(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181968
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】可搬型接地電極、接地抵抗測定装置、及び接地抵抗測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 27/20 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
G01R27/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032768
(22)【出願日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2022095077
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】仙田 学
(72)【発明者】
【氏名】永井 明博
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028AA02
2G028BC06
2G028CG05
(57)【要約】
【課題】補助接地棒を打ち込むことができない場所であっても測定を可能とすることを目的とする。
【解決手段】可搬型接地電極は、液体を保持する容器状の容器部と、前記容器部において接地面に沿って配置可能な面に設けられるとともに導体で構成された接地網とを備える。可搬型接地電極は、前記接地網が前記接地面に接地された状態で前記容器部に収容された前記液体を前記接地網に供給する供給路を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を保持する容器状の容器部と、
前記容器部において接地面に沿って配置可能な面に設けられるとともに導体で構成された接地網と、
前記接地網が前記接地面に接地された状態で前記容器部に収容された前記液体を前記接地網に供給する供給路と、
を備える可搬型接地電極。
【請求項2】
請求項1に記載の可搬型接地電極であって、
前記容器部は、起立状態において収容された前記液体を保持し、
前記接地網は、前記容器部の側部に設けられるとともに傾倒状態で前記接地面に接地される、
可搬型接地電極。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の可搬型接地電極であって、
前記接地網に電気的に接続される線材を巻き付けた状態で保持するドラム、
をさらに備える可搬型接地電極。
【請求項4】
請求項2に記載の可搬型接地電極であって、
前記容器部は、前記起立状態で上方に位置する取っ手を備え、
前記供給路は、前記起立状態で前記容器部の上部に開口した開口部に接続される、
可搬型接地電極。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の可搬型接地電極であって、
前記容器部において前記接地面に沿って配置可能な面と前記接地網との間に前記液体の通流を許容する通流空間を有する、
可搬型接地電極。
【請求項6】
本体に設けられ、線材を巻き付けた状態で保持するドラムと、
前記本体に設けられ、前記線材に電気的に接続される導体で構成された接地網と、
を備える可搬型接地電極。
【請求項7】
請求項1又は請求項6に記載の可搬型接地電極と、
前記可搬型接地電極の前記接地網に電気的に接続されるとともに地中に埋められた測定対象に電気的に接続され、前記測定対象の接地抵抗を測定する接地抵抗計と、
を備える接地抵抗測定装置。
【請求項8】
請求項1又は請求項6に記載の可搬型接地電極を用いて地中に埋められた測定対象の接地抵抗を測定する、
接地抵抗測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型接地電極、接地抵抗測定装置、及び接地抵抗測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、接地抵抗の測定に用いるコード巻取器と、コード巻取器を用いて接地抵抗を測定する方法とが開示されている。
【0003】
接地抵抗を測定する際には、測定者が測定対象である被測定導体が埋められた場所から一定距離離れた場所に第一補助接地棒を打ち込む。また、第一補助接地棒が打ち込まれた場所から一定距離離れた場所に第二補助接地棒を打ち込む。
【0004】
