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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181938
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】位置決め装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/04 20060101AFI20231218BHJP
   B23Q 3/18 20060101ALI20231218BHJP
   F16B 5/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F16B2/04 Z
B23Q3/18 Z
F16B5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095350
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(72)【発明者】
【氏名】和田 龍一
【テーマコード(参考)】
3C016
3J001
3J022
【Fターム(参考)】
3C016HA00
3J001FA03
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JB00
3J001JB03
3J001JB12
3J001JB13
3J022DA11
3J022EA03
3J022EB02
3J022EC02
3J022FA05
3J022FB03
3J022FB06
3J022FB07
3J022FB13
3J022GB03
3J022GB11
(57)【要約】
【課題】 確実に操作できる位置決め装置を提供することにある。
【解決手段】 ハウジング(1)の案内孔(6)にクランプロッド(7)が上下方向に移動可能に挿入される。前記案内孔(6)内に装着されるロックバネ(18)が、前記ハウジング(1)に対して前記クランプロッド(7)を下方に付勢する。前記案内孔(6)に交差する支持孔(22)に、操作ロッド(23)が軸心中心に回転可能に挿入される。前記操作ロッド(23)の外周壁に形成されるカム部(25)が、前記クランプロッド(7)の基端部に係合される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)の先端側に形成される筒状のプラグ部(5)と、
前記プラグ部(5)に形成される案内孔(6)に軸方向に移動可能に挿入されるクランプロッド(7)と、
前記クランプロッド(7)の先端側外周部に装着されると共に、弾性部材によって構成される筒状の押圧部材(11)であって、スリット(13)を有すると共に、前記プラグ部(5)の外周壁に形成される楔部(16)に摺動可能に係合される押圧部材(11)と、
前記案内孔(6)内に装着されると共に、前記ハウジング(1)に対して前記クランプロッド(7)を軸方向の基端側に付勢するロックバネ(18)と、
前記案内孔(6)に交差するように前記ハウジング(1)に形成される支持孔(22)に軸心中心に回転可能に挿入される操作ロッド(23)と、
前記操作ロッド(23)の外周壁に形成されると共に、前記クランプロッド(7)の基端部に係合されるカム部(25)と、
前記操作ロッド(23)の外周壁に形成されると共に、前記操作ロッド(23)の略径方向に向けて当該操作ロッド(23)に形成される段差部(44)を挟んで前記カム部(25)に隣接して設けられる挿入部(45)であって、前記クランプロッド(7)が挿入可能となっている挿入部(45)と、を備える、ことを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置決め装置において、
前記ハウジング(1)に形成されると共に、前記支持孔(22)の内周面に開口される摺動孔(29)と、
前記摺動孔(29)内に収容される進出バネ(31)によって前記操作ロッド(23)に向けて付勢されるロック部材(30)であって、前記操作ロッド(23)の外周壁に形成される凹部(33)に挿入可能となっているロック部材(30)と、ことを特徴とする位置決め装置。
【請求項3】
請求項1に記載の位置決め装置において、
前記カム部(25)、又は、前記クランプロッド(7)の基端部に形成される凹部(46)と、
