点:18℃)、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z)、沸点:39℃)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(HFO-1336mzz、沸点:33℃)、1-クロロ-2,3,3,3,-テトラフルオロプロペン(Z)(HFO-1224yd(Z)、沸点:14℃)等が挙げられる。これらの中ではHFO-1233zd(E)が好ましい。
これらのHFOは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
HFOの含有量は特に限定されず、ポリオール100質量部に対して、19~75質量部が好ましく、29~67質量部がより好ましく、34~58質量部が更に好ましい。HFOの含有量が前記下限値以上であると発泡が促進され、発泡性が良好となり、発泡倍率の高いポリウレタン発泡体を形成することができる。一方、HFOの含有量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0018】
また、発泡剤としては、水を含有してもよい。水は取り扱いが容易であり、また、水を含有することでイソシアネートインデックスを調整しやすくなる。発泡剤として、HFOと共に水を含有する場合、水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水などを適宜用いることができる。また、水の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.2~3質量部がより好ましく、0.3~2質量部が更に好ましい。発泡剤の含有量が前記下限値以上であると発泡が促進され、発泡性が良好となり、発泡倍率の高いポリウレタン発泡体を形成することができる。一方、発泡剤の含有量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0019】
さらに、ポリオール組成物は、本発明の効果を奏する限り、水及びHFO以外の発泡剤を含有してもよい。発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロプロパン、シクロブタン等の低沸点の炭化水素、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物などの沸点が40℃以下の発泡剤が挙げられる。これらの発泡剤を含有する場合には、発泡剤全量基準で例えば30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、最も好ましくは0質量%である。
【0020】
<ポリオール>
ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。なお、ポリオールは、上記した低分子量多価アルコール以外のポリオールである。ポリウレタン発泡体の難燃性を向上させる観点から、ポリオールは、ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。
同様に、ポリウレタン発泡体の難燃性を向上させる観点から、ポリオール100質量部のうち、ポリエステルポリオールを20質量部以上とすることが好ましく、50質量部以上とすることがより好ましく、80質量部以上とすることがさらに好ましく、100質量部とすることが特に好ましい。
【0021】
本発明で用いるポリオールの平均水酸基価は、ポリウレタン発泡体の難燃性を向上させる観点から、100~500mgKOH/gが好ましく、150~450mgKOH/gがより好ましく、180~400mgKOH/gがさらに好ましい。
【0022】
なお、平均水酸基価とは、ポリオールが1種類である場合には、そのポリオールの水酸基価を意味する。また、2種類以上のポリオールを用いる場合は、ポリオールの水酸基価として、当該2種類以上のポリオールの配合比率に従った水酸基の加重平均値を平均水酸基価とする。
例えば、ポリオールとして、ポリオール(d1)、ポリオール(d2)の2種類を用いる場合、ポリオール(d1)の水酸基価をX1、配合比率をm1、ポリオール(d2)の水酸基価をX2、配合比率をm2とすると、該平均水酸基価は、以下の式で表される。なお、配合比率は、質量基準である。
平均水酸基価(mgKOH/g)=X1×(m1/(m1+m2))+X2×(m2/(m1+m2))
水酸基価は、JIS K1557-1:2007に準拠して測定される値である。
【0023】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールは、芳香環を有するポリエステルポリオールでもよいし、脂肪族ポリエステルポリオールでもよいが、得られるポリウレタン発泡体の難燃性を考慮した場合、芳香環を有するポリエステルポリオールを使用することが好ましい。芳香環を有するポリエステルポリオールは、o-フタル酸(フタル酸)、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物であることが好ましい。中でも、ポリウレタン発泡体の難燃性を高める観点から、ポリオールは、フタル酸とグリコールとの縮合物である、フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことが好ましく、p-フタル酸とグリコールの縮合物である、p-フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことがより好ましい。
グリコールとしては、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のポリエステルポリオールの構成成分として公知の低分子量脂肪族グリコールを使用することが好ましい。
【0024】
ポリエステルポリオールの水酸基価は、100~500mgKOH/gが好ましく、150~450mgKOH/gがより好ましく、180~400mgKOH/gがさらに好ましい。
