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特開2023-181939フィルムの製造システム、および、フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181939
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】フィルムの製造システム、および、フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 9/14 20060101AFI20231218BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231218BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20231218BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20231218BHJP
   F26B 3/04 20060101ALI20231218BHJP
   F26B 13/10 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B05C9/14
B05D7/00 A
B05D3/02 Z
B05C5/02
F26B3/04
F26B13/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095351
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】森本 有
(72)【発明者】
【氏名】高橋 憲顕
(72)【発明者】
【氏名】大本 篤志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚樹
【テーマコード(参考)】
3L113
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
3L113AA03
3L113AB02
3L113AC05
3L113AC31
3L113AC48
3L113AC67
3L113BA32
3L113DA24
4D075BB24Z
4D075BB32Y
4D075BB38Z
4D075BB95Y
4D075CA13
4D075DA04
4D075DB33
4D075DB34
4D075DB36
4D075DB37
4D075DB40
4D075DB43
4D075DB48
4D075DB53
4D075DC24
4D075EA07
4D075EB22
4D075EB33
4D075EB35
4D075EB38
4F041AA12
4F041AB01
4F041CA02
4F041CA13
4F041CA16
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA04
4F042BA14
4F042BA15
4F042BA17
4F042BA19
4F042BA25
4F042DB02
4F042DB25
4F042DB36
(57)【要約】
【課題】基材に対する被膜の密着性を向上させることができるフィルムの製造システム、および、フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】
フィルムFの製造システム1は、塗工液を基材Sの一方面S1に塗工して、基材Sの一方面S1上に塗膜を形成する塗工装置2と、塗膜を乾燥させて基材Sの一方面S1上に被膜Cを形成する乾燥装置3とを備える。乾燥装置3は、基材Sの一方側から塗膜に向けて送風する第1乾燥部31と、基材Sの搬送方向において第1乾燥部31よりも下流側に配置され、基材Sの一方側から塗膜を加熱するとともに基材Sの他方側から基材Sを塗膜よりも強く加熱する第2乾燥部32とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方面に配置される被膜とを有するフィルムを製造する製造システムであって、
塗工液を前記基材の前記一方面に塗工して、前記基材の前記一方面上に塗膜を形成する塗工装置と、
前記塗膜を乾燥させて前記基材の前記一方面上に前記被膜を形成する乾燥装置と
を備え、
前記乾燥装置は、
前記基材の少なくとも一方側から前記塗膜に向けて送風する第1乾燥部と、