前記凹部(46)に挿入可能となるように当該凹部(46)に向けて前記クランプロッド(7)の基端部、又は、前記カム部(25)から突設される凸部(47)と、を備える、ことを特徴とする位置決め装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手動操作することにより、ワーク、ワークパレット、金型、ツール等の位置決め対象物を、テーブル上や台車上やロボットの可動部上などの所定位置に位置決め固定する位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のワークの孔を押圧して固定もしくは位置決めする装置には、従来では、特許文献1(日本国・特開2015-218814号公報)に記載された連結装置がある。その従来技術は、次のように構成されている。
上記の連結装置が一方の部材に取り付けられ、その一方の部材を他方の部材に連結するものである。一方の部材の装着孔に連結部材のハウジングが挿入されてボルト固定される。そのハウジングに案内孔が上下方向に貫通され、その案内孔にクランプロッドが上下方向へ移動可能で軸心中心に回転可能に挿入される。ハウジングの下部の筒壁に支持孔が径方向に貫通され、その支持孔にボールが径方向に移動可能に挿入される。そのボールがクランプロッドの下部外周壁に形成される螺旋溝に挿入される。その螺旋溝は、下方に向かうにつれて深くなるようにクランプロッドの外周壁に形成される。そのクランプロッドの外周壁の高さ方向の途中部にフランジ部が径方向に向けて突出するように周方向に形成される。フランジ部とハウジングの内周壁との間にロックバネが装着される。このため、ハウジングに対して、ロックバネがクランプロッドを下方に付勢する。そのクランプロッドの上部に操作グリップが固定される。その操作グリップが作業者によって回転させられることにより、連結装置がロック駆動およびリリース駆動される。また、ハウジングの上部に筒状のカム部が形成され、その筒壁の頂面が平面視で時計回り方向に向かうにつれて、高さが低くなるように形成されている。その頂面によってカム面が構成される。そのカム面に摺動可能に係合されるピンが、クランプロッドの上部外周壁から水平方向に突設される。また、他方の部材に孔が形成されその内周壁が上方に向けにつれて小径となるようにテーパ状の係止部が形成される。その係止部に上記ボールが係合可能となっている。その連結装置のリリース状態では、クランプロッドのピンがカム面の上限位置付近に移動され、ロックバネの下向きの付勢力によってリリース状態が維持されている。連結装置をリリース状態からロック状態に切り換えるときには、作業者が操作グリップを平面視で時計回り方向に回転させる。すると、ロックバネの下方への付勢力と作業者による外力によってクランプロッドを回転させながら下降させていく。すると、ボールがクランプロッドの螺旋溝に沿って径方向の外方に押し出され、ボールが他方の部材の係止部に係合される。これにより、連結部材がリリース状態からロック状態に切り換えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-218814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術は次の問題がある。
上記の連結装置をリリース状態からロック状態に切り換えるときに、作業者が操作グリップに回転方向への外力を加えると共に、ロックバネの下方への付勢力がクランプロッドに作用される。すると、クランプロッドの螺旋溝の周壁がボールを介して他方の部材の係止部に係合される。このとき、他方の部材の係止部とボールとの間や、ボールと螺旋溝との間や、ピンとカム面との間などの接触部分に作用する摩擦力は、利用回数が増すごとに大きくなる。このような場合、回転操作において上記摩擦力を作業者が感知したことにより連結装置がロック状態に切り換えられていない状態を切り換えられた状態として当該作業者が誤認することがある。また、上記摩擦力を考慮して、作業者が操作グリップを強力に操作すると、接触部分が摩耗や破損することがある。
本発明の目的は、確実に操作できる位置決め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1Aから図2B図3A図3Bに示すように、位置決め装置を次のように構成した。