そして、被測定導体を測定コードで接地抵抗計に接続する。また、第一補助接地棒及び第二補助接地棒を、コード巻取器の測定コードで接地抵抗計に接続し、接地抵抗計によって接地抵抗を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような接地抵抗の測定方法では、第一補助接地棒及び第二補助接地棒を地面に打ち込む必要がある。
【0007】
このため、各補助接地棒を打ち込む場所が例えばコンクリートで形成されている場合には、補助接地棒を打ち込むことができず、測定が行えないという問題がった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、補助接地棒を打ち込むことができない場所であっても測定を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様の可搬型接地電極は、液体を保持する容器状の容器部と、前記容器部において接地面に沿って配置可能な面に設けられるとともに導体で構成された接地網とを備える。可搬型接地電極は、前記接地網が前記接地面に接地された状態で前記容器部に収容された前記液体を前記接地網に供給する供給路を備える。
【0010】
また、本発明の他の態様の可搬型接地電極は、本体に設けられ、線材を巻き付けた状態で保持するドラムと、前記本体に設けられ、前記線材に電気的に接続される導体で構成された接地網とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明のある態様において、可搬型接地電極を使用する際に、使用者は、水などの液体を容器部に入れ、当該可搬型接地電極を所定の位置まで搬送する。そして、使用者は、所定の位置において、容器部に設けられた接地網を接地面に接地させる。接地網が接地面に接地した状態において、容器部の液体が供給路から接地網に供給されるように可搬型接地電極を操作する。
【0012】
すると、容器部に収容された液体は、供給路を介して接地網に供給され、接地網が接地された接地面に浸透する。これにより、接地網と接地面との接触抵抗が低減する。
【0013】
このため、補助接地棒を打ち込むことができない場所であっても、液体が浸透した接地面に接地網を接地することができるので、例えば接地抵抗の測定が可能となる。
【0014】
また、本発明の他の態様において、例えば設置場所に予め水などをまき、可搬型接地電極を、接地網が水などのまかれた接地面と接するように配置する。すると、接地網は、接地面に接地される。
【0015】
このように、接地棒を打ち込むことができないコンクリートで形成された場所であっても、接地網を接地面に接地することができるので、例えば接地抵抗の測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る可搬型接地電極を示す一部断面図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係る可搬型接地電極の使用状態を示す説明図である。
【
図3】
図3は、第二実施形態に係る可搬型接地電極を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
以下、添付図面を参照しながら本発明の第一実施形態について説明する。
【0018】
図1は、第一実施形態に係る可搬型接地電極10を示す一部断面図である。
図1には、後述する巻取部20を除いた部分が断面で示されている。可搬型接地電極10は、接地抵抗計106(
図2参照)で接地抵抗を測定する際に用いられるものである。接地抵抗の測定方法としては、例えば三電極法が挙げられる。
【0019】
図1に示すように、可搬型接地電極10は、液体16が収容される容器部12と、容器部12の一側部に設けられた接地網14とを備える。また、可搬型接地電極10は、接地網14が接地面Gに接地された状態で容器部12に収容された液体16を接地網14に供給する供給路18を備える。具体的に説明すると、可搬型接地電極10は、接地網14が接地面Gに接地されるように倒された傾倒状態200(
図2参照)で容器部12に収容された液体16を接地網14に供給する供給路18を備える。さらに、可搬型接地電極10は、巻取部20を備え、巻取部20は、容器部12の他側部に設けられている。
【0020】
なお、第一実施形態では、容器部12の一側部に接地網14を設けた場合について説明するが、本実施形態は、これに限定されるものではない。接地網14は、容器部12において接地面Gに沿って配置可能な面に設ければよい。
【0021】