前記基材の搬送方向において前記第1乾燥部よりも下流側に配置され、前記基材の前記一方側から前記塗膜を加熱するとともに、前記基材の他方側から、前記基材を、前記塗膜よりも強く加熱する第2乾燥部と
を有する、フィルムの製造システム。
【請求項2】
前記第1乾燥部は、
前記基材の前記他方側に配置され、前記基材を支持する支持ローラを有し、
前記基材の前記一方側から前記塗膜に向けて第1風速で加熱空気を送風するとともに、前記基材の前記他方側から前記基材に向けて、前記第1風速以下の第2風速で加熱空気を送風する、請求項1に記載のフィルムの製造システム。
【請求項3】
前記第2乾燥部は、
前記基材の前記一方側から前記塗膜に向けて第3風速で加熱空気を送風するとともに、前記基材の前記他方側から前記基材に向けて、前記第3風速よりも速い第4風速で加熱空気を送風する、請求項2に記載のフィルムの製造システム。
【請求項4】
前記第1風速は、15m/秒以下であり、
前記第4風速は、5m/秒以上である、請求項3に記載のフィルムの製造システム。
【請求項5】
前記第1風速と前記第2風速との合計は、15m/秒以下であり、
前記第2風速に対する前記第1風速の割合は、1.5以上であり、
前記第3風速と前記第4風速との合計は、15m/秒以下であり、
前記第3風速に対する前記第4風速の割合は、1.4以上である、請求項4に記載のフィルムの製造システム。
【請求項6】
前記第1乾燥部は、第1エリアと、前記基材の搬送方向において前記第1エリアの下流側に配置される第2エリアとを有し、
前記第2乾燥部は、前記基材の搬送方向において前記第2エリアよりも下流側に配置される第3エリアと、前記基材の搬送方向において前記第3エリアの下流側に配置される第4エリアとを有し、
前記第2エリアの加熱空気の温度は、前記第1エリアの加熱空気の温度よりも高く、
前記第4エリアの加熱空気の温度は、前記第3エリアの加熱空気の温度よりも低い、請求項1に記載のフィルムの製造システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルムの製造システムを用いて前記フィルムを製造する方法であって、
前記塗工装置を用いて前記基材上に前記塗膜を形成する塗工工程と、
前記乾燥装置を用いて前記塗膜を乾燥させる乾燥工程と
を含む、フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの製造システム、および、フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の上に塗工液を塗布し、塗膜に向けて送風することにより乾燥させる、フィルムの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-34139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、基材に対する被膜の密着性を向上させることができるフィルムの製造システム、および、フィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明[1]は、基材と、前記基材の一方面上に配置される被膜とを有するフィルムを製造する製造システムであって、塗工液を前記基材の前記一方面に塗工して、前記基材の前記一方面上に塗膜を形成する塗工装置と、前記塗膜を乾燥させて前記基材の前記一方面上に前記被膜を形成する乾燥装置とを備え、前記乾燥装置が、前記基材の少なくとも一方側から前記塗膜に向けて送風する第1乾燥部と、前記基材の搬送方向において前記第1乾燥部よりも下流側に配置され、前記基材の前記一方側から前記塗膜を加熱するとともに、前記基材の他方側から、前記基材を、前記塗膜よりも強く加熱する第2乾燥部とを有する、フィルムの製造システムを含む。
【0006】
このような構成によれば、第1乾燥部において、基材の一方側から塗膜に向けて送風することにより、塗膜の内部まで乾燥させないで、塗膜の表面を乾燥させる。
【0007】
次に、第2乾燥部において、基材を、塗膜よりも強く加熱する。
【0008】
これにより、塗膜と基材とを反応させつつ、塗膜を乾燥させて、基材と反応した被膜を得る。
【0009】
その結果、基材に対する被膜の密着性を向上させることができる。
【0010】
本発明[2]は、前記第1乾燥部が、前記基材の前記他方側に配置され、前記基材を支持する支持ローラを有し、前記基材の前記一方側から前記塗膜に向けて第1風速で加熱空気を送風するとともに、前記基材の他方側から前記基材に向けて、前記第1風速以下の第2風速で加熱空気を送風する、上記[1]のフィルムの製造システムを含む。