ハウジング1の先端側に筒状のプラグ部5が形成される。前記プラグ部5に形成される案内孔6にクランプロッド7が軸方向に移動可能に挿入される。前記クランプロッド7の先端側外周部に装着される筒状の押圧部材11が弾性部材によって構成される。その押圧部材11が、スリット13を有すると共に、前記プラグ部5の外周壁に形成される楔部16に摺動可能に係合される。前記案内孔6内に装着されるロックバネ18が、前記ハウジング1に対して前記クランプロッド7を軸方向の基端側に付勢する。前記案内孔6に交差するように前記ハウジング1に形成される支持孔22に、操作ロッド23が軸心中心に回転可能に挿入される。前記操作ロッド23の外周壁に形成されるカム部25が、前記クランプロッド7の基端部に係合される。前記操作ロッド23の外周壁に挿入部44が形成される。前記操作ロッド23の略径方向に向けて形成される段差部44を挟んで、挿入部45が前記カム部25に隣接して設けられる。その挿入部44には、前記クランプロッド7が挿入可能となっている。
【0006】
本発明は、次のように作用効果を奏する。
上記位置決め装置をリリース状態からロック状態に切り換えるときに、ロックバネの付勢力によってクランプロッドがカム部に押しつけられた状態から段差部を跨いで挿入部に挿入された状態に確実に操作される。また、このとき、作業者は、回転操作するときにおける操作ロッドからの抵抗力が急激に減少したことや振動を感じ、または、挿入時の音を聞くことができる。これにより、位置決め装置がリリース状態からロック状態に切り換えられたことが作業者によって確実に認識される。
【0007】
本発明は、下記(1)および(2)の構成を加えることが好ましい。
(1) 例えば、図1Aから図2B図3Bに示すように、位置決め装置が、次のように構成される。
前記ハウジング1に形成される摺動孔29が、前記支持孔22の内周面に開口される。前記摺動孔29内に収容される進出バネ31によってロック部材30が前記操作ロッド23に向けて付勢される。そのロック部材30が、前記操作ロッド23の外周壁に形成される凹部33に挿入可能となっている。
この場合、操作ロッドが軸心中心に回転されて、凹部がロック部材の先端部に対面したときに、ロック部材が凹部に挿入される。このため、作業者が操作ロッドの操作を停止しても、そのときの位置決め装置の状態が確実に維持される。また、このとき、操作ロッドが回転方向の所定位置に到達したことを挿入時に発生する音や振動、ロック部材と進出バネによって操作ロッドを回転させないように作用する抵抗力によって、作業者は操作ロッドが所定位置に到達したことを確実に認識できる。
(2) 例えば、図3Aに示すように、位置決め装置が、次のように構成される。
前記カム部25、又は、前記クランプロッド7の基端部に凹部46が形成される。前記凹部46に向けて凸部47が前記クランプロッド7の基端部、又は、操作ロッド23のカム部25から突設される。
この場合、操作ロッドが軸心中心に回転されて、凸部が凹部に挿入される。このため、作業者が操作ロッドの操作を停止しても、そのときの位置決め装置の状態が確実に維持される。また、このとき、挿入時に発生する音や振動、凸部が凹部などによる操作ロッドを回転させないようにする抵抗力によって、作業者は、操作ロッドが回転方向の所定位置に到達したことを確実に認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1Aは、本発明の一実施形態を示し、位置決め装置のリリース状態を示す断面視の模式図である。図1Bは、図1A中の1B-1B線の矢視図を示している。図1Cは、上記位置決め装置の外観図を示している。
図2図2Aは、上記位置決め装置のロック状態を示す図であり、図1Aに類似する図である。図2Bは、上記位置決め装置を示す外観図であり、図1Cに類似する図である。
図3図3Aは、本発明の実施形態の第1変形例を示し、図1Aに類似する図である。図3Bは、本発明の実施形態の第2変形例を示し、図1Aに類似する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図1Aから図2Bによって説明する。
上記の位置決め装置では、ハウジング1の本体部2から小径の下部3が下方に突設される。そのハウジング1の下部3が、テーブルTに形成される装着孔に挿入されている。そのハウジング1の本体部2がボルト4によってテーブルTに固定されている。その本体部2から筒状のプラグ部5が上方に突設される。
【0010】
上記プラグ部5の筒孔としての案内孔6が上下方向に形成され、その案内孔6にクランプロッド7の本体部分8が上下方向に移動可能に挿入される。その本体部分8の上部がハウジング1から上方に突出している。その本体部分8の上側に円盤状の支持部分9が当該本体部分8と同芯状に一体形成され、支持部分9が本体部分8の径寸法より大径となっている。
