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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181971
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/46 20060101AFI20231218BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20231218BHJP
   B41M 5/28 20060101ALI20231218BHJP
   B41M 5/32 20060101ALI20231218BHJP
   B41M 5/337 20060101ALI20231218BHJP
   B41J 2/475 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B41M5/46 210
B41M5/41 200
B41M5/28 220
B41M5/32
B41M5/337 212
B41M5/46 220
B41J2/475 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056972
(22)【出願日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2022094820
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西村 直哉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】乾 和生
【テーマコード(参考)】
2C065
2H026
【Fターム(参考)】
2C065CA03
2C065CA04
2C065CA07
2H026AA07
2H026AA24
2H026BB46
2H026DD02
2H026DD45
2H026FF15
2H026FF22
(57)【要約】
【課題】感熱記録材料の表面から生じる噴出物が低減され、高コントラストかつ均一な画像を得ることができる画像形成方法を提供する。
【解決手段】光透過性支持体上に、赤外線吸収色素、非感光性の有機銀塩、および還元剤を含有する画像形成層を有する感熱記録材料に対し、赤外線レーザー光によって走査露光する際の赤外線レーザー光の副走査方向における露光範囲の重複率が0.60~33%である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性支持体上に、赤外線吸収色素、非感光性の有機銀塩、および還元剤を含有する画像形成層を有する感熱記録材料に対し、赤外線レーザー光によって走査露光する際の、赤外線レーザー光の副走査方向における露光範囲の重複率が0.60~33%であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
感熱記録材料に対し赤外線レーザー光を走査露光する際の照射量Xが以下の式で表されることを特徴とする前記請求項1記載の画像形成方法。
1.03A≦X≦1.55A
(上記した式においてAは、画像部の最大の紫外光透過濃度(Dmax)、および非画像部の最小の紫外光透過濃度(Dmin)の差分Dmax-Dminの値が3.0になる赤外線レーザー照射量を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録材料の表面から生じる噴出物が低減され、高コントラストかつ均一な画像を得ることができる画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
版下材料の作製に用いられる高画質な画像形成方法として、ハロゲン化銀感光材料を用いた湿式処理の画像形成方法が長く一般的に用いられてきた。しかしながら、湿式処理の画像形成方法では現像液や定着液等の廃液処理が必要で環境負荷が大きいことから、湿式処理を必要としない乾式の画像形成方法が種々検討されてきた。現在ではインクジェット記録方式、電子写真方式、染料熱転写方式等といった画像形成システムが実用化されている。しかしこれらの乾式の画像形成方法は、画像部における優れた遮光性および、非画像部における優れた光透過性を有する、いわゆる高コントラストな版下材料を得ることは困難である。
【0003】
ハロゲン化銀感光材料を用いた湿式処理の画像形成方法と同等の高いコントラストを得ることができる乾式の画像形成方法としては、支持体上に感熱記録層を有する感熱記録材料にサーマルヘッドあるいは赤外線レーザー光を用いて画像形成する方法が挙げられる。その中でも、高密度記録、高画質記録の観点からは赤外線レーザー光を用いた感熱記録方式が優位である。赤外線レーザー光によって描画可能な感熱記録材料としては、例えば特開平6-194781号公報(特許文献1)には、熱的に還元可能な銀源、銀イオン用還元剤、約500~1100nmの波長範囲のレーザー光を吸収する染料、およびポリマー状結合剤を含有する熱記録材料が開示され、特開平10-29377号公報(特許文献2)には、有機銀塩、有機銀塩の現像剤、特定の構造を有するメロシアニン系赤外線吸収色素、および水溶性バインダーを含有する感熱層を有する感熱記録材料が開示されている。また特開2001-10229号公報(特許文献3)には、非感光性有機銀塩、銀イオン用還元剤、バインダー、色調調整剤および750~1100nmの波長範囲の放射線を吸収する吸収剤を含有する熱発色画像形成層を有する画像形成材料が開示されている。
【0004】
赤外線レーザー光を用いた感熱記録方式は、赤外線レーザー光を用いて感熱記録材料を走査露光し、局所的に加熱することで感熱記録層を発色させて描画する。その際、赤外線レーザー光は高エネルギー線であるため、感熱記録材料の含有成分や感熱記録層の発色過程で生じる副生成物が感熱記録材料の表面から噴出物として揮発あるいは爆散して、感熱記録材料の表面や赤外線レーザー光照射装置を汚染するという課題があった。
【0005】
また、レーザー光は一般的にビーム径が小さいため、画像抜け(レーザー光照射位置のずれによる未露光部)や濃度ムラ(レーザー光の照射量不足による発色不良部)の発生により画像が不均一になることを防ぐため、レーザー光を副走査方向に重複させながら感熱記録材料を露光することが知られている。例えば特開2000-2963号公報(特許文献4)には、構成層中の少なくとも1層が特定の化合物を含有する画像記録材料が開示され、該画像記録材料を露光する際、レーザー光が重なるように露光することで、走査線が見えないようにすると記載されている。しかし、赤外線レーザー光を用いた感熱記録方式において、赤外線レーザー光を重複させながら感熱記録材料を走査露光すると、1回目の走査露光で画像記録済みの領域で走査露光が重複する箇所は赤外線レーザー光をより強く吸収するため、感熱記録層の表面から噴出物が顕著に発生する場合があり、該噴出物を低減しつつ、高コントラストかつ均一な画像を得ることができる画像形成方法が求められていた。
