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特開2023-181933付加造形品品質判定装置、および、付加造形品品質判定方法
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  • 特開-付加造形品品質判定装置、および、付加造形品品質判定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181933
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】付加造形品品質判定装置、および、付加造形品品質判定方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/80 20210101AFI20231218BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20231218BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231218BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20231218BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20231218BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20231218BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20231218BHJP
【FI】
B22F10/80
G01N23/04
B33Y30/00
B33Y50/00
B29C64/386
B22F12/90
B22F10/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095343
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 友則
(72)【発明者】
【氏名】川中 啓嗣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇
(72)【発明者】
【氏名】保田 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】朴 勝煥
【テーマコード(参考)】
2G001
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001BA15
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA07
2G001HA13
2G001JA08
2G001KA03
2G001KA04
2G001KA05
2G001LA02
4F213AQ01
4F213AQ03
4F213WA25
4F213WB01
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】付加造形品の内部欠陥位置を非破壊で分析する。
【解決手段】付加造形品品質判定装置1は、モニタリング機器を備えた造形装置による付加造形品の各層目のモニタリング結果より各層目の欠陥の生成を予測する第一評価部14と、第一評価部14による付加造形品の各層目よりも上の所定数層のモニタリング結果から各層目の欠陥の生成または/および消失を予測して、各層目の欠陥の生成予測結果情報に反映する第二評価部15と、第二評価部15が得た各層目の欠陥の生成予測結果情報より、この付加造形品の欠陥位置情報を出力する出力部11と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニタリング機器を備えた付加造形装置による付加造形品の各層目のモニタリング結果より各前記層目の欠陥の生成を予測する第一評価部と、
前記第一評価部による前記付加造形品の各前記層目よりも上の所定数層の前記モニタリング結果から各前記層目の欠陥の生成または/および消失を予測して、各前記層目の欠陥の生成予測結果情報に反映する第二評価部と、
前記第二評価部が得た各前記層目の欠陥の生成予測結果情報より、前記付加造形品の欠陥位置情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする付加造形品品質判定装置。
【請求項2】
前記出力部が出力した前記付加造形品の欠陥位置情報より、当該付加造形品の品質を判定する判定部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の付加造形品品質判定装置。
【請求項3】
前記判定部が判定する品質データは、内部欠陥の位置、内部欠陥の寸法、密度、欠陥率、亀裂、組織的な不均質性、および幾何学的異常のうち少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の付加造形品品質判定装置。
【請求項4】
前記第一評価部は、付加造形品の各層目の光トモグラフィの輝度マッピング像を前記モニタリング結果とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の付加造形品品質判定装置。
【請求項5】
