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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181969
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】画像形成装置及び検査システム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20231218BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20231218BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20231218BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20231218BHJP
   H04N 1/60 20060101ALI20231218BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/01 S
B41J2/525
B41J29/393 107
H04N1/60
H04N1/407 780
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046969
(22)【出願日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2022095222
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇弘
【テーマコード(参考)】
2C061
2C262
2H270
2H300
5C077
【Fターム(参考)】
2C061AP07
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AR03
2C061AS02
2C061BB08
2C061CE07
2C061CQ04
2C061CQ24
2C061CQ33
2C061CQ34
2C061CQ36
2C061CQ38
2C061KK13
2C061KK16
2C061KK19
2C061KK22
2C061KK25
2C061KK27
2C061KK32
2C262AC02
2C262AC08
2C262AC19
2C262BA02
2C262BA10
2C262BA16
2C262BA19
2C262BB03
2C262FA13
2C262GA02
2H270LA19
2H270LA22
2H270LD03
2H270MA07
2H270MB13
2H270MB16
2H270MB17
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC08
2H300EB04
2H300EB07
2H300EB12
2H300EC05
2H300EF08
2H300EH16
2H300EJ09
2H300EK03
2H300GG32
2H300RR34
2H300RR37
2H300RR39
2H300RR50
2H300SS01
2H300TT03
2H300TT04
5C077LL11
5C077MM27
5C077PP32
5C077PP37
5C077TT02
(57)【要約】
【課題】改善されたパッチ配列を有する校正用パターンを用いて、照返しの影響を効果的に低減しながら校正の性能を向上させること。
【解決手段】校正用パターンを表現する基準画像を第1のシートに形成する画像形成部と、前記第1のシートに形成された前記基準画像を光学的に読取ることにより生成される基準読取画像データに基づいて導出される校正パラメータを用いて、入力画像データを校正する校正部と、を備え、前記画像形成部は、前記校正部により校正された前記入力画像データに基づいて、第2のシートに印刷画像を形成し、前記校正用パターンは、複数のパッチからなるパッチ配列を含み、前記パッチ配列の周縁に位置する周縁パッチのサイズは、前記周縁パッチよりも内側に位置する内側パッチのサイズよりも小さい、画像形成装置が提供される。
【選択図】図11A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
校正用パターンを表現する基準画像を第1のシートに形成する画像形成部と、
前記第1のシートに形成された前記基準画像を光学的に読取ることにより生成される基準読取画像データに基づいて導出される校正パラメータを用いて、入力画像データを校正する校正部と、
を備え、
前記画像形成部は、前記校正部により校正された前記入力画像データに基づいて、第2のシートに印刷画像を形成し、
前記校正用パターンは、複数のパッチからなるパッチ配列を含み、
前記パッチ配列の周縁に位置する周縁パッチのサイズは、前記周縁パッチよりも内側に位置する内側パッチのサイズよりも小さい、
画像形成装置。
【請求項2】
前記基準読取画像データは、前記第1のシートに形成された前記基準画像を、暗色の背景部材が配設された読取位置で光学的に読取ることにより生成される、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記読取位置における前記第1のシートの搬送方向に垂直な前記背景部材の幅は、前記第1のシートの幅よりも広い、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記基準読取画像データは、前記搬送方向に沿って搬送される前記第1のシートが前記読取位置を通過する期間を含む読取期間にわたる読取りの結果として生成される、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記基準読取画像データは、
前記パッチ配列に対応するパッチ配列領域と、
前記背景部材の読取りに基づく、前記パッチ配列領域を囲む低輝度領域と、
を含む画像を表す、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記搬送方向と平行な前記パッチ配列の第1辺に位置する第1周縁パッチのサイズは、前記搬送方向に垂直な前記パッチ配列の第2辺に位置する第2周縁パッチのサイズよりも小さい、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記校正用パターンは、前記パッチ配列に含まれるどのパッチについても、パッチ中央を中心とする照返し範囲内のパッチ外領域のサイズに対する、当該照返し範囲内の前記低輝度領域のサイズの割合が、所定の閾値を下回らないように設計されており、
前記照返し範囲は、前記基準画像の読取りにおいて1つの画素の読取画素値に影響を与える周辺画素の範囲を表す、
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記パッチ配列に含まれる各内側パッチのサイズは、前記照返し範囲のサイズ以上である、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記校正用パターンは、前記パッチ配列を少なくとも部分的に囲む低輝度領域を含む、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記低輝度領域は、前記第1のシートの搬送方向と平行な前記パッチ配列の第1辺に沿った第1部分領域、及び前記搬送方向に垂直な前記パッチ配列の第2辺に沿った第2部分領域を含み、
前記第1辺に位置する第1周縁パッチのサイズは、前記第2辺に位置する第2周縁パッチのサイズよりも小さい、
請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の画像形成装置と、
前記第2のシートに形成された前記印刷画像を光学的に読取って、検査用読取画像データを生成する読取部、及び
前記入力画像データと前記検査用読取画像データとの比較に基づいて、前記第2のシートに形成された前記印刷画像を検査する検査部、
を備える検査装置と、
を含む検査システム。
【請求項12】
前記検査部は、ラスタ形式の前記入力画像データと前記検査用読取画像データとを色成分ごとに比較して、前記印刷画像の色味を検査する、請求項11に記載の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置及び検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置によりシートに形成された印刷画像を、入力画像データとシートから光学的に読取られた画像の読取画像データとを比較することにより検査する検査装置が知られている。例えば、ラスタ形式の入力画像データの3つの色成分(例えば、赤(R)、緑(G)及び青(B))の画像を読取画像データの対応する色成分の画像とそれぞれ比較することで、印刷画像の色味が検査され得る。