【0025】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、2個以上の活性水素原子を有する開始剤に、アルキレンオキサイドを開環付加重合させて得られたポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。開始剤としては、具体的には例えば、脂肪族多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどの4官能アルコール類、シュクロース類、ソルビトール類などの高官能類)、脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミンなどのアルキレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン)、芳香族アミン(例えば、アニリン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、マンニッヒ縮合物など)などが挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、芳香環を有することが好ましい。上記のうち、芳香環を有する開始剤を用いて製造したポリエーテルポリオールが、芳香環を有するポリエーテルポリオールであり、例えば芳香族アミンを開始剤として用いて製造したポリエーテルポリオールは、芳香環を有するポリエーテルポリオールである。芳香環を有するポリエーテルポリオールの中でも、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール、マンニッヒ系ポリエーテルポリオールなどを好適に使用することができる。
【0026】
トリレンジアミン系ポリエーテルポリオールとは、開始剤としてトリレンジアミンを用いて製造したトリレンジアミン系ポリエーテルポリオールである。
上記マンニッヒ系ポリエーテルポリオールとは、マンニッヒ反応を利用して得られるものであって、分子内に2個以上の水酸基を有するマンニッヒ縮合物、又はそのようなマンニッヒ縮合物に、アルキレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオールである。より具体的には、フェノール及びそのアルキル置換誘導体の少なくともいずれか、ホルムアルデヒド及びアルカノールアミンのマンニッヒ反応により得られたマンニッヒ縮合物、又はこの化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールである。
【0027】
ポリエーテルポリオールの水酸基価は、100~2000mgKOH/gであることが好ましく、150~1000mgKOH/gであることがより好ましく、200~800mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0028】
<フィラー>
本発明のポリオール組成物は、フィラーを含有する。フィラーを含有させることで、ポリウレタン発泡体の難燃性などの各種性能を向上させやすくなる。また、フィラーを含有するポリオール組成物は、発泡させる前に攪拌することがあるが、上記の通り、本発明のポリオール組成物は、炭素数の小さい低分子量多価アルコールの含有量を削減することで、発泡性を良好にしつつ高温下での攪拌時でも突沸を抑制できる。フィラーは、難燃剤を含むことが好ましい。フィラーとして難燃剤を使用することで、ポリウレタン発泡体に高い難燃性能を付与できる。フィラーとして用いられる難燃剤は固形難燃剤である。本発明では、固形難燃剤を使用することで、より難燃性を効果的に高めることができる。なお、固形難燃剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)において、固体となる難燃剤である。本発明に使用する固形難燃剤としては、リン酸塩含有難燃剤、赤燐系難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、及び針状フィラーからなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
【0029】
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩が挙げられる。
リン酸は、特に限定されないが、亜リン酸、次亜リン酸などのモノリン酸類でもよいし、ピロリン酸、ポリリン酸等であってもよい。
周期表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
前記脂肪族アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリン等が挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物としては、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
【0030】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、亜リン酸アルミニウム、第三リン酸アルミニウム等のモノリン酸塩類、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから1種もしくは2種以上を使用することができる。本発明においては、第三リン酸アルミニウムが好ましい。
【0031】
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを被膜したものでもよいし、赤燐と樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などとを混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないがフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0032】
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温、常圧で固体となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物等が挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
【0033】
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物などが挙げられる。さらには、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等が挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記した中では、臭素化芳香環含有芳香族化合物が好ましく、中でも、ヘキサブロモベンゼンなどのモノマー系有機臭素化合物が好ましい。
【0034】
本発明で使用するホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
【0035】
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましいアンチモン含有難燃剤は三酸化アンチモンである。
【0036】
本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましい金属水酸化物は水酸化アルミニウムである。