前記第一評価部は、付加造形品の各層目の光トモグラフィ中の所定形状を前記モニタリング結果とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の付加造形品品質判定装置。
【請求項6】
前記第二評価部は、前記付加造形品の各前記層目よりも1層からM層(Mは2以上の自然数)だけ上の層目までの前記モニタリング結果から各前記層目の欠陥の生成または/および消失を予測して、各前記層目の欠陥の生成予測結果情報に反映する、
ことを特徴とする請求項1に記載の付加造形品品質判定装置。
【請求項7】
前記モニタリング結果は、光トモグラフィ、CCDカメラ、CMOSカメラ、2色温度計、サーモグラフィ、高速度カメラ、フォトダイオードのうち少なくとも1つから提供される、
ことを特徴とする請求項1から6のうちの何れか1項に記載の付加造形品品質判定装置。
【請求項8】
前記付加造形品のN層目(Nは自然数)の欠陥との相関が閾値よりも高い所定数の層の重ね合わせを決定する相関決定部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の付加造形品品質判定装置。
【請求項9】
前記モニタリング結果から、当該付加造形品の欠陥位置情報を算出する欠陥位置算出部を備える、
ことを特徴とする請求項8に記載の付加造形品品質判定装置。
【請求項10】
モニタリング機器を備えた付加造形装置による付加造形品の各層目のモニタリング結果より各前記層目の欠陥の生成を予測するステップ、
前記付加造形品の各層目よりも上の所定数層のモニタリング結果より各前記層目の欠陥の生成または/および消失を予測するステップ、
各前記層目の欠陥の生成予測結果情報に反映するステップ、
各前記層目で得られた欠陥の生成予測結果情報より前記付加造形品の欠陥位置情報を出力するステップ、
を実行することを特徴とする付加造形品品質判定方法。
【請求項11】
前記付加造形品の欠陥位置情報より、当該付加造形品の品質を判定するステップ、
を更に備えることを特徴とする請求項10に記載の付加造形品品質判定方法。
【請求項12】
前記付加造形品を判定した品質データは、内部欠陥の位置、内部欠陥の寸法、密度、欠陥率、亀裂、組織的な不均質性、および幾何学的異常のうち少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の付加造形品品質判定方法。
【請求項13】
付加造形品の各層目の光トモグラフィの輝度マッピング像を前記モニタリング結果とするステップ、
を実行することを特徴とする請求項10に記載の付加造形品品質判定方法。
【請求項14】
付加造形品の各層目の光トモグラフィ中の所定形状を前記モニタリング結果とするステップ、
ことを特徴とする請求項10に記載の付加造形品品質判定方法。
【請求項15】
前記付加造形品の各前記層目よりも1層からM層(Mは2以上の自然数)だけ上の層目までの前記モニタリング結果から各前記層目の欠陥の生成または/および消失を予測して、各前記層目の欠陥の生成予測結果情報に反映するステップ、
ことを特徴とする請求項10に記載の付加造形品品質判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加造形品品質判定装置、および、付加造形品品質判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
付加造形は、アフターマーケット部品や、金型や特殊な機械部品のラピッドプロトタイピングなどの製造に使用されている。しかしながら、付加造形品に対しては、品質保証が確立されていない。このことは、メーカが、高い信頼性が要求される高付加価値のアプリケーションに対して金属積層造形の採用を妨げる要因となっている。
【0003】
付加造形の品質を確認する方法に関して、造形中にカメラ等のモニタリング機器を用いたデータ取得を行い、品質を推定する方法が検討されている。例えば、特許文献1では、記付加製造物の製造途中の造形面を含む領域を撮像する撮像装置と、撮像された付加製造物の複数層の造形面の画像に基づいて取得した画像情報と品質とを訓練データセットとした機械学習により品質を推定する付加製造物の品質推定装置を提供できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-9126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
品質確認の観点から、付加造形品の欠陥位置の確認は重要である。例えば、冷却水の配管として用いられる付加造形品の場合、この配管の気密性は非常に重要である。よって、配管部周囲の欠陥の有無を確認することや、個別の気密性評価試験などが必要となる。
【0006】
一方で、冷却水の配管として用いられる付加造形品の場合、配管部以外の欠陥は、品質に影響を与えない場合がある。このため、付加造形品の欠陥の有無と、その欠陥の位置を確認することは、品質を確認する上で非常に重要である。付加造形品の品質を保証するため、例えば付加造形品の欠陥情報などを、この付加造形品の品質情報として添付書面とするとよい。
【0007】
品質確認には破壊検査やX線CT(Computed Tomography)などの非破壊検査がある。破壊検査によって欠陥の位置を確認する場合、付加造形品が破壊されるため、実際の機器に適用する付加造形品の検査は行えない。また、非破壊検査で用いられるX線CTは、X線が透過可能な薄肉部の検査にしか適用できない。
【0008】