【0003】
こうした検査において、入力画像データは理想的な画像を表現するデジタルデータであるのに対し、読取画像データは画像の形成及び読取りに関連する様々な要因に起因する誤差を含む。特許文献1は、例えばシートの位置ずれ及び倍率誤差に起因する検査精度の低下を防止するために、予め定義されるパッチ配列を含むパターンを用いて画像データを校正する技術を開示している。特許文献1により開示された技術では、シートに形成されたパターン画像をスキャナで読取ることにより生成された読取画像データに基づいて、位置ずれ及び倍率変動を補償するためのパラメータが算出される。そして、算出されたパラメータを用いて、入力画像データが補正される。
【0004】
検査されるべき画像の不良は、位置及び倍率の誤差だけでなく、上述した色味の誤差をも含む。色味の誤差は、典型的には、画像形成においてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)という4色の現像剤(例えば、トナー又はインク)を使用する際に発生する。それに加えて、所謂「照返し」に起因する誤差成分が、色味の検査に影響する。照返しとは、スキャナの読取画素の各々に、シート上の周辺の画素位置で反射した光が入り込む現象をいう。概して、周辺の画素位置の印刷画像又は下地が明るいほど照返し量は大きくなる。特許文献2は、照返しに起因する読取誤差を低減するために、パッチ配列の周囲に背景パターンを配置する技術を提案している。特許文献3は、背景パターンを配置する代わりに、パッチ配列の周縁に位置するパッチを外側へ拡大する技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-087792号公報
【特許文献2】特開2010-085744号公報
【特許文献3】特開2016-118674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、過去に提案された技術はいずれも、限られたシートのサイズの制約の下で複数のパッチの最適な配置を実現したものではなかった。校正用のパターン画像を用いた校正の性能を向上させるためには、そのパターンができる限り多様な色のパッチを有していることが望ましい。一方で、各パッチのサイズが小さくなり過ぎると、周辺画素からの照返しの影響が優勢となってしまう。
【0007】
本開示は、上述した事情に鑑み、改善されたパッチ配列を有する校正用パターンを用いて、照返しの影響を効果的に低減しながら校正の性能を向上させる仕組みを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある観点によれば、校正用パターンを表現する基準画像を第1のシートに形成する画像形成部と、前記第1のシートに形成された前記基準画像を光学的に読取ることにより生成される基準読取画像データに基づいて導出される校正パラメータを用いて、入力画像データを校正する校正部と、を備え、前記画像形成部は、前記校正部により校正された前記入力画像データに基づいて、第2のシートに印刷画像を形成し、前記校正用パターンは、複数のパッチからなるパッチ配列を含み、前記パッチ配列の周縁に位置する周縁パッチのサイズは、前記周縁パッチよりも内側に位置する内側パッチのサイズよりも小さい、画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、照返しの影響を効果的に低減しながら校正の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】一実施形態に係る検査システムの構成の第1の部分を示す概略図。
図1B】一実施形態に係る検査システムの構成の第2の部分を示す概略図。
図2】一実施形態に係る制御装置の構成の一例を示すブロック図。
図3】一実施形態に係る検査制御部の構成の一例を示すブロック図。
図4】一実施形態に係る印刷設定画面の一例を示す説明図。
図5】一実施形態に係る検査印刷画面の一例を示す説明図。
図6A】着目画素と周辺画素との間の位置関係の一例を示す説明図。
図6B】シートが白紙である場合の、着目画素に対する周辺画素からの照返しについて説明するための説明図。
図7】照返し範囲の一例について説明するための説明図。
図8】シートがベタ黒である場合の、着目画素に対する周辺画素からの照返しについて説明するための説明図。
図9A】既存の校正用パターンの構成の一例を示す説明図。
図9B】既存の校正用パターンの構成の他の例を示す説明図。
図10A】改善された校正用パターンの第1の実施例を示す説明図。
図10B】改善された校正用パターンの第2の実施例を示す説明図。
図11A】改善された校正用パターンの第3の実施例を示す説明図。
図11B】改善された校正用パターンの第4の実施例を示す説明図。
図12】校正のためのルックアップテーブルの構成の一例を示す説明図。
図13】一実施形態に係る校正処理の流れの一例を示すフローチャート。
図14】一実施形態に係る検査処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<1.システムの概要>
図1A及び図1Bは、一実施形態に係る検査システム1の構成を示す概略図である。図1Aを参照すると、検査システム1は、操作部100、画像形成装置200、制御装置400、及び検査装置500を含む。図1Bを参照すると、検査システム1は、スタッカ600及びフィニッシャ700をさらに含む。
【0013】
(1)操作部
操作部100は、入力インタフェース及び出力インタフェースからなるユーザインタフェースをユーザに提供する装置である。入力インタフェースは、例えば、入力キー、タッチパネル、ボタン及びスイッチのうちの1つ以上を含んでよい。出力インタフェースは、例えば、ディスプレイ、スピーカ及びランプのうちの1つ以上を含んでよい。操作部100は、入力インタフェースを介してユーザ入力を受付け、受付けたユーザ入力に対応する指示信号又はデータを制御装置400へ送信する。また、操作部100は、制御装置400から受信される命令に基づいて、出力インタフェースから情報を出力する(例えば、ディスプレイに画像を表示させ、又はスピーカに音声を出力させる)。
【0014】
(2)画像形成装置
画像形成装置200は、シートに画像を形成する装置(プリンタともいう)である。本実施形態において、画像形成装置200は、カラー画像を形成可能なカラープリンタである。他の実施形態において、画像形成装置200は、モノクロプリンタであってもよい。画像形成装置200は、画像形成部300Y、300M、300C、300K、中間転写体306、転写部307、定着器308、クリーナ309、給紙カセット311、312、及び給送機構を備える。
【0015】
画像形成部300Yは、中間転写体306にイエロー(Y)のトナー像を形成する。画像形成部300Mは、中間転写体306にマゼンタ(M)のトナー像を形成する。画像形成部300Cは、中間転写体306にシアン(C)のトナー像を形成する。画像形成部300Kは、中間転写体306にブラック(K)のトナー像を形成する。画像形成部300Y、300M、300C及び300Kは、互いに同じ構成を有するため、ここでは画像形成部300Yの構成を例にとって説明する。画像形成部300Yは、感光ドラム301、帯電器302、露光器303、及び現像器304を備える。感光ドラム301は、表面に感光層を有するドラム状の感光体である。感光ドラム301は、ドラム軸を中心に図中の矢印Rの方向に回転する。帯電器302は、回転する感光ドラム301の表面を一様に帯電させる。露光器303は、制御装置400から入力される(ここでは、イエローの画像を表す)画像データに応じてレーザ光を感光ドラム301に照射する。露光器303から出力されるレーザ光は、帯電された感光ドラム301の表面をドラム軸方向に走査し、それにより感光ドラム301の表面に静電潜像が形成される。現像器304は、(ここではイエローの)トナーを感光ドラム301の表面に供給することにより、感光ドラム301上の静電潜像を現像する。その結果、感光ドラム301の表面にトナー像が形成される。画像形成部300Yにおいて感光ドラム301の表面に形成されたイエローのトナー像は、中間転写体306へ転写される。さらに、画像形成部300M、300C及び300Kにおいてそれぞれの感光ドラム301の表面に形成されたマゼンタ、シアン及びブラックのトナー像がイエローのトナー像に重畳する形で順に中間転写体306へ転写される。それにより、中間転写体306にフルカラーのトナー像が形成される。中間転写体306は、無端状のベルト部材であり、図中で時計回り方向に回動する。中間転写体306は、フルカラーのトナー像を転写部307の位置(転写位置)まで搬送する。