【0006】
他方、感光性ハロゲン化銀塩、非感光性有機銀塩、および還元剤を含有する、いわゆる熱現像感光記録材料の画像形成方法に関して、国際公開第1995/31754号パンフレット(特許文献5)には、2度目の放射線を、最初に放出された放射線が当たったスポットと重なるように放出する工程を含む、ハロゲン化銀含有白黒光熱写真要素を放射線で露光して潜像を作製する方法が開示され、画質を改良できることが記載されている。また、特開平4-51043号公報(特許文献6)には、支持体上にバインダー、感光性ハロゲン化銀、還元剤および/または還元剤プレカーサーを有する熱現像感光材料を複数回露光した後、熱現像する画像形成方法が開示され、複数回露光する部分の画像形成領域に対する面積比が40%以上であることが好ましい旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-194781号公報
【特許文献2】特開平10-29377号公報
【特許文献3】特開2001-10229号公報
【特許文献4】特開2000-2963号公報
【特許文献5】国際公開第1995/31754号パンフレット
【特許文献6】特開平4-51043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、感熱記録材料の表面から生じる噴出物が低減され、高コントラストかつ均一な画像を得ることができる画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題は、以下の発明により解決される。
(1)光透過性支持体上に、赤外線吸収色素、非感光性の有機銀塩、および還元剤を含有する画像形成層を有する感熱記録材料に対し、赤外線レーザー光によって走査露光する際の、赤外線レーザー光の副走査方向における露光範囲の重複率が0.60~33%であることを特徴とする画像形成方法。
(2)感熱記録材料に対し赤外線レーザー光を走査露光する際の照射量Xが以下の式で表されることを特徴とする上記(1)記載の画像形成方法。
1.03A≦X≦1.55A
(上記した式においてAは、画像部の最大の紫外光透過濃度(Dmax)、および非画像部の最小の紫外光透過濃度(Dmin)の差分Dmax-Dminの値が3.0になる赤外線レーザー照射量を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明により、感熱記録材料の表面から生じる噴出物が低減され、高コントラストかつ均一な画像を得ることができる画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の画像形成方法の一例を示す概略図
図2】赤外線レーザー光の副走査方向における露光範囲の重複の一例を示す概略図
図3】本発明の画像形成方法の別の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0013】
図1は本発明の画像形成方法の一例を示す概略図である。本発明の画像形成方法では、感熱記録材料1の画像形成予定領域2に対し、赤外線レーザー光発振器21から任意の位置より赤外線レーザー光22が照射され、感熱記録材料1が走査露光される。赤外線レーザー光22は主走査方向へと赤外線レーザー光22を照射しながら移動し、画像形成予定領域2の端部で赤外線レーザー光22の照射を一旦終了する。これを一周期として、続く周期では、赤外線レーザー光発振器21が副走査方向に移動し、再び赤外線レーザー光22を任意の位置に照射することによって画像11が形成されていく。これを感熱記録材料1の画像形成予定領域2において画像の形成が予定されている領域全体が走査露光されるまで繰り返す。図1では画像形成予定領域2を破線で示したが、実際の感熱記録材料1上に破線は存在しない。走査露光を行うにあたり、赤外線レーザー光発振器21が主走査方向および副走査方向に移動してもよく、感熱記録材料1が主走査方向と反対の方向、および副走査方向と反対の方向に移動してもよい。
【0014】
図2は本発明における赤外線レーザー光の副走査方向における露光範囲の重複の一例を示す概略図である。走査幅31は赤外線レーザー光を走査露光した際の副走査方向への幅を表し、詳細には感熱記録材料1が発色するために必要なエネルギーを与えることができる赤外線レーザー光の副走査方向における露光範囲の長さを意味する。本発明において、走査幅31の具体的な数値は特に限定されない。ある周期において、走査幅31を有する赤外線レーザー光を主走査方向に連続的に照射することで画像35が形成される。続く周期において副走査方向に移動した赤外線レーザー光発振器から走査幅31を有する赤外線レーザー光を主走査方向に連続的に照射することで画像37が形成される。この際、画像35と画像37が一部重複するように走査幅31を有する赤外線レーザー光を照射する。画像35と画像37の重複幅33の走査幅31に対する比率が、本発明における副走査方向における露光範囲の重複率である。
【0015】
本発明において赤外線レーザー光の副走査方向における露光範囲の重複率は0.60~33%である。重複率が0.60%未満である場合、画像抜けが生じて均一な画像を得ることができない。重複率が33%超である場合、画像形成層を有する側の表面から噴出物の発生が顕著になる。感熱記録材料の該表面から噴出物の発生を低減しつつ、高コントラストかつ均一な画像を得る観点から、露光範囲の重複率は0.80~21%であることがより好ましく、1.0~12%であることが特に好ましい。
【0016】
赤外線レーザー光の照射方式は特に限定されず、フラットベッド方式、内面ドラム方式、外面ドラム方式等の公知の照射方式を用いることができる。赤外線レーザーとしては、半導体レーザー、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザー等が挙げられるが、これらに限定されず、公知の赤外線レーザーを用いることができる。
【0017】
前述した図1では簡略化のため、1つの赤外線レーザー光発振器から1本の赤外線レーザー光が照射される様子を示したが、本発明において赤外線レーザー光発振器の数、および同時に照射される赤外線レーザー光の本数は特に限定されない。例えば、複数の赤外線レーザー光発振器から照射された赤外線レーザー光を収束させて1本の赤外線レーザー光として照射してもよく、収束させた赤外線レーザー光を分割して複数本の赤外線レーザー光として照射してもよい。なお、図1では図示していないが、赤外線レーザー光発振器21はレンズ、光ファイバー等の公知の光学部品を有していてもよい。
【0018】
赤外線レーザー光発振器21には電源や制御用コンピュータ等が接続されていてもよい。赤外線レーザー光発振器21に電源や制御用コンピュータが接続された装置として、フレキソ印刷版やオフセット印刷版の製版等に用いられるサーマルCTPセッター等の公知の装置を使用することができる。サーマルCTPセッターとしては、AURAシリーズ(Guangzhou Amsky Technology Co., Ltd.製)、Trendsetter(登録商標)シリーズ(Eastman Kodak Co.製)、Achieve(登録商標)シリーズ(Eastman Kodak Co.製)、等が例示される。