また、特許文献1には、製造途中の付加造形品について、撮像装置の画像から得た情報を元に欠陥を推定する装置が提供できると記載されている。この装置では、造形面の輝度と造形密度の関係から、付加造形品の密度や、欠陥位置が推定できる。しかしながら、輝度と密度の比較から得たデータを元にした分析では、造形面からどの程度の深さに欠陥が形成したか、欠陥位置を推定することは困難である。
【0009】
そこで本発明では、付加造形品の内部欠陥位置を非破壊で分析することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するため、本発明の付加造形品品質判定装置は、モニタリング機器を備えた付加造形装置による付加造形品の各層目のモニタリング結果より各前記層目の欠陥の生成を予測する第一評価部と、前記第一評価部による前記付加造形品の各前記層目よりも上の所定数層の前記モニタリング結果から各前記層目の欠陥の生成または/および消失を予測して、各前記層目の欠陥の生成予測結果情報に反映する第二評価部と、前記第二評価部が得た各前記層目の欠陥の生成予測結果情報より、前記付加造形品の欠陥位置情報を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の付加造形品品質判定方法は、モニタリング機器を備えた付加造形装置による付加造形品の各層目のモニタリング結果より各前記層目の欠陥の生成を予測するステップ、前記付加造形品の各層目よりも上の所定数層のモニタリング結果より各前記層目の欠陥の生成または/および消失を予測するステップ、各前記層目の欠陥の生成予測結果情報に反映するステップ、各前記層目で得られた欠陥の生成予測結果情報より前記付加造形品の欠陥位置情報を出力するステップ、を実行することを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、付加造形品の内部欠陥位置を非破壊で分析することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】付加造形装置の模式図である。
図2】N+1層とN層の両方に跨る溶融池を示す断面の模式図である。
図3】付加造形品品質判定装置の論理ブロック図である。
図4】付加造形品品質判定装置の物理ブロック図である。
図5】品質判定処理のフローチャートである。
図6】変形例に係る品質判定処理のフローチャートである。
図7】付加造形品の重ね合わせ層数の決定処理のフローチャートである。
図8】N層目のX線CT像を示す図である。
図9A】N層目の光トモグラフィのマッピング像を示す図である。
図9B】N+1層目の光トモグラフィのマッピング像を示す図である。
図9C】N+2層目の光トモグラフィのマッピング像を示す図である。
図9D】N+3層目の光トモグラフィのマッピング像を示す図である。
図10】光トモグラフィのマッピング像を示す図である。
図11】光トモグラフィの重ね合わせの輝度と欠陥率とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。本発明は、ここで取り挙げた実施形態に限定されるものではなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で公知技術と適宜組み合わせたり公知技術に基づいて改良したりすることが可能である。
【0015】
図1は、付加造形装置4の模式図である。
図1に示すように、付加造形装置4は、大別すると、付加造形処理を行う付加造形部41と、検査装置と、これらを制御する制御装置430と、通信部431とを備える。検査装置は、付加造形部41で形成される粉末層および固化層を評価する。制御装置430は、付加造形部41および検査装置を統括制御する。通信部431は、検査装置による検査データを、図3に示す付加造形品品質判定装置1に送信する。
【0016】
本発明における付加造形装置4は、粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion)方式の金属三次元付加造形装置である。付加造形装置4は、付加造形体の原料となる金属粉末(原料粉末)が敷詰められた粉末層にエネルギーを照射して二次元平面の固化層を形成し、繰り返し積層することで付加造形品を製造するものである。
【0017】
図1では、原料粉末414で構成される粉末層を固化する熱源供給装置としてレーザー光照射装置を備えており、レーザー発振器42、プロセスファイバ43、ガルバノヘッド44およびレーザー同軸照明45を有する。熱源供給装置としては、粉末を溶融および凝固できるものなら特に限定は無く、レーザー光照射装置の他、電子ビーム照射装置であってもよい。
【0018】
付加造形体417が製造される処理室411は、ガス供給管412aおよびガス排気管412bを有しており、処理室411の雰囲気を制御可能な構成を有している。雰囲気制御は、例えば、熱源してレーザー光を用いる場合には不活性ガス雰囲気または真空雰囲気とし、熱源として電子ビームを用いる場合には真空雰囲気とする。
【0019】
処理室411の内部は、原料粉末保管領域420と、粉末層を溶融および凝固して固化層を形成する付加造形領域421と、余った原料粉末が回収される原料粉末回収領域422に分けられる。原料粉末保管領域420は、付加造形体の原料粉末414を保管する領域である。付加造形領域421は、原料粉末414を積層した粉末層の形成と、熱源供給装置によって粉末層を溶融および凝固して固化層を形成する領域である。原料粉末回収領域422は、付加造形領域421で粉末層を形成する際に余った原料粉末が回収される領域である。