【0016】
給紙カセット311及び312は、シートの束を収容している。シートは、給送機構によって給紙カセット311又は312からピックアップされ、搬送路313に沿って搬送される。シートは、制御装置400による制御の下で、中間転写体306のトナー像が転写位置へ到達するタイミングに合わせて、転写位置へ搬送される。
【0017】
転写部307は、中間転写体306に担持されているトナー像を、転写位置においてシートに転写する。定着器308は、ヒータ及び加圧ローラを含む。定着器308は、シートに転写されたトナー像を、ヒータによって加熱し、及び加圧ローラによって加圧する。それにより、シート上のトナーが溶融して、トナー像がシートに定着する。クリーナ309は、中間転写体306の軌道上で転写位置の下流側に配置され、トナー像の転写後に中間転写体306に残留するトナーを除去する。
【0018】
搬送路313は、定着器308の下流で搬送路314及び315に分岐している。定着器308を通過したシートは、搬送路313から搬送路315へ一旦搬送される。シートの後端が搬送路315へ入ると、搬送方向は逆転し、シートは排出ローラ317から検査装置500へ排出される。このような搬送を通じて、シートは、画像が形成された面が下向きとなる状態(フェイスダウンという)で排出される。なお、両面印刷が行われる場合には、搬送路315に進入したシートは、搬送路316へ搬送され、搬送路316から搬送路313へ戻って、表裏反転した形で再度転写位置を通過する。転写位置において転写部307によりシートの裏面にトナー像が形成され、定着器308においてトナー像がシートに定着する。両面に画像が形成されたシートは、排出ローラ317から検査装置500へ排出される。
【0019】
(3)制御装置
制御装置400は、操作部100又は外部ネットワークから受信される指示信号に基づいて、画像形成装置200、検査装置500、スタッカ600、及びフィニッシャ700の動作を制御する。制御装置400は、画像形成装置200又は検査装置500の一部であってもよい。例えば、制御装置400は、ユーザにより印刷ジョブの実行が指示された場合に、指定された入力画像データに基づく画像をシートに形成するように画像形成装置200を制御する。制御装置400の構成の詳細について、後にさらに説明する。
【0020】
(4)検査装置
検査装置500は、搬送路501、搬送ローラ502、流し読みガラス503a、流し読みガラス503b、搬送ローラ504、第1読取部505a、第2読取部505b、及び検査制御部510を備える。搬送ローラ502は、画像形成装置200から排出されるシートを受け入れ、搬送路501に沿ってシートを搬送する。第1読取部505aは、流し読みガラス503aの上を通過するシートの下側の面に形成された画像を光学的に読取って読取画像データを生成し、生成した読取画像データを検査制御部510へ出力する。第1読取部505aは、例えば、1つ以上の白色LED(Light Emitting Diode)からシートへ白色光を照射する。第1読取部505aは、シートの下側の面で反射した反射光を、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサの画素配列で検出することにより、シートの画像を読取可能である。典型的には、第1読取部505aは、シートからの反射光を、RGBのカラーフィルタで3つの色成分に分解して受光する。そのため、第1読取部505aから出力される読取画像データは、RGBの3つの色成分値を有する3次元ベクトルを画素ごとに示すラスタ形式のデータとなる。第1読取部505aがシートの画像を読取る読取位置において、搬送路501を挟んで流し読みガラス503aの反対側には、背景部材(以下、バッキングという)540aが配設される。後に説明するように、第1読取部505aは、シートの周囲のバッキング540aからの反射光をも受光し得る。第2読取部505bは、流し読みガラス503bの下を通過するシートの上側の面に形成された画像を光学的に読取って読取画像データを生成し、生成した読取画像データを検査制御部510へ出力する。第2読取部505bは、第1読取部505aと同様に構成されてよく、第2読取部505bから出力される読取画像データもまた、RGBの3つの色成分値を有する3次元ベクトルを画素ごとに示すラスタ形式のデータとなる。第2読取部505bがシートの画像を読取る読取位置において、搬送路501を挟んで流し読みガラス503bの反対側には、バッキング540bが配設される。第2読取部505bは、シートの周囲のバッキング540bからの反射光をも受光し得る。搬送ローラ504は、流し読みガラス503a、503bを通過したシートをスタッカ600へ排出する。検査制御部510は、制御装置400と連携して、こうした検査装置500の動作を制御する。検査制御部510の構成の詳細について、後にさらに説明する。
【0021】
(5)スタッカ
図1Bを参照すると、スタッカ600は、搬送路601、602、603、604、大容量トレイ610、及びパージトレイ620を備える。スタッカ600は、検査装置500から受け渡されるシートを搬送路601へ受け入れる。搬送路601は、大容量トレイ610へ向かう搬送路602、パージトレイ620へ向かう搬送路603、及びフィニッシャ700へ向かう搬送路604へ分岐している。例えば、検査装置500により不良であると判定された画像が形成されたシートは、制御装置400による制御の下で搬送路603を通ってパージトレイ620へ排出され得る。また、フィニッシャ700による後処理を要するシートはフィニッシャ700へ、それ以外のシートは大容量トレイ610へ排出され得る。
【0022】
(6)フィニッシャ
フィニッシャ700は、搬送路701、及び排出トレイ711、712、713を備える後処理装置である。フィニッシャ700は、スタッカ600から受け渡されるシートを搬送路701へ受け入れ、制御装置400による制御の下でシートを排出トレイ711、712及び713のいずれかへ排出する。図示していないものの、フィニッシャ700は、複数のシートに対するステイプル処理、製本処理、又は断裁処理といった様々な後処理を行うための機構を備えていてよい。
【0023】
<2.制御装置の構成例>
図2は、制御装置400の構成の一例を示すブロック図である。制御装置400には上述した操作部100、画像形成装置200、検査装置500、スタッカ600及びフィニッシャ700が接続されるが、図2では制御装置400とスタッカ600及びフィニッシャ700との間の接続関係は省略されている。制御装置400には、さらにストレージ430及び電力制御部450が接続される。
【0024】
制御装置400は、CPU401、ROM402、RAM403、NVRAM404及びタイマ405を備える。CPU(Central Processing Unit)401は、ソフトウェア命令群を含むコンピュータプログラムを実行することにより、検査システム1の動作の全般を制御するプロセッサである。ROM(Read Only Memory)402は、CPU401により実行される1つ以上のコンピュータプログラムを記憶している不揮発性のメモリである。RAM(Random Access Memory)403は、CPU401による処理のための一時的な記憶領域を提供する揮発性のメモリである。RAM403は、画像データを一時的に記憶する画像メモリとしても使用されてよい。NVRAM(Non-Volatile RAM)404は、検査システム1の動作の制御に要する様々なパラメータの値を記憶する小規模な不揮発性のメモリである。タイマ405は、現在時刻の取得、及び設定される時間の経過の監視のために使用される。CPU401、ROM402、RAM403、NVRAM404及びタイマ405は、システムバス410を介して相互に接続される。
【0025】