【0019】
本発明において、感熱記録材料に赤外線レーザー光を照射する面は限定されないが、得られる画像の品質が優れたものになることから、画像形成層を有する面に照射することが好ましい。また、本発明では、感熱記録材料に対して照射する赤外線レーザー光のエネルギーおよび/または露光時間を変えることにより、任意の紫外線透過濃度を得ることができる。紫外光透過濃度の測定方法としては、後述する透過濃度計を用いる方法が例示できる。
【0020】
前述した図1において、赤外線レーザー光22を画像形成予定領域2に照射することで形成される画像11は特に限定されず、塗りつぶし画像であってもよく、網点や細線であってもよい。本発明において、画像形成予定領域2に形成された画像が意図した非画像部を含むことは、画像抜けとはみなさず、均一な画像が形成されているものとみなす。
【0021】
前述した図1では図示していないが、赤外線レーザー発振装置を有する露光装置は、感熱記録材料を安定して固定する保持機構を有することが一般的であり、該保持機構における感熱記録材料1の固定方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、感熱記録材料の端部を粘着テープで固定する方法、磁石等を用いて感熱記録材料を磁力で固定する方法、吸気スリットや吸気孔を用いて、吸気により感熱記録材料を吸着させて固定する方法等が例示できる。上記した中でも、感熱記録材料表面の汚染が避けられることから、感熱記録材料を磁力で固定する方法、吸気により感熱記録材料を吸着させて固定する方法が好ましい。
【0022】
図3は本発明の画像形成方法の別の一例を示す概略図である。図1と同様、感熱記録材料1の画像形成予定領域2に対し、赤外線レーザー光発振器21から赤外線レーザー光22が照射される。感熱記録材料1は複数の吸気スリット(吸気スリット42、吸気スリット43)を有する保持構造41上に保持されており、感熱記録材料を吸着させるように吸気スリットから吸気することで感熱記録材料1を固定している。
【0023】
ところで、図3で示したような、感熱記録材料1の保持構造41の表面が平坦で無い場合、感熱記録材料1上に形成した画像11が不均一になる場合がある。具体的には、図3に示した状態で感熱記録材料1をレーザー露光した場合、吸気スリット42、吸気スリット43の直上部分に位置する画像11の紫外線透過濃度が周辺に対して上昇または低下する場合がある。この現象は、画像11が網点により形成された画像である場合に顕著になる。画像11の紫外線透過濃度が不均一になると、感熱記録材料を版下材料として用いた際、露光対象物にもその不均一性が反映されてしまう。この現象の発生機構は不明だが、吸気スリット42、吸気スリット43からの吸気による熱の散逸、吸気スリット上で感熱記録材料が空中に保持されることで、部分的に奪われる熱量に差が生じること、吸気スリット有無による赤外線レーザー光の反射率の差異等の複数の因子が重なって発生すると推測される。さらに本発明では、感熱記録材料の表面から生じる噴出物を低減するため、赤外線レーザー光の副走査方向における露光範囲の重複率は0.60~33%に制限している。このため、感熱記録材料表面における赤外線レーザー照射量が少なくなり、画像の紫外線透過濃度が全体的に低く抑えられるため、吸気スリットの直上部分での濃度差異が目立ちやすい。
【0024】
保持構造41の表面が微小な凹凸などにより平坦で無い場合でも上記した問題が生じる場合があるが、この場合においても感熱記録材料表面における赤外線レーザー照射量を一定の範囲に調整することで、感熱記録材料上に形成した画像の不均一性を改善することができる。具体的には、走査露光時における赤外線レーザー照射量Xは以下の式を満たすことが特に好ましい。
1.03A≦X≦1.55A
(上記した式においてAは、画像部の最大の紫外光透過濃度(Dmax)、および非画像部の最小の紫外光透過濃度(Dmin)の差分Dmax-Dminの値が3.0になる赤外線レーザー照射量を表す。)
【0025】
感熱記録材料表面における赤外線レーザー照射量は、赤外線レーザー光発振器の出力、感熱記録材料表面での赤外線レーザー径、主走査方向への照射速度、副走査方向への重複率、等が関連して決まる値だが、本発明では、Dmax-Dminの値が3.0となる赤外線レーザー照射量、つまり後述するように高コントラストな画像が得られる赤外線レーザー照射量よりも一定の範囲で過剰に赤外線レーザー光を照射することで、画像の均一性を改善することができる。
【0026】
感熱記録材料上に形成した画像の均一性が優れることから、赤外線レーザー照射量Xは下記の式を満たすことがより好ましい。
1.10A≦X≦1.45A
【0027】
感熱記録材料表面における赤外線レーザー照射量を段階的に変化させて露光する方法は特に限定されず、発振するレーザー出力を変化させる方法や、レーザー出力を一定に保ち、主走査方向へのレーザー移動速度を加減速させる方法が例示できる。赤外線レーザー光の照射方式が内面ドラム方式や外面ドラム方式の場合、ドラム回転速度を上下させてもよい。
【0028】
本発明の画像形成方法において走査露光が行われる感熱記録材料について詳述する。本発明において感熱記録材料は、光透過性支持体を有する。かかる光透過性支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、硝酸セルロース、ポリカーボネート等の樹脂フィルムや、ガラス等の無機材料等が挙げられる。なお、本発明において光透過性支持体とは、全光線透過率が60%以上である支持体を意味し、さらに好ましくは70%以上である。また該光透過性支持体のヘーズ値は10%以下であることが好ましい。該光透過性支持体は易接着層、ハードコート層、帯電防止層等の公知の層を有していてもよい。本発明における光透過性支持体の厚みは特に規定されるものではないが、ハンドリング性の観点から50~300μmであることが好ましい。
【0029】
本発明における感熱記録材料は光透過性支持体上に画像形成層を有する。該画像形成層は光透過性支持体の一方の面に有していても良いし、該支持体の両面に有していても良い。本発明において画像形成層とは、赤外線レーザー光が照射された部分が発色し、遮光性の画像を形成することが可能な系を意味する。
【0030】