【0037】
針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム含有ウィスカー、珪素含有ウィスカー、珪素系フィラー、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、棒状ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、スラグ繊維、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
これらの針状フィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明に使用する針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。なお、当該アスペクト比は、走査型電子顕微鏡で針状フィラーを観察してその長さと幅を測定して求めることができる。
【0039】
本発明において使用する固体難燃剤は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。2種以上を併用して使用する場合、例えば、針状フィラーとして、チタン酸カリウムウィスカー及びホウ酸アルミニウムウィスカーを含有するなど、同じ分類の固体難燃剤を2種以上使用してもよいし、赤燐系難燃剤及び針状フィラーを含有するなど、異なる分類の固体難燃剤を1種以上ずつ使用してもよい。
固体難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、例えば10~130質量部、好ましくは20~120質量部、より好ましくは30~100質量部、更に好ましくは40~80質量部である。固体難燃剤の含有量を上記範囲内とすることで、固形分を必要以上に増加させることなく、固形難燃剤の沈降を防止し、その分散性を良好にできる。
【0040】
フィラーとしては、上記固形難燃剤以外の無機充填剤を使用してもよい。固形難燃剤以外の無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラスビーズ、シリカバルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルーン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、各種磁性粉、フライアッシュ、シリカアルミナ繊維、及びジルコニア繊維等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本発明のポリオール組成物がフィラーを含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対し10~150質量部が好ましく、20~135質量部がより好ましく、30~110質量部が更に好ましく、40~90質量部がより更に好ましい。フィラーの含有量が前記下限値以上であることにより、該ポリオール組成物から形成されるポリウレタン発泡体の難燃性などの各種性能を向上させやすくなる。また、フィラーの含有量が前記上限値以下であることにより、該ポリオール組成物の粘度を一定以下に抑えることができ、取り扱い性が良好になる。
【0042】
<触媒>
本発明のポリオール組成物は、触媒を含有する。触媒としては、ウレタン化触媒を含有することが好ましい。ウレタン化触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進させる触媒である。ウレタン化触媒としては、アミノ化合物を含有することが好ましい。
【0043】
アミノ化合物としては、例えば1-メチルイミダゾール、1、2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2メチルイミダゾール、イミダゾール環中の第二級アミン官能基をシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物などのイミダゾール系化合物等が挙げられる。イミダゾール系化合物としては、1、2-ジメチルイミダゾールが好ましい。
ウレタン化触媒としてアミノ化合物を含有する場合、アミノ化合物の含有量は、ポリオール100質量部に対し、2~14質量部が好ましく、3~10質量部がより好ましく、3.5~9質量部がさらに好ましい。
【0044】
ウレタン化触媒としては、アミノ化合物に加え、錫化合物、ビスマス化合物等の金属触媒、アセチルアセトン金属塩等を含有してもよい。
錫化合物としては、例えば、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。ビスマス化合物としては、ネオデカン酸ビスマス、オクチル酸ビスマスなどが挙げられる。
【0045】
アセチルアセトン金属塩としては、例えば、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンベリリウム、アセチルアセトンクロム、アセチルアセトンインジウム、アセチルアセトンマンガン、アセチルアセトンモリブデン、アセチルアセトンチタン、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトンバナジウム、アセチルアセトンジルコニウム等が挙げられる。
【0046】
本発明のポリオール組成物に含有されるウレタン化触媒は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用して使用してもよい。本発明のポリオール組成物は、発泡倍率が十分高いポリウレタン発泡体を形成する観点から、ウレタン化触媒として、アミノ化合物を含有することが好ましく、イミダゾール系化合物を含有することがより好ましく、1、2-ジメチルイミダゾールを含有することがさらに好ましい。
【0047】
本発明のポリオール組成物におけるウレタン化触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、例えば1質量部以上であり、2質量部以上であることが好ましい。上記下限値以上とすることで、発泡性を良好にしつつ、適度な反応速度で、ポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進できる。また、反応速度を向上させて、吹き付け用途に好適とするために、ウレタン化触媒の上記含有量は、3質量部以上がより好ましく、4質量部以上がさらに好ましい。また、触媒の含有量に見合った発泡性、反応性を得る観点から、ウレタン化触媒の上記含有量は、15質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