(接地網)
接地網14は、例えば導体である金属線が網状に形成された網本体30と、網本体30の外周部を支持する矩形状の枠体32とを備える。枠体32は、金属で構成されており、枠体32と網本体30とは、電気的に接続される。
【0022】
網本体30は、例えば銅線が立体的に編まれて形成されており、網本体30は、厚みを有する。網本体30の網目の大きさは、例えば1mm以下であり、傾倒状態200(
図2参照)において、供給された液体16は、網本体30をゆっくりと透過する。
【0023】
枠体32には、容器部12へ向けて延びる延出部34が形成されている。延出部34の先端には、容器部12と係脱可能の係合する係合部36が設けられ、接地網14は、容器部12に対して着脱可能である。これにより、接地網14は、破れ等によって破損した際に交換可能である。
【0024】
また、接地網14を容器部12に取り付けた状態において、接地網14は、容器部12の側面から延出部34の長さに応じた間隔をおいて配置される。これにより、容器部12の側面と接地網14との間には、傾倒状態200(
図2参照)において、供給路18を介して供給された液体16の通流を許容する通流空間38が形成される。
【0025】
なお、第一実施形態では、接地網14が枠体32と網本体30とで構成された場合について説明するが、第一実施形態は、これに限定されるものではない。第一実施形態は、例えば、網本体30の内側に複数の小穴を有する鉄板などの板体をさらに設け、供給された液体16が小穴を介して接地網14に供給されるように構成してもよい。
【0026】
(容器部)
容器部12は、例えば合成樹脂によって矩形容器状に形成されている。容器部12は、長方形状の底板40を備え、底板40を接地した状態で起立状態42を維持することができる。
【0027】
容器部12は、底板40の一方の長辺に沿って起立した一側壁44と、底板40の他方の長辺に沿って起立した他側壁46とを備える。また、容器部12は、底板40の各短辺に沿って起立した図示しない起立壁を備え、各壁44、46の間に液体16を収容する収容空間48が形成される。
【0028】
液体16としては、例えば水が挙げられる。また、液体16は、接地網14と接地面Gとの接触抵抗を低減するために水以外の液体16を用いることができる。
【0029】
容器部12は、起立状態42において、上方へ向けて開口する開口部50を備える。容器部12は、開口部50から液体16を出し入れ可能とする。また、容器部12は、開口部50の開口方向が上を向く起立状態42において、収容空間48内の液体16の開口部50からの流出を抑制し、液体16を収容空間48内に保持可能とする。
【0030】
なお、第一実施形態において、容器部12は、起立状態42で液体16を保持する場合を例に挙げて説明するが、第一実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、容器部12と通流空間38との間に、液体16の通流を任意に遮断する構造を設ければ、傾倒状態200(
図2参照)であっても容器部12に液体16を保持することができる。
【0031】
容器部12には、開口部50を閉鎖するキャップ52が着脱自在に取り付けられる。容器部12からキャップ52が取り外された状態において、開口部50から液体16を容器部12に収容することができる。また、容器部12にキャップ52が取り付けられた状態において、開口部50から外部への液体16の流出を抑制する。さらに、可搬型接地電極10を傾倒した傾倒状態200(
図2参照)において、開口部50の開口方向へ向かう液体16の流れは、キャップ52によって通流空間38の方向へ方向転換される。
【0032】
容器部12の一側壁44の一部の箇所の高さは、他側壁46よりも低く設定されている。これにより、高さが低い一側壁44の部位には、接地網14側に連通する連通部60が形成される。
【0033】
なお、第一実施形態では、一側壁44の一部の箇所の高さを他側壁46よりも低くして、一側壁44の上部(起立状態42において上側に位置する部位)に連通部60を形成したが、第一実施形態は、これに限定されるものではない。第一実施形態は、例えば、一側壁44の上部に連通穴を形成して連通部60を構成してもよい。また、連通部60は、一側壁44の幅方向に並ぶ複数の小孔で構成してもよく、この場合、各小孔から供給される液体16を広範囲に拡散することができる。
【0034】
(供給路)
供給路18は、一側壁44に形成された連通部60を含んで構成され、供給路18は、起立状態42で容器部12の上部に開口した開口部50に連通部60を介して接続される。