本発明において感熱記録材料が有する画像形成層は、赤外線吸収色素を含有する。本発明における赤外線吸収色素は、赤外線を吸収する公知の化合物を意味する。該赤外線吸収色素としては、600~1500nmの波長領域に吸収を有する色素であることが好ましく、650~1100nmの波長領域に吸収極大を有する色素がより好ましく、750~1100nmの波長領域に吸収極大を有する色素が更に好ましい。また、本発明における赤外線吸収色素は、版下原稿の作製に好適な高コントラストな画像が形成可能な感熱記録材料が得られることから、高圧水銀ランプやケミカルランプの紫外線領域における発光ピークが存在する350~450nmの波長領域における吸収が上述した600~1500nmの波長領域の吸収と比べてできる限り小さいことが好ましい。具体的には600~1500nmの波長領域の吸収極大における吸光度ε1と、350~450nmの波長領域の吸収極大における吸光度ε2の比ε1/ε2の値が4.0以上であることが好ましく、830nmにおける吸光度ε(830)と、365nmにおける吸光度ε(365)の比ε(830)/ε(365)の値が4.0以上であることがさらに好ましい。このような赤外線吸収色素としてはスクアリリウム、シアニン、メロシアニン、ビス(アミノアリール)ポリメチン等のポリメチン骨格を有する化合物が挙げられ、具体的には以下の一般式(1)~(3)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
【化1】
【0032】
一般式(1)~(3)中、R~R10は置換基を表し、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、エステル基、アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、チオール基、チオエーテル基、スルホニル基等が例示される。これらはそれぞれ同じ置換基でも異なる置換基であってもよく、また他の置換基と結合して環構造を形成していてもよい。また一般式(1)~(3)中、Xは負の電荷を有する原子または原子団を表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン等のオキソ酸、テトラフルオロボレート、ヘキサフロオロホスフェート、アルキル及びアリールスルホナート等が挙げられる。具体的には以下の例示化合物(1)~(7)のような化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
【化2】
【0034】
【化3】
【0035】
前記した吸光度ε1、ε2、ε(830)、およびε(365)の測定方法としては、赤外線吸収色素の2-ブタノン溶液を調製し、紫外可視分光光度計UV-2600((株)島津製作所製)を用いて、光路長1cmの石英セルを使用して該溶液の吸収スペクトルを測定する方法を例示できる。
【0036】
なお、本発明において高コントラストな画像とは、画像部の最大の紫外光透過濃度(Dmax)、および非画像部の最小の紫外光透過濃度(Dmin)の差分Dmax-Dminの値が3.0以上であることを意味し、より好ましくは3.5以上である。紫外光透過濃度の測定方法としては、透過濃度計としてビデオジェット・エックスライト(株)製X-Rite(登録商標)361Tを使用し、紫外光モードにて測定する方法が例示できる。紫外光透過濃度を測定する際は、画像部のうち網点や細線のように画像部と非画像部が狭い範囲に混在している部分ではなく、透過濃度計の受光部分に適した大きさの塗りつぶし部分を測定することが安定した測定値が得られる点で好ましい。
【0037】
赤外線吸収色素の含有量は特に限定されないが、画像形成層の全固形分に対して0.01~25質量%が好ましく、0.02~15質量%がより好ましい。
【0038】
本発明において画像形成層は赤外線吸収色素を単独で含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0039】
本発明において感熱記録材料が有する画像形成層は、非感光性の有機銀塩を含有する。該有機銀塩は、後述する還元剤と共に加熱されることにより還元されて銀画像を形成する。具体的には、熱現像感光材料に関するリサーチディスクロージャー第17029(II)項、第29963(XVI)項に記載されているような没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の有機酸の銀塩;1-(3-カルボキシプロピル)チオ尿素、1-(3-カルボキシプロピル)-3,3-ジメチルチオ尿素等のカルボキシアルキルチオ尿素の銀塩;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド類とサリチル酸、安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、5,5-チオジサリチル酸等の芳香族カルボン酸との高分子反応生成物と銀との錯体;3-(2-カルボキシエチル)-4-ヒドロキシメチル-4-チアゾリン-2-チオン、3-カルボキシメチル-4-メチル-4-チアゾリン-2-チオン等のチオン類の銀塩または錯体;イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4-トリアゾール、1H-テトラゾール、3-アミノ-5-ベンジルチオ-1,2,4-トリアゾールおよびベンゾトリアゾールから選ばれる含窒素複素環の銀塩または錯体;サッカリン、5-クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;メルカプチド類の銀塩等が挙げられる。これらのうち炭素数が10以上の脂肪酸銀が好ましく、ステアリン酸銀、ベヘン酸銀が特に好ましい。
【0040】
本発明において画像形成層が含有する非感光性の有機銀塩の含有量は、版下材料として使用するために必要な紫外光透過濃度によって適宜調整することが可能であり、銀換算値として0.2~3.0g/mが好ましく、0.5~2.0g/mがより好ましい。
【0041】
本発明における感熱記録材料が有する画像形成層は、感光性のハロゲン化銀を実質的に含有しないことが好ましい。ここでいう実質的に含有しないとは、画像形成層中に含有される感光性のハロゲン化銀が画像形成層の全固形分量に対して1質量%未満であることを意味し、これによって感熱記録材料の保管時および通常使用時の非画像部における透過濃度の上昇が抑えられ、高コントラストな画像を形成可能な感熱記録材料が得られる。
【0042】
本発明における感熱記録材料が有する画像形成層は、還元剤を含有する。かかる還元剤としては、ハイドロキノン、カテコール、4-メチルカテコール、4-tert-ブチルカテコール、クロロヒドロキノン、ピロガロール等のポリヒドロキシベンゼン化合物、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、没食子酸ステアリル、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸エチル等のポリヒドロキシ安息香酸化合物、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール等のアミノフェノール化合物、1-フェニル-3-ピラゾリドンおよびその誘導体、ヒドロキシルアミン類、特開平6-317870号公報記載のポリヒドロキシインダン類や、特開2001-328357号公報記載のジヒドロキシベンゼン環を有する特定の構造を有する還元剤が例示できる。上記した還元剤の中でも、高コントラストな画像が得られる観点から、ポリヒドロキシベンゼン化合物およびポリヒドロキシ安息香酸化合物が好ましい。