【0020】
粉末供給機413は、図1の白色矢印の方向に移動して原料粉末保管領域420から付加造形領域421に粉末を供給する。粉末供給機413としては、例えばリコータ、コータ、スキージおよびブレードを用いることができる。原料粉末保管領域420および付加造形領域421において、粉末が載置される試料台415a,415bは、図1の上下方向に上下可能な構成を有している。付加造形が行われる試料台415bは、図示していないが、粉末層または固化層を加熱可能な加熱器(ヒーター)を備えていてもよい。加熱器としては、25℃~650℃程度まで加熱可能なものが好ましい。粉末層または固化層の加熱は、原料粉末中の水分除去あるいはビーム入熱量低減による造形スピードの向上や、温度分布を均一化して歪みを低減する効果が得られる。
【0021】
検査装置として、本実施例では可視光画像撮影機46、赤外線画像撮影機47a、プラズマ発光撮影機47b、および溶融池観察機48を備えている。可視光画像撮影機46、および、プラズマ発光撮影機47bは、粉末層および固化層の可視光領域の画像を観察する。赤外線画像撮影機47aは、粉末層および固化層の赤外線放射画像を撮影し、得られた熱画像を観察する。後述の通り、積層造形において過大な入熱や入熱不足は内部欠陥の一因となる。固化層の内部に欠陥を生じた場合は、熱伝導率が低くなると伴に熱拡散率も低下する。そのため、内部欠陥の一因を分析することで、入熱の変化に起因した内部欠陥を推定することが出来る。溶融池観察機48は、粉末層に熱源が照射されて溶融された際の状態を観察する。
【0022】
なお、本実施形態は、造形中の熱画像を用いた解析方法に係るものであり、積層方向のデータ(N層目に対してN+1層目など)を活用する方法である。以下、その解析方法について詳細に説明する。
【0023】
制御装置430は、付加造形装置4および検査装置に有線または無線で接続され、これらの動作の制御を行う。粉末供給機413と試料台415a,415bの駆動およびレーザー発振器42とガルバノヘッド44の動作も制御装置430によって制御・監視される。
【0024】
また、制御装置430は、検査装置の評価結果に基づいて、粉末層および固化層の良否の判定も行う。制御装置430は、可視光画像撮影機46、および、プラズマ発光撮影機47bから得られた画像の処理と欠陥の有無の判定を行う可視光画像処理部と、赤外線画像撮影機47aから得られた画像の処理と欠陥の有無の判定を行う赤外線画像処理部とを有する。
【0025】
《付加造形品の品質に係る不均質部》
付加造形品の品質には、付加造形品の特性の他に、造形中に生じる欠陥や特異的な金属組織などの不均質部の有無がある。ここでは不均質部をポア、亀裂(クラック)、組織的な不均質性、および幾何学的異常に分類して述べる。
【0026】
ポアは、付加造形中に付加造形品内に残留したガスに起因する。金属粉末を製造に用いられるガスアトマイズ法では、金属粉末の製造にガスを用いるため、金属粉末内に残留したガス成分が付加造形品中でポアになると推測される。また、付加造形における過大な入熱は溶融池の表面張力の変化に起因したマランゴニ対流や、元素の蒸発、キーホール形成といった金属の溶融現象に関連してポアを形成する。
【0027】
溶融池のエネルギーが不十分な場合、粉末粒子を溶融できなくなると未溶融部(LOF:Lack of Fusion)による空隙が生じる。未溶融部の空隙は、不規則な形状であることが多く、未溶融の粉末を含むことがある。
【0028】
亀裂も付加造形品に生じる欠陥の1つであり、前述したポアや未溶融部の空隙が亀裂状となって残るものである。また基板と付加造形品の線膨張係数に違いがある場合、または凝固の進行中に溶融池に大きな熱勾配がある場合に、亀裂が生じる可能性がある。
【0029】
続いて、組織的な不均質性(異方性介在物)について述べる。一般的に、造形において入熱量を変化させると、付加造形品の金属組織が変化する。溶融池の温度勾配の変化に伴って凝固速度が変化し、付加造形品の組織異方性などの微細構造に影響を与える。また酸素による酸化物の形成など、造形中の雰囲気や金属粉末中の不純物も微細組織に影響を及ぼす。金属組織の変化は、付加造形品の機械的特性の変化に直結する。
【0030】
最後に幾何学的な異常について述べる。幾何学的な異常は寸法変化と表面粗さに関するものである。溶融値の安定性に関するものであり、溶融池のサイズや形状変化は、付加造形品の寸法や表面粗さに大きな影響を与える。こうした幾何学的異常を最小限に抑えるには、安定した溶融池のサイズと形状が必要とされる。
【0031】
ここまで述べたポア(LOFを含む)、亀裂(クラック)、組織的な不均質性、および幾何学的異常はいずれも付加造形中の溶融現象に起因して形成すると考えられる。そのため、付加造形中に溶融現象に関連する情報をモニタリングすることで、付加造形品の品質を判定することが可能となる。
【0032】
《モニタリングデータ》
付加製造には様々な方式がある。粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion)方式は、平らに敷き詰めた金属粉末に対して、レーザービーム(L-PBF:Laser Powder Bed Fusion)や電子ビーム(EBM:Electron Beam Melting)等を照射して付加製造する方式である。