制御装置400は、さらに、操作I/F406、プリンタ制御I/F407、電力制御I/F408、ネットワークI/F409、画像バスI/F411、ストレージI/F417、及びACC I/F418といったインタフェース(I/F)を備える。これらインタフェースもまた、システムバス410を介して相互に接続される。操作I/F406は、制御装置400を操作部100へ接続する。プリンタ制御I/F407は、制御装置400と画像形成装置200との間の制御通信を仲介するインタフェースである。電力制御I/F408は、制御装置400を電力制御部450へ接続する。電力制御部450は、CPU401から電力制御I/F408を介して入力される命令に従って、電源(図示せず)から検査システム1を構成する各装置へ適時に電力を供給させる。ネットワークI/F409は、制御装置400を外部ネットワーク(図示せず)へ接続する。制御装置400は、ネットワークI/F409を介して外部装置(例えば、ホストコンピュータ)と通信することができる。ネットワークI/F409は、例えば、有線LAN(Local Area Network)インタフェース又は無線LANインタフェースであってもよい。例えば、印刷ジョブの実行に要する入力画像データ(例えば、PDL(Page Description Language)データ)は、ネットワークI/F409を介して外部装置から受信され得る。ネットワークI/F409は、制御装置400のアドレス情報(例えば、MACアドレス及びIPアドレス)などの通信制御用のパラメータを記憶するメモリを有していてもよい。画像バスI/F411は、システムバス410と画像バス415との間の接続を仲介するブリッジである。ストレージI/F417は、制御装置400をストレージ430へ接続する。ストレージ430は、大容量の記憶装置である。ストレージ430は、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)であってもよい。ACC I/F418は、制御装置400を検査装置500へ接続する。
【0026】
制御装置400は、さらに、画像処理部412、RIP413、及びプリンタI/F414を備える。画像バスI/F411、画像処理部412、RIP413、及びプリンタI/F414は、画像バス415を介して相互に接続される。画像処理部412は、例えば、何らかの画像圧縮方式に従った画像データの圧縮若しくは伸張、画像の斜行を修正するための回転、画素値の補正、色空間の変換、又は解像度の変換といった画像処理を画像データに対して行う。本実施形態において、画像処理部412は、後に詳しく説明するように、校正パラメータを用いた入力画像データの校正を行う機能をも有する。そのため、画像処理部412を校正部412とも称する。RIP(Raster Image Processor)413は、PDLデータをラスタ形式(ビットマップ形式ともいう)の画像データ(RIPデータ)に展開する。プリンタI/F414は、制御装置400と画像形成装置200との間の画像データの通信を仲介するインタフェースである。印刷ジョブの入力画像データは、RIP413によりラスタライズされてRIPデータへ変換され、さらに画像処理部412により処理された後(例えば、RGBからYMCKへの色空間の変換)、プリンタI/F414を介して画像形成装置200へ出力される。
【0027】
<3.検査制御部の構成例>
図3は、検査制御部510の構成の一例を示すブロック図である。検査制御部510は、CPU511、ROM512、RAM513、ストレージ514、ホストI/F515、モータドライバ516、センサ群517、比較部518、RTC519、及び画像処理部531を備える。
【0028】
CPU511は、ソフトウェア命令群を含むコンピュータプログラムを実行することにより、検査装置500の動作を制御するプロセッサである。ROM512は、CPU511により実行される1つ以上のコンピュータプログラムを記憶している不揮発性のメモリである。RAM513は、CPU511による処理のための一時的な記憶領域を提供する揮発性のメモリである。RAM513は、画像データを一時的に記憶する画像メモリとしても使用されてよい。ストレージ514は、例えば、HDD又はSSDといった記憶装置であってよく、様々なデータを記憶し得る。ホストI/F515は、検査制御部510を制御装置400のACC I/F418へ接続する。例えば、ホストI/F515は、画像形成装置200により検査を要する画像がシートへ形成された場合に、その画像に対応するラスタ形式の入力画像データ(RIPデータ)を制御装置400から受信する。受信された入力画像データは、例えばストレージ514に記憶される。
【0029】
モータドライバ516は、CPU511による制御の下で、検査装置500の内部の搬送路に沿ってシートが適切なタイミングで搬送されるように、検査装置500の複数のローラを回転させるためのモータ(図示せず)を駆動する。センサ群517は、検査装置500の搬送路を通過するシートの位置を検知するためのセンサを含むセンサの集合である。センサ群517は、それぞれの検知結果をCPU511へ出力する。比較部518は、シートに形成された対象画像を検査するために、入力画像データと後述する検査用読取画像データとを比較する。比較部518における画像の比較に基づく検査について後にさらに説明する。RTC(Real Time Clock)519は、高精度で実時間を計測するクロックである。検査装置500におけるシートの搬送と画像の読取りとの間の同期は、RTC519による計時に基づいて維持され得る。CPU511、ROM512、RAM513、ストレージ514、ホストI/F515、モータドライバ516、センサ群517、比較部518、RTC519、及び画像処理部531は、システムバス520を介して相互に接続される。
【0030】
検査制御部510は、さらに、第1読取I/F532a及び第2読取I/F532bを備える。第1読取I/F532aは、検査制御部510を図1Aに示した第1読取部505aへ接続するインタフェースである。第1読取I/F532aは、第1読取部505aからシートの第一面(図1Aにおける下側の面)の読取画像データを取得し、取得した読取画像データを画像処理部531へ出力する。第2読取I/F532bは、検査制御部510を図1Aに示した第2読取部505bへ接続するインタフェースである。第2読取I/F532bは、第2読取部505bからシートの第二面(図1Aにおける上側の面)の読取画像データを取得し、取得した読取画像データを画像処理部531へ出力する。画像処理部531は、第1読取I/F532a及び第2読取I/F532bを介して取得した読取画像データに対し、例えば変倍及びガンマ補正といった画像処理を行う。そして、画像処理部531は、処理後の読取画像データを、例えば比較部518による入力画像データとの比較のためにRAM513へ出力する。なお、これ以降の説明において、CPU511、比較部518及び画像処理部531をまとめて、検査部530と称することがある。
【0031】
<4.処理の詳細>
<4-1.検査に関する設定>
図4は、一実施形態に係る印刷設定画面の一例を示す説明図である。図4に示した印刷設定画面110は、例えば、ユーザが検査システム1に対して印刷ジョブの実行を指示する際に、操作部100又はホストコンピュータのディスプレイに表示され得る。印刷設定画面110は、第1設定ボタン111、第2設定ボタン112、第3設定ボタン113、キャンセルボタン118、印刷開始ボタン119、及び詳細メニューセクション120を含む。
【0032】
第1設定ボタン111は、カラーモード(カラー又はモノクロ)を設定するためのボタンである。第2設定ボタン112は、シートをどの排出トレイへ排出するかを設定するためのボタンである。第3設定ボタン113は、印刷に使用されるシートの種類を設定するためのボタンである。第3設定ボタン113の操作に応じて、各カセットに収容されているシートのサイズ及び坪量といった情報の表示、並びに使用されるカセットの変更が可能とされてもよい。キャンセルボタン118は、印刷ジョブの実行をキャンセルして印刷設定画面110を閉じるためのボタンである。印刷開始ボタン119は、検査を伴わない印刷ジョブの実行を指示するためのボタンである。
【0033】
詳細メニューセクション120には、詳細な設定項目又は高度な機能を呼出すためのユーザインタフェースが配置される。図4の例では、詳細メニューセクション120は、校正ボタン121及び検査印刷ボタン122を含む。校正ボタン121は、後述する校正機能の実行の開始を指示するためのボタンである。検査印刷ボタン122は、検査印刷(検査を伴う印刷)に関連するユーザインタフェースを呼出すためのボタンである。ユーザが検査印刷ボタン122を操作すると、印刷設定画面110は図5に示した検査印刷画面140へ遷移する。
【0034】