【0011】
このような構成によれば、第1乾燥部では、基材の他方側からの加熱空気の風速(第2風速)が基材の一方側からの加熱空気の風速(第1風速)よりも遅い。
【0012】
そのため、基材の他方側からの加熱空気によって基材の温度が過度に上昇することを抑制して、塗膜が内部まで乾燥してしまうことを抑制しつつ、基材の一方側からの加熱空気によって塗膜の表面を乾燥させることができる。
【0013】
本発明[3]は、前記第2乾燥部が、前記基材の前記一方側から前記塗膜に向けて第3風速で加熱空気を送風するとともに、前記基材の前記他方側から前記基材に向けて、前記第3風速よりも速い第4風速で加熱空気を送風する、上記[2]のフィルムの製造システムを含む。
【0014】
このような構成によれば、第2乾燥部では、基材の他方側からの加熱空気の風速(第4風速)が基材の一方側からの加熱空気の風速(第3風速)よりも速い。
【0015】
そのため、基材の他方側からの加熱空気によって基材の温度を上昇させて、塗膜と基材とを反応させつつ、塗膜を内部まで乾燥させることができる。
【0016】
これにより、基材と反応した被膜を得ることができ、基材に対する被膜の密着性を向上させることができる。
【0017】
本発明[4]は、前記第1風速が、15m/秒以下であり、前記第4風速が、5m/秒以上である、上記[3]のフィルムの製造システムを含む。
【0018】
本発明[5]は、前記第1風速と前記第2風速との合計が、15m/秒以下であり、前記第2風速に対する前記第1風速の割合が、1.5以上であり、前記第3風速と前記第4風速との合計が、15m/秒以下であり、前記第3風速に対する前記第4風速の割合が、1.4以上である、上記[4]のフィルムの製造システムを含む。
【0019】
本発明[6]は、前記第1乾燥部が、第1エリアと、前記基材の搬送方向において前記第1エリアの下流側に配置される第2エリアとを有し、前記第2乾燥部が、前記基材の搬送方向において前記第2エリアよりも下流側に配置される第3エリアと、前記基材の搬送方向において前記第3エリアの下流側に配置される第4エリアとを有し、前記第2エリアの加熱空気の温度が、前記第1エリアの加熱空気の温度よりも高く、前記第4エリアの加熱空気の温度が、前記第3エリアの加熱空気の温度よりも低い、上記[1]のフィルムの製造システムを含む。
【0020】
本発明[7]は、上記[1]~[6]のいずれか1つのフィルムの製造システムを用いて前記フィルムを製造する方法であって、前記塗工装置を用いて前記基材上に塗膜を形成する塗工工程と、前記乾燥装置を用いて前記塗膜を乾燥させる乾燥工程とを含む、フィルムの製造方法を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明のフィルムの製造システム、および、フィルムの製造方法によれば、基材に対する被膜の密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、フィルムの断面図である。
図2図2は、フィルムの製造システムの概略構成図である。
図3図3は、図2に示す乾燥装置を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.フィルム
まず、フィルムFについて説明する。図1に示すように、フィルムFは、基材Sと、被膜Cとを有する。
【0024】
基材Sは、シート形状を有する。基材Sは、基材Sの厚み方向において、一方面S1と、他方面S2とを有する。基材Sは、熱可塑性樹脂からなる。
【0025】
熱可塑性樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、および、アセテート樹脂が挙げられる。アセテート樹脂として、例えば、ジアセチルセルロース、および、トリアセチルセルロースが挙げられる。
【0026】
なお、基材Sは、添加剤を含有してもよい。添加剤として、例えば、酸化防止剤、安定剤、補強材、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、充填剤、可塑剤、滑剤、および、フィラーが挙げられる。
【0027】
被膜Cは、基材Sの一方面S1上に配置される。被膜Cは、基材Sの一方面S1を覆う。被膜Cの機能として、例えば、防眩性、反射防止性および耐擦傷性が挙げられる。
【0028】