【0035】
これにより、起立状態42の可搬型接地電極10が傾倒された傾倒状態200(
図2参照)では、容器部12に収容された液体16が開口部50及び連通部60を介して通流空間38に流入した後、接地網14に供給される。
【0036】
(巻取部)
巻取部20は、容器部12の他側壁46に形成された巻取本体70と、巻取本体70に設けられた図示しない回転軸に回転自在に取り付けられたドラム72とを備えている。
【0037】
[脚部]
巻取本体70の下部には、側方に延出する脚部73が形成されている。この脚部73は、当該脚部73を接地面Gに接地した状態で、可搬型接地電極10を起立状態42に維持する。
【0038】
これにより、可搬型接地電極10を起立状態42で仮置きした際には、容器部12に収容された液体16が収容空間48に保持され、接地網14への液体16の供給が抑制される。
【0039】
[取っ手]
巻取本体70の上部には、上方へ向けて突出した取っ手74が形成されている。取っ手74は、起立状態42において、可搬型接地電極10の上方に位置する。これにより、容器部12は、巻取本体70を介して、起立状態42において上方に位置する取っ手74を備える。
【0040】
取っ手74は、巻取本体70から上方へ向けて延出するとともに離間して配置された一対の支柱76と、両支柱76の上端を連設する把持部78とを備える。これにより、使用者は、両支柱76間に挿入した手で把持部78を把持することで、当該可搬型接地電極10を持ち運べるように構成されている。
【0041】
この取っ手74の把持部78を把持して搬送する際には、容器部12の開口部50の開口方向が上方を向くように構成されている。これにより、可搬型接地電極10を搬送する際には、容器部12に収容された液体16が収容空間48に保持され、接地網14への液体16の流出が抑制される。
【0042】
[ドラム]
ドラム72は、回転軸に回転自在に支持された図示しない胴部と、胴部の縁部より外周方向へ向けて延出した鍔部80とを有する。使用者は、このドラム72を回転することで、接地網14に電気的に接続される線材82を胴部に巻き付けることができる。そして、胴部に巻き付けられた線材82は、鍔部80の間に保持される。また、使用者は、ドラム72を逆回転することで、胴部に巻き付けられた線材82を引き出すことができる。
【0043】
[線材]
ドラム72に巻き付けられる線材82は、銅線が被覆されたテストリードで構成されている。この線材82の一端には、接地抵抗計106(
図2参照)の端子に抜き差し可能に接続されるバナナ端子90が設けられている。また、線材82の他端は、接地網14と電気的に接続及び切離しができる接続構造が設けられている。
【0044】
この接続構造としては、例えば接地網14に接続可能なワニ口クリップが挙げられる。接地抵抗の測定で接地棒を利用する際に、使用者は、接地網14からワニ口クリップを取り外すとともに、取り外したワニ口クリップを接地棒の端子に接続する。
【0045】
なお、第一実施形態では、線材82に設けられたワニ口クリップを接地網14に直接接続する場合について説明するが、第一実施形態は、これに限定されるものではない。第一実施形態は、例えば、接地網14から延出した電線に接続される金属製の接続部を巻取部20に設け、この接続部にワニ口クリップを接続することで、線材82と接地網14とを電気的に接続してもよい。
【0046】
また、第一実施形態では、巻取部20が容器部12に一体的に形成された場合を例に挙げて説明するが、第一実施形態は、これに限定されるものではない。第一実施形態は、例えば、容器部12と接地網14と供給路18とを備えた可搬型接地電極10を、前述した巻取部20又は既存の巻取器に着脱可能に取り付けて構成してもよい。
【0047】
(使用例)
図2は、第一実施形態に係る可搬型接地電極10の使用状態を示す説明図である。
図2を用いて可搬型接地電極10の使用例を説明する。
【0048】
接地抵抗を測定する際には、接地抵抗測定装置500が用いられる。
【0049】
接地抵抗測定装置500は、前述した可搬型接地電極10と、可搬型接地電極10の接地網14に電気的に接続されるとともに地中102に埋められた測定対象100に電気的に接続され、測定対象100の接地抵抗を測定する接地抵抗計106とを備える。
【0050】
この接地抵抗測定装置500を用いることで、可搬型接地電極10を用いて地中102に埋められた測定対象100の接地抵抗を測定する接地抵抗測定方法が実現される。