図5は、一実施形態に係る検査印刷画面の一例を示す説明図である。図5を参照すると、検査印刷画面140は、エリア指定セクション141、プルダウンメニュー142、キャンセルボタン148及び印刷開始ボタン149を含む。エリア指定セクション141には、検査の対象である対象画像(印刷ジョブの入力画像)のプレビューが表示される。プルダウンメニュー142は、「検査エリア」及び「検査除外エリア」という2つの選択肢を有し、いずれか1つの選択を受付ける。例えば、ユーザがプルダウンメニュー142で「検査エリア」を選択して、エリア指定セクション141で目的のエリアを(例えば、ドラッグ操作で)指定すると、指定されたエリアが検査エリアとして登録される。この場合、対象画像内の検査エリア以外の部分は、印刷画像の検査から除外されることになる。また、ユーザがプルダウンメニュー142で「検査除外エリア」を選択して、エリア指定セクション141で目的のエリアを指定すると、指定されたエリアが検査除外エリアとして登録される。この場合、対象画像内の検査除外エリア以外の部分について、印刷画像の検査が行われることになる。図5には示していないものの、検査印刷画面140は、エリア指定セクション141のプレビューを複数のページの間で遷移させるための追加的なボタンを含んでいてもよい。キャンセルボタン148は、検査印刷の設定をキャンセルして印刷設定画面110に戻るためのボタンである。印刷開始ボタン149は、検査印刷のジョブの実行を指示するためのボタンである。
【0035】
<4-2.照返しモデル>
検査装置500の第1読取部505a及び第2読取部505bのようなスキャナでシートから印刷画像を読取ると、読取画像データは、多くの場合、上述した照返しに起因する誤差を含むことになる。照返しは、スキャナを用いて行われる校正及び検査の双方に影響する。ここでは、こうした照返しの影響を定量的に検討するための照返しモデルについ説明する。
【0036】
図6Aは、着目画素と周辺画素との間の位置関係の一例を示す説明図である。図6Aにおいて、横軸は主走査方向、縦軸は副走査方向を表し、図中の格子は読取画像データの画素群の任意の一部分を表す。なお、ここでの主走査方向は、シートの搬送方向に直交する方向であり、スキャナの一次元の画素配列に沿った方向である。一方、副走査方向は、シートの搬送方向と平行な方向である。格子の中央には着目画素Pが位置するものとする。着目画素Pの周辺には多数の周辺画素が存在し、周辺画素P及びPはその例である。着目画素Pと周辺画素Pとの間の距離は、着目画素Pと周辺画素Pとの間の距離よりも短い。
【0037】
図6Bは、検査装置500が白紙のシートを受付けた場合の、着目画素Pに対する周辺画素からの照返しの状況を概略的に示している。図6Bの上段には白紙のシート10-1が部分的に示されており、シート10-1上の位置L、L及びLはそれぞれ着目画素P、周辺画素P及び周辺画素Pの位置に対応する。但し、ここでは画素間の相対的な位置関係が問題であり、各画素の絶対的な位置は特に意味を持たない。
【0038】
図6Bの中段には流し読みガラス503aが、下段には第1読取部505aの画素配列が部分的に示されている。第1読取部505aがシート10-1へ光を照射すると、光はシート10-1の下面で反射する。反射光Rは、位置Lで反射した光の主要な成分であり、着目画素Pに入射する。反射光Rは、位置Lで反射した光の副次的な成分であり、流し読みガラス503aの境界面における屈折及び反射を経て減衰し、反射光R´となって着目画素Pに入射する。反射光Rは、位置Lで反射した光の副次的な成分であり、流し読みガラス503aの境界面における屈折及び反射を経て減衰し、反射光R´となって着目画素Pに入射する。流し読みガラス503aでの屈折条件は、次の式(1)で表され得る:

×sinθ=N×sinθ (1)

ここで、Nは空気の屈折率、Nは流し読みガラスの屈折率、θは空気からガラスへの入射角、θはガラスから空気への入射角を表す。θが大きいほどガラスの境界面で反射する成分が大きくなる。図中では位置L及びLから着目画素Pへのそれぞれ1つの光路のみを示しているが、実際にはガラス及びシートにおいて様々な回数で反射が生じ得ることから、各位置から着目画素への光路は複数存在し得る。反射光R ´の強度は、反射光Rの強度よりも小さい。位置Lと位置Lとの間の距離は位置Lと位置Lとの間の距離よりも長いことから、反射光R ´の減衰は反射光R ´の減衰よりも大きく、よって反射光R ´の強度は、反射光R ´の強度よりも小さい。即ち、R>R ´>R ´という関係を有する反射光R、R ´及びR ´が全て着目画素Pへ入射する。実際には、2つの周辺画素P、Pのみならず、着目画素Pを中心として主走査方向及び副走査方向に広がるN行M列の周辺画素の範囲からの反射光の総和が、着目画素Pへ照返しとして入射する。
【0039】
着目画素Pの位置を(n,m)、周辺画素の位置を(i,j)とし、i=n-7,...,n+7及びj=m-11,...,m+11の範囲で、着目画素Pに入射する所望成分に対する周辺画素の各位置からの照返し成分の割合の例を、行列形式で図7に示す。図7の例によれば、主走査方向に11画素分又は副走査方向に7画素分離れた周辺画素からの照返し成分の大きさは、シートが白紙(即ち、照返しの影響が最も大きい)であっても実質的にゼロとなる。即ち、図7の例では、1つの着目画素の読取画素値に影響を与える周辺画素の範囲は、2次元的な画素配列のサイズで13画素×21画素にわたる。本明細書では、こうした影響範囲を「照返し範囲」と表現することがある。照返し範囲のサイズ(及びその内部での画素ごとの影響の度合い)は、主にスキャナの構造上の特性(例えば、照射光の強さ、イメージセンサの構成及びガラスの厚さなど)に依存し、製品開発の段階での試験を通じて既知となる。
【0040】
図7の例において、副走査方向における照返し範囲のサイズが主走査方向における照返し範囲のサイズよりも小さい理由は、スキャナが搬送方向(即ち、副走査方向)に沿って搬送中のシートへ光を照射して当該シート上の画像を読取るためである。後述する校正用パターンは、スキャナ(例えば、第1読取部505a及び第2読取部505b)の特性に関連するこうした照返し範囲のサイズ及び形状を考慮して設計される。
【0041】
図8は、図6Aと同様の画素間の位置関係において、着目画素Pの位置Lのみ白、他の全ての位置にわたってべた黒の画像が形成されたシート10-2についての照返しの状況を概略的に示している。第1読取部505aがシート10-2へ光を照射すると、光はシート10-2の下面で反射する。反射光rは、位置Lで反射した光の主要な成分であり、着目画素Pに入射する。シート10-2の位置Lは白色であるため、r=Rとなる。反射光rは、位置Lで反射した光の副次的な成分であり、流し読みガラス503aの境界面における屈折及び反射を経て減衰し、反射光r´となって着目画素Pに入射する。反射光rは、位置Lで反射した光の副次的な成分であり、流し読みガラス503aの境界面における屈折及び反射を経て減衰し、反射光r´となって着目画素Pに入射する。シート10-2の位置L、Lは黒色である(即ち、照返しの影響が最も小さい)ため、反射光r´、r´の強度は実質的に無視できる程度に小さいものとなる。結果的に、この場合、着目画素Pへの入射光は実質的に所望の成分である反射光rのみとなる。これらに基づき、白紙のシート10-1の場合の着目画素の読取信号値の所望成分に対する周辺画素からの照返しの総量の割合Zは、次の式(2)で表され得る:

Z=((R+R ´+R ´)-r)/R=(R ´+R ´)/R (2)

一例として、R ´+R ´=10かつR=250のとき、Z=0.040となる。
【0042】
<4-3.画像データの校正>
検査システム1においてシートに画像を形成する際に、プリンタの特性に依存して色味のばらつきなどの画質の低下が生じることがある。検査システム1は、そうした画質の低下を補償するための校正機能を提供する。
【0043】
校正は、例えば、図4に例示した印刷設定画面110において校正ボタン121がユーザにより操作されたことに応じて開始される。校正ボタン121の操作を検知した制御装置400のCPU401は、基準画像データに基づいてシートに校正用の基準画像を形成するように、画像形成装置200を制御する。ここでの基準画像は、所定のチャートパターン(以下、校正用パターンという)を表現する画像である。
【0044】
(1)既存の校正用パターン
図9Aは、既存の校正用パターンの構成の一例を示している。図9Aの例において、校正用パターン50aは、主走査方向に6個、副走査方向に8個で計48個のパッチ(小領域)からなるパッチ配列を含む。1つのパッチは内部で均一な色を有し、異なるパッチは異なる色(輝度、色相及び彩度の1つ以上が異なる色)を有する。例えば、パッチ51のRGB値は(255,255,255)、パッチ52のRGB値は(128,128、128)、パッチ53のRGB値は(0,0,0)である。
【0045】