被膜Cは、樹脂を含有する。樹脂として、例えば、熱硬化性樹脂、および、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂として、例えば、ウレタン樹脂、および、エポキシ樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂および、ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0029】
被膜Cは、粒子を含有してもよい。粒子として、例えば、酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、ケイ酸塩鉱物、および、リン酸塩などが挙げられる。酸化物として、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、および、酸化ジルコニウム(ジルコニア)が挙げられる。炭酸塩として、例えば、炭酸カルシウムが挙げられる。ケイ酸塩として、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、および、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。ケイ酸塩鉱物として、例えば、タルク、および、カオリンが挙げられる。リン酸塩として、例えば、リン酸カルシウムが挙げられる。
【0030】
フィルムFが防眩性光学フィルムである場合、被膜Cの「表面粗さ」は、例えば、0.040以上、好ましくは、0.050以上であり、例えば、0.095以下、好ましくは、0.080以下である。
【0031】
2.フィルムの製造システム
次に、フィルムFの製造システム1を説明する。
【0032】
フィルムFの製造システム1は、フィルムFを製造する。図2に示すように、フィルムFの製造システム1は、塗工装置2と、乾燥装置3とを備える。
【0033】
(1)塗工装置
塗工装置2は、塗工液を基材Sの一方面S1に塗工して、基材Sの一方面S1上に塗膜を形成する。つまり、フィルムFの製造方法は、塗工工程を含む。なお、基材Sの一方面S1には、塗工工程の前に、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理が、施されてもよい。
【0034】
塗工液の粘度は、100mPa・s以下、好ましくは、50mPa・s以下、より好ましくは、10mPa・s以下、例えば、1mPa・s以上である。塗工液の粘度が上記上限値以下であると、厚みが50μm以下となるように塗工液を塗布するときに、幅方向における膜厚の均一化を図ることができる。
【0035】
塗工液の表面張力は、例えば、30mN/m以上、好ましくは、35mN/m以上であり、例えば、60mN/m以下、好ましくは、55mN/m以下である。
【0036】
塗工液の固形分濃度は、塗工液の粘度が上記上限値以下になるように調節される。塗工液の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、40質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下である。
【0037】
塗工液は、樹脂成分と、溶媒とを含有する。塗工液は、必要により、上記した粒子、および、添加剤を含有する。樹脂成分は、上記した樹脂であってもよく、上記した樹脂の前駆体であってもよい。
【0038】
具体的には、塗工液は、多官能オリゴマー、多官能モノマー、水酸基モノマー、光重合開始剤、上記した粒子、表面張力調整剤、および、増粘剤を含有する。多官能オリゴマー、多官能モノマー、および、水酸基モノマーは、樹脂成分(樹脂の前駆体)であり、光重合開始剤、表面張力調整剤、および、増粘剤は、添加剤である。
【0039】
多官能オリゴマーは、複数のエチレン性不飽和基を有する。エチレン性不飽和基として、例えば、アクリル基、メタクリル基、ビニル基が挙げられる。
【0040】
多官能オリゴマーの重量平均分子量は、例えば、300以上、好ましくは、400以上であり、例えば、5000以下、好ましくは、3000以下である。
【0041】
多官能オリゴマーの官能基当量は、例えば、1以上、好ましくは、2以上であり、例えば、6以下、好ましくは、5以下である。
【0042】
多官能オリゴマーとして、例えば、ウレタンアクリレート、エリスリトール系アクリレートが挙げられる。
【0043】
塗工液中の多官能オリゴマーの割合は、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上であり、例えば、70質量%以下、好ましくは、50質量%以下、である。