【0043】
画像形成層における還元剤の含有量は、還元剤の種類や、有機銀塩の種類によって広範に変化しうるが、有機銀塩1モルあたり0.1~3.0モルであることが好ましく、0.5~2.0モルであることがさらに好ましい。また種々の目的のために、上述した還元剤は2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明における感熱記録材料が有する画像形成層は、サーモグラフィまたはフォトサーモグラフィの分野において知られている、いわゆる色調剤を含有することが好ましい。色調剤の例としては前出の熱現像感光材料に関するリサーチディスクロージャー第17029(V)項、第29963(XXII)項等で公知であり、具体的にはフタルイミドに代表されるイミド類、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾールに代表されるメルカプト化合物、フタラジン、フタラゾン、4-メチルフタル酸、テトラクロロフタル酸およびそれらの無水物に代表されるフタル酸誘導体、1,3-ベンズオキサジン-2,4-ジオンに代表されるベンズオキサジン誘導体等が挙げられる。また種々の目的のために、上述した色調剤は2種以上を併用してもよい。
【0045】
本発明における感熱記録材料が有する画像形成層は、画像銀の形成の抑制や促進、画像形成前後の感熱記録材料の保存性を向上させる等の目的で、様々な促進剤や安定剤およびそれらの前駆体を含有してもよい。具体的には写真用添加剤として知られているベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、5-クロロベンゾトリアゾール、2-メルカプトベンゾトリアゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンズオキサゾール、4-ヒドロキシ-6-メチル-1,3,3a,7-テトラザインデン、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、3-メルカプト-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール、4-ベンツアミド-3-メルカプト-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール等から選ぶことができる。また種々の目的のために、上述した促進剤や安定剤およびそれらの前駆体は2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明における感熱記録材料が有する画像形成層は、赤外線吸収色素、非感光性の有機銀塩、および還元剤を保持する目的でバインダー成分を含有することが好ましい。かかるバインダー成分としては熱可塑性樹脂が好ましく、例えばヒドロキシエチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂に代表されるポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が例示される。これらのバインダー成分は水や有機溶媒に溶解して用いるか、疎水性ポリマー固体が微粒子の状態で分散しているラテックスやポリマー分子がミセルを形成し分散しているものを用いてもよい。本発明の画像形成層においては、上述したバインダー成分は乾燥後に光透過性の被膜を形成するものが好ましい。またこれらのバインダー成分は必要に応じてお互いに相溶する樹脂を2種以上併用してもよい。
【0047】
本発明における感熱記録材料が有する画像形成層は、上述した赤外線吸収色素、非感光性の有機銀塩、還元剤、およびバインダー成分以外に、種々目的に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、軟化剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0048】
本発明における感熱記録材料が有する画像形成層を形成する方法としては、上述した赤外線吸収色素、非感光性の有機銀塩、還元剤、バインダー成分、および画像形成層が含有可能な添加剤、さらに公知の溶剤を含有する画像形成層塗布液を作製し、該画像形成層塗布液を上述した光透過性支持体上に塗布、乾燥して形成する方法が例示できる。該画像形成層塗布液の塗布量は乾燥質量で3.0~50.0g/mが好ましく、5.0~40.0g/mがより好ましく、8.0~30.0g/mがさらに好ましい。
【0049】
前述した要素を備える限り、本発明における感熱記録材料が有する画像形成層の構成は特に限定されないが、赤外線レーザー光の照射により高コントラストな画像が得られることから、画像形成層は光透過性支持体上に、赤外線吸収色素を含有する赤外線吸収層と、該赤外線吸収層上に非感光性の有機銀塩、および還元剤を含有する感熱記録層の積層構造によって形成することが好ましい。また、赤外線レーザー光照射時の噴出物を効果的に低減できることから、画像形成層上に最表層として保護層を有することが好ましい。よって、本発明における感熱記録材料の特に好ましい態様は、光透過性支持体上に、該光透過性支持体に近い側から赤外線吸収層、感熱記録層、および保護層を少なくともこの順に有する。
【0050】
画像形成層が感熱記録層と赤外線吸収層を有する場合、該赤外線吸収層は赤外線吸収色素を保持する目的でバインダーを含有することが好ましい。かかるバインダーとしては前述の画像形成層が含有できるバインダーを例示できる。赤外線吸収層における赤外線吸収色素の含有量は特に限定されないが、該赤外線吸収層の全固形分に対して0.05~50質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましい。
【0051】
赤外線吸収層は赤外線吸収色素、バインダー成分に加え、還元剤を含有することも好ましい態様の一つである。かかる還元剤としては画像形成層が含有する還元剤を例示できる。赤外線吸収層と感熱記録層が含有する還元剤は同一であってもよく、異なっていてもよく、2種類以上を含有してもよい。
【0052】
赤外線吸収層は、上述した赤外線吸収色素、バインダー成分、還元剤、および画像形成層が含有可能な添加剤、さらに公知の溶剤を含有する赤外線吸収層塗布液を作製し、該赤外線吸収層塗布液を上述した光透過性支持体上に塗布、乾燥して形成することが好ましい。また、該赤外線吸収層塗布液の塗布量は乾燥質量で0.01~8.0g/mが好ましく、0.05~5.0g/mがより好ましい。
【0053】