概して、校正用パターン内のパッチの数が多く色が多様であるほど、高精度な校正が可能である。しかし、シートサイズの制約のために、パッチの数と個々のパッチのサイズ(例えば、面積)とはトレードオフの関係にあり、パッチの数を多くすることは個々のパッチに割当てられるサイズが減少することを意味する。パッチサイズが小さ過ぎると、周辺画素からの照返しの影響が優勢となり、却って構成の性能は低下する。
【0046】
図9Bは、既存の校正用パターンの構成の他の例を示している。図9Bに示した校正用パターン50bは、構成用パターン50aと同様のパッチ配列に加えて、パッチ配列を囲む低輝度領域55をさらに含む。特許文献2において提案されているように、校正用パターン50bにおいてパッチ配列をこうした低輝度領域55で囲むことにより、シートの下地からの照返しがパッチ画像の読取結果に与える影響を低減することができる。
【0047】
しかしながら、上述した既存の校正用パターンには、パッチの配置に関して改善の余地がある。例えば、低輝度領域55がもたらす照返しの影響の低減の効果は、パッチごとの低輝度領域55との位置関係に依存して相違する。とりわけ、パッチ配列の周縁に位置するパッチ(以下、周縁パッチという)は、ごく近傍に低輝度領域55が存在するために、照返しの影響の低減の効果をより強く享受する。一方で、パッチ配列において周縁パッチよりも内側に位置するパッチ(以下、内側パッチという)は、近傍に低輝度領域55が存在せず、むしろ他のパッチに囲まれているために、照返しの影響の低減の効果をあまり享受しない。図9Bでは、周縁パッチ51の中央を中心とする照返し範囲、及び内側パッチ54の中央を中心とする照返し範囲が破線で示されている。例えば、各パッチのサイズは縦15mm×横15mmであり、照返し範囲のサイズは縦25mm×横35mmである。周縁パッチ53の周りの照返し範囲のある割合は低輝度領域55に属しているために、周縁パッチ53は比較的照返しの影響を受けにくい。一方、内側パッチ54の周りの照返し範囲は低輝度領域55に属す部分を含んでおらず、むしろその一部は高輝度の隣接パッチに属している。したがって、内側パッチ54は、照返しの影響を受けやすい。
【0048】
(2)校正用パターンの改善
図10Aは、改善された校正用パターンの第1の実施例を示している。第1の実施例において、校正用パターン150aは、8個の内側パッチ151及び32個の周縁パッチ152からなるパッチ配列と、当該パッチ配列の全周を囲むように配置された低輝度領域155とを含む。低輝度領域155は、反射光を最大限減衰させるために、例えば黒色領域であってよい。内側パッチ151及び周縁パッチ152の各々は内部で均一な色を有し、異なるパッチは異なる色を有する(但し、いくつかのパッチが同じ色を有していてもよい)。周縁パッチ152のサイズは、内側パッチ151のサイズよりも小さい。図9Bの校正用パターン50bの周縁パッチ51、52、53と比較すると、図10Aの周縁パッチ152のサイズはより小さい。しかし、周縁パッチ152の周りの(破線で示した)照返し範囲のある割合が低輝度領域155に属しているために、周縁パッチ152が受ける照返しの影響は十分に低減される。図9Bの校正用パターン50bの内側パッチ54と比較すると、図10Aの内側パッチ151のサイズはより大きい。ここでは、内側パッチ151のサイズは、(主走査方向及び副走査方向の双方において)第1読取部505a及び第2読取部505bの特性に関連する照返し範囲のサイズ以上である。
【0049】
図10Aの例のように、内側パッチのサイズを装置固有の照返し範囲のサイズ以上とすることで、少なくとも隣接パッチからの反射光は当該内側パッチの中央へ実質的に届かないことになる。それにより、内側パッチのパッチ画像の読取りにおける誤差成分を除去することが可能となる。加えて、低輝度領域を用いて照返しの影響を低減しつつ周縁パッチのサイズを小さくすることで、パッチ配列に含まれる色の十分な多様性を確保して校正の性能を高く維持することができる。
【0050】
図10Bは、改善された校正用パターンの第2の実施例を示している。第2の実施例において、校正用パターン150bは、8個の内側パッチ151及び26個の周縁パッチからなるパッチ配列と、当該パッチ配列の全周を囲むように配置された低輝度領域155とを含む。低輝度領域155は、シートの搬送方向と平行なパッチ配列の長辺に沿った第1部分領域155a、及び当該搬送方向に垂直なパッチ配列の短辺に沿った第2部分領域155bを含む。第2の実施例においても、内側パッチ151のサイズは、第1読取部505a及び第2読取部505bの特性に関連する照返し範囲のサイズ以上である。内側パッチ151のサイズは、周縁パッチのサイズよりも大きい。
【0051】
但し、第1の実施例と異なり、第2の実施例では、周縁パッチのサイズは均一ではない。具体的には、校正用パターン150bは、パッチ配列の長辺に位置する20個の第1周縁パッチ152a、及びパッチ配列の短辺に位置する6個の第2周縁パッチ152bを含む。そして、第1周縁パッチ152aのサイズは、第2周縁パッチ152bのサイズよりも小さい。校正用パターン150bは、例えば、内側パッチ151、第1周縁パッチ152a及び第2周縁パッチ152bの各々のサイズが次の条件式(1)を満たすように設計される:

(S-S)×αTH ≦ S 条件式(1)
【0052】
条件式(1)の左辺の(S-S)は、照返し範囲のサイズSからパッチサイズSを減算した差、即ちパッチ中央を中心とする照返し範囲内のパッチ外領域のサイズを表す(但し、差がゼロを下回る場合には、パッチ外領域のサイズをゼロとする)。右辺のSは、パッチ中央を中心とする照返し範囲内の低輝度領域に属す部分のサイズを表す。αTHは予め決定される係数閾値であり、例えばαTH=0.25であってよい。したがって、条件式(1)は、パッチ中央を中心とする照返し範囲内のパッチ外領域のサイズに対する、当該照返し範囲内で低輝度領域に属する部分のサイズの割合が、所定の閾値を下回らない、という条件を表す。
【0053】
例えば、校正用パターン150bのパッチ配列の内側パッチ151に着目すると、内側パッチ151のサイズは照返し範囲のサイズ以上であるために、パッチ外領域のサイズはゼロ(S-S=0)となり、条件式(1)は満たされる。第1周縁パッチ152aに着目すると、第1周縁パッチ152aのサイズが小さいために、パッチ外領域のサイズは大きくなる。しかし、破線で囲んだ照返し範囲内に入る低輝度部分も十分に大きいために、やはり条件式(1)は満たされる。第2周縁パッチ152bに着目すると、第2周縁パッチ152bのサイズが第1周縁パッチ152aと比較して拡大されているために、パッチ外領域のサイズは小さくなる。そのため、照返し範囲内に入る低輝度部分は第1周縁パッチ152aの場合よりも小さいものの、やはり条件式(1)は満たされる。このように、パッチ配列に含まれる全てのパッチについて条件式(1)が満たされることで、どのパッチ画像の読取りにおいても周辺画素からの照返しの影響が優勢となることはなくなり、色空間の全般にわたって校正の性能を有意に改善することができる。
【0054】
具体的な一例として、照返し範囲のサイズが縦25mm×横35mmである場合に、αTH=0.25であるものとする。この場合、内側パッチ151のサイズを縦25mm×横35mm、第1周縁パッチ152aのサイズを縦10mm×横10mm、第2周縁パッチ152bのサイズを縦10mm×横35mmとすると、全てのパッチについて条件式(1)を満たすことができる。
【0055】
図11Aは、改善された校正用パターンの第3の実施例を示している。第3の実施例において、校正用パターン160aは、8個の内側パッチ161及び32個の周縁パッチ162からなるパッチ配列を含むが、パッチ配列を囲む低輝度領域を含まない。代わりに、図1Aを用いて説明したバッキング540a及び540b(以下、バッキング540と総称する)の搬送路501に面する表面が暗色とされる。ここでの暗色は、当該表面からの反射光を読取った場合の3つの色成分の読取輝度値(R,G,B)が、例えば(0,0,0)~(50,50,50)の範囲内に入ることを意味する。なお、(0,0,0)は黒色を表す。シート搬送方向D1に垂直な主走査方向D2に沿ったバッキング540の幅Wは、校正用パターン160aが形成されるシートの幅Wよりも広い。また、読取位置をシートが通過する期間を含む(当該期間よりもわずかに長い)読取期間にわたって校正用パターン160aの読取りが行われる。結果的に、検査装置500により読取られる基準読取画像は、パッチ配列に対応するパッチ配列領域に加えて、バッキング540の読取りに基づく、パッチ配列領域を囲む低輝度の背景領域165を含むことになる。第1の実施例と同様に、内側パッチ161及び周縁パッチ162の各々は内部で均一な色を有し、異なるパッチは異なる色を有する。周縁パッチ162のサイズは、内側パッチ161のサイズよりも小さい。図9Bの校正用パターン50bの周縁パッチ51、52、53と比較すると、図11Aの周縁パッチ162のサイズはより小さい。しかし、周縁パッチ162の周りの(破線で示した)照返し範囲のある割合が背景領域165に属しているために、周縁パッチ162が受ける照返しの影響は十分に低減される。図9Bの校正用パターン50bの内側パッチ54と比較すると、図11Aの内側パッチ161のサイズはより大きい。ここでは、内側パッチ161のサイズは、第1の実施例における内側パッチ151と同様に、第1読取部505a及び第2読取部505bの特性に関連する照返し範囲のサイズ以上である。