【0044】
多官能モノマーは、複数のエチレン性不飽和基を有する。エチレン性不飽和基として、例えば、アクリル基、メタクリル基、ビニル基が挙げられる。
【0045】
多官能モノマーとして、例えば、ペンタエリスリトールとアクリル酸の縮合物が挙げられる。
【0046】
塗工液中の多官能モノマーの割合は、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上であり、例えば、70質量%以下、好ましくは、50質量%以下、である。
【0047】
水酸基モノマーは、1つのエチレン性不飽和基と、1つの水酸基とを有する。水酸基モノマーとして、例えば、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートが挙げられる。
【0048】
光重合開始剤は、紫外線照射により、多官能オリゴマー、多官能モノマーおよび水酸基モノマーをラジカル重合させる。光重合開始剤として、例えば、ベンゾフェノン系光重合開始剤、フォスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤が挙げられる。
【0049】
表面張力調整剤は、塗工液の表面張力を調整する。表面張力調整剤として、例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤が挙げられる。
【0050】
増粘剤は、塗工液の粘度を調整する。増粘剤として、例えば、合成無機高分子、合成有機高分子、天然有機高分子が挙げられる。
【0051】
(2)乾燥装置
乾燥装置3は、基材S上の塗膜を乾燥させる。つまり、フィルムFの製造方法は、乾燥工程を含む。塗膜が乾燥されることにより、基材Sの上に被膜Cが形成され、上記したフィルムFが得られる。なお、被膜Cは、必要により、紫外線硬化処理、または、熱硬化処理されてもよい。
【0052】
図3に示すように、乾燥装置3は、第1乾燥部31と第2乾燥部32とを有する。
【0053】
(2-1)第1乾燥部
第1乾燥部31は、基材Sの少なくとも一方側から塗膜に向けて第1風速で加熱空気を送風する。これにより、第1乾燥部31は、塗膜の表面を乾燥させる。
【0054】
第1風速は、例えば、1m/秒以上、好ましくは、2m/秒以上であり、例えば、20m/秒以下、好ましくは、15m/秒以下、より好ましくは、5m/秒以下である。
【0055】
第1乾燥部31は、好ましくは、基材Sを塗膜よりも弱く加熱する。これにより、第1乾燥部31は、塗膜の内部を乾燥させない。つまり、基材Sが第1乾燥部31を通過したとき、基材Sと塗膜との界面には、塗工液の溶媒が残存している。なお、第1乾燥部31は、基材Sを加熱しなくてもよい。また、第1乾燥部31は、基材Sと塗膜との界面に塗工液の溶媒が残存する程度に、基材Sを塗膜よりも強く加熱してもよい。
【0056】
第1乾燥部31は、基材Sを塗膜よりも弱く加熱する場合、例えば、基材Sの一方側から塗膜に向かう加熱空気の温度と同じ温度の加熱空気を、第1風速よりも遅い第2風速で、基材Sの他方側から基材Sに向けて送風する。つまり、第1乾燥部31は、基材Sの他方側から基材Sに向けて、第1風速以下の第2風速で加熱空気を送風する。これにより、第1乾燥部31は、塗膜の内部が乾燥しない程度に、基材Sを加熱する。基材Sが第2乾燥部32に入る前に第1乾燥部31で基材Sを加熱しておくことにより、基材Sと被膜Cとの密着性の向上を図ることができる。
【0057】
なお、第1乾燥部31は、基材Sを塗膜よりも弱く加熱する場合、例えば、基材Sの一方側から塗膜に向かう加熱空気の温度よりも低い温度の加熱空気を、第1風速と同じ第2風速で、基材Sの他方側から基材Sに向けて送風してもよい。また、第1乾燥部31は、基材Sを加熱しない場合、基材Sの他方側から基材Sに向けて加熱空気を送風しない。
【0058】
第2風速は、例えば、0.5m/秒以上、好ましくは、1m/秒以上であり、例えば、5m/秒以下、好ましくは、2m/秒以下である。
【0059】
第1風速と第2風速との合計は、例えば、2m/秒以上、好ましくは、3m/秒以上であり、例えば、30m/秒以下、好ましくは、15m/秒以下、好ましくは、10m/秒以下である。
【0060】
第2風速に対する第1風速の割合(第1風速/第2風速)は、例えば、0.1以上、好ましくは、1.2以上、より好ましくは、1.5以上であり、例えば、5以下、好ましくは、3以下である。