画像形成層が感熱記録層を有する場合、該感熱記録層は非感光性の有機銀塩、還元剤を保持する目的でバインダーを含有することが好ましい。かかるバインダーとしては画像形成層が好ましく含有できるバインダーを例示できる。なお感熱記録層のバインダー成分は、塩化物イオンや臭化物イオン等の遊離のハロゲン化物イオンを含有しないことが好ましい。ハロゲン化物イオンは有機銀塩の銀イオンと反応し、感光性のハロゲン化銀を形成するため、本発明における感熱記録材料の耐光性を低下させる原因となる。具体的にはバインダー成分の含有量に対して100ppm以下であることが好ましい。
【0054】
本発明において画像形成層が赤外線吸収層と感熱記録層を有する場合、赤外線吸収層と感熱記録層は隣接していることが好ましく、これにより赤外線レーザー光の照射による画像の形成が効率的になり、とりわけ高コントラストな画像を得ることができる。感熱記録層を形成する方法としては、前述した有機銀塩、還元剤、色調剤、バインダー成分、および画像形成層が含有可能な添加剤、さらに公知の溶剤を含有する感熱記録層塗布液を作製し、該感熱記録層塗布液を上述した赤外線吸収層上に塗布、乾燥して形成することが好ましい。また、該感熱記録層塗布液の塗布量は乾燥質量で2.0~30.0g/mが好ましく、5.0~20.0g/mがより好ましく、7.0~15.0g/mがさらに好ましい。
【0055】
画像形成層上に最表層として保護層を有する場合、該保護層は親水性粒子と疎水性樹脂を少なくとも含有することが好ましい。かかる構成とすることにより、赤外線レーザー光照射時の噴出物を効果的に低減できる。
【0056】
本発明において親水性粒子とは、表面が水に濡れやすい性質を有する粒子を意味する。具体的には金、銀、銅等の金属、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物、層状ケイ酸塩、あるいはこれらの複合物等、水に濡れやすい性質を有する無機材料の粒子や、アクリル粒子、スチレン粒子、メラミン粒子等の有機材料の粒子で表面が水に濡れやすい性質を有するもの、有機・無機複合材料の粒子で表面が水に濡れやすい性質を有するもの、等を用いることができる。粒子が親水性か否かを判断する方法としては、ガラスビーカーに純水10mLを計量し、そこに粒子を0.1g加えて攪拌し10分間静置後、粒子が水面に浮いたまま分離していなければ親水性と判断する方法を例示できる。親水性粒子は公知の表面処理が施されていてもよい。親水性粒子は2種以上を併用してもよい。
【0057】
上記した親水性粒子の中でも、赤外線レーザー光の照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物を低減する効果に優れることから親水性無機粒子が好ましい。
【0058】
親水性粒子の平均粒子径の下限は特に限定されないが、赤外線レーザー光の照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物を効果的に低減できることから1μm以上であることが好ましい。親水性粒子の平均粒子径の上限は特に限定されないが、高コントラストな画像が得られることから10μm以下であることが好ましい。平均粒子径としてはレーザー回折・散乱式粒度分布測定にて求められる体積基準の算出値を用いることができる。具体的には、マイクロトラック・ベル(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定器MT3000IIを用いて測定する方法が例示できる。
【0059】
本発明における保護層が含有することができる親水性粒子は、市販品を用いることができる。例えばシリカ粒子としては(株)日本触媒から販売されているシーホスター(登録商標)KEシリーズ、AGCエスアイテック(株)から販売されているサンスフェア(登録商標)シリーズ、富士シリシア化学(株)から販売されているサイリシア(登録商標)シリーズ等、アルミナ粒子としては日本軽金属(株)から販売されている微粒アルミナSA30シリーズ、SA40シリーズ、SMMシリーズ等、アクリル粒子としては綜研化学(株)から販売されているケミスノー(登録商標)MXシリーズ、積水化成品工業(株)から販売されているテクポリマー(登録商標)AQSシリーズ等、メラミン粒子としては日産化学(株)から販売されているオプトビーズ(登録商標)シリーズ、(株)日本触媒から販売されているエポスター(登録商標)シリーズ等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。
【0060】
保護層が含有することができる親水性粒子の含有量は特に限定されないが、保護層の全固形分に対して0.8~40質量%であることが好ましく、1.2~30質量%であることがより好ましい。
【0061】
保護層が含有することができる疎水性樹脂は特に制限されず、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、エポキシ樹脂等、公知の疎水性樹脂を含有することができる。なお、本発明において疎水性樹脂とは、25℃の水100gに対する溶解度が1g未満である樹脂を意味する。疎水性樹脂は2種以上を併用してもよい。
【0062】
保護層の含有成分や形成方法は特に限定されないが、親水性粒子、多価イソシアネート化合物、ポリオール化合物を含有する保護層塗布液を塗布して形成することが、赤外線レーザー光の照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物が効果的に低減可能な保護層が得られることから好ましい。多価イソシアネート化合物とポリオール化合物が架橋することで疎水性樹脂である各種ウレタン樹脂を生じる。上記した多価イソシアネート化合物は、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であることが好ましく、例えばジメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族多価イソシアネート化合物や、トリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチルベンゾール-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート等の芳香族多価イソシアネート化合物や、これらのうち単独または2種類以上の多価イソシアネート化合物が2量体または3量体を形成したアダクト体、またはこれらの多価イソシアネート化合物と2価または3価のポリオールとが反応したアダクト体等が挙げられる。またこれらのうち、脂肪族多価イソシアネート化合物としてはヘキサメチレンジイソシアネートおよびそのアダクト体が好ましく、芳香族多価イソシアネート化合物としてはトリレンジイソシアネートおよびそのアダクト体が好ましい。なお、これらの多価イソシアネート化合物は種々の目的によって単独で用いてもよく、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのような多価イソシアネート化合物はイソシアネート系架橋剤として一般的に販売されている製品をそのまま用いることができ、具体的な製品名としてはDIC(株)製のバーノック(登録商標)シリーズや、東ソー(株)製のコロネート(登録商標)シリーズを挙げることができる。