【0011】
上記の支持部分9の外周壁に装着溝10が周方向に形成される。その装着溝10に押圧部材11が装着される。本実施形態の上記の押圧部材11は、外力によって弾性変形する弾性部材、例えば、バネ材や樹脂やゴムによって構成され、外力によって径方向の外方に広がるように弾性変形される。その外力が押圧部材11に作用されなくなると、押圧部材11の弾性復元力によって径方向の内方に縮まる。
【0012】
上記の押圧部材11の本体部12は、筒状に形成され、筒壁の1か所が分断されて形成されるスリット13を有している。その本体部12の内周壁の上部から、爪部14が径方向の内方に突出するように周方向に形成される。その本体部12の内周壁であって、爪部14の下側に受け面15が下方に向かうにつれて広がるように傾斜して形成される。その押圧部材11の受け面15が、ハウジング1のプラグ部5の外周壁に形成される楔面16に摺動可能に係合されている。その楔面16は、プラグ部5の外周壁に下方に向かうにつれて広がる(案内孔6の軸心から遠ざかる)ように形成されている。このため、クランプロッド7と押圧部材11とが下方へ移動されることにより、押圧部材11が楔面16に沿って下方へ移動されると共に、径方向の外方に押動される。また、クランプロッド7と押圧部材11とが上方へ移動されることにより、押圧部材11が弾性復元力よって径方向の内方に移動される。
【0013】
上記クランプロッド7の下端部からフランジ部17が径方向の外方に周方向に連続して形成される。案内孔内であって、フランジ部17の上面と案内孔6の天井面との間にロックバネ18が装着される。そのロックバネ18の下端部がフランジ部17に係合されると共に、ロックバネ18の上端部が案内孔6の天井壁に係合される。このため、ロックバネ18がハウジング1に対してクランプロッド7を下方に付勢する。
【0014】
上記クランプロッド7の本体部分8の上部外周壁に凹部19が形成され、その凹部19にボール20が装着される。そのボール20が、プラグ部5の案内孔6の内周壁に上下方向に形成された直線案内溝21に摺動可能に挿入される。このため、クランプロッド7がハウジング1に対して上下方向へ移動が許容されると共に、クランプロッド7の軸心回りの回転が制限される。
【0015】
上記ハウジング1に支持孔22が水平方向に貫通され、その支持孔22が案内孔6に直交(交差)するように形成されている。その支持孔22に操作ロッド23が当該支持孔22の軸心中心に回転可能に挿入される。その操作ロッド23の一端部23aが支持孔22の内周壁22aに摺動可能に支持されると共に、操作ロッド23の他端部23bが支持孔22の内周壁22bに摺動可能に支持される。
【0016】
上記の操作ロッド23の一端部23aと他端部23bとの間にカム溝24が周方向に連続するように2つ形成される。そのカム溝24は、図1Aに示すように、操作ロッド23の外周壁に時計回りの方向に向かうにつれて深さが深くなるように形成される。そのカム溝24の底面または側面によってカム部25が形成される。そのカム部25に上記のクランプロッド7の下端面が係合される。このため、操作ロッド23が軸心中心に回転されると、カム部11がロックバネ18の下方への付勢力に抗してクランプロッド7を軸方向の上方へ移動させる。
【0017】
上記ハウジング1の本体部2に抜け止め用のピン穴26が上下方向に形成され、そのピン穴26に挿入されるピン27が、操作ロッド23の一端部側の外周壁に周方向に形成される溝28にも挿入される。このため、操作ロッド23がピン穴26とピン27と溝28とによって支持孔22から抜け止めされている。
【0018】
上記ハウジング1の側壁に摺動孔29が水平方向に形成され、その摺動孔29が支持孔22の内周面に開口される。その摺動孔29内にロック部材30と進出バネ31とが収容され、その摺動孔29に蓋部材32が螺合されている。その進出バネ31がハウジング1に対してロック部材30を支持孔22内に向けて付勢している。そのロック部材30の先端部が半球状に形成され、操作ロッド23の外周壁に所定の間隔(本実施形態では、180°離れた位置に形成される)2つの凹部33に、挿入可能となっている。このため、操作ロッド23が軸心中心に回転されて、凹部33がロック部材30の先端部に対面したときに、ロック部材30が凹部33に挿入される。その操作ロッド23がさらに回転移動されると、凹部33の内周壁が進出バネ31の付勢力に抗してロック部材30を摺動孔29内に押動させる。
【0019】