【0056】
図11Bは、改善された校正用パターンの第4の実施例を示している。第4の実施例において、校正用パターン160bは、8個の内側パッチ161及び26個の周縁パッチからなるパッチ配列を含むが、第3の実施例と同様に、パッチ配列を囲む低輝度領域を含まない。代わりに、第4の実施例においても、上述した暗色のバッキング540が採用される。その結果、検査装置500により読取られる基準読取画像は、パッチ配列に対応するパッチ配列領域に加えて、バッキング540の読取りに基づく、パッチ配列領域を囲む背景領域165を含むことになる。校正用パターン160bの内側パッチ161のサイズは、第1読取部505a及び第2読取部505bの特性に関連する照返し範囲のサイズ以上である。校正用パターン160bの内側パッチ161、第1周縁パッチ162a及び第2周縁パッチ162bのパッチサイズは、第2実施例に関連して説明したパッチサイズの条件を満たす。内側パッチ161のサイズは、周縁パッチのサイズよりも大きい。シート搬送方向D1と平行なパッチ配列の第1辺に位置する第1周縁パッチ162aのサイズは、搬送方向D1に垂直なパッチ配列の第2辺に位置する第2周縁パッチ162bのサイズよりも小さい。
【0057】
第3及び第4の実施例のように、校正用パターンに低輝度領域を含めることなく、暗色の背景部材の読取りに基づく背景領域を基準読取画像が含むようにすることで、校正に要するトナーの消費量を抑制しつつ、照返しの影響を効果的に低減することができる。また、第1及び第2の実施例において低輝度領域が占めていた部分にパッチを配置することができるため、個々のパッチサイズを拡大し又はより多様な色のパッチを校正用パターンに配置することも可能となる。
【0058】
校正用パターンの構成は、図10A図11Bを用いて説明した例には限定されない。例えば、校正用パターンにおいて、パッチ配列領域と低輝度領域との間に、空白領域はあってもなくてもよい。また、低輝度領域は、少なくとも部分的にパッチ配列を囲んでいればよい(例えば、一部にスリットのような欠けた領域を有していてもよい)。パッチ配列を構成するパッチの個数は、目標とする校正の性能に依存して、図示した例よりも多くても少なくてもよい。さらに、校正用パターンは、基準画像の読取りの際にシート上で当該パターンが形成されている位置を検出するためのマーカ(例えば、トンボマーク)を含んでいてもよい。その代わりに、低輝度領域が位置検出用のマーカとして使用されていてもよい。
【0059】
(3)色味の校正
上述した改善された校正用パターンを表現する基準画像が形成されたシートは、画像形成装置200から検査装置500へ受け渡される。検査装置500の第1読取部505a(及び、必要に応じて第2読取部505b)は、シートに形成された基準画像を読取って、基準読取画像データを生成する。検査装置500のCPU511は、ホストI/F515を介して制御装置400へ基準読取画像データを出力する。制御装置400の校正部412は、基準画像データと基準読取画像データとの比較に基づいて、校正パラメータを導出し、導出した校正パラメータをストレージ430に記憶させる。校正部412は、その後に新たな入力画像データに基づいて画像形成装置200が画像形成を行う際に、ストレージ430に記憶させた校正パラメータを用いて入力画像データを校正する。
【0060】
校正パラメータは、例えば、入力画像データの3次元の画素値(ビットマップ形式に展開された後のRIP信号値)を校正後の値へ非線形的に対応付けるルックアップテーブルの形式で導出され得る。図12は、そうした3次元のルックアップテーブル(LUT)の構成の一例を示している。図12の例において、LUT40は、RIP信号値の16777216個の候補(256×256×256=16777216)の各々について、校正前のRGB値と校正後のRGB値とを対応付けるレコードを含む。図中左側の校正前のRGB値の組合せ(RIP信号値)は、ルックアップのキー項目である。一方、図中右側の校正後のRGB値(校正値)は、上述した基準画像データと基準読取画像データとの比較に基づいて可変的に決定される。例えば、いずれかのパッチの定義されたRGB値に一致するキーを有するレコードの校正値は、そのパッチの読取信号値から直接決定され得る。その他のレコードの校正値は、2つ以上のパッチの読取信号値に基づく線形の又は非線形の補間によって決定され得る。図12の例では、校正によって、RIP信号値(255,255,255)は校正値(250,250,250)へ変換されることになる。同様に、RIP信号値(128,128,128)は校正値(126,126,126)へ、RIP信号値(0,0,0)は校正値(8,8,8)へ変換されることになる。
【0061】
なお、ここでは制御装置400の校正部412が基準画像データと基準読取画像データとの比較に基づいて校正パラメータを導出する例を説明したが、校正パラメータの導出は検査装置500(例えば、比較部518)により行われてもよい。この場合には、検査装置500により導出された校正パラメータが制御装置400へ出力され、その後の印刷ジョブの実行の際に校正のために使用され得る。
【0062】
(4)画像形成位置の校正
校正部412は、基準読取画像データを用いて、シート上に基準画像が形成された位置を検出し、その検出位置に基づいて画像形成位置の校正を行ってもよい。例えば、上述した校正用パターン160aの基準読取画像において、背景領域165の内側のエッジは、校正用パターン160aが形成されたシートのエッジに対応する。したがって、校正部412は、基準読取画像においてこのエッジに対するパッチ配列領域の相対位置を測定することで、画像形成位置が予め定義される正しい位置からどの程度ズレているかを判定することができる。校正部412は、判定したズレをキャンセルするための画像形成位置のオフセット量を示す校正パラメータを導出し、導出した校正パラメータをストレージ430に記憶させる。校正部412は、その後に新たな入力画像データに基づいて画像形成装置200が画像形成を行う際に、ストレージ430に記憶させた校正パラメータを用いて、画像形成位置をオフセットする。校正部412は、同様に、基準読取画像データを用いて、画像形成領域の傾きの校正及び倍率の校正を行ってもよい。
【0063】
<5.処理の流れの例>
本節では、上述した実施形態に係る検査システム1において行われ得る主な処理の流れの例を、図13及び図14のフローチャートを用いて説明する。なお、以下の説明では、処理ステップをS(ステップ)と略記する。
【0064】
(1)校正処理
図13は、画像形成装置200、制御装置400及び検査装置500が連携することにより行われる校正処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0065】