【0048】
本発明のポリオール組成物は、上記したウレタン化触媒に加え、三量化触媒を含有してもよい。三量化触媒は、ポリオール組成物とポリイソシアネートとの反応の際に、イソシアヌレート結合を形成する三量化を促進する触媒である。このように三量化が促進されることで、ポリウレタン発泡体の難燃性や燃え拡がりにくさが向上する。
三量化触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の芳香族化合物、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸ナトリウム、ギ酸カリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、2-エチルアジリジン等のアジリジン類、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛等の鉛化合物、ナトリウムメトキシド等のアルコラート化合物、カリウムフェノキシド等のフェノラート化合物、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の第三級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用することができる。これらの中では、4級アンモニウム塩が好ましい。4級アンモニウム塩を使用すると、発泡剤にハイドロクロロフルオロオレフィンなどのハイドロフルオロオレフィン化合物を使用しても、触媒活性が良好に維持されることで、三量化が適切に進行し難燃性などが向上する。
三量化触媒は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用して使用してもよい。
【0049】
<リン酸エステル>
本発明のポリオール組成物は、常温(23℃)、常圧(1気圧)にて液体である液状難燃剤を含有してもよく、具体的にはリン酸エステルなどを含有することができる。リン酸エステルを使用することで、ポリオール組成物の粘度を低くしつつ、ポリウレタン発泡体の難燃性を向上させやすくなる。
【0050】
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェート等のトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート等の芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート等の酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0051】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0052】
リン酸エステルは、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール組成物の粘度を適切にしやすくする観点、及びポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
ポリオール組成物におけるリン酸エステルの含有量は、ポリオール100質量部に対して、5~100質量部が好ましく、10~90質量部がより好ましく、20~80質量部がさらに好ましく、30~70質量部がよりさらに好ましい。
【0053】
<その他成分>
ポリオール組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、その他添加剤として、例えば、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、染料、粘着付与樹脂等を含むことができる。
【0054】
<製造方法>
本発明のポリオール組成物の製造方法に特に制限はなく、例えば、各成分を室温程度でホモディスパー等の混合機を用いて30秒~20分程度撹拌することにより製造することができる。
【0055】
[ポリウレタン樹脂組成物、ポリウレタン発泡体]
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、上記ポリオール組成物とポリイソシアネートとを含む。より具体的には、ポリウレタン樹脂組成物は、少なくとも、上記ポリオール組成物とポリイソシアネートを混合することにより得られる。ポリウレタン発泡体は、該ポリウレタン樹脂組成物を反応かつ発泡させることにより得られるものである。
【0056】
<ポリイソシアネート>
本発明のポリウレタン樹脂組成物に含まれるポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系などの各種ポリイソシアネートを用いることができる。
【0057】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)などが挙げられる。
【0058】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0059】
これらの中では、取扱の容易さ、反応の速さ、得られるポリウレタンフォームの物理特性が優れていること、および低コストであることなどから、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましく、液状ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。液状MDIとしては、クルードMDI(ポリメリックMDIともいう)が挙げられる。液状MDIの具体的な市販品としては、「44V-10」,「44V-20」(住化コベストロウレタン株式会社製)、「ミリオネートMR-200」(日本ポリウレタン工業)などが挙げられる。また、ウレトンイミン含有MDI(例えば、市販品として「ミリオネートMTL」:日本ポリウレタン工業製)などでもよい。また、ポリイソシアネート内のイソシアネート活性基の一部を水酸基含有化合物と反応させ、予めポリオールとの親和性を高めた処置を施したものを使用してもよい。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネートを併用してもよく、併用するポリイソシアネートとしては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネートなどが限定なく使用可能である。
【0060】
本発明のポリウレタン樹脂組成物のイソシアネートインデックスは、好ましくは600以下であり、より好ましくは550以下であり、さらに好ましくは500以下である。イソシアネートインデックスがこれら上限値以下であると、ポリウレタン発泡体形成時の発泡性を良好にしやすくなる。