【0051】
図2において、接地抵抗を測定する測定対象100は、接地抵抗を測定する地中102に埋められている。接地抵抗は、測定対象100と大地との接触抵抗を示す。
【0052】
測定対象100は、接地電極[E]を構成する。測定対象100に接続された電線104のバナナ端子107は、接地抵抗計106のE端子108に接続されているものとする。
【0053】
図2に示すように、接地抵抗計106で接地抵抗を測定する際に、使用者は、第一可搬型接地電極10Aと第二可搬型接地電極10Bとを用意する。そして、使用者は、各可搬型接地電極10A、10Bにおいて、
図1に示すように液体16(16A、16B)である水を容器部12(12A、12B)に収容する。
【0054】
図2に示すように、使用者は、第一可搬型接地電極10Aのドラム72Aに巻かれた線材82Aのバナナ端子90Aを、接地抵抗計106の第一接続部111に接続する。また、使用者は、線材82Aに設けられたワニ口クリップを第一可搬型接地電極10Aの接地網14Aに電気的に接続する。
【0055】
また、使用者は、第二可搬型接地電極10Bのドラム72Bに巻かれた線材82Bのバナナ端子90Bを、接地抵抗計106の第二接続部112に接続する。また、使用者は、線材82Bに設けられたワニ口クリップを第二可搬型接地電極10Bの接地網14Bに電気的に接続する。
【0056】
そして、使用者は、第一可搬型接地電極10Aの取っ手74Aを把持して第一可搬型接地電極10Aを測定対象100から例えば5m以上10m以下離れた場所へ搬送する。また、使用者は、搬送した第一可搬型接地電極10Aを、接地網14Aが接地面Gに接するように傾倒して傾倒状態200を形成する。
【0057】
すると、容器部12Aの液体16Aが供給路18Aを介して通流空間38Aに流出するとともに、通流空間38Aに流出した液体16Aが接地網14Aの網目を通って接地面Gに浸透する。これにより、接地網14Aと接地面Gとの接触抵抗が低減する。この第一可搬型接地電極10Aの接地網14Aは、測定補助電極としての電位電極[S]を構成する。
【0058】
また、使用者は、第二可搬型接地電極10Bの取っ手74Bを把持して第二可搬型接地電極10Bを、第一可搬型接地電極10Aを配置した場所から例えば5m以上10m以下離れた場所へ搬送する。そして、使用者は、第二可搬型接地電極10Bを接地網14Bが接地面Gに接するように傾倒して傾倒状態200を形成する。
【0059】
第二可搬型接地電極10Bの接地網14Bは、測定対象100が埋められた位置と第一可搬型接地電極10Aの接地網14Aが接地面Gに接地された位置とを通過する直線上の位置において接地面Gに接地される。
【0060】
すると、容器部12Bの液体16Bが供給路18Bを介して通流空間38Bに流出するとともに、通流空間38Bに流出した液体16Bが接地網14Bの網目を通って接地面Gに浸透する。これにより、接地網14Bと接地面Gとの接触抵抗が低減する。この第二可搬型接地電極10Bの接地網14Bは、測定補助電極としての電流電極[H]を構成する。
【0061】
この状態において、使用者は、接地抵抗計106を操作し、接地抵抗計106で例えば第二可搬型接地電極10Bの接地網14B(電流電極[H])と測定対象100(接地電極[E])との間で電流を流す。そして、使用者は、接地抵抗計106で第一可搬型接地電極10Aの接地網14A(電位電極[S])と測定対象100(接地電極[E])との間の電圧を計測して接地抵抗を測定する。
【0062】
(作用及び効果)
次に、第一実施形態による作用効果について説明する。
【0063】
第一実施形態における可搬型接地電極10は、液体16を保持する容器状の容器部12と、容器部12において接地面Gに沿って配置可能な面に設けられるとともに導体で構成された接地網14とを備える。可搬型接地電極10は、接地網14が接地面Gに接地された状態(傾倒状態200)で容器部12に収容された液体16を接地網14に供給する供給路18を備える。
【0064】
この構成において、可搬型接地電極10を使用する際に、使用者は、水などの液体16を容器部12に入れ、当該可搬型接地電極10を所定の位置まで搬送する。
【0065】
そして、使用者は、所定の位置において、容器部12に設けられた接地網14を接地面Gに接地させる。接地網14を接地面Gに接地した状態において、容器部12の液体16が供給路18から接地網14に供給されるように可搬型接地電極10を操作する。すると、容器部12に収容された液体16は、供給路18を介して接地網14に供給され、接地網14が接地された接地面Gに浸透する。このため、液体16を収容した容器を別途搬送して液体16を接地場所に浸透させる場合と比較して、利便性が向上する。