【0061】
第1乾燥部31での乾燥時間は、例えば、40秒以上、好ましくは、55秒以上であり、例えば、80秒以下、好ましくは、65秒以下である。
【0062】
第1乾燥部31は、第1エリア31Aと、第2エリア31Bとを有する。
【0063】
第1エリア31Aは、基材Sの搬送方向において、第1乾燥部31の上流端部に配置される。
【0064】
第1エリア31Aの加熱空気の温度(第1温度)は、塗工液の溶媒の沸点よりも低い。塗工液の溶媒の沸点が110℃である場合、第1温度は、例えば、45℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、80℃未満、好ましくは、75℃以下である。
【0065】
第2エリア31Bは、基材Sの搬送方向において、第1エリア31Aの下流側に配置される。第2エリア31Bは、基材Sの搬送方向において、第1エリア31Aと第2乾燥部32との間に配置される。
【0066】
第2エリア31Bの加熱空気の温度(第2温度)は、第1温度よりも高く、塗工液の溶媒の沸点よりも低い。塗工液の溶媒の沸点が110℃である場合、第2温度は、例えば、85℃以上、好ましくは、90℃以上であり、例えば、105℃以下、好ましくは、100℃以下である。
【0067】
第1乾燥部31は、複数の支持ローラ311と、複数の一方側ノズル312A,312B,312Cと、複数の他方側ノズル313A,313Bとを有する。
【0068】
複数の支持ローラ311は、基材Sの他方側に配置される。複数の支持ローラ311は、基材Sの搬送方向において、互いに間隔を隔てて並ぶ。複数の支持ローラ311は、基材Sを支持する。
【0069】
一方側ノズル312A,312B,312Cは、基材Sの一方側に配置される。一方側ノズル312Aは、第1エリア31A内に配置される。一方側ノズル312Aは、第1温度の加熱空気を、基材Sの一方側から塗膜に向けて、第1風速で、送風する。一方側ノズル312B,312Cは、第2エリア31B内に配置される。一方側ノズル312B,312Cは、第2温度の加熱空気を、基材Sの一方側から塗膜に向けて、第1風速で送風する。
【0070】
他方側ノズル313A,313Bは、基材Sの他方側に配置される。他方側ノズル313A,313Bは、第2エリア31B内に配置される。他方側ノズル313A,313Bは、第2温度の加熱空気を、基材Sの他方側から基材Sに向けて、第2風速で送風する。
【0071】
なお、複数の支持ローラ311、一方側ノズル312A,312B,312C、および、他方側ノズル313A,313Bの個数、配置は、限定されない。
【0072】
(2-2)第2乾燥部
第2乾燥部32は、基材Sの搬送方向において、第1乾燥部31よりも下流側に配置される。第2乾燥部32は、基材Sの一方側から、塗膜を加熱する。これにより、第2乾燥部32は、第1乾燥部31で加熱された塗膜の温度を維持する。
【0073】
塗膜を加熱するために、第2乾燥部32は、基材Sの一方側から塗膜に向けて第3風速で加熱空気を送風する。
【0074】
第3風速は、例えば、1m/秒以上、好ましくは、2m/秒以上であり、例えば、10m/秒以下、好ましくは、5m/秒以下である。
【0075】
また、第2乾燥部32は、基材Sの他方側から、基材Sを、塗膜よりも強く加熱する。これにより、塗膜の樹脂成分と基材Sとを反応させつつ、溶媒を蒸発させて、塗膜を乾燥させる。
【0076】
基材Sを塗膜よりも強く加熱するために、第2乾燥部32は、例えば、基材Sの他方側から基材Sに向けて、第3風速よりも速い第4風速で加熱空気を送風する。この場合、第2乾燥部32は、基材Sの他方側から基材Sに向けて、基材Sの一方側から塗膜に向かう加熱空気の温度と同じ温度の加熱空気を送風してもよく、基材Sの一方側から塗膜に向かう加熱空気の温度より高い温度の加熱空気を送風してもよい。つまり、第2乾燥部32は、基材Sの他方側から基材Sに向けて、第3風速よりも速い第4風速で加熱空気を送風する場合、基材Sの一方側から塗膜に向かう加熱空気の温度以上の温度の加熱空気を送風する。
【0077】
なお、基材Sを塗膜よりも強く加熱するために、第2乾燥部32は、基材Sの他方側から基材Sに向けて、基材Sの一方側から塗膜に向かう加熱空気の温度よりも高い温度の加熱空気を、第3風速と同じ第4風速で送風してもよい。
【0078】
第4風速は、例えば、2m/秒以上、好ましくは、5m/秒以上であり、例えば、10m/秒以下、好ましくは、7m/秒以下である。