また、ポリウレタン樹脂組成物のイソシアネートインデックスは、ポリウレタン発泡体を適切に形成させる観点から、90以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、また、三量化を促進する観点から、150以上であることがさらに好ましく、200以上がよりさらに好ましい。
イソシアネートインデックス(INDEX)は、以下の方法にて算出される。
【0061】
INDEX=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、
ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用部数×NCO含有率(%)×100/NCO分子量
ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用部数÷KOHの分子量、OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)、
水の当量数=水の使用部数×水のOH基の数/水の分子量
である。なお上記式において、使用部数の単位は重量(g)であり、NCO基の分子量は42、NCO含有率はポリイソシアネート中のNCO基の割合を質量%で表したものであり、上記式の単位換算の都合上KOHの分子量は56100とし、水の分子量は18、水のOH基の数は2とする。
【0062】
<用途>
本発明のポリウレタン樹脂組成物、及び該組成物から形成されるポリウレタン発泡体の用途は、特に限定されないが、建築物、家具、自動車、電車、船等の構造物の空洞に充填する用途に用いたり、該構造物に対して吹き付ける用途に用いたりすることができる。中でも、構造物に対して吹き付ける用途、即ち、吹き付け用途に用いられることが好ましく、建築物の施工現場における吹き付け用途に用いられることがより好ましい。
吹き付けは、吹き付け装置(例えばGRACO社製:A-25)及びスプレーガン(例えばガスマー社製:Dガン)を利用して実施することができる。吹き付けは、別容器に入ったポリオール組成物とポリイソシアネートを吹き付け装置内で温度調整し、スプレーガンの先端で両者を衝突混合させ、混合液をエア圧によりミスト化することで実施できる。吹き付け装置及びスプレーガンは公知であり、市販品を使用することができる。また原液温度設定・圧力等は一般的なポリウレタン発泡体の吹き付け条件が適応できる。
【実施例0063】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0064】
[物性]
各物性の測定方法、及び発泡体の評価方法は以下のとおりである。
【0065】
<沸き高さ>
以下の手順(1)~(4)により、沸き高さの測定及び評価を実施した。
(1)ポリオール組成物が合計300gになるように、表1に記載した配合で混合攪拌した。
(2)上記(1)で混合攪拌したポリオール組成物のうち、110mlのスクリュー管(マルエム社製、製品名:No.8)に30g投入し、ネジ口にシールテープ(PTFE)で巻いた後、攪拌子(直径14mm)を投入して蓋を閉めた。
(3)32℃の温浴に30分以上投入し温度一定を一定にした後、開栓してマグネティックスターラーを用いて撹拌子を1,500rpmで攪拌した。攪拌後の最高点の高さを測定し、攪拌前の高さとの差を算出し沸き高さとした。
(4)上記(3)で測定した沸き高さに基づき、以下の評価基準で、沸き高さの評価を実施した。
◎:7mm以下
〇:7mm超12mm以下
△:12mm超17mm以下
×:17mm超
【0066】
<発泡倍率>
表1に記載した配合のポリオール組成物と、ポリイソシアネート(住化コベストロウレタン社製 製品名:スミジュール44V-20L)とを、質量比1:1の比率で合計200gとなるように、液温10℃8000rpmで3秒間攪拌して得た液状混合物からフォーム形成し、その表層スキンを除くことでコア密度を測定した。
上記の手順で測定したコア密度に基づき、ポリウレタン発泡体の発泡倍率の評価を実施した。評価基準は以下の通りである。
◎:37kg/m3以下
〇:37kg/m3超40kg/m3以下
△:40kg/m3超43kg/m3以下
×:43kg/m3超
【0067】
[使用材料]
各実施例、比較例で使用したポリオール組成物の各成分は以下のとおりである。
【0068】
<ポリオール>
・p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)
【0069】
<フィラー>
・ポリリン酸アンモニウム(クラリアントケミカルズ社製、製品名:Exolit AP422)
・ポリリン酸メラミン(日産化学社製、製品名:PHOSMEL-200)
・珪素系針状フィラー(キンセイマティック社製、製品名:SH1250)
・赤燐(燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140)
・炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、製品名:BF300)
・カーボンブラック(東海カーボン社製、製品名:サーマックス)
【0070】
<液状難燃剤>
・リン酸エステル:トリスβ(クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP)
【0071】
<発泡剤>
・トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(ハネウェル社製、製品名:ソルスティスLBA)、沸点18℃
・イオン交換水
【0072】
<触媒>
・ウレタン化触媒:1,2-ジメチルイミダゾール(花王社製、製品名:カオーライザー No.390)
【0073】
<低分子量多価アルコール>
・ジエチレングリコール(東京化成工業製)
・1,4-ブタンジオール(東京化成工業製)
・1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製)
・エチレングリコール(東京化成工業製)
【0074】
【0075】
以上の実施例から明らかなように、本発明の要件を満たすポリオール組成物は、発泡倍率の高いポリウレタン発泡体を形成可能で、かつ、高温下でも突沸が抑制されたものとなった。
これに対し、比較例で作製したポリオール組成物は、発泡倍率の高いポリウレタン発泡体を形成できなかったか、高温下での突沸を抑制することができなかった。より具体的には、比較例1で作製したポリオール組成物は、低分子量多価アルコールを含有しておらず、発泡倍率の高いポリウレタン発泡体を形成することができなかった。また、比較例2で作製したポリオール組成物は、低分子量多価アルコールを過剰に含有していたため、高温下での突沸を抑制することができなかった。