【0063】
本発明における保護層塗布液が含有することができる多価イソシアネート化合物の含有量は、保護層塗布液の全固形分に対して59~95質量%であることが感熱記録材料の表面の耐アルコール性が優れることから好ましく、59~90質量%であることがより好ましく、59~80質量%であることがさらに好ましい。
【0064】
本発明における保護層塗布液が含有することができるポリオール化合物としては、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体や、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等に代表される多価アルコールと種々モノマーとの共重合体等が挙げられる。これらの高分子化合物は、種々の目的によって単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。またこれらのうち、アクリルポリオールを用いることがさらに好ましく、市販されているアクリルポリオールとしてはアクリディック(登録商標)シリーズ(DIC(株)製)や、#6000シリーズ(大成ファインケミカル(株)製)が例示される。従って、本発明における保護層はアクリルポリオールと多価イソシアネートが反応したアクリルウレタン樹脂を好ましく含有する。
【0065】
本発明において保護層を形成する方法としては、上述した親水性粒子、疎水性樹脂、画像形成層が含有可能な添加剤、さらに公知の溶剤を含有する保護層塗布液を作製し、該保護層塗布液を上述した感熱記録層上に塗布、乾燥して形成することが好ましい。また、該保護層塗布液の塗布量は乾燥質量で1.5~10g/mが好ましく、2~8g/mがより好ましい。
【0066】
本発明において、上述した赤外線吸収層塗布液、感熱記録層塗布液、および保護層塗布液の塗布方法については特に制限はなく、E.D.Cohen,E.B.Gutoff,“Modern Coating and Drying Technology”,WILEY-VCH,Inc.New York,1992に記載されているような各種の塗布方法から選択することができる。さらにスリット型ダイコーターを用いたスライド塗布方式や、同種、あるいは異種のコーター装置を組み合わせて塗布と乾燥処理を繰り返すタンデム塗布方式によって複数の層を同時に塗布することは、生産性を向上させる意味でも特に好ましい。
【0067】
本発明における感熱記録材料にはさらに必要に応じて、上記した赤外線吸収層、感熱記録層、および保護層に加えて、光透過性支持体と赤外線吸収層との間に易接着層や断熱層等を設けたり、赤外線吸収層、感熱記録層、および保護層のそれぞれの層の間に中間層等を設けたり、保護層上に易剥離層等を設けたり、赤外線吸収層、感熱記録層、および保護層を有する光透過性支持体の面の反対の面に帯電防止層等を設けたりすることもできるが、上述したように高コントラストな画像を得る観点から赤外線吸収層と感熱記録層は隣接していることが好ましい。
【0068】
本発明における感熱記録材料は、JIS K7361-1:1997に基づく全光線透過率が55%以上であることが好ましく、59%以上がより好ましく、64%以上が特に好ましい。これにより、赤外線レーザー光の照射によって感熱記録材料の表面から生じる噴出物を低減することができる。全光線透過率の具体的な測定方法としては、ヘーズメーターHZ-V3(スガ試験機(株)製)を用いて、D65光源にて測定する方法を例示できる。
【0069】
本発明における感熱記録材料の全光線透過率の上限は特に限定されず、また、画像形成層が含有する赤外線吸収色素の可視光の波長領域の吸収によって広範に変化しうるが、高コントラストな画像が得られることから、86%以下であることが好ましい。
【0070】
全光線透過率を55%以上に制御する方法は特に限定されず、画像形成層の赤外線吸収色素の含有量を調整する方法や、画像形成層の膜厚を調整する方法、赤外線吸収色素以外の染料や顔料(カーボンブラック等)を画像形成層に含有せしめる方法等が例示できる。
【0071】
本発明の画像形成方法により画像を形成した感熱記録材料は、フレキソ印刷版やスクリーン印刷版等の印刷版を製版する際に用いられる遮光用のマスク材料、いわゆる版下材料として好適に用いることができるが、他の用途、例えばフォトリソグラフィーにおけるフォトマスクとして用いることもできる。なお、この記述により本発明が限定されるものではない。
【実施例0072】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、この記述により本発明が限定されるものではない。なお記述中「%」は質量基準である。
【0073】
<感熱記録材料1の作製>
<赤外線吸収層塗布液の調製および塗布>
2-ブタノン81.0g、メタノール24.0gに、ポリビニルブチラール(Butvar(登録商標)B-79、イーストマンケミカルジャパン(株)製)9.0g、赤外線吸収色素として例示化合物(5)(IRT、昭和電工(株)製、ε(830)/ε(365)=6.2)0.45gを加えて赤外線吸収層塗布液とした。厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートベース(全光線透過率92%、ヘーズ値4%)上に、この赤外線吸収層塗布液を乾燥質量が1.0g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗布し、60℃にて1分間乾燥させ赤外線吸収層を形成した。
【0074】
<ベヘン酸銀分散液の調製>
ベヘン酸銀結晶20.0g、ポリビニルブチラール(ButvarB-79)22.0gを175gの2-ブタノンに加え、直径0.65mmのジルコニアビーズを充填したビーズミル装置(DYNO-MILL KD20B型、ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を用いてベヘン酸銀分散液(平均粒子径0.8μm)を得た。
【0075】
<感熱記録層塗布液の調製および塗布>
2-ブタノン45.0gに、ポリビニルブチラール(ButvarB-79)4.2g、上述したベヘン酸銀分散液91.2g、3,4-ジヒドロキシ安息香酸エチル5.0g、テトラクロロフタル酸無水物0.1g、フタラゾン1.9gを加えて感熱記録層塗布液とした。上述のようにして既に得られた赤外線吸収層上に、この感熱記録層塗布液を銀換算値として1.1g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗布し、80℃にて3分間乾燥させ感熱記録層を形成した。
【0076】
<保護層塗布液の調製および塗布>