【0079】
第3風速と第4風速との合計は、例えば、3m/秒以上、好ましくは、5m/秒以上であり、例えば、15m/秒以下、好ましくは、12m/秒以下である。
【0080】
第3風速に対する第4風速の割合(第4風速/第3風速)は、例えば、1.0以上、好ましくは、1.1以上、好ましくは、1.4以上であり、例えば、2以下、好ましくは、1.6以下である。
【0081】
第2乾燥部32での乾燥時間は、例えば、30秒以上、好ましくは、35秒以上であり、例えば、50秒以下、好ましくは、45秒以下である。
【0082】
第2乾燥部32は、第3エリア32Aと、第4エリア32Bとを有する。
【0083】
第3エリア32Aは、基材Sの搬送方向において、第2エリア31Bよりも下流側に配置される。第3エリア32Aは、基材Sの搬送方向において、第1乾燥部31と第4エリア32Bとの間に配置される。
【0084】
第3エリア32Aの加熱空気の温度(第3温度)は、塗工液の溶媒の沸点以下である。塗工液の溶媒の沸点が110℃である場合、第3温度は、例えば、85℃以上、好ましくは、90℃以上であり、例えば、110℃以下、好ましくは、105℃以下である。
【0085】
第4エリア32Bは、基材Sの搬送方向において、第3エリア32Aの下流側に配置される。第4エリア32Bは、基材Sの搬送方向において、第3エリア32Aに対して、第1乾燥部31の反対側に配置される。
【0086】
第4エリア32Bの加熱空気の温度(第4温度)は、第3温度よりも低く、塗工液の溶媒の沸点よりも低い。塗工液の溶媒の沸点が110℃である場合、第4温度は、例えば、45℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、75℃以下、好ましくは、70℃以下である。
【0087】
第2乾燥部31は、支持ローラを有さない。第2乾燥部31は、基材Sの他方側からの送風により、基材Sを浮かしつつ、塗膜を乾燥させる。第2乾燥部31は、複数の一方側ノズル321A,321B,321Cと、複数の他方側ノズル322A,322B,322C,322Dとを有する。
【0088】
一方側ノズル321A,321B,321Cは、基材Sの一方側に配置される。一方側ノズル321A,321Bは、第3エリア32A内に配置される。一方側ノズル321A,321Bは、第3温度の加熱空気を、基材Sの一方側から塗膜に向けて、第3風速で送風する。一方側ノズル321Cは、第4エリア32B内に配置される。一方側ノズル321Cは、第4温度の加熱空気を、基材Sの一方側から塗膜に向けて、第3風速で送風する。
【0089】
他方側ノズル322A,322B,322C,322Dは、基材Sの他方側に配置される。他方側ノズル322A,322B,322Cは、第3エリア32A内に配置される。他方側ノズル322A,322B,322Cは、第3温度の加熱空気を、基材Sの他方側から塗膜に向けて、第4風速で送風する。他方側ノズル322Dは、第4エリア32B内に配置される。他方側ノズル322Dは、第4温度の加熱空気を、基材Sの他方側から塗膜に向けて、第4風速で送風する。
【0090】
なお、一方側ノズル321A,321B,321C、および、他方側ノズル322A,322B,322C,322Dの個数、配置は、限定されない。
【0091】
4.作用効果
(1)フィルムFの製造システム1によれば、図3に示すように、乾燥装置3は、基材Sの一方側から塗膜に向けて送風する第1乾燥部31と、基材Sの搬送方向において第1乾燥部31よりも下流側に配置され、基材Sの一方側から塗膜を加熱するとともに、基材Sの他方側から、基材Sを、塗膜よりも強く加熱する第2乾燥部32とを有する。
【0092】
そのため、第1乾燥部31において、基材Sの一方側から塗膜に向けて送風することにより、塗膜の内部まで乾燥させないで、塗膜の表面を乾燥させる。
【0093】
次に、第2乾燥部32において、基材Sを、塗膜よりも強く加熱する。
【0094】
これにより、塗膜と基材Sとを反応させつつ、塗膜を乾燥させて、基材Sと反応した被膜Cを得る。
【0095】
その結果、基材Sに対する被膜Cの密着性を向上させることができる。
【0096】
(2)フィルムFの製造システム1によれば、第1乾燥部31では、基材Sの他方側からの加熱空気の風速(第2風速)が基材Sの一方側からの加熱空気の風速(第1風速)よりも遅い。
【0097】
そのため、基材Sの他方側からの加熱空気によって基材Sの温度が過度に上昇することを抑制して、塗膜が内部まで乾燥してしまうことを抑制しつつ、基材Sの一方側からの加熱空気によって塗膜の表面を乾燥させることができる。