【0066】
また、接地網14が接地面Gに接地された状態において、容器部12に収容された液体16は、供給路18を介して接地網14に供給され、接地網14が接地された接地面Gに浸透する。これにより、接地網14と接地面Gとの接触抵抗が低減する。
【0067】
このように、接地棒を打ち込むことができないコンクリートで形成された場所であっても、接地面Gに液体16を浸透させることで、接地面Gと接地網14との接触抵抗を低減することができるので、接地抵抗の測定が可能となる。
【0068】
また、第一実施形態における接地抵抗測定装置500は、可搬型接地電極10と、可搬型接地電極10の接地網14に電気的に接続されるとともに地中102に埋められた測定対象100に電気的に接続され、測定対象100の接地抵抗を測定する接地抵抗計106と、を備える。
【0069】
そして、第一実施形態における接地抵抗測定方法は、可搬型接地電極10を用いて地中102に埋められた測定対象100の接地抵抗を測定する。
【0070】
この構成においても、前述と同様に、接地棒を打ち込むことができないコンクリートで形成された場所であっても、接地面Gに液体16を浸透させることで、接地面Gと接地網14との接触抵抗を低減することができるので、接地抵抗の測定が可能となる。
【0071】
また、第一実施形態において、容器部12は、起立状態42において収容された水などの液体16を保持し、接地網14は、容器部12の側部に設けられるとともに傾倒状態200で接地面Gに接地される。
【0072】
この構成において、容器部12は、起立状態42で収容された液体16を保持する。このため、可搬型接地電極10の姿勢を起立状態42と同じ状態に保って搬送することで、容器部12内の液体16を保持することができる。また、可搬型接地電極10を起立状態42で接地面Gに仮置きする際には、容器部12からの液体16の流出を抑制し、液体16の減少を抑制することができる。
【0073】
そして、接地箇所では、仮置きされた可搬型接地電極10を傾倒するだけで、接地網14が接地される接地面Gに液体16を浸透させ、接触抵抗を低減することができる。
【0074】
また、第一実施形態にあっては、容器部12の一側壁44から他側壁46までの幅寸法は、狭くなるように構成されている。このため、可搬型接地電極10のスリム化が可能となり、持ち運びが容易となる。
【0075】
また、第一実施形態の可搬型接地電極10は、接地網14に電気的に接続される線材82を巻き付けた状態で保持するドラム72をさらに備える。
【0076】
この構成においては、線材82の一端を接地抵抗計106に接続した状態で、ドラム72に保持された線材82を引き出しながら可搬型接地電極10を接地場所まで搬送することができ、利便性が向上する。なお、線材82は、ドラム72から総て外して接地抵抗を測定することも可能である。
【0077】
また、第一実施形態において、ドラム72は容器部12の他側部に設けられ、容器部12から液体16が供給される接地網14は容器部12の一側部に設けられている。このため、容器部12と接地網14との間に線材82を保持するドラム72が配置される場合と比較して、容器部12から接地網14に供給される液体16による線材82の濡れを抑制することが可能となる。
【0078】
また、第一実施形態の可搬型接地電極10において、容器部12は、起立状態42で上方に位置する取っ手74を備え、供給路18は、起立状態42で容器部12の上部に開口した開口部50に接続される。
【0079】
この構成において、取っ手74を把持して可搬型接地電極10を搬送すれば、供給路18に接続された容器部12の開口部50を上部に維持することができる。これにより、搬送時において、容器部12からの液体16の流出を抑制することができる。
【0080】
また、第一実施形態の可搬型接地電極10は、容器部12の側面と接地網14との間に液体16の通流を許容する通流空間38を有する。
【0081】
この構成において、供給路18から供給された液体16を、通流空間38に通流させた後、接地網14に供給することができる。これにより、供給路18からの液体16を接地網14の広範囲に供給することできるとともに、液体16を接地面Gの広範囲に浸透させることができ、接地網14と接地面Gとの接触抵抗のさらなる低減が可能となる。