上記の支持孔22の一端部22aがハウジング1の外面に開口され、ハウジング1から操作ロッド23の一端部23aが突出している。その操作ロッド23の一端壁23aに六角穴34が形成され、その六角穴34に工具、例えば、六角レンチ43が挿入可能となっている。その操作ロッド23の一端部23aであって、六角穴34の径方向の外側に2つの三角印35が径方向の外方に向けて180度間隔をあけてレーザーによって刻印されると共に、一方の三角印35と他方の三角印35の間に時計回り方向への矢印36が刻印される。また、ハウジング1の側壁であって、操作ロッド23の外周壁の外側に2つの三角印37が支持孔22の径方向の内方に向けて180度間隔をあけてレーザーによって刻印されると共に、その三角印37の径方向の外側に「OFF」の文字が刻印される。また、各三角印37から時計回り方向に所定間隔をあけて曲線38が刻印される共に、その曲線38の外側に「ON」の文字が刻印されている。
【0020】
上記の位置決め装置は、図1Aから図2Bに示すように、次のように作動する。
図1Aから図1Cに示位置決め装置の初期状態(リリース状態)では、操作ロッド23の三角印35がハウジング1のOFFおよび三角印37に向いており、ロック部材30が操作ロッド23の凹部33に挿入されている。また、操作ロッド23の外周面上の部分39であって、操作ロッド23の軸心から径方向に遠く離間した部分39にクランプロッド7の下端面が係合している。このため、クランプロッド7と押圧部材11とが上限位置に移動されており、押圧部材11が当該押圧部材11の弾性復元力により径方向の内方に縮径させている。
【0021】
上記リリース状態の位置決め装置の上方から作業者がワーク40を搬入して、ワーク40の孔41をクランプロッド7に外嵌めする。その後、テーブルT上の載置台42にワーク40が載置される。
【0022】
上記の位置決め装置をリリース状態からロック状態に切り換えるときに、作業者が、操作ロッド23の六角穴34に挿入した工具43を時計回り方向に回転させる。すると、ロックバネ18の付勢力によってクランプロッド7が操作ロッド23の操作ロッド23の軸心から径方向に離間した部分(操作ロッド23の大径部分)39に係合された状態から、操作ロッド23のほぼ径方向にむけて形成される段差部44を跨いで挿入部(操作ロッド23の大径部分に対する小径部分)45に挿入される。これにより、押圧部材11がハウジング1の楔面16に沿って下降されながら、径方向の外方に拡径されていく。押圧部材11の外周面がワーク40の孔41の内周面に係合されると、クランプロッド7の下降が停止される。これにより、位置決め装置がリリース状態からロック状態に切り換えられる。その結果、ワーク40が位置決め装置によってテーブルT上の所定位置となるように位置決めされる。なお、位置決め装置のロック状態では、操作ロッド23の一端面に刻印された三角印35は、ハウジング1の側壁に刻印された曲線38に対面した位置に回転移動されている。これにより、作業者は、位置決め装置がロック状態となっていることを確認できる。
【0023】
上記の位置決め装置をロック状態からリリース状態に切り換えるときに、作業者が、操作ロッド23の六角穴34に挿入した工具43を時計回り方向に回転させる。すると、クランプロッド7の下端面が操作ロッド23のカム部25に係合して、カム部25がロックバネ18の下方への付勢力に抗してクランプロッド7を押し上げていく。次いで、ロック部材30が操作ロッド23の凹部33に挿入されたときに、作業者が工具43を回転させることを停止する。これにより、位置決め装置がロック状態からリリース状態に切り換えられる。
【0024】
上記の実施形態は次の長所を奏する。
上記位置決め装置をリリース状態からロック状態に切り換えるときに、ロックバネ18の付勢力によってクランプロッド7がカム部25に押しつけられた状態から段差部44を跨いで挿入部45に挿入された状態に確実に操作される。また、このとき、作業者は、回転操作するときにおける操作ロッド23からの抵抗力が急激に減少したことや振動を感じ、または、挿入時の音を聞くことができる。これにより、位置決め装置がリリース状態からロック状態に切り換えられたことが作業者によって確実に認識される。
【0025】
図3A図3Bは、上記実施形態の第1変形例および第2変形例を示している。この実施形態の第1変形例および第2変形例においては、上記の実施形態の構成部材と同じ部材(または類似する部材)には原則として同一の参照数字を付けて説明する。