指向性エネルギー堆積(Directed Energy Deposition)方式は、金属粉末を吐出しながら付加製造を行う方式であり、LMD(Laser Metal Deposition)、やDMP(Direct Metal Printing)等がある。ここでは代表として、レーザービーム照射による粉末床溶融結合における溶融池のモニタリングについて述べる。
【0033】
付加造形における溶融は、レーザーの照射によって生じる。溶融池はレーザーの出力やスキャン速度などの造形における造形パラメータ、および金属粉末の溶解に必要なエンタルピー、レーザーの反射率といった材料特性に影響される。溶融池の変化の1つとして、溶融池の温度変化がある。溶融池の温度変化に関連した情報をモニタリングすることで、溶融池の状況を推測することができる。レーザービーム照射による粉末床溶融結合では、反射、散乱されるレーザー、温度に応じた赤外線などの電磁波、イオン化されたガスと金属蒸気で構成されるプラズマプルームが溶融池から放出される。溶融池から放出される電磁波やプラズマプルームは、溶融池の状態や温度により変化することから、溶融現象に関連する各種の欠陥の形成を捉え、品質を判定するために重要な指標となる。
【0034】
付加造形における一般的なモニタリング機器として可視光モニタリング、電磁波モニタリング、音響モニタリングが挙げられる。ここでは、電磁波モニタリングについて詳細に説明する。
【0035】
電磁波モニタリングは、主として温度により強度が変化する赤外線(波長700nm~)を観測するものであり、光トモグラフィ(OT:Optical Tomography)、フォトダイオード、2色温度計、サーモグラフィ、分光器、高速度カメラなどがある。溶融池の詳細な観察(メルトプールモニタリング)に用いられるフォトダイオードや2色温度計は、空間分解能を有さないが、レーザーと同軸となるよう設置して測定し、設定したレーザー照射パターンと比較することで空間的な位置関係を決定できる。溶融池からの熱放射の他にレーザー光の反射散乱も考慮する必要があるが、一般的にはスペクトルフィルターで所望の波長のみ観察する。
【0036】
CCD(Charge Coupling Device)カメラやCMOS(Complementary MOS)カメラを用いる光トモグラフィやサーモグラフィは空間分解能を有する特徴がある。これらCCDカメラやCMODカメラは、レーザーと同軸に設置して電磁波をモニタリングできる。
また、CCDカメラやCMODカメラは、造形チャンバの上部等から造形領域全体をモニタリングすることが可能である。これらは、非同軸の電磁波モニタリング手段である。また CCDカメラやCMODカメラは、前述のフォトダイオード等と同様に、スペクトルフィルターによって、観察する波長範囲を選択している。
【0037】
このように付加造形中の同軸または非同軸での電磁波モニタリングによって、溶融に関連した情報を観測することが可能である。溶融池の変化(温度、対流、大きさ、溶融深さなど)は欠陥の形成に関連することから、付加造形品に形成した欠陥と、電磁波モニタリングの関係を整理することで欠陥位置を類推可能となる。
【0038】
《付加造形品の欠陥検査》
前述の通り、付加造形における溶解は造形パラメータ、造形する金属粉末の物性に影響される。造形パラメータと造形する金属粉末は、対象とする付加造形品によって変化するものである。そのため例えば電磁波モニタリングにおいて、モニタリング手段は、輝度情報を取得し、輝度の閾値を決定して欠陥の有無を推定するなどの、画一的な手法によって品質推定することはできない。そこで本発明で用いられる品質決定手法は、品質項目(不均質部、材料特性、残留応力など)とモニタリングデータの相関を知るために事前に対象となる材料で欠陥の形成を確認する必要がある。そこで、ここでは欠陥の検査手法(破壊、および非破壊)について述べる。
【0039】
破壊的な方法は付加造形品の切断や研削などが必要なものであり、材料特性の取得のために試験片加工が必要なものも含まれる。前述の不均質部(ポア、クラック、組織的な不均質性、および幾何学的異常)の確認には付加造形品の各位置における組織観察によっても確認できる。例えば、所望の位置において切断断面を研磨し、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、EPMA(電子線プローブマイクロアナラザ)、EBSD(電子後方散乱回折法)などで観察することにより、ポア、亀裂(クラック)、組織的な不均質性や付加造形品内部の幾何学的異常(変形)は、確認可能である。また粗さ計やレーザー顕微鏡などによっても、幾何学的異常(粗さ)は評価可能である。
【0040】
また材料特性として、機械的特性(引張試験、疲労試験、硬さ試験、衝撃試験など)や耐食性評価試験(各種の腐食液への浸漬試験、公職電位測定などの電気化学的手法)などが挙げられる。
続いて非破壊検査として、X線CT、表面粗さ測定、密度測定などが挙げられる。
【0041】
《不均質部とモニタリングデータの対応》
レーザービーム照射による粉末床溶融結合では、一定の厚みの造形層を積層させていくことで付加造形を行う。造形層の厚みTは、材料や造形パラメータによって調整される。ここで、N層目(Nは自然数)およびN層目の上層にあたるN+1層目以上の造形を考える。まず、N層目の欠陥は、N層目の造形における溶融時に形成する。従って、N層目のモニタリングデータからN層目の欠陥位置を予測する必要がある。一般的にレーザーによる溶融は、造形層の厚みT以上とする。
【0042】
図2は、N+1層目23とN層目22の両方に跨る溶融池21を示す模式図である。