【0082】
また、第一実施形態にあっては、容器部12から接地網14までの通流空間38の幅寸法は、狭くなるように構成されている。このため、可搬型接地電極10のスリム化を図ることができる。また、容器部12から接地網14までの幅寸法が狭いので、供給路18から供給された液体16が広がりやすくなる。これにより、供給路18からの液体16を接地網14の広範囲に広げることが可能となる。
【0083】
<第二実施形態>
以下、添付図面を参照しながら本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分についてのみ説明する。
【0084】
図3は、第二実施形態に係る可搬型接地電極300を示す一部断面図である。
図3には、巻取部20を除いた部分が断面で示されている。
【0085】
図3に示すように、第二実施形態に係る可搬型接地電極300は、第一実施形態の可搬型接地電極10と比較して、容器部12を備えない点が異なる。
【0086】
可搬型接地電極300は、巻取部20を備えている。巻取部20の本体である巻取本体70の一面側には、線材82を巻き付けた状態で保持するドラム72が設けられている。
【0087】
また、巻取本体70の他面側には、線材82に電気的に接続される導体で構成された接地網14が設けられている。線材82と接地網14との接続構造は第一形態と同様とする。
【0088】
接地網14は、網本体30と、網本体30の外周部を支持する矩形状の枠体32とを備える。枠体32の上縁及び下縁には、巻取本体70へ向けて突出した断面L字状のフック310が設けられており、フック310は、巻取本体70に形成された係合穴312と係脱可能に係合する。
【0089】
(使用例)
第二実施形態において、接地抵抗を測定する際には、第一実施形態と同様に接地抵抗測定装置が用いられる(
図2の接地抵抗測定装置500参照)。
【0090】
接地抵抗測定装置は、前述した可搬型接地電極300と、可搬型接地電極300の接地網14に電気的に接続されるとともに地中102に埋められた測定対象100に電気的に接続され、測定対象100の接地抵抗を測定する接地抵抗計106とを備える(
図2参照)。
【0091】
この接地抵抗測定装置を用いることで、可搬型接地電極300を用いて地中102に埋められた測定対象100の接地抵抗を測定する接地抵抗測定方法が実現される(
図2参照)。
【0092】
(作用及び効果)
次に、第二実施形態による作用効果について説明する。
【0093】
第二実施形態においても、第一実施形態と同等部分については、第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0094】
また、第二実施形態における可搬型接地電極300は、本体である巻取本体70に設けられ、線材82を巻き付けた状態で保持するドラム72と、巻取本体70に設けられ、線材82に電気的に接続される導体で構成された接地網14とを備える。
【0095】
この構成において、可搬型接地電極300を接地抵抗の測定で使用する際には、予め接地面Gに水をまき、可搬型接地電極300を、接地網14が水のまかれた接地面Gと接するように配置する。すると、接地網14は、接地面Gに接地される。この接地面Gには、水がまかれているので、接地網14と接地面Gとの接触抵抗が低減され、接地抵抗の測定が可能となる。
【0096】
このように、接地棒を打ち込むことができないコンクリートで形成された場所であっても、接地網14を接地面Gに接地できるので、当該可搬型接地電極300を用いることによって接地抵抗の測定が可能となる。
【0097】
また、可搬型接地電極300にあっては、接地網14とドラム72とが別体の場合と比較して、接地網14及びドラム72の保管や運搬が容易となる。
【0098】
さらに、接地網14を接地面Gに接地した状態において、ドラム72の自重によって接地網14を接地面Gに押し付けることができる。これにより、単体の接地網14を接地面Gに配置する場合と比較して、接地網14の接地面Gへの接地状態を安定化することができ、接地抵抗を測定する際の測定値の再現性が向上する。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0100】
10、300 可搬型接地電極
12 容器部
14 接地網
16 液体
18 供給路
38 通流空間
42 起立状態
50 開口部
72 ドラム
74 取っ手
82 線材
102 地中
100 測定対象
200 傾倒状態
500 接地抵抗測定装置