まず、ユーザにより印刷設定画面110において校正ボタン121が操作されると、S1201で、制御装置400のCPU401は、ストレージ430から、上述した条件式を満たすように設計された校正用パターンのための基準画像データを取得する。次いで、S1202で、画像形成装置200は、制御装置400から入力される基準画像データに基づいて、第1のシートに基準画像を形成する。ここでは、第1のシートの第一面のみに基準画像が形成されるものとする。基準画像により表現される校正用パターンは、内側パッチ及びより小さい周縁パッチを含むパッチ配列を少なくとも含む。S1203で、検査装置500のCPU511は、基準画像が形成された第1のシートを待ち受ける。例えば、搬送路501に配設されるセンサが第1のシートを検知すると、処理はS1204へ進む。S1204で、検査装置500の第1読取部505aは、第1のシートに形成された基準画像を光学的に読取って、基準読取画像データを生成する。このとき、基準読取画像データは、パッチ配列領域と当該パッチ配列領域を囲む低輝度領域とを含む画像を表現するデータとなる。上述した校正用パターンの第1又は第2の実施例が採用される場合、低輝度領域は、S1202で第1のシートに形成された基準画像の低輝度領域に由来する。上述した校正用パターンの第3又は第4の実施例が採用される場合、低輝度領域は、第1読取部505aによるバッキング540の読取りに基づく。生成された基準読取画像データは、検査装置500から制御装置400へ出力される。次いで、S1205で、制御装置400の校正部412は、検査装置500から入力された基準読取画像データに基づいて、後の入力画像データの校正のために使用すべき校正パラメータを導出する。校正部412は、導出した校正パラメータをストレージ430に記憶させる。なお、S1205で、校正部412は、基準読取画像データが異常値(例えば、校正用パターンの対応する画素値との差分が異常検出閾値を上回る値)を示している場合には、校正パラメータの導出をスキップしてもよい。この場合には、ストレージ430に記憶されている既存の校正パラメータは更新されなくてもよい。また、デフォルトの校正パラメータがストレージ430に記憶されていてもよい。
【0066】
(2)検査処理
図14は、画像形成装置200、制御装置400及び検査装置500が連携することにより行われる検査処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0067】
まず、ユーザにより検査印刷画面140において印刷開始ボタン149が操作されると、S1301で、制御装置400のCPU401は、印刷ジョブにおいて指定された入力画像データを取得する。ここで取得される入力画像データは、RIP413によるラスタライズ後のRIPデータである。次いで、S1302で、校正部412は、ストレージ430から校正パラメータを読出し、読出した校正パラメータを用いて入力画像データを校正する。次いで、S1303で、画像形成装置200は、制御装置400から入力される校正後の入力画像データに基づいて、第2のシートに対象画像を形成する。ここでは、第2のシートの第一面のみに対象画像が形成されるものとする。校正後の入力画像データは、制御装置400から検査装置500にも出力される。S1304で、検査装置500のCPU511は、対象画像が形成された第2のシートを待ち受ける。例えば、搬送路501に配設されるセンサが第2のシートを検知すると、処理はS1305へ進む。S1305で、検査装置500の第1読取部505aは、第2のシートに形成された対象画像を光学的に読取って、検査用読取画像データを生成する。次いで、S1306で、検査部530は、校正後の入力画像データと、S1305で生成された検査用読取画像データとの比較に基づいて、第2のシートに形成された対象画像を検査する。例えば、検査部530は、検査の基準となるRIPデータ(ラスタライズされ校正された入力画像データ)と検査用読取画像データとを色成分ごとに比較して、対象画像の色味を検査してもよい。具体的には、検査部530は、R、G及びBのうちの少なくとも1つの色成分について、2つの画像データの間の画素値の差分が不良検出閾値を上回る画素がK個(Kは整数)以上存在する場合に、対象画像が不良であると判定してもよい。こうした判定は、検査印刷画面140を介して登録された検査エリアに属す画素、又は登録された検査除外エリアに属さない画素についてのみ行われてもよい。次いで、S1307で、検査部530は、検査結果を制御装置400へ出力する。制御装置400のCPU401は、検査装置500から入力される検査結果を、操作部100を介してユーザへ報知する。CPU401は、対象画像が良好であるか又は不良であるかを示す情報をディスプレイに表示させてもよい。また、CPU401は、対象画像が不良であると判定された場合に、ランプを点灯させ又はスピーカから警告音を出力させてもよい。さらに、CPU401は、不良画像が印刷されたシートをパージトレイ620へ排出するように、スタッカ600を制御してもよい。次いで、S1308で、CPU401は、検査印刷のジョブにおいて印刷すべき次のページが存在するかを判定する。印刷すべき次のページが存在する場合には、処理はS1303へ戻り、校正後の入力画像データに基づいて次のページの対象画像がさらなるシートに形成される。次のページが存在しない場合には、図14に示した検査処理は終了する。
【0068】
<6.まとめ>
ここまで、図1図14を用いて、本開示に係る技術の実施形態について説明した。上述した実施形態によれば、画像形成装置において、改善された校正用パターンを表現する基準画像が第1のシートに形成され、上記基準画像を光学的に読取ることにより生成される基準読取画像データに基づいて、校正パラメータが導出される。そして、導出された校正パラメータを用いて、入力画像データが校正され、校正された上記入力画像データに基づいて第2のシートに印刷画像が形成される。上記校正用パターンは、複数のパッチからなるパッチ配列を含み、上記パッチ配列の周縁に位置する周縁パッチのサイズは、上記周縁パッチよりも内側に位置する内側パッチのサイズよりも小さい。また、基準読取画像データにより表現される画像は、パッチ配列領域を少なくとも部分的に囲む低輝度の領域を含む。このように、低輝度領域に相対的に近い周縁パッチのサイズを内側パッチよりも小さくすることで、校正用パターンのパッチ配列においてパッチの色の多様性を十分に確保しつつ、基準画像の読取りの際の照返しの影響を効果的に低減させることができる。その結果、基準読取画像データに基づいて導出される校正用パラメータを用いた校正の性能が向上する。
【0069】
また、上述した実施形態において、上記基準画像は、第1のシートが搬送方向に沿って搬送されている期間を含む読取期間にわたって読取られる。また、上記低輝度領域は、上記搬送方向と平行なパッチ配列の第1辺に沿った第1部分領域、及び上記搬送方向に垂直なパッチ配列の第2辺に沿った第2部分領域を含む。そして、ある実施例において、パッチ配列の第1辺に位置する第1周縁パッチのサイズは、パッチ配列の第2辺に位置する第2周縁パッチのサイズよりも小さい。概して、照返しの影響範囲は、シートの搬送方向(スキャナの副走査方向)よりも搬送方向に垂直な方向(スキャナの主走査方向)に大きくなる傾向にある。したがって、各周縁パッチがパッチ配列のどちらの辺に位置するかに依存してパッチサイズを相違させることで、パッチのより効率的な配置が可能となる。
【0070】
ある実施例において、上記校正用パターンは、どのパッチについても、パッチ中央を中心とする照返し範囲内のパッチ外領域のサイズに対する、当該照返し範囲内の上記低輝度領域のサイズの割合が、所定の閾値を下回らないように設計されている。このように設計された校正用パターンを使用することで、周辺画素からの照返しの影響が優勢となるパッチが存在しないことになり、色空間の全般にわたって校正の性能を有意に改善することができる。
【0071】
また、上述した実施形態において、上述した画像形成装置の後段に、第2のシートに形成された印刷画像を光学的に読取って検査用読取画像データを生成する読取部を備える検査装置が配置され得る。そして、上記検査装置は、上記入力画像データと上記検査用読取画像データとの比較に基づいて、第2のシートに形成された上記印刷画像を検査する。このように、改善された校正用パターンに基づく校正用パラメータを用いて校正されたデータを印刷画像の検査に利用することで、検査の精度をも向上させることができる。
【0072】
<7.その他の実施形態>
上記実施形態は、1つ以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行する処理の形式でも実現可能である。また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0073】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0074】
1:検査システム、150a,150b,160a,160b:校正用パターン、151,161:内側パッチ、152,152a,152b,162,162a,162b:周縁パッチ、155:低輝度領域、165:背景領域(低輝度領域)、200:画像形成装置、300Y,300M,300C,300K:画像形成部、400:制御装置、412:画像処理部(校正部)、500:検査装置、505a,505b:読取部、510:検査制御部、514:ストレージ(記憶部)、530:検査部、540a,540b:バッキング(背景部材)
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14