N+1層目23の造形では、N層目22まで溶融させることで、N層目22とN+1層目23とが緻密に結合される。このため、N層目22の品質は、上層のN+1層目23以上における溶融の影響を受ける。N層目22では、N+1層目23の溶融による不均質部の消失、および形成が生じることから、これをN+1層目23のモニタリングデータから判定する必要がある。同様に、これより上の層であるN+2層目以上においても、所定数層に亘ってN層目22の欠陥形成への影響を検討する必要がある。
【0043】
ここで、溶融池の深さは有限であることから、N層目の欠陥を考える場合、上層すべての溶融を考慮する必要はない。溶融の深さは、溶融時の温度に影響を受ける。モニタリングデータにおいて、高温と予測される部分、すなわち赤外線の輝度が高い場合には、深い溶融が生じている。低温と予測される部分、すなわち赤外線の輝度が低い場合には、溶融の深さが比較的浅いと判断される。このように、赤外線の輝度に応じて異なる溶け込み深さであることを考慮することで、N層目の欠陥形成におよぼす上層の影響を見積もることができる。
【0044】
欠陥予測には、初めに標準的な試験片において、実際の付加造形品の造形と同様の条件にて付加造形を実施し、モニタリングデータと品質測定結果を揃える必要がある。前述の通り、付加造形は、溶融深さを考慮して実施される。例えば、X線CTにより内部欠陥であるポアの位置を確認し、ポアとモニタリングデータの関係を整理する場合を考える。前述の通り、ポアが生じる要因として過大な入熱、すなわち溶融池が高温になることが挙げられる。
【0045】
溶融池が高温になる場合、赤外線の輝度が高くなることから、電磁波モニタリングの結果とX線CTで取得した結果の対応を検討することで、輝度に応じたポアの有無、あるいはポア形成の確率を算出できる。この時、N層目のポア形成にはN+1層目以上の欠陥形成が影響を与えることから、N+1層目以上におけるモニタリングデータからN層目のポア形成、消失を考慮した解析を実施する。X線CTによるポアの形成位置とモニタリングデータの比較検討によって、N層目におけるポア形成に与えるN層目とその上層のモニタリングデータの関係は、取得可能である。
【0046】
ここではX線CTによって取得したポアの位置と赤外線のモニタリングデータの関係を例示したが、その他の不均質部、モニタリング手法の場合であっても同様の方法でデータの関係を取得できる。
【0047】
図3は、付加造形品品質判定装置1の機能的構成を示すブロック図である。
付加造形品品質判定装置1は、付加造形品の造形時の光トモグラフィデータから、この付加造形品の品質を判定する。付加造形品品質判定装置1は、機能的構成として、出力部11と、判定部12と、相関決定部13と、第一評価部14と、第二評価部15と、データ取得部16と、欠陥位置算出部17とを有する。付加造形品品質判定装置1は、後記するプロセッサを備えたコンピュータであり、不図示の付加造形品品質判定プログラムを実行することで、各機能部を具現化して、付加造形品品質判定方法を実行する。
【0048】
第一評価部14は、モニタリング機器を備えた付加造形装置4による付加造形品の各層目のモニタリング結果より各層目の欠陥の生成を予測する。ここで各層目の欠陥の生成予測とは、第一の評価結果である。モニタリング結果は、光トモグラフィ、CCDカメラ、CMOSカメラ、2色温度計、サーモグラフィ、高速度カメラ、フォトダイオードのうち少なくとも1つから提供される。第一評価部14は、付加造形品の各層目の光トモグラフィの輝度マッピング像を前記モニタリング結果とするが、これに限られず、光トモグラフィ中の所定形状を前記モニタリング結果としてもよい。
【0049】
第二評価部15は、第一評価部14による付加造形品の各層目よりも上の所定数層のモニタリング結果から各層目の欠陥の生成または/および消失を予測して、各層目の欠陥の生成予測結果情報に反映する。ここで各層目の欠陥の生成予測結果情報とは、第二の評価結果である。
【0050】
出力部11は、第二評価部15が得た各層目の欠陥の生成予測結果情報より、前記付加造形品の欠陥位置情報を出力する。判定部12は、出力部11が出力した付加造形品の欠陥情報より、この付加造形品の品質を判定する。判定部12が判定する品質データは、内部欠陥の位置、内部欠陥の寸法、密度、欠陥率、亀裂、組織的な不均質性、および幾何学的異常のうち少なくとも1つを含んでいる。
【0051】
相関決定部13は、この付加造形品のN層目(Nは自然数)の欠陥との相関が閾値よりも高い所定数の層の重ね合わせを決定する。
【0052】
データ取得部16は、付加造形の全層のモニタリングデータを取得する。
欠陥位置算出部17は、モニタリングデータから、この付加造形品の欠陥位置情報を算出する。
【0053】
図4は、付加造形品品質判定装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。
付加造形品品質判定装置1は、ハードウェア構成として、プロセッサ101と、記憶部102と、操作部103と、表示部104と、通信部105とを有する。プロセッサ101と、記憶部102と、操作部103と、表示部104と、通信部105とは、バス106により接続される。
【0054】