【0098】
(3)フィルムFの製造システム1によれば、第2乾燥部32では、基材Sの他方側からの加熱空気の風速(第4風速)が基材Sの一方側からの加熱空気の風速(第3風速)よりも速い。
【0099】
そのため、基材Sの他方側からの加熱空気によって基材Sの温度を上昇させて、塗膜と基材Sとを反応させつつ、塗膜を内部まで乾燥させることができる。
【0100】
これにより、基材Sと反応した被膜を得ることができ、基材Sに対する被膜の密着性を向上させることができる。
【実施例0101】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明する。本発明は、下記の実施例によって限定されない。また、以下の記載において用いられる物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する、物性値、パラメータなどの上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「よりも大きい」として定義されている数値)に代替することができる。
【0102】
1.塗工液の製造
以下の材料をトルエンに配合し、塗工液を得た。得られた塗工液の固形分は、42質量%であり、粘度は、6mPa・sであった。
【0103】
多官能オリゴマー:
NKオリゴマーUA-53H-80BK(新中村化学工業社製) 50質量部
多官能モノマー:
ビスコート#300(大阪有機化学工業社製) 50質量部
水酸基モノマー:
4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業社製) 20質量部
光重合開始剤:
Omnirad907(IGM Resin社製) 5質量部
表面張力調整剤
GRANDIC PC4100(DIC社製) 1質量部
シリカ粒子
テクポリマーSSX-103DXE(積水化成品工業社製) 0.5質量部
増粘剤
スメクトン-SAN溶液(日東電工社製) 1.5質量部
2.フィルムの製造
基材の搬送速度30m/分で基材(材質:アクリルフィルム)の一方面上に塗工液を塗工し、表1に示す乾燥条件で乾燥させて、基材の一方面上にアクリルウレタン樹脂の被膜を有する、各実施例および比較例のフィルムを得た。
【0104】
3.評価
(1)表面粗さ
得られたフィルムの算術平均粗さを表面粗さ計(製品名:ET4000A、小坂研究所社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。「表面粗さ」が0.040以上、0.095以下であれば、防眩性光学フィルム用途として適している。
【0105】
(2)密着性
得られたフィルムの被膜の密着性(基材に対する密着性)を、紫外線フェードメーターU48H(スガ試験社製)を用いて評価した。
【0106】
詳しくは、実施例および比較例のフィルムから、それぞれ、5つの試験片を切り出した。5つの試験片のそれぞれに、互いに異なる「取り出し時間」(フェードメーターからの取り出し時間)を設定した。「取り出し時間」は、48時間、96時間、144時間、192時間、および、240時間であり、5つの試験片のそれぞれは、上記の「取り出し時間」のいずれか1つに対応する。
【0107】
全ての試験片を下記条件でフェードメーターに入れ、各「取り出し時間」が経過したときに、その「取り出し時間」に対応する試験片をフェードメータから取り出した。
【0108】
取り出した試験片の被膜表面に縦横1mm間隔でカッターナイフにより碁盤目の切り込みを入れ、碁盤目の切り込みを入れた被膜の上にNo.31Bテープ(日東電工社製)を貼り付け、その後、テープを剥離して碁盤目の切れ込みを入れた被膜が剥離したか否か確認した。
【0109】
各実施例および比較例ごとに、最初に被膜が剥離した試験片の「取り出し時間」を、密着性として、表1に示す。被膜が剥離するまでの「取り出し時間」が長ければ長いほど、密着性に優れている。
(フェードメーターの条件)
層内温度:40℃
層内湿度:20%RH
ランプ:(波長)300nm~700nm、(照度)500W/m
【0110】
【表1】
【符号の説明】
【0111】
1 フィルムの製造システム
2 塗工装置
3 乾燥装置
31 第1乾燥部
31A 第1エリア
31B 第2エリア
32 第2乾燥部
32A 第3エリア
32B 第4エリア
311 支持ローラ
S 基材
C 被膜
図1
図2
図3