この実施形態の第1変形例が上記の実施形態と異なる点は次の通りである。
【0026】
図3Aに示す実施形態の第1変形例の位置決め装置では、上記カム部25が操作ロッド23の外周壁に1つだけ設けられている。このため、作業者が操作ロッド23を回転させる力を増加させることなく、クランプロッド7の上下方向への移動距離を大きく設定することができる。
【0027】
上記の位置決め装置では、ハウジング1に摺動孔29が形成されておらず、ロック部材30や進出バネ31を備えていない。また、操作ロッド23の外周壁に凹部33が設けられていない。本実施形態の第1変形例では、カム部25に凹部46が形成されており、その凹部46に挿入可能な凸部47がクランプロッド7の下部に設けられている。その凸部47は、例えば、次のように構成される。クランプロッド7の下端部に水平方向に形成される装着孔にピンが挿入される。そのピンの下側周壁がクランプロッドの下端面より下方に突設され、そのピンの下端面によって凸部47が構成される。また、クランプロッド7の下端面に開口される装着孔にボールが挿入される。そのボールの下半部分が下方に突設され、そのボールの下部によって凸部47が構成される。このため、位置決め装置のロック状態からリリース状態に切り換えるときに、操作ロッド23を時計回りの方向に回転させていき、カム部25上の位置であって、軸心から最も離間された位置39がクランプロッド7の凸部47付近に近づいたときに、そのロックバネ18の下方への付勢力によって凸部47が操作ロッド23の凹部46に挿入される。このとき、作業者は、係合による音や振動により係合を感知でき、位置決め装置がリリース状態となったことがわかる。
【0028】
上記の凹部46の周壁は、当該凹部46の深さが最も深くなる底位置からみて時計周りの方向側の周壁が反時計回りの方向側の周壁に比べて、径方向に対する角度が鋭角となるように傾斜されている。図3Aにおいては、凹部46の右壁は径方向に対してα°だけ傾斜しているのに対して、凹部46の左壁は径方向に対してβ°だけ傾斜している。α°<β°となっている。このため、操作ロッド23を時計回りの方向へ回すときには、比較的小さな力で凹部46の周壁を乗り越すことができるが、作業者が操作ロッド23を反時計回りの方向へ回そうとすると、時計周り方向への回転に比べて回しにくく感じるように構成されている。これにより、作業者が操作ロッド23を誤った方向に回すのを防止できる。
【0029】
図3Bに示す実施形態の第2変形例の位置決め装置では、上記カム部25が操作ロッドの外周壁に4つ設けられている。このため、作業者は、操作ロッド23を90°程度の上記実施形態の位置決め装置より少ない回転角度で位置決め装置をロックおよびリリース操作できる。
【0030】
上記の各実施形態は次のように変更可能である。
上記ハウジング1は、テーブルTに固定されることに代えて、ワークパレットやロボットハンドの先端可動部や自動搬送台車等に固定されるようにしてもよい。この場合、位置決め対象物がワーク40であることに代えて、ワークパレットやツール等であってもよい。
上記の操作ロッド23に、工具挿入用の六角穴34を設けることに代えて、操作ロッド23の一端部に操作レバーやツマミを固定して備えるようにしてもよい。また、操作ロッド23を作業者が手動で操作することに代えて、ロボットや電動工具によって操作するようにしてもよい。
本実施形態のプラグ部5の楔面16の傾斜角度は、案内孔6の軸心に対して4°から8°となっているが、これに限られず、変更してもよい。この場合、傾斜角度を急にする(角度を小さくする)と、押圧部材11がワーク40の孔41の内周面を押す力を大きくできる。また、傾斜角度を緩く(角度を大きくする)することで、クランプロッド7の移動量を少なく抑えることができる。
上記実施形態の第1変形例において、操作ロッド23のカム部25に凹部46が形成されることに代えて、クランプロッド7の下端面に凹部が開口されるようにしてもよい。この場合、クランプロッド7の下端面から凸部47が下方に突設されることに代えて、操作ロッド23のカム部25から凸部47が上方に突設されるようにしてもよい。
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1:ハウジング,5:プラグ部,6:案内孔,7:クランプロッド,11:押圧部材,13:スリット,16:楔部,18:ロックバネ,22:支持孔,23:操作ロッド,25:カム部,29:摺動孔,31:進出バネ,30:ロック部材,33:凹部46:凹部,46:凸部.
図1
図2
図3