プロセッサ101は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、付加造形品品質判定装置1を統括制御する。記憶部102は、プロセッサ101の作業エリアとなる。また、記憶部102は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的なまたは一時的な記録媒体であり、不図示の付加造形品品質判定プログラムが格納される。記憶部102としては、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどがある。
【0055】
操作部103は、操作データを入力する。操作部103としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキーがある。表示部104は、例えば、ディスプレイやプリンタであり、データを表示する。通信部105は、ネットワークと接続し、データを送受信する。
【0056】
《実機造形における付加造形品の品質判定》
付加造形品の造形では、標準的な試験片で取得したモニタリングデータと不均質部の関係から不均質部を予測し、品質を判定する。
【0057】
図5は、品質判定処理のフローチャートである。
最初、データ取得部16は、付加造形の全層のモニタリングデータを取得する(ステップS10)。このモニタリングデータとは、光トモグラフィデータである。
次に、プロセッサ101は、ステップS11からS15に亘り、この付加造形品のモニタリングデータの各層目についての処理を繰り返す。
【0058】
この繰り返し処理にて、第一評価部14は、N層目のモニタリング結果から、N層目の不均質部の生成を予測する(ステップS12)。ここで予測した情報は、第一の評価結果ともいう。
【0059】
そして第二評価部15は、N+1層目のモニタリング結果より、N層目の不均質部の生成または/および消失を予測し(ステップS13)、N層目の欠陥の生成予測結果情報に反映する(ステップS14)。ここで反映した情報は、第二の評価結果ともいう。
【0060】
プロセッサ101は、この付加造形品のモニタリングデータの全ての層目についての処理を繰り返したか否かを判定する(ステップS15)。プロセッサ101は、この付加造形品のモニタリングデータの全ての層目についての処理を繰り返していなかったならば、ステップS11の処理に戻る。
【0061】
出力部11は、各層で得られた第二の評価結果より、付加造形品の不均質情報を出力する(ステップS16)。そして判定部12が、この出力結果より付加造形品の品質を判定すると(ステップS17)、図5の処理を終了する。品質の判定は、欠陥率、欠陥サイズ、密度、欠陥位置、介在物の数密度、材料特性などについて、任意に設定できる。
ここで述べた品質判定は造形後に実施する他に、造形と同時に実施しても良い。
【0062】
なお、ここではN+1層目以上のモニタリングデータについて述べていないが、溶融時の溶融深さを考慮して、N+1層目以上のモニタリングデータをN層目の不均質部の予測に活用しても良い。
【0063】
図6は、変形例に係る品質判定処理のフローチャートである。
最初、データ取得部16は、付加造形の全層のモニタリングデータを取得する(ステップS20)。
次に、プロセッサ101は、ステップS21からS25に亘り、この付加造形品のモニタリングデータの各層目についての処理を繰り返す。
【0064】
この繰り返し処理にて、第一評価部14は、N層目のモニタリング結果から、N層目の不均質部の生成を予測する(ステップS22)。ここで予測した情報は、第一の評価結果ともいう。
【0065】
そして第二評価部15は、N+1層目からN+M層目(Mは自然数)のモニタリング結果より、N層目の不均質部の生成または/および消失を予測し(ステップS23)、N層目の欠陥の生成予測結果情報に反映する(ステップS24)。ここで反映した情報は、第二の評価結果ともいう。
【0066】
プロセッサ101は、この付加造形品のモニタリングデータの全ての層目についての処理を繰り返したか否かを判定する(ステップS25)。プロセッサ101は、この付加造形品のモニタリングデータの全ての層目についての処理を繰り返していなかったならば、ステップS21の処理に戻る。プロセッサ101は、この付加造形品のモニタリングデータの全ての層目についての処理を繰り返したならば、ステップS26の処理に進む。
【0067】
ステップS26にて、出力部11は、各層で得られた第二の評価結果より、付加造形品の不均質情報を出力する。そして判定部12が、この出力結果より付加造形品の品質を判定すると(ステップS27)、図6の処理を終了する。
【0068】
また、N層目に影響を及ぼすN層目よりも上側の層数を、予め決定しておくとよい。これにより、付加造形品品質判定装置1は、好適な付加造形品の重ね合わせ層数を算出して、高精度な不均質情報を出力すると共に、高精度に付加造形品の品質を判定可能となる。また、付加造形品の品質を保証するため、例えば付加造形品の複数層の重ね合わせ画像を、この付加造形品の品質を示すための添付書面とすることが考えられる。
【0069】
図7は、付加造形品の重ね合わせ層数の決定処理のフローチャートである。
最初、データ取得部16は、付加造形の全層のモニタリングデータを取得する(ステップS31)。欠陥位置算出部17は、この付加造形の全層のモニタリングデータから、付加造形品の欠陥位置情報を算出する(ステップS32)。
【0070】
次に、プロセッサ101は、ステップS33からS36に亘り、変数Pを1から所定数まで繰り返す。なお、変数Pは自然数である。
【0071】
この繰り返し処理にて、第一評価部14と第二評価部15は、N層目からN+P層目までのモニタリング結果の重ね合わせ情報を算出する(ステップS34)。そして、相関決定部13は、X線CT画像の欠陥発生領域と、モニタリング結果の重ね合わせ情報の相関を算出する。