トルエン25.7gに、アクリディックWBU-1218(DIC(株)製;アクリルポリオール溶液、固形分30質量%)15.2g、シーホスターKE-P250(日本触媒(株)製;親水性シリカ粒子、平均粒子径2.5μm)0.35gを加え、攪拌して全体を均一にした後、攪拌しながらコロネート2715(東ソー(株)製;ポリイソシアネート変性体溶液、固形分90質量%)12gを加えて保護層塗布液を得た。この保護層塗布液を上記感熱記録層上に乾燥質量が4.5g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗布し、80℃にて3分間乾燥させたのち40℃にて5日間加温して保護層を形成した。このようにして感熱記録材料1を得た。感熱記録材料1のJIS K7361-1:1997に基づく全光線透過率は71.3%であった。
【0077】
<感熱記録材料2の作製>
赤外線吸収層塗布液の赤外線吸収色素を例示化合物(1)(ε(830)/ε(365)=18.5)0.45gに変更した以外は感熱記録材料1の作製と同様にして感熱記録材料2を得た。感熱記録材料2の同全光線透過率は85.1%であった。
【0078】
<感熱記録材料3の作製>
赤外線吸収層塗布液に赤外線吸収色素を加えなかった以外は感熱記録材料1の作製と同様にして感熱記録材料3を得た。感熱記録材料3の同全光線透過率は88.4%であった。
【0079】
<塗りつぶし画像の形成>
このようにして得られた感熱記録材料1~3の感熱記録層を有する面を、サーマルCTPセッター(Guangzhou Amsky Technology Co., Ltd.製、AURA600E)を用いて赤外線レーザー光で走査露光し、4000dpiの塗りつぶし画像(100mm(幅)×100mm(長さ))を得た。サーマルCTPセッターのドラム回転数は300rpmに固定し、レーザー出力は350mWとした。赤外線レーザー光の副走査方向における露光範囲の重複率は0.50%、0.70%、0.90%、1.1%、9.0%、15%、27%、39%と変化させ、それぞれの重複率にて塗りつぶし画像を得た。なお、感熱記録材料3については重複率1.1%で走査露光したところ、発色は生じず塗りつぶし画像は得られなかったため、他の重複率での走査露光は未実施とした。
【0080】
<紫外光透過濃度評価>
上述のようにして画像を得た後、感熱記録材料1~3のそれぞれの重複率における画像部、および非画像部の紫外光透過濃度をX-Rite361T(ビデオジェット・エックスライト(株)製)の紫外光モードでそれぞれ測定し、画像部の最大の紫外光透過濃度(Dmax)、および非画像部の最小の紫外光透過濃度(Dmin)を得た。Dmax-Dminの算出結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
<画像均一性評価>
上述のようにして画像を得た後、感熱記録材料1~3のそれぞれの重複率における画像部を顕微鏡で観察し、画像抜け、濃度ムラの有無を調べた。以下の基準で判断した結果を表1に示す。なお、感熱記録材料3については塗りつぶし画像が得られなかったため、評価不可とした。
【0083】
<画像均一性基準>
優:画像抜けは全く無く、画像部の濃度は均一である
良:画像抜けは無いが、画像部に濃度ムラが僅かに認められる
可:画像抜けは無いが、画像部に濃度ムラが明確に認められる
不可:画像抜けが有る
【0084】
<噴出物評価>
上述のようにして画像を得た後、感熱記録材料1~3のそれぞれの重複率における画像部の周辺を目視および顕微鏡で観察し、画像部周囲に噴出物による汚染が見られるか否かを調べた。以下の基準で判断した結果を表1に示す。なお、感熱記録材料3については塗りつぶし画像が得られなかったため、評価不可とした。
【0085】
<噴出物基準>
優:噴出物による汚染が全く見られない
良:画像部周囲に噴出物が極僅かに見られる(目視では見えず顕微鏡観察で見える)
可:画像部周囲に噴出物が目視で見えるが実用上の問題は無い
不可:画像部周囲に噴出物が多量に降り積もっており、実用不可
【0086】
表1の結果から明らかなように、本発明の画像形成方法によって、感熱記録材料の表面から生じる噴出物が低減され、高コントラストかつ均一な画像を得ることができる。
【0087】
感熱記録材料1の感熱記録層を有する面を、サーマルCTPセッター(Guangzhou Amsky Technology Co., Ltd.製、AURA600E)を用いて赤外線レーザー光で走査露光し、4000dpiの塗りつぶし画像(100mm(幅)×100mm(長さ))を得た。この際、サーマルCTPセッターのドラム回転数は480rpm、赤外線レーザー光の副走査方向における露光範囲の重複率は3.0%に固定し、レーザー出力を100mW~400mWの間で段階的に変化させた。このようにして、感熱記録材料表面における赤外線レーザー照射量を段階的に変化させて露光した。実施例1と同様に紫外光透過濃度を評価したところ、レーザー出力350mWにおいてDmax-Dminの値が3.0となった。この状態の感熱記録材料表面における赤外線レーザー照射量をAとした。
【0088】
<網点均一性評価>
感熱記録材料1の感熱記録層を有する面を、サーマルCTPセッター(Guangzhou Amsky Technology Co., Ltd.製、AURA600E)を用いて、赤外線レーザー光で走査露光し、4000dpiの50%網点画像(100mm(幅)×100mm(長さ))を得た。この際、感熱記録材料1はドラム上に存在する吸気スリット上に固定し、レーザー出力350mW、副走査方向における露光範囲の重複率3.0%に固定した。さらにドラム回転数を480rpm、453rpm、425rpm、400rpm、369rpm、343rpm、320rpm、300rpmと変化させてそれぞれで網点画像を得た。ドラム回転数を減らして露光することで、感熱記録材料表面における赤外線レーザー照射量は1.00A、1.06A、1.13A、1.20A、1.30A、1.40A、1.50A、1.60Aと変化した。
【0089】
上述のようにして得た網点画像を版下原稿として用いて、プリンターP-627-GA((株)SCREEN製密着露光プリンター)を用いて、バイオレットディジプレート(VDPF175:三菱製紙(株)製印刷版)に密着露光を行い、30℃の水にて水洗/現像を行い、印刷版を得た。印刷版の網点画像を目視により観察し、吸気スリットに対応した画像濃淡が視認できるかを調べた。以下の基準で判断した結果を表2に示す。
【0090】
<網点均一性基準>
良:吸気スリットに相当する画像濃淡が印刷版上で視認できない
可:吸気スリットに相当する画像濃淡が印刷版上で僅かに視認できるが、実用上問題ない
不可:吸気スリットに相当する画像濃淡が印刷版上で明確に認められ、実用不可
【0091】
【表2】
【0092】
表2の結果から明らかなように、本発明の画像形成方法によって、感熱記録材料の保持構造の表面が平坦で無い場合でも、感熱記録材料上に形成した画像の均一性を改善することができることが判る。
【符号の説明】
【0093】
1 感熱記録材料
2 画像形成予定領域
11 画像
21 赤外線レーザー光発振器
22 赤外線レーザー光
31、32 副走査方向への走査幅
33 重複幅
35、37 画像
41 保持構造
42、43 吸気スリット
図1
図2
図3