【0072】
ステップS36にて、プロセッサ101は、変数Pを1から所定数まで繰り返したか否かを判定する。プロセッサ101は、変数Pを1から所定数まで繰り返していなかったならば、ステップS33の処理に戻る。プロセッサ101は、変数Pを1から所定数まで繰り返したならば、ステップS37の処理に進む。
【0073】
ステップS37にて、相関決定部13は、欠陥の発生との相関が閾値よりも高い所定数の層の重ね合わせを決定すると、図7の処理を終了する。
以下、実施例により本開示をさらに具体的に説明する。なお、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
《造形、およびモニタリング設備》
造形は、レーザービーム照射による粉末床溶融結合により実施した、モニタリングは光トモグラフィによるモニタリングシステムを用いた。造形エリア内において、鉛直上方からのレーザー照射により溶融池から発生する輝度を、斜め上方に設置されたsCMOS(scientific CMOS)カメラにより撮影している。sCMOSカメラは、造形面に対して斜め上方に設置されているが、解析プログラム上で距離、角度を補正し、直上からの観察像のように変換している。以降の測定では輝度積算値を用いた。輝度積算値は画像の1画素中の輝度を積算したものである。なお、光トモグラフィデータの単位は、Gv(Gray value:濃淡値)で表す。
【0075】
《造形条件》
本造形では、造形領域をレーザー照射で塗りつぶすIn-skin条件のみを適用した。レーザー出力、および施工速度は適正範囲よりも大入熱となる条件とした。ここで適正範囲とは、実験的に内部欠陥率が所定割合未満となる条件のことと定義した。
【0076】
《X線CT》
光トモグラフィデータから付加造形品中の欠陥判定を行うため、欠陥サイズと位置を特定するためのリファレンスとなるX線CTの結果を取得する必要がある。得られたCTデータは、三次元データに再構成し、その後に解析・可視化ソフトウェアの欠陥・介在物解析モジュールを用いて解析した。そして発明者らは、欠陥位置および欠陥分布の他に、欠陥率を得た。
【0077】
《密度測定》
発明者らは、X線CTにて得られた欠陥率の精度を確認するため、液浸法による相対密度測定から欠陥率を算出した。液浸法はアルキメデスの原理を用いた。発明者らは、得られた密度と真密度の比較から、欠陥率2.5%を得た。X線CTでの解析では欠陥率2.8%であったことから、約11%の誤差が認められたものの、X線CTでは概ね正確に欠陥情報が取得できたと判断した。
【0078】
《光トモグラフィと品質の相関》
X線CTは所定ピッチの厚さのスライスデータとして出力し、造形1層当たりの厚みと同じ厚さとなるように8枚を重ねた。
【0079】
図8は、N層目のX線CT像を示す図である。
このX線CT像の黒色の部分は、欠陥を示している。
【0080】
図9A図9Dは、N層目からN+3層目の光トモグラフィにおける輝度のマッピング像である。
N層目からN+3層目までの各層目における光トモグラフィの高輝度部分とX線CT比較では、低輝度部分にも欠陥が多く存在する。
【0081】
図10は、光トモグラフィの輝度マッピング像を4層分に亘って積層した画像を示す図である。
この画像は、光トモグラフィの輝度マッピング像を4層分に亘って積層した画像である。この画像により、複数層目に亘って熱が加え続けられた領域を濃度によって示すことができる。この画像は、造形品の品質評価用の画像であり、造形品質情報として造形品の添付書面とすることが望ましい。
【0082】
図11は、光トモグラフィの重ね合わせの輝度と欠陥率とを示すグラフである。
グラフの縦軸は、欠陥率を示している。グラフの横軸は、光トモグラフィの輝度を示している。このグラフより、高輝度ほど欠陥である確率が高いことが確認できる。
このように溶融深さを考慮してモニタリングデータを解析し、その後に実際の付加造形を実施することによって、付加造形品の不均質部を予測することが可能である。
【0083】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0084】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0085】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 付加造形品品質判定装置
101 プロセッサ
102 記憶部
103 操作部
104 表示部
105 通信部
106 バス
11 出力部
12 判定部
13 相関決定部
14 第一評価部
15 第二評価部
16 データ取得部
17 欠陥位置算出部
21 溶融池
22 N層目
23 N+1層目
4 付加造形装置
41 付加造形部
411 処理室
412a ガス供給管
412b ガス排気管
413 粉末供給機
414 原料粉末
415a 試料台
415b 試料台
417 付加造形体
42 レーザー発振器
420 原料粉末保管領域
421 付加造形領域
422 原料粉末回収領域
430 制御装置
43 プロセスファイバ
44 ガルバノヘッド
45 レーザー同軸照明
46 可視光画像撮影機
47a 赤外線画像撮影機
47b プラズマ発光撮影機
48 溶融池観察機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11